【実施例1】
【0012】
本実施例では、ドラム式洗濯乾燥機の例を説明する。
【0013】
図1は実施例1におけるドラム式洗濯乾燥機100の外観図である。
図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図、
図3は内部の構造を示す側面図、
図4は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図である。
【0014】
本実施例のドラム式洗濯乾燥機100は、衣類を収容し洗濯及び脱水、乾燥を行うドラム3と、このドラム3を回転させるモータ4と、ドラム3を支持する筐体1を備えている。ここで、外郭を構成する筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,前面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材(図示せず),前補強材37,後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1hを含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。筐体1のサイズを横幅寸法Wb、奥行き寸法Db、高さ寸法Hbで表す。
【0015】
また、衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドア9が前面カバー1cの略中央に設けられ、前補強材に設けたヒンジ9cで開閉可能に支持されている。ドア開放レバー9bを引くことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材37は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。ドア9の外槽開口部を閉じる部分は、乾燥時の熱に耐えられるよう凹状のガラス9aでできている。
【0016】
更に、筐体1の上部右側には、操作パネル6が設けられており、電源スイッチ11,操作スイッチ12,13,表示器14を備える。操作パネル6は、筐体1上部に設けた制御装置38に電気的に接続している。
【0017】
図5に示すように、ドラム3は、回転可能に支持された円筒状で、その外周面の胴板3eおよび背面の底板3dに通水および通風のための多数の貫通孔3fを有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部3aを設けてある。胴板3eの前端部には胴板3eと同心状にドラム3と一体の流体バランサ3cを備えている。胴板3eの内側には軸方向に延びるリフター3bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時にドラム3を回転すると、衣類はリフター3bと遠心力で胴板3eに沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。ドラム3の胴板3eの直径をD、奥行き寸法をLdで表す。奥行き寸法Ldは胴板3eの前端面から底板3dまでの長さである。
【0018】
また、洗濯水を溜めるための円筒状の外槽2が、筐体1に支持され、ドラム3を同軸上に内包し、前面は開口し、背面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸4aは、外槽2を貫通し、ドラム3の底板3dの中央部と結合している。外槽2の前面開口部には外槽カバー2dを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部2cを有している。本開口部2cと前補強材37に設けた開口部は、ゴム製のベローズ10で接続しており、ドア9を閉じることでドア9のガラス9aがベローズ10のリップ部に接触し、外槽2を水封する。また、ドア9を閉じると、凹状のガラス9aの先端が外槽カバー2dの開口部2c及びドラム3の開口部3aを塞ぐようになる。この時、ガラス9aの先端とドラム3の前端(流体バランサ3cの前端部)との軸方向位置を略一致させており、ガラス9aの外周部と外槽カバー2dとのすき間に洗濯物が入り込まないように配慮してある。
【0019】
