(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736635
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ドライアイ治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/07 20060101AFI20150528BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20150528BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
A61K31/07
A61K47/34
A61P27/02
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-150874(P2009-150874)
(22)【出願日】2009年6月25日
(65)【公開番号】特開2011-6348(P2011-6348A)
(43)【公開日】2011年1月13日
【審査請求日】2012年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】田淵 照人
(72)【発明者】
【氏名】井上 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】服部 学
(72)【発明者】
【氏名】福岡 葉月
(72)【発明者】
【氏名】三宅 深雪
【審査官】
上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−343894(JP,A)
【文献】
特開2006−016374(JP,A)
【文献】
特開2002−154989(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/035033(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/041549(WO,A1)
【文献】
特開2002−104959(JP,A)
【文献】
特開2001−322936(JP,A)
【文献】
国際公開第97/021441(WO,A1)
【文献】
特開2001−158734(JP,A)
【文献】
木下茂編集,眼科 New Insight 第5巻 角膜疾患の細胞生物学,株式会社メジカルビュー社,1995年,p.22-25
【文献】
あたらしい眼科,2008年,Vol.25, No.3,p.291-296
【文献】
眼科ケア,2005年,Vol.7, No.5,p.457-459
【文献】
バイオサイエンスとインダストリー,2000年,Vol.58, No.10,p.716-719
【文献】
Symposium on Ocular Therapy,1979年,Vol.11,p.127-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−48
A61K 9/00−72
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンAを100,000単位/100mL以上と、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.4〜5W/V%とを含有し、(C)塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラベン及びクロロブタノールの含有量が0.003W/V%以下であることを特徴とするドライアイ治療剤。
【請求項2】
(C)成分が無配合であることを特徴とする請求項1記載のドライアイ治療剤。
【請求項3】
(A)成分が、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル又はレチノイン酸である請求項1又は2記載のドライアイ治療剤。
【請求項4】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる界面活性剤の含有量が、0.5W/V%以下である請求項1〜3のいずれか1項記載のドライアイ治療剤。
【請求項5】
(A)成分の含有量が、200,000単位/100mL以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のドライアイ治療剤。
【請求項6】
(A)成分の含有量が、300,000単位/100mL以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のドライアイ治療剤。
【請求項7】
ソフトコンタクトレンズ用である請求項1〜6のいずれか1項記載のドライアイ治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンAを含有するドライアイ治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイは、涙液の質的又は量的異常により、眼球表面上の角結膜が障害を受けた状態のことをいう。涙液は油層、水層及びムチン層の三層より構成されており、この三層構造の質的量的バランスが破壊されることで涙液が不安定となり、角膜に障害が生じ、ドライアイが惹起される。ドライアイ治療においては、この涙液の油層、水層、ムチン層の三層構造を回復させること及び角膜障害を治療することが重要となる。
【0003】
ビタミンAは、上皮細胞の増殖・分化に必須な物質として知られており、ムチン産生を促進する作用(例えば、非特許文献1参照)、角膜創傷を治癒する作用(例えば、非特許文献2参照)が報告されている。このように、ビタミンAは、「涙液ムチン層の回復」及び「角結膜障害の治療」に効果を発揮するドライアイ治療に有用な薬物として期待されている。以上のことから、ドライアイ治療効果の高いビタミンAを含有するドライアイ治療剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−322936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ビタミンAの角膜・結膜損傷治療効果が向上したドライアイ治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ビタミンAを50,000単位/100mL以上含有する組成物に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを配合することで、目に対する刺激性も少なく、角膜・結膜損傷治療及びドライアイ治療効果が向上することを知見した。また、ビタミンAを50,000単位/100mL以上配合することで角膜・結膜損傷治療効果が向上し、ドライアイ治療効果が向上することを知見した。さらに、カチオン性界面活性剤及び疎水性防腐剤が、上記2成分を配合した組成において、角膜・結膜損傷治療及びドライアイ治療効果を阻害することを知見した。
【0007】
従って、本発明は下記ドライアイ治療剤を提供する。
[1].(A)ビタミンAを
