(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737089
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】温度変化がある型枠群の油圧シリンダによる搬送方法および装置
(51)【国際特許分類】
B22D 47/02 20060101AFI20150528BHJP
B22C 23/00 20060101ALI20150528BHJP
B22D 33/00 20060101ALI20150528BHJP
F15B 15/28 20060101ALI20150528BHJP
F15B 11/04 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
B22D47/02
B22C23/00 H
B22D33/00
F15B15/28 A
F15B11/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-192747(P2011-192747)
(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2013-52422(P2013-52422A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−042073(JP,A)
【文献】
実開平05−053754(JP,U)
【文献】
実開平05−000244(JP,U)
【文献】
特開平09−253832(JP,A)
【文献】
米国特許第04252231(US,A)
【文献】
米国特許第05553655(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 11/00−25/00
B22D 33/00−47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に配置された温度変化がある型枠群を、油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、1型枠分のピッチずつ間歇搬送する方法であって、
油圧プッシャーシリンダを作動させて型枠群を油圧クッションシリンダ側に押し出し、油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間の間隙をなくす枠寄せ工程と、
油圧プッシャーシリンダを高速作動させるとともに、減速域にて油圧クッションシリンダを高背圧状態に切り替えて減速し、型枠群を1型枠分のピッチだけ搬送する搬送工程と、
型枠群が停止後、更に油圧クッションシリンダを後退させて型枠との間に間隙を形成する最終工程とからなり、
上記の各工程における油圧プッシャーシリンダの高速作動終了位置および押し出し作動終了位置を、油圧クッションシリンダのフレームに設けた位置検出器により制御することを特徴とする温度変化がある型枠群の油圧シリンダによる搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により、直列に配置された温度変化がある型枠群を、油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、1型枠分のピッチずつ間歇搬送するための装置であって、
油圧プッシャーシリンダを、型枠群の温度変化によって発生する油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間の間隙の総和よりも大きいストロークを持つものとし、
油圧プッシャーシリンダの高速作動終了位置および押し出し作動終了位置を検出する位置検出器を、油圧クッションシリンダのフレームに配置したことを特徴とする温度変化がある型枠群の油圧シリンダによる搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用の型枠のような大きい温度変化のある型枠群を油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、1型枠分のピッチずつ間歇搬送する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直列に配置された型枠群を油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、相互間の間隙をなくした状態で1型枠分のピッチずつ間歇搬送する技術は、特許文献1に示されるように古くから知られている。特許文献1では油圧プッシャーシリンダおよび油圧クッションシリンダとして空気圧シリンダが用いられているが、空気圧シリンダは作動速度、作動距離等を細かく制御することが困難であるうえ、重量の大きい型枠には十分に対応できないという問題があった。
