(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の給電電極および第1の受電電極により構成された第1のキャパシタと第2の給電電極および第2の受電電極により構成された第2のキャパシタとを介して電力を供給するワイヤレス電力伝送システムであって、
前記第1および第2のキャパシタならびに第1のコイルを含む共振回路と、
第1および第2のスイッチを含み、前記共振回路の送電側共振部に供給される交流電力を、前記第1および第2のスイッチを交互にオンオフさせることにより生成する電源回路と、
前記第1および第2のスイッチをオンオフさせる駆動電圧の電圧位相を検出し、前記共振回路の送電側共振部を流れる共振電流の電流位相を、当該共振電流が発生させる磁界により誘導電流を発生させる第2のコイルを用いて検出し、前記電圧位相と前記電流位相の位相差を検出する位相検出回路と、
前記駆動電圧の周波数を調整する駆動周波数追随回路と、を備え、
前記駆動周波数追随回路は、前記位相差が減少するように前記駆動電圧の周波数を調整することを特徴とするワイヤレス電力伝送システム。
前記電源回路は、前記駆動電圧を発生させる発振回路を備え、当該発振回路から出力される前記駆動電圧がトランスを介して前記第1および第2のスイッチに供給されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
共振周波数は、ワイヤレス給電の実行環境によって変化する。電場共振型の場合、給電電極と受電電極の距離や位置が変化すると、キャパシタの静電容量が変化するため、共振周波数が変化する。電場共振型において高効率のワイヤレス給電を実現するためには、電源回路の駆動周波数と共振周波数のずれをリアルタイムに検出する必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題に基づいて完成された発明であり、電場共振型のワイヤレス給電において、供給電力の位相を検出することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るワイヤレス給電装置は、第1および第2のキャパシタ、第1のコイルおよび負荷が接続された共振回路のうち、第1のキャパシタを構成する2枚の電極のうちの一方、第2のキャパシタを構成する2枚の電極のうちの一方を含む送電側共振部と、送電側共振部への第1の方向からの電流の供給を制御する第1のスイッチと、送電側共振部への第2の方向からの電流の供給を制御する第2のスイッチと、第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより共振回路に含まれる第1および第2のキャパシタと第1のコイルを共振させ、第1および第2のキャパシタそれぞれについて一方の電極から他方の電極へ交流電力を送電させる送電制御回路と、交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる第2のコイルと、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出する位相検出回路を備える。位相検出回路は、第2のコイルに流れる誘導電流の位相を計測することにより、交流電力の電流位相を計測する。
【0009】
電源回路の駆動周波数を共振周波数と一致させれば、システム全体としての電力伝送効率が高くなる。交流電力が発生させる磁界により第2のコイル(検出コイル)に誘導電流を発生させ、その誘導電流から電流位相を計測するため、共振回路に直接的な計測負荷がかからない。このため、共振特性への影響を抑制しつつ、電圧位相と電流位相の位相差(ずれ)を検出して共振状態が保たれているかを監視できる。
【0010】
第1および第2のスイッチを流れる電流の経路と送電側共振部を流れる電流の経路を結合トランスにより分離し、結合トランスを介して、送電側共振部に交流電力を供給してもよい。
【0011】
この装置は、検出された位相差が減少するように送電制御回路の駆動周波数を調整することにより、駆動周波数を共振回路の共振周波数に追随させる駆動周波数追随回路を更に備えてもよい。共振周波数に駆動周波数を追随させることができるため、電力伝送効率を高い状態に維持しやすくなる。
【0012】
第2のコイルの両端に抵抗を並列接続してもよい。そして、位相検出回路は、抵抗に印加される電圧の変化から電流位相を計測してもよい。
【0013】
この装置は、交流電力の電流波形と同相となるアナログ波形をデジタル波形に整形する第1波形整流器と、交流電力の電圧波形と同相となるアナログ波形をデジタル波形に整形する第2波形整流器を更に備えてもよい。位相検出回路は、2種類のデジタル波形のエッジを比較することにより、位相差を検出してもよい。デジタル化により電流波形と電圧波形の位相を比較するときの基準点が明確になるため、位相検出回路が位相差を特定しやすくなる。
【0014】
第1および第2のキャパシタは、いずれも円形状の電極を対向させることにより形成されてもよい。第1および第2のキャパシタの一方は円盤形状の電極を対向させることにより形成され、他方は円環形状の電極を対向させることにより形成されてもよい。更に、円盤形状の電極と円環形状の電極を略同一平面上に配置し、かつ、円盤形状の電極を円環形状の電極の内部に配置してもよい。
【0015】
