特許第5736459号(P5736459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736459
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】医用画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A61B5/05 311
   A61B5/05 380
【請求項の数】22
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-529943(P2013-529943)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2012069242
(87)【国際公開番号】WO2013027540
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-184161(P2011-184161)
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 陽
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 良孝
(72)【発明者】
【氏名】五月女 悦久
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−279218(JP,A)
【文献】 特開平06−114033(JP,A)
【文献】 特開2007−319689(JP,A)
【文献】 S.Yokosawa, et al.,"Automated Scan Plane Planning for Brain MRI using 2D Scout Images",Proc.Intl.Soc.Mag.Reson.Med.18,米国,2010年 5月 7日,p.3212
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間の任意の断面を撮影可能な医用画像撮影装置であって、
撮影部位に応じて推奨する撮影断面を標準撮影断面として設定し、設定した標準撮影断面撮影断面パラメータを生成する標準撮影断面設定部と、
撮影対象の被検体における前記標準撮影断面の位置として実撮影断面位置を算出する実撮影断面位置算出部と、
算出した実撮影断面位置を推奨撮影断面としてユーザに表示する表示部と、を備え、
前記実撮影断面位置算出部は、
前記撮影対象の被検体の、スカウト画像上の解剖学的特徴構造を抽出する解剖学的特徴構造抽出部を備え、前記撮影断面パラメータと前記解剖学的特徴構造とを用いて前記実撮影断面位置を算出し、
前記標準撮影断面設定部は、
前記標準撮影断面を特定する基準となる基準情報の設定を受け付ける基準情報受付部と、
前記基準情報を、前記解剖学的特徴構造抽出部が抽出可能な解剖学的特徴構造に関連付けて前記撮影断面パラメータとして生成する撮影断面パラメータ生成部と、を備えること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、撮影部位の入力を受け付ける撮影部位受付部を備え、前記撮影部位受付部で受け付けた撮影部位に応じて示される情報に基づいて前記基準情報の入力を受け付けること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、前記基準情報として、前記標準撮影断面位置を特定する情報の指定を受け付けること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項4】
請求項3記載の医用画像撮影装置であって、
前記標準撮影断面位置を特定する情報は、当該標準撮影断面の中心を特定する情報を含み、
前記基準情報受付部は、当該中心を特定する情報として、前記解剖学的特徴構造の1つの指定を受け付け、
前記撮影断面パラメータ生成部は、前記基準情報受付部で受け付けた前記解剖学的特徴構造を前記撮影断面パラメータとすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の医用画像撮影装置であって、
前記標準撮影断面位置を特定する情報は、当該標準撮影断面の傾きを特定する情報を含み、
前記基準情報受付部は、当該傾きを特定する情報として、方位の指定を受け付け、
前記撮影断面パラメータ生成部は、前記基準情報受付部で受け付けた前記方位を前記撮影断面パラメータとすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項6】
請求項2記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、前記撮影部位受付部で受け付けた撮影部位の標準画像を表示し、当該標準画像上で前記基準情報の入力を受け付けること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項7】
請求項6記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、前記標準画像上で、前記基準情報として、前記標準撮影断面位置を特定する情報の指定を受け付けること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項8】
請求項記載の医用画像撮影装置であって、
前記標準撮影断面位置を特定する情報は、当該標準撮影断面の中心を特定する情報を含み、
前記基準情報受付部は、当該中心を特定する情報として、前記標準画像上で特定の1点の基準点の指定を受け付け、
前記撮影断面パラメータ生成部は、所定の前記解剖学的特徴構造と、当該解剖学的特徴構造から前記基準点を算出するための算出情報と、を前記撮影断面パラメータとすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の医用画像撮影装置であって、
前記標準撮影断面位置を特定する情報は、当該標準撮影断面の傾きを特定する情報を含み、
前記基準情報受付部は、当該傾きを特定する情報として、前記標準画像上で特定の2点の基準点の指定を受け付け、
前記撮影断面パラメータ生成部は、前記各基準点それぞれの近傍の前記解剖学的特徴構造と、当該各解剖学的特徴構造から前記基準点を算出するための算出情報と、を前記撮影断面パラメータとすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項10】
請求項記載の医用画像撮影装置であって、
前記算出情報は、形状関数であること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項11】
請求項記載の医用画像撮影装置であって、
前記算出情報は、前記各基準点の、前記各近傍の解剖学的特徴構造からの差分値であること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項12】
請求項8または9記載の医用画像撮影装置であって、
前記算出情報は、前記基準点の周辺の組織構造パターンであること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項13】
請求項6から12いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、前記標準画像として表示する画像の指定を受け付ける画像指定部をさらに備え、
前記画像指定部で指定された画像を前記標準画像として表示すること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項14】
請求項6から13いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、複数の前記標準撮影断面の前記基準情報を受け付け、
先に前記基準情報の入力を受け付けている場合、直前に受け付けた基準情報で特定される標準撮影断面の画像を、前記標準画像とすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項15】
請求項14記載の医用画像撮影装置であって、
前記撮影断面パラメータ生成部は、前記基準情報受付部を介して基準情報を受け付ける毎に、当該基準情報から撮影断面パラメータを生成し、
前記実撮影断面位置算出部は、先に前記実撮影断面位置が算出されている場合、直前に算出した実撮影断面位置の画像を前記スカウト画像とすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項16】
請求項6から15いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、撮影範囲を特定する撮影パラメータの入力を受け付ける撮影パラメータ受付部を備え、
前記撮影パラメータ受付部で受け付けた撮影パラメータに応じて、前記標準画像上に当該撮影パラメータで特定される撮影範囲を表示すること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項17】
請求項記載の医用画像撮影装置であって、
前記基準情報受付部は、撮影スライスを指定するスライス指定部をさらに備え、
前記基準点は、前記標準撮影断面の、前記スライス指定部で受け付けた撮影スライスの中心とすること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項18】
請求項1から17いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
生成された前記撮影断面パラメータを登録する記憶手段をさらに備え、
前記実撮影断面位置算出部は、前記実撮影断面位置を、部位毎に予め定めた撮影断面位置計算アルゴリズムに従って算出し、
前記撮影断面位置計算アルゴリズムは、算出時に前記記憶手段に登録された前記撮影断面パラメータを参照すること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項19】
請求項1から17いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
前記実撮影断面位置算出部は、前記実撮影断面位置を、部位毎に予め定めた撮影断面位置計算アルゴリズムに従って算出し、
前記撮影断面位置計算アルゴリズムは、前記撮影断面パラメータが生成される毎に、当該撮影断面パラメータを反映した撮影断面位置計算アルゴリズムに更新されること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項20】
請求項1から19いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
前記実撮影断面位置算出部は、前記解剖学的特徴構造抽出部が抽出する解剖学的特徴構造の、抽出精度の高低を判定する精度判定部をさらに備え、
前記精度判定部の判定結果が低の場合、前記表示にアラートを表示すること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項21】
請求項1から20いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
前記実撮影断面位置算出部が算出した実撮影断面位置の調整を学習データとして受け付ける調整受付部と、
前記受け付けた学習データを解析し、前記撮影断面パラメータにフィードバックする学習部と、をさらに備えること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項22】
請求項1から21いずれか1項記載の医用画像撮影装置であって、
撮影断面位置とは独立した撮影断面位置に関連する位置を、標準関連位置として設定し、設定した標準関連位置から関連位置パラメータを生成する関連位置基準設定部と、
前記関連位置パラメータから、前記撮影対象の被検体における前記関連する位置として実関連位置を算出する実関連位置算出部と、をさらに備えること
を特徴とする医用画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置等の医用画像撮影装置を用いた検査における撮影断面の位置決め技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元空間上で所望の位置および傾きの断面を撮影し、診断に用いる医用画像診断装置がある。中でも、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging、以下、MRI)装置は、主にプロトンの核磁気共鳴現象を利用した医用画像診断装置であり、撮影部位に制限が無く、非侵襲に任意の断面の撮影が可能である。
【0003】
一般には、静磁場に置かれた被検体にスライス傾斜磁場を印加すると同時に特定の周波数をもつ高周波磁場を印加して、撮影したい断面内の核磁化を励起させる。次に、位相エンコード傾斜磁場およびリードアウト傾斜磁場の印加により励起された核磁化に平面位置情報を与え、核磁化が発生する核磁気共鳴信号を計測する。核磁気共鳴信号の計測は、k空間と呼ばれる計測空間が充填されるまで繰り返し行う。k空間に充填された信号は、逆フーリエ変換により画像化される。各傾斜磁場の磁場勾配方向は、直交三軸方向に対応する三系統の傾斜磁場コイルの制御により3次元空間の任意方向に設定できる。MRI装置では、この傾斜磁場の空間的制御により任意断面の撮影を実現している。
【0004】
MRI装置のような任意断面の撮影が可能な医用画像診断装置では、検査時に、診断用画像の撮影断面とその位置を設定する必要がある。一般的に、MRI装置による検査では、はじめに、スカウト撮影と呼ばれる撮影位置設定用の撮影を実行し、取得したスカウト画像上で診断用画像の撮影断面とその位置(撮影断面位置)を設定する。
