(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術において、乾式グラスウールシートを芯材とした場合、当該乾式グラスウールシートは製造上、グラスファイバーを集積した綿状の素材であるため、湿式グラスウールシートと比較して切断後の寸法精度が悪い。しかもシート表面の平坦度が低いことから、完成後の真空断熱材表面に凹凸が目立ち易く、外観の品位低下を招いていた。
【0008】
一方、湿式グラスウールシートを芯材とした場合、乾式グラスウールシートと比較して熱伝導率が高く(すなわち、断熱性能が低く)、乾式グラスウールシートと同じ厚さの芯材で真空断熱材を製造すると断熱性能が低くなる。そのため、乾式グラスウールシートと同等の断熱性能を確保するには、積層枚数を増やすなどして芯材の厚みを乾式グラスウールシートよりも厚くしなければならず、最終的な真空断熱材としての厚みが大幅に増加する問題があった。
【0009】
また、特許文献1に示すような芯材の角部を切除する方法では、切除寸法が大きいと角部の断熱できる範囲が狭くなり、逆に切除寸法が小さいとシワの発生を防止できない。特に特許文献1では、芯材の角部における切除寸法の具体的な記載がなく、単に角部を切除しただけではシワの発生を効果的に抑制できない。同様の問題は特許文献2にもあり、ここでも具体的な切除寸法が記載されておらず、また芯材に鋭角部が存在して角部のシワの発生を抑制することができない。
【0010】
さらに、前記ホルダとして使用される真空断熱容器は鉄製で重く、底部もただのネジ込み式になっていて、限定されたペットボトルにしか対応できず、市場からはすでに存在しなくなっている。また、安価なアルミ蒸着マットを使用したペットボトル用のホルダも知られているが、保冷断熱性に欠けている。
【0011】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、所定の断熱性能を確保しつつ、サイズの均一性および外観上の品位に優れた真空断熱材を提供することを第1の目的とする。
【0012】
また本発明の第2の目的は、シワ発生による真空破壊を防止して信頼性が高く、しかも断熱範囲を維持できる真空断熱材を提供することにある。
【0013】
また本発明の第3の目的は、軽量化を図ると共に保冷断熱性に優れる真空断熱材を使用したホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明では、切断寸法精度と表面の平坦度が高い湿式グラスウールシートを、外被材と接する部位に配置することで、サイズの均一性および外観上の品位に優れた真空断熱材を得ることができる。しかも芯材として、熱伝導率の低い乾式グラスウールシートを湿式グラスウールシートの間に配置することで、サイズの均一性や外観上の品位を劣化させることなく、所定の断熱性能を維持できる。
また、完成した真空断熱材において外被材に加わるストレスが大幅に低減され、ピンホールやクラックの発生による真空破壊を防止できる。また、積層した一部のグラスウールシートはその角部を切除せずに残しているので、真空断熱材の角部で必要な断熱範囲を確保できる。
【0015】
請求項2の発明では、完成した真空断熱材において外被材に加わるストレスが大幅に低減され、ピンホールやクラックの発生による真空破壊を防止でき
る。
【0016】
請求項3の発明では、上述した真空断熱材を採用することによりホルダを軽量化することができ、また容器の底部や上部にも真空断熱材を配置できるため、容器の収容物を外気と効果的に保冷断熱することが可能になる。
【0017】
請求項4の発明では、
例えばホルダに収納された容器の収容物がこぼれた場合でも、ホルダを複数の部品に分解することができ、清掃性に優れたホルダを提供できると共に、上下どちらからでも容器の収納が可能になる。
【0018】
請求項5の発明では
、弾性体により容器に当接する方向に摺動部が摺動して、ホルダを容器にがたつきなく装着することができる。
【0019】
請求項6の発明では、本体と透明体との間に、絵や写真などを挿入することができ、ホルダを自分好みの外観にアレンジできる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、所定の断熱性能を確保しつつ、サイズの均一性および外観上の品位に優れた真空断熱材を提供することができる。
