【実施例】
【0037】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0038】
<実施例1>
先ず、水50mlに、硫酸銅(II)7.87×10
-3molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、銅イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を硫酸にてpHを2.0に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500(平均分子量が500のポリビニルアルコール)を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌して溶解させた。
【0039】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを2.0に調整した3.78×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し銅イオンを還元することにより、第一金属粉末として銅粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置して銅粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水50mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った後、水50mlを加えて分散液を得た。
【0040】
次に、上記洗浄後の銅粉末の分散液に、硝酸銀(I)2.78×10
-2molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、銅粉末が分散し、銀イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を硝酸にてpHを2.0に調整し、これに分散剤としてカゼインを0.35g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0041】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを2.0に調整した6.67×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し銀イオンを還元することにより、第二金属粉末として銅−銀粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を、遠心分離機を用いて回転速度2000rpmにて10分間遠心分離した後、上澄み液を捨てた。ここに水50mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び遠心分離して上澄み液を捨てる操作を計4回繰り返すことにより洗浄を行った後、水500mlを加えて分散液を得た。
【0042】
次に、上記洗浄後の銅−銀粉末の分散液に、塩化錫(II)8.13×10
-1molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、銅−銀粉末が分散し、錫イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0043】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した1.95mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し錫イオンを還元することにより、第三金属粉末として銅−銀−錫粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置して銅−銀−錫粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水200mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った。
【0044】
最後に、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥することにより、ハンダ粉末を得た。
【0045】
<実施例2>
先ず、水50mlに、塩化インジウム四水和物2.18×10
-2molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、インジウムイオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌して溶解させた。
【0046】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した7.85×10
-2mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌しインジウムイオンを還元することにより、第一金属粉末としてインジウム粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置してインジウム粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水50mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った後、水50mlを加えて分散液を得た。
【0047】
次に、上記洗浄後のインジウム粉末の分散液に、硝酸銀(I)1.39×10
-2molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、インジウム粉末が分散し、銀イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を硝酸にてpHを2.0に調整し、これに分散剤としてカゼインを0.35g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0048】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを2.0に調整した3.34×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し銀イオンを還元することにより、第二金属粉末としてインジウム−銀粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を、遠心分離機を用いて回転速度2000rpmにて10分間遠心分離した後、上澄み液を捨てた。ここに水50mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び遠心分離して上澄み液を捨てる操作を計4回繰り返すことにより洗浄を行った後、水500mlを加えて分散液を得た。
【0049】
次に、上記洗浄後のインジウム−銀粉末の分散液に、塩化錫(II)4.07×10
-1molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、インジウム−銀粉末が分散し、錫イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0050】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した1.95mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し錫イオンを還元することにより、第三金属粉末としてインジウム−銀−錫粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置してインジウム−銀−錫粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水200mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った。
【0051】
最後に、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥することにより、ハンダ粉末を得た。
【0052】
<実施例3>
