【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を詳細に説明するが、これらによって何ら限定されるものではない。
【0029】
(1)フラックスの調製
実施例1
表1に示す成分を配合することによって(計100重量%)、フラックスを3700g調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
次に、当該フラックスを0.1グラム採取し、市販の燃焼装置(製品名 「自動試料燃焼装置 AQF−100」 三菱化学アナリテック(株)社製)において1250℃で燃焼させ、生じた燃焼ガスを精製水に通過させることによってサンプル液を調製した。次いで、当該サンプル液を市販のイオンクロマトグラフィー装置(製品名「DX−500」、(株)日本ダイオネクス製)にセットし、臭素イオン濃度を自動測定した。臭素原子のピークに基づく検量線により、前記(b)成分に由来する臭素原子に基づく濃度は、フラックス0.1グラムあたり約9100ppmであることが判った。また、標準物質としては臭化物イオン標準溶液(和光純薬(株)社製)を使用した。
【0032】
実施例2
実施例1において、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンに代えてN,N’―ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(東京化成工業(株)製)を使用(0.1重量%)した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約9100ppmであった。
【0033】
実施例3
実施例1におけるN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンに代えてトリエチレンテトラミン(東京化成工業(株)製)を使用(0.1重量%)した他は実施例1と同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約9100ppmであった。
【0034】
実施例4
実施例1において、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンに代えてトリエチレンテトラミンを使用(0.5重量%)し、かつヘキシルジグリコールの使用量を35.5重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約9100ppmであった。
【0035】
実施例5
実施例1において、3−ブロモプロピオン酸の使用量を0.1重量%に変更し、かつトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールを使用せず(0重量%)、かつ水添ロジンおよびアクリル化ロジンの使用量をそれぞれ23.2重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約520ppmであった。
【0036】
実施例6
実施例1におけるトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの使用量を2.5重量%に変更し、かつN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンに代えてトリエチレンテトラミンを使用(0.5重量%)し、かつアクリル化ロジンおよび水添ロジンの使用量をそれぞれ22.0重量%に変更し、かつヘキシルジグリコールの使用量を35.0重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約18800ppmであった。
【0037】
実施例7
実施例1における3−ブロモプロピオン酸およびトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの双方に代えて1,2,3,4−テトラブロモブタンを2.3重量%使用し、かつヘキシルジグリコールの使用量を35.1重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約19700ppmであった。
【0038】
実施例8
実施例1における3−ブロモプロピオン酸およびトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの双方に代えて2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールを2.3重量%使用し、かつヘキシルジグリコールの使用量を35.1重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約14000ppmであった。
【0039】
実施例9
実施例1における3−ブロモプロピオン酸およびトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの双方に代えて2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールを0.07重量%使用し、かつヘキシルジグリコールの使用量を37.33重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約410ppmであった。
【0040】
比較例1
実施例1において、3−ブロモプロピオン酸、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、およびN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンをいずれも使用せず(0重量%)に、かつヘキシルジグリコールの使用量を37.5重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約0ppmであった。
【0041】
比較例2
実施例1において3−ブロモプロピオン酸の使用量を0.04重量%に変更し、かつトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールを使用せず(0重量%)に、かつ水添ロジン、アクリル化ロジンの使用量をそれぞれ23.23重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約210ppmであった。
【0042】
比較例3
実施例1において3−ブロモプロピオン酸の使用量を0.07重量%に変更し、かつトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールを使用せず(0重量%)に、かつ水添ロジンの使用量を23.22重量%、アクリル化ロジンの使用量を23.21重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約360ppmであった。
【0043】
比較例4