また、シワ発生による真空破壊を防止して信頼性が高く、しかも断熱範囲を維持できる真空断熱材を提供することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば
、シワ発生による真空破壊を防止して信頼性が高い真空断熱材を提供することができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、軽量化を図ると共に保冷断熱性に優れる真空断熱材を使用したホルダを提供できる。
【0023】
請求項4の発明によれば
、上下に分解が可能で清掃性に優れたホルダを提供できると共に、上下どちらからでも容器の収納が可能になる。
【0024】
請求項5の発明によれば
、多種多様な容器にホルダを対応させることが可能になる。
【0025】
請求項6の発明によれば、ホルダを自分好みの外観にアレンジできる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における真空断熱材の好ましい実施例を説明する。なお、以下に示す各実施例で、共通する箇所には共通する符号を付し、共通する部分の説明は重複を避けるため極力省略する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の第1実施例における完成した平板状の真空断熱材1の断面図を示している。この真空断熱材1は、繊維状のグラスウールシート2a,3,2bを積層した断熱材からなる芯材11と、芯材11の内部に配置して、水分を吸湿させるための主に酸化カルシウムを主成分とした吸着剤12と、芯材11および吸着剤12を密封包装するために、ガス若しくは水分に対するバリア性を有する外被材14とにより構成される。芯材11を構成するグラスウールシート2a,3,2bは、シート状に製造された無機繊維体を所定の寸法にカットした平面視四角形状のもので、これらのグラスウールシート2a,3,2bを積み重ねて規定の枚数にした芯材11を、吸着剤12と共に外被材14に挿入している。また吸着剤12は、積層シート状のフィルムで袋状に封止されたもので、その内部には酸化カルシウムが封入されるが、シリカゲルやゼオライトなどの水分吸着機能を有する他の無機物を、酸化カルシウムに代わって封入してもよい。
【0029】
本実施例における芯材11は、湿式グラスウールシート2a,2bと、乾式グラスウールシート3とを組み合わせてなり、乾式グラスウールシート3を一枚若しくは複数枚積層したものを、湿式グラスウールシート2a,2bで両側から挟み込んだ構成としており、外被材14の内平面に対向して接するように、湿式グラスウールシート2a,2bがそれぞれ配置されている。
【0030】
湿式グラスウールシート2a,2bは、製造工程の最初にガラス繊維の細分化を行なわず、その後は乾燥工程を行なって所定の形状に形成されるもので、乾式グラスウールシート3に比べて切断後の寸法精度や表面の平坦度が高く、平面に加工し易い性質がある一方、熱伝導率が高く断熱性能に劣るという特徴を持つ。これに対して、乾式グラスウールシート3は、製造工程の最初にガラス繊維の細分化を行ない、その後は乾燥工程を行なわずに所定の形状に形成されるもので、乾式グラスウールシート3に比べて熱伝導率が低く断熱性能に優れるという特徴を持つ一方で、切断後の寸法精度や表面の平坦度が低く、平面に加工し難い性質がある。本実施例の真空断熱材1は、これらの湿式グラスウールシート2a,2bと乾式グラスウールシート3の持つそれぞれの長所を活かすように、グラスウールシート2a,3,2bの配置に工夫を加えている。
【0031】
また外被材14は、平面視同形をなすシート部材14a,14bの周縁をヒートシールして形成されるもので、外被材14の四方周縁には、シート部材14a,14bを当該ヒートシールで接合した余剰部分としての耳部15が形成される。
【0032】
図1に示す真空断熱材1を製造するには、先ず湿式グラスウールシート2a,2bと乾式グラスウールシート3のそれぞれを、所望の例えば矩形形状に形成または裁断し、乾式グラスウールシート3の開口部18に吸着剤12を収納した後、その乾式グラスウールシート3の厚さ方向の両側から湿式グラスウールシート2a,2bを挟み込んで、吸着剤12を含む複数枚重ねの芯材1を、三方をヒートシールした平面視四角形状の外被材14の中に、残りの一方の開口から挿入収納する。この状態で、例えば真空槽(図示せず)による真空引きを行ない、外被材14の内部を所定の真空度にまで減圧した後に、外被材14の開口されている残りの一方をヒートシールして封止することで密封し、平面視四角形状の真空断熱材1を得る。
