(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メインフレームの厚肉の上壁部は、その上面の延在方向に沿う両縁部から下方に延出する一対の延出部を有し、当該一対の延出部に前記メインフレームの薄肉の両側壁部との接合により前記メインフレームの両側面を形成させており、
前記一対の延出部は、いずれか一方の延出長がいずれか他方の延出長よりも長く形成されることを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車のフレーム構造。
前記メインフレームの延在方向における少なくとも一端側においては、前記一対の延出部のうち、延出長の短い延出部が端部に向って延出長が長くなるように形成され、延出長の長い延出部が当該端部に向って延出長が短くなるように形成されることを特徴とする請求項4に記載の自動二輪車のフレーム構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動二輪車においては、路面からの突き上げやブレーキの制動力等によってメインフレームにピッチング方向(上下方向)の荷重が発生する。特許文献1に記載の自動二輪車では、メインフレーム全体を薄板状の鋼板素材で形成して軽量化を実現しているため、ピッチング方向の大きな荷重に対しては十分な剛性を確保することができないおそれがある。この場合、メインフレーム全体を鋳造により形成することで、ピッチング方向の曲げ荷重に対する剛性を確保することが考えられるが、メインフレーム全体の重量が増加するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、メインフレームの軽量化を図りつつ、ピッチング方向の曲げ荷重に対する剛性を確保することができる自動二輪車のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動二輪車のフレーム構造は、ステアリングシャフトを支持するヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車体後方に延在する左右一対の断面中空状のメインフレームとを備え、前記メインフレームの上壁部及び底壁部は、前記メインフレームの両側壁部よりも厚肉に形成され
、前記メインフレームには、エンジンの前部を懸架するエンジン懸架部が設けられ、前記メインフレームの底壁部は、前記エンジン懸架部の車体前方において前記エンジン懸架部の車体後方よりも厚肉に形成されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、路面からの突き上げやブレーキの制動力によってメインフレームに作用するピッチング方向の曲げ荷重の影響が大きなメインフレームの上壁部及び底壁部を厚肉に形成することで、メインフレーム全体の重量を大幅に増加
させることなく効果的に剛性を高めることができる。また、メインフレームの上壁部及び底壁部の厚肉を調整することで、メインフレームの剛性を適宜調整することができる。
また、エンジン懸架部の車体後方ではエンジンが補強部材(フレーム)の役割を果たすため、底壁部のエンジン懸架部の車体後方を薄肉に形成することができる。
【0009】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記メインフレームの後部に接続される断面中空状のボディフレームを備え、前記ボディフレームの側壁部は、前記メインフレームの側壁部よりも厚肉に形成され、前記メインフレームの厚肉の上壁部は、その上面の延在方向に沿う両縁部から下方に延出する一対の延出部を有し、当該一対の延出部に前記メインフレームの薄肉の両側壁部と共に前記メインフレームの両側面を形成させており、前記一方の延出部の延出長が、前記メインフレームの延在方向の中間部分よりも少なくとも延在方向の一端側において長く形成される。この構成によれば、メインフレームの厚肉の延出部とボディフレームの厚肉の側壁部又はヘッドパイプとの接合領域を増やして、接合部分における剛性を高めることができる。
【0010】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記メインフレームは、前記上壁部、前記底壁部及び前記側壁部がそれぞれ別部材で形成される。この構成によれば、複数の別部材を接合してメインフレームが形成されるため、必要に応じて部材毎に成形方法を変えることができ、メインフレームの設計自由度を向上できる。また、必要な部材だけの厚みを調整できるため、メインフレーム全体を鋳造により形成する構成と比較してコストを低減することができる。
