(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸入路側に設けられる前記フィルタと前記雰囲気検出手段との間には、前記ポンプが吸引できる圧力以下のクラッキング圧を有する逆止弁が備えられていることを特徴とする、請求項2に記載のセンサユニット。
前記ブロックは金属製であって、一方面から他方面に貫通する2つの貫通穴を並列して有し、貫通穴の一つが吸入路であり、他の貫通穴が吐出路であって、前記ヒータは金属製の前記ブロックを加熱するものであることを特徴とする、請求項1に記載のセンサユニット。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明していく。
図1は本発明の一実施形態であるセンサユニット100を搭載したインキュベータ1の断面図である。インキュベータ1は、培養室2と、内扉3と、試料を載せる試料棚4と、CO
2やN
2といった培養中に培養室2内部に供給されるガスの供給パイプ5と、雰囲気測定手段19とを備え、内部雰囲気を吸入し吐出するセンサユニット100と、滅菌の際に過酸化水素ガスやオゾンガスといった滅菌のためのガスを培養室2内に供給する供給口7と、供給したガスを吸引する吸引口8とを備えている。培養室2は、アルミニウムやステンレスといった熱伝導性や耐蝕性に優れた部材からなる壁2aにより形成された、前面に開口を有する略直方体をしていて、その開口部分には壁2aにヒンジを介して開閉可能に取り付けられた内扉3が設けられている。内扉3は、培養室2の開口をパッキン10を介して閉じると、培養室2内部が気密になるように構成されている。
【0014】
培養室2の壁2aの外側には、鉄等の金属板材を折曲げやプレス加工により形成された、前面に開口を有する外箱11が、培養室2と同方向に開口を向けて、培養室2を収納するように配置されている。外箱11の開口部周縁端部は培養室2に向けて折り曲げ加工が施されている。この外箱11の開口にはヒンジを介して開閉可能に取り付けられた外扉9が設けられている。外扉9は外箱11の開口をパッキン12を介して閉じると、外箱11内部が気密になるように構成されている。
【0015】
培養室2の壁2aには銅やアルミニウムといった熱伝導性の高い金属の板材が密着固定されていて、更にその外側には電熱ヒータ13が直接密着固定されている。さらに、これら壁2aに取り付けられた部材を全て取り囲むように断熱材14が設けられている。この電熱ヒータ13によって培養室2の壁2aを直接加熱することで、培養室2内部を所定の温度に調節できるようになっている。なお、上記のように培養室2の壁2aと電熱ヒータ13の間に、銅やアルミニウムといった熱伝導性の高い金属を均熱板15として培養室2の外側壁面に配置して、この均熱板15を介して培養室2の壁面を加熱する構造とすることで、小さい面積の電熱ヒータ13でも、培養室2の壁2a全体を均一な温度に加熱することができる。さらに、本実施例では、電熱ヒータ13により壁2aを直接的に加熱する所謂ダイレクトヒート方式としているが、例えば、加熱した空気を循環させるチューブを壁2aに配置して内部を過熱するエアジャケット方式や、ウオータージャケット方式とすることも十分可能である。
【0016】
外扉9は外箱11と同様の部材により形成された箱状のもので、その培養室2の開口に面する側にはアルミニウム材で形成された内側パネル16が取り付けられている。外箱11は内部に断熱材14が配置されていて、内側パネル16の外箱11側に配置された電熱ヒータ13の熱が外扉9から外部に漏れることを防止している。外扉9の、外箱11開口部分に対向する周縁部にはパッキン12が配設されていて、外扉9を閉鎖した際にこのパッキン12が外箱11の開口部周縁に形成された鍔状の折り曲げ部分に当接することで開口部分を密閉できる構造となっている。
【0017】
