特許第5736576号(P5736576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736576表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736576
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/06 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   B68G7/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-117631(P2011-117631)
(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公開番号】特開2012-245081(P2012-245081A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591028751
【氏名又は名称】株式会社豊和化成
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(74)【代理人】
【識別番号】100161403
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 静夫
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀和
(72)【発明者】
【氏名】王 桂英
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−152453(JP,U)
【文献】 実開昭56−171760(JP,U)
【文献】 特開2010−022402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/38
B60N 2/48
B68G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭接側となる表皮部材とこれを囲む他の表皮部材とをその裏面どうしを合わせて揃えた重ね端部において縫合した袋状のヘッドレストカバーと、その内部で発泡成形された発泡樹脂体とからなる自動車用ヘッドレストにおいて、前記表皮部材は表皮層とクッション層とからなるものであり、ヘッドレストカバーの縫合部は、前記重ね端部の両外面にわたり両裾縁を裏向きの折返し部とした縁取りテープを添わせ、この縁取りテープ間に介在する前記重ね端部および両折返し部とともにミシン縫目により縫合されており、この縫合により、クッション層の縫合部を縮ませる一方、縁取りテープにより囲まれた縫合されていない表皮部材の重ね端部及び縁取りテープをクッション層により玉縁状に膨らませて玉縁状の縁取り模様を形成し、これによって前記表皮部材間が縁取りテープによる縁取り装飾部を介して縫合一体化されていることを特徴とする表皮一体発泡成形ヘッドレスト。
【請求項2】
表皮層とクッション層とからなる頭接側となる表皮部材と、表皮層とクッション層とからなりこれを囲む他の表皮部材とをその裏面どうしを合わせて揃えた重ね合わせ、その重ね端部の両外面にわたり両裾縁を裏向きの折返し部とした断面U字状の縁取りテープを添わせながら、この縁取りテープ間に介在する前記重ね端部および両折返し部とともに縫合することにより、クッション層の縫合部を縮ませる一方、縁取りテープにより囲まれた縫合されていない表皮部材の重ね端部及び縁取りテープをクッション層により玉縁状に膨らませて玉縁状の縁取り模様を形成し、これによって前記した表皮部材間が縁取り装飾部を介して縫合一体化された袋状のヘッドレストカバーを製作し、その内部に発泡性樹脂を注入して発泡成形することを特徴とする表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表皮一体発泡成形ヘッドレストは、裏向きにされた複数枚の立体裁断された表皮部材の端縁を重ね合わせ、玉縁とともに縫製して立体的なヘッドレストカバーを形成した後、裏返しして表皮部材を表向きとしたうえ、ヘッドレストカバーの内部に発泡性樹脂を注入し、発泡成形することにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、表皮部材は内面にクッション層を有する肉厚のものであるので、曲面部を裏返し縫合した後に表返しするとクッション層が縮み、表皮層に縮み圧が加わる。このため特に曲面部の縫合端部は変形し易く、滑らかな曲面形状にならず見栄えの悪い製品となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-22402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来の問題を解決し、表皮部材間の曲面状の縫合端部を滑らかな形状に仕上げることができるとともに、その縫合端部に従来にない縁取り装飾を加えることができる表皮一体発泡成形ヘッドレスト及びその製造方法を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の表皮一体発泡成形ヘッドレストは、頭接側となる表皮部材とこれを囲む他の表皮部材とをその裏面どうしを合わせて揃えた重ね端部において縫合した袋状のヘッドレストカバーと、その内部で発泡成形された発泡樹脂体とからなる自動車用ヘッドレストにおいて、前記表皮部材は表皮層とクッション層とからなるものであり、ヘッドレストカバーの縫合部は、前記重ね端部の両外面にわたり両裾縁を裏向きの折返し部とした縁取りテープを添わせ、この縁取りテープ間に介在する前記重ね端部および両折返し部とともにミシン縫目により縫合されており、この縫合により、クッション層の縫合部を縮ませる一方、縁取りテープにより囲まれた縫合されていない表皮部材の重ね端部及び縁取りテープをクッション層により玉縁状に膨らませて玉縁状の縁取り模様を形成し、これによって前記表皮部材間が縁取りテープによる縁取り装飾部を介して縫合一体化されていることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明の表皮一体発泡成形ヘッドレストの製造方法は、表皮層とクッション層とからなる頭接側となる