【0011】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記メインフレームの厚肉の上壁部は、その上面の延在方向に沿う両縁部から下方に延出する一対の延出部を有し、当該一対の延出部に前記メインフレームの薄肉の両側壁部との接合により前記メインフレームの両側面を形成させており、前記一対の延出部は、いずれか一方の延出長がいずれか他方の延出長よりも長く形成される。この構成によれば、一対の延出部と各側壁部との接合面が同一平面内に配置されると、同一平面内で作用するピッチング方向の曲げ荷重を受けて破断し易くなるが、一対の延出部の延出長が異なることでピッチング方向の曲げ荷重に対する接合部分の強度を高めることができる。
【0012】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記メインフレームの延在方向における少なくとも一端側においては、前記一対の延出部のうち、延出長の短い延出部が端部に向って延出長が長くなるように形成され、延出長の長い延出部が当該端部に向って延出長が短くなるように形成される。この構成によれば、メインフレームの一対の延出部と各側壁部との接合面が同一平面内となる領域を最小にした状態で、一対の延出部の延出長の長さを逆転させることができる。
【0013】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記メインフレームは、前記ヘッドパイプから左右に広がりエンジンを包むように湾曲しており、前記一対の延出部の延出長が一致する位置が、前記メインフレーム間の最大幅位置よりも車体後方に設けられる。この構成によれば、メインフレームの一対の延出部と各側壁部との接合面が同一平面内となる位置が、曲げ荷重が最大となるメインフレーム間の最大幅位置から後方に外される。よって、メインフレームの変形による溶接部分の破断を抑制できる。
【0014】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記一対の延出部の延出長が一致する位置が、前記メインフレームにおいて前記エンジンを懸架するエンジン懸架部よりも車体後方に設けられる。この構成によれば、エンジン懸架部の車体後方ではエンジンが補強部材の役割を果たすため、メインフレームの変形が少ない。よって、メインフレームの一対の延出部と各側壁部との接合面が同一平面内となる位置が、メインフレームの変形の少ない位置に配置されることで溶接部分の破断を抑制できる。
【0015】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記メインフレームの側壁部は、複数の部材を接合して形成される。この構成によれば、複数の部材を接合してメインフレームの側壁部が形成されるため、側壁部の形状の自由度を高めることができる。例えば、側壁部に開口部を設けて、車種に応じてメインフレームの剛性を調整することも可能である。
【0016】
また本発明の上記自動二輪車のフレーム構造において、前記複数の部材は、それぞれ厚みが異なる。この構成によれば、複数の部材の厚みを変えることによって、メインフレームに対してより適切な剛性を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メインフレームの軽量化を図りつつ、ピッチング方向の曲げ荷重に対する剛性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明の自動二輪車のフレーム構造をスポーツタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、本発明の自動二輪車のフレーム構造を、他のタイプの自動二輪車にも適用可能である。
【0020】
図1を参照して、本本実施の形態に係る自動二輪車全体の概略構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。なお、以下の図においては、車体前方を矢印FR、車体後方を矢印REでそれぞれ示す。
【0021】
図1に示すように、自動二輪車1は、パワーユニット、電装系等の各部を搭載するアルミ合金製又は鋼製の車体フレーム2を備えている。車体フレーム2のメインフレーム22は、前端に位置するヘッドパイプ21(
図2参照)から後方に向けて左右二股に分岐して延在する。左右一対のメインフレーム22の下方には、エンジン3の前方が懸架されている。メインフレーム22の上部には、燃料タンク4が配置される。メインフレーム22の後部には、エンジン3の後方を懸架する左右一対のボディフレーム23が接合されている。