培養室2の内部には培養や試験を行う試料を載置する試料棚4が複数上下方向に所定の間隔をおいて配置されている。培養室2の床面には、培養室2内部を加湿するための蒸留水を入れる水トレー17が配置されていて、床面外側に備えられた電熱ヒータ13の熱により加熱され所定の湿度に培養室2内部を維持することができる。
【0018】
培養室2には、外部から純度99%以上のCO
2ガスを供給するCO
2ガス供給パイプ5aと、純度99%以上のN
2ガスを供給するN
2ガス供給パイプ5bとが備えられていて、不図示のガス供給手段から培養室2内に各供給パイプ5a、5bを介してガスが供給される。CO
2ガス供給パイプ5a及びN
2ガス供給パイプ5bには、それぞれ電磁駆動式の開閉弁6a、6bが備えられていて、不図示のインキュベータ制御手段からの信号入力によって開閉弁の開閉動作が制御される。なお、ガスの供給手段は、各種ガスの発生装置をインキュベータ1とは別に設けることとしてもよいし、発生装置をインキュベータ1内部に備えることとしてもよく、さらに、各種ガスを充填したボンベをインキュベータ1外部に設置しておくこととしてもよい。
【0019】
また、培養室2には、滅菌の際、不図示の過酸化水素発生装置から送られて来た過酸化水素ガスを培養室2内部に供給するための供給口7と、培養室2内部の空気を外部に排気するための吸引口8が備えられている。供給口7と吸引口8とはそれぞれ不図示の過酸化水素発生装置に、パイプ7a、8aを介して連通されていて、それぞれのパイプ7a、8aには電磁駆動式の開閉弁7b、8bが配設されている。この開閉弁7b、8bは、不図示のインキュベータ制御手段からの信号入力によって開閉動作が制御される。なお、供給口7は、滅菌中は過酸化水素ガスを培養室2に供給するが、滅菌終了後は培養室2内部に溜まった過酸化水素ガスをより早く培養室2から排出するために、高機能フィルタによって不純物が濾過された清浄空気を供給することとしてもよい。
【0020】
さらに、培養室2には熱電対や側温抵抗体からなる温度センサ18が配置されていて、インキュベータ制御手段は温度センサ18からの電気信号に基づいて電熱ヒータ13の出力を制御することで培養室2内の温度を所望の値に調整している。培養室2内部に備えられる温度センサ18は、ステンレスでできたシースと呼ばれる金属保護管により温度検出部が気密に保護されたもので、高温やガス雰囲気中での長時間の使用にも耐えうるものとなっている。また、培養室2の壁2a周囲に備えられた電熱ヒータ13にも個別に温度を測定する熱電対が備えられていて、インキュベータ制御部は各熱電ヒータ13を個別に温度制御することで、培養室2内部の温度ムラを無くし、均一な温度環境とすることが可能となる。さらに、例えば、前述の水トレー17を加熱する熱電ヒータ13を周囲の熱電ヒータ13よりも高い設定温度にすることで、培養室2内の湿度を短い時間で上昇させることも可能となる。なお、培養室2内部の環境をより均等なものとするために、培養室2内部の空気を攪拌するファンを設けることも可能であるが、この場合、過酸化水素ガスによる滅菌を行うことを考慮して、ファンの可動部分にはシールを設けることとし、ファン内部の電気部品を過酸化水素ガスから保護する構造とするのが望ましい。
【0021】
さらに、インキュベータ1には、培養室2内の温度や湿度、CO
2濃度や酸素濃度といった培養室2内部の雰囲気を測定するための雰囲気測定手段19として、CO
2センサと酸素濃度センサを備えている。CO
2センサと酸素濃度センサはインキュベータ制御部と電気的に接続されていて、インキュベータ制御部はCO
2センサからの電気信号に基づいてCO
2供給パイプ5aの開閉弁6aの動作を制御し、酸素濃度センサからの電気信号に基づいてN
2供給パイプ5bの開閉弁6bの動作を制御し、培養室2内部の環境を所定のCO
2濃度及び酸素濃度に調整する。なお、培養室2内部の酸素濃度の調整にN
