特許第5736985号(P5736985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736985
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/02 20150101AFI20150528BHJP
【FI】
   A63B53/02
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-131437(P2011-131437)
(22)【出願日】2011年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-178(P2013-178A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】北川 知憲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史明
【審査官】 中村 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−141350(JP,A)
【文献】 特開2010−252897(JP,A)
【文献】 特開2011−092223(JP,A)
【文献】 特開2009−291602(JP,A)
【文献】 特開2005−052355(JP,A)
【文献】 特開平11−019255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの先端に略筒形のシャフトケースが固着され、
ヘッドのホゼルカラム内に該シャフトケースが挿入され、該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定され、
該ホゼルカラム内に仕切板部が設けられ、
内孔の内周面にスプラインが設けられたスプラインリングが該シャフトケースの先端部と該仕切板部との間に介在されており、
該スプラインリングは該ホゼルカラムに溶接されており、
該シャフトケースの先端に凸軸部が設けられ、該凸軸部の外周面にスプラインが設けられており、
該凸軸部が該スプラインリングの該内孔に挿入され、該凸軸部のスプラインと該スプラインリングのスプラインとが係合しており、
該仕切板部に設けられたボルト挿通孔に対し該ヘッドのソール側から差し込まれたボルトが該シャフトケースにねじ込まれ、これにより該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定されているゴルフクラブのヘッドの前記ホゼルカラム内に前記スプラインリングを配置し、次いで該スプラインリングを該ホゼルカラムに溶接する工程を有するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記ホゼルカラムの側周面に孔を設けておき、
前記スプラインリングを前記シャフトケースの先端に保持させておき、
該スプラインリング及びシャフトケースを該ホゼルカラム内に差し込み、
該孔を介して該スプラインリングとホゼルカラムとを溶接し、
その後、シャフトケースをホゼルカラムから抜き出し、
前記ヘッドを、前記ホゼルカラム及び溶接作業可能な開放部を有したヘッド本体と、該開放部を閉鎖する閉鎖パーツとで構成しておき、
前記スプラインリングの溶接作業後に該閉鎖パーツを該ヘッド本体に一体化させることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記シャフトケースに設けられたマークにより該シャフトケースの向きを調整した後に前記溶接作業を行うことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
シャフトの先端に略筒形のシャフトケースが固着され、
ヘッドのホゼルカラム内に該シャフトケースが挿入され、該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定され、
該ホゼルカラム内に仕切板部が設けられ、
内孔の内周面にスプラインが設けられたスプラインリングが該シャフトケースの先端部と該仕切板部との間に介在されており、
該スプラインリングは該ホゼルカラムに溶接されており、
該シャフトケースの先端に凸軸部が設けられ、該凸軸部の外周面にスプラインが設けられており、
該凸軸部が該スプラインリングの該内孔に挿入され、該凸軸部のスプラインと該スプラインリングのスプラインとが係合しており、
