特許第5737187号(P5737187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737187
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】制振性を有する成型材料および成型品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20150528BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150528BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20150528BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20150528BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20150528BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20150528BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20150528BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20150528BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20150528BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K3/22
   C08K3/34
   C08L23/04
   C08L23/10
   C08L9/00
   C08L23/08
   C08L25/12
   C08G63/16
   F16F15/02 Q
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-544245(P2011-544245)
(86)(22)【出願日】2010年11月26日
(86)【国際出願番号】JP2010071086
(87)【国際公開番号】WO2011068074
(87)【国際公開日】20110609
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2009-275791(P2009-275791)
(32)【優先日】2009年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彬史
(72)【発明者】
【氏名】芳仲 聰
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/018444(WO,A1)
【文献】 特開2001−261948(JP,A)
【文献】 特開昭59−131645(JP,A)
【文献】 特開2003−183431(JP,A)
【文献】 特開2007−056104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物からなる制振材料(α)と、流動性改善のための改質材(β)を含有する成型材料であって、
(1)ポリエステル樹脂(X)の全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)と全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)と主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率[(A1+B1)/(A0+B0)]が0.5〜1.0の範囲内であり、
(2)制振材料(α)における、ポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の質量比(X:Y:Z)が、15〜40:5〜30:30〜80の範囲であり、
(3)制振材料(α)の含有量が94〜97質量%であり、
(4)流動性向上のための改質材(β)が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソプレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びスチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
(5)メルトインデクサーを用いて、200℃、荷重10kg、オリフィス径2mmの条件で測定を行った際のメルトフローレートが、400〜10g/10minの範囲である
ことを特徴とする成型材料。
【請求項2】
請求項に記載の成型材料を成型してなる成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた制振性を有し、成形加工性にも優れ、且つ、制振材料の積層などの煩雑な工程を要せずに成型品が容易に製造可能な、成型材料及び成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶の部品に利用される成型材料には、耐衝撃性、耐熱性、強度、寸法安定性等の一般的な材料特性の他に、制振性(振動エネルギーを吸収する性質)が要求されている。
この制振性は成型品の形状に依存する部分も大きいが、使用する材料の弾性率や制振性にも依存する。これら多くの要求性能を単一の材料で全て満足させることは極めて困難であるため、複数の材料を複合化、例えば各種ポリマーのブレンドや、有機材料と無機材料の複合化や、異種材料を積層することにより制振性を有する成型材料が製造される。
しかしながら、特に弾性率と制振性は互いに相反する性能であるため、制振性を有する成型材料は、弾性率の高い材料と制振材料を組み合わせる必要がある。
【0003】
従来、制振材料のような振動エネルギーを吸収する材料として、塩化ビニル系樹脂に可塑剤を添加した軟質の塩化ビニル系樹脂が知られている。この軟質塩化ビニル系樹脂は、振動エネルギーを樹脂内部において摩擦熱として消費することで、振動エネルギーの減衰が計られるようになったが、振動エネルギーの吸収や減衰が不十分である。
【0004】
また、加工性、機械的強度、材料コストの面から優れる制振材料としてブチルゴムやNBRブタジエンアクリルニトリルゴムなどのゴム材料が多く用いられている。ところがこれらのゴム材料は、一般の高分子材料の中では最も減衰性(振動エネルギーの伝達絶縁性能、あるいは伝達緩和性能)に優れてはいるものの、ゴム材料単独で制振材料として使用するには制振性が低く、例えば建造物や機器類の防振構造には、ゴム材料と鋼板とを積層した積層体、あるいはこれに塑性変形して振動エネルギーを吸収する鉛コアやオイルダンパーを組み合わせた制振構造体という複合形態で使用されている。
このような制振材料としてのゴム材料は、上記の如く単独では使用できず、複合化を余儀なくされていたので、必然的にその防振構造も複雑なものとなってしまうことから、制振材料自身、ゴム材料自身の高制振性化が求められている。
