【文献】
Tomoya Kitazume,Reaction of trifluoroacetaldehyde with some bromoesters,Journal of Fluorine Chemistry,1994,68,p59-61, compound V
【文献】
Kouichi Murata,Preparation and Biological Evaluation of γ-Fluoromethyl-α-methylene-γ-butyrolactone and γ-butyrolactam,Medicinal Chemistry Letters,Kouichi Murata,1993.12,p2685-2688, scheme 1
【文献】
Hiroshi Fukuda,Preparation of α‐Methylene‐γ‐butyrolactones with Difluoromethylene Functionalities,HETEROCYCLES,1997, vol46,p275-285, Scheme 2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
[A]重合体成分が、重合体(a)と同一又は異なる重合体中に、フッ素化スルホンアミド基を含む構造単位及びα−トリフルオロメチルアルコール基を含む構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位(III)をさらに有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液浸上層膜形成用組成物。
[A]重合体成分が、重合体(a)と同一又は異なる重合体中に、スルホ基を含む構造単位(IV)をさらに有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液浸上層膜形成用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<液浸上層膜形成用組成物>
本発明の液浸上層膜形成用組成物は、[A]重合体成分及び[B]溶媒を含有する。また、当該液浸上層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0029】
<[A]重合体成分>
[A]重合体成分は、上記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体(a)を含む。[A]重合体成分は、重合体(a)のみからなっていてもよく、重合体(a)以外にも、構造単位(I)を有さない重合体(b)を含んでいてもよい。
【0030】
[A]重合体成分は、フッ素原子を有する重合体を含むことが好ましい。これにより、形成される液浸上層膜の撥水性を高めることができる。フッ素原子を有する重合体の形態としては、重合体(a)がフッ素原子を有していてもよく、重合体(b)がフッ素原子を有していてもよい。[A]重合体成分は、重合体を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0031】
[A]重合体成分は、重合体(a)中に、構造単位(I)以外にも、上記式(2)で表される構造単位(II)、フッ素化スルホンアミド基を含む構造単位及びα−トリフルオロメチルアルコール基を含む構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位(III)、スルホ基を含む構造単位(IV)、カルボキシ基を含む構造単位及び上記式(v)で表される基を含む構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位(V)等をさらに有してもよい。また、[A]重合体成分が含んでいてもよい重合体(b)としては、例えば上記構造単位(II)〜(V)等を有する重合体などが挙げられる。以下、各構造単位について詳述する。
【0032】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される構造単位である。重合体(a)が、構造単位(I)を有することで、当該液浸上層膜形成用組成物は、高い撥水性を示す液浸上層膜を形成でき、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生を抑制することができる。
【0033】
上記式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基である。R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜6のアルキル基である。但し、R
2及びR
3が共にヒドロキシ基である場合はない。R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、互いに結合して、これらが結合している炭素原子と共に炭素数3〜20の環構造を形成してもよい。この環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。nは、1〜4の整数である。nが2以上の場合、複数のR
2及びR
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0034】
上記R
2及びR
3で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基等が挙げられる。
【0035】
上記R
4及びR
5で表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の炭化水素基、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−、及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される1価の有機基等が挙げられ、さらにこれらが置換基を有するもの等が挙げられる。但し、上記Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。置換基としては、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0036】
上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐状の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0037】
上記炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0038】
上記炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0039】
上記炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0040】
上記R
4とR
5とが互いに結合して形成してもよい炭素数3〜20の環構造としては、例えば
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロデカン構造、メチルシクロヘキサン構造、エチルシクロヘキサン構造等の単環式飽和炭化水素構造;
シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造、シクロペンタジエン構造、シクロヘキサジエン構造、シクロオクタジエン構造、シクロデカジエン構造等の単環式不飽和炭化水素構造;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン構造、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン構造、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン構造、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン構造、アダマンタン構造等の多環式飽和炭化水素構造;
ビシクロ[2.2.1]ヘプテン構造、ビシクロ[2.2.2]オクテン構造、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デセン構造、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デセン構造、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン構造等の多環式不飽和炭化水素構造等が挙げられ、さらにこれらの構造に−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−、及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が含まれるもの等が挙げられる。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。R
4とR
5とが互いに結合して形成してもよい炭素数3〜20の環構造は置換基を含んでいてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0041】
上記−CO−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8の環状ケトン構造等を挙げることができる。
【0042】
上記−COO−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8のラクトン構造等を挙げることができる。
【0043】
上記−O−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8の環状エーテル構造等を挙げることができる。
【0044】
上記−NR−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8の環状アミン構造等を挙げることができる。Rで表される炭素数1〜10の有機基としては、それぞれ炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基等を挙げることができる。
【0045】
上記−S−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8の環状チオエーテル構造等をあげることができる。
【0046】
上記−SO−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8の環状スルホキシド構造等をあげることができる。
【0047】
上記−SO
2−と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成される環構造としては、炭素数3〜8の環状スルホニル構造等をあげることができる。
【0048】
また、上記R
4とR
5が結合している炭素原子と共に形成するこの環構造としては、5員環又は6員環構造のものが、合成の容易性の点から好ましい。
【0049】
nとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0050】
上記式(1)におけるR
4及びR
5のうち少なくとも1つは、フッ素原子を含む1価の有機基であることが好ましい。上記式(1)におけるR
4及びR
5のうち少なくとも1つがフッ素原子を含む1価の有機基であることで、より高い撥水性を示す液浸上層膜を形成でき、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生をより抑制することができる。
【0051】
上記フッ素原子を有する1価の有機基としては、例えばトリフルオロメチル基やトリフルオロエチル基等の炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−、及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と炭素数1〜20の炭化水素基とから構成されかつ水素原子の一部が少なくともフッ素原子で置換された1価の有機基等が挙げられ、さらにこれらが置換基を有するものが挙げられる。置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基等が挙げられる。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。
