特許第5736591号(P5736591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736591充電制御装置、および該充電制御装置における充電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736591
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】充電制御装置、および該充電制御装置における充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20150528BHJP
   H02J 7/02 20060101ALI20150528BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20150528BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H02J7/02 H
   H01M10/44 Q
   H01M2/10 E
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-229701(P2009-229701)
(22)【出願日】2009年10月1日
(65)【公開番号】特開2011-75504(P2011-75504A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2012年3月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】古谷 充宏
(72)【発明者】
【氏名】周藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】郭 中為
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−299122(JP,A)
【文献】 特開2005−328603(JP,A)
【文献】 特開2006−81334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 2/10
H01M 10/44
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置であって、
前記セル電池ごとに並列になるようにインピーダンス回路が設けられ、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線を電圧計測ラインとし、当該電圧計測ラインの配線にはヒューズが当該セル電池ごとに設けられており、各セル電池の前記電圧計測ライン間に各セル電池の電圧を算定するうえで互いに共通する配線区間が生じないように構成されることで、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線と当該他のセル電池から当該他のセル電池に対応するインピーダンス回路までの配線との間に、互いに共通インピーダンスを生じないように構成されており、前記セル電池に並列に設けられたインピーダンス回路を選択的に導通または非導通にするバイパス部と、
前記バイパス部の端子電圧から、前記バイパス部を導通させた場合の閉路端子電圧を検出する電圧検出部と、
前記閉路端子電圧、前記セル電池と前記バイパス部とを結ぶ電圧計測ラインのインピーダンス値、及び前記バイパス部のインピーダンス値から、前記セル電池のセル電圧を算定するセル電圧算定部と、
を備えることを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記各セル電池と該セル電池に対応する前記バイパス部とを結ぶ電圧計測ラインのインピーダンス値と、前記バイパス部のインピーダンス値とを記憶するインピーダンス記憶部を備え、
前記セル電圧算定部は、
前記バイパス部を導通させた場合の前記閉路端子電圧と前記バイパス部のインピーダンス値とを基に、前記バイパス部に流れるバイパス電流を算出し、
前記バイパス電流と前記電圧計測ラインのインピーダンス値とを基に補正値を算出し、
前記閉路端子電圧と前記補正値とを基に、セル電池のセル電圧を算定する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記セル電圧算定部は、
前記閉路端子電圧を前記バイパス部のインピーダンス値で除算することにより、前記バイパス電流を算出し、
前記バイパス電流と前記電圧計測ラインのインピーダンス値とを乗算することにより、
前記補正値を算出し、
前記閉路端子電圧と前記補正値とを加算することにより前記セル電圧を算定する
ことを特徴とする請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記セル電圧算定部により算定されたセル電圧に基づいて、前記バイパス部を導通または非導通にするバイパス制御部を備え、
前記バイパス制御部は、
予め定められる所定の閾値電圧に対して前記算定されたセル電圧が不足する場合には、前記バイパス部を非導通にし、前記算定されたセル電圧が達した場合には、前記バイパス部を導通にする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の充電制御装置。
【請求項5】
直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置における充電制御方法であって、
前記充電制御装置内の制御部により、
前記セル電池ごとに並列になるようにインピーダンス回路が設けられ、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線を電圧計測ラインとし、当該電圧計測ラインの配線にはヒューズが当該セル電池ごとに設けられており、各セル電池の前記電圧計測ライン間に各セル電池の電圧を算定するうえで互いに共通する配線区間が生じないように構成されることで、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線と当該他のセル電池から当該他のセル電池に対応するインピーダンス回路までの配線との間に、互いに共通インピーダンスを生じないように構成されており、前記セル電池に並列に設けられたインピーダンス回路を選択的に導通または非導通にするバイパス手順と、