【0005】
撮影断面位置は、撮影対象部位や疾患によって基準が定められており、スカウト画像上の解剖組織構造を目印として設定される。一般に、撮影断面位置は、ユーザインタフェースを介してスカウト画像上に表示される撮影範囲をマニュアル操作し、設定する。撮影断面位置の設定は、被検体のセッティング時の姿勢や解剖組織構造の個体差に依存するため、新たな被検体を撮影する度に行う必要がある。
【0006】
撮影断面位置設定の操作性向上のため、自動的に撮影断面位置を設定する手法が提案されている。自動的に設定する手法には、例えば、自動的に撮影断面位置を決定する診断面を、その決定アルゴリズムとともに数種類予め登録し、ユーザが選択するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、標準的な画像(標準画像)上で設定した撮影範囲を標準プロトコルとして保存し、個々の被検者に合わせて調整するものがある(例えば、特許文献2参照)。この場合、調整は、変換マトリクスを用いて写像することにより行う。さらに、画像認識を用い、自動的に設定するものがある(例えば、非特許文献1参照)。自動化による効果としては、操作性の向上だけでなく,フォローアップ検査時の撮影断面の再現性向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−319335号公報
【特許文献2】特開2005−125099号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Itti L, Chang L, Ernst T著,「Automated Scan Prescription for Brain MRI」 Magnetic Resonance in Medicine, 2001 45;p.486−494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載の手法は、予め自動設定される診断用の撮影断面位置が規定されているため、自動設定される撮影断面位置をユーザの好みに合わせて変更できない。また、特許文献1に記載の手法は、予め用意されたアルゴリズムをユーザが選択することにより、撮影断面位置を自動的に指定可能であるが、用意されている診断面に限られ、自由度は低い。
【0010】
一方、特許文献2に記載の手法は、統計的なデータセットを解析することにより、ユーザの好みに合わせた撮影断面位置を設定することができる。しかし、撮影断面位置設定には複数のデータが必要であるため、設定の手間が大きい。また、この手法では、撮影断面位置情報を含む各データセットを標準画像における撮影断面位置へと変換する処理と、標準画像上での撮影断面位置を撮影対象の被検体の画像上の撮影断面位置に変換する処理と、が必要となる。一般に、撮影断面位置はある限定した組織を目印として定められるが、この変換処理では画像全体の個体差分情報が反映される。従って、撮影断面位置の設定基準と関係のない個体差の影響を受けやすく、撮影断面位置の精度が低下する。
【0011】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、MRI装置等の3次元空間の任意の面を撮影断面として設定可能な医用画像撮影装置において、自動設定する撮影断面を、ユーザの好みに応じて設定可能とするとともに、設定された撮影断面の、撮影対象の被検体に対する位置を、精度よく自動的に決定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、撮影部位毎に、ユーザが設定した撮影断面を特定する基準情報を、当該撮影部位の解剖学的特徴構造に対応づけて撮影断面パラメータを生成する。実際の撮影時は、撮影断面パラメータと、スカウト撮影により得た撮影対象の被検体の解剖学的特徴構造とを用いて、撮影対象の被検体の撮影断面位置を決定する。
【0013】
具体的には、3次元空間の任意の断面を撮影可能な医用画像撮影装置であって、撮影部位に応じて推奨する撮影断面を標準撮影断面として設定し、設定した標準撮影断面から撮影断面パラメータを生成する標準撮影断面設定部と、撮影対象の被検体における前記標準撮影断面の位置として実撮影断面位置を算出する実撮影断面位置算出部と、算出した実撮影断面位置を推奨撮影断面としてユーザに表示する表示部と、を備え、前記実撮影断面位置算出部は、前記撮影対象の被検体の、スカウト画像上の解剖学的特徴構造を抽出する解剖学的特徴構造抽出部と、を備え、前記撮影断面パラメータと前記解剖学的特徴構造とを用いて前記実撮影断面位置を算出し、前記標準撮影断面設定部は、前記標準撮影断面を特定する基準となる基準情報の設定を受け付ける基準情報受付部と、前記基準情報を、前記解剖学的特徴構造抽出部が抽出可能な解剖学的特徴構造に関連付けて前記撮影断面パラメータとして生成する撮影断面パラメータ生成部と、を備えることを特徴とする医用画像撮影装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、MRI装置等の3次元空間の任意の面を撮影断面として設定可能な医用画像撮影装置において、自動設定する撮影断面を、ユーザの好みに応じて設定できるとともに、設定された撮影断面の、撮影対象の被検体に対する位置を、精度よく自動的に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一の実施形態のMRI装置のブロック図である。
図2】第一の実施形態の計算機の機能ブロック図である。
図3】第一の実施形態の基本情報を受け付けるユーザインタフェース例を説明するための説明図である。
図4】第一の実施形態の標準撮影断面設定処理のフローチャートである。
図5】第一の実施形態の検査開始から実撮影断面位置算出処理終了までの処理のフローチャートである。
図6】第一の実施形態の基本情報を受け付けるユーザインタフェースの他の例を説明するための説明図である。
図7】第一の実施形態の標準撮影断面設定処理の他の例のフローチャートである。
図8】第一の実施形態の基本情報を受け付けるユーザインタフェースの他の例を説明するための説明図である。
図9】第一の実施形態の基本情報を受け付けるユーザインタフェースの他の例を説明するための説明図である。
図10】第一の実施形態の変形例の検査開始から実撮影断面位置算出処理終了までの処理のフローチャートである。
図11】第二の実施形態の計算機の機能ブロック図である。
図12】第二の実施形態の検査開始から実撮影断面位置算出処理終了までの処理のフローチャートである。
図13】第三の実施形態の計算機の機能ブロック図である。
図14】第四の実施形態の計算機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施形態では、3次元空間の任意の断面を撮影可能な医用画像撮影装置として、磁気共鳴イメージング(MRI)装置を用いる場合を例にあげて説明する。
【0017】
本実施形態のMRI装置は、上述のように、静磁場に置かれた被検体に高周波磁場を印加して、被検体内の核磁化を励起し、発生する核磁気共鳴信号(エコー信号)を計測する。このとき、傾斜磁場を印加して計測する磁気共鳴信号に位置情報を与え、画像化(撮影)する。
【0018】
図1は、これを実現する、本実施形態のMRI装置100の典型的な構成を示すブロック図である。本実施形態のMRI装置100は、静磁場を発生するマグネット101と、傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル102と、被検体(生体)103に高周波磁場パルス(以下、RFパルス)を照射するRFコイル107と、被検体103から発生するエコー信号を検出するRFプローブ108と、マグネット101の発生する静磁場空間内で被検体(例えば、生体)103を載置する寝台(テーブル)115と、を備える。
【0019】
さらに、本実施形態のMRI装置100は、傾斜磁場コイル102を駆動する傾斜磁場電源105と、RFコイル107を駆動する高周波磁場発生器106と、RFプローブ108で検出したエコー信号を受信する受信器109と、傾斜磁場電源105と高周波磁場発生器106とに命令を送り、それぞれ傾斜磁場および高周波磁場を発生させるとともに、検波の基準とする核磁気共鳴周波数を受信器109にセットするシーケンサ104と、検波された信号に対して信号処理を施す計算機110と、計算機110での処理結果を表示する表示装置111と、同処理結果を保持する記憶装置112と、ユーザからの指示を受け付ける入力装置116と、を備える。また、記憶装置112には、計算機110における処理に必要な各種のデータが保持される。
【0020】
また、MRI装置100は、静磁場均一度を調節する必要があるときには、シムコイル113と、シムコイル113を駆動するシム電源114をさらに備えてもよい。シムコイル113は、複数のチャネルからなり、シム電源114から供給される電流によりにより静磁場不均一を補正する付加的な磁場を発生する。静磁場均一度調整時にシムコイル113を構成する各チャネルに流す電流は、シーケンサ104により制御される。
【0021】
以上の構成を有するMRI装置100では、シーケンサ104の制御により、RFパルスがRFコイル107を通じて被検体103に印加されるとともに、スライス選択や位相エンコードなどの位置情報をエコー信号に与えるための傾斜磁場パルスが傾斜磁場コイル102によって印加される。また、被検体103から発生した信号はRFプローブ108によって受波され、検波された信号は計算機110に送られ、ここで画像再構成などの信号処理が行われる。なお、記憶装置112には、信号処理の結果だけでなく、必要に応じて、検波された信号自体、撮影条件等を記憶させてもよい。
【0022】
また、計算機110は、受信した信号を処理する信号処理だけでなく、MRI装置100全体の動作の制御等を行う。例えば、予めプログラムされたタイミング、強度で各部が動作するようシーケンサ104に指示を出し、MRI装置100を構成する各部の動作を制御し、計測を行う。上記プログラムのうち、特に、高周波磁場、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したものはパルスシーケンスと呼ばれる。
【0023】
MRI装置100では、パルスシーケンスに設定する高周波磁場、傾斜磁場のタイミングや強度を制御することにより、撮影対象の被検体の任意の撮影断面を撮影できる。一般に撮影対象の被検体における撮影断面の位置を決定し、パルスシーケンスに反映することにより、所望の撮影断面を撮影する。
【0024】
また、本実施形態の計算機110は、入力装置116および表示装置111などのユーザインタフェースを制御し、ユーザに処理結果を提示する、ユーザからの入力を受け付けるといったユーザインタフェース処理を行う。また、MRI装置100で取得したエコー信号を処理し、画像を再構成する。あるいは、エコー信号を処理し、中心周波数やRF照射強度等の撮影に必要な制御値を算出し、シーケンサ104に送信する。
【0025】
さらに、本実施形態の計算機110は、撮影部位毎に、推奨する撮影断面を、ユーザの好みに合わせて指定可能とするとともに、指定された撮影断面を、実際の撮影時に各撮影対象の被検体で精度よく再現する。これを実現するために、本実施形態の計算機110は、図2に示すように、撮影部位に応じて推奨する撮影断面を標準撮影断面として設定し、設定した標準撮影断面から撮影断面パラメータを生成する標準撮影断面設定部210と、撮影対象の被検体における標準撮影断面の位置として、実際の撮影時に撮影断面位置とする実撮影断面位置を算出する実撮影断面位置算出部220と、算出した実撮影断面位置を推奨撮影断面位置としてユーザに表示する表示部230と、を備える。
【0026】
ここで、標準撮影断面は、撮影部位の解剖学的特徴構造により特定される撮影断面で、被検体によらずに撮影部位毎に予め設定されている断面である。例えば、頭部であれば、正中面、鼻根部と橋下端部を結ぶOMラインやAP−ACライン、ドイツ水平面に沿ったアキシャル面などである。また、腰椎であれば、椎体を中心とするサジタル面や、椎間板と平行なアキシャル面などである。膝であれば、大腿骨内側顆と大腿骨外側顆とを結んだラインに平行かつ関節面に垂直となるコロナル面や、そのコロナル面上において大腿骨内側顆と外側顆とを結んだラインに垂直なサジタル面などである。肩であれば、棘上筋に平行なコロナル面や、そのコロナル面上において骨頭と肩甲骨と結ぶラインに垂直なサジタル面などである。心臓であれば、左心室の長軸に沿ったサジタル面や、短軸に沿ったアキシャル面である。
【0027】
また、解剖学的特徴構造は、例えば、撮影部位が頭部であれば、正中線、頭部輪郭、脳輪郭、脳梁、橋、脳幹、下垂体、斜台、脊椎であれば脊髄神経、椎間板、椎骨、膝であれば、大腿骨内側顆、大腿骨外側顆、大腿骨、頸骨の位置、大腿骨内側顆と大腿骨外側顆とを結んだ線、大腿骨と頸骨と間の関節面、肩であれば、棘上筋、骨頭、肩甲骨、肩峰、鎖骨の位置、棘上筋に平行な線、上腕骨に沿ったライン、骨頭と肩甲骨間の関節面の接線、骨頭と肩甲骨間を結ぶラインなどである。ただし、本実施形態では、実撮影断面位置算出部220が抽出可能な解剖学的特徴構造を用いる。
【0028】
本実施形態の実撮影断面位置算出部220は、撮影対象の被検体103の撮影部位のスカウト撮影を実行し、取得したデータ上で標準撮影断面設定部210により設定された標準撮影断面の、撮影対象の被検体103における位置(実撮影断面位置)を算出する。
【0029】