本発明におけるワイヤレス電力伝送システムは、第1および第2のキャパシタ、第1のコイルおよび負荷が接続された共振回路と、共振回路への第1の方向からの電流の供給を制御する第1のスイッチと、共振回路への第2の方向からの電流の供給を制御する第2のスイッチと、第1および第2のスイッチを交互に導通させることにより共振回路に含まれる第1および第2のキャパシタと第1のコイルを共振させ、第1および第2のキャパシタそれぞれについて、一方の電極から他方の電極へ交流電力を送電させる送電制御回路と、交流電力が発生させる磁界により誘導電流を発生させる第2のコイルと、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差を検出する位相検出回路を備える。位相検出回路は、第2のコイルに流れる誘導電流の位相を計測することにより、交流電力の電流位相を計測する。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電場共振型のワイヤレス給電において供給電力の位相を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
図1は、ワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム100は、基本構成として、ワイヤレス給電装置200とワイヤレス受電装置300を含む。ワイヤレス給電装置200は、電源回路202と共振回路204の一部を含む。共振回路204の残部はワイヤレス受電装置300に含まれる。共振回路204のうち、ワイヤレス給電装置200側を送電側共振部206、ワイヤレス受電装置300側を受電側共振部208とよぶ。
【0021】
また、ワイヤレス電力伝送システム100は、駆動周波数foを自動的に調整するための構成として、第1波形整流器142、第2波形整流器144、位相検出回路150および駆動周波数追随回路152を含む。
【0022】
共振回路204は、キャパシタC1、C2を含む。キャパシタC1、C2は、いずれも2枚の電極を対向させすることにより形成される。キャパシタC1の2枚の電極のうち、送電側共振部206側の電極を給電電極CS1、受電側共振部208側の電極を受電電極CR1とよぶ。同様に、キャパシタC2の2枚の電極のうち、送電側共振部206側の電極を給電電極CS2、受電側共振部208側の電極を受電電極CR2とよぶ。共振回路204における送電側共振部206と受電側共振部208は、キャパシタC1とキャパシタC2により物理的に分離されている。ワイヤレス電力伝送システム100の主目的は、給電電極CS1、CS2から受電電極CR1、CR2にワイヤレスにて電力を送ることである。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、100kHz前後の共振周波数frにて動作させることを想定したシステムである。したがって、共振回路204の共振周波数frは100kHzに設定される。なお、本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、たとえば、ISM(Industry-Science-Medical)周波数帯のような高周波数帯にて動作させることも可能である。
【0023】
電源回路202は、共振回路204に交流電力を供給するハーフブリッジ型の回路である。
図1に示すように、電源回路202は上下対称形となっている。電源回路202のコイルLaと共振回路204のコイルLbは結合トランスT2を形成する。コイルLaは結合トランスT2の一次巻線(トランスT2一次コイル)であり、コイルLbは結合トランスT2の二次巻線(トランスT2二次コイル)である。結合トランスT2の一次巻線の巻数は、結合トランスT2の二次巻線の巻数よりも大きい。コイルLaを流れる電流Isは交流であり、同図矢印にて示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。交流電流Isが流れると、共振回路204に交流電流I1が流れる。
【0024】
共振回路204は、結合トランスT2の二次巻線LbとコイルLc(第1のコイル)、キャパシタC2、負荷R、キャパシタC1が直列接続された回路である。共振回路204に交流電流I1が流れると、負荷Rに電力が供給される。このとき、交流電流I1の周波数が共振回路204の共振周波数と一致するとき、負荷Rには最大電力が供給される。共振回路204の共振周波数frは、キャパシタC1、C2の合成値をCPとすると、2πf・Lc=1/(2πf・CP)が成立するときの周波数である。コイルLcはワイヤレス給電装置200側に設けられているので、ワイヤレス受電装置300を軽量、小型にできる。なお、後述のように、コイルLcをワイヤレス受電装置300側に設けてもよい。
【0025】
次に、電源回路202の構成を説明する。まず、ゲート駆動用トランスT1の一次側にオシレータ210が接続される。オシレータ210は、駆動周波数foにて交流電圧を発生させる「送電制御回路」として機能する。電圧波形は正弦波でもよいが、ここでは矩形波であるとして説明する。この交流電圧により、トランスT1一次コイルLhには正負両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLhとトランスT1二次コイルLf、トランスT1二次コイルLgはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLfとトランスT1二次コイルLgにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