前記インピーダンス回路の端子電圧から、前記インピーダンス回路を導通させた場合の閉路端子電圧を電圧検出部により検出する電圧検出手順と、
前記閉路端子電圧、前記セル電池と前記インピーダンス回路とを結ぶ電圧計測ラインのインピーダンス値、及び前記インピーダンス回路のインピーダンス値から、前記セル電池の端子電圧を算定するセル電圧算定手順と、
が行われることを特徴とする充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセル電池(二次電池)が直列に接続された電池モジュールを一括で充電する充電制御装置に関し、特に、各セル電池の充電電圧を調整してバランスさせるために使用されるバイパス部(セル電池に選択的に並列接続されるインピーダンス回路)の両端の電圧を計測してセル電池の電圧を検出する際に、セル電池とバイパス部とを結ぶ電圧計測ラインにバイパス電流が流れて電圧降下が生じる場合においても、正確なセル電圧の値を検出することができる、充電制御装置、および該充電制御装置における充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセル電池を直列に接続して構成される電池モジュールへの充電を制御する充電制御装置においては、各セル電池の電池電圧を検出(計測)し、セル電池間の充電電圧を調整してバランスがとれるように構成されている(例えば、特許文献1,2,3を参照)。
【0003】
直列に接続されたセル電池をバッテリ充電装置(定電圧直流電源装置または定電流直流電源装置)により一括充電を行う際に、セル電池の電池容量にアンバランス(不均衡)がある場合は、電池容量の小さなセル電池が先に満充電され、電池容量の大きなセル電池が充分に充電されることなく充電動作が完了する。すなわち、電池モジュールを全体として充分に充電できない状態のまま充電が停止されることになる。これを避けるため、充電の際に、各セル電池の電池電圧(充電電圧)を検出し、セル電池の充電電圧にアンバランスが生じた場合に、セル電池に選択的に並列接続されるバイパス部(インピーダンス回路)を使用してセル電池の充電電圧を均等にする。
【0004】
図3は、従来の充電制御装置の構成例を示す図である。図3において、セル電池1,2,・・・,nは、直列に接続された複数のセル電池であり、バッテリ充電装置(定電圧直流電源装置または定電流直流電源装置等)21から流れる充電電流Icにより一括で充電されるセル電池である。なお、バッテリ充電装置21から、セル電池1,2,・・・,nに充電を行う場合は、定電流充電(CC充電)を行う方法と、定電圧充電(CV充電)を行う方法と、充電初期において定電流充電(CC充電)を行ない、ある程度充電が進んだ状態において定電圧充電(CV充電)を行う方法など、種々の充電方法がある。
【0005】
図3に示す充電制御装置11Aにおいて、セル電池1,2,・・・,nの正(+)極側のそれぞれは、入力端子A1,A2,・・・,Anおよび電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanを通して、電圧検出部13の入力端子E1,E2,・・・,Enに接続される。また、セル電池1,2,・・・,nの負(−)極側のそれぞれは、入力端子B1,B2,・・・,Bnおよび電圧計測ラインLb1,Lb2,・・・,Lbnを通して、電圧検出部13の入力端子G1,G2,・・・,Gnに接続される。
【0006】
この電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanには、それぞれ過電流保護用のヒューズF1,F2,・・・,Fnが挿入される。また、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nのそれぞれは、電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanおよび電圧計測ラインLb1,Lb2,・・・,Lbnを通して、各セル電池1,2,・・・,nに並列に接続される。このバイパス部19−1,19−2,・・・,19−nは、半導体スイッチ等で構成されるバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnと、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnとの直列回路で構成される。
【0007】
電圧検出部13は、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出するための電圧検出部であり、各バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの両端の端子電圧Va1,Va2,・・・,Vanを計測することにより、セル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出している。
【0008】
このように図3に示す充電制御装置11Aにおいては、各セル電池1,2,・・・,nにそれぞれに対応して、電圧計測ラインやバイパス部等の同じ構成の回路が並列に複数設けられている。このため、以下の説明では、セル電池1の対応する回路の部分について説明するが、他のセル電池2,・・・,nに対応する回路についても同様である。
【0009】
セル電池1に対応する電圧計測ラインLa1の一端は、セル電池1の正(+)極側と端子A1を通して接続され、他端は、電圧計測ラインLa1のインピーダンス等価回路である計測ラインインピーダンス等価回路18−1を介して、バイパス部19−1の端子C1に接続されている。また、この端子C1は電圧検出部13の入力端子E1に接続されている。また、電圧計測ラインLb1の一端は、セル電池1の負(−)極側と端子B1を通して接続され、他端は、バイパス部19−1の端子D1に接続されている。また、この端子D1は電圧検出部13の入力端子G1に接続されている。
【0010】
電圧計測ラインLa1の計測ラインインピーダンス等価回路18−1は、過電流保護用のヒューズF1(内部抵抗rf1)と、電圧計測ラインLa1の配線経路(例えば、入力端子A1とバイパス部19−1の端子C1との間のプリント配線基板の配線パターン)のインピーダンス成分r1との直列回路で示される。