【0052】
上記フッ素原子を含む1価の有機基は、−R
E−R
f、−R
E−OR
f又は−R
E−OCOR
fで表され、R
Eは単結合又は2価の連結基、かつR
fはフッ素化アルキル基又はヒドロキシフッ素化アルキル基であることが好ましい。このような有機基は、より高い撥水性を示す液浸上層膜を形成でき、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生をより抑制することができる。
【0053】
上記R
Eで表される2価の連結基としては、例えば2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基又はこれらの基と−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−、及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基のうち1つ又は2つ以上を組み合わせた基が挙げられる。Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。
【0054】
上記R
Eとしては、単結合がより好ましい。
【0055】
上記R
fで表されるフッ素化アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロn−プロピル基、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロn−ブチル基等が挙げられる。
【0056】
上記R
fで表されるヒドロキシフッ素化アルキル基としては、例えば2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0057】
この中でもR
fとしては、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0058】
構造単位(I)は、上記式(1−1)で表される構造単位であることが好ましい。構造単位(I)が上記特定の構造単位であると、当該液浸上層膜形成用組成物は、より高い撥水性を示す液浸上層膜を形成でき、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生をより抑制することができる。
【0059】
式(1−1)中、R
1、R
2、R
3及びnは、上記式(1)と同義である。R
Aは、ラクトン環を構成している炭素原子と共に炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を形成する(m+2)価の基である。但し、上記脂環式炭化水素基は、その構造中に−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。R
Bは、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜20の1価の有機基である。mは、1〜6の整数である。mが2以上の場合、複数のR
Bは、同一でも異なっていてもよい。但し、R
Bのうち少なくとも1つは、フッ素原子又はフッ素原子を含む有機基である。
【0060】
上記R
Aとラクトン環を構成している炭素原子とが形成する炭素数3〜20の脂環式炭化水素基の環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロデカン構造、メチルシクロヘキサン構造、エチルシクロヘキサン構造等の単環式飽和炭化水素構造;
シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造、シクロペンタジエン構造、シクロヘキサジエン構造、シクロオクタジエン構造、シクロデカジエン構造等の単環式不飽和炭化水素構造;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン構造、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン構造、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン構造、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン構造、スピロ[4.5]デカン構造、スピロ[4.4]ノナン構造、スピロ[3.5]ノナン構造、アダマンタン構造等の多環式飽和炭化水素構造;
ビシクロ[2.2.1]ヘプテン構造、ビシクロ[2.2.2]オクテン構造、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デセン構造、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デセン構造、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン構造等の多環式不飽和炭化水素構造等が挙げられ、さらにこれらの構造の一部の炭素−炭素間結合に−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−、及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が含まれるもの等が挙げられる。これらのうち、炭素数3〜20の脂環式構造、複素環式構造等が好ましい。Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。
【0061】
上記R
Bで表される炭素数1〜20の有機基としては、例えば上記R
4及びR
5として例示した炭素数1〜20の1価の有機基においてフッ素原子を含む基と同様の基等が挙げられる。
【0062】
なお、上記式(1−1)におけるmは、1であることが好ましい。mを1とすることでR
Aを含むこの環構造の嵩高さを抑え、[A]重合体の剛直性を適度に制御することができ、解像性能をより高めることができる。
【0063】
上記式(1−1)におけるR
Bとしては、−R
E−R
f、−R
E−OR
f、−R
E−OCOR
fで表され、R
Eが単結合又は2価の連結基、かつR
fがフッ素化アルキル基又はヒドロキシフッ素化アルキル基であることが好ましい。R
Eとしては、単結合が好ましい。R
fで表されるフッ素化アルキル基としては、トリフルオロメチル基又はトリフルオロエチル基が好ましい。上記式(1−1)におけるR
Bが、上記特定基であることで、より高い撥水性を示す液浸上層膜を形成することができ、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生をより抑制することができる。
【0064】
構造単位(I)は、上記式(1−2)で表される構造単位であることも好ましい。構造単位(I)が上記式(1−2)で表される構造単位の場合でも、高い撥水性を示す液浸上層膜を形成することができ、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生を抑制することができる。
【0065】
式(1−2)中、R
1、R
2、R
3及びnは、上記式(1)と同義である。R
Cは、ラクトン環を構成している炭素原子と共に炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を形成する(p+2)価の基である。但し、上記脂環式炭化水素基は、その構造中に−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を含んでいてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の有機基である。R
Dは、ヒドロキシ基又は炭素数1〜20の1価の有機基である。pは、0〜6の整数である。pが2以上の場合、複数のR
Dは、同一でも異なっていてもよい。但し、R
Dは、フッ素原子を含まない。)
【0066】
R
Cとしては、上記式(1−1)におけるR
Aで例示した基が挙げられる。
【0067】
R
Dとしては、上記式(1−1)におけるR
4及びR
5で例示した炭素数1〜20の有機基において、フッ素原子を含まない基等が挙げられる。
【0068】
構造単位(I)としては、例えば下記式(I−1)〜(I−29)で表される構造単位等が挙げられる。
【0071】
上記式中、R
1は、上記式(1)と同義である。
【0072】
上記構造単位のうち、上記式(I−1)〜(I−8)で表される構造単位が好ましく、式(I−1)、(I−2)、(I−4)、(I−6)、(I−7)及び(I−8)で表される構造単位がより好ましく、式(I−4)、(I−6)及び(I−7)で表される構造単位が特に好ましい。
【0073】
[A]重合体成分における構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して3モル%以上100モル%以下が好ましく、5モル%以上95モル%以下がより好ましい。[A]重合体成分における構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、より高い撥水性を示す液浸上層膜を形成することができ、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生をより抑制することができる。
【0074】
また、重合体(a)における構造単位(I)の含有割合としては、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜99モル%がより好ましく、30モル%〜98モル%がさらに好ましい。重合体(a)における構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、より高い撥水性を示す液浸上層膜を形成することができ、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生をより抑制することができる。
【0075】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、上記式(2)で表される構造単位である。[A]重合体成分が、上記構造単位(II)をさらに有することで、当該液浸上層膜形成用組成物は、形成される液浸上層膜の撥水性を高めることができる。
【0076】
上記式(2)中、R
6は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。R
7は、フッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。置換基としては、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0077】
上記R
7で表されるフッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基のうち、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0078】
上記R
7で表されるフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基のうち、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクチルメチル基等が挙げられる。
【0079】
構造単位(II)としては、例えば下記式(2−1)〜(2−6)で表される構造単位等が挙げられる。
【化8】
【0080】
上記式(2−1)〜(2−6)中、R
6は、上記式(2)と同義である。
【0081】
これらのうち、上記式(2−1)及び(2−3)で表される構造単位が好ましい。
【0082】