【0026】
トランスT1二次コイルLfの一端は、スイッチングトランジスタQ1のゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQ1のソースと接続される。トランスT1二次コイルLgの一端は、別のスイッチングトランジスタQ2のゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQ2のソースと接続される。オシレータ210が駆動周波数foにて交流電圧を発生させると、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2の各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が駆動周波数foにて交互に印加される。このため、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2は駆動周波数foにて交互にオン・オフする。スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2は同一特性のエンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、バイポーラトランジスタなど他のトランジスタでもよい。トランジスタの代わりにリレースイッチ等、他のスイッチを用いてもよい。
【0027】
スイッチングトランジスタQ1のドレインは、電源VDD1の正極に接続される。電源VDD1の負極は、結合トランスT2の一次側であるコイルLaを介して、スイッチングトランジスタQ1のソースに接続される。電源VDD1の負極の電位は接地電位である。スイッチングトランジスタQ2のソースは、電源VDD2の負極に接続される。電源VDD2の正極は、コイルLaを介して、スイッチングトランジスタQ2のドレインに接続される。電源VDD2の正極の電位は接地電位である。
【0028】
スイッチングトランジスタQ1のソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS1、スイッチングトランジスタQ2のソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS2とよぶ。また、スイッチングトランジスタQ1のソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS1、スイッチングトランジスタQ2のソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS2とする。ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2については、同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0029】
スイッチングトランジスタQ1が導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQ2は非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路」とよぶ)は、電源VDD1からスイッチングトランジスタQ1、コイルLaを経由して帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQ1は、第1電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0030】
スイッチングトランジスタQ2が導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQ1は非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路」とよぶ)は、電源VDD2から給電コイルLa、スイッチングトランジスタQ2を経由して帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQ2は、第2電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0031】
オシレータ210が共振周波数frにて交流電圧を供給すると、第1電流経路と第2電流経路が共振周波数frにて交互に切り替わる。コイルLaには共振周波数frの交流電流Isが流れるため、ワイヤレス受電装置300にも共振周波数frにて交流電流I1が流れる。このとき、給電電極CS1と受電電極CR1、給電電極CS2と受電電極CR2は電気的に共振し、給電電極CS1、CS2から受電電極CR1、CR2への電力伝送効率は最大となる。
【0032】
共振周波数frは、ワイヤレス電力伝送システム100の使用状態や使用環境によって微妙に変化する。また、キャパシタC1、C2やコイルLcを交換した場合にも共振周波数frは変化する。あるいは、キャパシタC1、C2の静電容量を可変とすることにより共振周波数frを積極的に変化させたい場合もあるかもしれない。このような場合でも、ワイヤレス電力伝送システム100は、駆動周波数foと共振周波数frを自動的に一致させることができる。