【0022】
ボディフレーム23の上部には、車体外装としてシートカウル8が設けられている。シートカウル8の上部には、燃料タンク4の後方に運転者シート9が配置されている。運転者シート9の下方には、フットレスト11が設けられている。車体左側のフットレスト11の前方には、変速用のシフトペダル12が設けられ、車体右側のフットレスト11の前方には、後輪6用のブレーキペダル(不図示)が設けられている。
【0023】
車体フレーム2の前部上側には、ヘッドパイプ21に設けられたステアリングシャフトを介して一対のフロントフォーク13が操舵可能に支持されている。一対のフロントフォーク13には前輪緩衝用のサスペンションが内装されている。一対のフロントフォーク13の上方には、前輪5操舵用のハンドル(不図示)が設けられている。一対のフロントフォーク13の下部には、前輪5が回転可能に支持されている。
【0024】
ボディフレーム23の下側には、スイングアーム7が上下方向に揺動可能に連結されており、車体フレーム2及びスイングアーム7間には後輪緩衝用のサスペンション(不図示)が取り付けられている。スイングアーム7の後部には、後輪6が回転可能に支持される。後輪6は、ドライブチェーン14を介してエンジン3の出力軸に連結されおり、いわゆるチェーンドライブ式の二次減速機構を介してエンジン3からの動力が伝達される。
【0025】
エンジン3は、例えば、並列4気筒エンジンと変速機(トランスミッション)とからなり、横置き状態でメインフレーム22及びボディフレーム23に懸架される。エンジン3には、インテークパイプ(不図示)を介して空気が取り込まれ、燃料噴射装置にて空気と燃料とが混合されて燃焼室に供給される。燃焼室内での燃焼後の排気ガスは、エンジン3から下方に延出されたエキゾーストパイプ31を経てマフラ32から排気される。また、メインフレーム22には、車体外装として流線形のカウリング15が設けられている。
【0026】
図2から
図4を参照して、本実施の形態に係る車体フレームについて説明する。
図2は、本実施の形態に係る車体フレームの斜視図である。
図3は、本実施の形態に係る車体フレームの側面図である。
図4は、本実施の形態に係る車体フレームの上面図である。
【0027】
図2から
図4に示すように、車体フレーム2は、ヘッドパイプ21から後方に延出する左右一対のメインフレーム22を有している。一対のメインフレーム22は、それぞれ側面視においてヘッドパイプ21からボディフレーム23に延びるフレーム本体部41と、ヘッドパイプ21から下方に延びるダウンフレーム部42とに分岐している。一対のフレーム本体部41は、ヘッドパイプ21からエンジン3の上方を通るようにして後方に延在する。また、一対のフレーム本体部41は、ヘッドパイプ21から車体後方に向って左右に広がるように湾曲し、途中から徐々に近接するように延在する。
【0028】
一対のダウンフレーム部42は、ヘッドパイプ21からエンジン3の前方部に向って後斜め下方に延在する。一対のダウンフレーム部42の延在方向の下端には、エンジン3の前方部を支持するエンジンマウント(エンジン懸架部)226が設けられている。このエンジンマウント226にエンジン3の前方部が懸架されることで、エンジン3自体がメインフレーム22に対する補強部材としての役割を果たしている。また、ダウンフレーム部42の下側は、補強用の補助フレーム部43を介してフレーム本体部41に連結されている。
【0029】
また、一対のメインフレーム22には、前側に小型の開口部51が形成され、後側に大型の開口部52が形成されている。大小の開口部51、52は、一対のメインフレーム22の剛性を調整するものであり、車種に求められる操縦性に応じて大きさが調整される。例えば、開口部51、52が大きいと柔軟性が高められ、開口部51、52が小さいと直進性が高められる。これら開口部51、52は、後述するアウタフロントパネル223、アウタリヤパネル224、インナパネル225を交換することで容易に調整することが可能となっている。
【0030】
一対のボディフレーム23は、側面視略三角形状に形成されており、メインフレーム22の後部に接合されている。一対のボディフレーム23は、三角形の三辺を形成するように、アッパフレーム部44、フロントフレーム部45、リヤフレーム部46を有している。また、一対のボディフレーム23間は、前方側においてセンタブリッジ25により連結され、後方側においてアッパブリッジ26により連結され、下方側においてロアブリッジ27により連結されている。このように、ボディフレーム23間は、頂点部分に対応する三カ所においてブリッジ25、26、27により補強されている。
