特許第5736734号(P5736734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736734
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A46B5/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-250724(P2010-250724)
(22)【出願日】2010年11月9日
(65)【公開番号】特開2012-100806(P2012-100806A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳
【審査官】 平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−201197(JP,A)
【文献】 特表2003−512108(JP,A)
【文献】 特表2000−504609(JP,A)
【文献】 実開昭60−010534(JP,U)
【文献】 特開2006−000466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛部と首部とハンドル部とを有する歯ブラシであって、
前記ハンドル部は、合成樹脂材料製のハンドル基台と、前記ハンドル基台の表面上に略段差なく滑らかに連なるエラストマー部とで構成されるとともに、
前記ハンドル部の首部側に位置する先端側腹部と先端側背部の左右には、傾斜面である先端側腹側面と先端側背側面が設けられ、
前記ハンドル部の首部側とは反対側の基端側に位置する基端側腹部および基端側背部の左右には、傾斜面である基端側腹側面と基端側背側面が設けられ、
前記エラストマー部が、前記先端側腹部、前記先端側腹側面前記先端側背側面、前記基端側腹部、前記基端側背部、前記基端側腹側面、前記基端側背側面、および前記先端側腹部と前記基端側腹部とを連通する連通部に設けられ
前記エラストマー部が設けられた前記先端側腹部および前記ハンドル基台の前記先端側背部に凸部が形成され、
前記エラストマー部が設けられた前記先端側腹側面、前記先端側背側面、前記基端側腹側面および前記基端側背側面は、前記ハンドル部の長手方向に延びる複数の凹条が形成されることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記エラストマー部の厚さが0.8〜1.5mmである請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ハンドル部は、径方向の断面が略六角形状に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記合成樹脂材料が透明であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、歯ブラシのハンドル部は熱可塑性樹脂から構成されているが、熱可塑性樹脂の場合、握ったときに滑り易いという問題がある。このため、ハンドル部に合成ゴムや熱可塑性エラストマーからなる滑止部を設けて、握ったときの滑りを防止して操作性を向上させた歯ブラシが種々提案され実用化されている。例えば、ハンドル部の首部側の先端近傍部に表側滑止部および裏側滑止部を設け、首部とは反対側の基端近傍部にハンドル部の全外周にわたって連なる環状滑止部を設けた歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献1など)。また、首部と握り部との境界付近と尾端側にハンドル部の全外周にわたって連なる熱可塑性エラストマー材料の被覆部をハンドルに沿って備えた歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3162573号公報
【特許文献2】特開2000−4944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハンドル部の肉厚は歯ブラシの操作性を考慮して設定されており、あまり厚く出来ないので、前記のようにハンドル部の表面側および裏面側の全域に合成ゴムや熱可塑性エラストマーからなる滑止部を形成することは、芯材である熱可塑性樹脂の厚さを薄くしなければならず、ハンドル部の強度、剛性が低下するという問題がある。
【0005】