2(窒素)ガスを使用するのは、窒素が大気の約70%を有すること、不活性ガスであり安定状態のガスである点が挙げられ、この窒素ガスを供給することで培養室2内部を低酸素状態に維持することができるからである。なお、本実施例では、雰囲気測定手段19としてCO
2センサと酸素濃度センサを備えることとしているが、例えば低酸素環境での培養を行わないものの場合、N2供給パイプ5bや開閉弁6b、酸素濃度センサを備える必要はない。
【0022】
ここで、CO
2センサや酸素濃度センサといった雰囲気測定手段19は、検出部分を培養室2内部に配置され、培養室2内部の雰囲気を検出素子により測定するものであるが、これら検出素子や電子部品及び配線部材は過酸化水素ガス雰囲気や高湿度雰囲気に長時間晒されていると、酸化や腐食によって正確な測定ができなくなってしまい、最悪の場合、培養中止という事態を引き起こしてしまう。
【0023】
そこで、本発明では、培養室2とは別に形成されたブロック内に内部空間を設け、この中に雰囲気測定手段19と気流発生手段20を配置し、この気流発生手段20によって培養室2内部の空気を吸入・吐出するように気流を発生させ、その気流の流路に雰囲気測定手段19の検出部32を配置することで、培養室2内部の雰囲気を測定することとしている。また、培養室2と内部空間とは、培養室2の壁2aに形成された開口部分にて、フィルタ23を介して連通することとしている(
図2参照)。以下に、本実施例について詳しく説明していく。
【0024】
図3は本発明のセンサユニット100の一実施例を構成する各部材を示した分解図であり、
図4Aは上面から見た断面図であり、
図4Bは側面から見た断面図である。センサユニット100の構成部材の一つである本体モジュール22は、金属製であり表面にアルマイト処理を施した高い熱伝導性を有するアルミニウム製のブロックである。本体モジュール22の培養室2の壁2aに当接する面は平滑に加工されていて、この平滑に加工された面と壁2aとの間にはパッキン24が配置されている。パッキン24は培養室2の壁2aに形成された開口周縁よりも大きな形状を有する部材で、このパッキン24により本体モジュール22と培養室2の壁2aとの間は気密に接触した状態となる。
【0025】
本体モジュール22は、一方の面から他方の面に貫通する2つの貫通穴が並列に形成されている。ここにおいて、一方の面は、培養室2の壁2aに当接する面であって、2つの貫通穴の開口は本体モジュール22のパッキン24で外部から仕切られた範囲に設けられる。2つの貫通穴のそれぞれが吸入路26と吐出路27である。これらの吸入路26と吐出路27の培養室2に対向する面とは反対側の面(本体モジュール22の他方の面)には、パッキンシート25を介して気流発生手段20であるポンプ21が気密状態に固定されている。なお、本実施例で使用されるポンプ21は、吸入口と排出口がポンプ21本体上の一つの面に配置されていて、この吸入口と排出口のそれぞれ対応する位置に2つの貫通穴26、27は形成されている。貫通穴26はポンプ21の吸入口と連通していて、ポンプ21の動作によって培養室2内部の空気をポンプ21へと吸入させる吸入路26となっている。貫通穴27はポンプ21の排出口と連通していて、ポンプ21の動作によってポンプ21内部へ吸入された空気を培養室2内へと吐出させる吐出路27となっている。さらに、ポンプ21の吸引口と吐出口にはそれぞれ逆止弁28が設けられ、ポンプ21により吸入・排出される流体の逆流を防止している。上記の構成により、本体モジュール22に形成された吸入路26と吐出路27という2つの流路内に対して、培養室2内部の空気を気流発生手段20(ポンプ21)により吸引し、また培養室2内部へ吐出するというように一方向に流れるように流路を形成することができる。
【0026】