【0031】
一対のアッパフレーム部44は、シートカウル8を支持するようにメインフレーム22の後部から後方に延在する。一対のフロントフレーム部45は、一対のアッパフレーム部44の前側からエンジン3の後方部に沿って斜め下方に延在する。一対のフロントフレーム部45の延在方向の途中部分及び下端部には、エンジン3の後方部を支持するエンジンマウント54、55が形成されている。このエンジンマウント54、55にエンジン3の後方部が懸架されることで、エンジン3自体がボディフレーム23に対する補強部材としての役割を果たしている。
【0032】
また、一対のフロントフレーム部45には、エンジンマウント54、55間にスイングアーム7を揺動可能に支持するスイングアームピボット56が形成されている。フロントフレーム部45の下側は、補強用のリヤフレーム部46を介してアッパフレーム部44に連結されている。アッパブリッジ26は、後輪緩衝用のサスペンションの上部が取り付けられる。ロアブリッジ27は、フロントフレーム部45のエンジンマウント55と共にエンジン3を懸架するエンジンマウントが形成されている。
【0033】
一対のボディフレーム23には、上側に大型の開口部58が形成され、下側に小型の開口部59が形成されている。大小の開口部58、59は、一対のメインフレーム22と同様に、ボディフレーム23の剛性を調整している。
【0034】
このように構成された一対のメインフレーム22及び一対のボディフレーム23は、複数のフレーム構成部材を接合して形成される。各メインフレーム22は、縦長中空形状の断面を有しており、上壁部及び底壁部を形成するアッパサポート221とロアサポート222との間に、側壁部を形成するアウタフロントパネル223、アウタリヤパネル224、インナパネル225を挟み込むことにより形成されている。アッパサポート221は、アルミ系プレス材により、断面視において下面を開放した溝型形状(コの字形状)に形成されている。また、アッパサポート221は、上面視において、前端部から中間部にかけて円弧状に湾曲し、中間部から後端部にかけて直線状に延在する。
【0035】
ロアサポート222は、アルミ系プレス材により、断面視において上面を開放した溝型形状(コの字形状)に形成されている。また、ロアサポート222は、上面視において前端部から後端部にかけて円弧状に湾曲している。アウタフロントパネル(側壁部)223は、アルミ系プレス材により、アッパサポート221及びロアサポート222の略前半側の外壁部に沿うように形成されている。アウタフロントパネル223には、剛性値調整用の小型の開口部51が形成されている。アウタリヤパネル(側壁部)224は、アルミ系プレス材により、アッパサポート221及びロアサポート222の略後半側の外壁部に沿うように形成されている。アウタリヤパネル224には、剛性値調整用の大型の開口部52が形成されている。
【0036】
インナパネル(側壁部)225は、アルミ系プレス材により、アッパサポート221及びロアサポート222の内壁部に沿うように形成されている。インナパネル225は、アウタフロントパネル223の開口部51及びアウタリヤパネル224の開口部52に対応して開口されている。ロアサポート222の後端部、アウタリヤパネル224及びインナパネル225の下端部には、エンジンマウント226が接合されている。これらメインフレーム22のフレーム構成部材は、レーザ溶接等により接合されて一体化される。この場合、メインフレーム22の各フレーム構成部材は、接合面が長くなるように形成されている。
【0037】
例えば、アッパサポート221とアウタパネル223、224との接合面S1は、側面視において曲線状に延在することで長く取られている。同様に、アッパサポート221とインナパネル225との接合面S2も、側面視において曲線状に延在することで長く取られている。アウタフロントパネル223とアウタリヤパネル224との接合面S3は、側面視においてS字状に延在することで長く取られている。
【0038】
このように、メインフレーム22は、複数のフレーム構成部材の接合により形成されるため、フレーム構成部材毎に厚みを変更することが可能である。本実施の形態においては、アッパサポート221及びロアサポート222を、アウタフロントパネル223、アウタリヤパネル224、インナパネル225よりも厚肉に形成することで、ピッチング方向の曲げ荷重に対するメインフレーム22の剛性が高められている。よって、メインフレーム22全体の重量を大幅に増加させることなく効果的に剛性を高めている。
【0039】
