(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736440
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】スクリュ圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20150528BHJP
F04C 27/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
F04C18/16 A
F04C27/00 331
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-241026(P2013-241026)
(22)【出願日】2013年11月21日
(62)【分割の表示】特願2010-275964(P2010-275964)の分割
【原出願日】2010年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-77447(P2014-77447A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2013年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀剛
【審査官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−535539(JP,A)
【文献】
特開2001−323887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに形成された圧縮室に雌雄一対のスクリュロータを回転可能に収容してなるスクリュ圧縮機において、
前記ケーシングは、軸受空間を画定する内部隔壁と、前記軸受空間の外側に配置された吸込空間を画定する外壁とを有し、
前記外壁を貫通して前記吸込空間内を延伸し、先端が前記内部隔壁に挿入され、前記軸受空間と前記外壁の外側の流路とを連通させる連絡管部材を備え、
前記内部隔壁と前記スクリュロータの軸との間に配設され、前記圧縮室と前記軸受空間とを隔壁する軸封装置は、前記連絡管部材を介してシール面に液体を供給されることにより、前記圧縮室から圧縮されたガスが漏出することを防止するメカシールを構成し、
前記連絡管部材は、前記外壁の外面にガスケットを介して密接するフランジを有し、
前記連絡管部材の内側端部は、前記内部隔壁に形成した嵌合穴に嵌合し、
前記連絡管部材の外周と前記嵌合穴との間にはOリングが配置されていることを特徴とするスクリュ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシング内に形成した圧縮室(ロータ室)の中に雌雄一対のロータを収容し、ロータの回転によって吸込流路から吸い込んだ気体を圧縮して吐出流路から吐出するスクリュ圧縮機が広く利用されている。
【0003】
スクリュ圧縮機には、雌雄一対のスクリュロータのロータ軸を支持するための軸受け、さらにそのロータ軸の周囲には圧縮室とそれ以外の空間とを遮断するための軸封部材が必須的に設けられる。軸受けには、通常、その潤滑のために油が供給される。また、軸封部がドライガスシールのように非接触の状態でシールする形式のものである場合、その軸封部にはいわゆるシールガスの供給が必要とされることが多い。また、流体(空気等)の圧縮に伴って、いわゆるドレンが発生する場合もある。したがって、多くのスクリュ圧縮機は、その内部に油や気体を供給するための流路や、それらの油や気体、あるいは、内部で発生したドレン等を排出するための流路が形成されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、給油タンクに貯留された油を、油冷却器、ポンプ、フィルタの介設された給油ラインを介して、複数の軸受およびメカニカルシールに供給するよう構成されたスクリュ圧縮機が開示されている。特許文献1のスクリュ圧縮機では、スクリュロータの軸を支持する軸受けに潤滑油を供給するための流路を形成するために、ケーシングの軸受を保持する部分と外壁部分とが、部分的に、径方向に一体に接続された構成となっている。
【0005】
特許文献1に開示のスクリュ圧縮機のように、軸受を保持する部分と外壁と径方向に接続することは、構造的にも不自然ではない。ただし、多様な要求に応じて設計されるスクリュ圧縮機の中には、強度的には、ケーシングの内側の部分と外壁部分とを径方向に接続する必然性がない場合もある。場合によっては、軸受の外側に軸受用油と異なる種類または異なる圧力の流体を収容する空間、例えば、雌雄のスクリュロータを同期させるための歯車を潤滑するための油を貯留する空間や、圧縮室に気体を吸い込むための流路等を形成することがより好ましい場合もある。