[A]重合体成分における構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜50モル%が好ましく、1モル%〜40モル%がより好ましく、2モル%〜30モル%がさらに好ましい。[A]重合体成分における構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の撥水性及び除去性がより向上する。
【0083】
重合体(a)における構造単位(II)の含有割合としては、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、0モル%〜70モル%が好ましく、5モル%〜65モル%がより好ましく、10モル%〜60モル%がさらに好ましい。重合体(a)における構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の撥水性及び除去性がより向上する。
【0084】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、フッ素化スルホンアミド基を含む構造単位(以下、「構造単位(III−1)」とも称する)及びα−トリメチルアルコール基を含む構造単位(以下、「構造単位(III−2)」とも称する)からなる群より選ばれる1種の構造単位である。当該液浸上層膜形成用組成物は、[A]重合体成分が構造単位(III)を有することで、形成される液浸上層膜の撥水性及び除去性がより向上する。
【0085】
構造単位(III−1)としては、例えば下記式(3−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−1a)」とも称する」等が挙げられる。
【0087】
上記式(3−1)中、R
14は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。R
n1は、2価の連結基である。R
n2は、炭素数1〜20のフッ素化アルキル基である。
【0088】
上記R
14としては、構造単位(III−1a)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0089】
上記R
n1で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0090】
上記炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、1,2−エタンジイル基、1,1−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基、1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基、1,4−プロパンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、1−メチル−1,3−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基、2−メチル−1,2−プロパンジイル基、1−メチル−1,4−ブタンジイル基、2−メチル−1,4−ブタンジイル基等の飽和鎖状炭化水素基;1,2−エテンジイル基、1,3−プロペンジイル基、1,2−プロペンジイル基等の不飽和鎖状炭化水素基等が挙げられる。
【0091】
上記炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,3−シクロブタンジイル基等のシクロブタンジイル基;1,3−シクロペンタンジイル基等のシクロペンタンジイル基;1,4−シクロヘキサンジイル基、1,2−シクロヘキサンジイル基等のシクロヘキサンジイル基;1,5−シクロオクタンジイル基等のシクロオクタンジイル基などの単環式炭化水素基;
1,4−ノルボルナンジイル基、2,5−ノルボルナンジイル基等のノルボルナンジイル基、1,3−アダマンタンジイル基、2,4−アダマンタンジイル基等のアダマンタンジイル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、単環式炭化水素基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、1,2−シクロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0092】
R
n1としては、これらの中でも、炭素数1〜3の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、1,2−エタンジイル基がより好ましい。
【0093】
上記R
n2で表される炭素数1〜20のフッ素化アルキル基としては、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロメチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0094】
上記構造単位(III−2)において、トリフルオロメチルアルコール基とは、−C(R)(OH)(CF
3)基、(Rは1価の有機基である)をいう。構造単位(III−2)としては、例えば下記式(3−2)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−2a)」とも称する)等が挙げられる。
【0096】
上記式(3−2)中、R
15は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
t1は、2価の連結基である。
【0097】
上記R
15としては、構造単位(III−2a)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0098】
上記R
t1で表される2価の連結基としては、例えば、上記式(3−1)におけるR
n1として例示したものと同様の基等が挙げられる。また、これらの鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基中のメチレン基(−CH
2−)は、酸素原子、カルボニル基又はエステル基で置換されていてもよい。R
t1としては炭素数1〜3の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましく、プロパンジイル基、シクロヘキサン骨格を含む2価の基、ノルボルネン骨格を含む2価の基、アダマンタン骨格を含む2価の基がより好ましく、1,2−プロパンジイル基、1−シクロヘキシル−1,2−エタンジイル基がさらに好ましい。
【0099】
構造単位(III−2a)としては、例えば下記式(3−2−1)〜(3−2−8)で表される構造単位等が挙げられる。
【0101】
式(3−2−1)〜(3−2−8)中、R
15は、上記式(3−2)と同義である。
【0102】
これらのうち、上記式(3−2−4)及び(3−2−8)で表される構造単位が好ましい。
【0103】
[A]重合体成分における構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、1モル%〜80モル%がより好ましく、4モル%〜75モル%がさらに好ましく、20モル%〜70モル%が特に好ましい。[A]重合体成分における構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の撥水性及び上層膜除去性がより向上する。
【0104】
重合体(a)における構造単位(III)の含有割合としては、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、0〜90モル%が好ましく、0モル%〜85モル%がより好ましく、0モル%〜65モル%がさらに好ましい。重合体(a)における構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の撥水性及び上層膜除去性がより向上する。
【0105】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、スルホ基を含む構造単位である。構造単位(IV)としては、例えば、下記式(4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0107】
上記式(4)中、R
16は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。R
s1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基又は−C(=O)−X’−R’−基である。但し、X’は、酸素原子、硫黄原子又はNH基である。R’は、単結合、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0108】
上記R
16としては、例えば構造単位(IV)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましい。
【0109】
上記R
s1及びR’で表される炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、並びに炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば上記式(3−1)においてR
n1として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0110】
上記R
s1で表される炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、例えば、フェニレン基、トリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
【0111】
上記R
s1としては、単結合、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素、又はR’が炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基である−C(=O)−NH−R’が好ましく、単結合、メタンジイル基、フェニレン基、−C(=O)−NH−CH(CH
3)−CH
2−がより好ましく、単結合、−C(=O)−NH−CH(CH
3)−CH
2−がさらに好ましい。
【0112】
構造単位(IV)としては、例えば下記式(4−1)〜(4−4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0114】
上記式(4−1)〜(4−4)中、R
16は、上記式(4)と同義である。
【0115】
これらのうち、上記式(4−1)及び(4−4)で表される構造単位が好ましい。
【0116】
[A]重合体成分における構造単位(IV)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜10モル%が好ましく、0.1モル%〜5モル%がより好ましく、0.2モル%〜2モル%がさらに好ましい。[A]重合体成分における構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、ブロッブ欠陥をさらに抑制することができる。
【0117】
重合体(a)における構造単位(IV)の含有割合としては、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、0モル%〜20モル%が好ましく、0.2モル%〜10モル%がより好ましく、0.5モル%〜7モル%がさらに好ましい。重合体(a)における構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、ブロッブ欠陥をさらに抑制することができる。
【0118】
[構造単位(V)]
構造単位(V)は、カルボキシ基を含む構造単位(以下、「構造単位(V−1)」とも称する)及び上記式(v)で表される基を含む構造単位(以下、「構造単位(V−2)」とも称する)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位である。[A]重合体成分が構造単位(V)を有することで、当該液浸上層膜形成用組成物は、形成される液浸上層膜の除去性及び剥がれ耐性を向上させることができる。