本実施形態の実撮影断面位置算出部220は、撮影対象の被検体103の、撮影部位の、スカウト画像上の解剖学的特徴構造を抽出する解剖学的特徴構造抽出部221、を備える。そして、実撮影断面位置算出部220は、標準撮影断面設定部210が生成した撮影断面パラメータと、抽出した解剖学的特徴構造とを用い、撮影対象の被検体の実撮影断面位置を算出する。
【0030】
本実施形態の実撮影断面位置算出部220は、予め記憶装置112に登録される撮影断面位置計算アルゴリズムに従って実撮影断面位置を算出する。実撮影断面位置の算出の中で、解剖学的特徴構造抽出部221は、この撮影断面位置計算アルゴリズムに従って解剖学的特徴構造を抽出する。なお、撮影断面位置計算アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造を特定する情報は、撮影断面位置計算アルゴリズムに応じて予め定められ、撮影部位に対応づけて記憶装置112に登録される。
【0031】
本実施形態の標準撮影断面設定部210は、ユーザから、撮影部位毎の、標準撮影断面を特定する基準となる基準情報を受け付ける。基準情報は、部位毎の、予め特定される解剖学的特徴構造に関連付けられ、撮影断面パラメータとして生成される。生成された撮影断面パラメータは、撮影部位に対応づけて記憶装置112に登録される。
【0032】
これを実現するため、本実施形態の標準撮影断面設定部210は、撮影部位毎に、標準撮影断面を特定する基準となる基準情報の設定を受け付ける基準情報受付部211と、受け付けた基準情報を、当該撮影部位の、解剖学的特徴構造抽出部221が抽出可能な解剖学的特徴構造に関連付けて撮影断面パラメータとして生成する撮影断面パラメータ生成部212と、を備える。
【0033】
本実施形態の基準情報受付部211は、基準情報を受け付けるためのユーザインタフェースを生成し、表示装置111に表示し、当該インタフェースを介して基準情報を受け付ける。ユーザは、入力装置116を用い、基準情報を入力する。ユーザインタフェースは、撮影部位に対応付けて記憶装置112に保持されるユーザインタフェース画面データに基づいて生成される。
【0034】
図3に、本実施形態の基準情報を受け付けるためのユーザインタフェース300の一例を示す。本実施形態のユーザインタフェース300は、撮影部位の入力を受け付ける撮影部位受付領域310と、撮影部位に応じて示される情報に基づいて基準情報を受け付ける基準情報受付領域320と、入力完了の指示を受け付ける完了指示受付領域330とを備える。
【0035】
また、被検体103に対する撮影断面位置は、撮影の中心と、断面の傾きとを規定することにより、一意に定めることができる。従って、本実施形態では、基準情報として、撮影範囲の中心を特定する情報として1つの解剖学的特徴構造と、断面の傾きを規定する情報として標準撮影断面の方位を特定する断面方位との入力を受け付ける。これらを受け付けるため、本実施形態の基準情報受付領域320は、それぞれ、解剖学的特徴構造受付領域321と、断面方位受付領域322とを備える。
【0036】
本実施形態では、1つの解剖学的特徴構造と断面方位とのみで標準撮影断面を特定する。従って、ここでは、軸断面(サジタル面、コロナル面、アキシャル面)のいずれかを断面方位として受け付ける。
【0037】
なお、本実施形態の基準情報受付部211は、完了指示受付領域330を介して入力完了の指示を受け付けると、その時点で、基準情報受付領域320に入力されている基準情報を、ユーザが入力した基準情報として受け付ける。
【0038】
なお、本実施形態では、基準情報受付部211が受け付ける基準情報は、上述のように、1の解剖学的特徴構造と断面方位である。従って、本実施形態の撮影断面パラメータ生成部212は、基準情報として受け付けた1の解剖学的特徴構造と断面方位とをそのまま撮影断面パラメータとする。
【0039】
以下、本実施形態の標準撮影断面設定部210による、標準撮影断面設定処理の流れを説明する。図4は、本実施形態の標準撮影断面設定処理の処理フローである。
【0040】
標準撮影断面設定処理開始の指示を受け付けると、基準情報受付部211は、ユーザインタフェース300を作成し、表示装置111に表示する(ステップS1101)。
【0041】
基準情報受付部211は、撮影部位受付領域310を介して撮影部位の入力を受け付ける(ステップS1102)。ここでは、予め選択可能な部位を特定する情報(部位名)を表示し、ユーザに選択させることにより、撮影部位の入力を受け付ける。選択可能な部位を特定する情報は、予め記憶装置112に登録される。
【0042】
次に、基準情報受付部211は、選択された撮影部位に対応づけて記憶装置112に登録される解剖学的特徴構造(組織)を抽出し、ユーザに選択可能な形式で、解剖学的特徴構造受付領域321に提示する(ステップS1103)。選択可能な形式とは、例えば、メニュー形式、リスト形式、などである。例えば、部位として腰椎が選択された場合、椎体、脊髄神経、椎間板をユーザに提示する。
【0043】
ユーザは提示された解剖学的特徴構造(組織)の中から、撮影断面を設定したい解剖学的特徴構造(組織)を選択する。ここでは、例えば、椎体を選択する。基準情報受付部211は、解剖学的特徴構造受付領域321を介して解剖学的特徴構造(組織)の入力を受け付ける(ステップS1104)。
【0044】
次に、ユーザは、断面方位受付領域322を介して撮影断面の方位を設定する。基準情報受付部211は、断面方位受付領域322を介して入力された撮影断面の方位を受け付ける(ステップS1105)。以上の手順で、ユーザは、標準撮影断面を特定するために必要な基準情報を入力する。
【0045】
基準情報受付部211がユーザから完了指示受付領域330を介して入力完了の指示を受け付けると(ステップS1106)、撮影断面パラメータ生成部212は、受け付けた、解剖学的特徴構造(組織)を特定する情報(タグ;以下、単に解剖学的特徴構造とも呼ぶ)と、断面の方位とを、撮影断面パラメータとして生成し、記憶装置112に登録する(ステップS1107)。
【0046】
以上の手順により、本実施形態の標準撮影断面設定部210は、ユーザから基準情報の入力を受け付け、撮影断面パラメータを生成する。
【0047】
次に、上記手順で設定された標準撮影断面の、実際に撮影する撮影対象の被検体103における位置(実撮影断面位置)の算出方法を説明する。本実施形態では、実撮影断面位置算出部220が撮影断面パラメータを用いて算出する。
【0048】
実撮影断面位置算出部220による実撮影断面位置算出処理は、MRI装置100による検査の中の処理である。実撮影断面位置算出部220による実撮影断面位置算出処理に先立ち、MRI装置100による検査の流れの概要を説明する。
【0049】
一般に、MRI装置100による検査では、スカウト画像を取得するスカウト撮影、静磁場不均一の調整やコイル感度補正のための準備撮影、決定された撮影断面の診断用の画像を取得する本撮影が順次実行される。本実施形態の実撮影断面位置算出処理は、スカウト撮影後、本撮影前に実行される。
【0050】
各撮影は1以上の計測で構成され、各計測は、パルスシーケンスおよび撮影パラメータに従って行われる。各検査における、撮影順、各撮影内での計測順、計測種別は、プロトコルにより規定される。プロトコルは、例えば、頭部、腰椎、膝、肩といった検査部位(撮影部位)や対象とする疾患に応じて作成され、各撮影で実行するパルスシーケンスとその撮影パラメータを含む。プロトコルは、検査の実行に先立ち、ユーザにより作成され、記憶装置112に記憶される。MRI装置100による検査は、撮影部位に応じて作成されるプロトコルに従って実行される。
【0051】
各撮影に用いるパルスシーケンスや、ユーザから入力される撮影パラメータ等は、記憶装置112に登録される。登録されるパルスシーケンスには、例えば、FSE(Fast Spin Echo)、GrE(GradientEcho)、EPI(Echo Planar Imaging)、などがあり、撮影パラメータには、TR(繰り返し時間)、TE(エコー時間)、FOV(撮影視野)、スライス厚、スライス枚数、複数の断面を撮影する場合は、その撮影順序などがある。
【0052】
なお、プロトコルは、検査毎にユーザがユーザインタフェースを介して作成し、記憶装置112に登録するよう構成してもよいし、予め、検査部位および/または疾患毎に作成され、記憶装置112に保存されていてもよい。予め保存される場合は、ユーザが、検査毎に保存されているプロトコルの中から抽出し、使用するプロトコルを決定する。なお、検査部位(撮影部位)毎に、最適なプロトコルを対応付けて記憶装置112に保存し、ユーザが撮影パラメータ設定時に検査部位(撮影部位)を指定した際、当該検査部位(撮影部位)に対応づけて記憶されているプロトコルが、最適なプロトコルの初期値として抽出されるよう構成してもよい。
【0053】
本実施形態では、登録されるプロトコルは、実撮影断面位置算出処理を実行するか否か、実行時に用いる撮影断面位置計算アルゴリズム、といった実撮影断面位置算出処理に関する情報をさらに含む。また、実撮影断面位置算出処理が実行される場合、実撮影断面位置計算に最適なスカウト撮影の手順を規定した最適スカウト撮影情報が登録される。具体的には、スカウト撮影で使用するパルスシーケンス、撮影パラメータ、撮影する断面、複数の断面を撮影する場合は、その撮影順が、登録される。実撮影断面位置算出処理を実行する設定は、プロトコル作成時の最適なスカウト撮影の選択および設定と同期させるように構成してもよい。また、実撮影断面位置算出処理を実行するか否かを決定するパラメータを本撮影の撮影パラメータに追加し、実行が選択された場合に、最適なスカウト撮影をプロトコルに登録するよう構成してもよい。
【0054】
なお、各撮影部位に対応した撮影断面位置計算アルゴリズム、撮影部位毎の実撮影断面位置算出処理に応じた最適なスカウト撮影の条件は、記憶装置112に登録される。
【0055】
次に、本実施形態の検査の流れを、実撮影断面位置算出部220による実撮影断面位置算出処理の終了までを取り上げ、説明する。図5は、本実施形態の検査のフローである。ここでは、脊椎のルーチン検査の場合を例にあげて説明する。
【0056】
はじめに、計算機110は、ユーザから検査部位(撮影部位)の指定を受け付ける(ステップS1201)。例えば、腰椎と、撮影部位の指定を受け付ける。
【0057】
計算機110は、指定を受けた検査部位(撮影部位)に対応づけて、記憶装置112に登録されるプロトコルを呼び出す(ステップS1202)。ここでは、腰椎と指定を受けているため、腰椎検査用のプロトコルを呼び出す。
【0058】
そして、計算機110は、指定を受けた検査部位(撮影部位)に対応づけて、標準撮影断面が設定されているか否かを判別する(ステップS1203)。腰椎検査であれば、腰椎検査に関する標準撮影断面の設定が完了しているか否かを判別する。上述のように、本実施形態では、標準撮影断面設定部210は、撮影部位毎の標準撮影断面が設定されると、基準情報から算出した撮影断面パラメータを生成し、撮影部位に対応付けて記憶装置112に登録する。従って、ここでは、計算機110は、記憶装置112に、撮影部位に対応づけて撮影断面パラメータが登録されているか否かを判別する。そして、登録されていれば、そのまま処理を進め、未登録の場合、標準撮影断面設定部210に、当該撮影部位の標準撮影断面設定処理を行わせる(ステップS1204)。
【0059】
次に、計算機110は、呼び出したプロトコルが実撮影断面位置算出処理を実行する設定になっているかを判別する(ステップS1205)。実行する設定になっている場合、そのまま処理を進め、未設定の場合、処理を実行するようプロトコルの設定を変更する(ステップS1206)。
【0060】
次に、計算機110は、プロトコルの設定に従ってスカウト撮影を実行し、撮影対象の被検体103の計測データ(スカウト画像)を取得する(ステップS1207)。
【0061】
次に、解剖学的特徴構造抽出部221は、ステップS1202で抽出したプロトコルに登録される撮影断面位置計算アルゴリズムを用いて、ステップS1207で取得した計測データ(スカウト画像)から、撮影対象の被検体103の解剖学的特徴構造を抽出する(ステップS1208)。ここでは、パターンマッチング処理やエッジ抽出処理など一般的な画像処理手法にて、当該撮影部位の組織の形状、空間的な位置、重心座標などを、解剖学的特徴構造として抽出する。例えば、脊椎のルーチン検査の場合、椎体、椎間板、脊髄神経の空間的な位置や形状、重心座標などを算出する。
【0062】
次に、実撮影断面位置算出部220は、抽出した解剖学的特徴構造(組織)に基づいて、撮影断面パラメータを用い、実撮影断面位置を算出する(ステップS1209)。本実施形態では、撮影断面の中心となる解剖学的特徴構造(組織)と断面の方位とが撮影断面パラメータとして登録されている。従って、撮影対象の被検体103上で、中心が、撮影断面パラメータとして指定されている解剖学的特徴構造(組織)の重心座標に等しく、かつ、方位が、撮影断面パラメータで指定されている断面方位、となる断面を、実撮影断面位置として決定する。例えば、撮影断面パラメータとして、椎体とサジタル面とが登録されている場合、中心が椎体の重心座標でかつ方位がサジタル面となる撮影断面を算出する。
【0063】
そして、表示部230は、実撮影断面位置算出部220が算出した実撮影断面位置を、推奨撮影断面位置として、表示装置111に表示される位置決め画像(スカウト画像)上に表示する(ステップS1210)。
【0064】
以上の処理によりユーザに推奨撮影断面位置が提示される。ユーザは提示された推奨撮影断面位置を見て、適切であれば、そのまま、必要であれば、調整を行い、本撮影を実行する。
【0065】
