特許第5736460号(P5736460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736460印刷版ユニット、印刷版装着装置および印刷機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736460
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】印刷版ユニット、印刷版装着装置および印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20150528BHJP
   B41N 1/22 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B41F27/12 A
   B41N1/22
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-533430(P2013-533430)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2012062270
(87)【国際公開番号】WO2013171818
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119313
【氏名又は名称】井爪 雅幸
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】井爪 雅幸
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−25543(JP,A)
【文献】 特開2008−120092(JP,A)
【文献】 特開2007−230032(JP,A)
【文献】 特表2007−504013(JP,A)
【文献】 特開昭50−73702(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3153814(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3125749(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/046618(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/018702(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02242649(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41F 17/22
B41F 30/00
B41N 1/16 − 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料よりなるシートの表面の一部に版部が設けられ、長さ方向両端部に裏面側または表面側に突出して幅方向にのびる係合用突条が設けられている印刷版と、
状にされた前記印刷版の前記両係合用突条と係合して前記筒状印刷版の長さ方向両端部を連結している印刷版連結部材とを備えており、
前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えており、
筒状にされた前記印刷版が前記印刷版連結部材で連結された状態で、印刷機の版駆動軸に固定状に設けられた版シリンダ部への取り付けおよび取り外しが可能とされているとともに、前記版シリンダ部から取り外された状態で、シート状にされた前記印刷版と前記印刷版連結部材とに分離可能とされていることを特徴とする印刷版ユニット。
【請求項2】
前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備えていることを特徴とする請求項の印刷版ユニット。
【請求項3】
弾性材料よりなるシートの表面の一部に版部が設けられ、長さ方向両端部に裏面側または表面側に突出して幅方向にのびる係合用突条が設けられている印刷版と、
前記印刷版に脱着可能で、筒状にされた前記印刷版の前記両係合用突条と係合して前記筒状印刷版の長さ方向両端部を連結する印刷版連結部材とを備えており、
前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えており、
前記内側挟持部材の複数箇所に、前記筒状印刷版径方向に所定の肉厚を有するねじ穴形成部が形成され、前記各ねじ穴形成部を前記径方向に貫通するめねじを有するねじ穴が、前記各ねじ穴形成部に形成されており、前記外側挟持部材の複数箇所に、前記ねじ穴に対応して前記外側挟持部材を前記径方向に貫通するねじ挿通用貫通穴が形成されており、複数の挟持用ねじ部材が、前記径方向外側から前記ねじ挿通用貫通穴を貫通して前記ねじ穴にねじ込まれ、前記挟持用ねじ部材によって前記両挟持部材が固定された状態で、前記ねじ穴より前記径方向内側に突出した前記挟持用ねじ部材の前記ねじ穴形成部より前記径方向内側に離れた部分に、抜け止め用ストツパが設けられ、前記両挟持部材に、永久磁石が互いに反発する向きに設けられていることを特徴とする印刷版ユニット。
【請求項4】
前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備えており、前記被ガイド部を前記筒状印刷版周方向に貫く複数の穴状部分が形成され、前記穴状部分より前記筒状印刷版径方向外側の部分が前記ねじ穴形成部となっていることを特徴とする請求項の印刷版ユニット。
【請求項5】
弾性材料よりなるシートの表面の一部に版部が設けられ、長さ方向両端部に裏面側または表面側に突出して幅方向にのびる係合用突条が設けられている印刷版を、印刷機の版駆動軸に装着するための装置であって、
前記印刷版に脱着可能で、筒状にされた前記印刷版の前記両係合用突条と係合して前記筒状印刷版の長さ方向両端部を連結する印刷版連結部材と、
前記版駆動軸に固定状に設けられて外周に前記版駆動軸先端側から前記筒状印刷版が装着される円筒状の版シリンダ部とを備えており、
前記版シリンダ部に、前記筒状印刷版を連結した印刷版連結部材が前記版駆動軸先端側から収容される印刷版連結部材収容みぞと、前記印刷版連結部材の前記版駆動軸基端側端部が当接する軸方向位置決め用ストッパ部と、前記印刷版連結部材を前記版シリンダ部径方向の所定範囲を移動しうるように案内する印刷版連結部材ガイド部と、前記印刷版連結部材を前記版シリンダ部径方向外側に付勢する印刷版連結部材付勢装置とが設けられていることを特徴とする印刷版装着装置。
【請求項6】
前記印刷版連結部材収容みぞが、前記版シリンダ部の外周に設けられたみぞ形成面に設けられ、前記軸方向位置決め用ストッパ部が、前記印刷版収容みぞの前記版駆動軸基端側端部に設けられ、前記印刷版連結部材ガイド部が、前記印刷版連結部材収容みぞに設けられ、前記印刷版連結部材付勢装置の少なくとも一部が、前記印刷版連結部材収容みぞの底に形成された付勢装置収容凹所に設けられていることを特徴とする請求項の印刷版装着装置。
【請求項7】
前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えていることを特徴とする請求項印刷版装着装置
【請求項8】
前記内側挟持部材が、前記印刷版連結部材を前記印刷版連結部材収容みぞに収容するときおよび収容した後に前記印刷版連結部材ガイド部に案内される被ガイド部材であり、前記印刷版連結部材付勢装置により前記版シリンダ部径方向外側に付勢されるようになされていることを特徴とする請求項の印刷版装着装置。
【請求項9】
前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備え、前記被ガイド部が、前記印刷版連結部材ガイド部に案内され、前記印刷版連結部材付勢装置により付勢されるようになされていることを特徴とする請求項の印刷版装着装置。
【請求項10】
前記印刷版連結部材収容みぞの前記版シリンダ部周方向に対向する側壁に、前記版シリンダ部軸方向にのびて前記印刷版連結部材ガイド部を構成するガイド用突条が対向状に設けられ、前記内側挟持部材の被ガイド部の前記版シリンダ部径方向中間部分が、前記ガイド用突条の間に挟まれて前記版シリンダ部軸方向および径方向に摺動するようになされ、前記ガイド用突条より前記版シリンダ部径方向内側に突出した前記内側挟持部材の被ガイド部の部分が、前記印刷版連結部材付勢装置により付勢されるようになされていることを特徴とする請求項の印刷版装着装置。
【請求項11】