該仕切板部に設けられたボルト挿通孔に対し該ヘッドのソール側から差し込まれたボルトが該シャフトケースにねじ込まれ、これにより該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定されているゴルフクラブのヘッドの前記ホゼルカラム内に前記スプラインリングを配置し、次いで該スプラインリングを該ホゼルカラムに溶接する工程を有するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記ホゼルカラムの側周面に孔を設けておき、
前記シャフトケースと同形の先端部を有した治具の該先端部に前記スプラインリングを保持させておき、
該スプラインリング及び治具を該ホゼルカラム内に差し込み、
該孔を介して該スプラインリングとホゼルカラムとを溶接し、
その後、治具をホゼルカラムから抜き出し、
前記ヘッドを、前記ホゼルカラム及び溶接作業可能な開放部を有したヘッド本体と、該開放部を閉鎖する閉鎖パーツとで構成しておき、
前記スプラインリングの溶接作業後に該閉鎖パーツを該ヘッド本体に一体化させることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記治具に設けられた目印により該治具の向きを調整した後に前記溶接作業を行うことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記孔が複数個設けられており、前記開放部はゴルフクラブヘッドのクラウン部及びフェース部に存在することを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに係り、特にライ角、スライス角、プログレッション等の特性の調節を容易に行うことができるゴルフクラブに関する。また、本発明は、このゴルフクラブの特性調節方法と、ゴルフクラブヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、シャフトの先端部にヘッドが取り付けられたものである。シャフトの基端側にグリップが装着されている。
【0003】
従来の一般的なゴルフクラブヘッドにあっては、ヘッドに直にホゼル穴が設けられており、シャフトは該ホゼル穴に挿入され、接着剤によって固着されている。なお、この接着剤は、一般にエポキシ系接着剤が用いられている。シャフト交換に際しては、ホゼル部分を加熱してエポキシ樹脂硬化物よりなる組織を壊すことにより、シャフトを引き抜くことができる。
【0004】
このような従来の一般的なゴルフクラブヘッドでは、シャフトの交換に手間がかかる。また、ライ角、スライス角、プログレッション等の特性調節はできない。
【0005】
特許文献1には、シャフトの交換が容易であると共に、ライ角やスライス角、プログレッション等の特性を調節することができるゴルフクラブと、その特性調節方法が記載されている。この特許文献1のゴルフクラブのヘッドは、シャフトの先端を取り付けるためのホゼル挿入穴を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、該ホゼル挿入穴の入口部内周面に形成された雌螺子と、シャフトケース挿入穴を有し、該ホゼル挿入穴の奥部に着脱可能に装着されたホゼルと、シャフト挿入穴を有し、先端側が該シャフトケース挿入穴に着脱可能に装着されたシャフトケースと、該シャフトケースに外嵌した、軸心線方向移動不能なリングホルダと、該リングホルダに周方向に回転自在に外嵌した、軸心線方向移動不能な螺子部材とを備え、該螺子部材の外周面に設けられた雄螺子が前記雌螺子に螺合しているものである。
【0006】
特許文献1のゴルフクラブにあっては、螺子部材をホゼル挿入穴入口部の雌螺子に着脱することによりシャフトケースを固定したりホゼル装着穴から抜き出すことができる。そこで、このホゼル及びリングホルダをライ角、スライス角又はプログレッションの異なる別のホゼル及びリングホルダに交換するか又はホゼルの周方向位相を変更し、このホゼルを介してシャフト付きシャフトケースを再びヘッド本体に装着する。
【0007】
例えば、シャフトの軸心がホゼル挿入穴の軸心に対し斜め方向(例えば斜交方向)となるホゼル及びリングホルダに交換することにより、ヘッド本体に対するシャフトの取り付け方向が変更され、ライ角やスライス角が変更される。
【0008】
従って、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、ライ角又はスライス角のみを調節することができる。
【0009】
また、シャフトケース挿入穴の軸心位置がホゼル挿入穴の軸心位置から平行移動状にずれているホゼル及びリングホルダに交換することにより、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、プログレッションや、シャフトから重心までの距離(重心距離)を調節することができる。
【0010】