【0033】
このようにして製造された真空断熱材1は、湿式グラスウールシート2a,2bが乾式グラスウールシート3を挟んだ状態で、外被材14の中に芯材11が密封収納されることになる。そのため、真空断熱材1としての外形は、芯材11の外側に露出する湿式グラスウールシート2a,2bに依存して、その寸法精度や表面の平坦度が高くなる一方で、芯材11の一部を構成する乾式グラスウールシート3によって、湿式グラスウールシート2a,2b単独のものよりも、断熱性能に優れた真空断熱材1を提供できる。
【0034】
以上のように本実施例では、芯材11と、この芯材11を被覆する外被材14とを備え、外被材14の内部を減圧密封した真空断熱材1において、芯材11は、外被材14の内平面と接する湿式グラスウールシート2a,2bの間に、乾式グラスウールシート3を一乃至複数枚挟んで積層して構成される。
【0035】
この場合、切断寸法精度と表面の平坦度が高い湿式グラスウールシート2a,2bを、外被材14と接する部位に配置することで、湿式グラスウールシート2a,2bの長所を活かして、サイズの均一性および外観上の品位に優れた真空断熱材1を得ることができる。しかも芯材11として、外被材14の内平面に接しないように、熱伝導率の低い乾式グラスウールシート3を湿式グラスウールシート2a,2bの間に配置することで、真空断熱材1としてのサイズの均一性や外観上の品位を劣化させることなく、乾式グラスウールシート3の長所を活かして、所定の断熱性能を維持することができる。
【実施例2】
【0036】
図2は、本発明の第1実施例における完成した平板状の真空断熱材1の断面図を示している。同図において、ここに示す真空断熱材1は、芯材11が2枚の湿式グラスウールシート2a,2bと、2枚の乾式グラスウールシート3a,3bとの組み合わせにより構成され、乾式グラスウールシート3a,3bの厚み方向に共通して形成された開口18に、前述したものと同じ吸着剤12が収納される。ここでも芯材11は、外被材14の内平面と接する湿式グラスウールシート2a,2bの間に、2枚の乾式グラスウールシート3a,3bを挟んで積層して構成される。また真空断熱材1の製造方法も、第1実施例で説明した通りである。
【0037】
図3は、本実施例の特徴となる芯材11の要部拡大斜視図である。同図において、湿式グラスウールシート2a,2bと乾式グラスウールシート3a,3bは、何れもその側面を揃えた状態で、外被材14の内部に積層される。特に芯材11の側面21,22が交わる角部23に注目すると、ここでは湿式グラスウールシート2a,2bの角部が切除されておらず、そのまま芯材11の角部23として残っているのに対し、乾式グラスウールシート3a,3bの角部は厚さ方向にC面で切除されており、それにより角部23の内方に断面矩形の切除面24が形成される。角部を切除せずに残すのは、どのグラスウールシート2a,2b,3a,3bであっても構わないが、少なくとも1枚以上は角部を切除せずに残すようにし、残りを厚さ方向にC面で切除すればよい。
【0038】
このように、湿式グラスウールシート2a,2bの角部を切除せずに残す一方で、乾式グラスウールシート3a,3bの角部を厚さ方向にC面で切除すると、外被材14の内部を減圧する真空引きを行なう際に、初めに外被材14の内平面と芯材11の外側部をなす湿式グラスウールシート2a,2bの外平面との間の空間部が吸気され、その後で芯材11の各グラスウールシート2a,2b,3a,3b中の空気が吸引される過程で、外被材14の耳部15が重合して盛り上がろうとすると、その盛り上がりが切除面24に向けて引き込まれて、耳部15にシワが発生しない。しかも完成した真空断熱材1は、角部を残した湿式グラスウールシート2a,2bによって、その外形が平面視四角形状を維持しているので、角部に必要な断熱範囲を維持した真空断熱材1を得ることができる。
【0039】
図4は、
図3に示す芯材11を使用して実際に製造された真空断熱材1の角部の写真である。同図からも明らかなように、外被材14の耳部15には、芯材11の角部23を起点としたシワが発生していない。しかも、外被材14の内部を芯材11で減圧密封した状態の真空断熱材1は、角部を残して必要な断熱範囲を確保していることがわかる。
【0040】
次に、本実施例の実験結果を、表1と