前記印刷版連結部材付勢装置が、前記付勢装置収容凹所の壁に沿って前記版シリンダ部軸方向に所定範囲を摺動しうるように配置され、前記版シリンダ部径方向外側の部分に前記版駆動軸先端側を向く楔面が形成された内側スライダと、前記付勢装置収容凹所の壁に沿って前記版シリンダ部径方向に所定範囲を摺動しうるように前記内側スライダと前記内側挟持部材の間に配置され、前記版シリンダ部径方向内側の部分に前記内側スライダの楔面と当接するように前記版駆動軸基端側を向く楔面が形成された外側スライダと、前記内側スライダを前記版駆動軸先端側に付勢する弾性部材と、前記版シリンダ部にねじ合わされて前記版シリンダ部軸方向にのびる切り換え用ねじ部材とを備えており、前記切り換え用ねじ部材が、前記版駆動軸基端側に移動することにより前記弾性部材の付勢力に抗して前記内側スライダを前記版駆動軸軸方向に移動させ、前記版駆動軸先端側に移動することにより前記スライダから離れるようになされていることを特徴とする請求項10の印刷版装着装置。
【請求項12】
前記内側スライダと前記付勢装置収容凹所の壁が永久磁石の磁気吸引力により密着させられ、前記外側スライダと前記付勢装置収容凹所の壁が永久磁石の磁気吸引力により密着させられ、内外両スライダの楔面同士が永久磁石の磁気吸引力により密着させられていることを特徴とする請求項11の印刷版装着装置。
【請求項13】
前記ガイド用突条より前記版シリンダ部径方向内側に突出した前記内側挟持部材の被ガイド部の部分に、前記ガイド用突条に当たることにより前記内側挟持部材の前記径方向外側への移動を阻止する移動規制用突起が設けられていることを特徴とする請求項1012のいずれか1項の印刷版装着装置。
【請求項14】
請求項5の印刷版装着装置において使用される印刷版ユニットであって、
前記印刷版および前記印刷版連結部材からなり、
筒状にされた前記印刷版が前記印刷版連結部材で連結された状態で、印刷機の版駆動軸に固定状に設けられた版シリンダ部への取り付けおよび取り外しが可能とされているとともに、前記版シリンダ部から取り外された状態で、シート状の前記印刷版と前記印刷版連結部材とに分離可能とされていることを特徴とする印刷版ユニット。
【請求項15】
前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えていることを特徴とする請求項14の印刷版ユニット。
【請求項16】
前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備えていることを特徴とする請求項15の印刷版ユニット。
【請求項17】
請求項13のいずれか1項の印刷版装着装置を備えていることを特徴とする印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷版ユニット、印刷版装着装置および印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機として、版駆動軸に固定される版シリンダの外周に印刷版が装着されるようになったものが知られている。
【0003】
このような印刷機では、版駆動軸に固定された状態の版シリンダに、シート状の印刷版を巻き付けて装着することがある。その場合、印刷機内での印刷版の装着作業が面倒で、版シリンダに印刷版を正確に取り付けることが困難である。
【0004】
これを避けるため、版駆動軸から取り外した状態の版シリンダにシート状の印刷版を巻き付けて装着した後に、版シリンダを版駆動軸に固定することもある。この場合、版シリンダはかなりの重量を有するので、版駆動軸に対する版シリンダの取り外し、取り付け作業が困難である。
【0005】
本発明者は、印刷機に対して簡単にかつ正確に取り付けることができる印刷版として、弾性材料により円筒状に形成された版本体の外周面の一部に版部が設けられ、版本体の内周に内向きに突出して軸方向にのびる係合部が形成されているものを提案した(特許文献1参照)。
【0006】
この印刷版は、印刷機の印刷版装着装置に装着されて使用される。たとえば、印刷版装着装置は、版駆動軸に固定状に設けられた版シリンダ部を備えており、印刷版は、この版シリンダ部に一端側からはめられる。版シリンダ部の外周に、一端側から印刷版の係合部がはめられる周方向位置決め用みぞと、印刷版の端部が当接する軸方向位置決め用ストッパとを設けておけば、印刷版を版シリンダ部の所定位置に正確にかつ簡単に取り付けることができる。また、版シリンダ部の一端側から印刷版を簡単に取り外すことができる。
【特許文献1】特開2009−285861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
印刷版は、繰り返して使用することができ、使用済みの印刷版は、版シリンダ部から取り外して保管される。ところが、上記の印刷版は、予め円筒状に形成されているため、保管のために比較的大きなスペースを必要とする。
【0008】
この発明の目的は、上記の問題を解決し、印刷機に対して印刷版を簡単にかつ正確に取り付けることができ、大きな保管スペースを必要としない印刷版ユニットを提供することにある。
【0009】
この発明の目的は、印刷版を簡単にかつ正確に取り付けることを可能にする印刷版装着装置および印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による印刷版ユニットは、弾性材料よりなるシートの表面の一部に版部が設けられ、長さ方向両端部に裏面側または表面側に突出して幅方向にのびる係合用突条が設けられている印刷版と、状にされた前記印刷版の前記両係合用突条と係合して前記筒状印刷版の長さ方向両端部を連結している印刷版連結部材とを備えており、前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えており、筒状にされた前記印刷版が前記印刷版連結部材で連結された状態で、印刷機の版駆動軸に固定状に設けられた版シリンダ部への取り付けおよび取り外しが可能とされているとともに、前記版シリンダ部から取り外された状態で、シート状にされた前記印刷版と前記印刷版連結部材とに分離可能とされていることを特徴とするものである。
【0011】
この明細書において、印刷版を構成するシートの「表面」とは筒状に形成されたときに径方向外側を向く面を、「裏面」とは同じく径方向内側を向く面をそれぞれ言うものとする。また、シートの「長さ方向」とは筒状に形成されたときの周方向を、「幅方向」とは同じく軸方向をそれぞれ言うものとする。
【0012】
筒状にされた印刷版の両端部が印刷版連結部材で連結されることにより、印刷版が筒状に保持される。係合用突条が印刷版連結部材に係合した状態で、印刷版の両端部が印刷版連結部材に固定されるため、印刷版が引っ張られても、印刷版が印刷版連結部材から離れることがない。
【0013】
係合用突条とこれに隣接するシートの部分とのなす角度を係合用突条の突出角度とすると、印刷版と印刷版連結部材の係合の強さの点から、この突出角度は、好ましくは、90度より小さい。さらに、係合用突条の突出角度は、35〜55度がより好ましく、45度が最も好ましい。
【0014】
たとえば、係合用突条は、平板状のシートの各端部を裏面側または表面側に折り曲げることによりシートに一体に形成される。
【0015】
この発明による印刷版ユニットを構成する印刷版は、印刷機の版装着装置に装着されて使用される。たとえば、版装着装置は、印刷版ユニットを構成する印刷版連結部材および印刷機の版駆動軸に固定状に設けられる版シリンダ部を備えている。印刷版ユニットは、版シリンダ部に一端側からはめられ、同じ一端側から取り外される。印刷版ユニットが版シリンダ部にはめられた後に、印刷版連結部材が径方向外側に付勢されることにより、印刷版の一部が版シリンダ部の外周面に密着させられる。版シリンダ部に対する印刷版ユニットの取り付け、取り外しは、印刷版連結部材が径方向外側に付勢されない状態で行われる。このとき、印刷版ユニットを構成する印刷版が印刷版連結部材により筒状に保持されているので、版シリンダ部に対する印刷版ユニットの取り付けおよび取り外しが簡単である。さらに、印刷版連結部材を、取り付けおよび取り外しの際の案内にすることができる。
【0016】
印刷版ユニットを使用しないときは、印刷版から印刷版連結部材を取り外し、印刷版を平板状にして保管することができる。このため、印刷版の保管に大きなスペースを必要としない。
【0017】
印刷版の両係合用突条の突出方向は、同じでも、逆でもよい。
【0018】
たとえば、前記両係合用突条が、前記シートの裏面側に突出している。
【0019】
たとえば、前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えている。
【0020】