本実施例に使用されるポンプ21は、ポンプ21本体内部の空間を仕切る隔膜29を備え、その隔膜29を膨張・収縮動作させることで内部の体積を変化させ、この体積の変化で外部の空気を吸入・吐出させる構造となっていて、この隔膜29を膨張・収縮させる手段として、バイモルフ振動子30を備えている。このバイモルフ振動子30を隔膜29に貼り付け、駆動電圧を印加することで一定の周波数でバイモルフ振動子30と隔膜29を屈曲・屈伸させ、この屈曲・屈伸動作によってポンプ21内部の体積を変化させることで気流を発生させている。なお、吸入路26と吐出路27を流れる気流を発生させる手段としては、上記以外にも、例えば、隔膜29の働きをするダイアフラムをモータの回転動作によって伸縮動作させるダイアフラムポンプといったポンプや、さらには、軸流ファンやシロッコファンといった送風機も使用可能である。ただし、吸入路26や吐出路27を流れる気流は、湿度90%以上の高湿度のものとなるので、高湿度環境でも使用可能なものを選定するのが好ましい。上記構成により、本実施例のセンサユニット100は、培養室2内部の空気を外部の空気と混合させることなく吸入・吐出することができる。
【0027】
さらに、本体モジュール22には、雰囲気測定手段19を挿入するためのセンサホール31が、吸入路26に直交するように形成されている。センサホール31は目的の雰囲気測定手段19が挿入可能な形状と大きさを有していて、雰囲気測定手段19の検出部32が吸入路26に突出するように形成されている。さらに、吸入路26中を流通する気体がセンサユニット100外部に流出、若しくは、外部の空気が吸入路26内に流入するのを防止するために、雰囲気測定手段19とセンサホール31との隙間には、パッキンやOリング33といった密閉のための部材を配置するのが好ましい。
雰囲気測定手段19を、吸入路26とポンプ21との間に設けたのは、培養室2に近い位置での測定をするためである。
【0028】
さらに、本実施例のセンサユニット100には、壁2aに当接する面に吸入路26、吐出路27を覆うようにフィルタ23が押さえ板35を介して密着して取り付けられている。本実施例を構成するフィルタ23は、ステンレス316鋼材からなる微小な繊維を加工・焼結したものを、適正な寸法に切断して使用しているが、焼結金属以外にも、例えば、ポリプロピレンやポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維から形成されたものでもよい。また、フィルタ23の濾過精度は約1μmで、コンタミネーションの原因となる殆どの雑菌やカビ、細胞はこのフィルタ23を通過して、センサユニット100内部へ流入することはできない。よって、仮に培養室2内部が汚染されていたとしても、ポンプ21でセンサユニット100内部に吸入された培養室2内の空気は、フィルタ23によって濾過された高清浄な状態を維持される。さらに、CO
2や酸素、水蒸気といった分子は1μmの濾過精度のフィルタ23を貫流できるので、培養室2内部の雰囲気を精度よく検出することができる。なお、濾過精度0.1μm以下のフィルタ23も使用可能であるが、フィルタ自体の圧損率も高くなるので、各種センサの検出可能な流量を確保するために、ポンプやファンといった気流発生手段20の吐出圧力や流量に関する性能を十分検討する必要がある。
【0029】
上記構成に加え、本発明のセンサユニット100には本体モジュール22を加熱するためのヒータ36(電熱ヒータ)が備えられている。この電熱ヒータ36は、培養室2内部の湿度90%以上の空気がセンサユニット100内に吸入された際、フィルタ自体の圧損率によりフィルタで吸引した雰囲気の圧力が低下して雰囲気温度が下がり、温度の低下からセンサユニット100内部、とくにフィルタ出口の吸入路26付近で結露してしまうのを防止するために設けられている。この目的のためには、吸入路26側のフィルタ23から気流発生手段20(ポンプ21)への間のブロック内部空間が、培養室2内部よりも負圧になることから、電熱ヒータ36を配置して圧力低下に対応することが必須である。
