【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の構成によれば、バーナの中心軸に対して対称的な位置に液体燃料の噴出方向が互いに90度異なる油ノズル17をそれぞれ先端に有する二つの噴霧器を配置して両方の噴霧器で異種燃料を同時に燃焼可能な構成である。そして、燃料ノズル19の先端から保炎器12の火炉側端部間の距離を調整する可動性の保炎器12を設けることで、燃料ノズル19の焼損を防止している。
【0011】
しかし、燃焼用空気が常温の場合は、高温の空気に比較して、燃料ノズル19から噴射される燃料ガスが着火までに要する時間が長いため、ガスバーナ火災のリフトや吹き消えが起こり、燃焼が不安定となるポテンシャルを有しており、燃焼用空気が常温の時の保炎性の問題が残る。また、可動性の保炎器12を設けると、部品点数が増加してバーナ装置の構成が複雑となり、更に可動部に灰等の異物が混入し油ノズルの出し入れが困難となる可能性がある。また運転調整の煩雑化などの問題が残る。
【0012】
そして、特許文献2に記載の構成によれば、ガスバーナ18により形成されるガスバーナ火炎の保炎を保炎器12だけではなく、燃料ノズル19の周囲に設けたフレームホルダ25によっても行っているが、保炎器12周辺の渦状循環流111(
図10)と燃料ノズル19周辺の渦状循環流113とでは周期が異なるため、燃焼振動を発生させる要因となってしまう。燃焼振動が発生すると、ボイラ等の燃焼装置の連続運転が不可能となり、ときにはボイラ等の燃焼装置やボイラ本体の機器の損傷を伴うこともある。
【0013】
また、フレームホルダ25の周囲には渦状循環流113が形成されることで、フレームホルダ25の後流側の燃焼空気流による燃料ノズル19の冷却が阻害され、特に油専焼時にはフレームホルダ25や燃料ノズル19の焼損が起こってしまう。また、混焼時でも同様の機構により、発生する場合がある。
【0014】
そして、特許文献2に記載の構成では、燃焼用空気を三分割することでバーナ部から火炉へ投入している。このように燃焼用空気を三分割してバーナ部から火炉へ投入することは、窒素酸化物(NOx)の低減に効果があることが知られている。しかし、部品点数の増加によってバーナ装置の構成が複雑となること、バーナ装置の駆動部の異物噛み込みによる動作不良や運転調整時間が長くなるなどの問題がある。
【0015】
また、三次空気流路にガスバーナノズルを配置した場合、スリーブ2内に設置している保炎器12から離れているため、ガス火炎の吹き飛び(燃焼不安定)及び燃焼不安定に伴う燃焼振動ポテンシャルの増加という問題もある。
【0016】
近年、省エネルギー化への需要の高まりから、石油精製プラントなどの各種化学プラント等において、従来は燃料として採用していなかった燃料を採用する動きがあるが、燃料の多様化はバーナ本数の増加や種類の増加に伴う各種部品点数の増加に繋がり、また運転調整の煩雑化を招いてしまう。
【0017】
一般に、燃料は発熱量等の燃焼性状の違いから燃焼性(燃えやすさ)に差がある。燃焼性の良い燃料を燃焼させる時は燃焼速度が速いことから局所的な高温燃焼火炎域が発生するため、NOx濃度が上昇してしまう。この場合、燃焼を緩慢にするために三次空気流路21のエアレジスタ23の開度、二次空気流路5のエアレジスタ9の開度、二次空気流路5のベーン24の角度及び三次空気流路21のエアレジスタ23の開度を燃料の種類や燃焼パターンに応じた設定値に調整する必要がある。
【0018】
これらの調整は通常の運転を煩雑にするだけではなく、プラントの立ち上げのための試運転においても各種燃料の最適な設定値の調整に時間を要し、プラントの早期立ち上げを困難にしていた。また、駆動部を有するバーナにおいては異物を噛み込むことで動作不良を起こすというポテンシャルを有しているため、バーナ装置の簡素化が望まれている。
【0019】