【0003】
そこで本出願人は先に、特許文献2に示される油圧シリンダを用いた型枠群の搬送技術を開発した。この特許文献2の搬送方法は、油圧プッシャーシリンダを作動させて型枠群を油圧クッションシリンダ側に押し出し、油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間の間隙をなくす枠寄せ工程と、油圧プッシャーシリンダを高速作動させるとともに、減速域にて油圧クッションシリンダを高背圧状態に切り替えて減速し、型枠群を1型枠分のピッチだけ搬送する搬送工程とを含むものである。この特許文献2の方法では、油圧プッシャーシリンダ側に減速開始位置の検出器(イキ減速)や押し出し作動終了位置の検出器(イキ端)を取り付けて制御を行っている。
【0004】
一般的な生砂鋳型用の型枠の場合、熱膨張量は1枠当たり約1.5mm程度であり、50枠を1列に並べて移送する場合の温度変化に伴う停止位置の変化量は最大でも75mmである。この程度の停止位置の誤差であれば、特許文献2の方法で対応することができる。しかし、解枠後の素材の二次冷却、搬送設備に使用する型枠の場合には温度変化がより大きいため、温度変化による熱膨張量は1枠当たり約3.5mmに達し、50枠を1列に並べて移送する場合の温度変化に伴う停止位置の変化量は最大で175mmとなる。
【0005】
すなわち特許文献2の方法では、型枠が冷えている場合には最大で175mm程度の送り足らず(送り不足)が発生することとなり、定位置まで型枠を送り込めないこととなる。また、解枠後の素材の二次冷却、搬送設備が稼働中に停止し、過度に型枠の温度が上昇したような場合には、型枠の停止位置が所定位置を超えてしまい、鋳造設備の破損を招くおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭62−46665号公報
【特許文献2】特許第3680997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、解枠後の素材の二次冷却、搬送設備に使用する型枠のように、温度変化による型枠の熱膨張量が大きい場合にも、型枠の停止位置の誤差をなくすことができる型枠群の油圧シリンダによる搬送方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の温度変化がある型枠群の油圧シリンダによる搬送方法は、直列に配置された温度変化がある型枠群を、油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、1型枠分のピッチずつ間歇搬送する方法であって、油圧プッシャーシリンダを作動させて型枠群を油圧クッションシリンダ側に押し出し、油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間の間隙をなくす枠寄せ工程と、油圧プッシャーシリンダを高速作動させるとともに、減速域にて油圧クッションシリンダを高背圧状態に切り替えて減速し、型枠群を1型枠分のピッチだけ搬送する搬送工程と、型枠群が停止後、更に油圧クッションシリンダを後退させて型枠との間に間隙を形成する最終工程とからなり、上記の各工程における油圧プッシャーシリンダの高速作動終了位置および押し出し作動終了位置を、油圧クッションシリンダ
のフレームに設けた位置検出器により制御することを特徴とするものである。
【0009】
また、上記の課題を解決するためになされた本発明の温度変化がある型枠群の油圧シリンダによる搬送装置は、請求項1に記載の方法により、直列に配置された温度変化がある型枠群を、油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、1型枠分のピッチずつ間歇搬送するための装置であって、油圧プッシャーシリンダを、型枠群の温度変化によって発生する油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間の間隙の総和よりも大きいストロークを持つものとし、油圧プッシャーシリンダの高速作動終了位置および押し出し作動終了位置を検出する位置検出器を、油圧クッションシリンダ
のフレームに配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、型枠群を油圧プッシャーシリンダと油圧クッションシリンダとにより挟み込み、1型枠分のピッチずつ間歇搬送するので、使用する油圧シリンダの出力を適切に選択すれば、重量の大きい型枠を衝撃を与えることなくピッチ搬送できることは従来と同様である。しかも本発明においては、油圧プッシャーシリンダの高速作動終了位置および押し出し作動終了位置を、油圧クッションシリンダ