さらに、特許文献1では、ホゼル及びリングホルダを交換せずにシャフトケース付きシャフトを交換してシャフト交換することもできる。即ち、シャフトケースとして全く同型のシャフトケースを用意しておき、このシャフトケースに別特性のシャフトを固着してシャフトケース・シャフト連結体としておき、このシャフトケース・シャフト連結体をそれまでのヘッドシャフトケース・シャフト連結体と交換して当該ヘッドのホゼルに取り付けることにより、シャフトのみが異なったゴルフクラブを得ることができる。
【0011】
特許文献2には、ヘッド本体殻にシャフト取付パイプを溶接したゴルフクラブにおいて、該シャフト取付パイプに発泡ウレタン注入孔を設けることが記載されているが、この注入孔はヘッド内に発泡ウレタンを注入する用途にのみ用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−4801号公報
【特許文献2】特開平6−142236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1のゴルフクラブでは、シャフトケースに外嵌したリングホルダと、該リングホルダに外嵌した螺子部材とが必要であり、部材コストが若干高い。本発明は、シャフトの交換が容易であると共に、ライ角やスライス角、プログレッション等の特性を調節することができ、しかも、特許文献1よりも製作コストが低いゴルフクラブと、その特性調節方法と、このゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法は、シャフトの先端に略筒形のシャフトケースが固着され、ヘッドのホゼルカラム内に該シャフトケースが挿入され、該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定され、該ホゼルカラム内に仕切板部が設けられ、内孔の内周面にスプラインが設けられたスプラインリングが該シャフトケースの先端部と該仕切板部との間に介在されており、該スプラインリングは該ホゼルカラムに溶接されており、該シャフトケースの先端に凸軸部が設けられ、該凸軸部の外周面にスプラインが設けられており、該凸軸部が該スプラインリングの該内孔に挿入され、該凸軸部のスプラインと該スプラインリングのスプラインとが係合しており、該仕切板部に設けられたボルト挿通孔に対し該ヘッドのソール側から差し込まれたボルトが該シャフトケースにねじ込まれ、これにより該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定されているゴルフクラブのヘッドの前記ホゼルカラム内に前記スプラインリングを配置し、次いで該スプラインリングを該ホゼルカラムに溶接する工程を有するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、前記ホゼルカラムの側周面に孔を設けておき、前記スプラインリングを前記シャフトケースの先端に保持させておき、該スプラインリング及びシャフトケースを該ホゼルカラム内に差し込み、該孔を介して該スプラインリングとホゼルカラムとを溶接し、その後、シャフトケースをホゼルカラムから抜き出し、前記ヘッドを、前記ホゼルカラム及び溶接作業可能な開放部を有したヘッド本体と、該開放部を閉鎖する閉鎖パーツとで構成しておき、前記スプラインリングの溶接作業後に該閉鎖パーツを該ヘッド本体に一体化させることを特徴とするものである。
【0021】
本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法は、シャフトの先端に略筒形のシャフトケースが固着され、ヘッドのホゼルカラム内に該シャフトケースが挿入され、該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定され、該ホゼルカラム内に仕切板部が設けられ、内孔の内周面にスプラインが設けられたスプラインリングが該シャフトケースの先端部と該仕切板部との間に介在されており、該スプラインリングは該ホゼルカラムに溶接されており、該シャフトケースの先端に凸軸部が設けられ、該凸軸部の外周面にスプラインが設けられており、該凸軸部が該スプラインリングの該内孔に挿入され、該凸軸部のスプラインと該スプラインリングのスプラインとが係合しており、該仕切板部に設けられたボルト挿通孔に対し該ヘッドのソール側から差し込まれたボルトが該シャフトケースにねじ込まれ、これにより該シャフトケースが該ホゼルカラムに固定されているゴルフクラブのヘッドの前記ホゼルカラム内に前記スプラインリングを配置し、次いで該スプラインリングを該ホゼルカラムに溶接する工程を有するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、前記ホゼルカラムの側周面に孔を設けておき、前記シャフトケースと同形の先端部を有した治具の該先端部に前記スプラインリングを保持させておき、該スプラインリング及び治具を該ホゼルカラム内に差し込み、該孔を介して該スプラインリングとホゼルカラムとを溶接し、その後、治具をホゼルカラムから抜き出し、前記ヘッドを、前記ホゼルカラム及び溶接作業可能な開放部を有したヘッド本体と、該開放部を閉鎖する閉鎖パーツとで構成しておき、前記スプラインリングの溶接作業後に該閉鎖パーツを該ヘッド本体に一体化させることを特徴とするものである。