【0006】
スクリュ圧縮機のケーシングは、一般に、鋳造によって形成されることが多い。鋳造で流路等を形成する場合は、その流路等が微量の流体を通じさせるためだけの目的で形成されるものであっても、その流路等が十分な厚みを有していなければ、溶湯が十分に行き渡らずに所望の形状とならず、肉厚不足によって形成した流路と他の内部空間とが連通してしまったり、冷却速度が不均一になるために材料欠陥が生じて破損したりする可能性がある。このため、従来のスクリュ圧縮機は、機械的な要求がなくても、流体の流路を確保するためだけに、ケーシングの内側の部分と外壁部分とを径方向に一体に形成し、ケーシングが重くなったり大型化したりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4365443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点に鑑みて、本発明は、ケーシング内部空間を横断して、さらに内側に形成された別の内部空間に流体を供給できる軽量で小型のスクリュ圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明によるスクリュ圧縮機は、ケーシングに形成された圧縮室に雌雄一対のスクリュロータを回転可能に収容してなるスクリュ圧縮機において、
前記ケーシングは、軸受空間を画定する内部隔壁と、前記軸受空間の外側に配置された吸込空間を画定する外壁とを有し、前記外壁を貫通して前記吸込空間内を延伸し、先端が前記内部隔壁に挿入され、前記軸受空間と前記外壁の外側の流路とを連通させる連絡管部材を備え、前記内部隔壁と前記スクリュロータの軸との間に配設され、前記圧縮室と前記軸受空間とを隔壁する軸封装置は、前記連絡管部材を介してシール面に液体を供給されることにより、前記圧縮室から圧縮されたガスが漏出することを防止するメカシールを構成
し、前記連絡管部材は、前記外壁の外面にガスケットを介して密接するフランジを有し、前記連絡管部材の内側端部は、前記内部隔壁に形成した嵌合穴に嵌合し、前記連絡管部材の外周と前記嵌合穴との間にはOリングが配置されているものとする。
【0010】
この構成によれば、外側内部空間に流体を供給するための管路をケーシング本体と別部材としたので、薄肉の部材で形成でき、スクリュ圧縮機の小型化および軽量化が容易である。
また、ガスケットを用いるフランジの外壁に対する取り付けに若干の自由度があるため、内部隔壁の嵌合穴と、外壁の貫通穴との偏芯等を吸収することができ、内側内部空間および外側内部空間の気密性が容易に確保できる。また、連絡管部材をケーシングに溶接等によって固定する必要がないので熱による歪み等が生じず、割れが生じたりする危険性も低い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態のスクリュ圧縮機の軸方向断面図である。
【
図2】
図1のスクリュ圧縮機の軸直角方向断面図である。
【
図3】
図2の連絡管部材のフランジ近傍の部分断面図である。
【
図4】
図2の連絡管部材の先端部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これより、本発明の実施形態に係るスクリュ圧縮機について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る圧縮機1の全体のスクリュロータの軸における断面を示す。また、
図2は、
図1のA−A断面、つまり、圧縮機1の軸直角方向断面を部分的に示す。
【0015】
本実施形態のスクリュ圧縮機1は、鋳物からなるケーシング2が形成する圧縮室3の中に雌雄一対のスクリュロータ(雄ロータ4および雌ロータ5)を回転可能に収容している。ケーシング2は、圧縮室3に連通し、不図示の吸込配管が接続される吸込空間(外側内部空間)6、および、スクリュロータ4,5の軸4a,5aを支持する軸受け7〜10を収容する軸受空間(内側内部空間)11,12を画定している。吸込側の軸受空間11には、雄ロータ4と雌ロータ5とを同期回転させるための歯車13,14も収容されている。
【0016】
吸込空間6と軸受空間11,12とは、一体に鋳造されたケーシング2の一部であって、吸込空間6の外側部分を画定する外壁15から圧縮室3に向かって延伸する内部隔壁16によって隔離されている。内部隔壁16とスクリュロータ4,5の軸4a,5aとの間には、軸封装置17〜20が配設されており、圧縮室3と軸受空間11,12との間を隔離している。
【0017】