100,000単位/100mL以上と、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.4〜5W/V%とを含有し、(C)塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラベン及びクロロブタノールの含有量が0.003W/V%以下であることを特徴とするドライアイ治療剤。
[2].(C)成分が無配合であることを特徴とする[1]記載のドライアイ治療剤。
[3].(A)成分が、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル又はレチノイン酸である[1]又は[2]記載のドライアイ治療剤。
[4].ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる界面活性剤の含有量が、0.5W/V%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のドライアイ治療剤。
[
5].(A)成分の含有量が、200,000単位/100mL以上である[1]〜[4]のいずれかに記載のドライアイ治療剤。
[
6].(A)成分の含有量が、300,000単位/100mL以上である[1]〜[4]のいずれかに記載のドライアイ治療剤。
[
7].ソフトコンタクトレンズ用である[1]〜[
6]のいずれかに記載のドライアイ治療剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビタミンAによる角膜・結膜損傷治療効果が向上したドライアイ治療剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のドライアイ治療剤は、(A)ビタミンAを50,000単位/100mL以上と、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを含有し、(C)カチオン性界面活性剤及び疎水性防腐剤の含有量が0.004W/V%以下のものである。
【0010】
(A)ビタミンA
ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100万〜180万国際単位(以下、単位又はI.U.と略記する。)のものが市販されており、具体的には、ロッシュ・ビタミン・ジャパン株式会社製「パルミチン酸レチノール」(170万I.U./g)等が挙げられる。
【0011】
(A)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、その含有量は、ドライアイ治療剤全量に対して50,000単位/100mL以上であり、50,000〜500,000が好ましい。ビタミンAは、角膜・結膜損傷治療効果、ドライアイ治療効果、疲れ目・かすみ目の改善効果を有しているが、50,000単位/100mL未満だと、角膜・結膜損傷治療効果が不十分となる。(A)成分の量は、角膜・結膜損傷治療効果の点から、100,000単位/100mL以上が好ましく、200,000単位/100mL以上がより好ましく、300,000単位/100mL以上がより好ましい。上限は、ビタミンAの安定性の点から500,000単位/100mL以下が好ましい。上記量をW(質量)/V(体積)%(g/100mL)で表すと、配合するビタミンAの単位にもよるが、0.03〜0.3W/V%が好ましい。
【0012】
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
本発明において、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いることで、ビタミンAを50,000単位/100mL以上含有する眼科用組成物であっても、目に対する刺激性も少なく、角膜・結膜損傷治療及びドライアイ治療効果が向上すると共に、ビタミンAの安定性を保つことができる。例えば、点眼剤によく使用されるソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤よりも、ビタミンAの吸収を促進し、ドライアイに対する治療効果を高めることができる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは特に限定されるものではなく、医薬品添加物規格(薬添規)に記載されたものを用いることができる。エチレンオキシドの平均重合度は4〜200が好ましく、20〜200がより好ましく、プロピレンオキシドの平均重合度は5〜100が好ましく、20〜70がより好ましく、ブロック共重合体でもランダム重合体でもよい。
【0013】
具体的には、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール:Lutrol F127(BASF製)、ユニルーブ70DP−950B(日油(株)製)等、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール(プルロニックF−87)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF−68、別名ポロクサマー188):プロノン#188P(日油(株))等、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックP123、別名ポロクサマー403)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(プルロニックP85):プロノン#235P(日油(株))等、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(プルロニックL−44)、テトロニック等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコールが好ましい。
【0014】
(B)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、角膜・結膜損傷治療及びドライアイ治療効果の点から、その含有量は、ドライアイ治療剤全量に対して0.4〜5W/V%が好ましく、0.5〜3W/V%がより好ましく、0.6〜2W/V%がさらに好ましく、1〜2W/V%が特に好ましい。0.4W/V%未満だと、ビタミンA類の可溶化が困難となるおそれがあり、ビタミンAの保存安定性の点から5.0W/V%以下が好ましい。
【0015】
(C)カチオン性界面活性剤及び疎水性防腐剤
角膜・結膜損傷治療を阻害する成分としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性界面活性剤、パラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等)、クロロブタノール等の疎水性防腐剤が挙げられる。これらの含有量は、組成物中0.004W/V%以下が好ましく、0.003W/V%以下がより好ましく、これらを含有せず、無配合とすることがより好ましい。これらが角膜・結膜損傷治療効果を阻害する機構は明らかではないが、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、EO鎖を外側、PO鎖を内側にしてビタミンAを包み込みミセルを形成する。このミセルが角膜表面に吸着し、角膜内部にビタミンAが吸収される。カチオン性界面活性剤は界面活性能により、また疎水性防腐剤は疎水性が高いことにより、ミセル表面の状態を変えてしまうことから、ビタミンAの角膜への吸着が阻害され、その結果、角膜・結膜損傷治療効果及びドライアイ改善を阻害することが考えられる。一方、ソルビン酸又はその塩等の親水性が高いものは、ミセル内部状態に影響を与えないため、ビタミンAの吸収促進効果を阻害しない。なお、上記成分は防腐剤の一部であるが、防腐剤無配合にした場合の防腐力は、エデト酸ナトリウム、ホウ酸及びトロメタモールから2種以上組み合わせ配合するとよい。また、ユニットドーズ容器、フィルター付容器にした場合にも、防腐剤無配合とすることができる。
