(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を販売する自動販売機では、自動販売機本体である本体キャビネットの商品収容庫の内部(庫内)に冷凍サイクルやヒートポンプサイクル等の構成機器である蒸発器(熱交換器)が設けられている。
【0003】
この種の熱交換器として、分配ヘッダと、複数の冷媒管と、合流ヘッダとを備えてなるものが知られている。分配ヘッダは、一端部に冷媒の流入口となる開口が形成され、他端部が閉塞されてなるもので、水平方向に沿って延在している。この分配ヘッダの内部には、一端部から他端部に向けて水平方向に沿って冷媒を通過させる分配流路が形成されている。
【0004】
冷媒管は、それぞれ扁平状を成しており、冷媒の流路となる冷媒通路が水平方向に沿って並設されてなるものである。このような冷媒管は、それぞれが上下方向に沿って延設されており、各冷媒通路の入口が分配流路を臨む態様で、分配ヘッダの管軸方向に沿って挿入されて取り付けられている。
【0005】
合流ヘッダは、上記分配ヘッダと平行となる態様で配設されている。この合流ヘッダは、一端部に冷媒の流出口となる開口が形成され、他端部が閉塞されてなるものである。この合流ヘッダの内部には、水平方向に沿って冷媒を通過させる合流流路が形成されている。そして、合流ヘッダには、自身の合流流路に各冷媒管の冷媒通路の出口が臨む態様で該冷媒管が取り付けられている。
【0006】
このような熱交換器においては、分配ヘッダからの各冷媒管の冷媒通路に冷媒を分配して冷媒通路を通過する冷媒と、自身の周囲を通過する流体との熱交換を行うようにしており、冷媒通路を通過した冷媒は、合流ヘッダの合流流路に至り、かかる合流流路を通過して流出口より流出することになる(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献1には明記されていないが、分配流路の流入口に連通する態様で、冷凍サイクルやヒートポンプサイクル等の冷媒回路を構成する冷媒配管の端部を分配ヘッダの一端部に例えばロウ付けにより接続させる工程においては、分配ヘッダの他端部(閉塞された端部)を下方にし、該一端部(流入口が形成された端部)を上方にして行うのが一般的である。
【0009】
かかる冷媒配管の端部を接続する際に用いられるロウ材(接着物)の量が過大等となる場合には、その余剰分は、自身の重力により分配流路を下方に向けて流れることとなり、該分配流路の他端部に貯留してしまうことがある。このように分配流路の他端部にロウ材が貯留してしまうと、その貯留量によっては、入口が該分配流路を臨む冷媒通路にロウ材が進入してしまい、該冷媒通路を閉塞してしまうことがあった。このように冷媒通路を閉塞してしまうと、冷媒の通過量が低減してしまい、結果的に熱交換効率の低下を招来する問題があった。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、分配ヘッダに対する接続工程において接着物が冷媒通路に進入することを抑制し、熱交換効率の低下を防止することができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る熱交換器は、一端部に形成された流入口を通じて流入した冷媒を、閉塞された他端部に向けて通過させる分配流路が内部に形成された管状の分配ヘッダと、それぞれが複数の冷媒通路を並設させた扁平状を成し、各冷媒通路の入口が前記分配流路を臨む態様で、前記分配ヘッダの管軸方向に沿って挿入されて取り付けられた複数の冷媒管とを備え、前記分配ヘッダから各冷媒管のそれぞれの冷媒通路に冷媒を分配して前記冷媒通路を通過する冷媒と、自身の周囲を通過する流体との熱交換を行う熱交換器において、前記分配ヘッダは、自身の他端部の内壁面と、該他端部に最も近接する前記冷媒管の挿入端部との間に、接着物を貯留することが可能な貯留スペースを備えた
ものであり、前記貯留スペースは、前記分配流路の管軸方向に沿った長さLが下記の関係式を満足することを特徴とする。
(式)L>(4・m・(1−α))/(ρ・π・d2)
(ここで、mは接着物供給質量、αは接着物の使用割合、ρは接着物の密度、dは分配流路の内径を示している。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分配ヘッダは、自身の他端部の内壁面と該他端部に最も近接する冷媒管の挿入端部との間に接着物を貯留することが可能な貯留スペースを備えているので、該分配ヘッダに冷媒配管の端部を接続する接続工程において、接着物(ロウ材)の量が過大等となる場合においても、その余剰分は分配流路を溶融した状態で通過させてその後に貯留スペースに良好に貯留させることができる。これにより下流側冷媒管の冷媒通路に貯留させた接着物が進入してしまうことがなく、かかる接着物により冷媒通路が閉塞されてしまうこともない。従って、分配ヘッダに対する接続工程において接着物が冷媒通路に進入することを抑制し、熱交換効率の低下を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る熱交換器の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である熱交換器が蒸発器として適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。ここで例示する自動販売機は、本体キャビネット1を備えている。
