(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
最近、紫外光領域の光を発光するLED素子の開発が進められており、このような紫外光領域の光を放射するLED素子を、従来においては水銀を封入した放電ランプを光源として用いていた種々の分野に用いることが検討されている。
紫外光領域の光を放射するLED素子を備えた光源ユニットの或る種のものとしては、複数のLED素子が配置されたLED基板がヒートシンクの上面に配設された、その外観形状が直方体状の光源モジュールが、当該光源モジュールの光放射方向前方に開口部を有するアルミニウム製のカバー部材に覆われるように設けられており、当該光源モジュールを構成するLED素子からの光がカバー部材の開口部を塞ぐように設けられたガラス製の窓部材を介して放射される構成のものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この光源ユニットにおいて、カバー部材は、光源モジュールの4つの側面の各々に、それぞれネジ部材によって固定された複数の板状部材によって形成されている。
【0003】
このような構成の光源ユニットは、具体的に、例えば特許文献1にも示されているように、光硬化型インクジェットプリンタ装置における、光硬化型のインクを紙などの印刷対象物に定着させるための定着用光源として用いることが提案されており、その他にも、光硬化装置において、光硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を硬化させるための硬化用光源などとして用いることが検討されている。
このように光源ユニットをインクの定着用光源または樹脂組成物の硬化用光源などとして用いる場合においては、窓部材に汚れが付着することがある。
具体的には、インクの定着用光源として用いる場合においては、印刷対象物に対してインクが噴射される際に、噴射されたインクの一部が印刷対象物に付着せずに周囲に飛散し、光源ユニットの窓部材にも汚れとして付着する。またこのようにして窓部材に付着した光硬化型のインクは、紫外光が照射されることによって硬化し、その硬化した状態で汚れとして付着している場合もある。
また、樹脂組成物の硬化用光源として用いる場合においては、樹脂組成物に含有されているシロキサンなどが蒸発し、光源ユニットの窓部材に付着することに起因して当該窓部材に白濁(曇り)が生じる。
このようにして光源ユニットの窓部材に付着した付着物(汚れ)は、アルコールなどの有機溶剤を付けた布で窓部材を拭くことによって除去することができる場合もあるが、このような簡便な拭き取り操作によっては、例えば光硬化型のインクが硬化した状態の付着物などを除去することができない。このように拭き取ることのできない付着物を除去するためには、有機溶剤中に窓部材の付着物の付着している外表面の全面を一定時間浸漬して洗い流すことが必要となる。
【0004】
しかしながら、窓部材の外表面全面を有機溶剤中に浸漬するためには光源ユニットにおける窓部材の配設部分を浸漬することが必要とされるが、光源ユニットの窓部材の配設部分を有機溶剤中に浸漬した場合には、例えば窓部材とカバー部材との間の間隙、あるいはカバー部材における当該カバー部材を構成する板状部材同士の間の間隙などから有機溶剤がカバー部材の内部に入り込み、それに起因してカバー部材の内部に配設されているLED素子がショートしてしまう、という問題がある。
【0005】
また、カバー部材に窓部材が設けられてなる構成の光源ユニットにおいては、窓部材とカバー部材との間の間隙には、ゴミが入り込んだり、光源ユニットをインクの定着用光源または樹脂組成物の硬化用光源などとして用いる場合において、汚れが入り込む、または光源ユニットの窓部材に付着した付着物の拭き取り操作中において窓部材から除去された汚れ(付着物)が入り込んでしまうことなどがあることから、このようにして窓部材とカバー部材との間の間隙にゴミや汚れが入り込むことに起因して弊害が生じるおそれがある、という問題がある。またその他にも、特に窓部材を接着剤を用いて固定している場合においては、例えば光源ユニットにおける窓部材の配設部分を有機溶剤中に浸漬することなどによって窓部材の接着接合部分に液体が浸透すること、あるいは窓部材の接着接合部分にLED素子からの光(紫外光)が照射されることによって劣化が生じることなどに起因して、接着剤の接着性能が低下して筒状ケーシングと窓部材との間に長期間にわたって十分な密着性を得ることができなくなるおそれがある、という問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の光源ユニットの構成の一例を示す説明用斜視図であり、
図2は、