なお、以上の処理において、ステップS1204の標準撮影断面設定処理は、対象部位ごとに一度だけ実行すれば良い。一方、ステップS1209の実撮影断面位置算出処理は、検査毎に、撮影部位毎に行う。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の医用画像撮影装置は、MRI装置100といった3次元空間の任意の面を撮影断面として設定可能な医用画像撮影装置であって、撮影部位に応じて推奨する撮影断面を標準撮影断面として設定し、設定した標準撮影断面から撮影断面パラメータを生成する標準撮影断面設定部210と、撮影対象の被検体103における前記標準撮影断面の位置として実撮影断面位置を算出する実撮影断面位置算出部220と、算出した実撮影断面位置を推奨撮影断面としてユーザに表示する表示部230と、を備え、前記実撮影断面位置算出部220は、前記撮影対象の被検体103の、スカウト画像上の解剖学的特徴構造を抽出する解剖学的特徴構造抽出部221を備え、前記撮影断面パラメータと前記解剖学的特徴構造とを用いて前記実撮影断面位置を算出し、前記標準撮影断面設定部210は、前記標準撮影断面を特定する基準となる基準情報の設定を受け付ける基準情報受付部211と、前記基準情報を、前記解剖学的特徴構造抽出部221が抽出可能な解剖学的特徴構造に関連付けて前記撮影断面パラメータとして生成する撮影断面パラメータ生成部212と、を備える。
【0067】
このように、本実施形態によれば、基準情報受付部211を介して、標準撮影断面を規定する情報を入力することにより、標準撮影断面を設定する。従って、ユーザは、自動設定する撮影断面を、ユーザの好みに応じて設定できる。また、ユーザが標準的な画像上で設定する、撮影部位毎の標準撮影断面を特定する基準情報を、当該撮影部位の解剖学的特徴構造に関連付けて登録する。そして、実際の撮影時は、撮影対象の被検体103の解剖学的特徴構造に基づいて、標準撮影断面の、当該被検体103における位置を特定する。従って、設定された標準撮影断面の、撮影対象の被検体103に対する位置を、精度よく自動的に決定できる。
【0068】
すなわち、ユーザは新しい被検体を撮影する度に、撮影断面の位置調整をする必要がなくなる。これにより、必要な場合にのみ対象部位の撮影断面を設定すれば良いため、設定に対する負担を軽減することができる。
【0069】
また、基準情報受付部211は、撮影部位の入力を受け付ける撮影部位受付部(撮影部位受付領域310)を備え、撮影部位受付部で受け付けた撮影部位に応じて示される情報に基づいて基準情報の入力を受け付けてもよい。そして、基準情報受付部211は、前記基準情報の中の標準撮影断面の中心を特定する情報として、解剖学的特徴構造の1つの指定を受け付ける。撮影断面パラメータ生成部212は、基準情報受付部211で受け付けた解剖学的特徴構造を撮影断面パラメータとしてもよい。また、基準情報受付部211は、基準情報の中の標準撮影断面の傾きを特定する情報として、当該断面方位の指定を受け付け、撮影断面パラメータ生成部212は、基準情報受付部211で受け付けた断面方位を撮影断面パラメータとしてもよい。
【0070】
従って、ユーザは、自動設定する撮影断面をユーザの好みに応じて容易に設定できる。
【0071】
なお、上記実施形態では、標準撮影断面の傾きを規定する情報としてアキシャル面、コロナル面、サジタル面といった軸断面を指定するよう構成しているが、これに限られない。標準撮影断面が特定可能なものであればよい。
【0072】
例えば、解剖学的特徴構造受付領域321を介して選択された解剖学的特徴構造(組織)に対して、最も推奨される撮影面の方位を選択可能なように構成してもよい。この場合、予め抽出可能な組織それぞれに対応付けて最適な撮影面(最適方位面)を記憶装置112に登録しておく。
【0073】
例えば、椎体の場合、最適方位面は、脊髄神経に平行かつ椎体の中心を通る平面である。また、椎間板の場合、最適方位面は、椎間板の傾きに平行な面である。これらの最適方位面は、撮影断面位置計算アルゴリズムにて抽出された解剖学的特徴構造に基づいて設定する。
【0074】
これにより、検査に不慣れなユーザでも、最適な撮影断面を設定することが可能となる。
【0075】
また、撮影部位の指定に応じて、断面方位受付領域322には初期値として最適な断面方位が表示、入力されるよう構成してもよい。このように構成することにより、解剖学的特徴構造のみを入力することで基準情報の入力を終えることができる。従って、標準撮影断面設定処理におけるユーザの入力を簡易化でき、操作性が向上する。
【0076】
また、上記実施形態では、標準撮影断面を規定する基準情報として、解剖学的特徴構造(組織)と、断面方位とを用いているが、これに限られない。例えば、1の断面を特定可能な複数の解剖学的特徴構造を基準情報として入力するよう構成してもよい。この場合、入力された解剖学的特徴構造を撮影断面パラメータとする。
【0077】
また、基本情報として、標準撮影断面の撮影中心及び方位を規定する解剖学的特徴構造を指定するように構成してもよい。例えば、撮影中心を規定する解剖学的特徴構造は、抽出可能な解剖学的特徴構造の座標から選択し、指定する。方位を規定する解剖学的特徴構造として、磁場の方向で決定される装置座標系や抽出可能な解剖学的特徴構造にて規定される座標点、ベクトル、平面を組み合わせて、撮影面の第一ベクトルおよび第二ベクトルを決定可能な解剖学的特徴構造を指定する。それぞれ指定された解剖学的特徴構造と、第一ベクトル、第二ベクトルを撮影断面パラメータとする。
【0078】
例えば、標準撮影断面に直交する直交組織と平行な平行組織とを基準情報の第一ベクトルおよび第二ベクトルとする場合の選択例を、腰椎検査を例にあげて説明する。
【0079】
例えば、腰椎検査において椎体の撮影断面を設定する場合、撮影中心として、第三腰椎中心を選択し、方位として、コロナル画像上の脊髄神経方向(第一ベクトル)とアキシャル画像上の椎体中心と脊髄神経を結ぶ直線の方向(第二ベクトル)とを選択する。
【0080】
また、腰椎検査において椎間板の撮影断面を設定する場合、撮影中心として、第二と第三腰椎の間の椎間板中心を選択し、方位として、コロナル画像上の第二と第三腰椎の間の椎間板の傾き(第一ベクトル)およびサジタル画像上の第二と第三腰椎の間の椎間板の傾き(第二ベクトル)を選択する。
【0081】
また、頭部検査においてOMラインに沿った撮影断面を設定する場合、撮影中心として、脳中心を選択し、方位として、正中面に垂直な方向(第一ベクトル)および正中面画像上におけるOMライン方向(第二ベクトル)を設定する。この場合、正中面画像上の鼻根部座標と橋下端座標とを選択し、これらを結ぶ方位を第二ベクトルとして設定するよう構成してもよい。
【0082】
また、肝臓検査の撮影断面を設定する場合、撮影中心として、肝臓の中心を選択し、方位として、装置座標のx軸(第一ベクトル)およびy軸(第二ベクトル)を設定する。ここで、装置座標系は、例えば、z軸が磁場方向、x軸が水平方向、y軸が垂直方向とする。
【0083】
なお、断面を特定可能な複数の組織の入力を受け付けるよう構成する場合、ユーザインタフェース300において、断面方位受付領域322は不要となる。
【0084】
また、上記実施形態では、基準情報の中の、中心を特定する情報についても、解剖学的特徴構造を入力しているが、これに限られない。より簡易な指定方法として、特定の解剖学的特徴構造を含む組織の組織名を指定するよう構成してもよい。これにより、ユーザは、直感的に簡単に標準撮影断面を設定できる。この場合、指定可能な組織は、予め撮影部位に対応づけて記憶装置112に保持される。
【0085】
また、ユーザインタフェース300は、位置決め画像表示領域を備えるよう構成してもよい。この場合、撮影部位受付領域310を介して撮影部位が入力(選択)された際、入力(選択)された撮影部位の典型的な断面画像である標準画像を、位置決め画像表示領域に表示する。このとき、標準画像上に、選択された撮影部位の、撮影断面位置計算アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造を、識別可能なように表示してもよい。識別可能な表示は、例えば、他の表示と色を変えるなどの手法により実現する。
【0086】
さらに、ユーザインタフェース300が、位置決め画像表示領域を備える場合、この位置決め画像表示領域を介して、基準情報として入力する解剖学的特徴構造の入力が可能なよう構成してもよい。例えば、ユーザが標準画像上の組織をマウスにてクリックすることにより入力、選択し、それを受け付ける。
【0087】
同様に、断面方位受付領域322で入力された方位(軸断面のいずれか)を標準画像上に表示するように構成してもよい。
【0088】
ユーザインタフェース300に、位置決め画像表示領域を備え、基準情報受付部211が、撮影部位受付領域310で受け付けた撮影部位の標準画像を表示し、当該標準画像を介して入力を受け付ける構成とすることにより、ユーザは視覚的に操作可能となる。これにより、操作性が向上する。
【0089】
なお、標準撮影断面は、任意の撮影部位に対して複数設定できるよう構成してもよい。この場合、各標準撮影断面を特定する基準情報から得た撮影断面パラメータを、それぞれ識別可能な態様で記憶装置112に登録する。識別可能な態様として、例えば、それぞれの撮影断面パラメータに名称等をラベル付けする。そして、プロトコルには、その名称を登録することにより、使用する撮影断面パラメータを特定する。このように構成することにより、本撮影において複数の撮影位置で撮影が必要な場合でも対応可能となる。
【0090】
なお、上記実施形態では、基準情報受付部211は、解剖学的特徴構造を直接的に含む情報を基準情報として受け付けているが、これに限られない。
【0091】
例えば、基準情報のうち、標準撮影断面の中心を特定する情報として、任意の1点(中心基準点)を、傾きを特定する情報として、任意の2点(傾き基準点)を受け付けるよう構成してもよい。これらは、ユーザインタフェースとして撮影部位の標準画像を表示し、当該標準画像上で受け付ける。
【0092】
以下、基準情報として、撮影断面の傾きと中心とを入力する場合の、基準情報受付部211が生成するユーザインタフェースと、標準撮影断面設定処理の手順と、を説明する。ここでは、正中面を基準として撮影断面を設定する、頭部のルーチン検査の場合を例にあげて説明する。ここでは、第一ベクトルとして正中面に垂直なベクトルが指定されており、撮影中心と第二ベクトルとをそれぞれ、標準撮影断面の中心と傾きとしてユーザが指定する。
【0093】
図6は、本変形例の、基準情報受付部211が生成するユーザインタフェース301の一例である。また、図7は、標準撮影断面設定部210による標準撮影断面設定処理の流れを示す処理フローである。
【0094】
本図に示すように、ユーザインタフェース301は、撮影部位受付領域310と、基準情報受付領域320と、完了指示受付領域330とを備える。撮影部位受付領域310と完了指示受付領域330とは、上記実施形態の同名の構成と同様である。一方、本変形例の基準情報受付領域320は、上記実施形態同様、標準撮影断面を特定する基準情報を受け付ける。本実施形態では、画像上でこの基準情報を受け付けるため、基準情報受付領域320は、画像表示領域323を備える。
【0095】
画像表示領域323は、撮影部位受付領域310を介してユーザから受け付けた撮影対象部位の標準画像(断面画像)を表示するとともに、ユーザからの基準情報の入力を受け付ける領域である。標準画像は、撮影部位に応じて選択可能な位置決め画像であり、予め、撮影対象部位毎に記憶装置112に登録される。
【0096】
基準情報受付部211は、画像表示領域323を介して、基準情報の入力を受け付ける。ここでは、標準撮影断面の傾きと中心との指定を受け付ける。ユーザは、標準撮影断面の傾きを特定するために、傾きを特定する2点(傾き基準点422、423)を指定する。また、中心を特定するために、1点(中心基準点424)を指定する。ユーザは、画像表示領域323内で、これらの基準点の位置を自由に決定(入力)できる。
【0097】
なお、画像表示領域323には、入力された撮影部位の撮影断面位置計算アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造421を同時に表示するよう構成してもよい。なお、解剖学的特徴構造421は、非表示としてもよい。
【0098】
本変形例の撮影断面パラメータ生成部212は、完了指示受付領域330を介して入力完了の指示を受け付けると、その時点で画像表示領域323に入力されている傾きと中心とから撮影断面パラメータを算出する。
【0099】
以下、本変形例の標準撮影断面設定部210による、標準撮影断面設定処理の流れを図7のフローに沿って説明する。
【0100】
標準撮影断面設定処理開始の指示を受け付けると、基準情報受付部211は、ユーザインタフェース301を作成し、表示装置111に表示する(ステップS1301)。
【0101】
基準情報受付部211は、撮影部位受付領域310を介して撮影部位の入力を受け付ける(ステップS1302)。ここでは、予め選択可能な部位を特定する情報(部位名)を表示し、ユーザに選択させることにより、撮影部位の入力を受け付ける。選択可能な部位を特定する情報は、予め記憶装置112に登録される。
【0102】
