(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結されるノズル部を備え嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
これらソケットとプラグとの間の連結状態を保持する連結保持手段を、前記プラグに設けられ係止爪部を備えるリテーナと、前記ソケットに設けられ前記係止爪部が係止されるリテーナ係止部とで構成し、
前記リテーナを前記プラグのノズル部の中心軸を挟む両側に対向して一対設け、
前記係止爪部は、前記リテーナの対向部の内側に突出させて形成し、
1対の前記リテーナの前記係止爪部の先端間の距離を、前記ノズル部の外径と同等、あるいは狭い間隔で設ける一方、
前記リテーナの前記係止爪部には、前記ノズル部との干渉を防止する干渉防止部を抉って形成し、
これら1対のリテーナの前記ノズル部の中心軸方向の高さを前記ノズル部の中心軸方向先端より高く形成してなることを特徴とするカップラー。
前記リテーナと前記ノズル部との間に、凹部と突条とで構成される乗り越え部を設け、前記凹部に前記突条を位置させて回転位置を規制し、前記凹部と前記突条とを互いを乗り越えさせて回転可能としたことを特徴とする請求項3に記載のカップラー。
1対の前記リテーナの対向する方向と直交する幅を、2.8〜4.0mmとするとともに、1対の前記リテーナの対向する方向の外側間の距離を6.0〜10.0mmとして構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカップラー。
前記ソケットは、1対の前記リテーナを受け入れる挿入口の略中央部に装着され、前記ソケットの外側に1対の前記リテーナ係止部を設けることにより、前記挿入口と一体に前記リテーナを受け入れる凹部を構成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカップラー。
【背景技術】
【0002】
従来から機器の運転や使用にともなって減少する原料などの液体を補充する必要がある場合も多く、機器本体側に設けた容器にカートリッジ容器を連結して原料などの液体を移すことで供給したり、機器本体側の容器と別の容器を付け替えることで供給することが行われており、メタノール燃料電池においても燃料のメタノールの補充が必要となる。
【0003】
このような容器同士の連結や容器の付け替えを簡単にするため着脱可能な種々のカップラーが用いられており、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、ソケットと着脱可能に嵌合連結されるノズル部を備えるプラグとで構成され、ソケットとプラグとの嵌合連結操作の完了状態で両弁体を開放して連通可能とするとともに、離脱させることで両弁体を閉じるようにしてある。
【0004】
このようなカップラーでは、ソケットとプラグとの連結状態が確実に保持されていないと、カップラーの連結部分で液体などの漏洩が生じてしまう。
そこで、ソケットとプラグとの間に連結状態を保持する機構を設けることが提案されており、例えば特許文献1には、
図11に示すように、カップラーを構成するプラグPには、ノズル1の両側に突出する1対のロックアーム2を設ける一方、ソケットSには、ロックアーム2が係合される係合孔3を設けておき、ロックアーム2の突起部4と係合孔3の段差部5とを弾性変形を利用して係合させて連結状態を保持できるようにしている。
また、特許文献2には、
図12に示すように、燃料電池用カップラーのプラグPのノズル6の先端部に周溝7を形成しておき、ソケットSには、ノズル6が挿入される孔8の外側から内周側に突き出すように4個のフック9を配置して弾性体で前方に突き出すように付勢しておき、フック9を乗り越えるようにした後、周溝7にフック9を係合させて連結状態を保持できるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなソケットSとプラグPの連結状態をロックアーム2を用いて保持する機構では、例えばメタノール燃料電池の燃料の補給用のカップラーや容器ごとの取り替えによる補給用のカップラーとして利用する場合、メタノール燃料電池が搭載される機器が携帯電話や携帯音響機器などのように本体が薄い機器への適用も必要となり、プラグPのノズル1の外径に対して両側に設けられるロックアーム2が相対的に大きくなり、ロックアーム2が加わるためカップラー自体が大型化してしまい搭載が困難になるという問題がある。