図1の光源ユニットにおける筒状ケーシングの内部の構成を示す説明用部分拡大断面図であり、
図3は、
図1の光源ユニットを構成する光源モジュールを示す説明用斜視図である。
この光源ユニット10は、複数のLED素子22が上面(
図2および
図3における上面)上に配列された矩形状のLED基板23が、直方体状の外観形状を有するヒートシンク25の上面(
図2および
図3における上面)に配設されてなる構成の光源モジュール20を備えており、当該光源モジュール20が、矩形筒状の筒状ケーシング30内に、当該筒状ケーシング30の一方(
図1および
図2における上方)の開口(以下、「光放射開口」ともいう。)から光源モジュール20を構成する複数のLED素子22からの光が放射されるように配設されてなる構成を有するものである。そして、筒状ケーシング30には、光放射開口を有する開口部(以下、「光放射開口部」ともいう。)に、当該光放射開口を塞ぐようにして、光源モジュール20を構成するLED基板23および複数のLED素子22を保護するための光透過性を有する窓部材35が、当該光放射開口部内に受容された状態で固定されて設けられており、この窓部材35と筒状ケーシング30との境界には、その全周にわたって液体不透過性を有するコーキング材よりなる矩形環状の環状シール部40が形成されている。
この図の例においては、光源モジュール20を構成するヒートシンク25の下面(
図2における下面)側に、当該光源モジュール20に外部電源から電力を供給するための電力供給機構(図示せず)が配設されており、この電力供給機構を覆うと共に筒状ケーシング30の他方の開口(
図1および
図2における下方)を塞ぐようにして、複数の金属製の板状部材18Aがネジ部材19によって螺合されて形成されたケーシング18が設けられており、このケーシング18と、筒状ケーシング30とによってカバー部材15が形成されている。また、カバー部材15を構成するケーシング18には、外部電源に接続するための電源供給コネクタ17が設けられている。尚、本実施例ではケーシング18を形成するための複数の構成部材として金属製の板状部材18Aを用いたが、ケーシング18に係る複数の構成部材は板状部材に限らず、ブロック状のものであってもよい。
【0015】
LED基板23の表面には、
図3に示すように、複数(図の例においては32個)のLED素子22が、等間隔で2列に配置されており、当該LED基板23の裏面には、複数のLED素子22に電力を供給するためのコネクタ(図示せず)が設けられている。
【0016】
LED素子22としては、紫外光領域の光を放射するもの、具体的には、例えばピーク発光波長が365nm、385nmおよび405nmのものが用いられる。
【0017】
LED基板23を構成する基材としては、LED素子22の種類などに応じた適宜のものが用いられ、例えば窒化アルミニウム製のものなどを用いることができる。
【0018】
ヒートシンク25は、
図3に示したように、LED基板23上に配列されたLED素子22を冷却するためのものであり、例えば銅製の立方体状の外観形状を有するヒートシンク本体25Aの内部に、例えば冷却水などの冷却媒体を流通させるための流通流路が形成されており、この流通流路に対して冷却媒体を供給するための供給部(図示せず)と、当該流通流路から冷却媒体を排出するための排出部(図示せず)とが、ヒートシンク本体25Aの外表面におけるLED基板23が位置されている領域以外の領域に設けられてなるものである。尚、本実施例では冷却媒体を用いて冷却を行う構成のヒートシンクを示したが、ヒートシンクは、例えばファン付きのヒートシンクなどのファンなどによって強制空冷する構成のものであってもよい。
【0019】
筒状ケーシング30は、
図4に示すように、境界部分のない一体構造を有するものである。
ここに、本明細書中において、「境界部分のない一体構造」とは、例えば切削加工などによって一体形成することによって得られる接合部分を有さない構造、または複数の部材によって構成され、部材同士を繋ぎ合せたような接合部分を有するものの、その接合部分が例えば溶接なとによって当該接合部分に間隙がないように形成されてなり、液体に対して密閉性を有する構造を示す。
この図の例において、筒状ケーシング30は、矩形筒状であって4つの側面部を有する構成のものであるが、これらの4つの側面部30A,30B,30C,30Dは連続しており、接合部分および境界部分を有さないものである。また、筒状ケーシング30の外周面においては、端縁角の各々が面取りされている。尚、本実施例における筒状ケーシング30は、金属ブロックを切削加工することによって一体成形されてなるものであって4つの側面部における互いに隣接する側面部の間にも接合部分および境界部分を有さないものであるが、筒状ケーシングは、例えば4つの板状部材が溶接などにより接合されて形成されており、板状部材同士が繋ぎ合わされている4つの接合部分が、当該接合部分に隙間がなく形成されている構成のものであってもよい。
