【実施例】
【0014】
図1から
図8において、本例のカムフォロア1は、中空の転動体2と、転動体2の中空部に隙間3を
形成して挿通されている軸体4と、ラジアル方向に関して転動体2を静圧気体によって支持すべく転動体2と軸体4との間に介在されている静圧気体軸受手段7と、スラスト方向に関して転動体2を磁力によって支持する磁性軸受手段9及び10とを具備している。
【0015】
転動体2は、円筒状の磁性体からなり、その内周面12で静圧気体軸受手段7並びに磁性軸受手段9及び10に対して環状の軸受隙間31及び環状の隙間64をもって対面している。
【0016】
軸体4は、円柱状であり、その一端部21が転動体2の一端部5から突出しており、当該一端部21で支持フレーム15等に片持ち支持されている。軸体4には静圧気体軸受手段7並びに磁性軸受手段9及び10が取り付けられている。軸体4の外周面20は、転動体2の内周面12に対して環状の隙間3をもって対面している。尚、軸体4は、本例では一端部21で支持フレーム15等に片持ちされているが、例えば、その他端部が転動体2の他端部6から突出していると共に当該軸体4の他端部が支持フレーム等を介して固定支持されることによって両持ち支持されていてもよい。
【0017】
静圧気体軸受手段7は、転動体2の内周面12に対して環状の軸受隙間31をもって対面しているラジアル軸受面32を有していると共に軸体4に固着されている円筒状の軸受体36と、ラジアル軸受面32から軸受隙間31に供給すべき気体を給気することができるように、軸受体36に形成されている給気通路44と、給気通路44に気体を供給することができるように当該給気通路44に連通して軸体4に形成されている供給通路45とを具備している。
軸受隙間31は、軸方向の一端において環状の隙間64を介して、軸方向の他端において環状の隙間64を介して夫々外部に連通している。
【0018】
軸受体36は、内周面51で軸体4の外周面20に固着されている円筒状の本体55と、本体55の外周面52に接合されている多孔質体としての円筒状の多孔質金属焼結層56とを具備している。
【0019】
多孔質金属焼結層56は、その全表面の無秩序な多数の部位で開口すると共に無秩序に互いに連通する多数の細孔を内部に有している。ラジアル軸受面32は、多孔質金属焼結層56の支持すべき転動体2の内周面12に対面して露出する外周面からなる。
【0020】
給気通路44は、本体55の外周面52に形成された複数の環状通路71及び72と、軸方向に伸びて本体55内に形成されており、環状通路71及び72に連通していると共に供給通路45に連通している連通路76とを具備している。供給通路45は、軸方向に伸びて軸体4内に形成されており、一端部21で開口していると共に連通路76に連通している。斯かる給気通路44では、一端部21から供給通路45を介して供給される気体(圧縮気体)が連通路76に供給され、連通路76に供給された気体が環状通路71及び72に流入され、当該流入された気体を多孔質金属焼結層56に供給することで、軸受隙間31に気体を供給する。
【0021】
本例のカムフォロア1は、多孔質金属焼結層56を有した静圧気体軸受手段7を具備しているが、これらに代えて、例えば、軸受体36に形成された自成絞り通路を介して静圧気体を軸受隙間31に供給して転動体2をラジアル方向に関して非接触支持する自成絞り型の静圧気体軸受手段を具備していてもよい。
【0022】
磁性軸受手段9及び10は、夫々互いに同様に形成されているので、以下、磁性軸受手段9について詳細に説明し、磁性軸受手段10については図に符号aを適宜付してその詳細な説明を省略する。尚、磁性軸受手段9は一端部5側に配されており、磁性軸受手段10は、転動体2の他端部6側に配されており、磁性軸受手段9及び10間には軸受体36が位置している。
【0023】