【0005】
上記のような軟質塩化ビニル系樹脂やゴム材料とは異なる制振材料として、主鎖のエステル結合間の炭素数が奇数である部分を持つポリエステル樹脂組成物が開示されている(特許文献1、特許文献2)。このポリエステル樹脂組成物は室温付近での制振性能に優れており、制振材料として有望な材料である。しかし、これらの制振材料は成型時の流動性が悪く成型材料としての利用が難しいという欠点がある。そのため制振材料の積層方法には、接着剤や粘着剤、両面テープでの張り合わせ、ラミネートや塗布、プレスによる接着、もしくは自己粘着型制振材料の張り合わせなどの方法を取る必要があり工程が複雑になりコストの上昇につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−052377号公報
【特許文献2】国際公開第08/018444号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、以上のような状況から、制振材料の積層などの煩雑な工程を要せずに成型品が容易に製造され、優れた制振性と成型性を発揮する成型材料および成型品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂及びフィラーからなる制振材料と流動性向上のための特定の改質材を混合させることにより制振材料の流動性が向上し成型性が改善され、積層などの煩雑な工程を要せずに制振性を有する成型品が容易に製造されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の成型材料および成型品を提供するものである。
1.ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物からなる制振材料(α)と、流動性改善のための改質材(β)を含有する成型材料であって、
(1)ポリエステル樹脂(X)の全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)と全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)と主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率[(A1+B1)/(A0+B0)]が0.5〜1.0の範囲内であり、
(2)制振材料(α)における、ポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の質量比(X:Y:Z)が、15〜40:5〜30:30〜80の範囲であり、
(3)制振材料(α)の含有量が94〜97質量%であり、
(4)流動性向上のための改質材(β)が、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソプレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びスチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
(5)メルトインデクサーを用いて、200℃、荷重10kg、オリフィス径2mmの条件で測定を行った際のメルトフローレートが、400〜10g/10minの範囲である
ことを特徴とする成型材料。
.上記の成型材料を成型してなる成型品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成型材料は、優れた制振性を有し、成形加工性にも優れており、且つ積層などの煩雑な工程を要せずに制振性を有する成型品が容易に製造されるので、電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品として振動の発生する箇所に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の成型材料は、ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物からなる制振材料(α)と、流動性向上のための改質材(β)を含有するものである。
先ず、制振材料(α)におけるポリエステル樹脂(X)は、ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなり、全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)と全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)と主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率[(A1+B1)/(A0+B0)]が0.5〜1.0の範囲のものである。
ここで、“ジカルボン酸成分構成単位(又はジオール成分構成単位)の主鎖中の炭素原子数”とは、一つのエステル結合〔−C(=O)−O−〕と次のエステル結合に挟まれたモノマー単位において、ポリエステル樹脂の主鎖に沿った最短経路上に存在する炭素原子数である。なお、各成分の構成単位数は、後述する1H−NMRスペクトル測定結果の積分値の比から算出できる。
【0012】
制振材料(α)において、ポリエステル樹脂(X)の全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)と全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)と主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率〔(A1+B1)/(A0+B0)〕が0.5〜1.0の範囲であり、0.7〜1.0の範囲が好ましい。なお、ポリエステル樹脂(X)におけるジカルボン酸成分構成単位の主鎖中の炭素原子数及びジオール成分構成単位の主鎖中の炭素原子数は、1、3、5、7、9であることが好ましい。
【0013】
ポリエステル樹脂(X)の主鎖中の炭素原子数が奇数となるジカルボン酸成分構成単位の例としては、イソフタル酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ブラシル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などに由来する構成単位が挙げられる。中でも、イソフタル酸、アゼライン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する構成単位が好ましく、イソフタル酸に由来する構成単位がさらに好ましい。