【0023】
本発明のゴルフクラブの製造方法の一態様にあっては、前記孔が複数個設けられており、前記開放部はゴルフクラブヘッドのクラウン部及びフェース部に存在する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のゴルフクラブでは、シャフトケースがホゼルカラムに挿入され、ソール側から差し込まれたボルトによって該シャフトケースを固定しているので、前記特許文献1のリングホルダや、環状螺子部材が不要であり、低コストである。
【0025】
本発明のゴルフクラブにあっては、このホゼルカラム内に設けられた仕切板部とシャフトケース先端部との間にスプラインリングが介在されており、このスプラインリングがホゼルカラムに溶接されている。また、このシャフトケースの先端部の凸軸部のスプラインとスプラインリングの内孔のスプラインとが係合しているので、シャフトケースの周方向の位置決めがなされる。
【0026】
本発明のゴルフクラブにあっては、ボルトを緩めて外すと、シャフトケースの凸軸部をスプラインリングから抜き出し、周方向に回して向き(周方向の位相)を変えることができる。従って、例えば、シャフトの軸心がシャフトケース挿入穴の軸心に対し斜め方向(例えば斜交方向)となっているシャフトケースを用いた場合には、シャフトケースの周方向位相を変更することにより、ヘッド本体に対するシャフトの取り付け方向が変更され、ライ角やスライス角が変更される。これにより、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、ライ角又はスライス角のみを調節することができる。
【0027】
また、シャフトケース挿入穴の軸心位置がホゼル挿入穴の軸心位置から平行移動状にずれた形状となっているシャフトケースを用いた場合には、シャフトケースの周方向位相を変更することにより、全く同一のシャフト及び同一のヘッド本体からなるゴルフクラブにおいて、プログレッションや、シャフトから重心までの距離(重心距離)を調節することができる。
【0028】
本発明では、シャフトケースとして全く同型のシャフトケースを用意しておき、このシャフトケースに別特性のシャフトを固着してシャフトケース・シャフト連結体としておき、このシャフトケース・シャフト連結体をそれまでのヘッドのシャフトケース・シャフト連結体と交換して当該ヘッドのホゼルに取り付けることにより、シャフトが異なったゴルフクラブを得ることができる。
【0029】
このように、本発明によれば、従来のように加熱によって接着剤の組織を壊してシャフトを取り外し、新たなシャフトを再度接着剤で取り付けるという面倒な手間及び時間を省くことができる。そのため、試打したばかりのゴルフクラブにおいてライ角やスライス角、プログレッション、重心距離を速やかに変えて直ちに試打することができる。また、試打したばかりのゴルフクラブのヘッドからシャフトケース・シャフト連結体を取り外し、このヘッドに異なるシャフト特性を有した別のシャフトケース・シャフト連結体を取り付けて直ちに試打を行うことができる。このようにして、ゴルフショップ等でゴルファーが適切なゴルフクラブを見出すことが極めて容易となる。また、ヘッドの固体差を考慮することなくシャフトの評価を行うことができる。
【0030】
近年、ゴルファーが自分の技量にあったゴルフクラブを探すために、コンピュータや高速カメラなどを使って、自分にマッチしたゴルフクラブを探すシステムが開発されてきている。このようなシステムは、ヘッドスピードや打ち出し角度などを基に個々の市販クラブをベースに打ち比べて探すようにしたシステムである。
【0031】
これに対し、本発明によれば、同一のシャフトとヘッドよりなるゴルフクラブにおいて、ライ角、スライス角、重心距離やプログレッションを変更し、打ち出されたボールの飛球特性(打ち出し角やスピン)の違いを容易に実感することができる。また、同じヘッドに対してシャフトのみを付け替えて、シャフトのみの違いを実感したりすることができる。また、その日のプレーヤーの調子に応じてシャフトを交換したり、シャフトは同一のまま、ライ角やスライス角、プログレッションを調整することもできる。