一方、ノズル6の先端部に周溝7を形成してフック9を係合して連結状態を保持する機構では、ノズル6を小径化すると、対応するソケットSのフック9も小型化しなければならず加工が難しくなったり、小径のノズル6の先端部に周溝7を形成するためノズル自体の強度を確保することが難しくなるという問題がある。
また、プラグのノズルを小径化すると、連結状態の保持とは別に、プラグが落下などの不測の事態により損傷し易くなってしまうという問題も生じる。
【0007】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、超小型でありながら、接続操作がし易く、落下などの不測の事態からノズル先端を保護することができるカップラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1に記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結されるノズル部を備え嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
これらソケットとプラグとの間の連結状態を保持する連結保持手段を、前記プラグに設けられ係止爪部を備えるリテーナと、前記ソケットに設けられ前記係止爪部が係止されるリテーナ係止部とで構成し、前記リテーナを前記プラグのノズル部の中心軸を挟む両側に対向して一対設け、前記係止爪部は、前記リテーナの対向部の内側に突出させて形成し、1対の前記リテーナの
前記係止爪部の先端間の距離を、前記ノズル部の外径と同等、あるいは
狭い間隔で設ける一方、前記リテーナの前記係止爪部に
は、前記ノズル部との干渉を防止する干渉防止部を抉って形成
し、これら1対のリテーナの前記ノズル部の中心軸方向の高さを前記ノズル部の中心軸方向先端より高く形成してなることを特徴とするものである。
【0010】
この発明の請求項
2に記載のカップラーは、請求項1
に記載の構成に加え、前記リテーナには、中間部に弾性変形の支点となる薄肉部を形成するとともに、係止爪部を厚肉に形成したことを特徴とするものである。
【0011】
この発明の請求項
3に記載のカップラーは、請求項1
または2に記載の構成に加え、前記リテーナは、前記ノズル部を中心軸
として回転可能に構成したことを特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項
4に記載のカップラーは、請求項
3に記載の構成に加え、前記リテーナ
と前記ノズル部との間に、
凹部と突条とで構成される乗り越え部を設け、前記凹部に前記突条を位置させて回転位置を規制し
、前記凹部と前記突条とを互いを乗り越えさせて回転可能としたことを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項
5に記載のカップラーは、請求項1〜
4のいずれかに記載の構成に加え、
前記リテーナに、前記プラグの中心軸方向に往復動可能に解除リングを設け、前記プラグ
と前記解除リングとの間には、
前記プラグに設けられるカムと、前記解除リングに設けられ前記カムでリフトされるカムフォロアと、で構成したカム機構を備え、前記リテーナ
と前記リテーナ係止部との連結保持状態で
、前記プラグと前記解除リングとの間に、前記プラグの中心軸回りに加わるひねり力
で、前記解除リングを中心軸方向にリフトさせて前記連結保持状態を解除可能に構成したことを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項
6に記載のカップラーは、請求項1〜
5のいずれかに記載の構成に加え、
1対の前記リテーナの
対向する方向と直交する幅を、2.8〜4.0mmとするとともに、1対の
前記リテーナの
対向する方向の外側間の距離を6.0〜10.0mmとして構成したことを特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項
7に記載のカップラーは、請求項1〜
6のいずれかに記載の構成に加え、前
記ソケット
は、1対の前記リテーナを受け入れる挿入口の略中央部
に装着
され、前記ソケットの外側に
1対の前記リテーナ係止部を設けることにより、前記挿入口と一体に