印刷版の両係合用突条が裏面側に突出している場合、両係合用突条は内側挟持部材に係合する。印刷版の両係合用突条が表面側に突出している場合、両係合用突条は外側挟持部材に係合する。印刷版の両係合用突条の突出方向が逆の場合、裏面側に突出した係合用突条は内側挟持部材に、表面側に突出した係合用突条は外側挟持部材にそれぞれ係合する。
【0021】
この場合、印刷版の各端部の係合用突条が内側挟持部材または外側挟持部材に係合した状態で、印刷版の両端部が両挟持部材で挟み止められることにより、印刷版の両端部が印刷版連結部材に確実に固定される。
【0022】
印刷版の係合用突条と係合する挟持部材には、係合部が設けられる。
【0023】
係合部は、たとえば、係合用突条とこれに隣接するシートの部分の間の部分に係合するものである。そうすれば、係合用突条が挟持部材に確実に係合される。
【0024】
係合部は、たとえば、内側挟持部材の径方向外側を向く面または外側挟持部材の径方向内側を向く面に軸方向にのびるみぞを形成することにより、形成される。この場合、みぞとそれが形成された挟持部材の面の間の部分が、係合部となる。
【0025】
好ましくは、係合部は係合用突条とシートの裏面の両方に密着するようになされている。そうすれば、印刷版の両端部が内外両挟持部材の間により確実に固定される。
【0026】
たとえば、前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備えている。
【0027】
この場合、内側挟持部材の被ガイド部を案内にして印刷版ユニットを版シリンダ部に一端側からはめた後に、内側挟持部材の被ガイド部を径方向外側に付勢することにより、印刷版を版シリンダ部の外周面に密着させて固定することができる。
【0028】
たとえば、前記内側挟持部材の複数箇所に、前記筒状印刷版径方向に所定の肉厚を有するねじ穴形成部が形成され、前記各ねじ穴形成部を前記径方向に貫通するめねじを有するねじ穴が、前記各ねじ穴形成部に形成されており、前記外側挟持部材の複数箇所に、前記ねじ穴に対応して前記外側挟持部材を前記径方向に貫通するねじ挿通用貫通穴が形成されており、複数の挟持用ねじ部材が、前記径方向外側から前記ねじ挿通用貫通穴を貫通して前記ねじ穴にねじ込まれ、前記挟持用ねじ部材によって前記両挟持部材が固定された状態で、前記ねじ穴より前記径方向内側に突出した前記挟持用ねじ部材の前記ねじ穴形成部より前記径方向内側に離れた部分に、抜け止め用ストッパが設けられ、前記両挟持部材に、永久磁石が互いに反発する向きに設けられている。
【0029】
挟持用ねじ部材を緩めると、永久磁石の磁気反発力により、外側挟持部材が内側挟持部材から離れる。このため、外側挟持部材を手で内側挟持部材から離す必要がない。このように両挟持部材が離れた状態で、印刷版の各端部の係合用突条がいずれかの挟持部材に係合させられ、ねじ部材を締め付けることにより、印刷版の両端部の係合用突条が両挟持部材に挟み止められる。そして、ねじ部材を緩めて、外側挟持部材を内側挟持部材から離した状態で、印刷版が挟持部材から取り外される。ねじ部材を緩めていって、ねじ部材に設けられた抜け止め用ストッパがねじ穴の端部に達すると、ねじ部材はそれ以上緩まなくなり、内外両挟持部材がねじ部材に取り付けられた状態になる。このため、印刷版が両挟持部材から取り外された状態でも、両挟持部材とねじ部材が分離することがなく、取り扱いが簡単である。
【0030】
たとえば、前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備えており、前記被ガイド部を前記筒状印刷版周方向に貫く複数の穴状部分が形成され、前記穴状部分より前記筒状印刷版径方向外側の部分が前記ねじ穴形成部となっている。
【0031】
この場合、挟持用ねじ部材の先端側の部分が被ガイド部の穴状部分内に位置し、邪魔になることがない。
【0032】
この発明による印刷版装着装置は、弾性材料よりなるシートの表面の一部に版部が設けられ、長さ方向両端部に裏面側または表面側に突出して幅方向にのびる係合用突条が設けられている印刷版を、印刷機の版駆動軸に装着するための装置であって、前記印刷版に脱着可能で、筒状にされた前記印刷版の前記両係合用突条と係合して前記筒状印刷版の長さ方向両端部を連結する印刷版連結部材と、前記版駆動軸に固定状に設けられて外周に前記版駆動軸先端側から前記筒状印刷版が装着される円筒状の版シリンダ部とを備えており、前記版シリンダ部に、前記筒状印刷版を連結した印刷版連結部材が前記版駆動軸先端側から収容される印刷版連結部材収容みぞと、前記印刷版連結部材の前記版駆動軸基端側端部が当接する軸方向位置決め用ストッバ部と、前記印刷版連結部材を前記版シリンダ部径方向の所定範囲を移動しうるように案内する印刷版連結部材ガイド部と、前記印刷版連結部材を前記版シリンダ部径方向外側に付勢する印刷版連結部材付勢装置とが設けられていることを特徴とするものである。
【0033】
印刷版の両端部が印刷版連結部材により連結されて印刷版が筒状に保持されることにより、この発明による印刷版ユニットが構成される。
【0034】
印刷版ユニットにおける印刷版を円筒状にしたときの内径は、版シリンダ部の外径より少し大きい。
【0035】
印刷版は、印刷版ユニットにした状態で印刷版装着装置に装着される。印刷版装着装置に印刷版ユニットを取り付けるときには、印刷版連結部材付勢装置が印刷版連結部材を径方向外側に付勢しない状態にしておく。このような状態で、印刷版連結部材が印刷版連結部材収容みぞにはまるように、印刷版ユニットを版シリンダ部に一端側からはめて、印刷版連結部材の基端側端部を軸方向位置決め用ストッパ部に当接させる。これにより、印刷版が、版シリンダ部の所定位置に正確にかつ簡単に取り付けられる。円筒状にしたときの印刷版の内径が版シリンダ部の外径より少し大きく、印刷版を取り付けるときには、印刷版連結部材付勢装置が印刷版連結部材を径方向外側に付勢しない状態になっているので、版シリンダの外周面と印刷版の間に隙間があり、印刷版を版シリンダ部に簡単に取り付けることができる。印刷版が取り付けられたならば、印刷版連結部材付勢装置が印刷版連結部材を径方向外側に付勢する状態にし、印刷版を版シリンダ部の外周面に密着させて固定する。このように、印刷版ユニットの印刷版連結部材が版シリンダ部の印刷版連結部材収容みぞにはまり、印刷版連結部材の基端側端部が軸方向位置決め用ストッパ部に当接し、印刷版連結部材付勢装置で印刷版が版シリンダ部の外周面に密着させられることにより、印刷版の周方向および軸方向の位置決めがなされ、使用中に版シリンダ部に対して印刷版の位置がずれることがない。
【0036】
印刷版装着装置から印刷版を取り外すときは、印刷版連結部材付勢装置が印刷版連結部材を径方向外側に付勢しない状態にする。これにより、版シリンダ部の外周面と印刷版の間に隙間が生じ、印刷版ユニットを軸方向に移動させて、版シリンダ部の一端側から簡単に取り外すことができる。
【0037】
円筒状にしたときの印刷版の内径と版シリンダ部の外周面の外径の差は、版シリンダ部に対する印刷版ユニットの取り付け、取り外しが簡単にできる範囲内で、なるべく小さくするのが好ましい。
【0038】
印刷版の両係合用突条の突出方向は、同じでも、逆でもよい。好ましくは、両係合用突条が、シートの裏面側に突出している。
【0039】
たとえば、前記印刷版連結部材収容みぞが、前記版シリンダ部の外周に設けられたみぞ形成面に設けられ、前記軸方向位置決め用ストッバ部が、前記印刷版収容みぞの前記版駆動軸基端側端部に設けられ、前記印刷版連結部材ガイド部が、前記印刷版連結部材収容みぞに設けられ、前記印刷版連結部材付勢装置の少なくとも一部が、前記印刷版連結部材収容みぞの底に形成された付勢装置収容凹所に設けられている。
【0040】
たとえば、みぞ形成面は、版シリンダ部の外周円筒面の一部を取り除くことにより形成される。みぞ形成面は、曲面であってもよいが、平坦面であるのが好ましい。
【0041】
印刷版ユニットが版シリンダ部に装着されて、印刷版が印刷版連結部材付勢装置により版シリンダ部の外周面に密着させられた状態において、印刷版連結部材が、版シリンダ部の外周面を含む仮想円筒面より径方向外側に出ないように、版シリンダ部と印刷版ユニットの寸法関係が決められる。版シリンダ部の外周円筒面の一部が取り除かれてみぞ形成面が形成されることにより、このような寸法関係を実現することが可能になる。
【0042】
たとえば、前記印刷版連結部材が、前記筒状印刷版の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材および外側挟持部材を備えている。
【0043】
この場合、印刷版の各端部の係合用突条が内側挟持部材または外側挟持部材に係合した状態で、印刷版の両端部が両挟持部材で挟み止められることにより、印刷版の両端部が印刷版連結部材に確実に固定される。