【0011】
また、バイパス部19−1は、バイパススイッチSW1と、バイパス抵抗R1との直列回路で構成される。そして、バイパス部19−1の一端(端子C1)は、計測ラインインピーダンス等価回路18−1の一端に接続され、また、電圧検出部13の入力端子E1に接続される。また、バイパス部19−1の他端(端子D1)は入力端子B1を通して、セル電池1の負(−)極側と接続され、また、電圧検出部13の入力端子G1に接続されている。
【0012】
そして、電圧検出部13は、セル電池1の電池電圧Vc1を検出するための電圧検出部であり、バイパス部19−1の両端の端子電圧Va1を計測することにより、セル電圧Vc1を検出している。
【0013】
上記構成において、セル電池1の充電動作中に、セル電池1のセル電圧Vc1が、予め設定される閾値電圧よりも大きい場合(あるいは、他のセル電圧Vc2,・・・,Vcnに比べて大きい場合)は、バイパススイッチSW1をON(導通)にし、セル電池1に流れる充電電流Icの一部をバイパス抵抗R1にバイパス電流Ib1としてバイパスさせ、セル電池1への充電速度を遅らせる。逆に、セル電池1のセル電圧Vc1が、予め設定される閾値電圧よりも小さい場合(あるいは、他のセル電圧Vc2,・・・,Vcnと比較して小さい場合)は、バイパススイッチSW1をOFF(非導通)にし、通常の充電を行う。
【0014】
以上、セル電池1に対応する回路の構成と動作について説明したが、他のセル電池2,・・・,nに対応する回路についても同様である。すなわち、電圧検出部13により、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出し、検出結果に応じて、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nを選択してON/OFF制御し、電池電圧(充電電圧)の高いセル電池に対してバイパス電流を流すようにする。これにより、バッテリ充電装置21によりセル電池1,2,・・・,nを一括充電する場合に、セル電池1,2,・・・,nの充電電圧にアンバランスが生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−245743号公報
【特許文献2】特開2002−291167号公報
【特許文献3】特開2001−178008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、複数のセル電池が直列に接続された電池モジュールを一括充電する充電制御装置11Aでは、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出し、この検出結果を基に、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nをON/OFF制御している。これにより、セル電池1,2,・・・,nの充電電圧が均等になるよう制御している。
【0017】
しかしながら、従来の充電制御装置11Aおいては、例えば、セル電池1を例にとると、バイパス部19−1の両端の端子電圧Va1を計測することにより、セル電池1のセル電圧Vc1を検出している。従って、バイパス部19−1内のバイパススイッチSW1がON(導通)している状態においては、電圧計測ラインLa1にバイパス電流Ib1が流れ、このバイパス電流Ib1のために、電圧計測ラインLa1上の部品(例えばヒューズF1)や配線パターン等によるインピーダンス成分により電圧降下が生じ、正確なセル電圧Vc1の検出が困難になるという問題があった。この事情は他のセル電池2,・・・,nについても同様である。このため、各セル電池1,2,・・・,nの充電電圧のバランスをとることが困難であった。
【0018】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、セル電池に並列に選択的に接続されるバイパス部の両端の端子電圧を計測してセル電圧を検出する際に、セル電池とバイパス部とを結ぶ電圧計測ラインにバイパス電流が流れて電圧降下が生じる場合においても、正確なセル電圧の値を検出することができる、充電制御装置、および該充電制御装置における充電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の充電制御装置は、直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置であって、前記セル電池ごとに並列になるようにインピーダンス回路が設けられ、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線を電圧計測ラインとし、当該電圧計測ラインの配線にはヒューズが当該セル電池ごとに設けられており、各セル電池の前記電圧計測ライン間に各セル電池の電圧を算定するうえで互いに共通する配線区間が生じないように構成されることで、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線と当該他のセル電池から当該他のセル電池に対応するインピーダンス回路までの配線との間に、互いに共通インピーダンスを生じないように構成されており、前記セル電池に並列に設けられたインピーダンス回路を選択的に導通または非導通にするバイパス部と、前記バイパス部の端子電圧から、前記バイパス部を導通させた場合の閉路端子電圧を検出する電圧検出部と、前記閉路端子電圧、前記セル電池と前記バイパス部とを結ぶ電圧計測ラインのインピーダンス値、及び前記バイパス部のインピーダンス値から、前記セル電池のセル電圧を算定するセル電圧算定部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記に記載の充電制御装置において、前記各セル電池と該セル電池に対応する前記バイパス部とを結ぶ電圧計測ラインのインピーダンス値と、前記バイパス部のインピーダンス値とを記憶するインピーダンス記憶部を備え、前記セル電圧算定部は、前記バイパス部を導通させた場合の前記閉路端子電圧と前記バイパス部のインピーダンス値とを基に、前記バイパス部に流れるバイパス電流を算出し、前記バイパス電流と前記電圧計測ラインのインピーダンス値とを基に補正値を算出し、前記閉路端子電圧と前記補正値とを基に、セル電池のセル電圧を算定することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記に記載の充電制御装置において、前記セル電圧算定部は、前記閉路端子電圧を前記バイパス部のインピーダンス値で除算することにより、前記バイパス電流を算出し、前記バイパス電流と前記電圧計測ラインのインピーダンス値とを乗算することにより、前記補正値を算出し、前記閉路端子電圧と前記補正値とを加算することにより前記セル電圧を算定することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記に記載の充電制御装置において、前記セル電圧算定部により算定されたセル電圧に基づいて、前記バイパス部を導通または非導通にするバイパス制御部と、を備え、前記バイパス制御部は、予め定められる所定の閾値電圧に対して前記算定されたセル電圧が不足する場合には、前記バイパス部を非導通にし、前記算定されたセル電圧が達した場合には、前記バイパス部を導通にすることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の充電制御方法は、直列に接続された複数のセル電池をバッテリ充電装置により一括して充電する充電制御装置における充電制御方法であって、前記充電制御装置内の制御部により、前記セル電池ごとに並列になるようにインピーダンス回路が設けられ、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線を電圧計測ラインとし、当該電圧計測ラインの配線にはヒューズが当該セル電池ごとに設けられており、各セル電池の前記電圧計測ライン間に各セル電池の電圧を算定するうえで互いに共通する配線区間が生じないように構成されることで、前記セル電池から当該セル電池に対応するインピーダンス回路までの配線と当該他のセル電池から当該他のセル電池に対応するインピーダンス回路までの配線との間に、互いに共通インピーダンスを生じないように構成されており、前記セル電池に並列に設けられたインピーダンス回路を選択的に導通または非導通にするバイパス手順と、前記インピーダンス回路の端子電圧から、前記インピーダンス回路を導通させた場合の閉路端子電圧を電圧検出部により検出する電圧検出手順と、前記閉路端子電圧、前記セル電池と前記インピーダンス回路とを結ぶ電圧計測ラインのインピーダンス値、及び前記インピーダンス回路のインピーダンス値から、前記セル電池の端子電圧を算定するセル電圧算定手順と、が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の充電制御装置においては、バイパス部のインピーダンス値、および電圧計測ラインの部品や配線パターンのインピーダンス値を予め記憶しておき、電圧検出部により検出した電圧検出値とバイパス部のインピーダンスの値とを基にバイパス部に流れるバイパス電流値を算出し、このバイパス電流値と電圧計測ラインのインピーダンス値とを基に電圧補正値を算出し、電圧検出部により検出した電圧検出値を補正する。
これにより、セル電池に並列に選択的に接続されるバイパス部の両端の端子電圧を計測してセル電圧を検出する際に、セル電池とバイパス部とを結ぶ電圧計測ラインにバイパス電流が流れて電圧降下が生じる場合においても、正確なセル電圧の値を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係わる充電制御装置の構成を示す図である。
図2図1に示す充電制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図3】従来の充電制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係わる充電制御装置の構成を示す図である。
【0027】
図1に示す本発明の充電制御装置11と、図3に示す従来の充電制御装置11Aとが構成上で異なる点は、図1に示す充電制御装置11において、制御部12と、バイパス制御部14と、セル電圧算定部15と、充電装置制御部17とを新たに追加した点である。他の構成は図3に示す充電制御装置11Aと同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付している。また、図1においては、セル電池1に対してのみ、バイパス電流Ib1が流れている例を示している。
【0028】
図1において、セル電池1,2,・・・,nは、直列に接続されたn個の二次電池(セル電池)であり、バッテリ充電装置21から流れる充電電流Icにより一括で充電される電池モジュールである。
【0029】
このセル電池1,2,・・・,nの正(+)極側は、充電制御装置11の入力端子A1,A2,・・・,An(入力端子Aで総称される)にそれぞれ接続される。また、入力端子A1,A2,・・・,Anは電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lan(計測ラインインピーダンス等価回路18−1,18−2,・・・,18−nを含む)を通して、電圧検出部13の入力端子E1,E2,・・・,En(入力端子Eで総称される)に接続される。また、セル電池1,2,・・・,nの負(−)極側のそれぞれは、入力端子B1,B2,・・・,Bn(入力端子Bで総称される)および電圧計測ラインLb1,Lb2,・・・,Lbn(電圧計測ラインLbで総称される)を通して、電圧検出部13の入力端子G1,G2,・・・,Gn(入力端子Gで総称される)に接続される。
【0030】
充電制御装置11は、各セル電池1,2,・・・,nへの充電を行う際に、各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcn(セル電圧Vcで総称される)をそれぞれ検出し、セル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnにアンバランスが生じている場合に、このアンバランスを補正するために、補正対象となるセル電池1,2,・・・,nに対応するバイパス部19−1,19−2,・・・19−n(バイパス部19で総称される)のON(導通)/OFF(非導通)制御を行う。
【0031】