外槽2底面最下部には、排水口2bが設けてあり、排水ホース26が接続されている。排水ホース26の途中には循環ポンプ22,糸屑フィルタ23,排水弁21が設けてあり、排水弁21を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁21を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。
【0020】
筐体1内の上部左側には、洗剤容器7が設けられており、
図1の二点鎖線で示すように開閉式のふた7aを開けて洗剤類を入れる。洗剤容器7は、粉末洗剤、液体洗剤、柔軟仕上げ剤などを別々に投入できるよう、内部が複数の部屋に区切られている。
【0021】
筐体1内の上部後方には給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサ18など給水に関連する部品を設けてある。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aが設けてある。給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17と洗剤容器7とは、給水パイプで接続されている。洗剤容器7は外槽2に接続されており、給水電磁弁16を開く、あるいは風呂水給水ポンプ17を運転することで、洗剤容器7を経由して外槽2に水道水あるいは風呂水を供給する。使用者が洗剤容器7に投入した洗剤類は、水とともに外槽2の底部に供給されるようになっており、未溶解の粉末洗剤や高濃度の液体洗剤、柔軟仕上げ剤などが直接ドラム3内の衣類にかかり、色落ちや色むらが発生しないようにしている。
【0022】
循環ポンプ22は吐き出し口を2個有しており、循環ポンプ22の回転方向を切り替えることにより、吐き出し口の切り替えが可能である。これにより、洗剤溶かしと洗濯水の洗濯物への散布が可能となっている。洗剤を溶かす時は、循環ポンプ22を逆回転させる。外槽2の底部に供給された未溶解の粉末洗剤を含んだ少量の水は、排水口2bから糸屑フィルタ23を通り循環ポンプ22に入り、吐き出し口22bから循環水ホース25bを通り外槽2(外槽カバー2d)の底部に戻るよう循環する。この時、循環ポンプ22内で未溶解の洗剤と水が強力に撹拌され、効率よく洗剤を溶かし、高濃度の洗剤液を生成することができる。一方、洗濯中は水循環ポンプ22を正回転させる。外槽2の底部に溜まった洗濯水は排水口2bから糸屑フィルタ23を通り循環ポンプ22に入り、吐き出し口22aから循環水ホース25aを通り外槽カバー2dの上部に設けた散水口からドラム3内に散水され、外槽2の底部に戻るように循環する。これにより、洗濯水を洗濯物に万遍なく降りかけることができるため、高い洗浄力やすすぎ性能が得られるとともに、少ない洗濯水を循環ポンプ22で循環させ繰り返し使用するため節水が可能である。
【0023】
糸屑フィルタ23は、下部前面カバー1fに設けた扉1gを開けることで容易に着脱できる。
【0024】
外槽9の後部の最下部にはエアトラップ24が設けてあり、チューブ18aで水位センサ18と接続し、外槽2内の水位を検出する。
【0025】
外槽2は、下側をベース1hに固定されたサスペンション5(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽2の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽2の前後方向への倒れを防ぐ。
【0026】
乾燥ダクト29が、筐体1の背面内側に縦方向に設置されており、そのダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管29aで接続されている。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)を内蔵しており、給水電磁弁16から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト29の壁面を伝わって流下し、吸気口2aから外槽2に入り排水口2bから排出される。
【0027】