のフレームに設けた位置検出器により制御するようにしたので、油圧クッションシリンダ側における型枠の停止位置は、型枠群の熱膨張の大小に影響されない。従って、温度変化による型枠の熱膨張量が大きい場合にも、型枠の停止位置の誤差をなくすことができる。
【0011】
また、油圧プッシャーシリンダを、型枠群の温度変化によって発生する油圧プッシャーシリンダ、型枠、油圧クッションシリンダ間の間隙の総和よりも大きいストロークを持つものとしておけば、型枠群の熱膨張の大小にかかわらず送り足らず(送り不足)が発生する恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の基本的な装置構成及び油圧配管系統図である。
【
図5】油圧プッシャーシリンダ、押し完了時状態の正面図及び平面図である。
【
図6】油圧クッションシリンダ、キキ完了時状態の正面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を、図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、対向して配置した油圧プッシャーシリンダ1と油圧クッションシリンダ2にて型枠群3、3を挟み込み、1型枠分ピッチ間歇枠送りする搬送ライン及び油圧配管系統図を示すものである。油圧プッシャーシリンダ1と油圧クッションシリンダ2の間には図示されない各種の装置があり、各装置の前後及び油圧プッシャーシリンダ1及び油圧クッションシリンダ2の前に、図示のように隙間4、4が設けてある。なお、油圧プッシャーシリンダ1は、これらの隙間4、4の総和よりも十分大きいストロークを持つものとする。
【0014】
油圧プッシャーシリンダ1と油圧クッションシリンダ2のピストンロッド12、12の先端には、
図2〜
図6に示すように枠押しヘッド13、13を取付け、ガイドレール14、14をガイドローラ15、15で挟み込むことにより油圧シリンダ11、11の姿勢を保持させている。
【0015】
図2〜
図6に示すように、油圧プッシャーシリンダ1にはカエリ端の検出器17が設けられている。また油圧クッションシリンダ2には、イキ減速18、イキ端19、キキ端20、モドリ端21の各検出器がフレーム16、16に固定して配置されている。イキ減速の検出器18は高速作動終了位置の検出器であり、イキ端の検出器19は押し出し作動終了位置の検出器である。ガイドレール14、14には各検出器をON、OFFするためのアテ22、22及び長アテ23が取り付けてある。
【0016】
さらに油圧配管を
図1により説明する。まず油圧プッシャーシリンダ1は、コントローラ31にて制御される比例制御弁32により速度制御される配管と連通されている。油圧クッションシリンダ2は、第1電磁弁33で制御し、ロッド12の縮み方向には第2電磁弁34を設け、背圧を切り替える2圧制御をすることにより大きな慣性力を持った高速搬送中の型枠群3、3を減速する。
【0017】
上記比例制御弁32のコントローラ31は、イキ方向チャンネル1(CH1)を高速に、チャンネル2(CH2)を中速に、カエリ方向チャンネル4(CH4)を高速に設定する。
【0018】
また両油圧シリンダ1、2のヘッド側油圧配管にロジック弁35、35を設け、油圧ユニット36、36のポンプ起動時、比例制御弁32及び第1電磁弁33から油のリークにより両油圧シリンダ1、2のロッド12、12が飛び出すのをこのロジック弁35、35により防止している。すなわち、油圧プッシャーシリンダ1のカエリ端、油圧クッションシリンダ2のキキ端にて、比例制御弁32及び第1電磁弁33が中立位置にある時(
図1参照)、油圧ユニット36からの高圧作動油は、比例制御弁32及び第1電磁弁33のそれぞれのPポートにて閉じられているが、微量の作動油が、それぞれのA,Bポート側へ漏れ出す現象が生じる。ロジック弁35がない場合、同じ圧力の作動油で同時にシリンダ11のロッド側とヘッド側を押すと、断面積が大きいヘッド側の力が大きいため、シリンダ11のロッド12が徐々に出てくる状態となる。この状態を防止するため、シリンダ11のヘッド側の配管途中にロジック弁35を取り付けている。
【0019】
尚、ロジック弁35は配管途中をスプリングで押し付ける弁で閉じる構造である。電磁弁のAポートからシリンダ11ヘッド側への作動油のリークは、スプリングの力で弁を押すことにより配管を閉じることで防止する。また、電磁弁の開閉でシリンダ11を駆動する場合、シリンダロッド12を出すときは、電磁弁Aポートからの作動圧力でピストンが押され弁が開く。シリンダロッド12を引くときは、シリンダヘッド側からの作動油で直接弁を押し開く。