前記リテーナを受け入れる凹部を構成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1に記載のカップラーによれば、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結されるノズル部を備え嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
これらソケットとプラグとの間の連結状態を保持する連結保持手段を、前記プラグに設けられ係止爪部を備えるリテーナと、前記ソケットに設けられ前記係止爪部が係止されるリテーナ係止部とで構成し、前記リテーナを前記プラグのノズル部の中心軸を挟む両側に対向して一対設け、前記係止爪部は、前記リテーナの対向部の内側に突出させて形成し、1対の前記リテーナの
前記係止爪部の先端間の距離を、前記ノズル部の外径と同等、あるいは
狭い間隔で設ける一方、前記リテーナの前記係止爪部に
は、前記ノズル部との干渉を防止する干渉防止部を抉って形成
し、これら1対のリテーナの前記ノズル部の中心軸方向の高さを前記ノズル部の中心軸方向先端より高く形成したので、ノズル部を挟む1対のリテーナの内側に係止爪部を形成することで、係止の際には外側に移動させて初期状態では、ノズル部との隙間を小さくすることができるとともに、ノズル部の周囲を保護することができる。また、リテーナの高さをノズル部先端より高くして落下などの不測の事態でもリテーナでノズル部を保護することができ、直接ノズル部に損傷が及ばないようにすることができる。
また、前記リテーナの係止爪部には、前記ノズル部との干渉を防止する干渉防止部を形成してあるので、係止爪部に干渉防止部を形成してノズル部の外径より狭い間隔で設置することが可能となり、一層の小型化を図ることができる。
【0019】
この発明の請求項
2に記載のカップラーによれば、前記リテーナには、中間部に弾性変形の支点となる薄肉部を形成するとともに、
前記係止爪部を厚肉に形成したので、係止爪部を厚肉にすることで、連結状態の保持に必要な強度を確保することができるとともに、落下強度も高めることができる。また、リテーナの中間部に薄肉部を形成して弾性変形の支点とすることで、簡単に連結操作ができるとともに、リテーナを先端近傍から弾性変形させる場合に比べ変位量を小さくすることができ、一層の小型化を図ることができる。
【0020】
この発明の請求項
3に記載のカップラーによれば、前記リテーナは、前記ノズル部を中心軸
として回転可能に構成したので、連結状態でひねる力が加わってもリテーナやソケットの損傷を防止することができる。
【0021】
この発明の請求項
4に記載のカップラーによれば、前記リテーナ
と前記ノズル部との間に
、凹部と突条とで構成される乗り越え部を設け、前記凹部に前記突条を位置させて回転位置を規制し
、前記凹部と前記突条とを互いを乗り越えさせて回転可能としたので、回転可能なリテーナであっても回転位置を規制することで、リテーナの位置を確認して簡単に連結操作をすることができる。
【0022】
この発明の請求項
5に記載のカップラーによれば、
前記リテーナに、前記プラグの中心軸方向に往復動可能に解除リングを設け、前記プラグ
と前記解除リングとの間には、
前記プラグに設けられるカムと、前記解除リングに設けられ前記カムでリフトされるカムフォロアと、で構成したカム機構を備え、前記リテーナ
と前記リテーナ係止部との連結保持状態で
、前記プラグと前記解除リングとの間に、前記プラグの中心軸回りに加わるひねり力
で、前記解除リングを中心軸方向にリフトさせて前記連結保持状態を解除可能に構成したので、カム機構によって連結保持状態でひねり力が加わっても連結状態を解除することができ、カップラーの損傷を防止することができる。
また、前記カム機構を、プラグに設けたカムと、前記リテーナに往復動可能に設けた解除リングのカムフォロアとで構成したので、プラグ側のカムとリテーナの解除リングに設けたカムフォロアとでカム機構を構成することで、カップラーの小型化を図ると同時にカム機構を設けることができる。
【0024】
この発明の請求項
6に記載のカップラーによれば、
1対の前記リテーナの
対向する方向と直交する幅を、2.8〜4.0mmとするとともに、1対の
前記リテーナの
対向する方向の外側間の距離を6.0〜10.0mmとして構成したので、カップラーの小型化を図ることができ、携帯電話や携帯音響機器などの機器本体が薄い機器に対しても搭載することができるカップラーとすることができる。先端が長方形状になるため、接続時の向きを把握しやすくできる。
【0025】
この発明の請求項
7に記載のカップラーによれば、前