一対のボディフレーム23は、縦長中空形状の断面を有し、アウタボディパネル231にインナボディパネル232を接合して構成される。アウタボディパネル231は、アルミ系鋳造材又はアルミ系鍛造材により、周壁部及び多数の補強リブを設けて形成されている。また、アウタボディパネル231には、剛性値調整用の大小の開口部58、59、スイングアームピボット56、エンジンマウント54、55が形成されている。インナボディパネル232は、アルミ系プレス材により、アウタボディパネル231に合わせて形成されている。アウタボディパネル231及びインナボディパネル232は、レーザ溶接等で接合される。
【0040】
このように、ボディフレーム23は、複数のフレーム構成部材の接合により形成されるため、フレーム構成部材毎に厚みを変更することが可能である。本実施の形態においては、アウタボディパネル231をインナボディパネル232よりも厚肉に形成している。なお、アウタリヤパネル224に接合されるアウタボディパネル231は、アウタリヤパネル224よりも厚肉に形成され、アッパサポート221と略同一の厚みに形成されている。
【0041】
ヘッドパイプ21は、アルミ系プレス材により形成されており、補強用のリーンフォースメント211が取り付けられている。また、センタブリッジ25は、アルミ系パイプ材により形成され、アッパブリッジ26及びロアブリッジ27は、アルミ系鍛造材により形成されている。なお、各フレーム構成部材は、アルミ系材料に限定されるものではなく、鉄系材料やその他の材料を用いてもよい。また、各フレーム部材は、上記した成形材に限定されるものではなく、要求される機能に応じて適切な成形法で形成された材料を用いればよい。
【0042】
そして、ヘッドパイプ21は、リーンフォースメント211が接合されて、一対のメインフレーム22の先端部に接合される。一対のボディフレーム23は、センタブリッジ25、アッパブリッジ26、ロアブリッジ27により連結されて、一対のメインフレーム22の後端部に接合される。なお、メインフレーム22に対するボディフレーム23の接合状態の詳細については後述する。
【0043】
図5を参照して、アッパサポート及びロアサポートについて詳細に説明する。
図5は、本実施の形態に係るヘッドパイプに固定されたアッパサポート及びロアサポートの斜視図である。なお、
図5Aは、アッパサポート及びロアサポートを上方から見た図であり、
図5Bは、アッパサポート及びロアサポートを下方から見た図である。また、
図5Cは、
図5AのA−A線及びB−B線に沿った断面図である。
【0044】
図5A、
図5Bに示すように、アッパサポート221は、ヘッドパイプ21の上部から後方に延在し、メインフレーム22の上面を形成する上壁部241を有している。上壁部241の延在方向に沿う両端部からは、延出部としての外壁部242及び内壁部243が下方に向って延出している。外壁部242は、アウタフロントパネル223及びアウタリヤパネル224に接合され、メインフレーム22の外側面を形成する。内壁部243は、インナパネル225に接合され、メインフレーム22の内側面を形成する。外壁部242は、延在方向の両端側では延出長が長く、延在方向の途中部分では延出長が短く形成されている。内壁部243は、延在方向の前端側及び途中部分では延出長が長く形成され、延在方向の後端側では延出長が短く形成されている。
【0045】
具体的には、
図5Cに示すように、アッパサポート221の延在方向の途中部分では、外壁部242の延出長L1が内壁部243の延出長L2よりも短く形成されている。一方、
図5Dに示すように、アッパサポート221の延在方向の後端側では、外壁部242の延出長L1が内壁部243の延出長L2よりも長く形成されている。この場合、外壁部242の延出長L1は、後端部に向って長くなり、内壁部243の延出長L2は、後端部に向って短くなっている。このように、アッパサポート221の延在方向の後端側では、内壁部243と外壁部242の延出長が逆転している。
【0046】
ロアサポート222は、ヘッドパイプ21の上部から後方に延在し、メインフレーム22の下面を形成する底壁部246を有している。底壁部246の延在方向に沿う両縁部からは、外壁部247及び内壁部248が上方に向って延出している。外壁部247は、アウタフロントパネル223及びアウタリヤパネル224に接合され、メインフレーム22の外側面を形成する。内壁部248は、インナパネル225に接合され、メインフレーム22の内側面を形成する。ロアサポート222の外壁部247及び内壁部248の延出長は、アッパサポート221と異なり、同じ長さに形成されている。
【0047】
以下、
図6及び
図7を参照して、メインフレームの接合状態について説明する。