乾燥ダクト29の上部は、筐体1内の上部右側後方に設置した乾燥フィルタ8に接続している。乾燥ダクト29から乾燥フィルタ8へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタで糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、
図1の一点鎖線で示すように乾燥フィルタ8を上方に引き抜いて行う。また、乾燥フィルタ8は吸気ダクト33に接続されており、吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
【0028】
本実施例では、ドラム3内に風を吹きつける手段が、筐体1内であってドア9側から見てドラム3の回転軸に対し右上に設けられており、モータ4によりドラム3を右回りに回転させたり左回りに回転させたりを繰り返しているときに、ドラム3の回転によって持ち上げられた衣類に風を吹きつけて乾燥させる。ここで、上記風を吹きつける手段は、送風ユニット28と、この送風ユニット28の吐き出し側に設けられて風を加熱するヒータ31と、ヒータ31の下流に設けられた温風吹き出し口32と、これらを接続する風路とで構成されている。
【0029】
送風ユニット28は、駆動用のファンモータ28a,ファン(図示せず),ファンケース28bで構成されている。ファンケース28bにはヒータ31が内蔵されており、ファンから送られる空気を加熱する。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続されている。温風ダクト30は、ゴム製の蛇腹管30a,蛇腹管継ぎ手30bを介して外槽カバー2dに設けた温風吹き出し口32に接続している。
【0030】
本実施例では、温風吹き出し口32の面積を乾燥ダクト29や温風ダクト30,乾燥フィルタ8などの風路面積に比べ小さくするとともに、ファンモータ28aを高速回転して高圧力の空気を発生させている。これにより、温風吹き出し口32から高速の風をドラム内に吹き出し、この高速の風を衣類に吹き付けて、風の力で衣類に発生するしわを伸ばすことができる。ここで、高速の風とは、例えば45m/s以上である。また、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口32までの距離を極力短くするようにしてある。このため、圧力損失の増加を防ぐことができ、効率よく高速の風を衣類に吹きつけることが可能となる。
【0031】
排水口2b,送風ユニット28の吸気口及び温風吹き出し口32の手前には温度センサ(図示せず)が設けてある。
【0032】
乾燥運転時の風の流れは次のようになる。送風ユニット28を運転し、ヒータ31に通電すると、温風吹き出し口32からドラム3内に高速の温風が吹き込み(矢印41)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。乾燥運転中は、ドラム3を正逆回転させているので、リフター3bにより衣類が温風吹き出し口32の付近まで持ち上がった状態で、衣類に高速の風が当たる。このとき温風吹き出し口32と衣類との距離が最も短くなるので、高速の風で衣類のしわを伸ばすことができる。高温多湿となった空気は、ドラム3に設けた貫通孔3fから外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れる(矢印42)。乾燥ダクト29の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温多湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となり乾燥フィルタ8へ入る。乾燥フィルタ8に設けたメッシュフィルタを通り糸屑が取り除かれ、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれる(矢印43)。そして、送風ユニット28で加圧された後ヒータ31へ流れ(矢印44)再度加熱され、ドラム3内に吹き込むように循環する。尚、空気加熱手段のヒータ31および空気除湿手段の水冷除湿機構の代わりに、ヒートポンプを用いても良い。
【0033】