【0032】
本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、ホゼルカラムに孔を設けておき、この孔を利用してホゼルカラム内のスプラインリングと該ホゼルカラムとを溶接することができる。
【0033】
この溶接作業に先立ってホゼルカラム内にスプラインリングを配置するには、スプラインリングをシャフトケース先端に装着した状態で該スプラインリング及びシャフトケースをホゼルカラム内に挿入する。シャフトケース及びスプラインリングのスプライン同士が係合しているので、スプラインリングはシャフトケースと一体化している。そのため、シャフトケースを回してその向き(周方向の位相)を特定方向とすることにより、スプラインリングの向きを特定方向とすることができる。また、シャフトケースを固定状態にしておくと、スプラインリングも固定状態となる。そこで、シャフトケースの向きを特定方向とした状態でシャフトケースを固定し、スプラインリングをホゼルカラムに溶接することにより、スプラインリングを特定の向きとした状態でホゼルカラムに容易に溶接することができる。
【0034】
なお、シャフトケースの代りに、シャフトケースと同形の先端部を有した治具を用いても、同様にしてスプラインリングの溶接作業を容易に行うことができる。この治具をシャフトケースよりも長いものとしておくことにより、治具の固定が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施の形態に係るヘッドの正面図である。
図2】ヘッドのヒール側の側面図である。
図3】第1図のIII−III線断面図である。
図4】ゴルフクラブの分解斜視図である。
図5】ゴルフクラブの組み立て方法を示す斜視図である。
図6】ゴルフクラブヘッドの製造方法(スプラインリングの溶接方法)を示す斜視図である。
図7】ゴルフクラブヘッドの製造方法(スプラインリングの溶接方法)を示す斜視図である。
図8】実施の形態を示す断面図である。
図9】実施の形態に用いられるホゼルカラムの構成図であり、(a)図は正面斜視図、(b)図は正面図、(c)図は(b)図のC−C線断面図、(d)図は(a)図のD矢視図、(e)図は(a)図のE矢視図、(f)図はホゼルカラムの背面図である。
図10】ヘッドの製造方法を示す斜視図である。
図11】別の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0037】
第1図〜第10図は第1の実施の形態に係るゴルフクラブを示している。なお、第9図は、ホゼルカラムの内孔の傾きを明示するために、第1図〜第8図のホゼルカラムよりも径/長さ比を大きくして図示している。
【0038】
このゴルフクラブは、ヘッド1のホゼルカラム3にシャフト4を、シャフトケース5、スプラインリング8及びボルト7を介して取り付けたものである。
【0039】
このヘッド1は中空のウッド型のものであり、フェース部1aと、クラウン部1bと、ソール部1cと、トウ部1dと、ヒール部1eと、バック部1fと、ホゼル部1gとを有する。
【0040】
第3図の通り、クラウン部1bのフェース部1a側かつヒール部1e側にホゼル部1gが設けられている。ホゼルカラム3は、このホゼル部1gに連なり、ソール部1cにまで延在している。このホゼルカラム3は、円筒形のパイプ状であり、その内孔の長手方向(軸心方向)の途中に、該軸心方向と垂直な仕切板部6が設けられている。この仕切板部6の上側にスプラインリング8が配置されている。また、この仕切板部6よりも上側にシャフトケース5が挿入されている。この仕切板部6に設けられたボルト挿通孔(開口)6aにボルト7が下から上へ挿通され、シャフトケース5の雌螺子穴5mにねじ込まれている。
【0041】
第3〜6図及び第9図の通り、シャフトケース5は、ホゼルカラム3の内径よりも極くわずかに小さい外径を有した円筒形部材であり、上端側から下端側に向って、シャフト4の挿入用の穴5hが設けられている。シャフト4は、このシャフト挿入穴5hに挿入され、接着剤によってシャフトケース5に固着されている。このシャフト挿入穴5hの深さは10mm以上、例えば10〜50mm特に20〜40mm程度が好ましい。
【0042】
シャフトケース5の上端(後端)には外向き鍔状のフランジ部5bが設けられている。このフランジ部5bは、円環形板状であるが、上方ほど小径となるテーパ形状となっていてもよく、また、これらに限定されない。
【0043】
このシャフトケース5の下部(先端部)に凸軸部5aが突設されている。凸軸部5aの軸心はシャフトケース5の外周面の軸心と共通である。凸軸部5aの外周面にスプライン(軸心線と平行方向の凸条)が設けられている。なお、凸軸部5aの付け根部分に溝5eが周設されている。