【0020】
また、筒状ケーシング30内には、光源モジュール20が収容されていると共に、光放射開口部内において窓部材35を受容するための窓部材受容空間が形成されている。
この図の例において、窓部材受容空間は、筒状ケーシング30における光放射開口部の内周面と後述する窓部材支持用凸部33によって形成されており、窓部材35を、その外表面36が筒状ケーシング30の光放射開口側の先端面31の位置するレベルよりも下方(
図2における下方)に位置した状態に配設することのできる深さを有している。具体的に、窓部材受容空間の深さ(筒状ケーシング30の先端面31と窓部材支持用凸部33の側面33Aとの離間距離)は2mmである。
【0021】
筒状ケーシング30は、その内部に収容すべき構成部材、具体的には光源モジュール20および窓部材35などに応じて適宜な形状とされるが、その厚みは、特に光源ユニット10の複数を配列して用いる場合においては、互いに隣り合う光源ユニット10における窓部材35を近接させることによって発光の不連続領域が大きくなることを抑制するために小さく(例えば2.5mm以下)とすることが好ましい。
この図の例において、筒状ケーシング30は、窓部材受容空間を囲繞する内周面に係る部分が他の部分に比して大きな厚みを有しており、窓部材受容空間を囲繞する内周面に係る部分の厚みは3.4mmである。また、他の部分(窓部材受容空間を囲繞する内周面に係る部分以外の部分)の厚みについては、短辺の側面(側面部30A,30C)の厚みは小さいことが好ましいが、長辺の側面(側面部30B,30D)は機械的強度を保持する必要があるため、長辺の側面の厚みは短辺の側面の厚みよりも大きく、例えば、長辺の側面の厚みは2mm、短辺の側面の厚みは1.5mmとすることができる。
【0022】
筒状ケーシング30の材質としては、窓部材35の外表面36に付着した付着物(汚れ)を除去するために用いられる有機溶剤に対する耐薬品性を有する金属または樹脂が用いられる。具体的には、例えばアルミニウムなどが挙げられる。
この図の例において、筒状ケーシング30の外周面全面には、光の散乱を防止する観点から、黒アルマイト処理が施されている。また、筒状ケーシング30の内周面における、光源モジュール20を構成するLED素子22からの光が光放射開口部に固定されている窓部材35に至るまでの光路を囲繞する領域(以下、「光路囲繞面」ともいう。)には、光源モジュール20を構成するLED素子22からの光を高い効率で窓部材35から放射させる観点から、鏡面加工が施されている。
【0023】
また、筒状ケーシング30には、光放射開口部の内周面に窓部材支持用凸部33が設けられており、この窓部材支持用凸部33の表面における、光源モジュール20を構成するLED素子22からの光が遮光された状態となる光放射方向前方側領域に接着剤(以下、「窓部材固定用接着剤」ともいう。)によって窓部材35が接着接合されて支持固定されており、これにより、筒状ケーシング30の光放射開口部において窓部材35が固定されている。
この窓部材支持用凸部33は、光放射開口部の内周面の全周にわたって光放射開口を形成する先端内周縁31Aに沿って伸びる矩形環状の鍔部よりなり、筒状ケーシング30の内周面に垂直な方向に突起し、その断面形状が四角状のものである。
そして、
図5に示すように、窓部材支持用凸部33の表面における筒状ケーシング30の内周面に垂直な面、すなわち窓部材支持用凸部33の側面のうちの光放射方向前方側(
図5における上方側)の側面(以下、「窓部材載置面」ともいう。)33A上には、窓部材35の内表面37における周縁部分が位置され、その窓部材35の内表面37における周縁部分と窓部材載置面33Aとの間の間隙に窓部材固定用接着剤よりなる窓部材固定用接着剤層45が形成されている。この窓部材固定用接着剤層45は、窓部材支持用凸部33の表面のうちの光源モジュール20を構成するLED素子22からの光が遮光された状態となる窓部材載置面33A上の領域内のみに形成されるものであり、当該窓部材載置面33A以外の領域、すなわち光源モジュール20を構成するLED素子22からの光が照射される領域に形成されることはない。
この図の例において、窓部材支持用凸部33は、筒状ケーシング30に一体に設けられており、この窓部材支持用凸部33と筒状ケーシング30とは境界部分のない一体構造を有するものである。尚、本実施例では、窓部材支持用凸部33が一体に設けられた筒状ケーシング30は、金属ブロックを切削加工することによって形成した接合部分を有さないものであるが、複数の板状部材を溶接などで接合することによっても窓部材支持用凸部と筒状ケーシングとに境界部分がない一体構造を形成することができる。