また、充電制御装置11は、後述する充電装置制御部17によりバッテリ充電装置21の制御も行う。例えば、セル電池1,2,・・・,nへの一括充電の際に、それぞれのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを監視し、いずれかのセル電池1,2,・・・,nが満充電となった場合には、過充電になることを防ぐために、バッテリ充電装置21からセル電池1,2,・・・,nへの充電を停止させる。
【0032】
なお、図1に示す例においては、セル電池1,2,・・・,nから負荷に電力を供給する放電回路は、本発明に直接関係せず、また図面の見易さのために図示していないが、当然のこととして、セル電池1,2,・・・,nから負荷へ電力を供給する放電回路および放電制御装置(いずれも図示せず)を備えている。そして、例えば、セル電池1,2,・・・,nから負荷への放電動作中に、いずれかのセル電池の電池電圧が、所定の下限値(過放電を防ぐための閾値電圧)に達した場合には、セル電池1,2,・・・,nから負荷への放電を停止させるように構成されている。
【0033】
図1に示す本実施形態の充電制御装置11において、制御部12は、充電制御装置11内の各処理部の全体を統括して制御し、この充電制御装置11に要求される機能を実現するための制御部である。電圧検出部13は、セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出するため、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの両端の端子電圧Va1,Va2,・・・,Va3(Vaで総称される)を計測する。
【0034】
電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lan(電圧計測ラインLaで総称される)上の計測ラインインピーダンス等価回路18−1,18−2,・・・,18−n(計測ラインインピーダンス等価回路18で総称される)は、セル電池1,2,・・・,nのそれぞれに対応して設けられるヒューズF1,F2,・・・,Fn(内部抵抗rf1,rf2,・・・,rfn)と、配線経路(プリント配線基板上の配線パターン等)のインピーダンス成分r1,r2,・・・,rnとの直列回路で示される等価回路である。なお、ヒューズF1,F2,・・・,Fnは、ヒューズFで総称され、内部抵抗rf1,rf2,・・・,rfnは、内部抵抗rfで総称され、インピーダンス成分r1,r2,・・・,rnは、インピーダンス成分rで総称される。
【0035】
例えば、電圧計測ラインLa1上の計測ラインインピーダンス等価回路18−1の一端は、セル電池1の正(+)極側と入力端子A1を通して接続される。また、計測ラインインピーダンス等価回路18−1の他端は、バイパス部19−1の一端(端子C1)と接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子E1に接続される。この計測ラインインピーダンス等価回路18−1は、過電流保護用のヒューズF1(内部抵抗rf1)と、電圧計測ラインLa1の配線経路(例えば、入力端子A1とバイパス部19−1の端子C1との間のプリント配線基板上の配線パターン)のインピーダンス成分r1との直列回路で示される。
【0036】
なお、セル電池1の負(−)極側と入力端子Bを介して接続されるとともに、バイパス部19−1と接続端子D1で接続される電圧計測ラインLb1についても、配線パターンによるインピーダンス成分が存在するが、この電圧計測ラインLb1のインピーダンス成分については、電圧計測ラインLa1のインピーダンス成分r1に含めて考えることができる。
【0037】
バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nは、半導体スイッチ等で構成されるバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWn(バイパススイッチSWで総称される)と、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rn(バイパス抵抗Rで総称される)との直列回路で構成される。バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの一方の端子C1,C2,・・・,Cn(端子Cで総称される)は、電圧検出部13の入力端子E1,E2,・・・,Enに接続される。また、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの他方の端子D1,D2,・・・,Dn(端子Dで総称される)は、電圧検出部13の入力端子G1,G2,・・・,Gnに接続される。
【0038】
例えば、セル電池1に対応して設けられるバイパス部19−1は、バイパススイッチSW1と、バイパス抵抗R1との直列回路で構成される。このバイパス部19−1の一端(端子C1)は、計測ラインインピーダンス等価回路18−1の一端に接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子E1に接続される。また、バイパス部19−1の他端(端子D1)は、セル電池1の負(−)極側に繋がる入力端子Bに接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子G1に接続されている。
【0039】
すなわち、各セル電池1,2,・・・,nに対応するバイパス部19の一端(端子C)は、計測ラインインピーダンス等価回路18の一端に接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子Eに接続される。また、バイパス部19の他端(端子D)は、セル電池1,2,・・・,nの負(−)極側に繋がる入力端子Bに接続されるとともに、電圧検出部13の入力端子Gに接続されている。
【0040】