また、一般的には歯磨きにおける歯ブラシのハンドル部を把持する方法として、歯ブラシのハンドル部の首部側を親指と人差し指と中指とで鉛筆を持つように握るペングリップ法と、歯ブラシのハンドル部の首部側に親指を添えて残りの指と掌とでハンドル部全体を握るパームグリップ法との二つの方法が存在する。パームグリップ法でのしっかりした把持には、比較的扁平なハンドル断面形状と親指のグリップ性の向上とが必要であり、ペングリップ法での微小な角度調整には、比較的厚肉なハンドル断面形状と親指、人差し指、中指の指先のグリップ性の向上とが必要である。パームグリップ法とペングリップ法とでは、歯ブラシを把持する位置が異なり、各方法での使い勝手を向上させる必要があるが、それらを両立させることは難しく、特にペングリップ法での使い勝手を向上させた工夫は従来の歯ブラシにおいて、ほとんどなされていない。そこで、どちらの方法を用いても操作性の良い歯ブラシが望まれるところである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ハンドル部の曲げに対する強度および剛性を低下させることなく歯磨き操作時の滑止め効果を十分に確保し、パームグリップ法およびペングリップ法の双方における歯ブラシの操作性を向上させることが可能な歯ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る歯ブラシは、植毛部と首部とハンドル部とを有する歯ブラシであって、前記ハンドル部は、合成樹脂材料製のハンドル基台と、前記ハンドル基台の表面上に略段差なく滑らかに連なるエラストマー部とで構成されるとともに、前記ハンドル部の首部側に位置する先端側腹部と先端側背部の左右には、傾斜面である先端側腹側面と先端側背側面が設けられ、前記ハンドル部の首部側とは反対側の基端側に位置する基端側腹部および基端側背部の左右には、傾斜面である基端側腹側面と基端側背側面が設けられ、前記エラストマー部が、前記先端側腹部、前記先端側腹側面前記先端側背側面、前記基端側腹部、前記基端側背部、前記基端側腹側面、前記基端側背側面、および前記先端側腹部と前記基端側腹部とを連通する連通部に設けられ、前記エラストマー部が設けられた前記先端側腹部および前記ハンドル基台の前記先端側背部に凸部が形成され、前記エラストマー部が設けられた前記先端側腹側面、前記先端側背側面、前記基端側腹側面および前記基端側背側面は、前記ハンドル部の長手方向に延びる複数の凹条が形成されることを特徴とする。
【0008】
第2の態様に係る歯ブラシは、第1の態様に係る歯ブラシであって、前記エラストマー部の厚さが0.8〜1.5mmである。
【0009】
第3の態様に係る歯ブラシは、第1の態様または第2の態様に係る歯ブラシであって、前記ハンドル部は、径方向の断面が略六角形状に形成される。
【0010】
第4の態様に係る歯ブラシは、第1の態様から第3の態様のいずれかの態様に係る歯ブラシであって、前記合成樹脂材料が透明である。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様に係る歯ブラシによれば、エラストマー部が設けられた先端側腹部およびハンドル基台の先端側背部に、凸部が形成され、エラストマー部が設けられた先端側腹側面、先端側背側面および基端側腹側面に、ハンドル基台の長手方向に延びる複数の凹条が形成されているので、ペングリップ法やパームグリップ法等の持ち方に応じてハンドル部を確実に把持することが可能となり、歯ブラシの操作性を一層向上することができる。また、エラストマー部は、手指がハンドル部に接触する部分周辺に設けることで、熱可塑性エラストマーの使用量を極力少なくしているので、合成樹脂材料製のハンドル基台の割合を大きくすることができ、ハンドル部の強度、剛性の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
第2の態様に係る歯ブラシによれば、ペングリップ法では、親指、人さし指および中指でハンドル部の先端側を把持するので、歯磨き操作(ブラッシング操作)によって、ハンドル部の基端側が親指と人さし指との間でぶれやすくなるが、ハンドル部の基端側に設けられたエラストマー部と、基端側腹側面および基端側背側面に形成された複数の凹条とによって、ハンドル部の基端側が親指と人さし指との間でフィットするので、安定した状態で歯磨き操作を行うことが可能となる。また、先端側腹側面、先端側背側面に形成された凹条によって、ペングリップ法でハンドル部を把持した場合における親指および人さし指の滑りを防止する役割を果たすので、ペングリップ法における操作性を向上させることが可能となる。さらに、先端側腹部および先端側背部に凸部が形成されているので、ペングリップ法における中指の滑りを防止するとともにパームグリップ法における親指および人さし指の滑りを防止する役割を果たすので、歯ブラシの操作性を向上させることが可能となる。