次に、基準情報受付部211は、選択された撮影部位に対応づけて、記憶装置112に登録される標準画像を抽出し、画像表示領域323に表示する(ステップS1303)。撮影部位が脳の場合、例えば、正中面画像を表示する。このとき、予め、傾き基準点422、423の初期値、中心基準点424の初期値をあわせて表示するよう構成してもよい。初期値を表示する場合、初期値は、記憶装置112に予め登録しておく。また、基準情報受付部211は、入力された撮影部位に対応づけて記憶装置112に登録される撮影断面位置計算アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造を参照する(ステップS1304)。このとき、参照した解剖学的特徴構造を、画像表示領域323の標準画像上に表示してもよい。また、標準画像に対して撮影断面位置計算アルゴリズムを実行し、撮影断面位置計算アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造を抽出するよう構成してもよい。
【0103】
ここで、ユーザは、画像表示領域323に表示される標準画像上で基準情報として、傾き基準点422、423の初期値を2点、中心基準点424の初期値を1点、それぞれ入力し、その後、傾き基準点422、423および中心基準点424の位置を、自由に所望の位置に調整する。なお、初期値が表示されている場合は、調整のみ行う。そして、所望の位置に調整を終えると、完了指示受付領域330を介して、入力完了の意思を入力する。
【0104】
基準情報受付部211が完了指示受付領域330を介してユーザから入力完了の指示を受け付けると(ステップS1305)、撮影断面パラメータ生成部212は、その時点で標準画像上に設定されている傾き基準点422、423と、中心基準点424とを読み取り(ステップS1306)、撮影断面パラメータを算出し、記憶装置112に登録する(ステップS1307)。
【0105】
ここで、ステップS1307における、撮影断面パラメータ生成部212による、傾き基準点422、423と中心基準点424とから撮影断面パラメータを算出する撮影断面パラメータ生成処理について説明する。
【0106】
本変形例の撮影断面パラメータ生成処理では、予め定めた解剖学的特徴構造から、傾き基準点422、423および中心基準点424を、それぞれ算出するための算出情報を算出する。そして、その解剖学的特徴構造と算出した算出情報とを撮影断面パラメータとする。
【0107】
まず、傾き基準点422、423から算出する撮影断面パラメータと、その算出方法について説明する。撮影断面パラメータ生成部212は、撮影断面位置計算アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造の中から、傾き基準点422、423それぞれに近傍の(あるいは、最も近い)解剖学的特徴構造(近傍特徴点)を抽出する。そして、それぞれ、近傍特徴点と傾き基準点422、423との差分値を計算する。得られた差分値を、抽出した2つの近傍特徴点間の距離を用いて標準化し、標準化差分値を算出情報として得る。
【0108】
上記処理を、具体例を用いて説明する。ここで、ユーザが指定した傾き基準点422、423の座標を、それぞれ(x1、y1)、(x2、y2)とする。また、近傍特徴点の座標を、それぞれ(nx1、ny1)、(nx2、ny2)、近傍特徴点2点間の距離をNLとする。標準化差分値(dx1、dy1)、(dx2、dy2)は、以下の式(1)で算出される。
【数1】
【0109】
撮影断面パラメータ生成部212は、上記標準化差分値と、近傍特徴点を特定する情報とを撮影断面パラメータとして記憶する。
【0110】
なお、実撮影断面位置算出部220は、上記標準化差分値(dx1、dy1)、(dx2、dy2)と、近傍特徴点を特定する情報とを用い、任意の被検体の近傍特徴点の座標から、当該被検体の、傾き基準点422、423を求めることができる。
【0111】
すなわち、所定の被検体の、撮影断面位置計算アルゴリズムによって抽出された近傍特徴点の座標を(nx1’、ny1’)、(nx2’、ny2’)とし、これら2点の近傍特徴点間の距離をNL’とすると、当該被検体の傾き基準点(x1’、y1’)、(x2’、y2’)は、それぞれ、次の式(2)で与えられる。
【数2】
ここで、解析する任意の被検体の画像の撮影視野(FOV)と、画像表示領域323に表示された断面画像のFOVとは、等しいものとする。
【0112】
次に、中心基準点424から算出する撮影断面パラメータと、その算出方法について説明する。なお、ここでは、アルゴリズムが抽出可能な解剖学的特徴構造の中から、予め撮影断面パラメータ算出に用いる複数の解剖学的特徴構造(基準特徴点)を決定しておく。基準特徴点は、3点以上とする。撮影断面パラメータ生成部212は、全基準特徴点から中心基準点424の座標を算出するための重み(形状関数)を計算する。この形状関数を算出情報とする。なお、実撮影断面位置算出部220は、任意の被検体の、対応する基準特徴点と、形状関数とを用い、補間にて、当該被検体の中心基準点424を算出する。使用する基準特徴点は、予め初期値として設定し、記憶装置112に保持しておく。なお、ユーザが指定する構成であってもよい。
【0113】
上記処理を、具体例を用いて説明する。ここでは、基準特徴点として4点を用いる場合を例にあげて説明する。中心基準点424の座標を(x0、y0)、基準特徴点の座標を、それぞれ、(nx1、ny1)、(nx2、ny2)、(nx3、ny3)、(nx4、ny4)とする。また、形状関数N、N、N、Nは、定数s、tを用い、以下の式(3)のように定義する。
【数3】
【0114】
撮影断面パラメータ生成部212は、以下の連立方程式(4)により定数(s,t)を求め、形状関数N、N、N、Nのそれぞれの値を算出する。
【数4】
【0115】
撮影断面パラメータ生成部212は、上記形状関数と、基準特徴点を特定する情報とを撮影断面パラメータとして記憶する。
【0116】
なお、実撮影断面位置算出部220は、上記で求めた、形状関数N、N、N、Nを用い、任意の被検体の、対応する基準特徴点の座標から、当該被検体の中心基準点424を求めることができる。
【0117】
所定の被検体の、撮影断面位置計算アルゴリズムによって抽出された、対応する基準特徴点の座標を(nx1’、ny1’)、(nx2’、ny2’)、(nx3’、ny3’)、(nx4’、ny4’)とすると、当該被検体の中心基準点424の座標(x0’、y0’)は、次の式(5)で算出できる。
【数5】
【0118】
以上のように、撮影断面パラメータを生成することにより、実撮影断面位置算出部220は、所定の被検体上の、傾き基準点422、423および中心基準点424に相当する点を算出することができる。実撮影断面位置算出部220は、算出した中心基準点424および傾き基準点422、423を用い、実撮影断面位置を特定する。
【0119】
このように、本変形例によれば、基準情報受付部211は、基準情報の中の標準撮影断面の中心を特定する情報として、標準画像上で特定の1点を基準点として受け付け、撮影断面パラメータ生成部212は、所定の解剖学的特徴構造と、当該解剖学的特徴構造から基準点を算出するための算出情報と、を前記撮影断面パラメータとしてもよい。このとき、算出情報は、形状関数としてもよい。また、基準情報受付部211は、基準情報の中の標準撮影断面の傾きを特定する情報として、標準画像上で特定の2点を基準点として受け付け、撮影断面パラメータ生成部212は、各基準点それぞれの近傍の前記解剖学的特徴構造と、当該各解剖学的特徴構造から基準点を算出するための算出情報と、を撮影断面パラメータとしてもよい。このとき、算出情報は、各基準点の、各近傍の解剖学的特徴構造からの標準化差分値としてもよい。
【0120】
すなわち、本変形例によれば、標準化差分値と近傍特徴点との組合せ、および、形状関数と基準特徴点との組合せ、を撮影断面パラメータとして生成する。実撮影断面位置算出部220は、任意の被検体の実撮影断面位置を計算する際に、この撮影断面パラメータを参照し、当該被検体の実撮影断面の傾きと中心点とを算出する。
【0121】
これにより、より高い自由度で、ユーザは所望の標準撮影断面を設定することができる。また、ユーザが設定した標準撮影断面を、高い精度で自動的に、撮影対象の被検体上で決定することができる。
【0122】
さらに、基準情報として、任意の位置を、中心と、傾きとして入力する例において、撮影断面パラメータ生成部212による撮影断面パラメータの生成方法および生成される撮影断面パラメータの算出情報は、上記例に限られない。例えば、中心基準点および傾き基準点周辺の組織構造パターンであってもよい。
【0123】
以下、傾き基準点422、423を例に、算出情報として傾き基準点422、423周りの微小領域の画素濃度パターンを抽出し、それらを近傍特徴点と対応づけて、撮影断面パラメータとして登録する構成を説明する。
【0124】
この場合、まず、画像表示領域323に表示された標準画像(断面画像)において、傾きの基準点422、423を中心とした微小領域画像を作成する。作成する画像の領域は、微小画像視野として、表示される標準画像(断面画像)に応じて予め設定しておく。例えば、正中面画像における微小画像視野として20mm×20mmと設定する。
【0125】
各傾き基準点422、423の座標を、それぞれ(x1、y1)、(x2、y2)とし、抽出する最も近傍にある特徴点(近傍特徴点)の座標を、それぞれ(nx1、ny1)、(nx2、ny2)とする。各傾き基準点422、423と、それぞれの近傍特徴点を抽出し、各傾き基準点422、423と近傍特徴点との距離NL1、NL2と、各近傍特徴点間の距離NLと、を算出する。そして、作成した微小領域画像、各近傍特徴点を特定する情報(タグ)、各傾き基準点と近傍特徴点との距離および近傍特徴点間の距離を撮影断面パラメータとして記憶装置112に登録する。
【0126】
次に、実撮影断面位置算出部220が、撮影断面パラメータを用いて、任意の被検体の傾き基準点に相当する位置を計算する方法を説明する。実撮影断面位置算出部220は、撮影対象の被検体のスカウト画像上で、撮影断面位置計算アルゴリズムにて抽出された近傍特徴点を起点として周辺組織を探索し、画素濃度パターンに合致する領域を抽出し、位置を特定する。具体的な手順は以下のとおりである。
【0127】
まず、撮影断面パラメータの各近傍傍特徴点のタグを参照し、撮影断面位置計算アルゴリズムにて抽出した解剖学的特徴構造から、撮影対象の被検体の、対応する近傍特徴点(nx1’、ny1’)、(nx2’、ny2’)を抽出する。そして、抽出した近傍特徴点間の距離NL’を算出する。
【0128】
次に、傾き基準点(x1、y1)を中心として作成した微小領域画像の中心点を近傍特徴点(nx1’、ny1’)から距離A×NL1/NL×NL’の円形領域内で可動させてマッチング処理を行い、傾き基準点に相当する点(x1’、y1’)を抽出する。同様に、傾き基準点(x2、y2)を中心として作成した微小領域画像の中心点を近傍特徴点(nx2’、ny2’)から距離A×NL2/NL×NL’の円形領域内で可動させてマッチング処理を行い、傾き基準点に相当する点(x2’、y2’)を抽出する。
【0129】
ここで、Aは1以上の実数であり、例えば、2が代入される。また、マッチング処理に使用する微小領域画像は撮影領域をNL’/NLに補間拡大した後、1画素の分解能が撮影対象の被検体の画像と等しくなるように調整する。
【0130】
マッチング処理には、例えば、正規化相互情報量や相関係数などを用いる。マッチング処理に使用する微小領域画像は、画像そのものでもよいし、二値化した画像でもよいし、画像微分によりエッジを強調した画像としてもよい。これにより、上記の方法より、ユーザが標準画像上で指定した傾き基準点422、423に相当する位置を、撮影対象の被検体上で精度良く特定することができる。
【0131】
なお、中心基準点424についても同様に撮影断面パラメータを生成し、また、実撮影断面位置の中心位置を算出する。
【0132】
これにより、パターンマッチングによりずれを吸収できるため、精度よくユーザが指定した中心基準点、傾き基準点に相当する点を、撮影対象の被検体の位置決め画像上で抽出できる。従って、実撮影断面位置の算出精度が向上する。
【0133】
以上説明したように、撮影断面パラメータ算出手法は複数あるが、これらを組み合わせて使用する構成でもよい。組み合わせることにより、設定精度が向上する。
【0134】
なお、指定する2点の傾き基準点422、423は、それらにより決定する傾きが、撮影面に平行な傾きおよび直交する傾きのいずれであるかを入力可能な構成にしてもよい。これにより、より詳細な撮影断面位置基準の設定が可能となり、操作性が向上する。
【0135】
また、指定する2点の傾き基準点422、423や中心基準点424は、解剖学的特徴構造とは関連させずに装置座標系で規定してもよい。また、解剖学的特徴構造と関連付ける、装置座標系で規定する、のいずれかを選択可能なように構成してもよい。装置座標系で規定する場合、スカウト画像における解剖学的特徴構造の処理が不要となる。このように構成することにより、例えば、撮影断面の中心を対象部位に合わせ、傾きを装置座標系における固定角度として撮影したい場合に対応可能となる。
【0136】
また、ユーザインタフェース301の画像表示領域323に表示される標準画像を、ユーザが選択できるよう構成してもよい。すなわち、基準情報受付領域320は、画像表示領域323に表示される標準画像の指定を受け付ける、画像指定領域をさらに備える。これにより、様々な断面での標準撮影断面の、撮影断面位置基準の設定が可能となる。
【0137】
このとき、予め撮影部位毎に、複数の標準画像を記憶装置112に登録しておき、その中から、ユーザが選択するよう構成してもよい。また、基準情報を設定する標準画像(断面画像)として表示する断面を、ユーザが任意に設定可能なように構成してもよい。
【0138】
ユーザが任意の断面を設定する場合の、ユーザインタフェース302を図8に示す。この場合のユーザインタフェース302は、ユーザインタフェース301と同様に、撮影部位受付領域310と、基準情報受付領域320と、完了指示受付領域330と、を備える。撮影部位受付領域310と、完了指示受付領域330とは、ユーザインタフェース301の同名の領域と同機能である。