更に、特許文献3に記載の構成によれば、NOx濃度の低減を図るためにガイドスリーブ15を設けているが、ガイドスリーブ15がスロート1から火炉側に張り出しているために、火炎の長炎化や火炎が炉壁に接触することによる黒煙の発生、また燃焼が完結しないこと(不完全燃焼)が原因である一酸化炭素(CO)や煤塵の発生やガイドスリーブ先端部の焼損などの問題がある。
【0020】
本発明の課題は、簡素な構成でNOx濃度の低減、火炎の長炎化、黒煙の防止を図ることが可能なバーナ装置の提供である。更に、本発明の課題は、火炎の輻射熱によるバーナ端部焼損の防止が可能なバーナ装置の提供である。更に、本発明の課題は、燃焼振動を防止して保炎性に優れるバーナ装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決することができる。
請求項1記載の発明は、火炉の壁面のスロートに設けられたバーナ装置であって、バーナ中心軸周りに設けられる円筒状のスリーブと、該スリーブ内に設けられる一次空気流路と、該一次空気流路のバーナ中心軸に設けられる第一燃料ノズルと、前記一次空気流路内であって第一燃料ノズルの周囲に設けられ、火炉に向かって末広がり形状である保炎器と、前記保炎器の外周で、且つ一次空気流路の円周方向に複数設けられ、前記第一燃料ノズルの先端部及び前記保炎器の火炉側端部よりも先端部が火炉側に突出
し、燃料を保炎器外周の接線方向及び火炉方向に噴射させる第二燃料ノズルと、前記一次空気流路の出口外周に設けられ、該出口外周の先端部から火炉に向かって末広がりの形状であって、且つ先端部が前記スロート内に位置するガイドスリーブと、前記スリーブの外周に設けられる二次空気流路と、該二次空気流路の出口外周となるスロート壁面に、火炉に向かって末広がり形状に形成された末広がり形状部と、該スロートの末広がり形状部と前記一次空気流路のガイドスリーブとにより形成される二次空気流路の出口部とを設けたバーナ装置である。
【0022】
請求項2記載の発明は、前記ガイドスリーブのバーナ中心軸に対する末広がり角度は、下限値が燃焼によって発生する窒素酸化物の濃度に基づいて該窒素酸化物の濃度が所定値以下になるように設定され、上限値が燃焼によって発生する一酸化炭素の濃度に基づいて該一酸化炭素の濃度が所定値以下になるように設定されている請求項1記載のバーナ装置である。
【0023】
請求項3記載の発明は、前記ガイドスリーブのバーナ中心軸に対する末広がり角度は15度以上45度以下である請求項2記載のバーナ装置である。
請求項4記載の発明は、前記一次空気流路内に、一次空気の流速を制御可能な一次空気流速制御装置を設けた請求項1記載のバーナ装置である。
【0024】
(作用)
図2には、本発明によるNOx濃度の低減の原理図を示す。この図はNOx濃度の低減の原理を分かりやすく説明するための模式図であり、後述する実施例に対応するものである。したがって、本発明が本図に限定されることはなく、後述の
図3及び
図4についても同様である。
【0025】
燃焼用空気をバーナ部で分割して火炉26へ投入することによるNOx濃度の低減は、バーナ近傍に形成される燃焼域内に酸素の少ない還元雰囲気(還元炎)を形成することで行われる。還元雰囲気によるNOx濃度の低減の原理は、一般的に以下に示す二つの機構によるものと考えられている。
(1)還元雰囲気が燃焼反応を抑制し、局所的に形成される高温火炎域の火炎温度を低下させる。
(2)還元雰囲気内で中間生成物であるラジカル成分が生成され、このラジカル成分によりNOxが窒素に還元される。
【0026】
本発明によれば、燃焼用空気は一次空気流路4と二次空気流路5に二分割して火炉26に投入している。第一燃料ノズル11周辺の還元炎101では空気比が低いために中間生成物であるラジカル成分が生成され、このラジカル成分は脱硝域103においてNOx等を窒素に還元する。一方、二次空気流路5から投入された燃焼用空気は、酸化炎102の渦状循環流及び燃焼用空気循環流105を形成し、未燃炭化水素が完全酸化域104において完全燃焼することで、燃焼が完結する。
【0027】
NOx濃度を低減するためには、