図5に基づき説明する。この実験では、厚さ4.5mmの湿式グラスウールシート2a,2bと乾式グラスウールシート3a,3bを、長さ1000mm×幅450mmの寸法で裁断し、2枚の乾式グラスウールシート3a,3bの角部四隅を厚さ方向にC面で切除した上で、その乾式グラスウールシート3a,3bを、角部を切除せずに残した湿式グラスウールシート2a,2bで挟んで、4枚積層の芯材11を構成した。なお、角部四隅を厚さ方向にC面で切除した乾式グラスウールシート3a,3bには、吸着剤12を配置するための角孔状の開口18を設けた。芯材11を乾燥した後、吸着剤12となる質量20gの酸化カルシウムを開口18に2個配置し、これらをPET(ポリエチレンテレフタレート),ON(ナイロン:登録商標),AL(アルミニウム)およびHDPE(高密度ポリエチレン)を順に積層したラミネート袋からなる外被材14に入れて、内部を数Paに減圧し、外被材14の開口を封止することで、完成状態の真空断熱材1を製造した。得られた真空断熱材1の厚さは、約12mmである。
【0041】
【表1】
【0042】
表1は、切除面24を有する乾式グラスウールシート3a,3bのC面寸法を、C10mm,C20mm,C30mm,C50mm,C80mm,C100mmに設定して製造した場合に、真空断熱材1の角部に発生するシワの長さと、全てのグラスウールシート2a,2b,3a,3bの角部を切除せずに製造した場合(C0mm)に、真空断熱材1の角部に発生するシワの長さとを比較測定した結果である。またこれに対応するグラフを、
図5に示す。
【0043】
得られた結果は、全てのグラスウールシート2a,2b,3a,3bの角部を切除せずに製造した場合には、外被材14の耳部15に形成されるシワの長さが20mmであるのに対し、C20mmの場合はシワの長さが8mmであり、C30mmの場合はシワの長さが6mmであり、C50mmの場合はシワの長さが4mmであり、C80mmの場合はシワの長さが3mmであり、C100mmの場合はシワの長さが3mmであった。このことから、全てのグラスウールシート2a,2b,3a,3bの角部を切除せずに製造したものに対して、乾式グラスウールシート3a,3bのC面寸法をC20mm以上にすると、シワ長さが60%〜85%も短くなることが確認された。この結果から、C面寸法がC20mm以上であれば、外被材14に加わるストレスが大幅に低減され、ピンホールやクラックの発生による真空破壊を防止できる。
【0044】
なお、C面寸法が10mmの場合はシワの長さが15mmであり、全てのグラスウールシート2a,2b,3a,3bの角部を切除せずに製造したものに対して25%の低減に留まり、効果が少なかった。このことから、乾式グラスウールシート3a,3bの角部を切除した面取り寸法がC20mm以上あれば、真空断熱材1の角部で必要な断熱範囲を確保しつつ、シワ発生による真空破壊を効果的に防止することができる。
【0045】
図6は、
図3に示す芯材11を上面から見た図である。上述したように、乾式グラスウールシート3a,3bの角部はC20mm以上のC面寸法tで切除され、角部を残した湿式グラスウールシート2a,2bに対して、芯材11の角部23の内方に切除面24が形成される。また乾式グラスウールシート3a,3bは、切除面24と、その切除面24に交わる芯材11の側面21,22(乾式グラスウールシート3a,3bの側面)とのなす角度α1,α2が、何れも鈍角となるように切除形成される。
【0046】
このような形状の乾式グラスウールシート3a,3bと、角部を切除していない湿式グラスウールシート2a,2bとの組み合わせにより、完成した真空断熱材1は外被材14に加わるストレスが大幅に低減され、ピンホールやクラックの発生による真空破壊を防止できる。また、湿式グラスウールシート2a,2bはその角部を切除せずに残しているので、真空断熱材1の角部で必要な断熱範囲を確保しつつ、シワ発生による真空破壊を効果的に防止できる。
【0047】
なお
図7は、乾式グラスウールシート3a,3bの切除面24と、その切除面24に交わる別な切除面24’とのなす角度αが鋭角になった例で、この場合はC面寸法tがC20mm以上であっても、鋭角に形成された部分で外被材14の耳部15に大きなシワが発生するので、切除面24と、その切除面24に交わる面とのなす角度を鈍角に維持できるC面寸法tにすることが必要である。
【0048】
図8は、
図3に示す芯材11を上面から見た別な例の図である。乾式グラスウールシート3a,3bは、その角部を厚さ方向に略三角形状で切除される。つまり、切除された部分の平面視形状は、二等辺三角形や直角三角形の三角形状である。このときに形成される切除面24の面積は2cm