表皮部材と、表皮層とクッション層とからなりこれを囲む他の表皮部材とをその裏面どうしを合わせて揃えた重ね合わせ、その重ね端部の両外面にわたり両裾縁を裏向きの折返し部とした断面U字状の縁取りテープを添わせながら、この縁取りテープ間に介在する前記重ね端部および両折返し部とともに縫合することにより、クッション層の縫合部を縮ませる一方、縁取りテープにより囲まれた縫合されていない表皮部材の重ね端部及び縁取りテープをクッション層により玉縁状に膨らませて玉縁状の縁取り模様を形成し、これによって前記した表皮部材間が縁取り装飾部を介して縫合一体化された袋状のヘッドレストカバーを製作し、その内部に発泡性樹脂を注入して発泡成形することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヘッドレストは、頭接側となる表皮部材とこれを囲む他の表皮部材とをその裏面どうしを合わせて揃えた重ね端部において縫合した袋状のヘッドレストカバーと、その内部で発泡成形された発泡樹脂体とからなる自動車用ヘッドレストにおいて、ヘッドレストカバーの縫合部は、前記重ね端部の両外面にわたり両裾縁を裏向きの折返し部とした縁取りテープを添わせ、この縁取りテープ間に介在する前記重ね端部および両折返し部とともにミシン縫目により縫合されており、これによって前記表皮部材間が縁取りテープによる縁取り装飾部を介して縫合一体化することにより、ヘッドレストの周縁は縁取りテープによる縁取り装飾部により強調されて今までにない斬新なデザインとなる。しかもこの縁取り装飾部は玉縁状に膨らんだ縁取り模様を形成したものであり、意匠性に優れる。
【0009】
また、本発明の製造方法は、頭接側となる表皮部材とこれを囲む他の表皮部材とをその裏面どうしを合わせて揃えた重ね合わせ、その重ね端部の両外面にわたり両裾縁を裏向きの折返し部とした断面U字状の縁取りテープを添わせながら、この縁取りテープ間に介在する前記重ね端部および両折返し部とともに縫合することにより、前記した表皮部材間が縁取り装飾部を介して縫合一体化された袋状のヘッドレストカバーを製作し、その内部に発泡性樹脂を注入して発泡成形するものとしているので、縁取りが表面にでないように表皮部材を裏返す必要がなく製造工程を削減できるうえに、裏返すことにより変形した部分の修正作業を不要となるので生産性を大幅に向上させることができ、製造費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】表皮部材の重ね端部を断面U字状とした縁取りテープにより添わせた状態を示す断面図である。
図2】表皮部材の重ね端部を断面U字状とした縁取りテープにより縫合した状態を示す断面図である。
図3】縫合された袋状のヘッドレストカバーの一部切欠側面図である。
図4】割り金型内にセットしたヘッドレストカバー内に発泡性樹脂を注入発泡させた状態を示す断面図である。
図5】完成された表皮一体発泡成形ヘッドレストの要部を示す一部切欠側面図である。
図6】完成された表皮一体発泡成形ヘッドレストの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法を図に基づいて詳細に説明する。
1は合成レザーよりなる表皮層1aとフィルム薄層付きのクッション層1bとからなる表皮部材であり、該表皮部材1は頭接側の前面地とこれを囲む他の表皮部材としての背面地と底面地の3面地に立体裁断される。クッション層1bに形成されたフィルム薄層は発泡性樹脂がクッション層1bの連続気孔を通じて漏出しないようにするものである。
【0012】
そして、立体裁断された前記3面地を裏面どうしで合わせて揃えた重ね端部をミシン縫合することにより図3に示されるような縫合端部が曲面状となる袋状のヘッドレストカバー5が形成される。
【0013】
前記ミシン縫合は図示しないラッパーと称せられる補助器具により四つ巻きにするもので、中央を二つ折りした断面U字状の縁取りテープ2の両裾縁を裏向きの折返し部2aとするものである。該縁取りテープ2により前記頭接側の前面地と頭接側の前面地を囲む背面地と底面地の重ね端部4を囲むように添わせて図2に示されるように縁取りテープ2の両裾縁の折返し部2aととともに重ね端部4を縫合する。
【0014】
この縫合により、クッション層1bの縫合部は縮むので、縁取りテープ2により囲まれた縫合されていない表皮部材1の重ね端部4は図2に示されるように膨らみ、その膨らみにより縁取りテープ2も風船状に膨らみ玉縁状となるので、ヘッドレストカバー5の周縁には玉縁状の縁取り模様9aが形成される。さらに、該縁取り模様9aにはミシン縫製によるミシン縫目9bが形成されてヘッドレスカバー5の周縁には縁取り模様9aとミシン縫目9bとによる縁取り装飾部9が形成される。
【0015】
このように縫製された立体形状のヘッドレストカバー5の底面地の先端縁と頭接側の前面地の下端縁とは図3に示されるようにミシン縫合せず発泡性樹脂を注入する際の開口3とする。
【0016】
そして、ヘッドレストカバー5を裏返しすることなくヘッドレストステー10をヘッドレストカバー5内にセットしたうえ、図4に示されるように割り型6内にヘッドレストカバー5をセットし、前記開口3より発泡性樹脂を注入して発泡させれば、図5,6に示されるようなクッション材7がヘッドレストカバー5内に充填され周縁を縁取り装飾部9により飾られた立体形状の表皮一体発泡成形ヘッドレストが成形されることとなる。
【0017】
このようにして製造された表皮一体発泡成形ヘッドレストの表面周縁には重ね端部4を囲んで被覆した縁取りテープ2による玉縁状の縁取り模様9aと、ミシン糸によるミシン縫目9bよりなる破線状模様とからなる縁取り装飾部9が形成される。しかも、縁取り装飾部9は表皮部材1を裏返すことなく形成するので、周縁は曲面状となるにもかかわらず腰のある合成レザーを裏返した場合に生じる歪がなく、表皮一体発泡成形ヘッドレストの周縁は滑らかな曲線を描く美麗なものとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 表皮部材
1a 表皮層
1b クッション層
2 縁取りテープ
2a 折返し部
3 開口
4 重ね端部
5 ヘッドレストカバー
6 割り型
7 クッション材
9 縁取り装飾
9a 縁取り模様
9b ミシン縫目
10 ヘッドレストステー




図1
図2
図3
図4
図5
図6