【0044】
凸軸部5aの先端面から軸心線方向に凹陥するように雌螺子穴5mが設けられている。
【0045】
第4図の通り、スプラインリング8は外周形状が円筒形のリングである。スプラインリング8を軸心方向に貫く内孔の内周面にスプラインが設けられている。このスプラインリング8のスプラインに対しシャフトケース5の凸軸部5aのスプラインが係合する。なお、この実施の形態ではスプラインは8条設けられており、シャフトケース5の周方向の位相を45°ずつ変更できるようにしている。ただし、スプラインを4条とし、シャフトケース5の周方向の位相を90°ずつ変更できるようにしてもよい。また、スプラインの数を12条、16条又は20条などとしてもよい。
【0046】
スプラインリング8は、ホゼルカラム3内に挿入され、該ホゼルカラム3に対し溶接されている。この溶接方法については後述する。
【0047】
ゴルフクラブを組み立てるには、予めスプラインリング8をホゼルカラム3の奥底部に配置し、溶接しておく。また、第5図のように、シャフト4の先端にシャフトケース5を接着剤を用いて固着してシャフトケース・シャフト連結体としておく。好ましくは、この接着剤をシャフト4の先端部の外周面に塗着し、シャフトケース5のシャフト挿入穴5hの最奥部まで該シャフト4を差し込む。接着剤としてはエポキシ系接着剤などが好適である。
【0048】
なお、第3図のように、この実施の形態では雌螺子穴5mがシャフトケース5を貫通していない。この場合、シャフト4をシャフトケース5のシャフト挿入穴5hに差し込んだときに空気が該雌螺子穴5mを通って流出するように、雌螺子穴5mとシャフト挿入穴5hとを連通する空気抜き用の小孔を設けてもよい。
【0049】
このシャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5をホゼルカラム3に差し込み、シャフトケース5の凸軸部5aをスプラインリング8の内孔に差し込み、凸軸部5aのスプラインとスプラインリング8のスプラインとを係合させる。次いで、ボルト7をボルト挿通孔6aを通して雌螺子穴5mにねじ込む。
【0050】
これにより、第1,3図の通り、シャフトケース5がヘッド1に固定される。シャフトケース5とシャフト4とは接着剤によって強固に接着されているので、これにより、シャフト4とヘッド1とが一体となったゴルフクラブが完成する。シャフトケース5のスプラインとスプラインリング8のスプラインとが係合しているので、シャフト4及びシャフトケース5の周方向位相が正確に決まる。また、シャフト4及びシャフトケース5のトルク方向の固定剛性が高い。
【0051】
スプラインリング8はホゼルカラム3内の奥部にのみ配置される軸長の短い環状部材であり、重量が小さい。
【0052】
本発明では、ゴルフクラブのシャフト交換も容易に行うことができる。ゴルフクラブのシャフト交換を行うには、交換すべき新シャフトに、予め上記シャフトケース5と同型のシャフトケースを接着剤によって固着しておく。
【0053】
既存のゴルフクラブのボルト7を外し、旧シャフト4を旧シャフトケース5共々ヘッド1から取り外す。次いで、シャフトケース付きの新シャフト(シャフトケース・シャフト連結体)をヘッド1に差し込み、ボルト7によって固定する。
【0054】
このようにシャフトの取り付けや交換を極めて簡単かつ迅速に行うことができる。なお、従来では、シャフトの交換に際し既存のゴルフクラブのホゼル部分を加熱して接着剤硬化物の組織を壊し、シャフトを抜いた後、新シャフトを接着剤で固着するようにしていたため、数時間〜1日程度の時間がかかっていたが、上記実施の形態では、予め新シャフトにシャフトケース5を接着剤で取り付けておくことにより、シャフト交換を数分程度で行うことができる。従って、シャフトケース付きの各種スペックのシャフトを用意しておき、同一のヘッド1に順次に異なるシャフトを取り付けて試打する様な利用方式が実現可能となる。
【0055】
この実施の形態では、第8,9図のように、シャフト挿入穴5hの軸心をシャフトケース5の外周面の軸心すなわちホゼルカラム3の軸心に対し斜めとし、シャフト4の傾きを変更可能としている。具体的には、第9図(c)のように、シャフトケース5の外周面の軸心線aとシャフト挿入穴5hの軸心線aとは角度θにて斜交している。通常の場合、この角度θは0.1〜5°特に0.25〜3°程度が好適である。
【0056】
なお、軸心線同士は交差しなくてもよく、「ねじれ」の関係にあってもよい。即ち、両者の軸心線は交わることがなく、一方の軸心線が他方の軸心線の近傍を通り抜ける関係であってもよい。
【0057】