また、窓部材支持用凸部33の表面における窓部材受容空間を囲繞する窓部材載置面33A以外の領域、具体的には光放射方向後方側(
図5における下方側)の側面33Bおよび先端面33Cには、筒状ケーシング30の光路囲繞面と同様に、鏡面加工が施されている。
【0024】
窓部材支持用凸部33の筒状ケーシング30の内周面に垂直な方向の寸法(以下、「突出高さ」ともいう。)は、当該窓部材支持用凸部33が窓部材35を十分に支持固定することができ、また必要に応じて、環状シール部40に光源モジュール20を構成する複数のLED素子22からの光が照射されることのないような寸法とされることが好ましい。
この図の例において、窓部材支持用凸部33の突出高さは、窓部材受容空間を囲繞する筒状ケーシング30の内周面からの突出高さが2.1mmであり、光路囲繞面からの突出高さが3mmである。
【0025】
窓部材35を固定するための窓部材固定用接着剤としては、窓部材支持用凸部33の材質、窓部材35の材質および必要に応じて筒状ケーシング30の材質などに応じた適宜のものが用いられるが、窓部材固定用接着剤を窓部材支持用凸部33の窓部材載置面33Aに塗布する作業性の観点からは低粘度のものが好ましく、例えばシリコーンゴム系接着剤などを用いることができる。
シリコーンゴム系接着剤の好ましい具体例としては、例えば「KER−2600(A/B)」および「KER−2500(A/B)」(いずれも信越化学工業株式会社製)などの熱硬化型のものが挙げられる。
【0026】
窓部材35は、
図6に示すように、例えば厚み1.75mmの平板状であって、筒状ケーシング30における光放射開口部内における窓部材受容空間に受容されて当該筒状ケーシング30の光放射開口を塞ぐことのできるよう、当該光放射開口部に適用した形状を有するものである。
図の例において、窓部材35は、筒状ケーシング30の光放射開口の縦横寸法よりも僅かに小さい縦横寸法を有する矩形平板状のものであり、
図5に示したように、その外周面38が全周にわたって筒状ケーシング30の窓部材受容空間を囲繞する内周面より内方側に位置するように配置されており、この窓部材35の外周面38と筒状ケーシング30の窓部材受容空間を囲繞する内周面との間には、その全周にわたって間隙が形成されている。また、この間隙には、光放射方向後方側(
図5における下方側)の領域(内方側の領域)においては窓部材固定用接着剤層45が形成されており、また光放射方向前方側(
図5における上方側)の領域(外方側の領域)においては後述するようにコーキング材が充填されている。またこの間隙における窓部材固定用接着剤層45が形成されている領域には、光源モジュール20を構成するLED素子22からの直接光が照射されることはない。
【0027】
窓部材35の材質としては、光源モジュール20を構成するLED素子22からの光を透過することのできる光透過性を有すると共に、当該窓部材35の外表面36に付着した付着物(汚れ)を除去するために用いられる有機溶剤に対する耐薬品性を有するガラスまたは樹脂が用いられる。具体的には、例えばホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0028】
また、窓部材35には、光放射方向前方側(
図6(b)における上方側)の端縁角が面取りされることにより、外表面36と、外周面38との間に、その全周にわたって面取り面39が形成され、この面取り面39と外周面38とによって窓部材35における周縁部が構成されている。
図の例においては、窓部材35には、45°面取り加工がなされおり、外周面38に係る部分の厚み(内表面37と面取り面39との離間距離)は0.75mmである。
【0029】
そして、窓部材35の周縁部と、筒状ケーシング30の窓部材受容空間を囲繞する内周面とにより、窓部材35と筒状ケーシング30との境界が形成されており、当該境界には、その全周にわたって、当該窓部材35の周縁部と、当該筒状ケーシング30の窓部材受容空間を囲繞する内周面との間に形成されている間隙により、コーキング材を充填するためのコーキング溝42が形成されている。
窓部材35と筒状ケーシング30との境界にコーキング溝42を形成することにより、環状シール部40の形成位置およびその寸法などを制御することができ、そのため、窓部材35を介して放射される光源モジュール20を構成するLED素子22からの光の進行が環状シール部40によって阻害されることを防止することができる。
【0030】