図6は、本実施の形態に係るメインフレームの接合状態の説明図である。
図7は、本実施の形態に係るメインフレームの低強度ポイントの説明図である。なお、
図6Aは、メインフレームの側面図、
図6Bは、
図6AのC−C線、D−D線、E−E線に沿った断面図である。
【0048】
図6に示すように、メインフレーム22は、厚肉に形成されたアッパサポート221とロアサポート222との間に、薄肉に形成されたアウタフロントパネル223、アウタリヤパネル224、インナパネル225を挟み込んで構成される。アッパサポート221の外壁部242及び内壁部243には、それぞれ各パネル223、224、225を取り付けるためのラップ代249が形成されている。同様に、ロアサポート222の外壁部247及び内壁部248にも、それぞれ各パネル223、224、225を取り付けるためのラップ代249が形成されている。
【0049】
アウタフロントパネル223、アウタリヤパネル224、インナパネル225は、アッパサポート221及びロアサポート222のラップ代249に取り付けられ、レーザ溶接等により接合される。このとき、アウタフロントパネル223及びアウタリヤパネル224も、レーザ溶接等により接合される。このようにして接合されたメインフレーム22は、上壁部及び底壁部が厚肉に形成され、側壁部が薄肉に形成される。この構成により、ピッチン方向の曲げ荷重の影響が大きな部分を厚肉にして、曲げ荷重に対するメインフレーム22の剛性を効果的に高めている。
【0050】
また、本実施の形態では、メインフレーム22が複数のフレーム構成部材により形成されるため、アッパサポート221及びロアサポート222だけを厚肉に形成できる。よって、メインフレーム22の重量増加を抑えた状態で、ピッチング方向の曲げに対する剛性を高めることができる。この場合、ロアサポート222は、エンジンマウント226の前方側にのみ延在し、エンジンマウント226の後方側には延在していない。したがって、エンジンマウント226の後方側では、メインフレーム22の上壁部だけが厚肉に形成されている。
【0051】
しかしながら、エンジンマウント226の後方側では、エンジンマウント226によって懸架されるエンジン3がフレームの役割を果たすため、メインフレーム22の底壁部が薄肉に形成されても十分な剛性を確保することができる。なお、ロアサポート222をエンジンマウント226の後方側に延在させて、ピッチング方向の曲げ荷重に対する剛性をさらに高めることも可能である。
【0052】
また、上述したように、アッパサポート221の外壁部242の延出長L1と内壁部243の延出長L2の大きさが一致していない。よって、アッパサポート221の外壁部242の接合面と内壁部243の接合面とが高さ方向に離間されている。例えば、
図6BのD−D断面に示すように、アッパサポート221の延在方向の略中間部分では、外壁部242とアウタリヤパネル224との接合面が、内壁部243とインナパネル225との接合面よりも高い位置となっている。また、
図6BのE−E断面に示すように、アッパサポート221の延在方向の後端側では、外壁部242とアウタリヤパネル224との接合面が、内壁部243とインナパネル225との接合面よりも低い位置となっている。
【0053】
このように、アッパサポート221の外壁部242の接合面と内壁部243の接合面が、同一平面内に位置しないように配置されている。これは、車体フレーム2に対してピッチング方向の曲げ荷重が作用する場合には、接合強度(溶接強度)の弱い外壁部242の接合面と内壁部243の接合面とが同一平面内にあると、この接合面を起点として破断し易いからである。すなわち、本実施の形態では、接合強度の弱い箇所が同一平面内に位置付けられないようにすることで、同一平面内に作用するピッチング方向の荷重による破断を抑制している。
【0054】
この場合、D−D線に示す位置とE−E線に示す位置とでは、アッパサポート221の外壁部242の接合面と内壁部243の接合面との高さ位置が逆転している。よって、
図7に示すように、アッパサポート221の外壁部242の接合面と内壁部243の接合面との高さが一致する低強度ポイントP1が存在する。具体的には、アッパサポート221の延出方向の後端側において、側面視において内壁部243の接合面と外壁部242の接合面とが形成するX字状の交点が低強度ポイントP1になっている。この低強度ポイントP1はピッチング方向の荷重による破断の起点になり易いが、本実施の形態ではメインフレーム22の応力集中箇所を避けるように配置されている。
【0055】