【0119】
構造単位(V−1)としては、例えば下記式(5−1−1)〜(5−1−3)で表される構造単位(以下、これらをまとめて「構造単位(V−1a)」とも称する)等が挙げられる。
【0121】
上記式(5−1−1)〜(5−1−3)中、R
17は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
上記式(5−1−1)及び(5−1−2)中、R
c1及びR
c2は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0122】
上記R
17としては、構造単位(V−1a)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0123】
上記R
c1及びR
c2で表される炭素数1〜6の2価の鎖状炭化水素基としては、上記式(3−1)におけるR
n1として例示したものと同様の基等が挙げられる。これらの中で、飽和鎖状炭化水素基が好ましく、1,2−エタンジイル基がさらに好ましい。
【0124】
上記R
c1及びR
c2で表される炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(3−1)におけるR
n1として例示したものと同様の基等が挙げられる。これらの中で、単環式炭化水素基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、1,2−シクロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0125】
上記R
c1及びR
c2で表される炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記式(4)におけるR
s1として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0126】
構造単位(V−1a)としては、例えば、下記式(5−1−1−1)〜(5−1−1−3)で表される構造単位、並びに下記式(5−1−2−1)及び(5−1−2−2)で表される構造単位等が挙げられる。
【0128】
上記式(5−1−1−1)〜(5−1−2−2)中、R
17は、上記式(5−1−1)〜(5−1−3)と同義である。
【0129】
構造単位(V−1a)としては、上記式(5−1−1)及び(5−1−3)で表される構造単位が好ましい。また、上記式(5−1−1)で表される構造単位の中でも、式(5−1−1−1)で表される構造単位がより好ましい。
【0130】
構造単位(V−2)は、上記式(v)で表される基(以下、「基(v)」とも称する)を有する構造単位である。
【0131】
上記式(v)中、R
8は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基又はアリール基である。上記アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。R
9は、−C(=O)−R
10、−S(=O)
2−R
11、−R
12−CN又は−R
13−NO
2である。R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、シアノメチル基、アラルキル基又はアリール基である。但し、R
10又はR
11とR
8とが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
12及びR
13は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基である。
【0132】
上記R
8で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。この中で、フッ素原子及び塩素原子が好ましい。
【0133】
上記R
8で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0134】
上記R
8で表される1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式炭化水素基;アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。上記脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0135】
上記R
8で表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましい。
【0136】
上記R
8で表されるアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。上記アシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましい。
【0137】
上記R
8で表されるアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。上記アラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましい。
【0138】
上記R
8で表されるアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
【0139】
上記R
8で表されるアルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0140】
上記R
8としては、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される上層膜の現像液溶解性と剥がれ耐性とをバランスさせる観点から、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基及び炭素数2〜5のアシル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基がさらに好ましい。
【0141】
R
9が−C(=O)−R
10又は−S(=O)
2−R
11の場合、R
10及びR
11で表されるアルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基及びアリール基としては、例えば上記R
8のそれぞれの基として例示したものと同様の基等が挙げられる。また、R
10及びR
11で表されるフッ素化アルキル基としては、例えば上記R
8のアルキル基として例示した基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基等が挙げられる。これらのうち、R
6及びR
7としては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0142】
上記R
10又はR
11とR
8とが互いに結合して形成する環構造を含む基としては、R
10又はR
11とR
8とがそれぞれ結合する炭素原子を含み、かつオキソ基を有する炭素数5〜12の2価の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0143】
R
9が、−R
12−CN又は−R
13−NO
2の場合、R
12及びR
13としては、単結合、メタンジイル基又はエタンジイル基が好ましい。
【0144】
基(v)としては、下記式(v−1)〜(v−8)で表される基が好ましい。
【0146】
上記式(v−1)〜(v−8)中、*は結合部位を示す。
【0147】
構造単位(V−2)としては、例えば基(v)を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体、オレフィン誘導体、スチレン誘導体等に由来する構造単位等が挙げられる。この中で、(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構造単位が好ましい。すなわち、構造単位(V−2)としては、下記式(5−2)で表される構造単位(V−2a)が好ましい。
【0149】
上記式(5−2)中、R
8及びR
9は、上記式(v)と同義である。kは、1〜3の整数である。kが2以上の場合、複数のR
8及びR
9は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。L
1は、(k+1)価の連結基である。R
18は、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0150】
上記R
18としては、構造単位(V−2a)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0151】
上記L
1で表される(k+1)価の連結基としては、例えば2価の連結基(kが1の場合)としては、アルカンジイル基、2価の脂環式炭化水素基、アルケンジイル基、アレーンジイル基等が挙げられる。なお、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0152】
上記アルカンジイル基としては、例えばメタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基等が挙げられる。上記アルカンジイル基としては、炭素数1〜8のアルカンジイル基が好ましい。
【0153】
上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環の脂環式炭化水素基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環の脂環式炭化水素等が挙げられる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0154】
上記アルケンジイル基としては、例えばエテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等が挙げられる。上記アルケンジイル基としては、炭素数2〜6のアルケンジイル基が好ましい。
【0155】
上記アレーンジイル基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。上記アレーンジイル基としては、炭素数6〜15のアレーンジイル基が好ましい。
【0156】
これらのうち、L
1としては、アルカンジイル基、2価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数1〜4のアルカンジイル基、炭素数6〜11の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。L
1が2価の脂環式炭化水素基である場合は、得られる上層膜の撥水性を高めることができる観点から好ましい。
【0157】
構造単位(V−2a)としては、下記式(5−2−1)〜(5−2−10)で表される構造単位が好ましい。
【0159】
上記式(5−2−1)〜(5−2−10)中、R
18は、上記式(5−2)と同義である。
【0160】
[A]重合体成分における構造単位(V)の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0モル%〜30モル%が好ましく、1モル%〜20モル%がより好ましく、4モル%〜15モル%がさらに好ましい。[A]重合体成分における構造単位(V)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の除去性及び剥がれ耐性が向上する。
【0161】
重合体(a)における構造単位(V)の含有割合としては、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、0モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜55モル%がより好ましく、25モル%〜50モル%がさらに好ましい。重合体(a)における構造単位(V)の含有割合を上記範囲とすることで、当該液浸上層膜形成用組成物から形成される液浸上層膜の除去性及び剥がれ耐性が向上する。