培養室2内部から吸引した空気がセンサユニット100内部で結露してしまうと、センサ検出部32の素子に悪影響を起こし正確な検出ができなくなってしまう。さらに、空気中の水蒸気量が結露することで減少し、培養室2内の湿度が低下してしまう。実施例においては、本体モジュール22に電熱ヒータ36を貼り付けて、熱電導率の高い金属であるアルミニウム製の本体モジュール22全体を加熱している。培養室内の温度は37℃に制御されているため、電熱ヒータ36は吸引した空気が結露しない程度の電流量で定常的に加熱を続けるだけで、特に制御は不要である。さらに、電熱ヒータ36と本体モジュール22の温度を測定する熱電対(図示せず)のを配置して温度制御してもよい。
一方、本体モジュール22に電熱ヒータ36を貼り付けた結果、本体モジュール22全体が加熱されるため、気流発生手段20(ポンプ21)から吐出路27への間の空間も加熱されることになる。加熱は、圧力低下に対応するためであれば、センサユニット100内部のフィルタ出口付近を特に行えばよいが、その箇所のみでなく本体モジュール22全体を加熱するのは、専ら本体モジュール22からの放熱による温度低下による結露に対応するものである。
また、吸入路26側のフィルタ23による圧力低下による結露をヒータにより加熱して解消し、かつ吐出路27に至るまで温度の低下が妨げられる構成であれば、雰囲気測定手段19を、吸入路26とポンプ21との間に設けても、或いはポンプ21と吐出路27との間に設けてもよい。
【0030】
電熱ヒータ36と熱電対はインキュベータ制御部に電気的に接続されていて、所定の温度にセンサユニット100を制御することが可能となる。ここで、培養室2から吸引した空気が結露しない程度の温度になるようにセンサユニット100の温度を制御しておけば、正確な培養室2内部の雰囲気測定が可能となる。さらに、この熱電ヒータ36によってフィルタ23の結露を防止することもできる。フィルタ23が結露してしまうと、結露した水分が障害になり十分な流量がセンサユニット100内部に吸入されなくなり、結果的に正確な検出ができなくなる。また、センサユニット100全体は断熱材(図示せず)で包むこととしている。
【0031】
センサユニット100は培養室2の壁2aに固定される。固定方法は、センサユニット100にタップ穴を設け培養室2内部からネジで固定する方法でもよいし、培養室2の壁2aにスタッドやナットを溶接し培養室2の外側からねじやナットで固定する方法でもよい。ただし、培養室2内部の密閉度を考慮すると、培養室2の壁2aに貫通穴を設けることなく、培養室2の壁2aにスタッドやナットを溶接し、外側から固定する方法が好ましい。また、フィルタ34と押さえ板35を本体モジュール22に固定する方法については、交換することを考慮するとネジ止めするのが好ましいが、ネジの頭に十字穴や六角穴のない、六角ネジを使用するのが好ましい。また、壁2aのどこにセンサユニット100を設置するかについては、特に制限はないが、測定するガスの比重や培養室2内部の気流の状態を測定し、適切な検出位置を決定するのが望ましい。
【0032】
本実施例によって、培養室2内部に浮遊している雑菌や胞子といったコンタミネーションを引き起こす原因となるものは、フィルタ23によってセンサユニット100内部への流入は阻止されるので、センサユニット100内部は常に清浄度を維持されることとなる。また、フィルタ23によってセンサユニット100内部への流入を阻止された雑菌や胞子は、過酸化水素ガス等の滅菌ガスによって死滅させることができるので、次の培養の際にコンタミネーションを引き起こすことはない。また、滅菌によって死滅した雑菌の死骸が新たな雑菌の温床となる虞がある場合は、滅菌の際、新品のフィルタ23と交換しておけば、雑菌が繁殖する可能性は皆無となる。さらに、滅菌中はポンプ21による培養室2内部空気の吸引を停止しておけば、滅菌ガスはセンサユニット100内部まで浸入することは殆ど無い。
【0033】