記ソケットは
、1対の前記リテーナを受け入れる挿入口の略中央部
に装着
され、前記ソケットの外側に
1対の前記リテーナ係止部を設けることにより、前記挿入口と一体
に前記リテーナを受け入れる凹部を構成したので
、ソケット側もコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるソケットとプラグの連結保持前の状態の縦断面図である。
【
図2】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるソケットとプラグの連結保持状態の縦断面図である。
【
図3】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるプラグの斜視図である。
【
図4】この発明のカップラーの一実施の形態にかかる連結保持手段のリテーナ部分の平面図および斜視図である。
【
図5】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるプラグ部分の分解斜視図である。
【
図6】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるプラグ部分およびリテーナ部分の平面図および斜視図である。
【
図7】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるカム機構の解除リング部分の斜視図および断面図である。
【
図8】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるリテーナを抽出して示す説明図である。
【
図9】この発明のカップラーの一実施の形態にかかるソケットの斜視図および平面図である。
【
図10】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかるプラグの斜視図である。
【
図11】従来のカップラーの連結保持手段を説明する縦断面図である。
【
図12】従来のカップラーの他の連結手段を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
このカップラー10は、ソケットS10と、このソケットS10と嵌合連結されるプラグP10とで構成され、例えばメタノール燃料電池の本体側にソケットS10が設けられ、メタノール容器としてのカートリッジ側にプラグP10が設けられ、互いを連通させて本体側に燃料を補充したり、カートリッジごと交換するのに用いられ、主要部は、金属材料と、非金属材料、例えばポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタールなどの合成樹脂とで作られる。
【0028】
以下の説明では、図面上での上下を基準に説明するが、実際の容器本体への装着方向を何ら制限するものでなく、どのような方向で実施しても良い。
このカップラー10のソケットS10では、燃料電池の本体に一体もしくは別体として取り付けられる部材Fに挿入口となる空間凹部を備えたソケット保持枠部材11を介してカップラー本体を構成する略円筒状のソケット本体12が装着されており、ソケットS10と対をなすプラグP10が挿入連結されるプラグの挿入口を構成するプラグ接続孔13が先端部(図中下側)に開口して形成してある。このソケット本体12の基端側(図中上側)に一部を図示省略して示す略底付き円筒状の穴を持つ弁ホルダ14が連結され、弁ホルダ14の底部には、容器本体内と連通する連通孔が形成してある。
【0029】
そして、ソケット本体12の中心部に連結用流路と弁の開閉操作を行うパイプで構成したソケット側操作部材15が配置され、ソケット側操作部材15とソケット本体12の間に円筒部と断面J字状のダイヤフラム部とが一体に形成されたシール部材16が装着され、シール部材16のダイヤフラム部の頂部を弁シール部として弁ホルダ14内に圧縮コイルばね17で付勢されたバルブ本体18が摺動可能に収納してある。
【0030】
これにより、プラグP10との連結によりソケット側操作部材15を介してバルブ本体18が圧縮コイルばね17に抗して押されてバルブ本体18とシール部材16の間に隙間が形成されてバルブ本体18が自動的に開かれると、ソケット側操作部材15のパイプの中心部、底部、底部外周(バルブ本体内周)、バルブ本体18とシール部材16の間を介して弁ホルダ14の底部から燃料電池の本体内と連通された状態となる。
【0031】