【0013】
第3の態様に係る歯ブラシによれば、ハンドル部の径方向の断面が略六角形に形成されるので持ちやすさを向上させることが可能となる。
【0014】
第4の態様に係る歯ブラシによれば、歯ブラシの外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態である歯ブラシの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態である歯ブラシの構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態である歯ブラシの構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態である歯ブラシの構成を示す図である。
図5】ハンドル部を図2の切断面線V−Vから見た断面図である。
図6】ハンドル部を図2の切断面線VI−VIから見た断面図である。
図7】ハンドル部を図2の切断面線VII−VIIから見た断面図である。
図8】ハンドル部の径方向の断面の外形を説明するための図である。
図9】本発明の実施形態である歯ブラシをペングリップ法で把持した状態を説明するための図である。
図10】本発明の実施形態である歯ブラシをパームグリップ法で把持した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1〜4は、本発明の実施形態である歯ブラシ1の構成を示す図である。図1は、歯ブラシ1の斜視図、図2(a)は、歯ブラシ1の正面図、図2(b)は、歯ブラシ1の側面図、図3は、歯ブラシ1の背面図、図4は、歯ブラシ1の縦(長手方向)断面図である。図1〜4に示すように、歯ブラシ1は、植毛部4と首部3とハンドル部2とを有する。植毛部4は、植毛台7と毛束8を備える。ハンドル部2は、ハンドル基台5とエラストマー部6とで構成される。
【0018】
植毛台7と首部3とハンドル基台5は、合成樹脂材料で一体成形されている。合成樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、スチレン・アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート等の硬質の合成樹脂材料を用いることが可能である。
【0019】
合成樹脂材料は、透明にすることによって、より歯ブラシの外観を向上させることができる。「透明」とは、ハンドルに成形した状態で可視光の透過を認めることができることを意味する。また、可視光を透過しない物質(例えば、ラメ、顔料など)を少量混合した樹脂であっても、可視光を透過することができれば透明に該当する。透明合成樹脂としては、特に、JIS K 7105の試験方法により測定した値が80%以上である樹脂が好ましい。透明の合成樹脂材料としては、ポリエチレンテテフタレート、ポリカーボネート、スチレン・アクリルニトリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート等の合成樹脂材料を用いることが可能である。
【0020】
植毛部4の植毛台7には、例えば、一般的な略長方形状や略卵型等、公知の形状に形成することができる。植毛台7には所定の配列で複数の植毛穴が形成されており、植毛穴に毛束8が植設されている。
【0021】
ハンドル部2は、合成樹脂材料製のハンドル基台5と、ハンドル基台5の表面上に略段差なく滑らかに連なるエラストマー部6とで構成され、その途中部が腹側へ突出した緩やかな湾曲状に形成される。また、ハンドル部2には、歯ブラシ1をフックなどに引っ掛けるための貫通孔40が設けられている。
【0022】
図5〜8は、ハンドル部2の径方向の断面形状を説明するための図である。図5は、ハンドル部2を図2の切断面線V−Vから見た断面図であり、図6は、切断面線VI−VIから見た断面
図であり、図7は、図2の切断面線VII−VIIから見た断面図である。また、図8は、ハン