【0139】
基準情報受付領域320は、表示する断面(画像)をユーザが設定する画像指定領域324と、ユーザが指定した断面の画像を表示する画像表示領域323とを備える。
【0140】
画像指定領域324は、1以上の表示領域を備え、それぞれ、標準画像の軸断面が表示される。ここでは、一例として、2つの表示領域を備え、アキシャル面とコロナル面とが表示される場合を示す。ユーザは、画像指定領域324に表示される軸断面画像上で、標準画像として画像表示領域323に表示する画像の断面425を指定する。
【0141】
基準情報受付部211は、画像指定領域324を介して受け付けた断面を標準画像として切り出し、画像表示領域323に表示する。断面の切り出し方法は、例えば、3D画像のMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を用いる。ユーザは、切り出されて画像表示領域323に表示される標準画像上で基準情報の設定を行う。
【0142】
なお、画像表示領域323に表示する標準画像には、撮影範囲をさらに表示する構成にしてもよい。これにより、ユーザの撮影位置の設定における視覚的効果が向上する。
【0143】
また、このとき、基準情報受付領域320を介して、FOVやスライス枚数、スライス間隔など、撮影範囲を特定する撮影パラメータを入力可能とする構成としてもよい。この場合、受け付けた撮影パラメータに応じて、当該撮影パラメータで特定される撮影範囲を画像表示領域323に表示する。これによって、より実際に近い撮影断面位置の設定が可能になり、操作性が向上する。
【0144】
また、撮影範囲を複数入力可能とし、撮影範囲ごとに傾き基準点422、423と中心基準点424とを設定可能な構成としてもよい。これによって、脊椎の椎間板など複数の撮影箇所を設定する必要のある検査においても、それぞれの基準情報を同時に設定でき、標準撮影断面を同時に設定することができる。
【0145】
なお、撮影部位によっては、複数の撮影断面位置の設定が必要となる。このような場合のため、ユーザインタフェースは、基準情報受付領域320と、完了指示受付領域330とを、複数備えるよう構成してもよい。ここでは、設定が必要な撮影断面位置数だけ備える。
【0146】
基準情報受付部211は、撮影部位受付領域310を介して、撮影部位を受け付けると、ユーザインタフェースを生成し、表示する。表示されるユーザインタフェースは、当該部位に対応づけて記憶装置112に保持されるユーザインタフェース画面データに基づいて生成される。このとき、記憶装置112には、撮影部位に対応づけて、必要な撮影断面数が登録される。基準情報受付部211は、受け付けた撮像部位に対応づけて登録される撮影断面数に応じて、基準情報受付領域(画像表示領域323)320と完了指示受付領域330とが表示されるようユーザインタフェースを生成する。
【0147】
以下、撮影部位が膝の場合を例にあげて説明する。膝の場合、2つの撮影断面位置の設定が必要となる。また、ここでは、基準情報を、画像上で受け付ける場合を例にあげて説明する。従って、ユーザインタフェースが、画像表示領域323と、完了指示受付領域330とを2つ備える場合を例にあげて説明する。
【0148】
図9に、この場合のユーザインタフェース303の一例を示す。ユーザインタフェース303は、撮影部位受付領域310と、第一の画像表示領域351と、第一の完了指示受付領域361と、第二の画像表示領域352と、第二の完了指示受付領域362と、を備える。
【0149】
第一の画像表示領域351には、上記ユーザインタフェース302と同様、予め撮影部位に対応づけて記憶装置112に登録される、標準画像が表示される。ユーザは、この標準画像上で、基準情報を入力し、第一の標準撮影断面を設定する。基準情報受付部211が第一の画像表示領域351と第一の完了指示受付領域361とを介してユーザからの入力を受け付けると、撮影断面パラメータ生成部212は、第一の撮影断面パラメータを生成する。この、第一の撮影断面パラメータの生成の手順は、上記変形例と同様である。
【0150】
第二の画像表示領域352には、第一の標準撮影断面の画像が、標準画像として表示される。この第一の標準撮影断面の画像は、第一の画像表示領域351に表示される標準画像上で、傾き基準点と中心基準点とにより指定される断面である。ユーザは、この標準画像上で、基準情報を入力し、第二の標準撮影断面を設定する。基準情報受付部211が第二の画像表示領域352と第二の完了指示受付領域362とを介してユーザからの入力を受け付けると、撮影断面パラメータ生成部212は、第二の撮影断面パラメータを生成する。この、第二の撮影断面パラメータの生成の手順は、上記変形例と同様である。
【0151】
なお、ユーザの選択により、第二の画像表示領域352には、第一の画像表示領域351に表示された標準画像と同じ画像が標準画像として表示されるよう構成してもよい。また、予め、第二の画像表示領域352に表示する標準画像が登録されていてもよい。
【0152】
以下、複数の撮影断面を設定する必要がある部位の場合の、実撮影断面位置算出部220による実撮影断面位置算出処理の流れを、図10を用いて説明する。なお、ここでは、第一、第二の標準撮影断面が設定され、プロトコルに登録が完了しているものとする。
【0153】
はじめに、計算機110は、プロトコルを呼び出す(ステップS1401)。次に、計算機110は、スカウト撮影を実行し、計測データを取得する(ステップS1402)。次に、解剖学的特徴構造抽出部221は、計測データから解剖学的特徴構造を抽出する(ステップS1403)。次に、実撮影断面位置算出部220は、第一の撮影断面パラメータを参照し、抽出した解剖学的特徴構造を用いて第一の実撮影断面位置を算出する(ステップS1404)。そして、表示部230は、算出した第一の実撮影断面位置を第一の推奨撮影断面位置として表示装置111に表示し、ユーザに提示する(ステップS1405)。このとき、ユーザが自由に第一の推奨撮影断面位置を調整可能な構成にしてもよい。
【0154】
次に、計算機110は、第一の推奨撮影断面位置において撮影を実行し、計測データを取得する(ステップS1406)。ここでの撮影は、診断用画像の本撮影でもよいし、スカウト撮影でもよい。次に、解剖学的特徴構造抽出部221は、計測データから解剖学的特徴構造を抽出する(ステップS1407)。そして、実撮影断面位置算出部220は、第二の撮影断面パラメータを参照し、抽出した解剖学的特徴構造を用いて第二の実撮影断面位置を算出する(ステップS1408)。そして、表示部230は、算出した第二の実撮影断面位置を第二の推奨撮影断面位置として表示装置111に表示し、ユーザに提示する(ステップS1409)。
【0155】
このように構成することにより、手動時と同じ流れで実撮影断面位置を自動設定できる。また、複数の撮影断面位置を設定するために3次元撮影を必要とせず、必要最低限の2次元撮影のみで推奨撮影断面位置を設定し、ユーザに提示でき、計測効率の向上が期待できる。
【0156】
なお、上記変形例では、2つの撮影断面を設定する場合を例にあげて説明したが、設定する撮影断面数はこれに限られない。ユーザインタフェースは、必要な断面数、基準情報受付領域および完了指示受付領域を備えるよう構成してもよい。そして、二番目以降の基準情報受付領域には、先に基準情報の入力を受け付けているため、直前に受け付けた基準情報で特定される標準撮影断面を標準画像として表示する。
【0157】
また、実撮影断面位置算出部220は、二番目以降の実撮影断面位置算出処理において、実撮影断面位置が既に算出されているため、直前に算出した実撮影断面位置の画像を、解剖学的特徴構造を抽出する画像として用いる。
【0158】
このように、基準情報受付部211は、複数の標準撮影断面の基準情報を受け付け、先に基準情報の入力を受け付けている場合、直前に受け付けた基準情報で特定される標準撮影断面の画像を、標準画像としてもよい。また、撮影断面パラメータ生成部212は、基準情報受付部211を介して基準情報を受け付ける毎に、基準情報から撮影断面パラメータを生成し、実撮影断面位置算出部220は、先に実撮影断面位置が算出されている場合、直前に算出した実撮影断面位置の画像を前記スカウト画像としてもよい。
【0159】
なお、1つの撮影部位に対して複数の標準撮影断面を設定する場合、標準撮影断面設定部210にて設定する標準撮影断面(撮影断面パラメータ)に任意の名称を付けて記憶装置112に登録するよう構成してもよい。そして、プロトコル作成時にユーザが、本撮影のパルスシーケンスごとに、当該名称によって算出する標準撮影断面を選択可能なように構成してもよい。このとき、記憶装置112には、標準撮影断面の名称とともに、実行する撮影断面位置計算アルゴリズム、利用する撮影断面パラメータ等が記憶される構成にしてもよい。
【0160】
なお、本実施形態では、実撮影断面位置算出部220は、予め記憶装置112に登録される撮影断面位置計算アルゴリズムを用いて、解剖学的特徴構造の抽出および実撮影断面位置の算出を行う。このとき、撮影断面パラメータを記憶装置112に登録しておく。そして、撮影断面位置計算アルゴリズムは、算出時に記憶装置112に登録された撮影断面パラメータを参照することにより、実撮影断面位置算出処理を実現する。
【0161】
すなわち、本実施形態のMRI装置100は、生成された前記撮影断面パラメータを登録する記憶手段をさらに備え、前記実撮影断面位置算出部220は、前記実撮影断面位置を、部位毎に予め定めた撮影断面位置計算アルゴリズムに従って算出し、前記撮影断面位置計算アルゴリズムは、算出時に前記記憶手段に登録された前記撮影断面パラメータを参照してもよい。
【0162】
このように構成することで、本実施形態のMRI装置100は、撮影断面パラメータが増加した場合であっても記憶容量を最小限に抑制できる。
【0163】
しかし、撮影断面位置計算アルゴリズムによる実撮影断面位置算出手法はこれに限られない。例えば、撮影断面パラメータが生成される毎に、撮影断面パラメータを用い、撮影断面位置計算アルゴリズムそのものを更新するよう構成してもよい。すなわち、標準撮影断面設定処理のステップS1107において、算出した撮影断面パラメータを用い、当該撮影部位の撮影断面位置計算アルゴリズムのプログラムを更新し、記憶装置112に再登録する。
【0164】
具体的には、撮影部位受付領域310を介して腰椎を、解剖学的特徴構造受付領域321を介して椎体を、断面方位受付領域322を介してサジタル面を受け付けた場合、腰椎用撮影断面位置計算アルゴリズムが、撮影中心が椎体の重心でかつ撮影面の方位がサジタル面である実撮影断面位置を算出するようにプログラムを書き換え、書き換えた撮影断面位置計算アルゴリズムを記憶装置112に登録する。
【0165】
すなわち、前記実撮影断面位置算出部220は、前記実撮影断面位置を、部位毎に予め定めた撮影断面位置計算アルゴリズムに従って算出し、前記撮影断面位置計算アルゴリズムは、前記撮影断面パラメータが生成される毎に、当該撮影断面パラメータを反映した撮影断面位置計算アルゴリズムに更新されるものであってもよい。
【0166】
このように構成することにより、図5のステップS1208で解剖学的特徴構造を抽出後、撮影断面位置計算アルゴリズムが書き換えたプログラムに応じて実撮影断面位置を算出することができる。これにより、アルゴリズムが撮影断面パラメータを参照する時間を省略でき、より高速な計算が可能になる。
【0167】
なお、本実施形態では、標準撮影断面の、中心と傾きとを特定する情報を設定し、標準撮影断面を特定しているが、これに限られない。部位によっては、中心を特定する情報、傾きを特定する情報だけを設定するよう構成してもよい。
【0168】
また、マルチスライス撮影の場合、撮影範囲の中心ではなく、特定のスライス番号のスライス方向の中心位置を設定するよう構成してもよい。この場合、基準情報受付領域320において、中心位置を設定するスライスを指定するスライス指定領域をさらに備え、中心を特定する情報として入力された位置を、指定されたスライスの中心位置として、標準撮影断面を設定するとともに、撮影断面パラメータにも反映する。
【0169】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態では、第一の実施形態と同様の手法で実撮影断面位置を算出する。そして、算出する毎に、アルゴリズムが抽出した解剖学的特徴構造の抽出精度を判定し、結果をユーザに提示する。
【0170】
本実施形態のMRI装置100は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、上述の機能を有するため、本実施形態の実撮影断面位置算出部220は、図11に示すように、解剖学的特徴構造の抽出精度の高低を判定する精度判定部222をさらに備える。また、表示部230は、さらに、判定結果をユーザに提示する。本実施形態では、表示部230は、判定結果が低の場合、表示装置111にアラートを表示する。以下、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0171】
標準撮影断面設定部210による標準撮影断面設定処理は、第一の実施形態と同様である。一方、実撮影断面位置算出部220による実撮影断面位置算出処理の流れが異なる。図12に、本実施の形態の実撮影断面位置算出部220による実撮影断面位置算出処理の流れを示す。
【0172】