バイパス制御部14は、セル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcn(正確にはバイパス部19の端子電圧Va、または端子電圧Vaを後述するセル電圧算定部15により補正したセル電圧Vc)の電圧値を基に、それぞれのセル電池1,2,・・・,nごとに、バイパス部19におけるON(導通)またはOFF(非導通)動作の判定を行う。そして、この判定結果を基に、バイパス部19内のバイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWn(バイパススイッチSWで総称される)のON(導通)/OFF(非導通)を制御する。すなわち、このバイパス制御部14では、セル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnにアンバランスが生じている場合に、このアンバランスを補正するために、補正対象となるセル電池1,2,・・・,nに対応するそれぞれのバイパス部19内のバイパススイッチSWのON,OFF制御を行う。
【0041】
例えば、充電動作中に、セル電池1のセル電圧Vc1が、予め設定される閾値電圧よりも大きい場合(あるいは、他のセル電圧Vc2,・・・,Vcnに比べて大きい場合)は、バイパススイッチSW1をONにし、セル電池1に流れる充電電流Icの一部をバイパス電流Ib1としてバイパス抵抗R1にバイパスさせ、セル電池1の充電速度を遅らせる。逆に、セル電池1のセル電圧Vc1が、予め設定される閾値電圧よりも小さい場合(あるいは、他のセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnに比較して小さい場合)は、バイパススイッチSW1をOFF(非導通)にする。
【0042】
なお、図1に示す例では、バイパススイッチSW1のみがONし、バイパススイッチSW2,・・・,SWnがOFFしている例を示している。このため、バイパス電流Ib1のみがバイパス部19−1に流れ、バイパス部19−2,・・・,19−nには、バイパス電流Ib2,・・・,Ibn(図示せず)が流れていない状態を示している。なお、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nのそれぞれに流れるバイパス電流Ib1,Ib2,・・・,Ibnは、バイパス電流Ibで総称される。
【0043】
セル電圧算定部15は、バイパススイッチSWがON状態にある場合に、電圧検出部13の入力端子E,Gで検出されるセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vaを基に、バイパス部19内のバイパス抵抗Rに流れるバイパス電流Ibを算出し、このバイパス電流Ibと、電圧計測ラインLaの計測ラインインピーダンス等価回路18のインピーダンス値Zを基に、補正電圧ΔVfを算出し、補正されたセル電圧Vc(Vc=Va+ΔVf)を算出するための処理部である。
【0044】
例えば、バイパススイッチSW1がON状態にある場合に、電圧検出部13の入力端子E1,G1で検出されるセル電圧(バイパス部19−1の端子電圧)Va1を基に、バイパス部19−1内のバイパス抵抗R1に流れるバイパス電流Ib1を算出し、該バイパス電流Ib1と、計測ラインインピーダンス等価回路18−1のインピーダンス値Z1(rf1+r1)を基に、補正電圧ΔVf1を算出し、補正されたセル電圧Vc1(Vc1=Va1+ΔVf1)を算出する。
【0045】
また、インピーダンス記憶部16は、電圧計測ラインLa1,La2,・・・,Lanに存在する部品(例えばヒューズFの内部抵抗rf)や、配線パターン上に存在するインピーダンス成分rのインピーダンス値、およびそれらの合計値Zを予め記録する。
【0046】
なお、この充電制御装置11には、セル電池に対する充電制御動作を指示するための入力装置(例えば、押しボタンスイッチ等の操作スイッチ)や、検出結果を表示するための表示装置や、充電制御動作の結果(例えば、各セル電池の充電電圧)を通信により外部に出力するための通信装置(いずれも表示せず)が設備されているものとする。
【0047】
上記構成の充電制御装置11では、バイパス部19に流れるバイパス電流Ibにより電圧計測ラインLaに生じる電圧降下値を、セル電圧算定部15により補正し、セル電池1,2,・・・,nの正確なセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出する。以下、その補正動作について説明する。なお、以下で説明する例は、図1においてセル電池1にのみバイパス電流Ib1が流れ、セル電池2およびセル電池nにはバイパス電流Ib2,Ibnが流れない場合の例である。
【0048】
最初に、充電制御装置11では、予め電圧計測ラインLaに存在する部品、例えばヒューズの内部抵抗rf1,rf2,・・・,rfnや、配線パターン上に存在するインピーダンス成分r1,r2,・・・,rnを予め計測し、インピーダンスの合計値Z1,Z2,・・・,Znとともに、インピーダンス記憶部16に予め記録しておく。
【0049】
続いて、電圧検出部13により、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nの両端の端子電圧Va1,Va2,・・・,Vanを検出(計測)する。
【0050】
そして、例えば、バイパス制御部14によりバイパス部19−1をON(バイパススイッチSW1をON)させた場合は、セル電池1のセル電圧(バイパス部19−1の端子電圧)Va1から、バイパス電流Ib1の電流値をバイパス部19−1のバイパス抵抗R1の抵抗値によって算出する。
このバイパス電流Ib1の電流値は、「Ib1=V1/R1」により算出される。
【0051】
次に、このバイパス電流Ib1の電流値を基に、電圧計測ラインLa1により生じた電圧降下値ΔVr1を算出する。
この電圧降下値ΔVr1は、「ΔVr1=Ib1×Z1」により算出される。
【0052】
続いて、検出したセル電池1のセル電圧(バイパス部19−1の端子電圧)Va1と算出した電圧降下値ΔVr1を足し合わせる。
これにより、真のセル電圧Vc1を、「Vc1=Va1+ΔVr1」により算出することができる。
【0053】
また、バイパス動作を行わない場合、例えば、セル電池2およびセル電池nではバイパス動作が行われないと考えた場合は、バイパス電流Ib2,Ibnが流れないので電圧降下(ΔVr2およびΔVrn)が生じないのでセル電圧算定部15による補正は行わない。この場合は、バイパス動作なしのセル電池2のセル電圧Vc2は、電圧検出部13で検出したセル電圧(バイパス部19−2の端子電圧)Va2が真のセル電圧Vc2になる(Vc2=Va2)。同様にして、バイパス動作なしのセル電池nのセル電圧Vcnは、電圧検出部13で検出したセル電圧(バイパス部19―nの端子電圧)Vanが真のセル電圧Vcnになる(Vcn=Van)。