第9図(a)のように、シャフトケース5のフランジ部5bの外周面には、軸心線a,aを含む平面が該フランジ部5bの外周面と交わる位置であって、かつ、軸心線aを挟んで軸心線aと反対側の位置に、中立位置を意味するマーク「N」が付されている。また、このマーク「N」の下側(凸軸部5a側)に、中立位置を意味する単語よりなるマーク「NEUTRAL」が付されている。「N」及び「NEUTRAL」から90°左側には「R」、「RIGHT」が付されており、90°右側には「L」、「LEFT」が付されている。マーク「N」、「NEUTRAL」と180°反対側には「U」、「UPRIGHT」が付されている。NEUTRAL、RIGHT、LEFT及びUPRIGHTの各マークは、いずれも軸心線と平行方向に延在している。
【0058】
第1〜3図では、シャフトケース5のマークN及びNEUTRALがトウ側を向いている。この状態が、このゴルフクラブの標準状態となっている。
【0059】
これに対し、第8図では、シャフトケースを第1〜3図の状態から平面視において時計回り方向に90°回転させており、マークL及びLEFTがトウ側を向いている。すなわち、第9図(f)の面がトウ側を向いている。このため、第8図では、シャフト4の軸心線がホゼルカラム3の軸心線に対してフェース側に傾いている。第8図の状態からシャフトケース5を90°又は180°回すことにより、シャフト4の傾き方向を変えることができる。即ち、シャフト4をトウ側に傾けたり、バック側へ傾けたりすることができる。
【0060】
このようにシャフト4の傾きの向きを変えることによりライ角及びスライス角を変えることができる。
【0061】
ライ角に関して説明すれば、マークN及びNEUTRALをトウ側に向けることにより、シャフト4を最もヒール側に傾けた場合が最も小さく、最もフラットライである。マークU及びUPRIGHTをトウ側に向けた場合、すなわち第9図(e)の面をトウ側に向けた場合が最もアップライである。
【0062】
スライス角に関して説明すれば、第9図(b)の面(N、NEUTRAL)をトウ側に向けた状態が標準状態である。マークL、LEFTをトウ側に向けることによりシャフト4を最もフェース側に傾けた第8図ではフェース面が最も閉じたフックフェースとなっている。これと反対にマークR、RIGHTをトウ側に向けてシャフト4を最も後方へ傾けることにより、フェース面が最もオープンとなったスライスフェースとなる。
【0063】
このように、第9図のシャフトケース5を用いることにより、ヘッド1に対するシャフト4の傾き方向を変更することができ、ライ角及びスライス角を変えることができる。なお、上記説明では、シャフトケース5の向きを90°毎に変更しているが、45°毎に変更してもよい。このようにすれば、上記の各状態の中間状態とすることができる。例えば、「若干フックフェース」、「若干スライスフェース」、「若干アップライ」などのようにゴルフクラブのスペックを微調節することができる。
【0064】
第11図のシャフトケース5Aは、シャフト挿入穴5hをシャフトケース5の軸心位置から偏心させたものである。シャフト挿入穴5hの軸心は、シャフトケース5の外周面の軸心と平行でかつそれから若干(例えば0.5〜4mm)離隔している。
【0065】
このシャフトケース5Aを用いることにより、シャフトのプログレッションを調節することができる。例えば、第11図に示すようにシャフト4を第3図の場合よりも偏心距離分だけフェース側に近づけることができる。
【0066】
この第11図に示す状態から、ボルト7を外してシャフトケース5Aを一旦ホゼルカラム3から抜き出し、90°、180°又は270°回すことによりシャフト4の位置をヒール側、バック側又はトウ側に平行移動状に変更することができる。このようにシャフト4の位置を変更することにより、シャフト軸心からヘッド重心までの距離が変更される。また、シャフト4の位置をフェース側又はバック側とすることによりプログレッションが変更される。
【0067】
上記スプラインリング、シャフトケース、ホゼルカラム、及びボルトは金属製とされることが好ましく、特にアルミ又はチタンもしくはそれらの合金よりなることが好ましい。シャフトケースとしては、アルミ合金で、アルマイト処理を施して、キズが付きにくい様に表面硬度を高くしたものを用いることができるが、これに限定されない。ホゼルカラムとしては、純チタンよりなり、切削加工により製作されたものを用いることができるが、これに限定されない。本発明の一例にあっては、ホゼルカラム3の上端の内径は約10.5mm、下端の内径は約8.5mm、ボルト7のネジ棒部の直径は約4〜5mmとされるが、これに限定されない。
【0068】