本実施の形態では、一対のメインフレーム22間の最大幅位置P2で、ピッチング方向の曲げ荷重が最大となっている。低強度ポイントP1は、この最大幅位置P2から後方に外れた位置に配置されることで、大きな曲げ荷重が作用することが抑制されている。また、低強度ポイントP1は、エンジン懸架位置P3よりも後方に外れた位置に配置されている。このエンジン懸架位置P3よりも後方では、エンジン3がフレームの役割を果たすため、メインフレーム22の変形が少ない。このような構成により、メインフレーム22の変形によって低強度ポイントP1が破断の起点となることを抑制している。
【0056】
図8を参照して、メインフレームとボディフレームとの接合状態について説明する。
図8は、本実施の形態に係るメインフレームの接合状態の説明図である。なお、
図8Aは、メインフレーム外面側とボディフレームとの接合状態、
図8Bは、メインフレーム内面側とボディフレームとの接合状態、
図8Cは、比較例に係るメインフレーム外面側とボディフレームとの接合状態である。
【0057】
図8Aに示すように、本実施の形態のメインフレーム22の外面側では、アッパサポート221の外壁部242及びアウタリヤパネル224にアウタボディパネル231が接合されている。この接合部分では、アッパサポート221の外壁部242の延出長が長く形成され、アッパサポート221とアウタボディパネル231との接合面が上下方向に長くなっている。上述したように、アッパサポート221及びアウタボディパネル231は、アウタリヤパネル224よりも厚肉に形成されている。すなわち、メインフレーム22の外面側では、厚肉のアッパサポート221とアウタボディパネル231との接合領域の割合を大きくすることによって、メインフレーム22とボディフレーム23との接合強度が高められている。
【0058】
一方、
図8Bに示すように、メインフレーム22の内面側においては、アッパサポート221の内壁部243及びインナパネル225にインナボディパネル232が接合されている。上述したように、アッパサポート221は、インナパネル225及びインナボディパネル232よりも厚肉に形成されている。このため、厚肉のアッパサポート221と薄肉のインナボディパネル232との接合長を長くしても、メインフレーム22とボディフレーム23との接合強度に大きく寄与しない。そこで、メインフレーム22の内面側では、アッパサポート221の内壁部243の延出長を短くして、外壁部242の延出長と異ならせることによって、低強度ポイントが形成されないようにしている。
【0059】
この構成により、メインフレーム22とボディフレーム23との接合剛性が高められ、さらに接合強度の弱い外壁部242の接合面と内壁部243の接合面とが同一平面内に位置付けられないようにしている。本実施の形態では、アッパサポート221及びアウタボディパネル231のこの接合状態を形成するために、アッパサポート221の延在方向の後端側では、内壁部243と外壁部242の延出長を逆転させている。なお、メインフレーム22の内面側では、メインフレーム22とインナボディパネル232とを接合しない構成としてもよい。この場合であっても、アッパサポート221に内壁部243を形成することでアッパサポート221の曲げ剛性を高めることが可能である。
【0060】
また、アッパサポート221及びアウタリヤパネル224とアウタボディパネル231との接合面S4が楔形状となっている。このような構成とすることで、メインフレーム22にピッチング方向の曲げ荷重が作用する場合に、この接合面に発生する応力集中を緩和することができる。例えば、
図8Cに示すように、接合面S5が直線状に延在する場合にはピッチング方向の曲げ荷重によって破断方向に比較的大きな分力が発生する。しかしながら、
図8Aに示すように、本実施の形態では接合面が斜めに延在するため、ピッチング方向の曲げ荷重によって破断方向に生じる分力を小さくできる。
【0061】
さらに、アッパサポート221及びアウタリヤパネル224とアウタボディパネル231との接合面が斜めに延在するため、
図8Cに示す比較例と比較して接合領域(接合長)が大きく取られている。これにより、メインフレーム22とボディフレーム23との接合強度が高められている。
【0062】
以上のように、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造によれば、路面からの突き上げやブレーキの制動力によってメインフレーム22に作用するピッチング方向の曲げ荷重の影響が大きなメインフレーム22の上壁部及び底壁部を厚肉に形成している。これにより、メインフレーム22全体の重量を大幅に増加せることなく、ピッチング方向の曲げ荷重に対する剛性を効果的に高めることができる。また、複数のフレーム構成部材を接合してメインフレーム22が形成されるため、必要に応じて構成部材毎に成形方法を変えることができ、メインフレーム22の設計自由度を向上できる。また、必要な構成部材だけの厚みを調整できるため、メインフレーム22全体を鋳造や鍛造により形成する構成と比較してコストを低減することができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0064】