先ず、水50mlに、分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌して溶解させ、塩酸にてpHを0.5に調整した。これに三酸化二アンチモン0.41×10
-3molを加え、スターラを用い300rpmにて5分間激しく攪拌し溶解させることにより、アンチモンイオンが溶解する金属溶液を調製した。
【0053】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した2.95×10
-2mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間激しく攪拌しアンチモンイオンを還元することにより、第一金属粉末としてアンチモン粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置してアンチモン粉末を沈降させ、上澄み液を捨てた後、水50mlを加えて分散液を得た。
【0054】
次に、上記アンチモン粉末の分散液に、塩化銅(II)1.57×10
-2molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、アンチモン粉末が分散し、銅イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてカゼインを0.35g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0055】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した7.54×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し銅イオンを還元することにより、第二金属粉末としてアンチモン−銅粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を、遠心分離機を用いて回転速度2000rpmにて10分間遠心分離し、上澄み液を捨てた後、水500mlを加えて分散液を得た。
【0056】
次に、上記アンチモン−銅粉末の分散液に、塩化錫(II)8.33×10
-1molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、アンチモン−銅粉末が分散し、錫イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0057】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した1.99mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し錫イオンを還元することにより、第三金属粉末としてアンチモン−銅−錫粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置してアンチモン−銅−錫粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水200mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った。
【0058】
最後に、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥することにより、ハンダ粉末を得た。
【0059】
<実施例4>
先ず、水50mlに、塩化コバルト(II)1.70×10
-3molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、コバルトイオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌して溶解させた。
【0060】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した1.02×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて4時間攪拌しコバルトイオンを還元することにより、第一金属粉末としてコバルト粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を2時間静置してコバルト粉末を沈降させ、上澄み液を捨てた後、水50mlを加えて分散液を得た。
【0061】
次に、上記コバルト粉末の分散液に、塩化銅(II)1.10×10
-2molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、コバルト粉末が分散し、銅イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてカゼインを0.35g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0062】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した6.61×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し銅イオンを還元することにより、第二金属粉末としてコバルト−銅粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を、2時間静置してコバルト−銅粉末を沈降させ、上澄み液を捨てた後、水500mlを加えて分散液を得た。
【0063】
次に、上記コバルト−銅粉末の分散液に、塩化錫(II)8.36×10
-1molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、コバルト−銅粉末が分散し、錫イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0064】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した2.01mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し錫イオンを還元することにより、第三金属粉末としてコバルト−銅−錫粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置してコバルト−銅−錫粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水200mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った。
【0065】
最後に、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥することにより、ハンダ粉末を得た。
【0066】
<実施例5>
先ず、水50mlに、塩化ニッケル(II)1.70×10
-3molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、コバルトイオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌して溶解させた。
【0067】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した1.02×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて3時間攪拌しニッケルイオンを還元することにより、第一金属粉末としてニッケル粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を2時間静置してニッケル粉末を沈降させ、上澄み液を捨てた後、水50mlを加えて分散液を得た。
【0068】
次に、上記ニッケル粉末の分散液に、塩化銅(II)1.10×10