図2に示す還元炎101及び脱硝域103の領域を形成する必要がある。本発明によれば、スロート1の末広がり形状部1aと一次空気流路4出口に設けた末広がり形状のガイドスリーブ15によって、燃焼用空気循環流105から還元炎101及び脱硝域103との分離を強化することが可能となり、これらの領域を明確に形成することができる。
【0028】
そして、請求項1記載の発明によれば、二次空気流路の出口に設けたスロートの末広がり形状部と一次空気流路出口に設けた末広がり形状のガイドスリーブによって、一次空気及び二次空気から火炉へ投入される空気の分離が強化されるため、燃焼用空気を二分割して火炉へ投入する簡素な構成でもNOx濃度の低減を達成できる。
【0029】
したがって、部品点数の増加によってバーナ装置の構成が複雑となることや、バーナ装置の駆動部の異物噛み込みによる動作不良や運転調整時間が長くなるなどの問題は生じない。
【0030】
更に、第二燃料ノズルの先端が第一燃料ノズルの先端及び保炎器の火炉側端部よりも火炉側に突出しているため、保炎器外周の接線方向に噴射するガス燃料で形成される火炎により、第一燃料ノズル及び保炎器の焼損を防止できる。例えば、第二燃料ノズルは、保炎器の外側同心円状に複数本配置し、また、ガス火炎の保炎強化を目的として、先端部は保炎器より火炉側に配置し、各ノズル先端からガス燃料を保炎器外周の接線方向及び火炉方向に噴射させる。したがって、保炎器の内部に第二燃料が効率良く入り、第二燃料ノズルによって形成される火炎の保炎性を高めて火炎の安定化が図れる。また、末広がり形状の拡大面を有する保炎器の近傍に第二燃焼ノズルを配置することで、保炎器の拡大面に沿って流れる高速の一次空気流により常に連続的に冷却することができ、第二燃料ノズルの先端部の焼損を防止できる。
【0031】
また、
図10に示す特許文献2に記載の構成によれば、保炎器12周辺の渦状循環流111と燃料ノズル19周辺の渦状循環流113とでは周期が異なるため、燃焼振動を発生させる要因となってしまう。
【0032】
燃焼振動現象は、一般的に、(3)火炉内部の発熱率分布が火炉壁近傍で局在化する(燃料の燃焼速度が大きく、バーナの出口近傍で燃え尽きる)場合、(4)火炎が不安定で、絶えず変動している(保炎器に付着したり、吹き飛ぶ現象を繰り返す)場合などに起こりやすいと言われている。特許文献2に記載の構成では、上記(4)による火災の不安定が原因であると考えられる。
【0033】
上記2種類の渦状循環流111,113はガスバーナ火炎の保炎性の向上に寄与しているが、一方で燃焼振動現象を発生する要因となり、火炎のゆらぎ発生のポテンシャルを有している。火炎のゆらぎは燃料、空気量、流速、温度、火炉の形状及びガスノズルの噴射方向等の条件が揃うと微小な圧力変動を形成する。圧力変動は、更に発熱率変動を誘発し、これらはフィードバックループを形成しているため、微小な圧力変動でもエネルギーが蓄積されて大きな圧力変動、すなわち燃焼振動に発達してしまう。
【0034】
しかし、本発明によれば、第二燃料ノズルを第一燃料ノズルと同一の一次空気流路に設け、第二燃料火炎の保炎を第一燃料火炎と同一の保炎器で行っている。したがって、複数の保炎器を用いることによる、このような燃焼振動の問題も生じない。本発明によって燃焼振動を回避できる理由を以下に詳述する。
【0035】
燃焼振動を回避する構成としては、下記の3項目(5)〜(7)が挙げられる。
(5)第二燃料ノズルの位置を三次空気流路ではなく保炎器を設置している一次空気流路とすることにより、保炎性の向上が図られる。
(6)フレームホルダがある場合は、一次空気流に対して、フレームホルダでの保炎機構と保炎器での保炎機構の二つの保炎機構の干渉による燃焼振動のポテンシャルを有していたが、フレームホルダを無くすことにより、保炎機構を保炎器一つに統合して燃焼振動を防止できる。
(7)第二燃料ノズルは各ノズル先端からガス燃料を保炎器外周の接線方向及び火炉方向に噴射させる。保炎器外周の接線方向に噴射するガス燃料と一次空気流で形成される火炎により、保炎器近傍に継続して安定したガス燃料火炎が形成され、特にガス燃焼で問題となる燃焼振動を回避することが可能となる。