【0033】
駆動周波数foを共振周波数frに追随させるため、以下の構成を追加する。まず、オシレータ210の両端に抵抗R1、R2を接続する。抵抗R1と抵抗R2の接続点Aは、第2波形整流器144を介して位相検出回路150に接続される。位相検出回路150は、接続点Aの電位Vp1に基づいて、後述の方法により、電源回路200が供給する交流電力の電圧位相を計測する。
【0034】
オシレータ210が生成する交流電圧は抵抗R1と抵抗R2により分圧され、その中間電位として電位Vp1が取り出されている。分圧することによりにより、オシレータ210の発生させる交流電圧が大きい場合でも、扱いやすい電圧に降圧できる。オシレータ210が発生させる交流電圧をそのまま取り扱えるのであれば、分圧は必須ではない。なお、ソース・ドレイン電圧VDS1、VDS2や、ソース・ゲート電圧VGS1、VGS2などから電圧位相を計測してもよい。
【0035】
共振回路204の側には、検出コイルLSSが設置される。検出コイルLSSは、貫通孔を有するコア154(トロイダルコア)に導線を巻き付けることにより形成されるコイルである。コア154の材質はフェライト、珪素鋼板、パーマロイ(permalloy)等の既知材料である。共振回路204の一部がコア154を貫通する。交流電流I1が発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには誘導電流ISSが流れる。電流I1と誘導電流ISSは同相である。
【0036】
検出コイルLSSの両端には抵抗R3が接続される。抵抗R3の一端Bは接地され、他端Cは第1波形整流器142を介して位相検出回路150に接続される。位相検出回路150は、接続点Cの電位Vq1に基づいて、後述の方法により、送電側共振部206が受電側共振部208に供給する交流電力の電流位相を計測する。電流I1と誘導電流ISSは同相であり、誘導電流ISSと電位Vq1は同相である。したがって、電流I1の電流位相は、電位Vq1の電圧位相により計測可能である。電位Vp1および電位Vq1の電圧波形を比較すれば、電圧位相と電流位相の位相のずれを検出できる。
【0037】
電位Vq1と電位Vp1は、それぞれ、第1波形整流器142と第2波形整流器144によって2値化される。詳細については次の
図7に関連して後述するが、第1波形整流器144は、電位Vq1が所定の閾値、たとえば、0.1(V)より大きくなると飽和電圧Vq2=5(V)を出力する増幅器である。このため、電位Vq1がアナログ波形となる場合でも、第1波形整流器142によって電位Vq1をデジタル波形の電圧Vq2に変換される。オシレータ210が矩形波ではなく、正弦波等のアナログ波形にて交流電圧を発生させる場合には第1波形整流器142は特に有効に機能する。第2波形整流器144も、電位Vp1が所定の閾値より大きくなると飽和電圧Vp2=5(V)を出力する増幅器である。第2波形整流器144により、アナログ波形の電位Vp1はデジタル波形の電圧Vp2に変換される。
【0038】
位相検出回路150は、電位Vq2と電位Vp2を比較し、その位相差tdを算出する。位相検出回路150は、位相差tdに応じて制御電圧Vtを変化させる。駆動周波数追随回路152は、制御電圧Vtにしたがってオシレータ210の駆動周波数foを調整する。
【0039】
なお、駆動周波数追随回路152とオシレータ210を一体化し、VCO(Voltage Controlled Oscillator)として提供してもよい。また、VCOの後段に増幅器を設け、トランスT1一次コイルLhへ供給される交流電圧を増幅してもよい。
【0040】
図2は、共振回路204のインピーダンスZと駆動周波数foの関係を示すグラフである。縦軸は、共振回路204におけるキャパシタC1、C2、コイルLcのインピーダンスZを示す。横軸は駆動周波数foを示す。共振回路204のインピーダンスZは、共振時において最低値Z
minとなる。
【0041】
図2においては、駆動周波数fo=100kHz、すなわち、駆動周波数fo=共振周波数frとなるとき、インピーダンスZは最低となり、キャパシタC1、C2とコイルLcは共振状態となる。駆動周波数foと共振周波数frがずれると、インピーダンスZにおける容量性リアクタンスまたは誘導性リアクタンスが優勢となるためインピーダンスZも大きくなる。
【0042】
駆動周波数foが共振周波数frと一致するとき、共振回路204には共振周波数frにて交流電流I1が流れる。このとき、給電電極CS1、CS2から受電電極CR1、CR2への電力伝送効率は最大となる。
【0043】
駆動周波数foと共振周波数frがずれると、共振回路204には非・共振周波数の交流電流I1が流れる。共振回路204は共振しなくなるため、電力伝送効率は急速に悪化する。
【0044】
図3は、キャパシタC1、C2の外観図である。キャパシタC1、C2は、2枚の電極を対向させることにより形成される。この対向面積が変化すると、静電容量も変化する。キャパシタC1、C2の静電容量が変化すると、共振周波数frが変化する。
【0045】