【0017】
本体キャビネット1は、前面が開口した直方状の形態を成すものである。この本体キャビネット1には、その内部に例えば2つの断熱仕切板2によって仕切られた3つの独立した商品収容庫3が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫3は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。
【0018】
図2は、
図1に示した自動販売機の内部構造を示す断面側面図である。かかる
図2に示すように、本体キャビネット1の前面には、外扉4及び内扉5が設けてある。外扉4は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、内扉5は、商品収容庫3の前面を開閉するためのものである。この内扉5は、上下に分割してあり、上側の扉5aは商品を補充する際に開閉するものである。
【0019】
上記商品収容庫3には、商品収納ラック6、搬出機構7及び搬出シュータ8が設けてある。商品収納ラック6は、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。搬出機構7は、商品収納ラック6の下部に設けてあり、この商品収納ラック6に収納された商品群の最下位にある商品を1つずつ搬出するためのものである。搬出シュータ8は、搬出機構7から搬出された商品を外扉4に設けられた商品取出口4aに導くためのものである。
【0020】
そして搬出シュータ8の下方域には蒸発器24及びヒータHが配設してある。蒸発器24は背面ダクトDの前面側に配設してあり、機械室9に配設された圧縮機21、凝縮器22、膨張機構23と冷媒配管25を通じて順次接続されて冷凍サイクル20を形成している。
【0021】
圧縮機21は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態(高温高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。凝縮器22は、通過する冷媒を凝縮させるものである。より詳細に説明すると、圧縮機21で圧縮され、かつ吐出口から吐出されて冷媒配管25を通じて送出された冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。膨張機構23は、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0022】
これら冷凍サイクル20で冷媒を循環させることにより、圧縮機21で圧縮された冷媒が凝縮器22で凝縮され、その後に膨張機構23で断熱膨張されて蒸発器24を通過する。冷媒が蒸発器24を通過する際に、該蒸発器24が配設された商品収容庫3の内部空気との間で熱交換が行われて、自身が蒸発して内部空気を冷却する。蒸発した冷媒は圧縮機21に吸引される。
【0023】
冷却された内部空気は庫内送風ファンF1の駆動により商品収容庫3の内部を移動し、これにより該商品収容庫3の商品収納ラック6に収納された商品は所望の温度(例えば5℃)に冷却されることになる。
【0024】
ヒータHは、庫内送風ファンF1の前方域に配設してある。このヒータHは通電状態となることにより周囲空気を加熱するものである。ヒータHにより加熱された空気は、庫内送風ファンF1の駆動により商品収容庫3の内部を移動し、これにより該商品収容庫3の商品収納ラック6に収納された商品は所望の温度(例えば55℃)に加熱されることになる。
【0025】
図3及び
図4は、それぞれ
図2に示した蒸発器(本発明の実施の形態である熱交換器)を模式的に示すものであり、
図3は背面図であり、
図4は平面図である。ここで例示する蒸発器24は、分配ヘッダ241と、合流ヘッダ242と、複数(図示の例では2つ)の冷媒管243とを備えて構成してある。
【0026】
分配ヘッダ241は、水平方向に沿って配設されている。この分配ヘッダ241の一端部には、冷媒の流入口2411が形成されており、他端部241aは閉塞された管状のものである。かかる一端部には、膨張機構23の出口に連結された冷媒配管25の端部を構成する入口側接続パイプ25a(
図6及び
図7参照)が流入口2411に連通する態様で接続されている。この分配ヘッダ241の内部には、一端部から他端部241aに向けて流入口2411より流入した冷媒を水平方向に沿って、すなわち自身の管軸方向に沿って通過させる分配流路2412(
図7参照)が形成してある。
【0027】
合流ヘッダ242は、上記分配ヘッダ241の下方域において、該分配ヘッダ241と平行となる態様で水平方向に沿って配設してある。この合流ヘッダ242の一端部には、冷媒の流出口(図示せず)が形成されており、他端部は閉塞された管状のものである。かかる流出口は、圧縮機21の吸引口に連結した冷媒配管25が接続されている。この合流ヘッダ242の内部には、一端部から他端部に向けて水平方向に沿って、すなわち自身の管軸方向に沿って通過させる合流流路(図示せず)が形成してある。
【0028】
冷媒管243は、
