(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736418
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】軟式電気導通体
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20150528BHJP
C09J 7/00 20060101ALI20150528BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20150528BHJP
H01R 4/04 20060101ALI20150528BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
H01R11/01 Z
C09J7/00
H01B5/14 Z
H01R4/04
H01R13/24
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-147216(P2013-147216)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2015-22792(P2015-22792A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2013年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高津 浩気
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5025709(JP,B2)
【文献】
特開2012−164669(JP,A)
【文献】
特開2009−218207(JP,A)
【文献】
特開2013−242989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
C09J 7/00
H01B 5/14
H01R 4/04
H01R 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導体と第2の導体との間に挟まれて、両導体の間を電気的に導通させる軟式電気導通体において、弾力性を有する芯材と、この芯材の外周面を覆う導電性を有する導電性シートと、この軟式電気導通体を導体に貼着させる貼着シートとを具備しており、前記導電性シートは、予め粘着剤が塗布されており、前記芯材の第1の面と、この第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と第2の面とを繋ぐ第3の面とを覆っており、第1の導体に対応する第1の面は一部分のみが導電性シートで覆われ、導電性シートで覆われていない部分は粘着シートで覆われ、第2の導体に対応する第2の面は一部分のみが導電性シートで覆われ、導電性シートで覆われていない部分は粘着シートで覆われていることを特徴とする軟式電気導通体。
【請求項2】
前記芯材は断面視矩形状であり、前記第3の面のうち、1つの面のみが導電性シートで覆われていることを特徴とする請求項1記載の軟式電気導通体。
【請求項3】
前記第2の面のうち、導電性シートで覆われていない部分は、導電性シートで覆われていない第3の面に繋がった部分であることを特徴とする請求項2記載の軟式電気導通体。
【請求項4】
前記芯材は断面視略矩形状であり、前記第3の面のうち、対向する2つの面が導電性シートで覆われていることを特徴とする請求項1記載の軟式電気導通体。
【請求項5】
前記第2の面のうち、導電性シートで覆われていない部分は、導電性シートで覆われている第3の面とは繋がっていないことを特徴とする請求項1記載の軟式電気導通体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンや携帯電話、パソコン、ディスプレイ等の電子機器において、2つの導体に隙間がある場合に、その隙間に圧縮状態で挟まれて、両導体の間の導通を図ることで電磁波シールドを構成する軟式電気導通体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の軟式電気導通体は、昨今のスマートフォンに代表される電子機器の小型化、薄型化の要請に応じるため、薄型のものが求められている。
この軟式電気導通体としては、特許第5025709号公報に記載されたものがある。この軟式電気導通体は、『それぞれに導体が接触する、並行な二面が形成された弾力性を有する直方体状のクッション材を備え、前記二面が互いに近付くように圧縮されることにより、前記二面に接触する導体を電気的に導通させる軟式電気導通体において、前記二面それぞれに貼り付けられた両面粘着テープと、前記二面のうちの一方の面の全面及び前記二面をつなぐ側面の一方の側面双方を覆うと共に、前記二面のうちの前記一方の面とは異なる他方の面における前記一方の側面とは異なる他方の側面側は覆わずに前記両面粘着テープが露出するように、該他方の面における前記一方の側面側のみを、前記一方の側面から連続して覆うように貼り付けられた導電フィルムとを備えたことを特徴とする軟式電気導通体。』となっている。
【特許文献1】特許第5025709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1記載の軟式電気導通体には、以下のような問題点がある。
すなわち、平行な二面に両面粘着テープを貼り付ける必要がある。このため、二枚の両面粘着テープの厚さ寸法だけ、軟式電気導通体の厚さ寸法が大きくなる。特に、両面粘着テープは厚さ方向に圧力を加えてもそれほど圧縮できないという性質を有しているので、両面粘着テープの厚さ寸法が、この種の軟式電気導通体の厚さ寸法に占める割合は大きなものになっている。
これは上述した薄型化の要請に応えるためには大きな阻害要因となっている。
【0004】
また、この種の軟式電気導通体には、クッション材に両面粘着テープを用いて周囲に導電性シートを巻き付け、その導電性シートの上から軟式電気導通体を導体に貼り付けるための両面粘着シートを取り付けているものもある。
この軟式電気導通体では、軟式電気導通体を導体に貼り付けるための両面粘着シートに高価な導電性を有するものを使用する必要があった。
【0005】