さらに、他の実施例にも共通する特徴として、測定のために一旦吸入された培養室2内部の空気は、センサユニット100内部の流路を通過した後、もとの培養室2内に戻されることとしている。このように、吸入した培養室2内部の空気を元に戻すことによって、培養室2内部圧力を低下させることがなくなるので、培養室2内の安定した雰囲気を維持するのが容易となる。
【0034】
上記第一の実施例のように、培養室2と吸入路26と吐出路27との間をフィルタ23によって仕切ることで、滅菌ガスの殆どの流通を防止することができるが、培養室2内を滅菌ガスの分子が拡散することによって、フィルタ23を通過しセンサ(雰囲気測定手段)19の検出部に付着してしまう場合がある。この拡散した分子の吸入路26への流入を防止するために、第2の実施例におけるセンサユニット200では、センサユニット100のセンサ19とフィルタ23との間に逆止弁28aを備えることとしている(
図5参照)。逆止弁28aは、吸入路26のセンサ19が配置されるセンサホール31とフィルタ23との間に、培養室2から吸入路26に吸入される空気の流れは通過させるが吐出される空気の流れは止める方向に配置されている。
【0035】
ここで、逆止弁28aには、クラッキング圧と呼ばれる、通過する流体が所定の圧力以上にならないと、たとえ正流であっても、弁体が流体を通過させない閾値となる圧力が設定されている。このクラッキング圧が滅菌ガスの拡散による圧力以上であり、且つポンプ21が吸入できる圧力以下の逆止弁28aを配置することで、培養室2内部の空気を吸入することができ、且つ滅菌ガスの拡散によるセンサユニット200内部への浸入を防止することができる。さらに、逆止弁28aを吸入路26のセンサ19が配置されるセンサホール31とフィルタ23との間に配置することで、センサユニット100のポンプ21内に備えていた吸入路26側の逆止弁28は不要となる。なお、分子の拡散により貫通穴27から侵入してきた滅菌ガスは、ポンプ21の吐出路27側に備えられた逆止弁28により浸入を阻止されるので、センサ19の検出部まで達することはない。
【0036】
また、本実施例のセンサユニット200では、逆止弁28aに代えて、リリーフ弁や安全弁を配置することもできる。要するに、ポンプ21で吸入される圧力と滅菌ガスの拡散により浸入してくる圧力の差を考慮して、滅菌ガスの拡散による圧力よりも、ポンプ21により吸入される気体の圧力が高くなるようにポンプ21の圧力を設定し、滅菌ガスの拡散による圧力では開かれず、ポンプ21により吸入される気体の圧力よりも低い圧力で開かれるような弁体を配置することとすればよい。ただし、逆止弁28a以外の弁体を使用する場合、ポンプ21の吸入路26側には逆止弁28が必要となる。
【0037】
また、上記実施例の場合、吸入路26と吐出路27が隣り合った位置に配置されている。この場合、吐出路27から吐出された空気が、培養室2内部を循環することなく直接吸入路26から吸入されてしまう現象が稀に発生する。この現象が発生すると、培養室2の一部分の雰囲気だけを測定し続けることとなり、培養室2全体の雰囲気を正確に測定したことにはならない。そこで、上記の実施例のセンサユニット100に、吸入と吐出の空気の流れを規制するダクト37を備えた押さえ板38を取り付けることで、吐出された空気がそのまま吸入されるのを防止することもできる(
図6参照)。このダクト37を備えることによって、吸入と吐出の空気の流れが規制され、吐出された空気が直接吸入されることなく培養室2内部に広範囲に拡散させることができる。このダクト37は、回転可能な構造とすることで、最適な吸入・吐出方向を調整することができる。
【0038】
上記の第1、第2の実施例では、本体モジュール22に吸入路26と吐出路27を形成したセンサユニット100、200を開示したが、次に、空気吸入のための吸入口と、吐出のための吐出口とを個別に配置する第3の実施例について詳細に説明していく。