【0016】
本発明のドライアイ治療剤には、前記成分の他、眼科用組成物に配合する各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。これらの成分としては、多価アルコール、(B)成分以外の界面活性剤、緩衝剤、粘稠剤、糖類、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、薬物、水等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、適量を配合することができる。
【0017】
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールの含有量は、ドライアイ治療剤中0.01〜5W/V%が好ましく、より好ましくは0.05〜3W/V%である。
【0018】
(B)成分以外の界面活性剤を併用してもよく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。しかしながら、角膜・結膜損傷治療効果、ドライアイ改善の点からは、これらの界面活性剤の量は少ないほうがよく、0.5W/V%以下とすることが好ましい。
【0019】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、中でも、低刺激、かつ組成物の防腐効果の点から、トロメタモールが好ましい。さらに、ホウ酸、ホウ砂を併用すると、特に高い防腐効果が得られる。緩衝剤の含有量は、ドライアイ治療剤全量に対して0.001〜10W/V%が好ましく、より好ましくは0.01〜5W/V%である。
【0020】
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。これらを配合することにより、滞留性が高まり角膜・結膜損傷治療効果がより向上する。粘稠化剤のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、例えば0.001〜10W/V%であり、好ましくは0.001〜5W/V%、より好ましくは0.01〜3W/V%である。
【0021】
糖類としては、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらはD体、L体又はDL体のいずれでもよい。糖類のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、例えば0.001〜10W/V%であり、好ましくは0.005〜5W/V%、より好ましくは0.01〜3W/V%である。
【0022】
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤を使用することが好ましい。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。中でも、塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。本発明のドライアイ治療剤のpH(20℃)は、4.0〜9.0が好ましく、より好ましくは5.0〜8.0であり、さらに好ましくは6.0〜8.0である。なお、本発明において、pHの測定は20℃でpH浸透圧計(HOSM−1,東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。pH調整剤のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、例えば0.00001〜10W/V%であり、好ましくは0.0001〜5W/V%、よりさらに好ましくは0.001〜3W/V%である。
【0023】
(C)成分以外の防腐剤は、ドライアイ症状を悪化させる可能性があるため、無配合とすることが望ましいが、親水性の高いソルビン酸等の防腐剤を配合することができる。この防腐剤の眼科用組成物全量に対する含有量は、例えば0.00001〜5W/V%であり、好ましくは0.0001〜3W/V%、さらに好ましくは0.001〜2W/V%である。防腐剤無配合にした場合の防腐力は、エデト酸ナトリウム、ホウ酸及びトロメタモールから1種以上、好適には2種以上組み合わせ配合するとよい。また、ユニットドーズ容器、フィルター付容器にした場合にも、防腐剤無配合とすることができる。
【0024】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。等張化剤のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、例えば0.001〜5W/V%、好ましくは0.01〜3W/V%、より好ましくは0.1〜2W/V%である。
【0025】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。安定化剤のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、例えば0.001〜5W/V%であり、好ましくは0.01〜3W/V%、より好ましくは0.1〜2W/V%である。
【0026】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、リナロール、シネオール等が挙げられる。清涼化剤のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、化合物の総量として、0.0001〜5W/V%が好ましく、0.001〜2W/V%がより好ましく、0.005〜1W/V%がさらに好ましく、0.007〜0.8W/V%が特に好ましい。
【0027】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去剤(例えば、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、エピネフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硝酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン等)、消炎・収斂剤(例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム等)、抗ヒスタミン剤(例えば、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル、マレイン酸クロルフェニラミン等)、水溶性ビタミン(活性型ビタミンB
2、ビタミンB
6、ビタミンB