-2molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、ニッケル粉末が分散し、銅イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてカゼインを0.35g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0069】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した6.61×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液50mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し銅イオンを還元することにより、第二金属粉末としてニッケル−銅粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を、60分間静置してニッケル−銅粉末を沈降させ、上澄み液を捨てた後、水500mlを加えて分散液を得た。
【0070】
次に、上記ニッケル−銅粉末の分散液に、塩化錫(II)8.36×10
-1molを加え、スターラを用いて回転速度300rpmにて5分間攪拌し溶解させることにより、ニッケル−銅粉末が分散し、錫イオンが溶解する金属溶液を調製した。この金属溶液を塩酸にてpHを0.5に調整し、これに分散剤としてポリビニルアルコール500を0.5g加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し溶解させた。
【0071】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを0.5に調整した2.01mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlを加え、回転速度500rpmにて10分間攪拌し錫イオンを還元することにより、第三金属粉末としてニッケル−銅−錫粉末が分散する分散液を得た。得られた分散液を60分間静置してニッケル−銅−錫粉末を沈降させ、その後上澄み液を捨てた。ここに水200mlを加え、回転速度300rpmにて10分間攪拌し、再び静置して上澄み液を捨てる操作を計4回繰返すことにより洗浄を行った。
【0072】
最後に、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥することにより、ハンダ粉末を得た。
【0073】
<比較例1>
先ず、水1000mLに塩化銅(II)2.58×10
-3mol、塩化錫(II)2.64×10
-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより金属溶液を調製した。この金属溶液のpHを塩酸にて1.0に調整した。
【0074】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを1.0に調整した8.17×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlを加え、撹拌し、金属溶液中の各金属イオンを還元することにより、銅−錫粉末の分散液を得た。
【0075】
次に、上記銅−錫粉末の分散液に、pHを1.0に調整した6.08×10
-2mol/Lの硝酸銀水溶液200mLを添加して混合することにより、分散液中の銅−錫粉末の表面に銀を析出させた。
【0076】
最後に、洗浄、ろ過を行い、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥させることにより、ハンダ粉末を得た。
【0077】
<比較例2>
先ず、水1000mLに塩化インジウム四水和物1.48×10
-2mol、塩化錫(II)2.64×10
-1mol及び分散剤としてメチルセルロース14gをそれぞれ添加して混合することにより、金属溶液を調製した。この金属溶液のpHを塩酸にて1.0に調整した。
【0078】
次に、上記金属溶液に、還元剤としてpHを1.0に調整した8.72×10
-1mol/Lの2価クロムイオン水溶液1000mlをを加え、撹拌し、金属溶液中の各金属イオンを還元することにより、インジウム−錫粉末の分散液を得た。
【0079】
次に、上記インジウム−錫粉末の分散液に、pHを1.0に調整した4.73×10
-2mol/Lの硝酸銀水溶液200mLを添加して混合することにより、分散液中のインジウム−錫粉末の表面に銀を析出させた。
【0080】
最後に、洗浄、ろ過を行い、得られた固形分を真空乾燥機にて乾燥させることにより、ハンダ粉末を得た。
【0081】
<比較試験及び評価>
実施例1〜5及び比較例1,2で得られたハンダ粉末について、次に述べる方法により、粉末を構成する金属粒子の構造、粉末の平均粒径、組成比の分析又は測定、及び溶融性を評価した。これらの結果を以下の表1に示す。
【0082】
(1) 金属粒子の構造:クロスポリッシャー法(CP法)にて粉末断面を顕わにし、オージェ電子分光分析法による面分析(元素マッピング)により、金属粒子が中心核、中間層、最外層の順番に層状に配置されていることを確認した。また、金属粒子を構成する中心核、中間層、最外層の各体積割合は、第一,第二,第三金属粒子を真球であるものと仮定して、第一,第二,第三金属粉末の平均粒径から球の体積V
1,V
2,V
3を算出し、このとき算出されたV
1、V
2−V
1、V
3−V
2の値をそれぞれVc、Vm、Voとした。
【0083】
なお、比較例1,2で得られたハンダ粉末については、集束イオンビーム加工(Focused Ion Beam milling)観察装置にてハンダ粉末の中心部分を通るように薄く加工し、粉末の断面構造を走査電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡にて金属粒子が中心核、中間層、最外層の順番に層状に配置されていることを確認した。また、比較例1,2では一回目の還元反応において一度に銅−錫組成等の粉末が生成したため、上記方法によるVc、Vm、Voの算出を行わなかったが、ICP−AES法による粉末組成比が90質量%以上も占める錫が上記断面構造の観察によって中間層に配置されていること及び錫と銀の金属密度から、明らかにVm>Voであり、Vc<Vm<Voを満たさないことを確認した。
【0084】
(2) 平均粒径:レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置(堀場製作所社製、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950)にて粒径分布を測定し、その体積累積中位径(Median径、D
50)をハンダ粉末の平均粒径とした。なお、上記(1)の体積割合の評価に用いた第一金属粉末及び第二金属粉末の平均粒径も同様に評価したものである。
【0085】
(3) 組成比:誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectroscopy:ICP−AES)法により各種金属含有量(質量)を測定した。
【0086】
(4) 溶融性:先ず、ハンダ粉末にハンダ用フラックスを15質量%となる割合で混合してペースト化することにより、ハンダ用ペーストを調製した。次いで、このハンダ用ペーストをフリップチップ用基板上に印刷し、窒素雰囲気中、最高温度240℃の条件でリフローハンダ付けを行い、基板上にハンダバンプを形成した。リフロー後のハンダバンプの表面を光学顕微鏡により観察し、その観察結果をもとに、ハンダ粉末の溶融性を評価した。なお、表1における溶融性評価結果については、JIS Z3284におけるソルダボール試験の評価方法に基づき、「A」は「ハンダの凝集度合い1」、「B」は「ハンダの凝集度合い2」、「C」は「ハンダの凝集度合い3〜5」であることを示す。
【0087】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1〜5及び比較例1,2を比較すると、実施例1〜5のハンダ粉末は、いずれも溶融性の評価が「A」を示しており、溶融性が非常に優れることが確認された。特に、実施例1と比較例1では、構成元素もその含有割合もほぼ同じであるにも拘わらず、金属粒子の構造によって溶融性が大きく異なることが判る。
【0088】
これは、比較例のハンダ粉末では、中間層の体積に比べて最外層の体積割合が非常に小さいため、最外層が中間層の表面を完全に被覆するのが難しく、最外層を構成する金属が部分的に不均一に分布している。その結果、リフロー時に最外層を構成する金属の拡散が不均一となり、ハンダバンプにおける組成が均一になるのに時間がかかることから融点等に差異が生じたため、実施例のハンダ粉末に比べて溶融性がやや劣る結果になったものと考えられる。