ドル部2を図2の切断面線V−Vから見た断面の外形を示す概略図である。ハンドル部2は、径
方向の断面が略六角形状に形成される。具体的には、ハンドル部2の首部側かつ植毛面側に位置する先端側腹部20の左右には、傾斜面である先端側腹側面22,23が設けられる。一方、ハンドル部2の首部側かつ先端側腹部20の裏側に位置する先端側背部30の左右には、傾斜面である先端側背側面26,27が設けられる。したがって、ハンドル部2の先端側においては、先端側腹部20、先端側腹側面22,23、先端側背部30、先端側背側面26,27の六面により、径方向の断面が略六角形状に形成されている。また、ハンドル部2の首部側とは反対側の基端側に位置する基端側腹部21および基端側背部31の左右には、傾斜面である基端側腹側面24,25と基端側背側面28,29が設けられる。したがって、ハンドル部2の基端側においては、先端側腹部20、基端側腹側面24,25、基端側背部31、基端側背側面28,29の六面により、径方向の断面が略六角形状に形成されている。歯ブラシ1は、ハンドル部2の周囲に6つの面を設けることで、ハンドル部2を把持する指が回転することなく安定して把持することが可能となる。従って、ハンドル部2の断面が略六角形に形成されることによって、ハンドル部2の持ちやすさを向上させることが可能となる。特にペングリップ法で把持する場合は、親指、人差し指、中指の3本で把持することになるが、親指、人差し指、中指に対してそれぞれハンドル部2の周囲に設けられた面で支持することができる。
【0023】
図8に示すように、断面上において、先端側腹側面22と先端側背側面27とが接する点を頂点35とし、先端側腹側面23と先端側背側面26とが接する点を頂点36とする。先端側腹部20上の頂点を頂点37とし、先端側背部30上の頂点を頂点38とする。また、頂点35および頂点36を結ぶ直線を直線33とし、頂点37と頂点38とを結ぶ直線を直線34とする。直線34の長さをa、直線33の長さをbとすると、a:bの比、すなわちハンドル部2の径方向の断面の縦横比が、1:1.310〜1:1.375の範囲であることが好ましい。パームグリップ法においては、径方向の断面の形状が正六角形の場合(正六角形の縦横比1:1.155)、ハンドル部2が回転しやすく親指および人さし指を安定して配置することが難しく、正六角形よりも少し扁平した形状のほうが操作性が向上する。したがって、a:bの比において、aが1に対してbが1.310以上となることが好ましい。一方、ペングリップ法においては、縦方向にある程度の高さを保ちつつ先端側腹側面22,23が広いほうが親指および人さし指を安定して配置することができて、操作性が向上するので、a:bの比において、aが1に対してbが1.375以下となることが好ましい。また、直線34において、直線33と直線34との交点から先端側腹部20の頂点37までの長さをcとし、直線33と直線34との交点から先端側背部30の頂点38までの長さをdとすると、操作性の向上のために、c:dの比が、1:1〜1:0.7の範囲であることが好ましい。さらに、ハンドル部2の径方向の断面は、頂点37と頂点38とを結ぶ直線34に対して左右均等の形状をなしている。ハンドル部2の径方向の断面の左右端である頂点35および頂点36の形状は、特にペングリップ法での歯磨き時の回転操作における微小な角度調整を行いやすくするために、R処理されて湾曲形状となっていることが望ましい。R処理面の半径の望ましい範囲は、3.5mm以上2.5mm以下である。
【0024】
エラストマー部6は、熱可塑性エラストマー材料で一体的に形成される。エラストマー部6は、先端側腹部20、先端側腹側面22,23、先端側背側面26,27、基端側腹部21、基端側背部31、基端側腹側面24.25、基端側背側面28,29、および先端側腹部20と基端側腹部21とを連通する連通部15に設けられる。
【0025】
エラストマー部6は、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然エラストマー系熱可塑性エラストマー、ふっ素エラストマー系熱可塑性エラストマー、トランス−ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー材料を用いることが可能である。また、エラストマー部6の硬度は、デュロ硬度Aが、40以上90以下の範囲が好ましく、40以上90以下の範囲であれば、ペングリップ法で把持した場合に指先へのフィット感が良好となる。また、より好ましい範囲は、45以上85以下、さらに好ましい範囲は、45以上65以下である。