図7は本発明の第3の実施例を示した断面図である。この第3の実施例であるセンサユニット300では、CO
2濃度や酸素濃度といった雰囲気測定手段19を収納する測定モジュール39と、フィルタ34を備えた吸気口や吐出口を形成するフィルタモジュール40とに分かれて配置され、測定モジュール39と各フィルタモジュール40とは継手を介してチューブによって連通されている。なお、測定モジュール39とフィルタモジュール40は、表面にアルマイト処理を施したアルミニウム製の部材により形成されたブロックである。
【0039】
測定モジュール39は、第1、第2の実施例と同様に、吸入路26と吐出路27が形成されている。この2つの貫通穴の、培養室2に対向する面とは反対側の面には、パッキンシート25を介してポンプ21が気密状態に固定されていて、雰囲気測定手段19を挿入するためのセンサホール31が、吸入路26に直交するように形成されている。また、第1、第2の実施例と同様に測定モジュール39を加熱するための電熱ヒータ36と熱電対が備えられている。さらに、測定モジュール39は、吸入路26と吐出路27の、ポンプ21が配置される側とは反対側の開口部分に、継手41が取り付けられるようにテーパー状のネジ穴が形成されていて、この2つのネジ穴には継手41がそれぞれ取り付けられている。測定モジュール39は不図示のブラケットを介してインキュベータ1内に固定されることとしている。さらに、測定モジュール39は断熱材14によって全体を包むように覆われている。
【0040】
フィルタモジュール40は、中央付近に貫通穴42が形成されていて、培養室2壁面に接する面とは反対側の開口部分には、継手41が取り付けられるようにテーパー状のネジ穴が形成されていて、このネジ穴には継手41が取り付けられている。貫通穴42の培養室2壁面側は、本実施例では継手41が取り付けられるネジ穴に比べ、直径が大きくなるように形成されている。フィルタモジュール40の培養室2壁面側には、貫通穴42より若干大きな直径の窪みが貫通穴42の全周にわたって形成されていて、この窪み部分に第1の実施例と同様の、ステンレス316鋼材からなる微小な繊維を加工・焼結したフィルタ34が押さえ板35を介してネジ留めされている。フィルタ34は第1、第2の実施例に開示されたものと同様のものが使用されているが、例えば、ポリプロピレンやポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維から形成されるものでもよい。さらに、フィルタモジュール40も測定モジュール39と同様に、フィルタ34通過後の雰囲気の圧力低下による結露に対応するため、電熱ヒータ36と熱電対が備えられていてフィルタ34とフィルタモジュール40のブロック内部空間の結露を防止している。
【0041】
フィルタモジュール40は、培養室2の壁面に形成されたフィルタモジュール40に対応する形状に開けられた開口部分に固定することとなっている。固定方法は、フィルタモジュール40にタップ穴を設け培養室2内部からネジで固定する方法でもよいし、培養室2の外側壁面にスタッドやナットを溶接し培養室2の外側から、ねじやナットで固定する方法でもよい。さらに、フィルタモジュール40と培養室2壁面との間には、パッキン23が配置されていて、培養室2内部の空気が外部に漏れるのを防ぐと同時に、外部からの空気が、培養室2及びセンサユニット300内部に流入するのを防いでいる。
【0042】
本実施例のセンサユニット300においては、吸入用と吐出用の2つのフィルタモジュール40が培養室2の壁面に配置されていて、それぞれのフィルタモジュール40と測定モジュール39とは、各継手41とチューブ43を介して空気流通可能に接続されている。この構成により、培養室2内部の空気を吸入する側の吸入路26と接続されているフィルタモジュール40を通じて、培養室2内部の空気は、外部の空気と遮断された状態でセンサユニット300内部に吸入され、吸入された空気を吐出する吐出路27と接続されているフィルタモジュール40を通じて、一端吸入された空気は、外部の空気と遮断された状態で培養室2内部へと戻されることとなる。