【0044】
たとえば、前記内側挟持部材が、前記印刷版連結部材を前記印刷版連結部材収容みぞに収容するときおよび収容した後に前記印刷版連結部材ガイド部に案内される被ガイド部材であり、前記印刷版連結部材付勢装置により前記版シリンダ部径方向外側に付勢されるようになされている。
【0045】
この場合、内側挟持部材が版シリンダ部の印刷版連結部材ガイド部に案内されることにより、印刷版ユニットを版シリンダ部に一端側から簡単にはめることができ、印刷版連結部材を径方向に円滑に移動させることができる。また、印刷版ユニットを版シリンダ部にはめた後に、内側挟持部材を印刷版連結部材付勢装置で径方向外側に付勢することにより、印刷版を版シリンダ部の外周面に密着させて確実に固定することができる。
【0046】
たとえば、前記内側挟持部材が、前記印刷版を挟み止める挟持部と、前記挟持部から前記筒状印刷版径方向内側にのびる被ガイド部とを備え、前記被ガイド部が、前記印刷版連結部材ガイド部に案内され、前記印刷版連結部材付勢装置により付勢されるようになされている。
【0047】
この場合、内側挟持部材の被ガイド部が版シリンダ部の印刷版連結部材ガイド部に案内されることにより、印刷版ユニットを版シリンダ部に一端側から簡単にはめることができ、印刷版連結部材を径方向に円滑に移動させることができる。また、印刷版ユニットを版シリンダ部にはめた後に、内側挟持部材の被ガイド部を印刷版連結部材付勢装置で径方向外側に付勢することにより、印刷版を版シリンダ部の外周面に密着させて確実に固定することができる。
【0048】
たとえば、前記印刷版連結部材収容みぞの前記版シリンダ部周方向に対向する側壁に、前記版シリンダ部軸方向にのびて前記印刷版連結部材ガイド部を構成するガイド用突条が対向状に設けられ、前記内側挟持部材の被ガイド部の前記版シリンダ部径方向中間部分が、前記ガイド用突条の間に挟まれて前記版シリンダ部軸方向および径方向に摺動するようになされ、前記ガイド用突条より前記版シリンダ部径方向内側に突出した前記内側挟持部材の被ガイド部の部分が、前記印刷版連結部材付勢装置により付勢されるようになされている。
【0049】
この場合、印刷版連結部材ガイド部を構成するガイド用突条により、内側挟持部材の被ガイド部を軸方向および径方向に確実にかつ円滑に案内することができ、印刷版連結部材付勢装置により、径方向内側から印刷版連結部材を確実に付勢することができる。
【0050】
たとえば、前記印刷版連結部材付勢装置が、前記付勢装置収容凹所の壁に沿って前記版シリンダ部軸方向に所定範囲を摺動しうるように配置され、前記版シリンダ部径方向外側の部分に前記版駆動軸先端側を向く楔面が形成された内側スライダと、前記付勢装置収容凹所の壁に沿って前記版シリンダ部径方向に所定範囲を摺動しうるように前記内側スライダと前記内側挟持部材の間に配置され、前記版シリンダ部径方向内側の部分に前記内側スライダの楔面と当接するように前記版駆動軸基端側を向く楔面が形成された外側スライダと、前記内側スライダを前記版駆動軸先端側に付勢する弾性部材と、前記版シリンダ部にねじ合わされて前記版シリンダ部軸方向にのびる切り換え用ねじ部材とを備えており、前記切り換え用ねじ部材が、前記版駆動軸基端側に移動することにより前記弾性部材の付勢力に抗して前記内側スライダを前記版駆動軸軸方向に移動させ、前記版駆動軸先端側に移動することにより前記内側スライダから離れるようになされている。
【0051】
この場合、切り換え用ねじ部材を所定の付勢解除方向に回転させて、版駆動軸の基端側に移動させると、これに押されて、内側スライダが、弾性部材の付勢力に抗して基端側に移動し、内側スライダの楔面が外側スライダの楔面から離れる方向に移動するため、外側スライダが径方向内側に移動する。この状態で、印刷版ユニットを版シリンダに簡単に取り付けることができる。印刷版を版シリンダに取り付けた後、切り換え用ねじ部材を付勢解除方向と反対の付勢方向に回転させて、版駆動軸の先端側に移動させると、内側スライダが、弾性部材の付勢力により先端側に移動し、内側スライダの楔面が外側スライダの楔面を径方向外側に押し、外側スライダを径方向外側に付勢する。内側スライダが所定の位置まで先端側に移動すると、外側スライダに作用する径方向外向きの付勢力により、印刷版が引っ張られ、版シリンダ部の外周面に密着して固定される。さらに切り換え用ねじ部材を先端側に移動させても、内側スライダはそれ以上は移動せず、切り換え用ねじ部材は内側スライダから離れる。このため、外側スライダが内側スライダにより径方向外側に付勢され、印刷版が常に引っ張られた状態になり、印刷中に、経時変化などで印刷版に伸びが生じたような場合でも、印刷版が緩むことがない。
【0052】
このように、切り換え用ねじ部材を回転させてその軸方向の位置を調整するだけで、版シリンダ部に対する印刷版ユニットの取り付け、取り外しおよび固定を簡単に行うことができる。さらに、装着された印刷版を常に引っ張った状態にして、その緩みを防止することができる。
【0053】
たとえば、前記内側スライダと前記付勢装置収容凹所の壁が永久磁石の磁気吸引力により密着させられ、前記外側スライダと前記付勢装置収容凹所の壁が永久磁石の磁気吸引力により密着させられ、内外両スライダの楔面同士が永久磁石の磁気吸引力により密着させられている。
【0054】
永久磁石の磁気吸引力は、密着させられた両部材の相対移動は許容するが、互いに離れることは阻止する程度の大きさに決められる。
【0055】
この場合、内外両スライダが付勢装置収容凹所の壁から離れることおよび両スライダの楔面が離れることが永久磁石の磁気吸引力によって防止され、両スライダの移動が円滑である。
【0056】
たとえば、前記ガイド用突条より前記版シリンダ部径方向内側に突出した前記内側挟持部材の被ガイド部の部分に、前記ガイド用突条に当たることにより前記内側挟持部材の前記径方向外側への移動を阻止する移動規制用突起が設けられている。
【0057】
印刷版連結部材が取り付けられた版シリンダ部が回転すると、印刷版連結部材が遠心力により径方向外側に移動しようとするが、移動規制用突起がガイド用突条に当たることにより、印刷版連結部材の移動が停止し、印刷版連結部材が版シリンダ部から飛び出すことが防止される。
【0058】
この発明による印刷機は、上記の印刷版装着装置を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0059】
この発明の印刷版ユニットによれば、上記のように、印刷機に対する取り付けおよび取り外しが簡単であり、しかも、印刷版連結部材が取り外された印刷版を平板状にして保管することができ、印刷版の保管に大きなスペースを必要としない。
【0060】
この発明の印刷版装着装置および印刷機によれば、上記のように、印刷機に対する印刷版の取り付け、取り外しおよび固定を簡単にかつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、この発明の1実施形態を示す印刷版ユニットの斜視図である。
図2図2は、同印刷版ユニットの分解斜視図である。
図3図3は、同印刷版ユニットの印刷版連結部材の分解斜視図である。
図4図4は、この発明の1実施形態を示す印刷機の印刷版装着装置の部分の縦断面図である。
図5図5は、図4の印刷版装着装置の正面図である。
図6図6は、図4のVI−VI線に沿って一部を取り除いて示す矢視図である。
図7図7は、図4の一部を拡大して示す縦断面図である。
図8図8は、図7と同じ部分の拡大縦断面図であって、図7と異なる状態を示すものである。
図9図9は、図4のIX−IX線に沿う拡大横断面図である。
図10図10は、この発明の他の実施形態を示す印刷版ユニットの主要部の縦断面図である。
図11図11は、図10のXI−XI線に沿う拡大横断面図である。
図12図12は、図11と同じ部分の拡大横断面図であって、図11と異なる状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、図面を参照して、この発明のいくつかの実施形態について説明する。
図1図3は印刷版ユニット(1)の1実施形態を、図4図9は印刷版装着装置(2)の1実施形態を、図10図12は印刷版ユニット(1)の他の実施形態を示している。
【0063】
図1に示すように、印刷版ユニット(1)は、シート状の印刷版(3)が印刷版連結部材(4)により連結されて筒状に保持されたものである。連結部材(4)は、印刷版装着装置(2)の一部を構成している。
【0064】