【0036】
そして、一次空気が第二燃料ノズルの表面を流れるため、この流れの冷却効果によって第二燃料ノズルの先端部の温度が低下し、第二燃料ノズルの先端部の焼損を防止できる。
【0037】
また、一次空気流路出口のガイドスリーブの先端部をスロートから火炉側に突出させずにスロート内に設けることで、火炉の輻射熱によるガイドスリーブの先端部の焼損を防止できる。更に、火炎の長炎化や火炎が炉壁に接触することによる黒煙の発生を防止できる。
【0038】
図3及び
図4には、
図2に示すガイドスリーブ15の末広がりの角度を変えた場合の図を示す。
図3ではガイドスリーブ15の末広がりの角度をバーナ中心軸に対して緩い角度(15度未満)にした場合を示し、
図4ではガイドスリーブ15の角度をバーナ中心軸に対して急な角度(45度よりも大きい角度)にした場合の図を示している。
図3の場合は、二次空気流路5から火炉26に投入される燃焼用空気の循環流105及び酸化炎102がバーナ中心軸に対して水平方向に流れるため、燃焼用空気循環流105に対する還元炎101及び脱硝域103の分離効果が
図2の場合と比べて弱くなる。
【0039】
一方、
図4の場合は、二次空気流路5から火炉に投入される燃焼用空気の循環流105及び酸化炎102がバーナ中心軸に対して遠くへ流れるため、燃焼用空気循環流105に対する還元炎101及び脱硝域103の分離効果は
図2の場合と比べて強くなるが、燃焼用空気循環流105がバーナ中心軸から遠くへ離れるため、バーナ中心軸の完全酸化域104に戻りにくくなってしまう。
【0040】
そして、燃焼によって生成するNOxの濃度やCOの濃度はガイドスリーブ15の末広がりの角度により傾向が異なってくる。NOx濃度はこれらの角度が小さいほど高く、CO濃度はこれらの角度が大きいほど高くなるという顕著な傾向がある。
【0041】
図3(ガイドスリーブ15の角度が緩い角度)の場合は、二次空気流路5を流れる二次空気がガイドスリーブ15に沿って流れるが、十分に火炎に対して分離できないことから、スロート1付近で燃料とすぐに混合してしまい混合燃焼となって、サーマルNOx(空気中の窒素が高温条件下で生成する熱的NOx)が発生し、NOx濃度が高くなる。一方、
図4(ガイドスリーブ15の角度が急な角度)の場合は、二次空気と火炎との混合が進まなくなり、すなわち二次空気が火炎下流まで混合しないことから火炎末端まで未燃分を含むことになり、CO濃度が高くなる。
したがって、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、一次空気流路出口のガイドスリーブの末広がりの角度を、下限値は燃焼によって発生するNOx濃度に基づいて該NOx濃度が所定値以下となるように設定し、上限値は燃焼によって発生するCO濃度に基づいて該CO濃度が所定値以下となるように設定することで、NOx濃度やCO濃度の低減を図ることができる。
【0042】
更に、請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明の作用に加えて、一次空気流路出口のガイドスリーブの末広がりの角度を15度以上45度以下し、適正な角度にすることで、燃焼用空気循環流に対する還元炎及び脱硝域の分離を効率良く行うことができる。したがって、燃焼用空気を三分割にして火炉へ投入するバーナ装置と同等のNOx濃度の低減が図れると共に、燃料の完全燃焼を図ることができるため、一酸化炭素や煤塵の発生を防止できる。
【0043】
また、保炎器の外周部を流れる一次空気の流速が小さいと、第二燃料ノズルによって形成される火炎の保炎効果が低減してしまうことが考えられる。一方、保炎器の外周部を流れる一次空気の流速が大きいと、燃焼振動や火炎の吹き飛びや火炎のリフトの要因となる。したがって、一次空気の流速を適正範囲にすることが望ましい。
【0044】
請求項4記載の発明によれば、一次空気流速制御装置により、例えばバーナ差圧を180mmAq以下の範囲内で、一次空気流速を10〜40m/sの適正範囲にすることができる。