本実施形態においては、キャパシタC1の給電電極CS1、受電電極CR1は、円環形状を有する。また、キャパシタC2の給電電極CS2、受電電極CR2は円盤形状を有する。キャパシタC2が円環形状、キャパシタC1が円盤形状でもよい。各電極を円形とすれば、各電極が回転方向に位置変化しても対向面積はまったく変化しない。このため、キャパシタC1、C2の静電容量、ひいては、共振周波数frを安定させやすくなる。
【0046】
キャパシタC1の給電電極CS1と、キャパシタC2の給電電極CS2は同一平面上に形成され、かつ、給電電極CS1の内部に給電電極CS2が配置される。同様に、キャパシタC1の受電電極CR1と、キャパシタC2の受電電極CR2は同一平面上に形成され、かつ、受電電極CR1の内部に受電電極CR2が配置される。キャパシタC1の内部にキャパシタC2が収められる構成となるため、共振回路204をコンパクトに形成できる。
【0047】
図4は、駆動周波数foと共振周波数frが一致するときの電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。時刻t0〜時刻t1の期間(以下、「第1期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオン、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる期間である。時刻t1〜時刻t2の期間(以下、「第2期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオフ、スイッチングトランジスタQ2がオンとなる期間、時刻t2〜時刻t3の期間(以下、「第3期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオン、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる期間、時刻t3〜時刻t4の期間(以下、「第4期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオフ、スイッチングトランジスタQ2がオンとなる期間であるとする。
【0048】
スイッチングトランジスタQ1のゲート・ソース電圧VGS1が所定の閾値Vxを超えたとき、スイッチングトランジスタQ1は飽和状態となる。したがって、第1期間の開始タイミングである時刻t0にスイッチングトランジスタQ1がオン(導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1が流れ始める。いいかえれば、正方向(第1電流経路)に電流ISが流れ始める。
【0049】
第2期間の開始タイミングである時刻t1にスイッチングトランジスタQ1がオフ(非導通)となると、ソース・ドレイン電流IDS1は流れなくなる。代わりに、スイッチングトランジスタQ2がオン(導通)となり、ソース・ドレイン電流IDS2が流れはじめる。すなわち、負方向(第2電流経路)に電流ISが流れ始める。
【0050】
電流ISと、電流I1、誘導電流ISSは同相であり、電位Vq1は誘導電流ISSと同相である。このため、電流ISの電流波形と電位Vq1の電圧波形は同期する。電位Vq1の電圧波形を観察することにより、電流IS(ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2)の電流位相を計測できる。第3期間、第4期間以降は、第1期間、第2期間と同様の波形を繰り返す。
【0051】
図5は、駆動周波数foが共振周波数frよりも大きい場合の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。駆動周波数foが共振周波数frよりも大きい場合、共振回路204のインピーダンスZには誘導性リアクタンス成分が現れ、交流電流ISの電流位相は電圧位相に対して遅れる。上述のように、電流ISと電位Vq1は同相であるから、電位Vp1と電位Vq1の電圧波形を比較すれば、供給電力における電流位相と電圧位相の位相差tdを検出できる。
【0052】
図4に示したように、駆動周波数fo=共振周波数frのときには、第2期間の開始タイミングである時刻t1から電流ISが流れ始め電位Vq1>0となる。この場合には、位相差td=0である。駆動周波数fo>共振周波数frの場合、電流ISは時刻t1よりも遅い時刻t5から流れ始めVq1>0となるため、位相差td=t0−t5<0となる。駆動周波数foと共振周波数frがずれると、出力電力効率が悪化し、電流ISや電圧Vq1の振幅は共振時に比べて小さくなる。
【0053】
図6は、駆動周波数foが共振周波数frよりも小さい場合の電圧および電流の変化過程を示すタイムチャートである。駆動周波数foが共振周波数frよりも小さい場合、インピーダンスZに容量性リアクタンス成分が現れ、電流ISの電流位相は電圧位相に対して進む。電流ISは時刻t1よりも早い時刻t6から流れ始めるため、位相差td=t0−t6>0となる。電流ISや電圧Vq1の振幅は共振時に比べて小さくなる。
【0054】
図7は、位相検出回路150へ入力される各種電圧の変化過程を示すタイムチャートである。電位Vp1は、オシレータ210の交流電圧に同期して変化する。第1期間と第3期間において電位Vp1>0となる。第1波形整流器142は、電位Vq1が所定値、たとえば、0.1(V)以上となると5(V)に飽和する増幅器である。このため、電位Vq1がアナログ波形となる場合にも、第1波形整流器142はデジタル波形の電圧Vq2を生成できる。