ステップS1201からステップS1208までの処理は、図5の同符号のステップの処理と同様である。本実施形態では、撮影断面位置計算アルゴリズムにて解剖学的特徴構造を抽出した後(ステップS1208)、精度判定部222は、抽出した解剖学的特徴構造の抽出精度を判定する(ステップS2101)。判定は予め定めたルールに従って行う。また、判定結果は、抽出精度が予め定めた抽出精度以上であることを意味する抽出精度高、および、抽出精度に満たないこと意味する抽出精度低のいずれかで示す。判定の詳細は、後述する。そして、予め定めた抽出精度以上の高い抽出精度が達成され、判定結果が、抽出精度高と判定された場合(ステップS2102)、第一の実施形態のステップS1209の処理を行う。
【0173】
一方、予め定めた抽出精度に満たず、抽出精度低と判定された場合は、アラートをユーザに提示する(ステップS2103)。アラートは、実撮影断面位置計算アルゴリズムが算出した解剖学的特徴構造の抽出精度が予め定めた抽出精度に満たないことをユーザに提示するものであればよい。アラートの提示態様は問わない。表示であってもよいし、音声であってもよい。提示後、ステップS1209に移行する。
【0174】
なお、ステップS2103では、アラートの提示後、ステップS1209へ移行せず、予め定めた仮の撮影断面位置をユーザに提示する構成としてもよい。提示する仮の撮影断面位置とは、例えば、軸断撮影位置とする。また、ユーザが組織を指定した場合、その組織の重心と撮影中心とを合わせることにより得た撮影断面位置であってもよい。このように構成することにより、位置誤差の大きい推奨撮影断面位置を算出し、ユーザに提示することを避けることができる。従って、ユーザに余計な操作の負担を与えることを抑制できる。
【0175】
精度判定部222による抽出精度の判定方法は、以下の通りである。
【0176】
例えば、第一の方法は、解剖学的特徴構造を抽出するために取得した画像の撮影位置が適切であるか否かを判定することにより、抽出精度を判定する。
【0177】
まず、解剖学的特徴構造を抽出するために取得した画像から撮影部位の中心位置および向きに関する情報を取得する。中心位置および向きに関する情報として、例えば、頭部検査の場合は、脳の中心位置座標と正中面の位置および向きなどである。また、脊椎検査の場合は、アキシャル画像における椎体や脊髄神経中心位置座標などである。また、膝検査の場合は、大腿骨の中心座標などである。これらの情報は、撮影部位における一部の断面画像、例えば、手動で撮影断面位置を設定する時に使用される三軸直交断面画像などからおおよその位置を画像解析処理にて抽出することができる。
【0178】
次に、算出した撮影部位の中心位置および向きに関する情報とスカウト撮影の撮影領域とを比較する。次に、中心位置がスカウト撮影領域に含まれるか、あるいは中心位置および向きによって規定される撮影部位の所定の平面領域および中心軸がスカウト撮影領域にどの程度含まれるかを、スカウト領域に含まれる割合として算出する。
【0179】
例えば、中心位置に関しては、スカウト撮影領域に含まれない場合に解剖学的特徴構造の抽出精度が低いと判定し、判定結果として抽出精度低を出力する。平面領域や中心軸に関しては、スカウト撮影領域に含まれる割合が90%以下の場合に解剖学的特徴構造の抽出精度が低いと判定する。そして抽出精度低を出力する。なお、ここでの判定の割合は、一例であってこれに限定されない。
【0180】
具体的に、アキシャル面、コロナル面、サジタル面、それぞれの2次元マルチスライス画像を用いて頭部の特徴抽出を行う場合を例に詳細に説明する。ここでは、スカウト撮影において、撮影時間を短縮するため頭部領域全体のデータは取得せず、脳の解剖学的構造が把握可能な脳中心近傍を通過する断面画像を各面にて取得するものとする。一般に、スカウト画像の撮影位置は装置座標系で予め決められた位置で撮影されるため、被検体セッティング時に脳中心部を通過する断面画像が取得できるように調整する。しかし、セッティング完了からスカウト撮影までの間に被検体が動いてしまい、スカウト撮影にて目的とする脳中心の断面画像が得られない場合がある。
【0181】
この場合、画像処理にて、取得したスカウト画像から被検体の脳中心座標を抽出する。抽出した脳中心座標がスカウト撮影領域に含まれると判定された場合、解析中の画像が目的とする脳中心近傍を通過する断面画像であることが判断できる。脳中心座標がスカウト撮影領域内に含まれない場合、解析中のスカウト画像からは解剖学的特徴構造を抽出することは不可能であり、抽出精度が大きく低下すると判定できる。従って、この場合も抽出精度低を出力する。
【0182】
また、頭部において撮影断面位置の設定基準となる解剖学的構造は正中面における断面画像を解析することにより抽出する。従って、スカウト画像の撮影領域に正中面が含まれるか否かを判断することにより、同様に抽出精度の低下を予測できる。すなわち、スカウト撮影領域内に正中面が含まれない場合、抽出精度低を出力する。
【0183】
第二の方法は、解剖学的特徴構造抽出を複数の手法で実行し、それぞれの抽出結果の一致度によって抽出精度を判定するものである。頭部のアキシャル画像における正中線の抽出精度を判定する場合を例にあげ、詳細を説明する。
【0184】
解析する画像がT1強調画像の場合、正中線上の画素値は周囲の脳実質と比較して低い。このため、アキシャル画像上で正中線を抽出するには、黒い直線部を検索する。すなわち、正中線の検索条件を、1)脳領域において直線上の画像値の総和が低い部位、2)脳領域の直線上の点において直線と垂直な方向の2階微分値の総和が高い部位、等とし、抽出する。一方、正中面は左右を分割する面である。このため、正中面を中心に組織は左右対称となる。従って、上記正中線の検索条件に加え、3)脳の重心座標と距離の近い直線部位、4)脳領域において、直線に垂直な方向の画素値において、直線の両側の一方の画素値を反転した画素値と他方の画素値との相関係数が高い部位、なども正中線の検索条件となる。各条件に最も適合する部位を特定するに当たって、1)は、直線上の画素値の総和、2)は、直線上の2階微分値の総和、3)は、脳中心と直線の距離、4)は、左右の相関係数といった評価値を計算し、評価値の最小値や最大値が算出された部位を抽出する。
【0185】
ここで、一つの条件のみに最も適合する部位を正中線として抽出する場合、抽出誤差の可能性が高くなる。例えば、1)の条件では、脳梁上の低信号部位を正中線と誤って認識する場合がある。3)の条件では、脳中心を通る直線であればどの方向でも正中面となる。また、頭部が傾いてアキシャル面が撮影された場合、正中線が中心からずれる場合もある。あるいは、4)の条件では、比較的対称性の高い上下を分断する直線を正中線と誤って認識する場合がある。
【0186】
そこで、複数の検索条件に適合する部位を特定するため、各評価値を最大値等で規格化した後、値が小さいほど条件に適合するような組み合わせ条件の評価値を四則演算にて算出し、評価値が最小値となる部位を正中線として抽出する。これにより、正中面の抽出処理のロバスト性が向上し、抽出精度が高くなる。
【0187】
なお、単一条件の評価値で抽出される部位と組み合わせ条件の評価値で抽出された部位とが全て一致する場合、抽出した正中線の信頼性は高い。従って、この場合は、抽出精度は高いと判定し、抽出精度高を出力する。しかし、例えば、組み合わせ条件の評価値で抽出した部位と異なる部位が4つの条件のうち2つの条件の評価値で抽出された場合は、抽出精度の信頼性が低下していると予測できる。従って、この場合は、抽出精度低を出力する。
【0188】
あるいは、組み合わせの条件において算出される評価値に閾値を設定し、閾値以上の場合は抽出精度が低いと判定し、抽出精度低を出力するよう構成してもよい。閾値の決めた方としては、例えば、過去に正中線の抽出に成功した例と失敗した例とにおける評価値をそれぞれ参照し、それぞれの評価値の平均値を閾値として決定する。
【0189】
第三の方法は、抽出した解剖学的特徴構造の周囲組織の形状とデータベースに保存した標準的な解剖学的特徴構造の周囲組織の形状との一致度によって抽出精度を判定するものである。本方法を、正中面画像において解剖学的特徴構造を抽出する場合を例に説明する。
【0190】
まず、標準的な正中面画像において抽出対象となる解剖学的特徴構造を中心とした小視野の画像をデータベースに保存する。小視野は、例えば、正中面画像の場合は20mm×20mmと設定し、他の部位ではその部位に適した視野に設定する。次に、Active Shape Modelなどの特徴点抽出アルゴリズムで解剖学的特徴構造を抽出した後、抽出した特徴構造を中心とする小視野の画像とデータベースに保存した画像との相関係数を計算し、0.8以下となる解剖学的特徴構造の数をカウントする。カウントされた解剖学的特徴構造数が3点以上である場合、解剖学的特徴構造の抽出精度が低いと判定し、抽出精度低を出力する。なお、ここでは、閾値となる相関係数の値やカウント数は一例を示しており、これに限らない。
【0191】
第四の方法は、抽出した解剖学的特徴構造から対象部位のサイズや向きを算出し、解剖学的知見と照らし合わせ、抽出精度を判定するものである。正中面画像において解剖学的特徴構造を抽出する場合を例に説明する。
【0192】
頭長(眉間から後頭部までの長さ)は、成人男性の平均値が約190mmである。従って、抽出した解剖学的特徴構造から算出した頭長が、例えば220mm以上である場合、特徴点抽出精度が低いと判定し、抽出精度低を出力する。閾値となる頭長は、男性や女性、人種等で変更するよう構成してもよい。
【0193】
また、頭部コイルにセットされた状態では頭部の動きが制限されるため、頭部の頷き角度は−45度から60度程度の範囲に収まると考えられる。従って、抽出した解剖学的特徴構造、例えば、脳梁の角度などから頷き角度を算出し、頷き角度が設定した範囲内に収まってない場合、抽出精度が低いと判定し、抽出精度低を出力する。
【0194】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、第一の実施形態のMRI装置100の前記実撮影断面位置算出部220が、前記解剖学的特徴構造抽出部221が抽出する解剖学的特徴構造の、抽出精度の高低を判定する精度判定部222をさらに備え、前記精度判定部222の判定結果が低の場合、前記表示装置にアラートを表示してもよい。
【0195】
第一の実施形態の手法でユーザに提示される撮影断面位置には、ユーザが設定する基準情報の精度と撮影断面位置計算アルゴリズムの算出精度との両者の精度が影響を与える。本実施形態では、撮影断面位置計算アルゴリズムの、実撮影断面位置算出の精度に関わる解剖学的特徴構造の抽出精度を判定することで、ユーザに撮影断面位置計算アルゴリズムの精度を提示できる。これにより、ユーザは、基準情報の最調整の要否を判断することができる。従って、本実施形態によれば、撮影断面位置計算アルゴリズム側の精度情報をユーザに提供できるため、余計な作業の発生を抑制可能であり、操作性が向上する。
【0196】
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態について説明する。本実施形態では、第一の実施形態と同様の手法で実撮影断面位置を算出する。そして、算出した実撮影断面位置に対しユーザから受け付けた調整量を学習データとして記憶し、撮影断面パラメータにフィードバックする。
【0197】
本実施形態のMRI装置100は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態のMRI装置100の計算機110は、上述の機能を有するため、推奨撮影断面位置を提示後にユーザから受け付けた調整量を学習データとして記憶し、撮影断面パラメータを更新する構成をさらに有する。以下、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0198】
図13は、本実施形態の計算機110の機能ブロック図である。本実施形態の計算機110は、第一の実施形態で説明した標準撮影断面設定処理、実撮影断面位置算出処理および推奨撮影断面提示処理に加え、ユーザからの調整を受け付ける処理と、受け付けた調整量を学習データとして記憶装置112に登録する処理と、学習データを解析し撮影断面パラメ−タまたは撮影断面位置計算アルゴリズムにフィードバックする処理と、を実現する。これを実現するため、本実施形態の計算機110は、第一の実施形態の計算機110が備える各機能に加え、調整受付部240と学習部250とを備える。
【0199】
本実施形態の調整受付部240は、上述のように、ユーザに提示した推奨撮影断面位置である、実撮影断面位置算出部220が算出した実撮影断面位置に対するユーザからの調整を受け付け、学習データとして記憶装置112に登録する。登録は撮影部位に対応づけて行う。また、学習部250は、受け付けた調整量(学習データ)を解析し、撮影断面パラメータにフィードバックする。
【0200】
フィードバックの手順は以下のとおりである。学習部250は、調整受付部240を介してユーザが調整すると、ユーザの調整により得られた、撮影対象の被検体の最終的な中心基準点(撮影対象の被検体の撮影中心座標)と、対応付けられる当該被検体の解剖学的特徴構造の座標と、を用いて式(4)の連立方程式を解き、新たな形状関数N、N、N、Nを得る。また、ユーザの調整により得られた、当該被検体の最終的な傾き基準点と、対応付けられる当該被検体の解剖学的特徴構造の座標とから上記式(1)を用いて標準化差分値dx1、dy1、dx2、dy2を算出する。そして、撮影断面パラメータを、得られた形状関数および標準化差分値で更新する。
【0201】
なお、学習は被検体毎に行うよう構成してもよい。すなわち、上記ユーザによる調整を受け付け、新たな形状関数および標準化差分値を得た際、撮影断面パラメータを更新するのではなく、被検体に対応づけて、新たに、当該被検体の撮影断面パラメータとして登録する。同じ被検体に関して新たに形状関数および標準化差分値を得た場合のみ、当該被検体の撮影断面パラメータを更新する。