次に、このようなソケットS10に嵌合連結されるカップラー10のプラグP10は、
図1に示すように、燃料電池の燃料であるメタノールが入れられる容器本体を構成する容器の先端部外周に装着され、容器にねじ込まれるカップラー本体を構成する略4段円筒状のプラグ本体31を備えており、このプラグ本体31には、先端部に突き出してソケットS10のプラグ接続孔13内に装着される最小径の略円筒状のノズル部を構成する突出連結部32が形成してあり、この突出連結部32の先端にシール凹部32aが形成されるとともに、中心部にパイプで構成したプラグ側操作部材33が装着してある。
これにより、ソケットS10のソケット側操作部材15のシール部材16の先端部外周面とシール凹部32aの内周面と接触してカップラー10の連結状態のシールがなされるようになる。
【0032】
また、プラグ本体31のプラグ側操作部材33の基端部(図中下方)には、一部を図示省略したバルブホルダ34が連結され、底部に容器内と連通する連通溝が形成されるとともに、バルブホルダ34内に圧縮コイルばね35で付勢されたバルブ本体36が摺動可能に収納してある。また、このバルブ本体36の上部外周にOリングで構成した弁シール部材37が装着してあり、プラグ本体31の段差部との間が開閉されるようになっている。
【0033】
これにより、ソケットS10との連結によりプラグ側操作部材33を介してバルブ本体36が圧縮コイルばね35に抗して押されてバルブ本体36と弁シール部材37あるいはプラグ本体31の段差部との間に隙間が形成されてバルブ本体36が自動的に開かれると、プラグ側操作部材33のパイプの中心部、バルブ本体36と弁シール部材37あるいはプラグ本体31の段差部との間を介してバルブホルダ34の底部の連通溝で容器内と連通された状態となる。
【0034】
さらに、このカップラー10では、ソケットS10とプラグP10との連結状態を保持するため連結保持手段50が設けてあり、例えば連結保持手段50の一方側を係合凹部51に設けるリテーナ係止部52などとしてソケットS10に設け、この係合凹部51のリテーナ係止部52に係合される相手側をリテーナ53およびその係止爪部54などとしてプラグP10に設けて構成し、互いを乗越えるように押込む1アクションで係合させて連結保持し、引き出すようにする1アクションで開放できるようにし、安定した連結状態で燃料などの供給ができるようにしてある。
【0035】
このカップラー10のソケットS10では、燃料電池の本体側の部材Fに取り付けられたソケット保持枠部材11の空間凹部が係合凹部51とされ、この係合凹部51内にソケット本体12が配置されて、その先端部外側に連結保持手段50の一方側のリテーナ係止部52がソケット本体12を挟んで一対設けられ、
図9に示すように、両側の係合凹部51と中心部のソケット本体12の装着孔とが挿入口として一体の凹部とされる。
この係合凹部51の中心部に位置するソケット本体12の外側面には、中心軸側から外側に突き出すようにリテーナ係止部52が庇状に一対形成してあり、係合凹部51の先端側が傾斜面とされ、基端側が直角な段差面としてあり、リテーナ係止部52と係合凹部51とでリテーナ53を受け入れる凹部を構成して相手側となる後述するプラグP10側のリテーナ53の係止爪部54が円滑に乗り越えた後、確実に係合がなされるようにしてある。
すなわち、このカップラーのソケットS10では、一対のリテーナ53を受け入れる挿入口の略中央部にソケットS10を装着してプラグP10のノズル部である突出連結部32が連結可能とされ、このソケットS10の外側にリテーナ係止部52,52を設けることにより、一対のリテーナ53,53を受け入れる挿入口と一体に凹部が構成されることになる。
このソケットS10では、
図9(a)に示すように、ソケット保持枠部材11の下端の穴に弁ホルダ14の爪が嵌合して、両者でソケット本体12を挟み込んで固定する。
【0036】
このようなカップラー10の中心軸を挟んでソケット本体12のプラグ接続孔13の外側の係合凹部51およびリテーナ係止部52を形成することで、燃料電池などの機器の本体Fの厚さと直交する方向に沿って横に長い係合凹部51が配置され、設置スペースを極力小さくすることができ、厚さの薄い装置などにも簡単に連結保持手段50を設置することができる。
また、係合凹部51とソケット本体12とが一体の凹部で構成してあるので、ソケットS10とプラグP10とを連結する場合のガイドとして利用することができる。
【0037】