【0162】
[その他の構造単位]
[A]重合体成分は、本発明の効果を損なわない限り、上記構造単位(I)〜(V)以外にも、その他の構造単位を有していてもよい。上記その他の構造単位としては、例えば撥水性を向上させる観点からは、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルに由来する構造単位等が挙げられる。また、[A]重合体成分の分子量、ガラス転移点、溶媒への溶解性などを制御する観点からは、酸解離性基を有する構造単位等が挙げられる。[A]重合体成分における上記その他の構造単位の含有割合としては、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、通常20モル%以下であり、10モル%以下が好ましい。重合体(a)における上記その他の構造単位の含有割合としては、重合体(a)を構成する全構造単位に対して、通常20モル%以下であり、10モル%以下が好ましい。
【0163】
<[A]重合体成分の合成方法>
[A]重合体成分を構成する重合体(a)及び重合体(b)は、例えば適宜選択された重合開始剤や連鎖移動剤の存在下、重合溶媒中で、所定の単量体をラジカル重合等の重合をさせることによって合成することができる。
【0164】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、2種以上を併用してもよい。
【0165】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃であり、好ましくは50℃〜120℃である。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、好ましくは1時間〜24時間である。
【0166】
[A]重合体成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、2,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、5,000以上20,000以下がさらに好ましい。[A]重合体成分のMwを2,000以上とすることで液浸上層膜としての耐水性及び機械的特性を良好にでき、Mwを50,000以下とすることで、重合体の溶媒に対する溶解性を高めることができる。重合体(a)のMwとしては、2,000〜50,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましく、5,000〜20,000がさらに好ましい。重合体(a)のMwを2,000以上とすることで、液浸上層膜としての耐水性及び機械的特性を良好にでき、Mwを50,000以下とすることで、重合体の溶媒に対する溶解性を高めることができる。
【0167】
[A]重合体成分のMwとGPC法によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2.5がさらに好ましい。重合体(a)のMw/Mnとしては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2.5がさらに好ましい。
【0168】
当該液浸上層膜形成用組成物は、ハロゲンイオン、金属等の不純物が少ないほど好ましい。不純物を少なくすることにより、液浸上層膜としての塗布性とアルカリ現像液への均一な溶解性とを改善することができる。不純物を少なくするために[A]重合体成分を精製する方法としては、例えば水洗、液々抽出、脱メタルフィルター通液等の化学的精製法、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等が挙げられる。
【0169】
[A]重合体成分の含有量としては、当該液浸上層膜形成用組成物中の全固形分に対して、70質量%〜100質量%が好ましく、80質量%〜100質量%がより好ましく、90質量%〜100質量%がさらに好ましい。
【0170】
<[B]溶媒>
当該液浸上層膜形成用組成物は[B]溶媒を含有する。[B]溶媒としては、[A]重合体成分及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば用いることができるが、当該液浸上層膜形成用組成物をレジスト膜上に塗布する際に、レジスト膜と過度のインターミキシングを生じる等によるリソグラフィ性能の低下がほとんどないものが好適に用いられる。なお、これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0171】
[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、水等が挙げられる。
【0172】
アルコール系溶媒としては、例えば
ブタノール、ペンタノール等の1価アルコール類;
エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0173】
エーテル系溶媒としては、例えば
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの部分アルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ヘキシルメチルエーテル、オクチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジシクロペンチルエーテル等の脂肪族エーテル類;
アニソール、フェニルエチルエーテル等の脂肪族−芳香族エーテル類;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0174】
炭化水素系溶媒として、例えば
ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の低級炭化水素類;
デカン、ドデセン、ウンデカン等の高級炭化水素類等が挙げられる。
【0175】
ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキルケトン類;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類等が挙げられる。
【0176】
エステル系溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0177】
これらのうち、エーテル系溶媒が好ましい。[B]溶媒が、エーテル系溶媒を含むことで、液浸上層膜形成時における液浸上層膜へのレジスト膜成分の溶出を抑制し、インターミキシングを低減することができる。また、エーテル系溶媒は粘度が低いため、液浸上層膜形成用組成物の粘度を低減することができ、塗布量を低減することができる。その結果、コストの低下を図ることができる。
【0178】
<任意成分>
当該液浸上層膜形成用組成物は、[A]重合体成分及び[B]溶媒以外に任意成分を含有してもよい。上記任意成分としては、例えば当該液浸上層膜形成用組成物のレジスト膜上への塗布性を向上させることができる界面活性剤等が挙げられる。
【0179】
上記界面活性剤としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BMケミー製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業製)等の市販のフッ素系界面活性剤等が挙げられる。上記界面活性剤の含有量としては、[A]重合体成分100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。
【0180】
<液浸上層膜形成用組成物の調製方法>
当該液浸上層膜形成用組成物は、例えば[A]重合体成分、[B]溶媒及び必要に応じて任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。
【0181】
当該液浸上層膜形成用組成物を溶液状態として調製する場合、[A]重合体、[B]溶媒、及び任意成分の合計量の割合は、使用目的や必要な膜厚の値等に応じて任意の濃度に設定することができる。液浸上層膜形成用組成物の固形分濃度としては、通常、0.5質量%〜30質量%であり、1質量%〜20質量%が好ましい。
【0182】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)基板上にレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」とも称する)、
(2)当該液浸上層膜形成用組成物を用い、上記レジスト膜上に液浸上層膜を形成する工程(以下、「工程(2)」とも称する)、
(3)上記液浸上層膜が積層されたレジスト膜にフォトマスクを介して放射線を照射し、液浸露光する工程(以下、「工程(3)」とも称する)、及び
(4)上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「工程(4)」とも称する)
を有する。
【0183】
当該レジストパターン形成方法によれば、当該液浸上層膜形成用組成物を用いているので、高い撥水性を示す液浸上層膜を形成することができ、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の現像欠陥の発生を抑制することができる。以下、各工程を詳述する。
【0184】
[工程(1)]
本工程では、基板上にフォトレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成する。基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の下層反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0185】
上記フォトレジスト組成物としては、例えば酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。なお、フォトレジスト組成物として、市販のフォトレジスト組成物を使用することもできる。フォトレジスト組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法等の公知の方法により塗布することができる。なお、フォトレジスト組成物を塗布する際には、形成されるレジスト膜が所望の膜厚となるように、塗布するフォトレジスト組成物の量を調整する。形成されるレジスト膜の膜厚としては、通常0.01μm〜1μmであり、0.01μm〜0.5μmが好ましい。
【0186】
フォトレジスト組成物を基板上に塗布した後、溶媒を揮発させるためにプレベーク(以下、「PB」とも称する)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの加熱条件としては、上記フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃〜200℃程度であり、50℃〜150℃が好ましい。
【0187】
[工程(2)]
本工程では、レジスト膜上に、当該液浸上層膜形成用組成物を塗布し、液浸上層膜を形成する。本工程では、当該液浸上層膜形成用組成物を塗布した後、焼成することが好ましい。この焼成により液浸媒体とレジスト膜とが直接接触しなくなるため、液浸媒体がレジスト膜に浸透することに起因するレジスト膜のリソグラフィー性能が低下したり、レジスト膜から液浸媒体に溶出した成分によって投影露光装置のレンズが汚染されたりすることを効果的に防止できる。液浸上層膜を形成する方法は、上記フォトレジスト組成物に代えて当該液浸上層膜形成用組成物を用いること以外は、上記レジスト膜を形成する方法と同様の方法を採用することができる。
【0188】
液浸上層膜の厚さは、λ/4m(但し、λ:放射線の波長、m:保護膜の屈折率)の奇数倍にできる限り近づけることが好ましい。このようにすることで、レジスト膜の上側界面における反射抑制効果を大きくすることができる。
【0189】
[工程(3)]
本工程では、液浸上層膜とレンズとの間に液浸媒体を配置し、この液浸媒体と所定のパターンを有するマスクとを介して、放射線をレジスト膜及び液浸上層膜に照射し、レジスト膜及び液浸上層膜を露光する。