磁性軸受手段9は、転動体2の一端部5間の内周面12に軸方向に所定の間隔をおいて形成された2つの環状凹溝84及び85と、一方の環状凹溝84を挟み、かつ外周面62で転動体2の内周面12と環状の隙間64をもって対面し、軸体4に装着されている一対の内側磁性体65及び66と、該環状凹溝84に臨むと共に一対の内側磁性体65及び66間に介在されている永久磁石、本例では中空円板状の一つの永久磁石67と、他方の環状凹溝85に臨むと共に一方の端面が該一対の内側磁性体65及び66の一方の内側磁性体66の端面に当接し、他方の端面が静圧気体軸受手段7、本例では静圧気体軸受手段7の軸受体36の円筒状の本体55の端面に当接して配された磁力遮断体としての環状スペーサ80とから形成されている。
【0024】
該磁性軸受手段9においては、スラスト方向に関して転動体2を支持すべく永久磁石67の磁力に基づいて転動体2と一対の内側磁性体65及び66とが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。
【0025】
磁性軸受手段9において、転動体2の一端部5側の内周面12に軸方向に所定の間隔をおいて形成された2つの環状凹溝84及び85は、
図8に示すように転動体2にスラスト方向の力(外力)91が作用し、スラスト方向に転動体2が変位したとき、スラスト方向に反力92が発生し、当該変位を磁力により復元させるように作用するものである。
図8において、符号93は転動体2と内側磁性体65及び66との引き合い力(吸着力)を示しており、反力92は引き合い力93に基づいて発生する。
【0026】
永久磁石67は、一端面86がN極、他端面88がS極となっている。内側磁性体65及び66は、当該永久磁石67の磁力に基づいて磁性を帯び、これにより、内側磁性体65の外周面62がN極、内側磁性体66の外周面62がS極となる。転動体2の一端部5は、当該複数の永久磁石67の磁力に基づいて磁性を帯び、これにより、環状凸部82がS極、環状凸部83がN極となる。従って、磁性軸受手段9には、例えば
図7に示すように磁束68が生じて、環状凸部82と内側磁性体65の外周面62との間に引き合い力が生じると共に環状凸部83と内側磁性体66の外周面62との間に引き合い力が生じる。斯かる引き合い力は、転動体2の軸体4に対するスラスト方向の変位に伴って増大するため、転動体2はスラスト方向に関して磁力によって支持されることになる。このように、磁性軸受手段9は、スラスト方向に関して転動体2を支持すべく永久磁石67の磁力に基づいて転動体2の一端部5と一対の内側磁性体65及び66とが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。尚、磁性軸受手段10もまた、磁性軸受手段9と同様に、スラスト方向に関して転動体2を支持すべく永久磁石67aの磁力に基づいて転動体2の他端部6と一対の内側磁性体65a及び66aとが互いに引き合う力を生じさせるようになっている。
【0027】
磁性軸受手段9及び10は、一つの中空円板状の永久磁石67及び67aを夫々具備しているが、これに代えて、例えば円周方向に並んだ複数の永久磁石を具備していてもよい。
【0028】
斯かるカムフォロア1では、給気通路44から多孔質金属焼結層56に給気されることによりラジアル軸受面32から軸受隙間31に気体が供給され、而して、静圧気体軸受手段7により転動体2を非接触にてR方向に回転自在に支持する。転動体2は、上述のように、磁性軸受手段9及び10の磁力により横方向に関して非接触にてR方向に回転自在に支持され、これにより、転動体2の軸体4に対する横方向の位置ずれは禁止される。また、カムフォロア1では、スラスト方向に関する転動体2の支持におけるエア消費は生じないので、転動体2を支持する際のエア消費量を抑えることができる。
【0029】