【0055】
電位Vq1は、電流IS、I1に同期して変化する。
図7では、駆動周波数fo<共振周波数frの場合の波形を示している。したがって、電流位相が電圧位相よりも進んでいる。第2波形整流器144は、アナログ波形の電位Vp1を増幅し、デジタル波形の電圧Vp2を生成する。
【0056】
位相検出回路150は、電圧Vp2の立ち上がりエッジ時刻t0と、電圧Vq2の立ち上がりエッジ時刻t6を比較し、t0−t6により位相差tdを求める。第1波形整流器142と第2波形整流器144により、電位Vq1と電位Vp1をデジタル波形に変換(整形)することにより、位相検出回路150は位相差tdを検出しやすくなる。もちろん、位相検出回路150は、電位Vq1と電位Vp1を直接比較して位相差tdを検出してもよい。
【0057】
ワイヤレス電力伝送システム100では、共振回路204が発生させる交流磁界を利用して検出コイルLSSに誘導電流ISSを発生させることにより、電流位相を計測している。このため、共振回路204への計測負荷を抑制しつつ電流位相を計測できる。
【0058】
図8は、制御電圧Vtと駆動周波数foの関係を示すグラフである。
図8に示す関係は、駆動周波数追随回路152において設定されている。位相差tdの大きさは、共振周波数frの変化量に比例する。そこで、位相検出回路150は、位相差tdに応じて制御電圧Vtの変化量を決定し、駆動周波数追随回路152は制御電圧Vtに応じて駆動周波数foを決定する。
【0059】
まず、初期状態では共振周波数fr=100kHzなので、駆動周波数fo=100kHzに設定される。制御電圧Vt=3(V)に初期設定される。共振周波数frが100kHzから90kHzに変化した場合を想定する。駆動周波数fo(=100kHz)>共振周波数fr(=90kHz)となるため、位相差td<0となる。位相差tdは、共振周波数frの変化量(−10kHz)に比例する。位相検出回路150は、位相差tdに応じて制御電圧Vtの変化量を決定する。上記設例では、位相検出回路150は制御電圧Vtの変化量を−1(V)とし、新たな制御電圧Vt=2(V)を出力する。駆動周波数追随回路152は、
図8のグラフに示す関係にしたがって、制御電圧Vt=2(V)に対応する駆動周波数fo=90kHzを出力する。このような処理により、共振周波数frが変化しても駆動周波数foを自動的に追随させることができる。
【0060】
位相検出回路150と駆動周波数追随回路152、オシレータ210はワンチップとして回路構成されてもよい。また、位相検出回路150や駆動周波数追随回路152の処理はソフトウェアにより処理されてもよい。たとえば、位相差tdと駆動周波数foの変化量とをあらかじめ対応づけた設定情報を保持しておき、検出された位相差tdの大きさに応じて駆動周波数foを調整してもよい。
【0061】
図9は、ワイヤレス電力伝送システム100を応用したテーブル102と卓上ランプ104の側面図である。テーブル102は、ワイヤレス給電装置200の機能を内蔵する。ワイヤレス給電装置200は、全体としてテーブル板の裏面に設置されてもよいし、テーブル板内部に格納されてもよい。
【0062】
給電電極CS1、CS2はワイヤレス給電装置200から交流電力を供給される。卓上ランプ104は、ワイヤレス受電装置300の機能を内蔵する。卓上ランプ104は、受電電極CR1、CR2を含む。テーブル102の給電電極CS1、CS2と受電電極CR1、CR2が向かい合うように、卓上ランプ104をテーブル102に置くと、テーブル102の給電電極CS1、CS2から卓上ランプ104にワイヤレス給電される。ランプは、
図1の負荷Rに対応する。このランプは交流電流により点灯するランプでもよい。あるいは、共振回路204に流れる交流電流I1を、図示しない整流回路により直流電流に変換し、ランプに供給してもよい。
【0063】
図10は、ワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図の第1変形例である。コイルLcは、共振回路204の一部であればよい。
図10に示すように、コイルLcを、送電側共振部206側ではなく受電側共振部208側に設けてもよい。この場合、複数のワイヤレス受電装置300を設け、ワイヤレス受電装置300ごとに共振回路204の共振周波数frを調整してもよい。
【0064】
図11は、ワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図の第2変形例である。
図11に示すように、送電側共振部206にコイルLc1、受電側共振部208にコイルLc2を別々に設けてもよい(Lc=Lc1+Lc2)。この場合にも複数のワイヤレス受電装置300を設ければ、ワイヤレス受電装置300ごとに共振周波数frを調整できる。また、第1変形例のコイルLcよりも、コイルLc2を軽量・小型化できる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0066】
たとえば、結合トランスT2を介さずに、電源回路202から共振回路204に電力を供給してもよい。この場合、コイルLcの全部または一部を電源回路202側に設けることも可能である。