なお、ポリエステル樹脂(X)は、上記ジカルボン酸に由来する1種または2種以上の構成単位を含んでいてもよい。また、2種以上の構成単位を含む際には、イソフタル酸及びアゼライン酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂(X)の主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位の例としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ペンタンジオール、1−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−1,5−ペンタンジオール、メタキシレングリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどに由来する構成単位が挙げられる。中でも、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、メタキシレングリコール及び1,3−シクロヘキサンジオールに由来する構成単位が好ましく、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール及びネオペンチルグリコールに由来する構成単位がさらに好ましい。
なお、ポリエステル樹脂(X)は、上記ジオールに由来する1種または2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0015】
制振材料(α)は、ポリエステル樹脂(X)の全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)の比率(A1/A0)が0.5〜1.0の範囲であることが好ましく、該比率(A1/A0)が0.7〜1.0の範囲であることが更に好ましい。
また、制振材料(α)は、ポリエステル樹脂(X)の全ジオール成分構成単位数(B0)に対するジオールに由来する構成単位数(B1)の比率(B1/B0)が0.5〜1.0の範囲であることが好ましく、該比率(B1/B0)が0.7〜1.0の範囲であることがさらに好ましい。
【0016】
制振材料(α)におけるポリエステル樹脂(X)は、(1)トリクロロエタン/フェノールの質量比40/60の混合溶媒中、25℃で測定した固有粘度が0.2〜2.0dL/gであり、且つ(2)示差走査熱量計で測定した降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以下であることが好ましい。上記(1)及び(2)を満足することにより、より高い制振性を得ることができる。
【0017】
なお、制振材料(α)におけるポリエステル樹脂(X)は、前記したジカルボン酸成分構成単位及びジオール成分構成単位に加えて、本発明の効果を損なわない程度に他の構成単位が含まれていても良い。その種類に特に制限はなく、ポリエステル樹脂を形成し得るすべてのジカルボン酸及びそのエステル(これを「他のジカルボン酸類」と云う。)、ジオール(これを「他のジオール類」と云う。)或いはヒドロキシカルボン酸及びそのエステル(これを「ヒドロキシカルボン酸類」と云う。)に由来する構成単位を含むことができる。
【0018】
他のジカルボン酸類の例としてはテレフタル酸、オルトフタル酸、2−メチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステル;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸などの三価以上の多価カルボン酸、或いはその誘導体が挙げられる。
【0019】
また、他のジオール類の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテル化合物類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどの脂環族ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)などのビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0020】
ヒドロキシカルボン酸類としては、例えばヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシ酢酸、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、4,4’−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、3,4−ジヒドロキシ桂皮酸などが挙げられる。
【0021】
制振材料(α)で用いられるポリエステル樹脂(X)を製造する方法は、特に制限はなく、従来公知の方法を適用することができる。一般的には原料であるモノマーを重縮合することにより製造できる。例えばエステル交換法、直接エステル化法などの溶融重合法または溶液重合法を挙げることができる。
これらの溶融重合法または溶液重合法で使用するエステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、また重合触媒、熱安定剤、光安定剤などの各種安定剤、重合調整剤なども従来既知のものを用いることができる。
エステル交換触媒として、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの金属を含む化合物、またエステル化触媒として、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの金属を含む化合物、またエーテル化防止剤としてアミン化合物などが例示される。重縮合触媒としてはゲルマニウム、アンチモン、スズ、チタンなどの金属を含む化合物、例えば酸化ゲルマニウム(IV);酸化アンチモン(III)、トリフェニルスチビン、酢酸アンチモン(III);酸化スズ(II);チタン(IV)テトラブトキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、チタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシドなどのチタン酸エステル類が例示される。また熱安定剤としてリン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸などの各種リン化合物を加えることも有効である。その他光安定剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、離型剤などを加えても良い。
なお、原料となるジカルボン酸成分は、前記のジカルボン酸成分構成単位が由来するジカルボン酸の他にそれらのジカルボン酸エステル、ジカルボン酸塩化物、活性アシル誘導体、ジニトリルなどのジカルボン酸誘導体を用いることもできる。
【0022】
本発明の成型材料に用いられる制振材料(α)にはポリエステル樹脂(X)に振動エネルギー吸収を向上させる目的で二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を充填させる。