実施例1において3−ブロモプロピオン酸の使用量を2.1重量%に、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの使用量を2.0重量%に、アクリル化ロジンおよび水添ロジンの使用量をいずれも21.2重量%にした他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約24600ppmであった。
【0044】
比較例5
実施例1においてN,N’―ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンの使用量を0重量%に、ヘキシルジグリコールの使用量を36.0重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約9100ppmであった。
【0045】
比較例6
実施例1において3−ブロモプロピオン酸およびトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの双方に代えて1,2,3,4―テトラブロモブタンを1.6重量%使用し、かつN,N’―ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンを使用しなかった(0重量%)他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約13700ppmであった。
【0046】
比較例7
実施例1において3−ブロモプロピオン酸を使用せず、かつN,N’―ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンに代えてトリエタノールアミンを0.5重量%使用し、かつヘキシルジグリコールの使用量を36.0重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約6500ppmであった。
【0047】
比較例8
実施例1において3−ブロモプロピオン酸を使用せず、かつN,N’―ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンに代えてジエチルアミンを0.5重量%使用し、かつヘキシルジグリコールの使用量を36.0重量%に変更した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、フラックス0.1gあたりの臭素原子濃度は約6500ppmであった。
【0048】
比較例9
実施例1において、3−ブロモプロピオン酸およびトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの双方に代えてジエチルアミン塩酸塩を1.5重量%使用した他は同様にして、フラックスを調製した(計100重量%)。また、当該フラックスにおける塩素原子濃度を、実施例1における燃焼イオンクロマトグラフィー法に従い求めたところ、フラックス0.1gあたり約4900ppmであった。なお、標準物質としては塩化物イオン標準溶液(和光純薬(株)社製)を用いた。
【0049】
(2)ハンダペーストの調製
実施例1〜9、比較例1〜9
実施例1のフラックスを11.0重量%、鉛フリーハンダ粉末(Sn96.5重量%−Ag3.0重量%−Cu0.5重量%;平均一次粒子径10〜25μm;山石金属(株)製)を89.0重量%配合したものを、プラネタリーミルにて混練することによりハンダペーストを調製した。実施例2〜9及び比較例1〜9のフラックスについても同様にしてハンダペーストを調製した。
【0050】
実施例10
実施例1において、鉛フリーハンダ粉末をSn96.5重量%−Ag3.0重量%−Cu0.5重量%、平均一次粒子径20〜38μmのやや粗いもの(三井金属(株)製)に変更した他は同様にしてハンダペーストを調製した。
【0051】
(3)保存安定性の評価
実施例1に係るハンダペーストの調製直後の粘度と、40℃の恒温槽中で24時間保温した後の粘度をそれぞれ市販のスパイラル方式粘度計(製品名「PCU−205」、共軸二重円筒形回転型、(株)マルコム製)により測定し、以下に示す計算式に基づき、当該ハンダペーストの増粘率を算出した。
【0052】
増粘率=〔(40℃、24時間保温後の10rpmでの粘度−ハンダペースト調製直後の10rpmでの粘度)÷(ハンダペースト調製直後の10rpmでの粘度)〕×100
【0053】
なお、前記保温条件は温度加速試験を意図したものであり、本試験における増粘率は、0℃〜10℃での三か月以上保管した後の増粘率を概ね再現している。そして、増粘率が10%未満である場合は保存安定性が良好であるとみなした。実施例2〜10及び比較例1〜9のフラックスについても同様にしてハンダペーストを調製した。
【0054】
(4)濡れ性試験(銅電極の酸化処理なし)
実施例1に係るハンダペーストについて、製造直後のものと、40℃の恒温槽中で24時間保温した後のものとの双方について、大気雰囲気下、銅電極板上での濡れ性を評価した(JIS Z 3284 附属書11に準拠)。他の実施例および比較例に係るハンダペーストについても同様にした。
【0055】
(5)濡れ性試験(銅電極の酸化処理あり)
実施例1に係るハンダペーストについて、上記試験(4)において使用された銅電極板を酸化処理(40℃、湿度90%、24時間)した銅電極板に置換した他は同様にして濡れ性を評価した。他の実施例および比較例に係るハンダペーストについても同様に評価した。
【0056】
濡れ性試験において、以下の基準に基づき評価した。
1 ハンダペーストから溶融したハンダが試験板を濡らし、ペーストを塗布した面積以上広がった状態。
2 ハンダペーストを塗布した部分は全て、ハンダで濡れた状態。
3 ハンダペーストを塗布した部分の大半は、ハンダで濡れた状態。
4 試験版にハンダが濡れた様子はなく、溶融したハンダが一つ又は複数のソルダボールとなった状態。
なお、本発明では「1」および「2」を良好と判断した。
【0057】
実施例1〜10の結果を表2に示す。また、比較例1〜9の結果を表3に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表2および表3中、各記号は以下の意味である。
BAPED:N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン
BAPP:N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン
TETA:トリエチレンテトラミン
TEA:トリエタノールアミン
DEA:ジエチルアミン
BP:3−ブロモプロピオン酸
DBBD:トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール
TBB:1,2,3,4−テトラブロモブタン
BBMPD:2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール
DEAHC:ジエチルアミン塩酸塩
【0061】
表2,3の結果から、本発明の鉛フリーハンダ用フラックスを用いた鉛フリーハンダペーストは、粘度安定性に優れ、かつ大気中でハンダ付した場合においても良好な濡れ性を発現することが明らかである。