【0202】
なお、上記の例では、学習データ(調整量)を用いて撮影断面パラメータとして保存されている形状関数と標準化差分値とを更新する手法を説明したが、これに限らない。例えば、近傍特徴点、基準特徴点の選択に反映するよう構成してもよい。
【0203】
この場合、異なる近傍特徴点の組、異なる基準特徴点グループに対応づけて、それぞれ、標準化差分値および形状関数を登録しておく。そして、その中から、ユーザの調整量の最も少ない近傍特徴点の組、および基準特徴点グループを決定する。
【0204】
この場合の、学習部250による学習データの解析方法について詳細に説明する。
【0205】
第一の実施形態では、形状関数算出の基とする基準特徴点群は、予め定められている。一方、本実施形態では、抽出可能な全ての解剖学的特徴構造から、形状関数算出に必要な基準特徴点数の全組み合わせを抽出し、それぞれの組み合わせについて形状関数を算出し、記憶する。
【0206】
例えば、画像処理にて抽出する解剖学的特徴構造数がN点、補間に使用する解剖学的特徴構造数(基準特徴点数)がM点とする。このとき、基準特徴点の組み合わせの数Pは式(6)で計算される。
【数6】
ここでは、中心基準点424に基づいて撮影断面パラメータを算出する際、上記P通りの基準特徴点の組み合わせそれぞれについて、算出情報である形状関数N、N、N、Nを算出する。
【0207】
学習部250は、ユーザが調整後の被検体の中心基準点に最も近い可能性の高い基準特徴点の組み合わせを、次の被検体の撮影断面パラメータ算出時に用いる基準特徴点の組み合わせとする。以下、学習部250による処理を含めた検査の流れを説明する。なお、P通りの基準特徴点の組み合わせの中の、実撮影断面位置算出部220が用いる基準特徴点の組み合わせの初期値(算出組み合わせ)は、予め定められているものとする。
【0208】
まず、実撮影断面位置算出部220は、基準特徴点の算出組み合わせと、その算出組み合わせにより得た形状関数とを用い、撮影対象の被検体の中心基準点を算出し、ユーザに提示する。そして、学習部250は、ユーザから中心基準点の調整を受け付ける。
【0209】
一方、学習部250は、算出組み合わせ以外のP−1通りの基準特徴点の組み合わせ全てについて、撮影対象の被検体の中心基準点を算出する。そして、それぞれの中心基準点について、ユーザから受け付けた調整後の中心基準点との間の距離Lを算出し、記憶装置112に学習データとして登録する。学習データの登録は、組み合わせ毎に、当該組み合わせに対応づけて登録されている距離の値に加算することにより行う。また、算出組み合わせについては、調整量に相当する距離Lを登録(加算)する。そして、学習部250は、登録される学習データの中の加算後の距離値が最も小さい基準特徴点の組み合わせを、算出組み合わせとする。
【0210】
以上の処理を検査毎に繰り返す。すなわち、次の被検体については、実撮影断面位置算出部220は、先の撮影において最も距離Lの短い基準特徴点の組み合わせとされた算出組み合わせを用いて、被検体の中心基準点を算出する。また、学習部250は、その組み合わせ以外の組み合わせを用い、被検体の中心基準点を算出し、ユーザの調整後の中心基準点と比較する。そして、各組み合わせについて距離Lを算出し、学習データに加算することにより、学習データを更新する。また、算出組み合わせも併せて更新する。
【0211】
このように、本実施形態によれば、検査ごとに学習データは蓄積され、更新される。すなわち、検査対象の被検体がK人目のときには、各組み合わせについてK回加算された学習データが得られる。2人目以降の被検体は、学習データの加算値が最も小さい基準特徴点の組み合わせと、それにより得られる形状関数とを、撮影断面パラメータとして用い、当該被検体の中心基準点の座標を計算し、ユーザへ提示する。これにより、より高い精度で実撮影断面位置を算出し、推奨撮影断面位置としてユーザに提示することができる。
【0212】
傾き基準点から撮影断面パラメータを決定する際の近傍特徴点についても同様である。ただし、近傍特徴点については、全組み合わせではなく、傾き基準点422、423としてユーザが設定したそれぞれの基準点の近傍の所定数の解剖学的特徴構造の中から、予め定めた複数の組み合わせを用いる。用いる組み合わせは、ユーザが設定するよう構成してもよい。また、それぞれの傾き基準点を中心として予め定めた領域の範囲内の解剖学的特徴構造を全て用いるよう構成してもよい。
【0213】
学習部250による調整量の反映手法は、上記中心基準点の場合と同様である。すなわち、各組み合わせにより得る被検体の傾き基準点と、調整後の傾き基準点との距離値の累積値が最も小さい組み合わせを、次の被検体の実撮影断面位置算出時に用いる。
【0214】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、第一の実施形態のMRI装置100に、前記実撮影断面位置算出部220が算出した実撮影断面位置の調整を学習データとして受け付ける調整受付部240と、前記受け付けた学習データを解析し、前記撮影断面パラメータにフィードバックする学習部250と、をさらに備えてもよい。
【0215】
このように、本実施形態によれば、実撮影断面位置算出部220が算出した実撮影断面位置の調整を学習データとして受け付ける調整受付部240と、受け付けた学習データを解析し、撮影断面パラメータにフィードバックする学習部250と、をさらに備える。従って、本実施形態によれば、ユーザによる調整量が撮影断面パラメータに反映されるため、よりユーザの目的に合った標準撮影断面を設定できる。これにより、より高い精度で実撮影断面位置を算出でき、ユーザのニーズにあった推奨撮影断面位置を提示することができる。
【0216】
なお、上記実施形態では、1人目の被検体の調整結果から算出に用いる解剖特徴点の組み合わせを更新しているが、これに限られない。一定数以上の被検体の調整結果を得てから更新するよう構成してもよい。例えば、10人分のデータを取得後、組み合わせを更新する。このように構成することにより、被検体による学習データの算出ばらつきを抑制できる。
【0217】
また、学習データによる被検体の傾き基準点および中心基準点算出のばらつきを抑制するため、ある一定数分の学習データの解析および反映が完了した後、学習データによるフィードバックを行わないように構成してもよい。フィードバック停止までの解析数は、予め定められていてもよいし、ユーザが指定するよう構成してもよい。
【0218】
また、上記実施形態では、学習データに最新の結果を加算することにより学習データを更新しているが、更新手法はこれに限られない。学習部250が、最新の学習データを得る毎に既存の学習データとの間で平均値を計算し、これを登録するように構成してもよい。この場合、平均値が最小となる基準点の組み合わせを算出組み合わせとして更新する。また、学習部250が、平均値に加え検査毎に計算される距離Lの標準偏差を計算し、これを登録するように構成してもよい。この場合、標準編差が最小となる基準点の組み合わせを算出組み合わせとして更新し、さらに、この組み合わせにおける距離Lの平均値を撮影断面パラメータの補正量として反映するように構成することにより、精度が高くばらつきの少ない安定した結果を提示することが可能となる。
【0219】
なお、中心基準点および傾き基準点がX座標とY座標とで算出されるとき、それぞれの座標で算出する際に使用する解剖学的特徴構造の組み合わせを変更するように構成してもよい。例えば、中心基準点の場合、学習データとして、X座標の距離LX、Y座標の距離LYを算出し、それぞれ加算等して更新していく。
【0220】
また、被検体の年齢や性別、人種などに応じて学習データを分けて記憶するよう構成してもよい。このように構成することにより、学習データをより効果的に実撮影断面位置の算出に反映でき、精度の向上が期待できる。
【0221】
なお、本実施形態では、第一の実施形態の構成に調整受付部240と学習部250とを備える場合を例にあげて説明したが、これに限られない。第二の実施形態の構成にこれらの機能を備えてもよい。
【0222】
<<第四の実施形態>>
次に、本発明を適用する第四の実施形態について説明する。検査(撮影)によっては、撮影断面位置とは独立して、撮影断面位置に関連する位置(関連位置)を設定する必要がある。本実施形態では、ユーザが指定した位置基準に基づき、実撮影断面位置と関連位置とを設定する。
【0223】
関連位置には、例えば、サチュレーション領域やナビゲータエコーの撮影領域などがある。
【0224】
本実施形態のMRI装置100は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態のMRI装置100の計算機110は、上述の機能を有するため、第一の実施形態の構成に加え、図14に示すように、撮影断面位置とは独立した撮影断面位置に関連する位置を、標準関連位置として設定し、設定した標準関連位置から関連位置パラメータを生成する関連位置基準設定部260と、撮関連位置パラメータから、撮影対象の被検体における関連する位置である実関連位置を算出する実関連位置算出部270と、を備える。以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0225】
関連位置基準設定部260は、基本的に第一の実施形態の標準撮影断面設定部210と同様の処理を行う。すなわち、撮影部位と関連位置を算出する基準となる情報(関連位置基準)との、ユーザからの入力を受け付けるユーザインタフェースを作成し、表示装置111に表示する。そして、ユーザインタフェースを介してユーザから関連位置基準の設定を受け付けると、受け付けた関連位置基準と関連する解剖学的特徴構造とから関連位置を算出するためのパラメータ(関連位置パラメータ)を算出する。
【0226】
ユーザインタフェースを作成するためのデータは、記憶装置112に予め保持される。また、算出した関連位置パラメータも記憶装置112に登録される。
【0227】
なお、関連位置基準として、位置を算出する基準だけでなく、関連位置の用途、例えば、サチュレーション領域やナビゲータエコーの撮影領域などを指定できるよう構成してもよい。また、複数の関連位置を設定可能なように構成してもよい。また、同一のユーザインタフェース上で、標準撮影断面を設定するための基準情報と関連位置基準とをユーザが入力可能なよう構成してもよい。
【0228】
また、本実施形態の実関連位置算出部270は、基本的に第一の実施形態の実撮影断面位置算出部220と同様の処理を行う。すなわち、関連位置パラメータから各撮影対象の被検体の、対応する関連位置基準を算出し、撮影対象の被検体上の関連位置である実関連位置を決定する。
【0229】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、第一の実施形態のMRI装置100に、撮影断面位置とは独立した撮影断面位置に関連する位置を、標準関連位置として設定し、設定した標準関連位置から関連位置パラメータを生成する関連位置基準設定部260と、前記関連位置パラメータから、前記撮影対象の被検体における前記関連する位置として実関連位置を算出する実関連位置算出部270と、をさらに備える。
【0230】
以上説明したように、本実施形態によれば、実撮影断面位置だけでなく、撮影に必要な他の関連する位置、例えば、サチュレーション領域、ナビゲータエコーの撮影領域など、の設定を支援することができる。従って、操作性が向上する。
【0231】
なお、本実施形態は、第一の実施形態の構成を基本として説明したが、これに限られない。第二の実施形態または第三の実施形態の構成に上記本実施形態特有の構成を備えるものであってもよい。
【0232】
なお、上記各実施形態において、計算機110は、CPUとメモリ、記憶装置等を備え、計算機110が実現する各機能は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムをメモリにロードして実行することにより実現される。なお、各機能の全てまたはその一部は、MRI装置100とは独立して設けられる汎用の情報処理装置であって、MRI装置100とデータの送受信が可能な情報処理装置により実現されていてもよい。
【0233】
また、上記各実施形態は、MRI装置を例にあげて説明したが、これに限られない。3次元空間の任意の面を撮影可能な医用画像撮影装置であればよい。
【符号の説明】
【0234】
100:MRI装置、101:マグネット、102:傾斜磁場コイル、103:被検体、104:シーケンサ、105:傾斜磁場電源、106:高周波磁場発生器、107:RFコイル、108:RFプローブ、109:受信器、110:計算機、111:表示装置、112:記憶装置、113:シムコイル、114:シム電源、116:入力装置、210:標準撮影断面設定部、211:基準情報受付部、212:撮影断面パラメータ生成部、220:実撮影断面位置算出部、221:解剖学的特徴構造抽出部、222:精度判定部、230:表示部、240:調整受付部、250:学習部、260:関連位置基準設定部、270:実関連位置算出部、300:ユーザインタフェース、301:ユーザインタフェース、302:ユーザインタフェース、303:ユーザインタフェース、310:撮影部位受付領域、320:基準情報受付領域、321:解剖学的特徴構造受付領域、322:断面方位受付領域、323:画像表示領域、324:画像指定領域、330:完了指示受付領域、351:画像表示領域、352:画像表示領域、361:完了指示受付領域、362:完了指示受付領域、421:解剖学的特徴構造、422:傾き基準点、423:傾き基準点、424:中心基準点、425:断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14