ポリエステル樹脂(X)に分散させる二酸化チタン(Y)の形態としては、特に制限はなくルチル型のみやアナターゼ型のみを含む二酸化チタン、ルチル型及びアナターゼ型が混合された二酸化チタンが使用できる。また、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑制するための表面被覆処理剤としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などの表面処理剤が挙げられる。また、導電性粉末を含むことで導電性を有する二酸化チタンも、本発明の制振材料に使用することができる。二酸化チタン(Y)はレーザ−回折法により求めた平均粒子径(体積平均粒子径)が0.01〜0.5μmのものが好適である。本発明においては、特に二酸化チタンを用いることで、高い制振性能を有する成型材料が得られる。
ポリエステル樹脂(X)に分散させるマイカ鱗片(Z)の種類に特に限定されないが、振動エネルギー吸収効果の高い鱗片状のマイカである白マイカが好ましい。また、分散させたマイカが制振材料内部で配向し易いため、本発明の制振材料中のマイカの平均粒子径が25〜500μmのものが好適である。
【0023】
本発明の成型材料に用いられる制振材料(α)におけるポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の質量比(X:Y:Z)は15〜40:5〜30:30〜80の範囲であり、好ましくは15〜25:15〜25:50〜70の範囲である。
制振材料(α)におけるポリエステル樹脂(X) の該質量比が15未満では、二酸化チタン及びマイカ鱗片による制振性向上効果が十分に得られず、成型性を失うおそれがある。該質量比が40を超えると、制振性向上効果が顕著に現れる含有量の二酸化チタン及びマイカ鱗片を分散させることができない。
また、制振材料(α)における二酸化チタン(Y) の該質量比が5未満では二酸化チタンによる制振性の向上効果が得られず、二酸化チタン(Y) の該質量比が30を超えると二酸化チタンの含有量が多いわりに制振性があまり向上しない。
さらに、制振材料(α)におけるマイカ鱗片(Z)の該質量比が30未満では制振性の向上効果が得られず、該質量比率が80を超えると、マイカ含有量の増加による制振性の更なる向上が殆ど無くなり、成型性が失う恐れがある。
【0024】
本発明の成型材料に用いられる制振材料(α)はポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を混合することで得られるが、混合方法は既知の方法を用いることができる。例えば、熱ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機、押出機などの装置を用いて溶融混合する方法が挙げられる。その他、ポリエステル樹脂を溶剤に溶解或いは膨潤させ、二酸化チタン及びマイカ鱗片を混入させた後に乾燥する方法、各成分を微粉末状で混合する方法なども採用することができる。なお、二酸化チタン、マイカ鱗片、添加剤などの添加方法、添加順序などは特に限定されない。
【0025】
次に、本発明の成型材料に含有させる流動性向上のための改質材(β)としては、熱可塑性樹脂および滑剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソプレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びスチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる。なかでもポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂がより好ましく、特にポリプロピレン樹脂が好ましい。なお、これらの熱可塑性樹脂はガラス繊維や炭素繊維等で強化された熱可塑性樹脂とすることもできる。
滑剤としては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、フッ素変性ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、酢酸ビニル−エチレン共重合ワックスなどのポリオレフィン系ワックス、オルガノシリコーンワックス、高級脂肪酸エステルワックス、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックス、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられるが、これに限定されない。特にモンタン酸エステルワックスが好ましい。改質材は1種または2種以上の混合物でも良い。
【0026】
成型材料中の制振材料(α)の含有割合が高くなると制振性も高くなるが、流動性が低下する。特に制振材料(α)の含有割合が50〜97質量%の場合に制振性と流動性、離型性のバランスが良く成型性が良好となる。制振材料(α)の含有割合は90〜97質量%であることが好ましく、94〜97質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明の成型材料、メルトインデクサーを用いて、200℃、荷重10kg、オリフィス径2mmの条件で測定を行った際のメルトフローレートが、400〜10g/10minであり、150〜10g/10minであることが好ましい。
【0027】
本発明の成型材料は、ポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物からなる制振材料(α)と流動性向上のための改質材(β)からなるものであるが、必要に応じて、1種以上の添加剤、例えば、分散剤、相溶化剤、界面活性剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、酸化防止剤、老化防止剤、耐候剤、耐熱剤、加工助剤、光沢剤、着色剤(顔料、染料)発泡剤、発泡助剤、導電性材料、無機充填材などを本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。
【0028】
本発明の成型材料は、ポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物からなる制振材料(α)と流動性向上のための改質材(β)を混合し、必要に応じてその他の添加剤を混合することで得ることができる。混合方法は既知の方法を用いることができる。例えば、熱ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機、押出機などの装置を用いて溶融混合する方法が挙げられる。なおその他添加剤などの添加方法、添加順序などは特に限定されない。
【0029】
本発明の成型品は、上記の成型材料を成型してなるものであり、射出成型が好ましいが、押出成型、プレス成型など他の既知の方法で成型して得ても良い。本発明の成型品は、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品に好適に利用することができる。本発明の成型品は、制振材料の積層などの煩雑な工程を要せずに容易に製造され、優れた制振性を発揮することができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示すが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂(X)及び成型材料の評価を以下の方法により行った。