図4に示すように、印刷機は、水平に配置された版駆動軸(5)を備えている。軸(5)の一端側の部分は、図示しない印刷機の機枠に設けられた軸受ハウジング(6)に回転支持され、軸(5)の他端側の部分は、機枠に設けられた図示しない軸受ハウジングに回転支持されている。そして、印刷版装着装置(2)は、軸受ハウジング(6)より突出した軸(5)の一端部に脱着ができるように固定されるものであり、軸(5)の一端部に固定される円筒状の版シリンダ部(7)を備えている。
【0065】
以下の説明において、印刷版装着装置(2)が固定される軸(5)の端部側(図4の左側)を前、反対側(図4の右側)を後とする。印刷版装着装置(2)が固定される軸(5)の前端部の自由端側を先端側、反対側の軸受ハウジング(5)に支持された側を基端側ということにする。また、この明細書において、とくに断りのない限り、軸(5)、版シリンダ部(7)および印刷版ユニット(1)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、単に軸方向、径方向および周方向というものとする。
【0066】
図1図3を参照して、印刷版ユニット(1)の1実施形態について説明する。
図1は印刷版ユニット(1)の斜視図、図2は同分解斜視図、図3は印刷版ユニット(1)を構成する連結部材(4)の分解斜視図である。なお、図4図5図7および図9にも、印刷版装着装置(2)に装着された状態の印刷版ユニット(1)が示されている。
【0067】
印刷版(3)について、筒状に形成されたときに径方向外側を向く面を表面、径方向内側を向く面を裏面とし、筒状に形成されたときの周方向を長さ方向、軸方向を幅方向とする。
【0068】
印刷版(3)は、弾性材料よりなるシート(8)を備えている。シート(8)の形状は任意であるが、この例では、方形状である。シート(8)の表面(8a)の一部に版部(9)が設けられ、長さ方向両端部に裏面(8b)側に突出して軸方向にのびる係合用突条(10)が設けられている。
【0069】
版部(9)は、シート(8)の両端部を除く表面(8a)の所定箇所に設けられており、版部(9)の表面が版面となっている。
【0070】
突条(10)は、シート(8)と一体でも、別体でもよい。この例では、突条(10)は、シート(8)の両端部を裏面(8b)側に折り曲げることにより形成され、シート(8)と一体で、シート(8)の全幅にわたっている。
【0071】
突条(10)とこれに隣接するシート(8)の裏面(8b)とのなす角度α(図9参照)を突条(10)の突出角度とすると、この突出角度αは、好ましくは、90度より小さい。さらに、突条(10)の突出角度αは、35〜55度がより好ましく、45度が最も好ましい。この例では、平板状のシート(8)の両端部が裏面(8b)側に約135度折り返されて、突出角度αが約45度になっている。
【0072】
シート(8)は、適当な金属よりなる。この例では、SS鋼製である。シート(8)の厚さは、筒状に形成できて、かつ弾性力により筒状を保持できる程度であればよい。この例では、約0.26mmである。版部(9)は、製版に適した適当な合成樹脂材料よりなる。シート(8)と版部(9)を合わせた厚さは、この例では、約0.82mmである。
【0073】
連結部材(4)は、筒状に形成された印刷版(3)の長さ方向両端部を径方向の内外両側から挟み止める内側挟持部材(11)および外側挟持部材(12)を備えている。この例では、印刷版(3)の突条(10)がシート(8)の裏面(8b)側に突出しているので、内側挟持部材(11)が径方向内側から突条(10)に係合し、外側挟持部材(12)が径方向外側から内側部材部材(11)に固定されて、印刷版(3)の両端部を挟み止めるようになっている。両挟持部材(11)(12)は、軸方向にのびている。
【0074】
内側挟持部材(11)は、後述するように印刷版ユニット(1)を版シリンダ部(7)に装着するときの案内となる被ガイド部材である。内側挟持部材(11)は、印刷版(3)を挟持する挟持部(13)と、挟持部(13)の径方向内側の面の周方向中央部に一体に形成された被ガイド部(14)とを備えている。挟持部(13)は、周方向の長さ(幅)に比べて径方向の厚さが小さい板状をなす。被ガイド部(14)は、径方向の長さ(高さ)に比べて周方向の厚さが小さい板状をなす。
【0075】
挟持部(13)の径方向外側の部分に、印刷版(3)の各端部の裏面(8b)と突条(10)の間の部分に係合する2つの係合部(15)が設けられている。挟持部(13)の径方向外側を向く平坦面に、軸方向にのびて挟持部(13)の全長にわたる2条のみぞ(16)が形成され、各みぞ(16)と上記平坦面との間が係合部(15)となっている。両みぞ(16)は底側にいくにしたがって互いに離れるように傾斜しており、みぞ(16)と上記平坦面のなす角度すなわち係合部(15)の角度は、印刷版(3)の突条(10)の突出角度αとほぼ等しい。各みぞ(16)の幅は、印刷版(3)の突条(10)の部分の厚さよりわずかに大きい。挟持部(13)の径方向外側を向く平坦面の両みぞ(16)の間の部分に、めねじが形成された複数のねじ穴(17)が軸方向に所定の間隔をおいて形成されている。
【0076】
被ガイド部(14)の周方向両側を向く平坦面の径方向内側端寄りの部分に、周方向両側に突出した移動規制用突起(18)が設けられている。この例では、各面に2つの突起(18)が軸方向に比較的大きな間隔をおいて設けられている。突起(18)は、被ガイド部(14)に一体に形成されてもよいが、この例では、被ガイド部(14)の面に形成された図示しない穴に圧入などの適宜な手段で圧入された移動規制ピンの面より突出した部分により、構成されている。図示は省略したが、内側挟持部材(11)の重量軽減のために、被ガイド部(14)などの複数箇所が取り除かれるのが好ましい。
【0077】
外側挟持部材(12)は、周方向の長さ(幅)に比べて径方向の厚さが小さい板状をなす。挟持部材(12)の径方向内側の面は、平坦面である。挟持部材(12)の径方向外側の面の周方向中央部は平坦面である。挟持部材(12)の周方向両端部の肉厚は周方向の外側にいくにしたがって小さくなっている。外側挟持部材(12)の周方向中央部に、内側挟持部材(11)のねじ穴(17)に対応して、同数の皿状座ぐり付きねじ挿通用貫通穴(19)が形成されている。そして、後に詳しく説明するように、両挟持部材(11)(12)が複数の皿頭ねじ(20)で互いに固定されるようになっている。
【0078】
印刷版(3)と両挟持部材(11)(12)から印刷版ユニット(1)を組み立てる場合、まず、図2に矢印で示すように、板状の印刷版(3)の長さ方向両端部を裏面側に曲げて、筒状にし、突条(10)を内側挟持部材(11)のみぞ(16)にはめ、係合部(15)に係合させる。そして、図1に示すように、外側挟持部材(12)を、内側挟持部材(11)および印刷版(3)の端部に径方向外側から重ね、ねじ(20)を貫通穴(19)に挿入してねじ穴(17)にねじ込むことにより、内側固定部材(11)に固定する。これにより、印刷版(3)の長さ方向両端部が両挟持部材(11)(12)で挟み止められて連結され、筒状の印刷版ユニット(1)が構成される。
【0079】
印刷版ユニット(1)を分解する場合、ねじ(20)を緩め、両挟持部材(11)(12)を互いに切り離すか、ねじ(20)が内側挟持部材(11)のねじ穴(17)にはまった状態で両挟持部材(11)(12)を必要量離すかして、印刷版(3)から取り外す。分解後は、両挟持部材(11)(12)をねじ(20)で締め付けられた状態で保管することもできるし、両挟持部材(11)(12)とねじ(20)を切り離した状態で保管することもできる。
【0080】
両挟持部材(11)(12)の材料は適当な金属であればよいが、この例では、S55C鋼製である。
【0081】
図4図9を参照して、印刷機の印刷版装着装置(2)の1実施形態について説明する。
図4は印刷版装着装置(2)の部分の縦断面図、図5図4の印刷版装着装置(2)の正面図、図6図4のVI−VI線に沿って一部を取り除いて示す矢視図、図7図4の一部を拡大して示す縦断面図、図8図7と同じ部分の拡大縦断面図であって図7と異なる状態を示すもの、図9図4のIX−IX線に沿う拡大横断面図である。
【0082】
印刷機の版駆動軸(5)は、図示しない公知の駆動手段により所定方向に所定速度で回転駆動される。軸受ハウジング(6)より突出した駆動軸(5)の前端部に先細テーパ部(5a)が形成されている。
【0083】
版シリンダ部(7)は、駆動軸(5)のテーパ部(5a)に脱着可能に固定される。版シリンダ部(7)は、中心に前側の内径の小さいテーパ穴(21)が形成された円筒状をなし、その外周に、軸(5)と同心の円筒状版装着面(22)が形成されている。重量軽減のため、版シリンダ部(7)の周方向複数箇所(この例では4箇所)が前後全長にわたって取り除かれている。それにより、版シリンダ部(7)は、内周にテーパ穴(21)が形成された内側先細テーパ筒部(23)と、外周に版装着面(22)が形成された外側円筒部(24)と、これらを連結する複数の連結部(25)とから構成されている。版シリンダ部(7)は、テーパ穴(21)に軸(5)のテーパ部(5a)をはめ合わせた状態で図示しないねじなどの手段により軸(5)に固定され、軸(5)と一体となって回転する。