以上のように構成されたドラム式洗濯乾燥機100の洗浄力とドラムの容積、ドラム直径、ドラム奥行き寸法の関係について説明する。なお、ドラム容積には、ドラム直径とドラム奥行き寸法から求められる計算容積と、計算容積からドラム3内に取り付けられている流体バランサ3cやリフター3b、底板3dの出っ張り部などの容積を引いた実容積がある。実際に衣類が存在できて洗浄に影響するのは実容積なので、以下の説明では実容積を使用する。説明は、ドラム容積65〜86L(リットル)、ドラム直径D=500〜600mm、ドラム奥行き寸法Ld=275〜394mmの数種類のドラムについて、洗濯物の質量9kgの条件で実験した結果に基づいて行う。
【0034】
図6は、ドラム容積を洗濯物質量で割った値(以下、洗濯比容積と呼ぶ)と洗浄力指数の関係を示す。洗浄力指数は、値が大きいほど洗浄力が高く、JIS規格の家庭用電気洗濯機の性能測定法(JIS C 9811)に規定された標準洗濯機の洗浄力を1とした値である。洗濯機としては洗浄力指数0.8以上必要で、洗浄力指数が0.9以上あればほぼ満足のいく洗浄力である。本検討の範囲では、洗濯比容積が大きいほど洗浄力指数が増加するが、洗濯比容積が約8.3L/kgより大きくなると洗浄力指数の増加率が低下し、洗浄力向上のために必要以上にドラム容積を増やしても、その効果が小さくなることがわかる。図から、洗浄力指数0.8以上を得るためには洗濯比容積が約7.88L/kg以上必要で、洗浄力指数0.9以上を得るためには洗濯比容積が約8.22L/kg以上必要なことがわかる。洗濯物質量9kgの場合、ドラム容積は洗浄力指数0.8以上を得るためには約71L以上、洗浄力指数0.9以上では約74L以上となる。また、洗濯物質量8kgでは、洗浄力指数0.8以上でドラム容積は約63L以上、洗浄力指数0.9以上で約66L以上、洗濯物質量7kgでは、洗浄力指数0.8以上で約55L以上、洗浄力指数0.9以上で約58L以上とすればよい。
【0035】
図7は、ドラム直径Dをパラメータにドラムの奥行き寸法Ldと洗浄力指数の関係をまとめたものである。ドラム直径が大きいほど洗浄力が高い。このことは、ドラム式洗濯機の洗浄は洗濯物の落下によるたたき洗いによるもので、落下高さが高いほど洗浄力が高くなるという従来からよく知られた結果である。一方、ドラム奥行き寸法Ldが大きいほど洗浄力が高いことがわかる。この理由は次の通りである。
【0036】
図8は、ドラム奥行き寸法の違いによる洗い時のドラム内の洗濯物の状態を示す模式図である。
図8(A)はドラム奥行き寸法Ldが小さい場合を、
図8(B)はLdが大きい場合を示す。洗濯物の量は両者同一で、ドラムは図中の回転方向の矢印で示す方向に回転している。また、簡単のために、洗濯物はドラム3内に均一に分布しているとして説明する。ドラム内の矢印は衣類がドラムの上方に持ち上げられ落下することを示す。ドラム奥行き寸法Ldが小さいと、洗濯物の層の厚さtが厚くなり、このため洗濯物の落下高さhが低くくなる。これに対して、Ldが大きいと、洗濯物は奥行き方向に分散するため、洗濯物の層の厚さtが薄くなり、結果として落下高さhが高くなる。このため、奥行き寸法Ldを大きくすると、同じドラム直径でも落下高さが高くなるため、洗浄力が向上する。また、奥行き寸法Ldが大きいと衣類の落下領域が増加(図では衣類の落下を示す矢印の本数で表現)することによって、洗浄力がさらに向上する。
【0037】
したがって、ドラム直径Dが小さくても、ドラム奥行き寸法Ldを適切に設定すると、ドラム直径が大きいドラムと同等の洗浄力を得ることが可能である。例えば、
図7の結果から、ドラム直径Dが600mmで奥行き寸法Ldが293mmのドラムの洗浄力(図中x点)に対し、ドラム直径Dを525mmと小さくしても奥行き寸法Ldを394mmと大きくすることで(図中y点)ほぼ同等の洗浄力が得られることが分かる。また、ドラム直径Dが525mmの方が洗濯物の層が薄く奥行き方向に衣類が分散しているため、洗いむらが少ないという利点もある。実験では約20%洗いむらが減少した。
【0038】
次に、ドラム式洗濯乾燥機の一般家庭での使用場所への設置性が良く、洗浄力が高いドラム3の大きさについて説明する。洗浄力を高めるためには、ドラム直径Dとドラム奥行き寸法Ldを大きくすればよいが、設置性や使い勝手を考えるとDとLdには上限値が存在する。
【0039】
課題でも述べたように、設置性には筐体1の奥行き寸法Dbより横幅寸法Wbの方が影響が大きく、Wbが600mm以下であれば、設置できない割合は約2%となる。そこで、この横幅で収容可能な最大のドラム直径について以下で述べる。