本例のカムフォロア1によれば、中空の転動体2と、転動体2の中空部に隙間3をもって挿通されている軸体4と、ラジアル方向に関して転動体2を静圧気体によって支持すべく転動体2と軸体4との間に介在されている静圧気体軸受手段7と、スラスト方向に関して転動体2を磁力によって支持する磁性軸受手段9及び10とを具備しており、磁性軸受手段9は、転動体2の一端部5間の内周面12に軸方向に所定の間隔をおいて形成された2つの環状凹溝84及び85と、一方の環状凹溝84を挟み、かつ外周面62で転動体2の内周面12と環状の隙間64をもって対面し、軸体4に装着されている一対の内側磁性体65及び66と、該環状凹溝84に臨むと共に一対の内側磁性体65及び66間に介在されている永久磁石、本例では中空円板状の一つの永久磁石67と、他方の環状凹溝85に臨むと共に一方の端面が該一対の内側磁性体65及び66の一方の内側磁性体66の端面に当接し、他方の端面が静圧気体軸受手段7に当接して配された磁力遮断体としての環状スペーサ80とを具備しており、スラスト方向に関して転動体2を支持すべく永久磁石67の磁力に基づいて転動体2と一対の内側磁性体65及び66とが互いに引き合う力を生じさせるようになっており、磁性軸受手段10は、転動体2の一端部5間の内周面12に軸方向に所定の間隔をおいて形成された2つの環状凹溝84a及び85aと、一方の環状凹溝84aを挟み、かつ外周面62aで転動体2の内周面12と環状の隙間64をもって対面し、軸体4に装着されている一対の内側磁性体65a及び66aと、該環状凹溝84aに臨むと共に一対の内側磁性体65a及び66a間に介在されている永久磁石、本例では中空円板状の一つの永久磁石67aと、他方の環状凹溝85aに臨むと共に一方の端面が該一対の内側磁性体65a及び66aの一方の内側磁性体66aの端面に当接し、他方の端面が静圧気体軸受手段7に当接して配された磁力遮断体としての環状スペーサ80aとを具備しており、スラスト方向に関して転動体2を支持すべく永久磁石67aの磁力に基づいて転動体2と一対の内側磁性体65a及び66aとが互いに引き合う力を生じさせるようになっているために、静圧気体軸受手段7によって転動体2をラジアル方向に関して非接触で支持する一方、磁性軸受手段9及び10によって転動体2をスラスト方向に関して非接触で支持することができて、回転摩擦を低減させると共に回転速度を向上させることができ、しかも、カムフォロア1の使用期間の長期化を図り得ると共にランニングコストをも低減させ得、スラスト方向の非接触支持においてはエアを消費することがないので、カムフォロア1の更なる低廉化、エア消費量の削減を図り得る。
【0030】
本発明の実施の形態の他の例のカムフォロア101は、
図9に示すように、カムフォロア1と同様の軸体4、静圧気体軸受手段7並びに磁性軸受手段9及び10と、非磁性体からなる中空の転動体102とを具備しており、当該磁性軸受手段9は、転動体102の一端部5における内周面12の部位に嵌着された環状の外側磁性体103を更に具備しており、当該磁性軸受手段10は、転動体102の他端部6における内周面12の部位に嵌着された環状の外側磁性体103aを更に具備している。
【0031】
転動体102の一端部5における内周面12の部位は拡径されており、外側磁性体103は当該拡径された部位に嵌着されている。転動体102の他端部6における内周面12の部位は拡径されており、外側磁性体103aは当該拡径された部位に嵌着されている。
【0032】
環状の外側磁性体103は、環状の転動体102の内周面12に、一方の端面から軸方向に所定の間隔を隔てて形成された2つの環状凹溝84及び85を具備しており、該外側磁性体103は、前記転動体102の一端部5における内周面12に形成された拡径凹所に、外側磁性体103の一方の端面を該転動体102の一端部5と面一にして嵌着されている。外側磁性体103aは外側磁性体103と同様に形成されているので、外側磁性体103aについては図に適宜符号aを付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
カムフォロア101の磁性軸受手段9及び10は、転動体102の一端部5側の内周面12に形成された拡径凹所に嵌着された環状の外側磁性体103と、外側磁性体103の内周面に一方の端面から軸方向に所定の間隔を隔てて形成された2つの環状凹溝84及び85と、該外側磁性体103の一方の環状凹溝84を挟み、かつ外周面62で外側磁性体103の内周面と環状の隙間64をもって対面し、軸体4に装着されている一対の内側磁性体65及び66と、一対の内側磁性体65及び66間に介在されていると共に外周面が外側磁性体103の環状凹溝84に臨む永久磁石67と、一方の端面が一対の内側磁性体65及び66の一方の内側磁性体66の端面に当接し、他方の端面が軸受体36の円筒状の本体55の端面に当接して配され、外周面が外側磁性体103の環状凹溝85に臨む磁力遮断体としての環状スペーサ80とから形成されている。