【0084】
版シリンダ部(7)の材料は鋳鉄などの適当な金属であればよいが、この例では、磁性材料であるダクタイル鋳鉄製である。
【0085】
版シリンダ部(7)の外側円筒部(24)の1つの連結部(25)(図5の上側に位置している)に対応する部分において、円筒面の一部が取り除かれて、平坦なみぞ形成面(26)が形成されており、外側円筒部(24)のみぞ形成面(26)を除く部分が版装着面(22)となっている。印刷版(3)の版部(9)は、印刷版ユニット(1)が版シリンダ部に装着されたときに版装着面(22)に密着するシート(8)の部分に形成され、版装着面(22)の周方向長さは、版部(9)の周方向長さより長い。版装着面(22)の前端部に、面取りにより先細テーパ部(27)が形成されており、テーパ部(27)を除く版装着面(22)の外径は全長にわたって一定である。
【0086】
版シリンダ部(7)の外側円筒部(24)の後端面の外周部に、版装着面(22)より径方向外側に少し張り出した円環状のストッパ部材(28)が図示しないねじなどの適宜な手段により固定されている。ストッパ部材(28)は、軸方向位置決め用ストッパ部を構成している。みぞ形成面(26)の周方向中央部に対応するストッパ部材(28)の部分(図5の上側に位置している)に、径方向内側に突出した受け部(28a)が一体に形成されている。ストッパ部材(28)の版装着面(22)の外周面からの張り出し量は、印刷版(3)のシート(8)と版部(9)を合わせた厚さより小さく、シート(8)の厚さより大きい。この例では、約0.5mmである。
【0087】
連結部(25)に対応するみぞ形成面(26)の周方向中央部の軸方向全長に、印刷版ユニット(1)の印刷版連結部材(4)の内側挟持部材(11)がはめられる印刷版連結部材収容みぞ(29)が形成されている。みぞ(29)は、径方向外側にいくにしたがって周方向の幅が大きくなった径方向外側の台形みぞ部(29a)と、台形みぞ部(29a)の底に形成された角みぞ部(29b)とからなる。角みぞ部(29b)の周方向の幅は、台形みぞ部(29a)の底の幅より少し小さく、内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)の周方向幅より少し大きい。みぞ(29)の後端は、ストッパ部材(28)の受け部(28a)で塞がれている。
【0088】
台形みぞ部(29a)の底部に、内側挟持部材(11)を軸方向に案内するとともに径方向の所定範囲を移動するように案内する印刷版連結部材ガイド部を構成する1対のガイド部材(30)が固定されている。ガイド部材(30)は、台形みぞ部(29a)の底壁と底部両側壁に軸方向全長にわたって密着する形で、図示しないねじなどの適宜な手段により固定され、ガイド用突条を構成している。ガイド部材(30)の周方向に対向する面は、版シリンダ部(7)の中心を含む1つの平面と平行な平坦面であり、これら対向面間の幅は、角みぞ部(29b)の幅より小さく、内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)の幅よりわずかに大きい。なお、ガイド部材(30)の対向面間の幅と角みぞ部(29b)の幅との差は、内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)の円滑な移動を妨げない範囲内でできるだけ小さくするのが好ましい。ガイド部材(30)の径方向高さは、内側挟持部材(11)の挟持部(13)の径方向内側の面と移動規制用突起(18)との径方向の間隔より小さい。
【0089】
台形みぞ部(29a)の底の軸方向中央部に、角みぞ部(29b)の周方向の幅より幅の少し大きい付勢装置収容凹所(31)が形成されている。凹所(31)の縦断面形状(図8参照)および横断面形状(図9参照)はともに方形状である。また、凹所(31)の径方向深さは周方向幅より大きく、軸方向長さは深さより大きい。凹所(31)の両側壁に、径方向にのびて凹所(31)の径方向外側端に達するガイドみぞ(32)が対向状に形成されている。
【0090】
凹所(31)が形成された連結部(25)の前部に、連結部(25)の前端部から凹所(25)に達するねじ部材収容穴(33)が形成されている。穴(33)の前端部は軸方向長さの比較的短い大径部(33a)、後端部は軸方向長さの比較的短い小径部(33b)、これらの間が軸方向長さの比較的長い中間径部(33c)となっている。同連結部(25)の後部に、凹所(25)から連結部(25)の後端に達する弾性部材収容穴(34)が形成されている。
【0091】
凹所(25)と2つの穴(33)(34)の部分に、後述するように版シリンダ部(7)に取り付けられた印刷版ユニット(1)の内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)を径方向外側に付勢するための印刷版連結部材付勢装置(35)が設けられている。
【0092】
付勢装置(35)は、凹所(31)内に配置された内側スライダ(36)および外側スライダ(37)、穴(34)内に配置された圧縮コイルばね(38)と、穴(33)内に配置された切り換え用ねじ部材(39)とを備えている。
【0093】
内側スライダ(36)は、前側の径方向高さが小さい台形厚板状をなし、その軸方向長さは凹所(25)の長さより小さい。内側スライダ(36)は、凹所(31)の底壁と両側壁に沿って前端壁に当たる前端位置と後端壁に当たる後端位置の間を軸方向に摺動しうるように配置されている。内側スライダ(36)の径方向外側の部分全体に、前側を向く楔面(36a)が形成されている。内側スライダ(36)は、この例ではS55C鋼製である。
【0094】
凹所(25)の底壁に前後複数の第1永久磁石(40)が埋め込まれている。内側スライダ(36)の径方向内側の面に、前後複数の第2永久磁石(41)が埋め込まれている。第1永久磁石(40)と第2永久磁石(41)は互いに吸引するように配置され、この磁気吸引力により、内側スライダ(36)が凹所(31)の底壁に密着した状態で前後方向に摺動するようになっている。
【0095】
外側スライダ(37)は、内側スライダ(36)の径方向外側に配置されている。外側スライダ(37)は、後側の径方向高さが小さい台形厚板状をなし、その軸方向長さは凹所(31)の軸方向長さよりわずかに小さい。外側スライダ(37)の径方向内側の前部を除く部分に、内側スライダ(36)の楔面(36a)に対向するように後側を向く楔面(37a)が形成されている。外側スライダ(37)は、この例ではS55C鋼製である。
【0096】
外側スライダ(37)の周方向両側の互いに対応する位置に、周方向両側に突出して凹所(31)のガイドみぞ(32)にはまるガイド用突起(42)が設けられている。突起(42)は、内側スライダ(37)に一体に形成されてもよいが、この例では、内側スライダ(37)の面に形成された穴に圧入などの適宜な手段で圧入された移動規制ピンの面より突出した部分により、構成されている。外側スライダ(37)は、突起(42)がガイドみぞ(32)はまった状態で凹所(31)の前後両端壁および両側壁に沿って径方向に摺動しうるとともに、楔面(37a)が内側スライダ(36)の楔面(36a)と相互に摺動しうるようになっている。外側スライダ(37)の前端面に第3永久磁石(43)が埋め込まれており、その磁気吸引力により、内側スライダ(37)が凹所(31)の前端壁に密着した状態で径方向に摺動するようになっている。内側スライダ(36)の楔面(36a)に第4永久磁石(44)が埋め込まれており、その磁気吸引力により、内外スライダ(36)(37)の楔面(36a)(37a)同士が互いに密着した状態で摺動するようになっている。
【0097】
弾性部材収容穴(34)の後端は、連結部(25)にボルト(45)で固定された蓋(46)により塞がれている。ばね(38)は、穴(34)と凹所(31)にかけて、蓋(46)と内側スライダ(36)の後端面との間に圧縮状態で収容されており、内側スライダ(36)を前側に付勢する弾性部材を構成している。
【0098】
ねじ部材収容穴(33)に段付き円筒状のハウジング(47)がはめられている。ハウジング(47)の後側部分は穴(33)の中間径部(33c)に密にはめられ、ハウジング(47)の前端部に形成された外向きフランジ部(47a)が穴(33)の大径部(33a)にはめられて、複数のボルト(48)により連結部(25)に固定されている。ハウジング(47)の後端部は内周にめねじ(左ねじ)が形成された小径めねじ部(47b)、それより前側の部分はめねじ部(47b)より内径の大きい大径部(47c)となっている。