【0040】
ドラム3は外槽2内で回転するため、両者には径方向にすき間を設ける必要がある。この径方向すき間を小さくするためには、ドラム3と外槽2に高い寸法精度が求められ、製品のコストアップにつながる。また、すき間が小さすぎると、脱水時の風損の増大により消費電力が増加してしまう。さらに、外槽2は一般的にプラスチック製で、射出成型により製造するが、型の抜き勾配のために外槽カバー2dとの結合部の内径が最も大きくなる。これらのことから、ドラム3と外槽2との半径すき間は25mm程度、つまり直径の差は50mm程度必要である。
【0041】
脱水時には洗濯物の不釣り合いのためにドラム3及び外槽2が振動する。外槽2は筐体1に対してサスペンション5で防振支持されており、外槽2の振動を抑えるとともに、振動が筐体1を通して床へ伝わるのを防止している。ドラム3が停止状態から回転数を上昇していくと、毎分150から400回転程度で共振を通過する。この時、外槽2の左右方向の振動が大きいと、外槽2は筐体1の左右側板1a,1bに衝突して異音が発生してしまうため、左右側板1a,1bと外槽2の外周面との間にすき間を設けておく必要がある。共振時の左右振動を小さくするために、脱水起動時に洗濯物がドラム3の胴板3eに均一に張り付くように、高度なドラム回転速度制御を行い、洗濯物の不釣り合いを極力少なくするようにしている。また、防振支持を適正化し左右振動を低減している。しかしながら、洗濯物は種々雑多であり均一に胴板3eに張り付いたとしても、材質の違いで不釣り合いが生じることもあり、振動をなくすことは困難である。このため、筐体1の横幅寸法Wbと外槽2とのすき間は片側で20mm程度は必要である。
【0042】
これらのすき間を考慮すると、筐体1の横幅寸法Wbが610mmの場合、ドラム直径Dは最大でも530mmとなる。
【0043】
一方、筐体1の奥行き方向寸法Dbに関しては、横幅寸法Wbより設置性への影響は少なく、設置した状態で筐体1の前側に使用者の作業スペースが確保でき、かつドア9を開ければよい。ただし、防水パンへ設置する場合は、防水パンの奥行き寸法以下にする必要があるが、
図3に示すように筐体1のベース1hの奥行き寸法を防水パンへ入るように設定すれば、上部の奥行き寸法は防水パンより大きくても構わない。我々の調査によれば、奥行き寸法Dbが730mmの場合、設置できない家庭の割合が約10%で、これ以上大きくなると設置できない家庭が大幅に増加する。奥行き寸法Dbは730mm以下に抑えた方がよい。
【0044】
外槽2の前側にはドア9があり、外槽2の後ろ側には駆動部であるモータ4や、乾燥ダクト29が設けてあるため、これらの奥行き寸法を筐体1の奥行き寸法Dbから引き、さらに外槽2の前後方向の振動振幅分を引いた値が外槽2の奥行き寸法となる。また、外槽2とドラム3の奥行き方向のすき間は径方向のすき間と同程度必要なため、ドラム3の奥行き寸法Ldは、外槽2の奥行き寸法から50mm程度引いた値となる。さらに、ドラム3への洗濯物の出し入れのしやすさから、ドラム3の回転中心軸を傾斜させ、ドラム3の前側を高くしたドラム式洗濯乾燥機では、傾斜のためのスペースも必要で、その分外槽2の奥行き寸法を小さくする必要がある。
【0045】
したがって、洗浄力を高めるためには、外槽2の前後にある部品の扁平化や、外槽2の前後方向の振動振幅を小さくするなどで、ドラム3の奥行き寸法Ldを大きくすればよい。しかし、ドラムの奥行き寸法Ldが大きすぎるとドラムの奥側にある洗濯物に手が届かず、使い勝手が大幅に悪化してしまう。使い勝手を考慮するとドラム奥行き寸法Ldは最大でも440mm、望ましくは400mm以下にする必要がある。
【0046】
図9は、
図7の結果から洗浄力指数0.8と0.9が得られるドラム直径Dとドラム奥行き寸法Ldの関係を示したものである。上述のように、設置性と使い勝手を考慮し、ドラム直径Dが530mm以下、ドラム奥行き寸法Ldが440mm以下とする。
【0047】
まず、洗濯機として最低限必要な洗浄力指数0.8を得るためには、図中のabcで囲まれた範囲にドラム直径Dとドラム奥行き寸法Ldを設定すればよい。具体的には、Dが530mmの場合はLdが350mmとなり、Ldが440mmの場合はDが477mmとなる。これらの値を(D/2)/Ldで表すと0.54から0.76の範囲となる。また、望ましい奥行き寸法Ld400mmではDが498mmとなり(D/2)/Ldは0.62から0.76の範囲となる。なお、