(1)ポリエステル樹脂(X)の各構成単位のモル比:〔(A1+B1)/(A0+B0)〕、(A1/A0)、(B1/B0):
400MHz−1H−NMRスペクトル測定結果の積分値の比から算出した。
(2)ポリエステル樹脂(X)の固有粘度([η]):
トリクロロエタン/フェノール=40/60(質量比)混合溶媒にポリエステル樹脂を溶解させ25℃に保持して、キャノンフェンスケ型粘度計を使用して測定した。
(3)ポリエステル樹脂(X)の降温時結晶化発熱ピークの熱量(ΔHc):
島津製作所製DSC/TA−50WS型示差走査熱量計を使用して測定した。試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(30ml/分)、昇温速度20℃/分で280℃まで昇温、280℃で1分間保持した後、10℃/分の降温速度で降温した際に現れる発熱ピークの面積から求めた。
【0031】
(4)成型材料の損失係数:
実施例および比較例で得られた成型材料を200℃熱プレスによって厚み約1mmのシートとし、10mm×150mmに切り出して試験片とした。
厚さ1mmの基板(アルミニウム合金5052材)上に該試験片を熱プレスにより熱圧着あるいは二液硬化型エポキシ系接着剤(セメダイン株式会社製、商品名:セメダインSG−EPO、EP008)にて接着させて非拘束型制振材を作製した。
得られた非拘束型制振材を、損失係数測定装置(株式会社小野測器製) を用い、測定温度20℃の条件で中央加振法により500Hz反共振点での損失係数を測定した。なお、損失係数が大きいほど制振性が高い。
なお、表中の「*1」は、制振材料(α)が分解温度以下では十分に溶融せず、分散不良で測定不可だったものを示す。
(5)成型材料の流動性:
メルトインデクサー(東洋精機製作所株式会社製、メルトインデクサー TYPE C−5059D)を用いて200℃、荷重10kg、オリフィス径2mmの条件でメルトフローレート測定を行った。なおメルトフローレートが高いほど流動性が高い。
なお、表中の「*2」は、測定条件では流動せず測定不可だったものを示す。
(6)成型材料の成型性:
成型材料を射出成型機(住友重機械工業株式会社製、SE130DU−HP)にて成型した際の成型品の型状、金型からの離型性の良否を観察して評価した。
なお、成型品形状、金型からの離型性の両方が良好である場合を○、成型品形状が良好で金型からの離型性が悪い場合、もしくは金型からの離型性が良好で成形品形状が悪い場合を△、成型品形状、金型からの離型性の両方が悪い場合を「×」とした。
表中の「*3」は、制振材料(α)分解温度以下では十分に溶融せず分散不良で評価不可だったものを示す。
【0032】
製造例1(ポリエステル樹脂X1の製造)
充填塔式精留塔、攪拌翼、分縮器、全縮器、コールドトラップ、温度計、加熱装置及び窒素ガス導入管を備えた内容積30リットル(L)のポリエステル製造装置に、イソフタル酸(エイ・ジイ・インターナショナル・ケミカル株式会社製)9950g(60.3モル)、アゼライン酸(コグニス社製、商品名:EMEROX1144、アゼライン酸の含有量:93.3モル%、ジカルボン酸の合計量:99.97%)5376g(29.7モル)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(大連化学工業株式会社製)14600g(162モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下で225℃迄昇温して3.0時間エステル化反応を行った。留去される縮合水の量をモニターしながらイソフタル酸及びアゼライン酸の反応転化率が85モル%以上となった後、チタン(IV)テトラブトキシド・モノマー(和光純薬株式会社製)14.3g(総仕込み原料質量から縮合水質量を除いた初期縮合反応生成物の全質量に対するチタンの濃度が70.5ppm)を加え、昇温と減圧を徐々に行い、2−メチル−1,3−プロパンジオールを系外に抜き出しつつ、最終的に240〜250℃、0.4kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応混合物の粘度と攪拌トルク値が上昇し、適度な粘度に到達した時点あるいは2−メチル−1,3−プロパンジオールの留出が停止した時点で反応を終了した。
得られたポリエステル樹脂X1の性状は[η]=0.71(dL/g)、ΔHc=0(J/g)、1H−NMR〔400MHz,CDCl3,内部標準TMS):δ(ppm)=7.5〜8.9(Ph−,4H);3.5〜4.6(−C2−CH(CH3)−C2−,6H);1.0〜2.6(−CH2(CH3)CH2−,−CH2CH(C3)CH2−,−CO(C27CO−,13H〕であった。
このポリエステル樹脂X1のジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位の比率は、(A1+B1)/(A0+B0)=1.0;(A1/A0)=1.0;(B1/B0)=1.0である。
【0033】
比較例1(制振材料α1の製造)
製造例1で得られたポリエステル樹脂X1 22.2質量%、二酸化チタン粉末(石原産業株式会社製、商品名:タイペークCR−80)17.5質量%、マイカ鱗片(山口雲母株式会社製、商品名:CS−060DC)60質量%及びカーボン粉末(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製:ケッチェンブラックEC) 0.3質量%を、二軸混練機を用いて200℃で混練して制振材料α1を得た。得られた制振材料α1の物性測定結果を第1表に示す。なお、制振材料α1は流動せず、メルトフローレートの測定は不可であった。
【0034】
実施例1〜4
比較例1で得られた制振材料α1と、ポリプロピレン (日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP・MG03B)を第1表に示す比率で混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性測定結果を第1表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
比較例2(制振材料a1の製造)
ポリエステル樹脂X1 36.0質量%、マイカ鱗片(山口雲母株式会社製、商品名:CS−060DC)60質量%、カーボン粉末(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製:ケッチェンブラックEC) 4.0質量%を二軸混練機を用いて200℃で混練して制振材料a1を得た。
【0037】
比較例3〜6
比較例2で得られた制振材料a1と、ポリプロピレン (日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP・MG03B)を第2表に示す比率で混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性測定結果を第2表に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例5