2以上とし、また切除面24と、その切除面24に交わる面(乾式グラスウールシート3a,3bの側面)とのなす角度α1,α2は、何れも鈍角となるようにする。この場合、乾式グラスウールシート3a,3bの切除面24と長手方向側面とのなす角度α1と、乾式グラスウールシート3a,3bの切除面24と短手方向側面とのなす角度α2は、同一である必要はないが、角度α1に対応して形成されるC面寸法t1と、角度α2に対応して形成されるC面寸法t2は、何れもC20mm以上となるようにする。
【0049】
このような形状の乾式グラスウールシート3a,3bと、角部を切除していない湿式グラスウールシート2a,2bとの組み合わせにより、完成した真空断熱材1は外被材14に加わるストレスが大幅に低減され、ピンホールやクラックの発生による真空破壊を防止できる。また、湿式グラスウールシート2a,2bはその角部を切除せずに残しているので、真空断熱材1の角部で必要な断熱範囲を確保しつつ、シワ発生による真空破壊を効果的に防止できる。
【0050】
なお前記
図7に示すように、乾式グラスウールシート3a,3bの切除面24と、その切除面24に交わる別な切除面24’とのなす角度αが鋭角になると、切除面24の面積が2cm
2以上であって、且つC面寸法tがC20mm以上であっても、鋭角に形成された部分で外被材14の耳部15に大きなシワが発生するので、切除面24と、その切除面24に交わる面とのなす角度を鈍角に維持できるC面寸法tにすることが必要である。
【0051】
以上のように、本実施例の芯材11は、1枚以上の湿式グラスウールシート2a,2bで角部を切除せずに残し、残りの乾式グラスウールシート3a,3bで角部を厚さ方向に切除して形成され、残りの乾式グラスウールシート3a,3bは、その角部を切除した面取り寸法がC20mm以上であり、切除面24と交わる面とのなす角が鈍角であり、且つ切除部の形状が略三角形状で、切除面24の面積が2cm
2以上となっている。
【0052】
このようにすると、完成した真空断熱材1は外被材14に加わるストレスが大幅に低減され、ピンホールやクラックの発生による真空破壊を防止できる。また、積層した一部の湿式グラスウールシート2a,2bはその角部を切除せずに残しているので、真空断熱材1の角部で必要な断熱範囲を確保できる。したがって、外被材14のシワ発生による真空破壊を防止して信頼性が高く、しかも必要な断熱範囲を維持できる真空断熱材1を提供することができる。
【実施例3】
【0053】
図9は、本発明の第3実施例であって、上記第1実施例や第2実施例における真空断熱材1を、ペットボトルP用のホルダ31に適用したものを示している。同図において、液体の収容容器であるペット
ボトルPは、底部P1と、底部P1の周縁から立ち上がる筒状の幅広な側部P2と、側部P2の上端から立ち上がるテーパー状の幅が徐々に狭くなる肩部P3と、肩部P3上端から立ち上がり、外側に雄螺子部(図示せず)を有する筒状の幅狭な口部P4と、口部4の雄螺子部に螺合する雌螺子部(図示せず)を有する開閉自在なキャップP5とにより構成され、底部P1,側部P2および肩部P3からなる有底筒状のボトル本体に、口部P4の開口を通じて各種の液体が収容される。
【0054】
一方、ホルダ31は前記ペットボトルPに取外し可能に装着される形状を有し、ここでは肩部P3に対向する上部部材32と、側部P2に対向する胴部部材33と、底部P1に対向する下部部材34とにより外郭を構成している。上部部材32と胴部部材33は、第1のネジ込み部35により着脱できるようになっており、また胴部部材33と下部部材34も、別な第2のネジ込み部36により着脱できるようになっている。そして、上部部材32,胴部部材33,下部部材34の内部には、第1実施例や第2実施例における真空断熱材1が、ペットボトルPの外面を取り囲むようにそれぞれ分散して配設される。
【0055】
上部部材32は、ペットボトルPの肩部P3に密着する舌片状のゴムパッキン41により、その外形の一部を構成している。また下部部材34は、床面などに載置される皿状の台座42と、台座42の上部にあって真空断熱材1を収容する天板44と、台座42と天板44との間に設けた弾性体としてのバネ45とを備えてなり、ホルダ31をペットボトルPに装着した状態で、ペットボトルPの底部P1が載置される天板44を、ペットボトルPと共にバネ45の弾性反発力によって上方に付勢するようになっている。前記ゴムパッキン41は、口部P4からキャップP5を開けようとするペットボトルPの開封時に、ホルダ31に対してペットボトルPが空回りなどをしないように、ペットボトルPの肩部P3を押え付ける空転防止部として作用する。