一方、このカップラー10のプラグP10では、
図1、
図2、
図3、
図5および
図6に示すように、プラグ本体31の先端部に、ソケットS10との連結状態を保持する連結保持手段50の相手側として、ソケットS10の係合凹部51およびリテーナ係止部52に対応して2本のロックアームとなるリテーナ53が上方に突き出してノズル部である突出連結部32を挟んで対向して一対配置され、プラグ本体31とは別部材とされてプラグP10の中心軸回りに回転自在に設けてある。
【0038】
これら2本のロックアームとなるリテーナ53は、
図4に示すように、先端部内側に突出すように係止爪部54が形成されるとともに、基端部の略円板状のリング部55を備え、中空部をプラグ本体31の中間小径部31aに嵌め込み、中間大径部31bに被せるようにして中心軸回りに回転自在とされ、このリング部55の円板上に2本のリテーナ53がほぼ垂直で内側に傾くように突き出して一体に成形してある。そして、各リテーナ53の先端部内側に係合凹部51のリテーナ係止部52に係止される係止爪部54が突き出して形成してあり、内側先端の傾斜面と内側基端の段差面とが形成され、リテーナ係止部52を乗り越えるようにして係合連結・開放離脱が行われる。
また、このリテーナ53のリング部55の裏面には、半径方向の凹部が複数円周等間隔に形成してあり、対応する突条の乗り越え部56がプラグ本体31の水平面に形成してあり、これら凹部と乗り越え部56とでリテーナ53の回転位置を規制できるようにしてある。
【0039】
このノズル部を構成する突出連結部32を挟んで設けられる1対のリテーナ53は、突出連結部32より高く形成してあり、プラグP10を落下するようなことがあっても突出連結部32であるノズル部の不測の損傷を防止できるようにしてある。
また、連結保持手段50をできるだけコンパクトにして小型化を図るため、
図4および
図8に示すように、リテーナ53の中間部を薄肉に形成した薄肉部57を設ける一方、中間部を挟む先後端部は厚肉に形成してあり、連結の際の弾性変形の支点が中間の薄肉部57となるようにして必要な変位を確保すると同時に、連結保持に必要な強度を確保できるようにしている。
【0040】
さらに、リテーナ53の先端部内側の係止爪部54にノズル部である突出連結部32との干渉を防止する干渉防止部58を円弧状に抉り取って形成してあり、リテーナ53の係止爪部54の間隔をノズル部である突出連結部32の外径より狭い間隔としてできるだけ突出連結部32に接近して配置することおよびリテーナ53を外側に弾性変形させることで、初期状態で接近させることを可能とし、コンパクト化および小型化を図っている。
また、係合爪部54の突出基部は、リテーナ係止部52の庇状の形状と呼応して直線状に構成され、連結係合時の応力が均等に分散するようにされている。
そして、このような連結保持手段50のリテーナ53の幅Bはノズル部の外径以上とするのが良く、
図6中に示すように、例えばプラグP10のノズル部である突出連結部32の外径を2.8mmとする場合に、2.8〜4.0mm程度とされるとともに、1対のリテーナ53の外側間の距離Lを6.0〜10.0mm程度の小型化を図ることもでき、携帯電話機や携帯音響機器などの小型の機器用のカップラーとともに搭載して使用することができる。
なお、これらの値は、ソケットに挿入される範囲の最大位置で測定すれば良い。
【0041】
このように構成したカップラー10では、ソケットS10とプラグP10とを連結保持する場合には、ソケットS10のプラグの挿入口であるプラグ接続孔13にプラグP10のノズル部である突出連結部32を挿入するとともに、ソケット本体12に設けた連結保持手段50の挿入口として係合凹部51およびリテーナ係止部52に対向させてプラグ本体31に設けたロックアームとなるリテーナ53を押し込むようにする。
すると、ソケットS10とプラグP10の連結操作にともなって連結保持手段50では、係合凹部51のリテーナ係止部52とリテーナ53の係合爪部54との接触で、リテーナ53が外側に押し戻されるように中間の薄肉部57を支点として弾性変形し、さらにプラグP10を押し込むことで、係合凹部51のリテーナ係止部52とリテーナ53の係合爪部54とが互いを乗越えながら係合状態となり、段差面同士で連結状態が保持される。
【0042】
そして、この連結状態では、プラグ本体31に対してリテーナ53がそのリング部55を介して中心軸回りに回転自在としてあるので、ソケットS10とプラグP10との間に中心軸回りの力が加わってもリテーナ53の回転で許容することができ、カップラー10の損傷を防止することができる。