図5に示すように、それぞれが複数の冷媒通路2431が水平方向に沿って並設された扁平状の管であり、扁平多穴管と称されるものである。つまり、複数の冷媒通路2431は、分配ヘッダ241(合流ヘッダ242)の管軸方向に沿って並設してある。かかる冷媒管243は、それぞれが分配ヘッダ241の管軸方向に沿って並ぶ態様で左右に蛇行して形成してある。以下においては、分配ヘッダ241の流入口2411側(一端部側)の冷媒管243を上流側冷媒管243aとも称し、他端部241aに近接する側の冷媒管243を下流側冷媒管243bとも称することにする。
【0029】
そして、上記冷媒管243(上流側冷媒管243a及び下流側冷媒管243b)は、各冷媒通路2431の上端開口が冷媒の入口となっており、下端開口が冷媒の出口となっている。これら冷媒管243(上流側冷媒管243a及び下流側冷媒管243b)は、自身の冷媒通路2431における入口が分配ヘッダ241の分配流路2412を臨む態様で分配ヘッダ241の側部から挿入して取り付けてあるとともに、自身の冷媒通路2431における出口が合流ヘッダ242の合流流路を臨む態様で合流ヘッダ242の側部から挿入して取り付けてある。
【0030】
また、このような冷媒管243(上流側冷媒管243a及び下流側冷媒管243b)には、コルゲートフィン244が熱的に接続する態様で配設してある。コルゲートフィン244は、波形状に屈曲されて形成してあり、その屈曲部外部2441をロウ付け等により冷媒管243における水平延在部位間に接合して配設してある。このようなコルゲートフィン244には、図には明示しないが、表面から切り起こし形成された細片状のルーバーが形成してある。かかるコルゲートフィン244は、冷媒管243の冷媒通路2431を通過する冷媒と、蒸発器24の周囲の空気(流体)との熱交換を促進させるためのものである。
【0031】
図6及び
図7は、それぞれ分配ヘッダ241に入口側接続パイプ25aを接続する工程を示すものであり、
図6は斜視図であり、
図7は縦断面図である。ここで例示するように、分配ヘッダ241の一端部に入口側接続パイプ25aを接続する工程では、分配ヘッダ241を一端部が上方で他端部241aが下方となる姿勢とし、流入口2411に連通する態様で入口側接続パイプ25aを上方から近接させて例えばロウ付けにより分配ヘッダ241の一端部に接続することとなる。
【0032】
ここで、かかる分配ヘッダ241においては、他端部241aの内壁面と、該他端部241aに最も近接する下流側冷媒管243bの挿入端部との間に、入口側接続パイプ25aの接続工程で用いられる接着物(ロウ材)Rを貯留することが可能な貯留スペースS(
図7参照)が設けてある。
【0033】
この貯留スペースSは、分配流路2412の管軸方向に沿った長さLが下記の関係式(1)を満足するような大きさにしてある。
【0034】
式(1)L>(4・m・(1−α))/(ρ・π・
d2)
(ここで、mは接着物R供給質量、αは接着物Rの使用割合、ρは接着物Rの密度、dは分配流路2412の内径を示している。)
【0035】
このような関係式(1)は、下記の関係式(2)から求められるものである。
【0036】
式(2)(ρ・π・
d2・L)/4>(1−α)・m
【0037】
上記関係式(2)の左項は、
接着物Rの余剰量を貯留するのに必要最小限の容積に密度を乗じたものを示しており、右項は、入口側接続パイプ25aを接続する際に接着物Rの余剰量を示している。
【0038】
本実施の形態である熱交換器(蒸発器24)においては、分配ヘッダ241は、自身の他端部241aの内壁面と、下流側冷媒管243bの挿入端部との間に貯留スペースSを備えているので、該分配ヘッダ241に入口側接続パイプ25aを接続する接続工程において、ロウ材(接着物R)の量が過大等となる場合においても、その余剰分は分配流路2412を溶融した状態で通過させてその後に貯留スペースSに良好に貯留させることができる。これにより下流側冷媒管243bの冷媒通路2431に貯留させたロウ材が進入してしまうことがなく、かかるロウ材により冷媒通路2431が閉塞されてしまうこともない。
【0039】
特に、貯留スペースSは、分配流路2412の管軸方向に沿った長さLが上記関係式(1)を満足することで、入口側接続パイプ25aの接続工程で用いたロウ材の余剰分を確実に貯留スペースSに貯留させることができ、しかも下流側冷媒管243bの冷媒通路2431にロウ材が進入して閉塞してしまうことを防止することができる。
【0040】
従って、本実施の形態である熱交換器によれば、分配ヘッダ241に対する接続工程においてロウ材(接着物R)が冷媒通路2431に進入することを抑制し、熱交換効率の低下を防止することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0042】
上述した実施の形態では、分配ヘッダ241の接続工程について述べたが、本発明においては、分配ヘッダ241だけでなく、合流ヘッダ242の接続工程、すなわち合流ヘッダの一端部に冷媒配管25の端部を流出口に連通する態様で接続する工程においても、他端部の内壁面と、該他端部に最も近接する下流側冷媒管の挿入端部との間に、該工程で用いられる接着物(ロウ材)を貯留することが可能な貯留スペースを合流ヘッダに設けるようにしても良い。このように合流ヘッダに貯留スペースを設けることにより、合流ヘッダに対する接続工程において接着物が冷媒通路に進入することを抑制することができる。