【0054】
以上、セル電池1に対してバイパス部19−1がONした場合について、電圧降下値ΔVr1を算出して補正を行う例について説明したが、他のセル電池2,・・・,nのそれぞれに対応するバイパス部19−2〜19−nがONした場合についても、同様の方法により補正が行われる。
【0055】
また、図2は、本発明の充電制御装置における処理の流れを示すフローチャートであり、上述した充電制御装置11におけるセル電圧補正処理の流れをフローチャートで示したものである。以下、図2に示すフローチャートを参照して、その処理の流れについて説明する。
【0056】
図2(および図1)を参照して、充電開始後の最初の状態においては、バイパス制御部14の制御動作により、各バイパス部19内のバイパススイッチSWは全てOFF状態にあるものとする(ステップS1)。
【0057】
この状態において、電圧検出部13は、セル電池1,2,・・・,nのそれぞれのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)を入力端子E,Gから入力し、バイパス部19の端子電圧をセル電圧Va1,Va2,・・・,Vanとして検出する(ステップS2)。
【0058】
続いて、バイパス制御部14により、各セル電池1,2,・・・,nに対応するバイパス部19の動作条件を判定する(ステップS3)。例えば、セル電池1のセル電圧(バイパス部19−1の端子電圧)Va1が、予め設定される閾値電圧と比べて高い場合(あるいは、他のセル電池のセル電圧に比べて高い場合)は、セル電池1に対応するバイパス部19−1のバイパススイッチSW1をONにすることを判定する。この判定を各セル電池1,2,・・・,nのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Va1,Va2,・・・,Vanに対して行う。
【0059】
すなわち、バイパス部19の動作条件を満たすと判定されたセル電池m(m=1〜nのいずれか)に対し(ステップS3:Yes)、このセル電池mに対応するバイパス部19−mをONにする(ステップS4)。
【0060】
続いて、電圧検出部13により、バイパス部19−mをONにしたセル電池mのセル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vamを検出する(ステップS5)。そして、セル電圧算定部15により、バイパス部19−mをONにしたときのセル電圧(バイパス部19の端子電圧)Vamから、バイパス電流Ibmを算出する(ステップS6)。すなわち、セル電圧算定部15は、バイパス部19−mをONにしたセル電池mについて、バイパス電流Ibmの電流値をバイパス抵抗Rmの抵抗値を基に算出する。例えば、セル電池1のバイパス部19−1をONにした場合は、バイパス電流Ib1の電流値をバイパス抵抗R1のインピーダンス値(抵抗値)を基に算出する。このバイパス電流Ib1の電流値は、「Ib1=Va1/R1」により算出される。
【0061】
また、セル電圧算定部15は、このバイパス電流Ibmの電流値を基に、電圧計測ラインLamにより生じた電圧降下値ΔVrmを算出する(ステップS7)。この電圧降下値ΔVrmは、「ΔVrm=Ibm×Zm」により算出される。例えば、セル電池1のバイパス部19−1をONにした場合は、バイパス電流Ib1の電流値を基に、電圧計測ラインLa1により生じた電圧降下値ΔVr1を算出する。この電圧降下値ΔVr1は、「ΔVr1=Ib1×Z1」により算出される。ここで、「Z1=rf1+r1」である。
【0062】
続いて、セル電圧算定部15は、検出したセル電圧(バイパス部19―mの端子電圧)Vamと算出した電圧降下値ΔVrmを足し合わせて、検出したセル電圧Vamを補正する(ステップS8)。これにより、真のセル電圧Vcmを、「Vcm=Vam+ΔVrm」により算出することができる(ステップS9)。例えば、セル電池1のバイパス部19−1をONにした場合は、電圧検出部13により検出した電圧検出値Va1と、電圧降下値ΔVr1を足し合わせて、電圧検出値を補正する(Vc1=Va1+ΔVr1)。
【0063】
なお、ステップS3においてバイパス部19−mによるバイパス動作を行わないと判定された場合は(ステップS3:No)、バイパス電流Ibmが流れず電圧降下が生じないので補正は行わない。すなわち、バイパス動作なしの状態で電圧検出部13により検出したセル電圧(バイパス部19−mの端子電圧)Vamが真のセル電圧Vcmになる(Vcm=Vam)(ステップS9)。例えば、図1に示すセル電池2で考えた場合はバイパス電流Ib2が流れず電圧降下が生じないので補正は行わない。これにより、バイパス動作なしのセル電池2のセル電圧Vc2は、電圧検出部13で検出したセル電圧(バイパス部19−2の端子電圧)Va2が真のセル電圧Vc2になる(Vc2=Va2)。
【0064】
以上説明したように、充電制御装置11では、セル電池1,2,・・・,nに並列に接続されるバイパス部19の両端C,Dの端子電圧を計測してセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを検出する際に、セル電池1,2,・・・,nとバイパス部19とを結ぶ電圧計測ラインLaにおいてバイパス電流Ibによる電圧降下分が生じる場合においても、正確なセル電圧Vc1,Vc2,・・・,Vcnを容易に検出することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、図1に示す充電制御装置11内の制御部12、電圧検出部13、バイパス制御部14、セル電圧算定部15、および充電装置制御部17における機能は、専用のハードウェア(例えば、ゲートアレイ等のロジックIC)を使用して実現することができる。また、充電制御装置11内にCPU(マイクロコンピュータやDSP等の中央演算処理装置)を含むコンピュータシステムを設け、制御部12、電圧検出部13、バイパス制御部14、セル電圧算定部15、および充電装置制御部17における処理に関する一連の処理の過程を、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶させておき、このプログラムをCPUが読み出して実行することによって、上記処理を行うことができる。すなわち、制御部12、電圧検出部13、バイパス制御部14、セル電圧算定部15、および充電装置制御部17における各処理は、CPUが上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより実現することができる。