【0099】
ねじ部材(39)は、前後方向にのびる前側のノブ(49)の後端部に前後方向にのびる後側のねじ軸(50)の前端部がはめられて、ねじなどの適宜な手段により回転および軸方向の移動をしないように固定されたものである。
【0100】
ノブ(49)は、比較的長い円柱部(49a)の前端に短い角柱部(49b)が一体に形成されたものである。円柱部(49a)の外周面に、軸方向にのびる断面円弧状の複数の位置決め用みぞ(51)が円柱部(49a)の周方向に等間隔をおいて形成されている。
【0101】
ねじ軸(50)は、ノブ(49)の後端に固定されたおねじ部(50a)の後端におねじ部(50a)より小径の円柱部(50b)が一体に形成されたものである。おねじ部(50a)と円柱部(50b)の境界部に、おねじ部(50a)より外径の少し大きいフランジ状のストッパ部(50c)が一体に形成されている。おねじ部(50a)の外周に、ハウジング(47)のめねじ部(47b)に対応するおねじ(左ねじ)が形成されている。
【0102】
ねじ軸(50)のおねじ部(50a)がハウジング(47)のめねじ部(47b)にはめ合わされ、ノブ(49)の円柱部(49a)がハウジング(47)の大径部(47c)の内側に回転および軸方向の移動ができるようにはめられている。ねじ軸(50)のストッパ部(50c)がハウジング(47)と連結部(25)のねじ部材収容穴(33)の小径部(33b)との間に位置し、ねじ軸(50)の円柱部(50b)が小径部(33b)に径方向にわずかな隙間をあけてはまっている。
【0103】
ねじ部材(50)の角柱部(49b)を回転させることにより、ねじ部材(50)全体が、ストッパ部(50c)がハウジング(47)の後端面に当たる前端位置と、ストッパ部(50c)がねじ部材収容穴(33)の小径部(33b)の前端面に当たる後端位置との間を前後に移動しうるようになっている。図4に示すように、ねじ部材(50)が前端位置に移動した状態では、ノブ(49)の円柱部(49a)の前側部分が連結部(25)の前端面より前方に突出し、円柱部(49a)の後部がハウジング(47)のフランジ部(47a)の内側に位置している。また、ねじ軸(50)の円柱部(50b)の後端は、ねじ部材収容穴(33)の小径部(33b)の後端面と一致するか、それよりわずかに前側に位置している。図8に示すように、ねじ部材(50)が後端位置に移動した状態では、ノブ(49)の円柱部(49a)のほぼ全体がハウジング(47)の大径部(47c)の内側にはまり、角柱部(47b)が連結部(25)の前端面より前方に突出している。また、ねじ軸(50)の円柱部(50b)が、ねじ部材収容穴(33)の小径部(33b)の後端面より後方に突出して、凹所(31)内に位置している。
【0104】
ハウジング(47)のフランジ部(47a)の1箇所に、フランジ部(47a)をその径方向に貫通するボール収容穴(52)が形成されている。フランジ部(47a)の外周側の穴(52)の端部が、蓋(53)で塞がれている。穴(52)には、位置決め用ボール(54)が穴(52)に沿って移動しうるように収容され、蓋(53)とボール(54)の間の穴(52)内にボール付勢弾性部材を構成する圧縮コイルばね(55)が圧縮状態で収容されている。このばね(55)の弾性力により、ボール(54)が常にノブ(49)の円柱部(49a)のみぞ(51)の部分に圧接状態で係合させられ、ねじ部材(50)が自由に回転することを阻止するようになっている。
【0105】
ねじ部材(50)は、前から見て左に回転させられると、後側に移動し、ばね(38)の弾性力に抗して内側スライダ(36)を後側に移動させる。これにより、外側スライダ(37)が径方向内側に移動する。図8は、内側スライダ(36)が後端位置まで移動して、外側スライダ(37)が最内側位置まで移動した状態を示している。逆に、ねじ部材(50)は、前から見て右に回転させられると、前側に移動し、内側スライダ(36)がばね(38)の弾性力によって前側に移動する。これにより、外側スライダ(37)が径方向外側に移動する。図4は、内側スライダ(36)が前端位置の近くまで移動して、外側スライダ(37)が最外側位置の近くまで移動した状態を示している。
【0106】
印刷版(3)は、印刷版ユニット(1)にした状態で、次のようにして、装着装置(2)に装着される。
【0107】
印刷版ユニット(1)を装着装置(2)に取り付けるときには、図8に示すように、外側スライダ(37)を最内側位置にしておく。その状態で、内側挟持部材(11)の突起(18)より径方向外側の部分がガイド部材(30)の間にはまるように連結部材(4)をみぞ(29)に前側からはめ、印刷版(3)の部分を版シリンダ部(7)の版装着面(22)の周囲にはめる。このとき、印刷版(3)と版装着面(22)の間に隙間ができるように、版シリンダ部(7)と印刷版ユニット(1)の寸法関係が決められている。次に、ガイド部材(30)を案内にして、連結部材(4)を後側に移動させ、ストッパ部材(28)の受け部(28a)に当接させる。これにより、印刷版ユニット(1)の軸方向の位置決めがなされるので、ねじ部材(39)を右に回転させて、図4に示されている前端位置まで移動させる。ねじ部材(39)が前側に移動すると、内側スライダ(36)が、ばね(38)の弾性力により、ねじ部材(39)の円柱部(50b)に接触した状態で前側に移動する。これにより、外側スライダ(37)が径方向外側に移動し、内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)に当たって、連結部材(4)を径方向外側に移動させる。連結部材(4)が径方向外側に移動すると、印刷版(3)を引っ張って、版シリンダ部(7)の版装着面(22)に密着させる。連結部材(4)がある程度径方向外側に移動して、印刷版(3)の張力とばね(38)の弾性力が釣り合うと、図4および図9に示すように、連結部材(4)は停止する。連結部材(4)が停止すると、外側スライダ(37)が停止し、内側スライダ(36)も停止する。これにより、印刷版(3)の装着が完了し、印刷版(3)は版装着面(22)に密着状態に固定され、軸方向および周方向のいずれにも移動しなくなる。このとき、ねじ部材(39)は、内側スライダ(36)から前方に離れており、外側スライダ(37)の付勢力により印刷版(3)が引っ張られた状態になっている。このように印刷版ユニット(1)が版シリンダ部(7)に装着されて、印刷版(3)が版装着面(22)に密着させられた状態において、連結部材(4)が、版装着面(22)の外周面を含む仮想円筒面(C)(図9参照)より径方向外側に出ないように、版シリンダ部(7)と印刷版ユニット(1)の寸法関係が決められている。
【0108】
印刷時には、上記のように版シリンダ部(7)に印刷版ユニット(1)が固定されている状態で、版シリンダ部(7)が回転させられる。このとき、印刷版ユニット(1)の内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)が版シリンダ部(7)の1対のガイド部材(30)の間に挟まれ、連結部材付勢装置(35)から連結部材(4)に作用する径方向外向きの力によって印刷版(3)が版シリンダ部(7)の版装着面(22)に密着させられているため、印刷版(3)の位置がずれることがない。また、印刷版(3)の突条(10)が内側挟持部材(11)の係合部(15)に係合した状態で、印刷版(3)の両端寄りの部分が内側挟持部材(11)と外側挟持部材(12)の間に挟み止められているため、印刷版(3)の両端部が連結部材(4)に確実に固定され、印刷版(3)が引っ張られても、印刷版(3)が連結部材(4)から外れることもない。ねじ部材(39)のノブ(49)のみぞ(51)にボール(54)がばね(55)の弾性力によって圧接しているため、ねじ部材(39)が回転することがない。上記のように、印刷版(3)が外側スライダ(37)によって引っ張られた状態になっているため、経時変化などで印刷版(3)に伸びが生じたような場合でも、印刷版(3)が緩むことがない。印刷版ユニット(2)の連結部材(4)が上記仮想円筒面(C)より径方向内側に位置し、ストッパ部材(28)が版部(9)の外周面より径方向外側に張り出していないので、連結部材(4)およびストッパ部(28)が印刷に支障をきたすことがない。版シリンダ部(7)の回転中、連結部材(4)には遠心力が作用する。仮に、印刷版(3)が破断したような場合、連結部材(4)の径方向の拘束がなくなって、連結部材(4)は遠心力によりガイド部材(30)に沿って径方向外側に移動する。しかし、連結部材(4)の突起(18)がガイド部材(30)に当たることにより、連結部材(4)の移動が停止し、連結部材(4)が版シリンダ部(7)から飛び出すことが防止される。