例えば、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、メインフレームが複数のフレーム構成部材によって構成されたが、この構成に限定されない。メインフレームは、上壁部及び底壁部が厚肉に形成されていればよく、1部材で構成されてもよい。
【0065】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、アッパサポートの上壁部から外壁部及び内壁部が下方に延出する構成としたが、この構成に限定されない。上壁部のみでピッチング方向の曲げ荷重に対する剛性を確保すること可能であれば、外壁部及び内壁部を有さない構成としてもよい。
【0066】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、ロアサポートの延在方向において、外壁部と内壁部との延出長が一致する構成としたが、この構成に限定されない。ロアサポートは、アッパサポートと同様に、その延在方向において外壁部と内壁部との延出長が異なる構成としてもよい。
【0067】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、アッパサポートの延在方向において、外壁部と内壁部との延出長が異なる構成としたが、この構成に限定されない。アッパサポートとアウタフロントパネル、アウタリヤパネル、インナパネルとの接合強度を確保可能であれば、アッパサポートの外壁部と内壁部との延出長が一致していてもよい。
【0068】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、メインフレームの延在方向における後端側において、アッパサポートの外壁部が内壁部よりも長く形成されたが、この構成に限定されるものではない。例えば、インナボディパネルが厚肉に形成される場合には、アッパサポートの内壁部を外壁部よりも長く形成してアッパサポートとボディフレームとの接合領域を大きくしてもよい。
【0069】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、低強度ポイントがメインフレーム間の最大幅位置よりも後方側に配置される構成としたが、この構成に限定されるものではない。低強度ポイントは、メインフレーム間の最大幅位置から外れればよく、メインフレーム間の最大幅位置よりも前方に配置される構成としてもよい。
【0070】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、低強度ポイントがエンジン懸架位置よりも後方に配置される構成としたが、この構成に限定されるものではない。低強度ポイントは、メインフレームの剛性が確保可能であれば、エンジン懸架部の前方に配置される構成としてもよい。
【0071】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、アウタフロントパネルとアウタリヤパネルとが別部材で構成されたが、この構成に限定されない。アウタフロントパネルとアウタリヤパネルとを1部材で構成してもよい。
【0072】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、アウタフロントパネルとアウタリヤパネルとが略同一厚みで形成されたが、この構成に限定されない。アウタフロントパネルとアウタリヤパネルとを異なる厚みで形成してもよい。これにより、メインフレームに対してより適切な剛性を得ることが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、メインフレームを、アッパサポート、ロアサポート、アウタフロントパネル、アウタリヤパネル、インナパネルにより構成したが、この構成に限定されるものではない。メインフレームをさらに多くの部材数で構成してもよいし、さらに少ない部材数で構成してもよい。
【0074】
また、本実施の形態に係る自動二輪車のフレーム構造は、ツインスパータイプのフレーム構造を例示して説明したが、この構成に限定されない。自動二輪車のフレーム構造は、断面中空状のメインフレームを有する構成であればよい。