【0034】
カムフォロア101によれば、静圧気体軸受手段7によって転動体102をラジアル方向に関して非接触で支持する一方、磁性軸受手段9及び10によって転動体102をスラスト方向に関して非接触で支持することができて、回転摩擦を低減させると共に回転速度を向上させることができ、しかも、カムフォロア101の使用期間の長期化を図り得ると共にランニングコストをも低減させ得、スラスト方向の非接触支持においてはエアを消費することがないので、カムフォロア101の更なる低廉化、エア消費量の削減を図り得る。尚、外側磁性体103及び103aが転動体102の内周面12に嵌着されているために、外側磁性体103及び103aを予め転動体102に嵌着させておくことができて、転動体102に対する軸体4、静圧気体軸受手段7並びに磁性軸受手段9及び10の組み立て工数を減少させ得、加えて、転動体102に外側磁性体103及び103aが嵌着されるので、転動体102並びに外側磁性体103及び103aの芯出しを予め簡単に且つ精確に行い得、例えば、外側磁性体103及び103aが転動体102にボルト止め等される態様のカムフォロアの組み立て時に生じ得る外側磁性体と転動体との芯ズレをなくし得て、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。例えば外側磁性体が転動体にボルト止めされる態様のカムフォロア(図示せず)においても、回転摩擦の低減、回転速度の向上に加えて、使用期間の長期化、ランニングコストの低減を図り得るが、カムフォロア101では、外側磁性体103が転動体102の内周面12に嵌着されているために、外側磁性体103を予め転動体102に嵌着させておくことができて、転動体102に対する軸体4、静圧気体軸受手段7及び磁性軸受手段9及び10の組み立て工数を減少させ得、加えて、転動体2及び外側磁性体103の芯出しを予め精確に行い得、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。
【0035】
本例の更に他の態様のカムフォロア(図示せず)は、非磁性体からなる転動体の両端部に外側磁性体103が装着されている事項を除いてはカムフォロア1及び101と同様に形成されている。斯かるカムフォロア並びにカムフォロア1及び101の夫々によれば、特に、静圧気体軸受手段9及び10は、転動体2(102)の内周面12に対して環状の軸受隙間31をもって対面しているラジアル軸受面32を有していると共に軸体4に固着されている円筒状の軸受体36と、ラジアル軸受面32から軸受隙間31に供給すべき気体を給気することができるように軸受体36に形成されている給気通路44と、軸体4に形成されていると共に給気通路44に気体を供給することができるように当該給気通路44に連通した供給通路45とを具備しているために、磁性軸受手段9及び10を転動体2(102)の両端面に設けることができるようになり、スラスト方向の負荷容量を増大させることができる。
【0036】
尚、外側磁性体が転動体にボルト止めされる態様のカムフォロアにおいても、回転摩擦の低減、回転速度の向上に加えて、使用期間の長期化、ランニングコストの低減を図り得るが、斯かるカムフォロアに対して、本例のカムフォロア1では、転動体2が磁性体からなるために、内側磁性体65及び66に対面する外側磁性体を転動体2に対して別個に設ける必要をなくすことができて部品点数を削減し得、カムフォロアの組み立て工数を減少し得、加えて、磁性体からなる転動体2自体が内側磁性体65及び66に対面する外側磁性体としての機能を発揮するので、当該転動体2に芯ズレが生じることがなくなり、ラジアル方向の磁気による吸着力が不均一となってラジアル方向の負荷容量が低下する虞をなくし得る。