【0043】
一方、連結保持状態を開放する場合には、ソケットS10からプラグP10を引き抜くようにすると、リテーナ53の係合爪部54のわずかな傾斜面が係合凹部51のリテーナ係止部52によって、リテーナ53を外側に押し戻すように弾性変形させることができ、さらに引き抜くようにして互いを乗り越えさせて、連結保持状態を開放し離脱することができる。
【0044】
さらに、このカップラー10では、連結保持機構50による連結保持状態でひねり力が加わる場合にこれをリテーナ53のリング部55をプラグ本体31に対して回転自在として逃がすだけでなく、自動的に連結保持状態を開放できるようにカム機構80が設けてある。
【0045】
このカム機構80は、
図5および
図6に示すように、プラグP10のプラグ本体31のノズル部である突出連結部32の基端部外周に等間隔(90度ごと)にカム81が4個形成され、円周方向両端部が傾斜面とされ、中央部が曲面に形成された端面カムで構成してある。この端面カム81は、連結保持手段50によりソケットS10の係合凹部51のリテーナ係止部52にプラグP10のリテーナ53の係合爪部54が係合されて連結保持された状態から係合を開放できるだけのリフト量を確保できる高さのカムとしてある。
一方、プラグP10のプラグ本体31のリテーナ53の外側を上方から覆うように解除リング82が往復移動可能に被せられ、
図7に示すように、解除リング82の内側にカム81に接触して追従する突起状のカムフォロア83が対角位置の2箇所に形成して構成してある。
解除リング82の天面は、連結保護状態のときに燃料電池本体Fの外表面と対向する。
【0046】
したがって、ソケットS10の係合凹部51のリテーナ係止部52とプラグP10のリテーナ53の係合爪部54とが係合された連結保持状態でプラグP10とソケットS10との間に、その中心軸回りのひねり力が相対的に加わると、微少な回転力では、リテーナ53のリング部55がプラグ本体31に対して回転自在としてあるので、カム機構80の遊びの範囲でこれを許容することができるものの、より大きなひねり力が加わると、ソケットS10とプラグP10との相対回転で、カム機構80のカム81が回転されることになる。
【0047】
これにより、カム81と接している解除リング82のカムフォロア83を介して解除リング82がリテーナ53にガイドされて軸方向にリフトされ、解除リング82の天面が燃料電池本体Fの外表面に突き当たり、プラグP10が相対的にソケットS10から引き離されるようになって、ソケットS10の係合凹部51のリテーナ係止部52とプラグP10のリテーナ53の係合爪部54との連結保持状態での係合状態が開放される。
【0048】
したがって、このカム機構80により、回転方向のひねり力が加わる場合にリテーナ53のリング部55の回転で損傷を防止するのに加え、軸方向の力を生じさせて自動的に連結保持状態を開放することができる。
これにより、カップラー10を破損したり、本体部分の機器を破損することなく通常の使用範囲を超えた過剰なひねり力がかかっても安全かつ自動的にプラグP10をソケットS10から取り外すことができる。
また、このカム機構80を利用することで、ソケットS10からプラグP10を取り外す場合にも、中心軸回りの回転力を加えるようにひねることで、簡単に引き離す力を発生させて取り外すことができる。
【0049】
次に、この発明のカップラーの他の一実施の形態について、
図10に基づき説明するが、既に説明した実施の形態と同一部分には、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
このカップラー10Aでは、プラグP10Aの連結保持手段50のリテーナ53Aとカム機構80の解除リング82Aの形状を変更したものであり、リテーナ53Aの係合爪部54Aが係合凹部51のリテーナ係止部52を乗り越える際に外側へ広がるように弾性変形すると、リテーナ53Aの背面が解除リング82Aの内側に当接して(図中のX部)変形に抵抗するようにリテーナ53Aの背面形状と解除リング82Aの内側の形状が設定してある。
これにより、プラグとソケットとの係合力を高めることができ、確実に連結状態を保持することができる。
【0050】
なお、このカップラーの用途としてメタノール燃料電池のメタノールの容器と本体との連結の場合を例に説明したが、これに限らず他の用途でも良いものである。