一方、両面粘着テープを使用しないタイプの軟式電気導通体も存在する。この両面粘着テープを使用しないタイプのものは、熱可逆性プラスチックを使用したいわゆるホットメルト接着剤によって、芯材に導電性テープを貼着している。
このホットメルトを使用した軟式電気導通体では、芯材に導電性テープを巻き付けた後、電熱炉等による約300℃にまで達する加熱を行うため、両面粘着テープを用いたタイプの軟式電気導通体と比較して電熱炉等の設備が必要になるとともに、工数が増加するので、コスト高になっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、より薄型化することができ、しかもコストを低減することができる軟式電気導通体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軟式電気導通体は、第1の導体と第2の導体との間に挟まれて、両導体の間を電気的に導通させるものであり、弾力性を有する芯材と、この芯材の外周面を覆う導電性を有する導電性シートと、この軟式電気導通体を導体に貼着させる貼着シートとを備えており、前記導電性シートは、予め粘着剤が塗布されており、前記芯材の第1の面と、この第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と第2の面とを繋ぐ第3の面とを覆っており、
第1の導体に対応する第1の面は一部分のみが導電性シートで覆われ、導電性シートで覆われていない部分は粘着シートで覆われ、第2の導体に対応する第2の面は一部分のみが導電性シートで覆われ、導電性シートで覆われていない部分は粘着シートで覆われている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る軟式電気導通体は、導電性シートに予め粘着剤が塗布されているので、従来のように、導電性シートを芯材に取り付けるのに両面粘着テープを使用する必要がない。このため、この軟式電気導通体は、両面粘着テープの厚さ寸法だけ、全体を薄型化することが
できる。
また、この軟式電気導通体では、ホットメルトを使用したタイプのもので必須であった加熱工程が不要となるので、加熱工程のための電熱炉等の設備を不要とし、そのための工数を減らすことができ、全体として製造コストを低減させることができる。
さらに、本発明に係る軟式電気導通体は、第1の面と第2の面との導電性シートで覆われていない部分に粘着シートがセットされているため、第1の面に対応した第1の導体と、第2の面に対応した第2の導体との両方に貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る軟式電気導通体の概略的斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る軟式電気導通体を第2の導体に取り付けた状態を示す概略的説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る軟式電気導通体を第1の導体と第2の導体とに挟まれて圧縮された状態を示す概略的説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る軟式電気導通体の概略的説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る軟式電気導通体を第2の導体に取り付けた状態を示す概略的説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る軟式電気導通体を第1の導体と第2の導体とに挟まれて圧縮された状態を示す概略的説明図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態に係る軟式電気導通体の概略的説明図である。
【
図8】本発明の第4の実施の形態に係る軟式電気導通体の概略的説明図である。
【
図9】従来のこの種の軟式電気導通体の概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施の形態に係る軟式電気導通体100は、第1の導体510と第2の導体520との間に挟まれて、両導体510、520の間を電気的に導通させるものであって、弾力性を有する断面視矩形状の芯材110と、この芯材110の外周面を覆う導電性を有する導電性シート120と、この軟式電気導通体100を前記第2の導体520に貼着させる粘着シート130とを備えており、前記芯材110の第1の面111と、この第1の面111と対向する第2の面112と、前記第1の面111と第2の面112とを繋ぐ第3の面113のうち1つの面とを覆っており、第2の導体520に対応する第2の面112は一部分のみが導電性シート120で覆われ、導電性シート120で覆われていない部分は粘着シート130で覆われている。
【0011】
なお、図面の作図の都合上、各部の寸法及びその割合は正確には記されていない。
【0012】
この軟式電気導通体100は、例えば、幅寸法4mm、長さ寸法3mm、厚さ寸法0.3mmに設定されている。
【0013】
前記芯材110は、例えばウレタンフォームが使用される。この芯材110は、軟式電気導通体100の全体の形態を決定するものである。この芯材110には、例えば株式会社ロジャースイノアックのPORON(登録商標)が使用される。
【0014】
前記導電性シート120は、例えば布製の基材の表面に導電性の金属メッキを施したものであり、基材の裏面には粘着剤が塗布されている。この導電性シート120の厚さ寸法は、35μmである。
【0015】
一方、軟式電気導通体100を第2の導体520に貼り付ける粘着シート130は、導電性を持たないものが使用される。この貼着シート130の厚さ寸法は、導電性シート120と同じ厚さであることが望ましいが、導電性シート120より薄いものであってもかまわない。ただし、この貼着シート130は、導電性シート120より厚いものであってはならない。
【0016】
この軟式電気導通体100は、芯材110の第1の面111と、この第1の面111に対向した第2の面112と、第1の面111と第2の面112との間を繋ぐ4つの第3の面113の1つの面のみが導電性シート120で覆われている。