さらに、ケーシング2には、外壁15を貫通して、吸込空間6内を延伸し、先端が内部隔壁16に挿入された概略管状の連絡管部材21が取り付けられている。この連絡管部材21を介して、軸受空間11は、ケーシング2の外部の軸封ガスを供給する管路に連通し得る。
【0018】
また、本実施形態のスクリュ圧縮機1は、雄ロータ4の吸込側の軸4aがケーシング2の外側に延伸し、不図示のモータ等に接続される。また、雄ロータ4の吐出側の軸4aもまた、ケーシング2の外側に延伸し、不図示のスラスト荷重を受け止めるためのティルティングパッド等の機構が設けられる。したがって、これらの雄ロータ4の軸4aがケーシング2を貫通する部分にも、それぞれ軸封装置22,23が設けられている。
【0019】
図2に示すように、連絡管部材21は、その先端が、内部隔壁16に形成された嵌合穴24に挿入されている。嵌合穴24は、内部隔壁16を貫通して軸受空間11に開口し、軸封装置17,19に軸封ガスを供給するための流路となる。軸封装置17,19は、例えば、スクリュロータ4の軸に気密に取り付けられたロータ25と内部隔壁に気密に取り付けられたステータ26と近接する部分の外側の空間に軸封ガスを供給することで、軸封ガスの圧力によって、圧縮室3において圧縮されたガスが軸受空間11に漏出することを防止するドライガスシールである。
【0020】
さらに
図3に示すように、連絡管部材21は、ケーシング2の外壁15の外面にガスケット27を介して密接し、ネジ28によって固定されるフランジ29を有している。フランジ29には、軸封ガスを供給するための外部配管30のフランジ31が植え込みボルト32およびナット33によって取り付けられている。
【0021】
また、
図4に示すように、連絡管部材21の先端部外周には、内部隔壁16の嵌合穴24との隙間を封止するためのOリング34を受け入れるリング溝35が形成されている。嵌合穴24の吸込空間6側の開口部は、連絡管部材21を挿入し易いように、テーパ状に拡径している。
【0022】
連絡管部材21の先端部は、嵌合穴24に対して厳密に同心にしなければ、嵌合穴24に挿入することができないが、他端のフランジ29は、ガスケット27を介してケーシング2の外壁15に取り付けられるので、外壁15の貫通穴に対して多少の芯ずれや傾斜があっても、外壁15に気密に取り付けることができる。このため、連絡管部材21に無理な曲げが生じて割れが生じたりせず、吸込空間6と完全に隔離された軸封ガスの流路が形成できる。
【0023】
本発明によれば、鋳物からなるケーシング2に対して、直管のみからなる連絡管部材を、隙間が残らないように全周溶接して取り付けてもよいが、本実施形態のように、ガスケット27を介して外壁15に取り付けられるフランジ29を設けることで、溶接の熱によって歪みが生じて、連絡管部材21が破損し易くなることもない。
【0024】
また、本実施形態では、連絡管部材21を取り外し可能としたことで、万一、連絡管部材21が損傷しても、容易に部品交換することができる。
【0025】
また、連絡管部材21は、金属材料から削りだす等の機械加工によって形成できる。このため、連絡管部材21は、鋳物のように材料中に欠陥が生じることがないため、薄肉でも十分な強度を備え、より高い寸法精度も期待できる。したがって、軸封ガスの流路をケーシング2と一体の鋳物の一部に形成する場合と比べると、分離された連絡管部材21は、軽量小型であり、吸込空間を狭めることもないため、スクリュ圧縮機1を大きくしたり重くしない。また、連絡管部材21は、その形状等の自由度も高いため、その固有振動数を適宜、調整して、振動を抑制することもできる。
【0026】
本実施形態では、連絡管部材21によって、軸封装置17,19に軸封ガスを供給するための流路を形成しているが、連絡管部材21の構成は、ケーシング内の外側内部空間のさらに内側に設けられた内側内部空間と、ケーシング外部との間で流体を移動させるための経路を形成するのに広く適用できる。
【0027】
例えば、本発明により、軸受に潤滑油を供給するための流路、軸受から潤滑油を回収するための流路、軸封装置に圧縮室から漏出する冷却用油を回収するための流路、メカシールのような軸封装置のシール面に油などの液体を供給するための流路、その他、ドレンを排出するための流路等、多様な流路を形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…スクリュ圧縮機
2…ケーシング
3…圧縮室
4…雄ロータ
5…雌ロータ
6…吸込空間(内側内部空間)
7〜10…軸受
11,12…軸受空間(外側内部空間)
15…外壁
16…内部隔壁
17〜20…軸封装置
21…連絡管部材
24…嵌合穴
26…ガスケット
28…フランジ
34…Oリング
35…リング溝