【0026】
エラストマー部6は、ハンドル基台5を図示しない金型にセットした状態で、背側から環状凹部14へ溶融させた熱可塑性エラストマー材料を加圧注入して、上述の先端側腹部20、先端側腹側面22,23、先端側背側面26,27、基端側腹部21、基端側背部31、基端側腹側面24.25、基端側背側面28,29、および先端側腹部20と基端側腹部21とを連通する連通部15とに熱可塑性エラストマー材料を充填して固化させることで、ハンドル基台5に対して一体的に設けたものである。エラストマー部6の厚さは、0.5〜2.0mmの範囲内、好ましくは0.8〜1.5mm程度に設定され、熱可塑性エラストマー材料の使用量を極力少なくしつつ、溶融エラストマー材料の充填不良を防止するように構成されている。図1〜4に示すように、熱可塑性エラストマー材料を充填することによって形成されたエラストマー部6は、ハンドル基台5の表面上に略段差なく滑らかに連なっている。また、先端側腹部20は、植毛部4の先端から75〜110mmの位置に設けることが好ましく、80〜105mmの位置に設けることがさらに好ましい。
【0027】
さらに、歯磨き操作時における指の滑止めを目的として、エラストマー部6が設けられた先端側腹部20には、凸部17が、ハンドル基台5の先端側背部30には凸部18が形成される。凸部18は、ハンドル長手方向に対して並んでいる。凸部17,18の形状は、○、□状の図形、文字等、どのような形状であってもよく、これらの形状が突出状に形成される。突出の高さは、0.05〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.5mmがさらに好ましい。
【0028】
また、エラストマー部6が設けられた先端側腹側面22,23、先端側背側面26,27、基端側腹側面24,25および基端側背側面28,29は、ハンドル部2の長手方向に向かって略平行に延びる複数の凹条22a,23a,24a,25a,26a,27a,28a,29aが形成される。
【0029】
次に、歯ブラシ1の作用について説明する。図9,10は、歯磨きにおける歯ブラシのハンドル部を把持する一般的な方法であるペングリップ法およびパームグリップ法を説明するための図である。図9は、歯ブラシ1をペングリップ法で把持した状態を示し、図10は、歯ブラシ1をパームグリップ法で把持した状態を示す。
【0030】
図9に示すように、ペングリップ法は、歯ブラシ1のハンドル部2の首部側を親指と人差し指と中指とで鉛筆を持つように握る方法である。また、図10に示すように、パームグリップ法は、歯ブラシ1のハンドル部2の首部側に親指を添えて残りの指と掌とでハンドル部2の全体を握る方法である。
【0031】
図9に示すように、ペングリップでハンドル部2を把持した場合には、親指と人指し指とが先端側腹側面22,23に配置され、中指が先端側背部30に配置される。そして、親指と人指し指とが凹条22a,23aに接触し、中指が先端側背部30には凸部18に接触することになる。また、ペングリップでハンドル部2を把持して歯磨き操作を行う場合における微妙に毛先を回転させる動作、具体的には、歯面に対する歯ブラシの毛先の角度を調整する動作においては、中指が先端側背側面26の凹条26a、先端側背部30の凸部18、先端側背側面27の凹条27aに接触することになる。ハンドル部2の長手方向に向かって略平行に延びる複数の凹条22a,23a,26a,27aにより、ペングリップでハンドル部2を把持して歯磨き操作を行う場合における微妙に毛先を回転させる動作において、所望の位置で指を容易に止めることができ、ペングリップ法で把持した場合の操作性を向上させることが可能となる。先端側腹側面22,23、先端側背側面26,27、基端側腹側面24,25および基端側背側面28,29等の側面部に凹条を設置したのは、ペングリップ法ではこれらの側面部は比較的弱い力によって親指、人差し指、中指で把持されるからであり、これらの側面部に凸部を設置すると、凸部の出っ張り部分だけが指に接触することになり、微妙に毛先を回転させる動作がやりにくくなるからである。
【0032】