【0020】
次に型枠群3、3の搬送方法について説明する。
図2は油圧プッシャーシリンダ1と油圧クッションシリンダ2による型枠群3、3の送りの原位置を示す。油圧プッシャーシリンダ1は、ロッド12が縮み端にあり、カエリ端17がアテ22にてONしている。油圧クッションシリンダ2は、ロッド12が延び端にあり、モドリ端21がアテ22にてONしている。隙間4は、搬入型枠(左端)3の前後及び油圧クッションシリンダ2の枠押しヘッド13の前にある。
【0021】
油圧プッシャーシリンダ1は、スタートすると比例制御弁32、チャンネル2(CH2)のみの中速でロッド12の延び方向に型枠群3、3を送る。送られた型枠群3、3は相互間の間隙4を吸収しながら油圧クッションシリンダ2の方向に移動し、右端の型枠3が油圧クッションシリンダ2の枠押しヘッド13に当たる。これにより
図3に示すように、油圧クッションシリンダ2側のモドリ端21がOFFとなる。この
図3の状態は、油圧プッシャーシリンダ1、型枠3、油圧クッションシリンダ2間の間隙4をなくす枠寄せ工程の完了を示している。
【0022】
このようにして、モドリ端21がOFFとなった
図3の状態に至ると共に、油圧プッシャーシリンダ1は比例制御弁32、チャンネル1(CH1)の高速で型枠群3、3を送り出す。この場合単純にチャンネル2(CH2)からチャンネル1(CH1)へ切り替えずチャンネル2(CH2)中速送り通電中にチャンネル1(CH1)を重ね通電し、高速送りとすることによりチャンネル切り替え時の枠送り衝撃発生を防止することが好ましい。
【0023】
次に
図4に示すように、高速作動終了位置の検出器である油圧クッションシリンダ2側のイキ減速の検出器18が長アテ23にてONされた時に、油圧クッションシリンダ2は第2電磁弁34がOFFし、高背圧に切り替わり減速が開始される。イキ減速18のON信号の検出漏れが発生した場合、型枠群3、3の減速がされず油圧クッションシリンダ2に高速で衝突する不具合が生じるため、長アテ23が使用され、確実に減速信号を入力する構造にしてある。
【0024】
次に油圧プッシャーシリンダ1押し完了状態が
図5に示されている。油圧プッシャーシリンダ1のロッド12は延び端にあり、一方の油圧クッションシリンダ2は縮んで長アテ23にてイキ端19(押し出し作動終了位置の検出器)をONしている。この時油圧クッションシリンダ2は、縮み途中であり、キキ端20はまだアテ22にてONしていない。
【0025】
イキ減速18がONした後油圧クッションシリンダ2が高背圧となるため、油圧プッシャーシリンダ1は、チャンネル1(CH1)高速送り通電中のまま減速される。イキ端19がONされるとチャンネル1(CH1)高速をOFFする。イキ端19がONの後一定タイマー時間経過後、比例制御弁32をチャンネル4に切り替え、油圧プッシャーシリンダ1のロッド12を高速で縮み方向に返す。油圧クッションシリンダ2は、スタートと同時に第2電磁弁34を通電し、ロッド12縮み方向を低背圧とする。イキ減速18のONにて第2電磁弁34をOFFし、高背圧とする。低背圧時は、押された型枠群3、3が先走りしないように挟み込み、高背圧時は、高速枠送り中の型枠群3、3を減速する。
【0026】
次に
図6に油圧クッションシリンダ2の再キキ完了状態が示されている。すなわち油圧プッシャーシリンダ1の押出し完了後油圧クッションシリンダ2のロッド12はキキ端20がONするまで縮むことにより油圧クッションシリンダ2前の型枠3の前後に、再び隙間4、4が設けられる。この後油圧クッションシリンダ2前の型枠3をライン外に搬出した後ロッド12はモドリ端21がONするまで延び、
図2に示す原位置に戻す。油圧クッションシリンダ2の再キキ開始と同時に第2電磁弁34を通電し、低背圧にする。
【0027】
本発明は上記の説明から明らかなように、大型の型枠を衝撃なくかつ高速搬送できると共に鋳型の型落ち等衝撃による損傷をなくすことができる。また油圧プッシャーシリンダの高速作動終了位置および押し出し作動終了位置を、油圧クッションシリンダ側に設けた位置検出器により制御するようにしたので、温度変化による型枠の熱膨張量が大きい場合にも、型枠の停止位置の誤差をなくすことができる利点がある。
【符号の説明】
【0028】
1 油圧プッシャーシリンダ
2 油圧クッションシリンダ
3 型枠
4 隙間
12 ロッド
13 枠押しヘッド
17 カエリ端の検出器
18 イキ減速の検出器
19 イキ端の検出器
20 キキ端の検出器
21 モドリ端の検出器
22 アテ
23 長アテ
31 コントローラ
32 比例制御弁
33 第1電磁弁
34 第2電磁弁
35 ロジック弁
36 油圧ユニット