【0190】
上記液浸媒体としては、通常、空気より屈折率の高い液体を使用する。具体的には、水を用いることが好ましく、純水を用いることがさらに好ましい。この液浸媒体を介在させた状態、すなわち、レンズと液浸上層膜との間に液浸媒体を満たした状態で、露光装置から放射線を照射し、所定のパターンを有するマスクを介してレジスト膜及び液浸上層膜を露光する。
【0191】
上記放射線としては、例えば、可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;X線;電子線等が挙げられる。この中でも、ArFエキシマレーザ(波長193nm)及びKrFエキシマレーザ(波長248nm)が好ましい。なお、放射線量等の照射条件は、レジスト組成物、液浸上層膜形成用組成物等に応じて適宜設定することができる。
【0192】
露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、上記フォトレジスト組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEBの加熱条件としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましい。
【0193】
[工程(4)]
本工程では、露光されたレジスト膜及び液浸上層膜を現像液により現像し、レジストパターンを形成する。液浸上層膜は、当該液浸上層膜形成用組成物から形成されているため、現像液により液浸上層膜を容易に除去することができ、液浸上層膜を除去する特別な工程を必要としない。
【0194】
上記現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノナン等のアルカリ性化合物を少なくとも1種溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。この中でも、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類の水溶液がより好ましい。
【0195】
上記現像液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類等の水溶性有機溶媒や、界面活性剤を適量添加することもできる。なお、アルカリ性水溶液を用いて現像した場合には、現像後に水洗することが好ましく、水洗後、乾燥してもよい。
【0196】
なお、レジスト膜の解像度等を向上させるために、露光後現像前に焼成(以下、「PEB」とも称する)を行うことが好ましい。焼成温度は、使用するレジスト組成物、液浸上層膜形成用組成物等によって適宜設定することができるが、30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。
【実施例】
【0197】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例に本発明が限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0198】
[
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析]
化合物の
1H−NMR分析及び重合体の
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−EX400、日本電子製)を用い、測定溶媒としてCDCl
3を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として測定した。
【0199】
[Mw及びMn測定]
重合体のMw及びMnは、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0200】
カラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、及びG4000HXL 1本(東ソー製)
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/分
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0201】
<単量体の合成>
[合成例1]
滴下漏斗及びコンデンサーを備え乾燥させた1Lの三口反応器に、亜鉛粉末(Aldrich製、粒子径150μm以下)13.1g(200mmol)を添加し、窒素雰囲気にした後、テトラヒドロフラン(THF)240mLを加えマグネチックスターラーで攪拌しながら、クロロトリメチルシラン1.9mL(15mmol)を加え、20℃〜25℃で30分間撹拌した。そこへ、ヘキサフルオロアセトン33.2g(200mmol)をTHF40mLに溶解させた溶液を添加した。次に、エチル(2−ブロモメチル)アクリレート34.8g(180mmol)のTHF50mL溶液を滴下した。滴下後、室温で2時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、塩化アンモニウム水溶液、酢酸エチルを加え分液した。得られた有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。その後、有機層を乾燥後減圧濃縮した。その後カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、下記式(S−1)で表される化合物14.9gを合成した(64mmol、収率32%)。
【0202】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:2.21−2.43(m、2H)、5.51−5.61(m、1H)、6.00−6.18(m、1H)
【0203】
【化19】
【0204】
[合成例2]
合成例1において、ヘキサフルオロアセトン33.2gの代わりに、4−トリフルオロメチルシクロヘキサノン33.2gを用いた以外は、合成例1と同様に操作して、下記式(S−2)で表される化合物31.9gを合成した(136mmol、収率68%)。
【0205】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.53−2.11(m、8H)、2.16−2.31(m、1H)、2.70(t、J=2.8Hz、1H)、2.75(t、J=2.8Hz、1H)、5.60−5.65(m、1H)、6.20−6.27(m、1H)
【0206】
【化20】
【0207】
[合成例3]
まず、20Lの反応器に、1,4−シクロヘキサンジオール1,004g(8.64mol)を添加し、そこへTHFを4,320mL加え、メカニカルスターラーで攪拌した。反応器にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム21.71g(86.39mmol)、続いて3,4−ジヒドロ−2H−ピラン726.73g(8.64mol)を加え室温にて12時間反応させた。その後、トリエチルアミン17.28g(170.77mmol)を加えて反応を停止させ、濃縮した。濃縮液をヘキサンと水で分液し、得られた水層にNaClを飽和するまで加えた後、塩化メチレンにて抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、下記式(S−3−A)で表される化合物737gを合成した(3.68mol、収率43%)。
【0208】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.24−1.91(m、13H)、1.94−2.05(m、2H)、3.45−3.53(m、1H)、3.59−3.70(m、1H)、3.71−3.78(m、1H)、3.87−3.95(m、1H)、4.67−4.71(m、1H)
【0209】
【化21】
【0210】
次に、5Lの三口反応器に、上記合成した(S−3−A)300g(1.5mol)を添加し、そこへ塩化メチレン1,200mL、2−アザアダマンタン−N−オキシル0.228g(1.5mmol)、臭化カリウム17.85g(150mmol)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液450mLを順次添加し、メカニカルスターラーで攪拌した。反応器を0℃に冷却し、7質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液1,913gと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液450mLを混合した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後0℃にて30分攪拌後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液100mL加えて反応を停止させ分液した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮することにより、下記式(S−3−B)で表される化合物214gを合成した(1.08mol、収率72%)。
【0211】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.51−2.16(m、10H)、2.22−2.35(m、2H)、2.50−2.69(m、2H)、3.49−3.56(m、1H)、3.88−3.95(m、1H)、4.05−4.11(m、1H)、4.74−4.78(m、1H)
【0212】
【化22】
【0213】
続いて、合成例1において、ヘキサフルオロアセトン33.2gの代わりに、上記合成した(S−3−B)39.7gを用いた以外は、合成例1と同様に操作し、得られた粗生成物をエタノール500mLに溶解させた後、パラトルエンスルホン酸一水和物9.51g(50mmol)を加えて室温にて3時間反応させた。これを塩化メチレンで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィーで精製することにより下記式(S−3)で表される化合物25.1gを合成した(138mmol、収率69%)。
【0214】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.55−2.09(m、8H)、2.72(t、J=2.8Hz、1H)、2.76(t、J=2.8Hz、1H)、3.67−3.77(m、0.5H)、3.96−4.04(m、0.5H)、5.62−5.68(m、1H)、6.22−6.28(m、1H)
【0215】
【化23】
【0216】
[合成例4]
窒素雰囲気下、500mLの三口反応器に上記合成した(S−3)18.2g(100mmol)を添加し、そこへ塩化メチレン100mLを加えた。反応器を0℃に冷却した後、トリフルオロ酢酸無水物23.1g(110mmol)を15分かけて滴下した。滴下終了後0℃にて2時間攪拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mL加えて反応を停止させ分液した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記式(S−4)で表される化合物19.7gを合成した(70.8mmol、収率71%)。
【0217】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.62−2.01(m、8H)、2.22(s、3H)、2.75−2.89(m、2H)、4.81−4.95(m、0.5H)、5.02−5.16(m、0.5H)、5.64−5.72(m、1H)、6.27−6.33(m、1H)
【0218】
【化24】
【0219】
[合成例5]
合成例4において、トリフルオロ酢酸無水物23.1gの代わりに、酢酸無水物11.2gを用いた以外は、合成例4と同様に操作して、下記式(S−5)で表される化合物16.0gを合成した(71.4mmol、収率71%)。
【0220】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.40−1.90(m、8H)、2.00−2.4(m、5H)、5.50−6.00(m、1H)、6.10−6.50(m、1H)