12等)、アミノ酸(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤、殺菌剤(例えば、イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、抗アレルギー剤(クロモグリク酸、フマル酸ケトチフェン、トラニラスト等)、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、散瞳剤(塩酸シクロペントラート、トロピカミド等)、白内障治療剤(ピレノキシン、グルタチオン等)を適宜配合することができる。
【0028】
これらの成分の含有量は、製剤の種類、薬物の種類等に応じて適宜選択され、各種成分の含有量は当該技術分野で既知である。例えば、ドライアイ治療剤全量に対して0.0001〜30W/V%、好ましくは0.001〜10W/V%の範囲から適宜選択できる。より具体的には、各成分のドライアイ治療剤全量に対する含有量は、以下の通りである。
【0029】
充血除去剤であれば、例えば、0.0001〜0.5W/V%、好ましくは0.0005〜0.3W/V%、より好ましくは0.001〜0.1W/V%である。
消炎・収斂剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.0001〜5W/V%である。
抗ヒスタミン剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.001〜5W/V%である。
水溶性ビタミンであれば、0.0001〜1W/V%、好ましくは、0.0001〜0.5W/V%である。
アミノ酸であれば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.001〜3W/V%である。
サルファ剤、殺菌剤であれば、例えば、0.00001〜10W/V%、好ましくは、0.0001〜10W/V%である。
抗アレルギー剤であれば、例えば、0.0001〜10W/V%、好ましくは0.001〜5W/V%である。
局所麻酔剤、散瞳剤、白内障治療剤であれば、例えば、0.001〜1W/V%、好ましくは0.005〜1W/V%である。
【0030】
本発明のドライアイ治療剤は、そのまま液剤としてもよく、懸濁剤、ゲル剤等に調製してもよい。使用形態としては、具体的には、点眼剤(例えば、一般用点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤等)、洗眼剤(一般用洗眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤等)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等が挙げられる。中でも、コンタクトレンズ使用者はドライアイになりやすいため、本発明の眼科用組成物は、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等として好適である。特に、防腐剤の量が制限されていることから、特にソフトコンタクトレンズ用であることが好ましい。
【0031】
本発明のドライアイ治療剤は液状であって、点眼剤の場合、粘度は1〜100mPa・sが好ましく、1〜50mPa・sがより好ましく、1〜30mPa・sがさらに好ましい。なお、粘度測定は20℃でE型粘度計(VISCONIC ELD−R,東京計器(株))を用いて行う。
【0032】
本発明のドライアイ治療剤は、その調製方法については特に制限されるものではないが、例えば、ビタミンAをポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールより滅菌精製水に可溶化し、次いで、各配合成分を加えてpHを調整して得ることができる。その後、適当な容器、例えばポリエチレンテレフタレート製の容器等に無菌充填することができる。
【0033】
本発明のドライアイ治療剤は、1回30〜60μL、1日3〜6回を点眼することにより、その効果をより発揮することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例
、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、表中の量は、10%塩化ベンザルコニウム液は10%塩化ベンザルコニウム液の量であり、その他は成分の純分量である。
【0035】
[実施例1〜
16、参考例1〜6、比較例1〜10]
表1〜7に示す組成の眼科用組成物(点眼剤)を、ビタミンA、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、抗酸化剤を85℃で予備溶解し、その予備溶解物を85℃に加温した滅菌精製水に可溶化し、冷却後、トロメタモールなどの水溶性配合成分を加え、pH(20℃)を調整して眼科用組成物を得た。得られた眼科用組成物15mLを、15mL用フィルター付き点眼容器(ポリエチエレンテレフタレート製)に充填した。なお、実施例の眼科用組成物は十分な防腐力を有していた。
【0036】
[角膜・結膜損傷治療効果]
ウサギにヘプタノール処理(ヘプタノール/エタノール=8:2混液を片眼200μL滴下)行い、ウサギの角膜・結膜上皮に障害を与えたモデルを作製した。その後、試料を11日間(6回(100μL/回)/日)連続して点眼した。点眼期間中、定期的にフルオレセイン染色(2%フルオレセイン片眼50μL滴下)を行い、角膜・結膜損傷治療効果を、Lenp判定基準に従い、15点満点(ヘプタノール処理直後のスコアを15点とし、改善に向かうに従いスコアは減少する)で評価した。表1〜4に、5日目の評価結果を示した。
【0037】
[眼刺激性]
ウサギに、50μL/回、5分間隔にて15回の超頻回点眼試験を実施した。
15回点眼後、フルオレセイン染色(2%フルオレセイン片眼50μL滴下)を行い、角膜損傷範囲を下記基準により評価し、評価結果を表1〜4に示した。
評点4:角膜全体の面積の2/3以上に染色を認める
評点3:角膜全体の面積の1/3以上2/3未満に染色を認める
評点2:角膜全体の面積の1/3未満に染色を認める
評点1:わずかに染色を認める
評点0:染色を認めない
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
実施例で使用した原料を示す。
ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール:
ユニルーブ70DP−950B、薬添規、日油(株)又はLutrol F127,薬添規、BASF(株)
ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール:
プロノン#188P、薬添規、日油(株)
ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール:
プロノン#235P、薬添規、日油(株)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60:
HCO−60(医薬用)、薬添規、日光ケミカルズ(株)
ポリソルベート80:
レオドール TW−0120V、日局、花王(株)
ヒプロメロース:
メトローズ65SH−4000、日局、信越化学工業(株)
ポリビニルピロリドン:
コリドン90F、日局、BASF