【0109】
上記のように版シリンダ部(7)に装着されている印刷版ユニット(1)を取り外すときには、版シリンダ部(7)を停止させた状態で、ねじ部材(39)を左に回転させて、図8に示すように、内側スライダ(36)を後端位置に移動させる。これにより、外側スライダ(37)が最内側位置に移動し、印刷版(3)と版装着面(22)の間に隙間が生じるので、印刷版ユニット(1)を軸方向に移動させて、版シリンダ部(7)の前端から簡単に取り外すことができる。
【0110】
印刷版ユニット(1)を使用しないときは、前記のように、両挟持部材(11)(12)を切り離すか、互いに離して、印刷版(3)から取り外し、印刷版(3)を平板状にして保管することができる。そうすると、印刷版(3)の保管に大きなスペースを必要としない。
【0111】
図10図12を参照して、印刷版ユニット(1)の他の実施形態について説明する。
図10は印刷版ユニットの主要部の縦断面図、図11図10のXI−XI線に沿う拡大横断面図、図12図11と同じ部分の拡大横断面図であって図11と異なる状態を示すものである。なお、図10図12において、前記実施形態のものに対応する部分には、同一の図面符号を付している。
【0112】
この実施形態の場合、印刷版ユニット(1)は、前記実施形態と同様、印刷版(3)および連結部材(4)を備えている。
【0113】
印刷版(3)は、前記実施形態と同じものである。
【0114】
連結部材(4)は、前記実施形態と同様、内側挟持部材(11)、外側挟持部材(12)および挟持用ねじ部材を構成する皿頭ねじ(20)を備えている。
【0115】
外側挟持部材(12)の形状およびねじ挿通用貫通穴(19)が設けられている点は、前記実施形態と同じである。
【0116】
内側挟持部材(11)が挟持部(13)および被ガイド部(14)を備えている点は、前記実施形態と同じである。被ガイド部(14)の軸方向複数箇所に、各箇所を周方向に貫くねじ穴形成用穴状部分(56)が形成され、各穴状部分(56)より径方向外側の内側挟持部材(11)の部分がねじ穴形成部(57)となっている。前記実施形態と同様のねじ穴(17)がねじ穴形成部(57)を径方向に貫通するよう形成されている。ねじ穴形成用穴状部分(56)の間の被ガイド部(14)の部分に、各部分を周方向に貫く重量軽減用穴状部分(58)が形成されている。
【0117】
ねじ(20)は、抜け止め用ストッパ(59)が設けられている点を除いて、前記実施形態と同じものである。両挟持部材(11)(12)は、前記実施形態と同様、ねじ(20)によって固定される。ねじ(20)が締め付けられた状態で、ねじ(20)の先端側部分が穴状部分(56)内に突出するようになっている。このような状態で、ねじ穴(17)より径方向内側に離れたねじ(20)の先端部に、ストッパ(59)が設けられている。ストッパ(59)は、ねじ(20)のねじみぞの少なくとも1箇所を埋めるものであればよい。この例では、ねじ(20)の先端部を直径方向に貫通する穴に圧入などにより固定されたストッパピン(60)の前端部が、2つのストッパ(59)を構成している。ピン(60)は、ねじ(20)が両挟持部材(11)(12)を連結して穴状部分(56)内に突出した状態で、ねじ(20)の先端部に固定され、以後は、両挟持部材(11)(12)がねじ(20)によって連結されたままの状態になる。ストッパ(59)は、ねじ(20)の穴から突出してねじみぞを埋めている。ストッパ(59)の先端は、ねじ(20)のねじ山とほぼ同じ位置か、それより少し突出した位置にあり、ねじ(20)がその回転方向のどの位置にあるときでも、ねじ(20)およびストッパ(59)の部分が被ガイド部(14)の周方向両側の面より外に出ないようになっている。
【0118】
両挟持部材(11)(12)の1箇所以上、好ましくは軸方向の2箇所、この例では軸方向両端寄りの2箇所において、両挟持部材(11)(12)の対向面に、永久磁石(61)(62)が埋め込まれている。各箇所において、永久磁石(61)(62)は、同極同士が対向して、互いに反発する向きに配置されている。この永久磁石(61)(62)の磁気反発力により、外側挟持部材(12)は、少なくとも1つのねじ(20)の部分において穴(19)の座ぐりの部分がねじ(20)の頭部に当接した状態で、停止している。そして、ねじ(20)を緩めると、ねじ(20)の径方向外側への移動に伴って、磁気反発力により、外側挟持部材(12)が内側挟持部材(11)から離れる。このため、外側挟持部材(12)を手で内側挟持部材(11)から離す必要がない。ねじ(20)を緩めていって、ストッパ(59)がねじ穴(17)の径方向内側端部に達すると、ねじ(20)はそれ以上緩まなくなり、両挟持部材(11)(12)がねじ(20)に取り付けられた状態のままになる。ねじ(20)を締めると、ねじ(20)の径方向内側への移動に伴って、永久磁石(61)(62)の磁気反発力に抗して、外側挟持部材(12)が内側挟持部材(11)に接近する。
【0119】
印刷版ユニット(1)を組み立てる場合、まず、図12に示すように、ねじ(20)を緩めて、外側挟持部材(12)を内側挟持部材(11)から必要な量だけ離す。そして、筒状にした印刷版(3)の突条(10)を内側挟持部材(11)のみぞ(16)にはめ、係合部(15)に係合させる。このような状態で、ねじ(20)を締め付け、図11に示すように、印刷版(3)の両端部を両挟持部材(11)(12)で挟み止める。
【0120】
印刷版ユニット(1)を分解する場合、ねじ(20)を緩めて、図12に示すように、外側挟持部材(12)を内側挟持部材(11)から離し、印刷版(3)を内側挟持部材(11)から取り外す。分解後は、両挟持部材(11)(12)がねじ(20)で連結された状態で、連結部材(4)を保管することができ、取り扱いが容易である。
【0121】
この印刷版ユニット(1)は、前記実施形態と同じ印刷版装着装置(2)に装着して使用することができる。装着装置(2)に対する印刷版ユニット(1)の取り付けおよび取り外しは、前記実施形態と同様に行われる。ねじ(20)およびストッパ(59)の部分が、内側挟持部材(11)の被ガイド部(14)の周方向両側の面より外側に出ないので、取り付け時、印刷時および取り外し時に、邪魔になることがない。
【0122】
印刷版および印刷版ユニットの構成、印刷機および印刷版装着装置の構成などは、上記実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。
【0123】
たとえば、上記実施形態では、印刷版(3)の両突条(10)が裏面側に突出しているため、両突条(10)を内側挟持部材(11)に係合させた状態で、内側挟持部材(11)の径方向外側に外側挟持部材(12)を重ねて、印刷版(3)の両端部を簡単に固定することができる。しかし、印刷版(3)の両突条(10)は、表面側に突出していてもよい。その場合、両突条(10)は外側挟持部材(12)に形成された係合部に係合する。また、印刷版(3)の両突条(10)は、互いに逆方向に突出していてもよい。その場合、裏面側に突出した突条(10)は内側挟持部材(11)に形成された係合部に、表面側に突出した突条(10)は外側挟持部材(12)に形成された係合部に係合する。
【産業上の利用可能性】
【0124】
この発明は、印刷機における印刷版ユニットに用いられるのに適している。この発明による印刷版ユニットを用いれば、印刷版ユニットを使用しないときに、印刷版を平板状にして保管することができ、印刷版の保管に大きなスペースを必要としない。
【符号の説明】
【0125】
(1):印刷版ユニット、(3):印刷版、(4):印刷版連結部材、(5):版駆動軸、(7):版シリンダ部、(8):シート、(9):版部、(10):係合用突条、(11):内側挟持部材、(12):外側挟持部材、(13):挟持部、(14):被ガイド部、(15):係合部、(26):みぞ形成面、(28):ストッパ部材(軸方向位置決め用ストッパ部)、(29):印刷版連結部材収容みぞ、(30):ガイド部材(印刷版連結部材ガイド部)、(31):付勢装置収容凹所、(35):印刷版連結部材付勢装置、(36):内側スライダ、(36a):楔面、(37):外側スライダ、(37a):楔面、(38):圧縮コイルばね(弾性部材)、(39):切り換え用ねじ部材、(40)(41)(43)(44)(61)(62):永久磁石、(56):穴状部分、(57):ねじ形成部、(59):ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12