制振材料α1 95質量%とポリエチレン(ノバテックPE LJ803日本ポリエチレン株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第3表に示す。
【0040】
実施例6
制振材料α1 95質量%とエチレン酢酸ビニル共重合体(エバフレックスV5773W三井・デュポンケミカル株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第3表に示す。
【0041】
実施例7
制振材料α1 95質量%とポリイソプレン(NIPOL IR2200、日本ゼオン株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第3表に示す。
【0042】
実施例8
制振材料α1 95質量%とスチレンアクリロニトリル共重合体〔サンレックス SAN−R(S20)、テクノポリマー株式会社製〕5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第3表に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
比較例7〜8
比較例1で得られた制振材料α1と、ポリプロピレン (日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP・MG03B)を第4表に示す比率で混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性測定結果を第4表に示す。
【0045】
比較例9
制振材料α1 95質量%とポリフッ化ビニリデン(クレハKFポリマー #1000、クレハ株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第4表に示す。
【0046】
比較例10
制振材料α1 95質量%とポリスチレン(PSJポリスチレン GPPS 679、PSジャパン株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第4表に示す。
【0047】
比較例11
制振材料α1 95質量%とアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(UMG−ABS Fu23、UMG−ABS株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第4表に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
比較例12
制振材料α1 95質量%とポリカーボネート(ユーピロン H−3000R、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第5表に示す。
【0050】
比較例13
制振材料α1 95質量%とポリブチレンテレフタレート(ノバデュラン 5010R5、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第5表に示す。
【0051】
比較例14
制振材料α1 95質量%とポリフェニレンスルフィド(フォートロン 0220A9、ポリプラスチック株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第5表に示す。
【0052】
比較例15
制振材料α1 95質量%とポリアセタール(ユピタール F30−03、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第5表に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
比較例16
制振材料α1 95質量%とポリメタクリル酸メチル(アクリペットMF001、三菱レイヨン株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第6表に示す。
【0055】
比較例17
制振材料α1 95質量%とポリ塩化ビニル(KVC 938U―H05、昭和化成工業株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第6表に示す。
【0056】
比較例18
制振材料α1 95質量%と塩素化ポリエチレン(エラスレン 303B 、昭和電工株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第6表に示す。
【0057】
比較例19
制振材料α1 95質量%とポリアミド(ノバミッド 3010N5−SL4 、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)5質量%を混合し、成型材料を得た。得られた成型材料の物性を第6表に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
第1表に示すように、制振材料α1と流動性向上のための改質材(ポリプロピレン)を混合させてなる実施例1〜4の成型材料は、比較例1の制振材料α1と比べ、メルトフローレートが高く流動性が良い。また、実施例1〜4の成型材料は、比較例1の制振材料α1と比べ成型性(形状、離型性)が向上している。比較例1の制振材料α1は流動性が無く、射出成型が不可能であるが、実施例1〜4の成型材料は射出成型が可能であり、成型品を容易に得ることができることが分る。
【0060】
また、第2表に示すように、酸化チタンを含有しない制振材料a1を用いた場合にはメルトフローレートが高かったり、良好な成型性が得られないことが分る。
第3表に示すように、改質材としてポリエチレン樹脂、ポリイソプレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びスチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂を用いた場合にもポリプロピレン樹脂と同様に優れた成型性が得られることが分る。
【0061】
第4表の比較例7および比較例8から改質材としてポリプロピレン樹脂などを用いた場合、その含有量が2質量%以下では良好な成型性が得られないことが分る。また、第4表の比較例9以降と第5表および第6表から、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂及びポリアセタール樹脂では良好な成型性などが得られないことが分る。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の成型材料は、優れた制振性を有し、成形加工性にも優れ、制振材料の積層などの煩雑な工程を要せずに容易に成型品が得られるので、成型品として、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品として振動の発生する箇所に好適に使用することができる。