また、図10に示すように、パームグリップでハンドル部2を把持した場合には、親指が先端側腹部20に配置され、人指し指が先端側背部30および先端側背側面26,27に配置され、小指および薬指が基端側腹部21、基端側背部31、基端側腹側面24.25、および基端側背側面28,29に配置される。そして、親指が凸部17に接触し、人指し指が凸部18および凹条26a,27aに接触し、小指および薬指が凹条24a,25a,28a,29aに接触することになる。凸部17,18が形成されることによって、パームグリップでハンドル部2を把持した場合において、凸部17が親指の滑りを防止する役割を果たし、凸部18が中指の滑りを防止する役割を果たすので、操作性を向上させることが可能となる。パームグリップ法では、比較的力を掛けて先端側腹部20に親指を押し当てて、先端側腹部20および先端側背部30を包み込む形で把持するが、先端側腹部20および先端側背部30に凸部が備えられることで、指に凸部がフィットして歯磨き操作時に強いグリップ力を発揮させることが可能となる。
【0033】
本発明の歯ブラシ1によれば、エラストマー部6が設けられた先端側腹部20およびハンドル基台5の先端側背部30に、凸部17,18が形成され、エラストマー部6が設けられた先端側腹側面22,23、先端側背側面26,27、基端側腹側面24,25、および基端側背側面28,29に、ハンドル基台の長手方向に延びる複数の凹条22a,23a,24a,25a,26a,27a,28a,29aが形成されているので、パームグリップ法やペングリップ法等の持ち方に応じてハンドル部2を確実に把持することが可能となり、歯ブラシ1の操作性を一層向上することができる。
【0034】
また、上述のように、エラストマー部6を必要な部分のみに形成してあることから、ハンドル部2に使用する熱可塑性エラストマー材料の割合を低くして、歯ブラシ1の製作コストを低減出来るとともに、ハンドル部2におけるエラストマー部6の割合が少なくなるのでハンドル部2の強度および剛性の低下を抑制することが可能となる。さらに、温度低下が緩やかな熱可塑性エラストマー材料が少なくて済むことから、歯ブラシ1の成形時間を短縮することが可能となる。
【0035】
次に、本発明の歯ブラシ1に対して行ったパネラー試験について説明する。歯ブラシ1である実施例をパームグリップ法とペングリップ法とにより実際に歯磨き行為を行ったときの官能評価を行った。評価は24名(男15名、女9名;平均年齢40.6歳)に対して行い、7段階(1〜7点)の絶対評価とした。評価では、(1)持ちやすさ、(2)パームグリップ法での持ち手の反対側の歯牙の磨きやすさ、(3)パームグリップ法での持ち手と同じ側の歯牙の磨きやすさ、(4)ペングリップ法での持ち手の反対側の歯牙の磨きやすさ、(5)ペングリップ法での持ち手と同じ側の歯牙の磨きやすさ、(6)歯磨き部位に応じてハンドルを持ち替えるときの持ち替えやすさ、の各項目に対する点数の平均値を求めた。そして、パネラー試験において表1のような結果が得られた。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す試験結果から、実施品は、(1)持ちやすさ、(2)パームグリップ法での持ち手の反対側の歯牙の磨きやすさ、(3)パームグリップ法での持ち手と同じ側の歯牙の磨きやすさ、(4)ペングリップ法での持ち手の反対側の歯牙の磨きやすさ、(5)ペングリップ法での持ち手と同じ側の歯牙の磨きやすさ、(6)歯磨き部位に応じてハンドルを持ち替えるときの持ち替えやすさ、の全項目について良好な結果が得られ、特に、ペングリップ法での歯牙の磨きやすさ、および持ちやすさにおいて良好な結果が得られた。
【0038】
なお、上記実施形態ならびに変形例で説明した構成は、矛盾が生じない限り適宜一部の構成を入れ換えてもよい。これらの変形例によっても、前記実施の形態と同様の効果を、達成することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 歯ブラシ
2 ハンドル部
3 首部
4 植毛部
5 ハンドル基台
6 エラストマー部
7 植毛台
6 エラストマー部
8 毛束
15 連通部
17,18 凸部
20 先端側腹部
21 基端側腹部
22,23 先端側腹側面
24,25 基端側腹側面
26,27 先端側背側面
28,29 基端側背側面
22a,23a,24a,25a,26a,27a,28a,29a 凹条
30 先端側背部
31 基端側背部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10