【0066】
また、本発明のバイパス部は、バイパス部19が相当し、本発明の電圧検出部は電圧検出部13が相当する。また、本発明のバイパス制御部はバイパス制御部14が相当する。また、本発明のセル電圧算定部はセル電圧算定部15が相当する。また、本発明のインピーダンス回路はバイパス抵抗Rが相当する。また、本発明の電圧計測ラインは電圧計測ラインLa,Lbが相当する。また、閉路端子電圧はバイパス部の端子電圧Vaが相当する。
【0067】
そして、図1に示す充電制御装置11は、バイパス部19が、セル電池1,2,・・・,nごとに並列に設けられたインピーダンス回路(バイパス抵抗R)を選択的に導通または非導通にする。電圧検出部13は、バイパス部19の端子電圧から、バイパス部19を導通させた場合の閉路端子電圧(バイパス部の端子電圧)Vaを検出する。セル電圧算定部15は、閉路端子電圧Va、セル電池1,2,・・・,nとバイパス部19とを結ぶ電圧計測ラインLaのインピーダンス値、及びバイパス部19のインピーダンス値(バイパス抵抗Rの抵抗値)から、セル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vcを算定する。
これにより、セル電池1,2,・・・,nに並列に選択的に接続されるバイパス部19の両端の端子電圧(閉路端子電圧)Vaを計測してセル電圧Vcを検出する際に、セル電池1,2,・・・,nとバイパス部19とを結ぶ電圧計測ラインLaにバイパス電流Ibが流れて電圧降下が生じる場合においても、正確なセル電圧Vcの値を検出することができる。
なお、また、電圧検出部13による各セル電池の閉路端子電圧の検出は、予め定められた順序に従って行うこととしてもよく、或いは、ランダムに行うこととしてもよい。また、バイパス部19によって行われるインピーダンス回路(バイパス抵抗R)の導通または非導通の切り換えは、電圧検出部13による閉路端子電圧の検出に応じて行うほかに任意のタイミングで行うことができる。
【0068】
また、充電制御装置11は、インピーダンス記憶部16が、各セル電池1,2,・・・,nとバイパス部19とを結ぶ電圧計測ラインLaのインピーダンス値(ヒューズの内部抵抗rfと配線パターンのインピーダンス成分r)と、バイパス部19のインピーダンス値(バイパス抵抗Rの抵抗値)とを記憶する。セル電圧算定部15は、バイパス部19を導通させた場合の閉路端子電圧Vaとバイパス部19のインピーダンス値(バイパス抵抗Rの抵抗値)とを基に、バイパス部19に流れるバイパス電流Ibを算出し、このバイパス電流Ibと電圧計測ラインLaのインピーダンス値とを基に補正値ΔVrを算出し、閉路端子電圧Vaと補正値ΔVrとを基にセル電圧Vcを算定する。
これにより、セル電池に並列に選択的に接続されるバイパス部19の両端の端子電圧Vaを基に、正確なセル電圧Vcを算定することができる。
【0069】
また、充電制御装置11は、バイパス制御部14が、セル電圧算定部15により算定されたセル電池1,2,・・・,nのセル電圧Vcに基づいて、バイパス部19を導通または非導通にする。このバイパス制御部14は、予め定められる所定の閾値電圧に対して算定されたセル電圧が不足する場合には、バイパス部19を非導通にし、算定されたセル電圧が達した場合には、バイパス部19を導通にする。
これにより、正確なセル電圧Vcの値を検出することができる効果に加えて、検出したセル電圧Vcを基に、セル電池1,2,・・・,nの充電電圧をバランスさせながら充電を行うことができる
【0070】
なお、バイパス部19−1,19−2,・・・,19−nにおけるバイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnは、純抵抗に代えて、所望のインピーダンスを有する構成とすることもできる。また、電流制限を行う定電流回路とすることもできる。また、バイパス抵抗R1,R2,・・・,Rnは、バイパススイッチSW1,SW2,・・・,SWnの有する内部抵抗とすることもできる。
【0071】
また、本実施形態では、インピーダンス記憶部16に、電圧計測ラインLaに存在する部品(例えばヒューズF1の内部抵抗rf)や、配線パターン上に存在するインピーダンス成分rや、それらのインピーダンスの合計値Zを予め記録するように構成されているが、これに限定されない。例えば、バイパス部19のインピーダンス(バイパス抵抗R)の値を記憶しておけば、バイパス部19をONにした時の閉路端子電圧Vaを基に、バイパス電流Ibが算出できる。そして、バイパス部19をOFFにした時のバイパス部19の端子電圧Va´と、バイパス部19をONにした時のバイパス部19の端子電圧Vaとを基に、電圧計測ラインLaに存在するインピーダンスの合計値Zを、Z=(Va´−Va)/Ib、により算出することもできる。すなわち、バイパス部19内のバイパス抵抗Rの値さえ記憶しておけば、電圧計測ラインLaのインピーダンス値は、自動で検出することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の充電制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1,2,・・・,n セル電池
11,11A 充電制御装置
12 制御部
13 電圧検出部
14 バイパス制御部
15 セル電圧算定部
16 インピーダンス記憶部
17 充電装置制御部
18−1,18−2,・・・,18−n 計測ラインインピーダンス等価回路
19−1,19−2,・・・,19−n バイパス部
R1,R2,・・・,Rn バイパス抵抗(インピーダンス回路)
21 バッテリ充電装置
La1,La2,・・・,Lan 電圧計測ライン
Lb1,Lb2,・・・,Lbn 電圧計測ライン
SW1,SW2,・・・,SWn バイパス部のバイパススイッチ
Ib1,Ib2,・・・,Ibn バイパス電流
Vc1,Vc2,・・・,Vcn セル電圧
Va1,Va2,・・・,Van セル電圧(バイパス部の端子電圧)
図1
図2
図3