図6で述べたように、ドラム容積は洗濯物質量9kgの場合で71L以上、8kgの場合で63L以上、7kgの場合で55L以上必要である。
【0048】
一方、ほぼ満足のいく洗浄力指数0.9を得るためのドラム直径Dとドラム奥行き寸法Ldは図中のadeで囲まれた範囲内となる。Dが530mmの場合はLdが379mm、Ldが440mmではDが515mmとなる。(D/2)/Ldの値は0.56から0.70の範囲となる。Ldが400mmではDが515mmとなり(D/2)/Lは0.64から0.70の範囲となる。この場合のドラム容積は洗濯物質量9kgの場合で74L以上、8kgの場合で66L以上、7kgの場合で58L以上必要である。
【0049】
以上述べた(D/2)/Ldの範囲のドラム寸法、ドラム容積とすることで、限られたスペースに設置されるドラム式洗濯乾燥機でも、高い洗浄力を得られる。
【0050】
図10は、本実施例のドラム式洗濯乾燥機の制御装置38のブロック図である。50はマイクロコンピュータで、各スイッチ12,13に接続される操作ボタン入力回路51や水位センサ18,温度センサ52と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程,乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ50からの出力は、駆動回路54に接続され、給水電磁弁16,排水弁21,循環ポンプ22,モータ4,送風ユニット28,ヒータ31などに接続され、これらの開閉や回転,通電を制御する。また、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオードもしくは液晶の表示器14や発光ダイオード56,ブザー57に接続される。
【0051】
前記マイクロコンピュータ50は、電源スイッチ11が押されて電源が投入されると起動し、
図11に示すような洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0052】
ステップS101
洗濯乾燥機の状態確認及び初期設定を行う。
【0053】
ステップS102
操作パネル6の表示器14を点灯し、操作ボタンスイッチ13からの指示入力にしたがって洗濯/乾燥コースを設定する。指示入力がない状態では、標準の洗濯/乾燥コースまたは前回実施の洗濯/乾燥コースを自動的に設定する。
【0054】
ステップS103
操作パネル6のスタートスイッチ12からの指示入力を監視して処理を分岐する。
【0055】
ステップS104
スタートスイッチ12が押されたら、布量センシングを実施する。布量センシングは、例えば、ドラム3を低速で回転させ、あるいは規定の回転数まで加速させ、そのときのモータ4の電流値から測定する。そして、表示器14に洗剤量や洗い時間、すすぎ回数、脱水時間、洗濯乾燥が終了するまでの時間などを表示する。使用者は、洗剤量表示を参考に、ふた7aを開け洗剤容器7に適量の洗剤を洗剤投入室に入れる。必要に応じて、柔軟仕上げ剤を柔軟仕上げ剤投入室に入れる。
【0056】
ステップS105
給水電磁弁16を開き、洗剤容器7へ水道水を給水し、粉末洗剤を外槽2の底部に流す。洗剤溶かし水位まで給水したことを水位センサ18で検知したら給水を停止する。この水位は、この次の洗剤溶かし工程(ステップS106)で生成される洗い水の洗剤濃度が、最大で10倍となるように設定している。洗剤濃度は洗剤メーカの指定標準濃度(一般の粉末合成洗剤では水30リットルに洗剤20グラムを溶かしたときの濃度)を1倍と定義している。洗剤濃度を10倍としたのは、洗剤濃度が高すぎると、洗剤に含まれる蛍光増白剤による衣類の色むら(紫外線を当てると特に顕著)が発生するという問題があるためである。この色むらを目立たなくするには、洗剤濃度を10倍以下に抑える必要がある。
【0057】
ステップS106
循環ポンプ22を逆回転させ洗剤溶かしを実行する。洗剤は循環ポンプ22で攪拌され溶解していき、高洗剤濃度の洗い水が生成される。洗剤溶かしの時間は1分間から2分間である。