なお、第3の面113は、芯材110が直方体であるから、正面、背面、右側面及び左側面の4つあるが、その1つのみ(図面では左側面が該当する)が導電性シート120で覆われているのである。
【0017】
芯材110の第1の面111は、すべてが導電性シート120に覆われている。
これに対して、芯材110の第2の面112は、すべてが導電性シート120に覆われているわけではなく、一部分のみが導電性シート120で覆われている。
この第2の面112のうち、導電性シート120で覆われていない部分は、導電性シート130で覆われていない第3の面113に繋がった部分である。
【0018】
そして、第2の面112のうち、導電性シート120で覆われていない部分には、貼着シート130で覆われている。
【0019】
このように構成された軟式電気導通体100は、
図2に示すように、第2の面112の粘着シート130で第2の導体520に貼り付けられる。この状態では、第2の導体520には確実に導電性シート120に接触している。
【0020】
この状態の軟式電気導通体100に第1の導体510を接触させる。この第1の導体510は、第1の面111側から軟式電気導通体100に接触させる。すなわち、第1の導体510と第2の導体520との間に軟式電気導通体100を挟むことになる。
【0021】
この軟式電気導通体100は通常0.3mmであるが、
図3に示すように、第1の導体510と第2の導体520とに挟まれることで0.1mmまで圧縮される。
第1の導体510と第2の導体520とは、両導体510、520とも導電性シート120が接触しているため、導通が確保されている。
【0022】
この軟式電気導通体100は、芯材110の第3の面113のうち、1つの面だけを導電性シート120で覆うように構成しているので、それだけ導電性シート120の使用量を少なくしている。
【0023】
また、この軟式電気導通体100における導電性シート120は、予め粘着剤が塗布されているので、第1の面111及び第2の面112のみならず、第3の面113においても導電性シート120は芯材110に貼り付けられている。
このため、第1の導体510と第2の導体520とで挟まれて圧縮されても、第3の面113を覆う導電性シート120のみが芯材110の第3の面113から遊離することはない。もし、導電性シート120が芯材110から遊離すると、隣接する他の電子部品に接触するおそれがあるので、第3の面113に相当する面で芯材110に対して貼り付けられていないタイプの軟式電気導通体(例えば、特許文献1記載のもの)では、隣接する電子部品との間のギャップを大きくする必要がある。
これに対して、圧縮されても第3の面113において、導電性シート120が遊離しない軟式電気導通体100では、隣接する電子部品との間のギャップを小さくすることができる。すなわち、この軟式電気導通体100は電子機器の小型化、薄型化に大きく貢献することができるのである。
【0024】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る軟式電気導通体200について、
図4〜
図6を参照しつつ説明する。
この軟式電気導通体200が上述した軟式電気導通体100と相違する点は、軟式電気導通体100では第3の面113の1つのみが導電性シート120で覆われていたのに対し、軟式電気導通体200は第3の面213のうち、対向する2つの面が導電性シート220で覆われている点である。
また、この軟式電気導通体200は、第2の面212のうち、導電性シート220で覆われていない部分は、導電性シート220で覆われている第3の面213とは繋がっていない点も相違している。
【0025】
この軟式電気導通体200では、導電性シート220は芯材210の第1の面211、第2の面212の一部分及び対向する2つの第3の面213を覆っている。
そして、第2の面212のうち、導電性シート120で覆われていない部分は、粘着シート230で覆われている。
【0026】
また、この軟式電気導通体200であると、第1の面211に対して第1の導体510による圧縮力が斜め方向から加わった場合でも、第1の導体510と第2の導体520との導通を確保することができる。
【0027】
すなわち、
図9に示すように、芯材910の第1の面911、対向する2つの第3の面913及び第2の面912の全面を導電性シート920で覆い、第2の面912の略中央に粘着シート930を配置したタイプの従来の軟式電気導通体900では、第1の面911に対して斜め方向から圧縮力が加えられた場合、第1の導体(
図9では図示省略)と第2の導体520との導通が確保されなくなるおそれがある。
この従来の軟式電気導通体900の第1の面911に対して斜め方向から圧縮力が加えられると、第2の面912の粘着シート930がない部分が反り上がってしまい、第2の導体520に接触しなくなるのである。
これは、第2の面912の導電性シート920の上に粘着シート930を配置していることに起因する。このような状態での不導通を防止するために、この種の軟式電気導通体900では、粘着シート930に導電性を有するものを使用しなければならない。
【0028】
しかしながら、この軟式電気導通体100、200では、粘着シート130、230に導電性を有するものを使用しなくても、第2の面112、212の導電性シート120、220で覆われていない部分を粘着シート130、230で覆うようにしているので、どのような方向から圧縮力が加えられても、導電性シート120、220は確実に第2の導体520に接触している。すなわち、どのような方向から圧縮力が加えられても、第1の導体510と第2の導体520の導通を確保することができるのである。
【0029】
また、本発明の他の実施の形態に係る軟式電気導通体300、400としては、
図7や
図8に示すように、芯材310、410第2の面312、412のみならず、第1の面311、411にも導電性シート320、420で覆われていない部分を設け、その部分を粘着シート330、430で覆うものもある。
このような軟式電気導通体300、400であると、第2の導体520のみならず、第1の導体510に対しても貼り付けられることになる。
【符号の説明】
【0030】
100 軟式電気導通体
110 芯材
111 第1の面
112 第2の面
113 第3の面
120 導電性シート
130 粘着シート
510 第1の導体
520 第2の導体