【0221】
【化25】
【0222】
[合成例6]
合成例4において、トリフルオロ酢酸無水物23.1gの代わりに、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物23.8gを用いた以外は、合成例4と同様に操作して、下記式(S−6)で表される化合物14.9gを合成した(51.0mmol、収率51%)。
【0223】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.61−2.00(m、8H)、2.61−2.91(m、4H)、4.86−4.99(m、0.5H)、5.06−5.19(m、0.5H)、5.63−5.70(m、1H)、6.21−6.30(m、1H)
【0224】
【化26】
【0225】
[合成例7]
まず、合成例4において、(S−3)18.2gの代わりに、5−ヒドロキシアダマンタン−2―オン16.6gを用いた以外は、合成例4と同様に操作して、下記式(S−7−A)で表される化合物22.0gを合成した(83.9mmol、収率84%)。
【0226】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.13−2.69(m、13H)
【0227】
【化27】
【0228】
次に、合成例1において、ヘキサフルオロアセトン33.2gの代わりに、上記合成した(S−7−A)52.4gを用いた以外は、合成例1と同様に操作して、下記式(S−7)で表される化合物21.8gを合成した(66.0mmol、収率33%)。
【0229】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.10−2.68(m、13H)、2.77−2.91(m、2H)、5.63−5.70(m、1H)、6.21−6.30(m、1H)
【0230】
【化28】
【0231】
[合成例8]
合成例1において、ヘキサフルオロアセトン33.2gの代わりに、文献(Chemische Berichte 1986,119,3502−3506)に従い合成した4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルブタナール45.0gを用いた以外は、合成例1と同様に操作して、下記式(S−8)で表される化合物11.8gを合成した(42.4mmol、収率21%)。
【0232】
1H−NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3)δ:1.55−1.65(m、3H)、2.35−2.65(m、2H)、2.75−3.05(m、1H)、3.10−3.45(m、1H)、5.55−5.75(m、1H)、6.00−6.20(m、1H)
【0233】
【化29】
【0234】
<[A]重合体成分の合成>
[A]重合体成分を構成する重合体(a)及び重合体(b)の合成に用いた各単量体を以下に示す。
【0235】
【化30】
【0236】
なお、単量体(S−1)〜(S−8)は構造単位(I)を、単量体(M−4)及び(M−5)は構造単位(II)を、単量体(M−1)〜(M−3)は構造単位(III)を、単量体(M−6)及び(M−7)は構造単位(IV)を、単量体(M−8)及び(M−9)は構造単位(V)をそれぞれ与える。
【0237】
<重合体(a)の合成>
[合成例9]
重合開始剤としてのジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.7gをメチルエチルケトン0.7gに溶解させた重合開始剤溶液を調製した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに、上記単量体(S−1)6.1g(50モル%)、単量体(M−1)10.6g(50モル%)、及びメチルエチルケトン19.3gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージ後、フラスコ内をマグネティックスターラーで撹拌しながら75℃になるように加熱した。続いて、滴下漏斗を用い、上記調製した重合開始剤溶液を5分かけて滴下し、360分間熟成させた。その後、30℃以下に冷却して重合反応液を得た。
【0238】
次いで、得られた重合反応液を40gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール44g、及びn−ヘキサン220gを投入し、分液精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液にn−ヘキサン220gを投入し、分液精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、重合体(a−1)を含む溶液を得た。その重合体溶液0.5gをアルミ皿にのせ、155℃に加熱したホットプレート上で30分間加熱した後の残渣の質量から上記重合体(a−1)を含む溶液の固形分濃度を算出し、その固形分濃度の値をその後の上層膜形成用組成物の調製と収率計算に用いた。得られた重合体(a−1)は、Mwが10,000、Mw/Mnが2.1であり、収率は75%であった。
1H−NMR、
13C−NMR及び
19F−NMR分析により求めた結果、構造単位(I)の含有割合及び構造単位(III)の含有割合は、それぞれ50モル%及び50モル%であった。
【0239】
[合成例10〜16]
表1に示す種類及び量の単量体を用いた以外は合成例9と同様に操作して、各重合体を合成した。合成した各重合体の収率(%)、Mw及びMw/Mnを表1に合わせて示す。なお、「−」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0240】
【表1】
【0241】
<重合体(b)の合成>
[合成例17]
【0242】
上記単量体(M−1)19.0g(85モル%)、及び重合開始剤としてのジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.8gをイソプロパノール20.0gに溶解させた単量体溶液を調製した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコにイソプロパノール20gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。そして、滴下漏斗を用い、上記調製した単量体溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応を行い、次いで、単量体(M−7)1.0g(15モル%)のイソプロパノール溶液2gを30分かけて滴下した。その後、さらに1時間反応を行った後、30℃以下に冷却して、重合反応液を得た。
【0243】
得られた重合反応液を44gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール44gとn−ヘキサン264gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。この下層液を再度、分液漏斗に移した。その後、n−ヘキサン264gを上記分液漏斗に投入して、分離精製を実施し、分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、全量を80gに調製した。調製後、水80gを加えて分離精製を実施し、分離後、上層液を回収した。回収した上層液は、4−メチル−2−ペンタノールに置換し、重合体(b−1)を含む溶液を得た。得られた重合体(b−1)のMwは10,000、Mw/Mnは1.7であり、収率は80%であった。また、(M−1)及び(M−7)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ98モル%、2モル%であった。
[合成例18及び20〜22]
【0244】
表2に示す種類及び量の単量体を用いた以外は合成例17と同様に操作して、重合体(b−2)及び(b−4)〜(b−6)をそれぞれ合成した。
【0245】
[合成例19]
表2に示す種類及び量の単量体を用いた以外は、合成例9と同様に操作して、重合体(b−3)を合成した。
【0246】
上記合成した各重合体(b)の収率、Mw及びMw/Mnを表2に合わせて示す。なお「−」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0247】
【表2】
【0248】
<液浸上層膜形成用組成物の調製>
液浸上層膜形成用組成物の調製に用いた[B]溶媒について以下に示す。
【0249】
[[B]溶媒]
B−1:4−メチル−2−ペンタノール
B−2:ジイソアミルエーテル
【0250】
[実施例1]
[A]重合体成分としての(a−1)20質量部及び(b−1)80質量部、並びに[B]溶媒としての(B−1)1,000質量部及び(B−2)4,000質量部を混合して液浸上層膜形成用組成物を調製した。
【0251】
[実施例2〜14]
表3に示す種類及び量の各成分を混合したこと以外は実施例1と同様に操作して、各液浸上層膜形成用組成物を調製した。
【0252】
<フォトレジスト組成物の調製>
レジスト膜形成のためのフォトレジスト組成物を以下の方法により調製した。
【0253】
[[P]フォトレジスト組成物用重合体の合成]
[P]フォトレジスト組成物用重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
【0254】
【化31】
【0255】
[合成例23]
上記化合物(r−1)53.93g(50モル%)、化合物(r−2)35.38g(40モル%)、化合物(r−3)10.69g(10モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、さらにジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを溶解させた単量体溶液を調製した。また、100gの2−ブタノンを投入した500mLの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。2,000gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥して、白色粉末の重合体(P−1)を合成した(74g、収率74%)。重合体(P−1)のMwは6,900であり、Mw/Mnは1.70であった。また、
13C−NMR分析の結果、(r−1)、(r−2)及び(r−3)にそれぞれ由来する各構造単位の含有割合は、53.0モル%、37.2モル%及び9.8モル%であった。
【0256】
<フォトレジスト組成物(α)の調製>
フォトレジスト組成物(α)の調製に用いた[Q]酸発生剤、[R]酸拡散制御剤及び[S]溶媒について以下に示す。
【0257】
[[Q]酸発生剤]
Q−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
Q−2:1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
【0258】
[[R]酸拡散制御剤]
R−1:R−(+)−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピペリジンメタノール
【0259】
[[T]溶媒]
T−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
T−2:シクロヘキサノン
T−3:γ−ブチロラクトン
【0260】
[合成例24]
[P]重合体としての(P−1)100質量部、[Q]酸発生剤としての(Q−1)1.5質量部及び(Q−2)6質量部、並びに[R]酸拡散制御剤としての(R−1)0.65質量部を混合し、この混合物に、[T]溶媒としての(T−1)2,900質量部、(T−2)1,250質量部及び(T−3)100質量部を加えて、全固形分濃度を5質量%に調整し、孔径30nmのフィルターでろ過することにより、フォトレジスト組成物(α)を調製した。
【0261】
<評価>