【0056】
上記構成において、ホルダ31をペットボトルPに装着する場合は、まず床面などに載置した下部部材34の天板44の上にペットボトルPを載せ、そのペットボトルPの側部P2を取り囲むように、第2のネジ込み部36を利用して下部部材34の上部に胴部部材33をネジ込む。さらにこの状態から、ペットボトルPの肩部P3を取り囲むように、第1のネジ込み部35を利用して胴部部材33の上部に上部部材32をネジ込むことで、上下どちらからでもペットボトルPへのホルダ31の収納が簡単に完了する。
【0057】
なお、この手順はあくまでも一例であり、例えば先に胴部部材33を下部部材34にネジ込んでおいてから、ペットボトルPを天板44の上に載せて、それから胴部部材33の上部に上部部材32をネジ込んだり、ペットボトルPを天板44の上に載せた後、予め胴部部材33の上部に上部部材32をネジ込んでおいたものを、下部部材34にネジ込んだりしてもよい。またホルダ31を分解する手順も、ペットボトルPへの装着手順と逆の要領で簡単に行える。このため、例えば収納するペットボトルPの収容物がこぼれた場合でも、第1のネジ込み部35および第2のネジ込み部36によって、ホルダ31を上下に分解でき、清掃性に優れたホルダ31を提供できる。
【0058】
ホルダ31をペットボトルPに装着した状態では、バネ45の弾性反発力によって天板44と共にペットボトルPが上方に押し上げられ、その肩部P3が上部部材32のゴムパッキン41に密着するので、多種多様のペットボトルPに対応して、そのペットボトルPの近傍周囲に真空断熱材1を配置することができる。
【0059】
さらにホルダ31には、例えば胴部部材33の外側に着脱可能なシート状の透明枠51が一枚配設される。これにより、透明枠51と胴部部材33の外面との間に、絵や写真などをはさんで、ホルダ31を利用する個人のお気に入りの外観にアレンジすることが可能になる。
【0060】
このように本実施例では、前記第1実施例や第2実施例の真空断熱材1を使用し、容器であるペットボトルPに装着されるホルダ31を提供している。このような真空断熱材1を採用することにより、従来のものよりもホルダ31を軽量化することができ、またペットボトルPの底部や上部にも真空断熱材1を分散して配置できるため、ペットボトルPの収容物である液体を外気と効果的に保冷断熱することが可能になる。このことにより、軽量化を図ると共に保冷断熱性に優れる真空断熱材1を使用したホルダ31を提供できる。
【0061】
また本実施例では、ペットボトルPを囲む本体としての下部部材34に、弾性体であるバネ45によりペットボトルPに当接する摺動部としての天板44を設けている。
【0062】
このようにすることで、バネ45によりペットボトルPに当接する方向に天板44が摺動して、ホルダ31をペットボトルPにがたつきなく装着することができる。そのため、多種多様なペットボトルPにホルダ31を対応させることが可能になる。さらに天板44に真空断熱材1を設けることで、天板44と共に真空断熱材1が摺動して、ペットボトルPの形状に拘らず、そのペットボトルPの底部P1近傍に真空断熱材1を配置することが可能になる。
【0063】
またホルダ31として、本体である上部部材32,胴部部材33,下部部材34が複数の分解可能な部品で構成される。
【0064】
このようにすることで、例えばホルダ31に収納されたペットボトルPの収容物がこぼれた場合でも、ホルダ31を複数の部品に分解することができ、清掃性に優れたホルダ31を提供できると共に、上下どちらからでもペットボトルPの収納が可能になる。
【0065】
また本実施例では、本体である胴部部材33の外面に透明体としての透明枠51を設けている。
【0066】
このようにすることで、胴部部材33と透明枠51との間に、絵や写真などを挿入することができ、ホルダ31を自分好みの外観にアレンジできる。
【0067】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、各実施例に示す真空断熱材1は、平面視で四角形以外の形状であっても構わない。また第3実施例におけるホルダ31を、ペットボトルP以外の各種容器に適用させることも可能である。