【0043】
なお、継手41はステンレス等の金属製のものを使用することで、培養室2内部を高温にして雑菌を死滅させる乾熱滅菌にも耐えることができる。さらに、チューブ43についても金属製やフッ素樹脂やシリコン製のものとすることで、乾熱滅菌にも耐えることができる。さらに、チューブ43の外周にシート状の電熱ヒータ36と断熱材を巻きつけることで、チューブ43内部での結露を防止することができるし、電熱ヒータ36が必要ない場合は、断熱材を巻きつけるのみとしてもよい。ポンプ21については、第1、第2の実施例と同様のものであるので、説明は省略する。
【0044】
上記構成により、第1、第2の実施例と同様に滅菌ガスや高湿度雰囲気によるセンサの検出素子の腐食を防止することが可能となり、長期の培養や滅菌を繰り返し行った後でも安定した検出が可能となる。さらに、本実施例では各フィルタモジュール40を所望の位置に個別に配置することができるので、吸入側と吐出側のフィルタモジュール40を最も好ましい位置に配置することが可能となる。また、比較的高温に弱いポンプ21とCO
2センサや酸素濃度センサといった雰囲気測定手段19を備える測定モジュール39を培養室2から離れた位置に配置できるので、培養室2内部を高温雰囲気に維持する乾熱滅菌を行うことも可能となる。さらに、吸入側のフィルタモジュール40を複数備えることとし、各フィルタモジュール40からのチューブ43を開閉弁により切り替え可能にしておけば、複数の異なる位置からの培養室2内部の雰囲気を順次測定することが可能となり、より正確な内部雰囲気の測定が可能となる。
【0045】
さらに、本実施例も第1の実施例と同様に、過酸化水素ガス等の滅菌ガスの拡散による測定モジュール39内への浸入を確実に阻止するための、測定モジュール39の雰囲気測定手段19とフィルタ23との間に逆止弁28aを備えることが可能である。
図8は逆止弁28aを備えた第4の実施例の断面図である。第4の実施例のセンサユニット400では、吸入側のフィルタモジュール40と測定モジュール39を繋ぐチューブ43に逆止弁28aを配置しているが、雰囲気測定手段19を滅菌ガスから保護することが目的であるので、逆止弁28aやリリーフ弁は、雰囲気測定手段19と吸入側のフィルタ23との間であれば、どこに配置してもよい。この第4の実施例で、第2の実施例と同様に、ポンプ21で吸入される圧力と滅菌ガスの拡散により浸入してくる圧力の差を利用して、選択的に測定モジュール39内部への気体の流入を制御することができる。
【0046】
さらに、本実施例では、フィルタモジュール40と測定モジュール39が離間した位置に配置されている構造から、雰囲気測定手段19と吸入側のフィルタ23との間に開閉弁を配置することが容易に可能である。この開閉弁は滅菌ガスに対し耐性のある部材で構成されたものを使用する。この開閉弁を培養時には開けておけば、培養室2内部の雰囲気を吸引し検出することが可能となり、滅菌時には閉じておけば、滅菌ガスの測定モジュール39への浸入を防止することが可能となる。この開閉弁は手動により操作してもよいし、電気的に開閉することとしてもよい。さらに、吸入側のみならず、吐出側の流路にもこの開閉弁を配置することも十分可能である。
【0047】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。インキュベータ1以外にも、例えば、アイソレータ、自動細胞培養装置、恒温器や各種細胞検査装置等においても本発明を適用することはでき、本実施例と同等の効果を奏することは十分可能であり、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明のものである。