上記実施例の液浸上層膜形成用組成物について、以下に示す各種評価を行った。評価結果を下記表3に合わせて示す。
【0262】
[組成物安定性]
液浸上層膜形成用組成物の経時的な白濁化の有無について評価した。液浸上層膜形成用組成物を30分間攪拌した後、目視で白濁の有無を観察した。組成物安定性は、白濁が認められない場合は「○」と、白濁が認められる場合は「×」と評価した。
【0263】
[上層膜除去性]
液浸上層膜のアルカリ現像液による除去性について評価した。塗布/現像装置(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)にて8インチシリコンウエハ上に、液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行い、膜厚90nmの液浸上層膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(ラムダエースVM90、大日本スクリーン製)を用いて測定した。この液浸上層膜を上記塗布/現像装置にて、現像液として2.38質量%TMAH水溶液を用いて60秒間パドル現像を行い、振り切りによりスピンドライした後、ウエハ表面を観察した。上層膜除去性は、残渣が全く観察されない場合は「○」と、残渣が観察された場合は「×」と評価した。
【0264】
[後退接触角]
液浸上層膜表面における水の後退接触角の値を測定した。8インチシリコンウエハ上に、液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、ホットプレート上で90℃で60秒間PBを行い、膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。その後接触角計(DSA−10、KRUS製)を用いて、速やかに、室温23℃、湿度45%、常圧の環境下で、以下の手順により後退接触角を測定した。まず、上記接触角計のウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に上記ウェハをセットした。次に、針に水を注入し、上記セットしたウェハ上に水滴を形成可能な初期位置に針の位置を微調整した。その後、この針から水を排出させてウェハ上に25μLの水滴を形成し、一旦、この水滴から針を引き抜き、再び初期位置に針を引き下げて水滴内に配置した。続いて、10μL/minの速度で90秒間、針によって水滴を吸引すると同時に接触角を毎秒1回合計90回測定した。このうち、接触角の測定値が安定した時点から20秒間の接触角についての平均値を算出して後退接触角(単位:度(°))とした。後退接触角の測定値を下記表3に示す。
【0265】
[溶出量]
液浸上層膜を形成したレジスト膜からのレジスト膜成分の溶出量について評価した。上記塗布/現像装置にてヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理(100℃で60秒間)を行った8インチシリコンウェハ上の中心部に、中央部が直径11.3cmの円形状にくり抜かれたシリコンゴムシート(クレハエラストマー製、厚み1.0mm、1辺30cmの正方形)を乗せた。次いで、シリコンゴム中央部のくり抜き部に10mLホールピペットを用いて超純水10mLを満たした。一方、上記シリコンウエハとは別に、下層反射防止膜、レジスト膜及び液浸上層膜を形成した8インチシリコンウエハを準備し、その8インチシリコンウエハを液浸上層膜がシリコンゴムシート側に位置するように、すなわち、液浸上層膜と超純水とを接触させつつ、超純水が漏れないように乗せた。なお、下層反射防止膜、レジスト膜及び液浸上層膜を形成したシリコンウエハは、8インチシリコンウエハ上に、下層反射防止膜用組成物(ARC29A、ブルワー・サイエンス製)を、上記塗布/現像装置を用いてスピンコートして、膜厚77nmの下層反射防止膜を形成し、次いで、この下層反射防止膜上に、フォトレジスト組成物(α)を、上記塗布/現像装置を用いてスピンコートし、115℃で60秒間ベークすることにより膜厚205nmのレジスト膜を形成し、その後、このレジスト膜上に液浸上層膜形成用組成物を塗布して90℃で60秒間PBし膜厚30nmの液浸上層膜を形成することで得た。
【0266】
液浸上層膜を載せた後、その状態のまま10秒間保った。その後、上記別の8インチシリコンウェハを取り除き、超純水をガラス注射器にて回収し、これを分析用サンプルとした。なお、実験終了後の超純水の回収率は95%以上であった。
【0267】
次いで、上記で得られた超純水中の光酸発生剤のアニオン部のピーク強度を、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)(LC部:SERIES1100(AGILENT製)、MS部:Mariner(Perseptive Biosystems,Inc.製))を用いて下記測定条件により測定した。その際、上記フォトレジスト組成物(α)に用いている光酸発生剤の1ppb、10ppb、100ppb水溶液のピーク強度を、下記測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いて上記ピーク強度から溶出量を算出した。また、酸拡散制御剤についても同様にして溶出量を測定した。これらの溶出量が5.0×10
−12mol/cm
2以下であった場合に、レジスト組成物溶出の抑制性能が「○」と、5.0×10
−12mol/cm
2よりも大きかった場合に「×」と評価した。
【0268】
(測定条件)
使用カラム:CAPCELL PAK MG(資生堂製)、1本
流量:0.2mL/分
流出溶媒:水/メタノール(3/7)に0.1質量%のギ酸を添加したもの
測定温度:35℃
【0269】
[剥がれ耐性]
液浸上層膜の基板からの剥がれ難さを評価した。基板として、HMDS処理をしていない8インチシリコンウェハを用いた。上記基板上に、液浸上層膜形成組成物を上記塗布/現像装置にて、スピンコートした後に90℃で60秒間PBを行い、膜厚30nmの塗膜(液浸上層膜)を形成した。その後、上記塗布/現像装置にて純水によるリンスを60秒間行い、振り切りによる乾燥を行った。剥がれ耐性は、目視により、リンス後にウェハ全面で液浸上層膜の剥がれが認められた場合は「×」と、エッジ部でのみ剥がれが認められた場合を「○」と、剥がれが全く認められない場合を「◎」と評価した。
【0270】
[パターン形状]
液浸上層膜を形成させたレジスト膜からの形成したレジストパターンのパターン形状の良好性を評価した。12インチシリコンウエハ基板上に、下層反射防止膜形成組成物(ARC29A、ブルワー・サイエンス製)を塗布して膜厚77nmの下層反射防止膜を形成し、次いで、フォトレジスト組成物(α)をスピンコートした後に、115℃で60秒間PBすることにより膜厚150nmのレジスト膜を形成し、その後、このレジスト膜上に液浸上層膜形成用組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行うことにより膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。次に、形成したレジスト膜を、ArFエキシマレーザ液浸露光装置(S610C、NIKON製)を用いて、線幅60nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)形成用のマスクパターンを介して、露光を行った。次いで、115℃で60秒間PEBを行った後、2.38質量%のTMAH水溶液を現像液として、23℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅60nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)が形成される露光量を最適露光量とした。この最適露光量で形成されたレジストパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。レジストパターンが矩形の断面形状である場合を「○」と、T−トップ形状、トップラウンド形状、裾引き形状等の矩形以外の形状である場合を「×」と評価した。
【0271】
[ブロッブ欠陥]
液浸上層膜を形成したレジスト膜を現像して得られるレジストパターンにおけるブロッブ欠陥の発生数を測定した。塗布/現像装置(Lithius、東京エレクトロン製)を用いて、100℃で60秒間、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を行った12インチシリコンウエハを用意した。この12インチシリコンウエハ上に、フォトレジスト組成物(α)をスピンコートし、ホットプレート上で90℃で60秒間PBを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜上に、液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行って膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。その後、パターンが形成されていない擦りガラスを介して露光を行った。この12インチシリコンウエハをブロッブ欠陥の評価に用いた。
【0272】
ブロッブ欠陥の評価では、まず、評価用の12インチシリコンウエハの液浸上層膜上に、塗布/現像装置(Lithius、東京エレクトロン製)のリンスノズルから超純水を60秒間吐出させ、4,000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライを行った。次に、上記(Lithius)のLDノズルによってパドル現像を30秒間行い、液浸上層膜を除去した。なお、このパドル現像では、現像液として2.38%TMAH水溶液を使用した。現像後、欠陥検査装置(KLA2351、KLAテンコール製)を用いて、ブロッブ欠陥数を測定した。検出されたブロッブ欠陥の数が、1ウエハあたり、200個以下の場合を「○」と、200個を超え500個以下の場合を「△」と、500個を超える場合を「×」と評価した。
【0273】
[ブリッジ欠陥]
液浸上層膜を形成したレジスト膜を現像して得られるレジストパターンにおけるブリッジ欠陥の発生数を測定した。12インチシリコンウエハ表面に、下層反射防止膜(ARC66、日産化学製)を塗布/現像装置(Lithius、東京エレクトロン製)を使用してスピンコートした後、PBを行うことにより膜厚105nmの塗膜を形成した。次いで、上記(Lithius)を使用してフォトレジスト組成物(α)をスピンコートし、100℃で60秒間PBした後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。その後、このレジスト膜上に、液浸上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行って膜厚30nmの液浸上層膜を形成した。
【0274】
次に、ArF液浸露光装置(S610C、NIKON製)を使用し、NA:1.30、Crosspoleの光学条件にて、45nmライン/90nmピッチのパターン形成用のマスクを介して露光した。次に上記「Lithius」のホットプレート上で100℃で60秒間PEBを行い、23℃で30秒冷却した後、現像カップのGPノズルにて、2.38質量%TMAH水溶液を現像液として10秒間パドル現像を行い、超純水でリンスした。この後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、レジストパターンが形成された基板を得た。このとき、45nmライン/90nmピッチのレジストパターンが形成される露光量を最適露光量とした。この最適露光量におけるレジストパターン形成において、ブリッジ欠陥が認められなかった場合を「○」と、ブリッジ欠陥が認められた場合を「×」と評価した。
【0275】
【表3】
【0276】
表3の結果から明らかなように、本発明の液浸上層膜形成用組成物によれば、上層膜除去性、剥がれ耐性等の性能を維持しつつ、高い撥水性を示す液浸上層膜を形成することができ、かつレジストパターンのブリッジ欠陥、ブロッブ欠陥等の欠陥の発生を抑制することができることが分かった。