コーキング溝42は、コーキング材を充填する作業性や窓部材35の位置決めなどの観点から、溝深さが大きくなるに従って溝幅が小さくなる形状を有するものであることが好ましい。
また、コーキング溝42の溝深さは、0.9〜1.75mmであることが好ましい。
図の例において、コーキング溝42は、筒状ケーシング30における窓部材受容空間を囲繞する内周面と、窓部材35の面取り面39および当該面取り面39に連続する外周面38における光放射方向前方側の領域との間の間隙によって形成されており、溝深さが大きくなるに従って溝幅が小さくなる、その断面形状が略直角三角形のものであり、最大溝幅は1mmであって最小溝幅は0.1mmであり、最大溝深さ(窓部材35の外表面36からの最大溝深さ)は1.75mmである。
【0031】
環状シール部40は、筒状ケーシング30と窓部材35との境界において、筒状ケーシング30における光放射開口部の内周面と窓部材35の周縁部とによって構成される境界面の間の間隙を、当該間隙を介して外部と光源ユニット10の内部、すなわち筒状ケーシング30の内部とが連通することのないように塞ぐためのものであり、窓部材35と筒状ケーシング30との接着接合部分の外方側(
図5における上方側)において窓部材35の周縁部を囲むように設けられる。
【0032】
環状シール部40は、窓部材35を介して放射される光源モジュール20を構成するLED素子22からの光を高い効率で利用するとの観点からは、筒状ケーシング30の光放射開口側の先端面31の位置するレベルよりも下方側(
図5における下方側)の領域内に位置しており、窓部材35における外表面36に外周縁36Aを覆うことのないように形成されていることが好ましい。また、ユニット配置の観点からは、窓部材35における外表面36の外周縁36Aおよび筒状ケーシング30における光放射開口を形成する先端内周縁31Aを覆うことなく、先端面31より飛び出すことのないように形成されていることが好ましい。
この図の例においては、環状シール部40は、コーキング溝42内にコーキング材が充填されることによって形成され、筒状ケーシング30の光放射開口側の先端面31の位置するレベルよりも下方側の領域内に位置しており、また、環状シール部40の内方側の周縁41Aが窓部材35における外表面36の外周縁36Aの位置するレベルよりも下方に位置し、環状シール部40の外方側の周縁41Bが筒状ケーシング30における光放射開口を形成する先端内周縁31Aの位置するレベルよりも下方に位置しており、窓部材35の外周縁36Aおよび筒状ケーシング30の先端内周縁31Aはその全周にわたって露出した状態とされている。このような状態では、筒状ケーシング30の先端内周縁31Aを基準に光照射対象物等に面接触させ硬化処理等を行う場合に一定の距離を正確に確保でき、安定した照射量を確保できるといった利点がある。
【0033】
環状シール部40を形成するためのコーキング材としては、液体不透過性と共に、窓部材35の外表面36に付着した付着物(汚れ)を除去するために用いられる有機溶剤に対する耐薬品性を有するものが用いられ、また、光源ユニット10の構造上、環状シール部40に光源モジュール20を構成するLED素子22からの光が照射される場合においては、液体不透過性および耐薬品性と共に、耐光性(耐紫外光性)を有するものであることが好ましい。
コーキング材の具体例としては、例えばシリコーン系コーキング材などを用いることができ、また、シリコーン系コーキング材の好ましい具体例としては、例えば、「S−45W」(信越化学工業株式会社製)および「TOSSEAL381W」(メンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などの1成分室温硬化型のもの、「TSE3261−G」(メンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などの1成分熱硬化型のものが挙げられる。
【0034】
以上の構成の光源ユニット10によれば、窓部材35が固定されている筒状ケーシング30が境界部分のない一体構造を有するものであると共に、窓部材35と筒状ケーシング30との境界に、当該境界の全周にわたって液体不透過性を有するコーキング材よりなる環状シール部40が設けられていることから、筒状ケーシング30の外周面には、外部と当該筒状ケーシング30の内部とを連通する間隙がなく、また、窓部材35と筒状ケーシング30との境界においては、当該境界を構成する窓部材35の外周面38および面取り面39よりなる周縁部と、筒状ケーシング30の窓部材受容空間を囲繞する内周面との間に形成されている、外部と筒状ケーシング30の内部とを連通する間隙が環状シール部40を構成するコーキング材によって確実に液密閉塞されているため、筒状ケーシング30に窓部材35が固定されてなる構成の筐状体は高い防水構造を有するものとなり、その筐状体よりなる窓部材35の配設部分において高い防水性が得られる。