ヘッドの材質は特に限定されないが、ウッド型ゴルフクラブヘッドの場合、例えばチタン合金やアルミ合金、ステンレス等とすることができる。フェース面に使用するチタン合金は、比重の低いチタン合金が好ましく、Ti−6Al−1Feまたは、Ti−6Al−2Fe、Ti−6Al−3Feのチタン合金が好ましい。これらのチタン合金の比重はおよそ4.4程度である。比重4.4のチタン合金としては、以下の様なものがある。
Ti−8Al−1V−1Mo(比重4.37)
Ti−7Al−2V(比重4.35)
Ti−7.5Al−2V(比重4.35)
Ti−8Al−1V(比重4.34)
Ti−8Al−2V(比重4.35)
Ti−8Al−1V−1Mo−0.15C(比重4.37)
Ti−6Al−1Fe(比重4.38)
【0069】
なお、シャフト4に取り付けるグリップとして、断面が非真円形のものを用いることがある。例えば、グリップ外周面のうちアドレス状態で地面を指向する下側面をその他の面よりも膨出した形状とすることがある。このような場合、シャフトケース5,5Aの向きを変えたときに、グリップ膨出部が地面側とならないことがある。そこで、本発明では、断面真円形のグリップを用いるのが好ましい。
【0070】
上記実施の形態ではゴルフクラブヘッドはウッド型であるが、それに近似したユーティリティ型のゴルフクラブヘッドにも本発明を適用することができる。
【0071】
次に、このゴルフクラブヘッドの製造方法について説明する。
【0072】
この製造方法では、第6,10図のように、クラウン部とフェース部とが開放しているヘッド本体10を用いる。第10図の通り、このヘッド本体10にホゼルカラム3を溶接により一体化する。ホゼルカラム3には、仕切板部6の上側に1個又は複数個の孔11が設けられている。孔11は、ホゼルカラム3の内周面から外周面にまで貫いている。この実施の形態では、孔11として、フェース部側を向く孔と、トウ側ないしバック側を向く孔11とが設けられている。
【0073】
シャフトケース5の先端にスプラインリング8を装着し、シャフトケース5及びスプラインリング8のスプライン同士を係合させる。このスプラインリング8付きシャフトケース5をホゼルカラム3内に差し込み、第7図のようにスプラインリング8を仕切板部6に当接させる。この状態で、孔11がスプラインリング8の外周面に対面する。
【0074】
次いで、シャフトケース5のフランジ5bに設けられた「N」マークがトウ側を向くようにシャフトケース5の向き(周方向の位相)を調整する。この後、孔11を介して溶接作業を行い、ホゼルカラム3とスプラインリング8とを溶接する。この溶接には、TIG(ティグ)溶接機などを用い、ホゼルカラム3とスプラインリング8の両方を溶かし、溶接する方法などを採用することができるが、これに限定されない。第7図の矢印Wはこの溶接時の電極等の接近方向を示している。
【0075】
溶接終了後、シャフトケース5をホゼルカラム3から引き抜く。スプラインリング8は、ホゼルカラム3内に残置されたままとなる。
【0076】
その後、第10図のように、ヘッド本体10のクラウン部とフェース部にそれぞれ閉鎖プレートとしてクラウン部1bとフェース部1aを溶接し、次いでクラウン部1bの前縁とフェース部1aの上縁とを溶接する。次いで、バリ取り、塗装などの仕上処理を施す。これにより、ホゼルカラム3内の奥部にスプラインリング8が溶接されたゴルフクラブヘッド1が得られる。
【0077】
なお、クラウン部1bとフェース部1aとが一連一体となったプレートをヘッド本体10に溶接してもよい。また、クラウンの一部又は全体をCFRPにて構成してもよい。
【0078】
第6,7図では、クラウン部とフェース部とに開放部を設けたヘッド本体10を用いているが、フェース部とソール部又はヒール側サイド部の一部とに開放部が設けられたヘッド本体を用いてもよい。孔11がフェース部側だけに設けられているときには、フェース部のみが開放部となっているヘッド本体を用いてもよい。ただし、孔11を周方向に間隔をあけて複数個設け、複数箇所で溶接を施すようにした方が、スプラインリング8の固定強度が高くなり、好ましい。
【0079】
第6,7図では、スプラインリング8をシャフトケース5に保持させているが、シャフトケース5と同形の先端部を有した治具を用いてもよい。この治具は、シャフトケース5よりも長い長さを有しており、マークNと同様の目印を有していることが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1 ヘッド
1a フェース部
1e ヒール部
3 ホゼルカラム
4 シャフト
5,5A シャフトケース
5a 凸軸部
5h シャフト挿入穴
5m 雌ねじ穴
6 仕切板部
6a ボルト挿入孔
7 ボルト
8 スプラインリング
10 ヘッド本体
11 孔
図1
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