【0058】
ステップS107
予洗いを実行する。ドラム3を低速で正逆回転させながら、循環ポンプ22を正回転させ、外槽2の底部に生成した高濃度の洗い水を外槽カバー2dの上部に設けた散水口からドラム3内の洗濯物に散布する。高濃度の洗い水は、洗剤の浸透作用で洗濯物にむら無く行き渡る。また、油汚れに対する溶解力が強いため、洗濯物から汚れを浮き上がらせる効果が非常に大きく、次工程の本洗いで容易に汚れを落とすことができる。洗濯物に洗い水が含まれた分外槽2内の水位が低下するので、電磁給水弁16を開き、外槽2内に給水を行いながら既定の水位になるまで予洗いを継続する。
【0059】
ステップS108
本洗いを実行する。ドラム3を低速で正逆回転させながら循環ポンプ22を正回転させて外槽3の底部に溜まった洗い水を散水口から洗濯物に降り掛けるように循環する。本実施例では、ドラムの奥行き寸法Ldが大きいので、散水口形状は、洗い水がドラム3の前側から奥側まで散水されるようにしてあり、洗濯物にむらなく洗い水が行き渡るようになっている。
【0060】
ステップS109
第1回目のすすぎを実行する。先ず、排水弁21を開き外槽3内の水を排水した後、ドラム3を一方向に高速回転させて洗濯物に含まれている洗い水を遠心脱水する。
【0061】
その後、給水電磁弁16を開き、設定水位になるまで外槽3底部に給水する。次に、本洗いと同様、ドラム3を正逆回転させながら、循環ポンプ22を正回転して、外槽3の底部に溜まったすすぎ水を散水口から洗濯物に振り掛けるように循環し、すすぎを実行する。
【0062】
ステップS110
すすぎ回数は、ステップS102で設定した回数行うが、ここではすすぎ回数を2回とした場合について述べる。第2回目(最終)すすぎを実行する。柔軟剤投入室に柔軟仕上げ剤が投入されていると、最終すすぎの給水時に柔軟仕上げ剤が外槽3内へ供給される。これ以外の動作は、第1回目のすすぎと同様なので、説明を省略する。
【0063】
ステップS111
洗濯乾燥コースが設定されているかどうかを確認して処理を分岐する。洗濯コースのみが設定されている場合はステップS112を実行し、洗濯乾燥コースが設定されている場合はステップS113を実行する。
【0064】
ステップS112
最終脱水を実行する。ドラム3を一方向に高速回転させて洗濯物に含まれているすすぎ水を遠心脱水する。規定時間脱水を実行したら、ドラム3を停止する。そして、ドラム3を低速回転で正逆回転させ、脱水時に遠心力でドラム3の胴板3eに張り付いた洗濯物を落下させて運転を終了する。
【0065】
ステップS113
洗濯乾燥コースが設定されている場合は、ステップS112より高速回転の高速脱水を実行し、衣類の残水量を減らす。このとき、送風ユニット28を低速回転で運転し、ヒータ31に通電して温風をドラム3内に吹き込み衣類の温度を上昇させてもよい。衣類が暖まり衣類から効果的に水分を脱水できる(温度が上がると水の表面張力が低下するため効率よく脱水できる)。
【0066】
ステップS114
乾燥運転を実行する。送風ユニット28を回転させ、ヒータ31に通電し、ドラム3を予め決められた回転数、回転時間で正逆回転を繰り返し、ドラム3内の衣類の位置を入れ替えながら、高速の温風を衣類に吹きつける。衣類全体の温度が上昇し衣類から水分が蒸発するとともに、衣類のしわを伸ばしながら乾燥が進行する。
【0067】
このように本実施例では、風速45m/s以上の高速の温風を吹きつけるので、ドラム奥行き寸法が大きくても、ドラム3の奥側にある衣類にまで温風を当てることが可能であり、乾きムラが抑制できる。特に、開口部側から底板3d領域内に向かって温風が流れるようにすれば、底板3d付近にある衣類にも温風が当たりやすくなるので、仕上がりの向上が期待できる。また、ドラム3の径が小さくて上下方向に広がるスペースが小さくても、衣類が奥側に広がるスペースがあるため、高速の風の力で衣類のしわが伸ばされる効果もある。
【0068】
乾燥は、温度センサにより温風や冷却水排水温度を監視しながら実行し、温度変化の割合が所定の値になったときに終了する。
【0069】
なお、本実施例では、ドラム式洗濯乾燥機について説明したが、乾燥機能を有しないドラム式洗濯機についても、筐体の大きさと、ドラム直径、ドラム奥行き寸法、ドラム容積の関係は全く同様である。