従って、光源ユニット10は、窓部材35の配設部分に高い防水性を有するものであることから、この窓部材35の配設部分を、2時間もの長時間にわたって液体中に浸漬した場合であっても、筒状ケーシング30の内部に液体が入り込むことがない。
また、光源ユニット10は、窓部材35と筒状ケーシング30との境界において形成されている間隙が環状シール部40を構成するコーキング材によって塞がれた状態とされていることから、その間隙にゴミや汚れが入り込むことに起因して弊害が生じることがない。
【0035】
また、光源ユニット10においては、窓部材35が、筒状ケーシング30の内周面に設けられた窓部材支持用凸部33の窓部材載置面33Aに窓部材固定用接着剤によって接着接合されており、この窓部材載置面33Aには、
図7に示すように、光源モジュール20を構成するLED素子22からの光が窓部材支持用凸部33の側面33Bおよび先端面33Cによって遮光されるため、窓部材35を固定している窓部材固定用接着剤に光(紫外光)が照射されることがない。ここに、
図7においては、LED素子22からの光の光路の例が矢印によって示されており、光路L1はLED素子22から窓部材35に向かう方向に発光された光の光路の例であり、光路L2はLED素子22から窓部材支持用凸部33の先端面33Cに向かう方向に発光され、当該先端面33Cにおいて反射される光の光路の例であり、光路L3はLED素子22から窓部材支持用凸部33の側面33Bに向かう方向に発光され、当該側面33Bにおいて反射される光の光路の例である。
しかも、窓部材35の接着接合部分が環状シール部40の内方側に位置されていることから、光源ユニット10の窓部材35の配設部分を液体中に浸漬した場合であっても、窓部材35を固定している窓部材固定用接着剤が液体に接触することがない。
従って、光源ユニット10によれば、窓部材固定用接着剤が紫外光に対する耐光性および液体不透過性を有さないものであっても、紫外光が照射されること、または液体が浸透することによって窓部材固定用接着剤が劣化し、それによって窓部材固定用接着剤の接着性能が低下することがなく、筒状ケーシング30と窓部材35との間の密着性が維持され、その結果、環状シール部40によって窓部材35と筒状ケーシング30との境界が液密に封止された状態が維持されるため、窓部材の配設部分において、長期間にわたって高い防水性が得られる。
【0036】
この光源ユニット10は、光硬化型インクジェットプリンタ装置における、光硬化型のインクを紙などの印刷対象物に定着させるための定着用光源、あるいは、光硬化装置において、光硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を硬化させるための硬化用光源などとして好適に用いることができる。
すなわち、光源ユニット10によれば、インクの定着用光源または樹脂組成物の硬化用光源などとして用いて窓部材35に汚れが付着した場合であっても、その汚れを、筒状ケーシング30の内部に有機溶剤が入り込むことに起因して生じる、例えば光源モジュール20を構成するLED素子22がショートしてしまうなどの弊害を伴わずに、有機溶剤中に光源ユニット10の窓部材の配設部分を浸漬し、それによって窓部材35の汚れの付着している外表面36の全面を有機溶剤中に一定時間浸漬して洗い流すことができる。しかも、窓部材35と筒状ケーシング30との境界において形成されている間隙に、ゴミなどの汚れが入り込むことがなく、また窓部材35に付着した汚れを有機溶剤を付けた布で拭き取るための操作中において窓部材35から除去された汚れが入り込むことがないため、その間隙にゴミや汚れが入り込むことに起因して弊害が生じることがない。
【0037】
本発明の光源ユニットにおいては、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、窓部材支持用凸部は、窓部材を十分に支持固定することができるものであれば、光放射開口部の内周面の全周にわたって伸びるものでなくてもよく、また筒状ケーシングと一体構造を有するものでなくてもよい。
また、コーキング溝は、窓部材と筒状ケーシングとの境界にコーキング材を充填することのできるものであれば、窓部材の光放射方向前方側の端縁角を面取りすることによって形成されたものに限定されず、筒状ケーシングの窓部材受容空間を囲繞する内周面をテーパー状とすることによって形成されたものであってもよく、また、筒状ケーシングの窓部材受容空間を囲繞する内周面をテーパー状とすると共に、窓部材の光放射方向前方側の端縁角を面取りすることによって形成されたものであってもよい。