特許第5737332号(P5737332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737332
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ロングアーク型メタルハライドランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/073 20060101AFI20150528BHJP
   H01J 61/06 20060101ALI20150528BHJP
   H01J 61/20 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H01J61/073 B
   H01J61/06 B
   H01J61/20 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-110933(P2013-110933)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-229589(P2014-229589A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2014年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
【審査官】 桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−187741(JP,A)
【文献】 特開2002−110083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/073
H01J 61/06
H01J 61/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内に、一対の電極を対向配置させると共に、鉄、ガリウム、亜鉛、タリウム、鉛、マグネシウムの少なくともいずれか1つが封入されたロングアーク型メタルハライドランプにおいて、
前記電極は、純タングステンからなる本体部と、該本体部の先端に接合されたエミッターを含むタングステンからなる先端部とを備え、
前記先端部のタングステンの粒径を、前記本体部のタングステンの粒径よりも大きくした
ことを特徴とするロングアーク型メタルハライドランプ。
【請求項2】
前記本体部のタングステンの粒径は、10〜90μmであり、
前記先端部のタングステンの粒径は、100〜500μmである
ことを特徴とする請求項1に記載のロングアーク型メタルハライドランプ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はロングアーク型メタルハライドランプに関し、特に、電極本体の先端にエミッターを含んだ先端部を接合した電極構造を有するロングアーク型メタルハライドランプに係わる。
【背景技術】
【0002】
電子工業界や印刷業界においては、紫外線硬化型のインキや塗料や接着材を紫外線により硬化乾燥する紫外線光源として、あるいは、半導体基板や液晶ディスプレイ用の液晶基板を露光するために使用する露光装置の紫外線光源として、ロングアーク型メタルハライドランプが使用されている。
【0003】
ロングアーク型メタルハライドランプとしては、発光物質として水銀を封入した水銀放電ランプや、金属ハロゲンを封入したメタルハライドランプが知られている。
その構造が図6に示されていて、ロングアーク型メタルハライドランプ1における発光管2の両端の封止部3、3で封止支持された一対の電極4、4が、発光管内で対向配置されている。
前記電極4は、ここには詳細は図示しないが、通常は金属箔を用いた箔シールによって外部リードに接続されていて、ここから給電される。
【0004】
そして、この種のロングアーク型メタルハライドランプにおいては、特開2012−160330号公報(特許文献1)に示されるように、陰極動作する電極に、例えば酸化トリウムのようなエミッター(電子放射性物質)を含有させて、電子放射特性を高めるようにしたものが知られている。
【0005】
ところで近時では、希少資源の節約という観点からエミッター材としてのトリウムなどの使用に制限が設けられるようになってきており、その大量使用を避ける要請がなされてきている。加えて該トリウムが放射性物質であり、法的規制によりその取り扱いが制限されているという事情もある。
このような事情を勘案して、電極の先端部にのみエミッター材を含有させた構造の放電ランプが開発されている。
特開2012−190627号公報(特許文献2)に、そのような電極を用いたショートアーク型放電ランプの陰極構造が開示されていて、タングステンからなる本体部の先端にエミッター材を含有させた先端部を接合する陰極構造が示されている。
このランプで採用されている接合方法は、拡散接合と呼ばれるもので、拡散接合とは、金属同士を面で重ね合わせて、当該金属の融点未満の固相状態で塑性変形が生じない程度に加熱・加圧して、接合面の原子を拡散させる固相接合をいう。具体的な加熱温度としては、タングステンの融点(約3400℃)より、低い2000℃程度で加熱される。
【0006】
かかる接合電極は、前記したように、ショートアーク型放電ランプに適用されているが、ロングアーク型メタルハライドランプに適用されている例は未だない。
そこで、本発明者は、鉄などの金属を封入したロングアーク型メタルハライドランプにおいて、電極の先端部のみに酸化トリウムを含有させたところ、発光管内壁に黒化が生じるという問題があることが判明した。
本発明者は、この現象を酸化トリウムの枯渇による黒化と考え、電極の結晶粒径を大きくすることで、酸化トリウムの早期枯渇を抑制することを試みたところ、黒化はある程度は抑制されたものの、完全に黒化を除去することはできなかった。
また、このような黒化は、全てのロングアーク型メタルハライドランプにおいて生じる訳ではなく、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zr)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、マグネシウム(Mg)の少なくともいずれか1つが封入された場合に生じることも突き止めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−160330号公報
【特許文献2】特開2012−190627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、電極本体部にエミッターを含む先端部を接合させた接合電極をロングアーク型メタルハライドランプに適用した場合の問題点に鑑みて、発光管内に、一対の電極を対向配置させると共に、鉄、ガリウム、亜鉛、タリウム、鉛、マグネシウムの少なくともいずれか1つが封入されたロングアーク型メタルハライドランプにおいて、発光管内面における黒化を抑制したロングアーク型メタルハライドランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明に係るロングアーク型メタルハライドランプは、前記電極は、純タングステンからなる本体部と、該本体部の先端に接合されたエミッターを含むタングステンからなる先端部とを備え、前記先端部のタングステンの粒径を、前記本体部のタングステンの粒径よりも大きくしたことを特徴とする。
また、前記本体部のタングステンの粒径は、10〜90μmであり、前記先端部のタングステンの粒径は、100〜500μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明のロングアーク型メタルハライドランプによれば、電極の先端部の粒径を本体部の粒径よりも大きくしたことにより、電極先端部におけるエミッターの早期枯渇を抑制することができる。
また、発光管内においては、鉄などの封入金属は、電極に付着し、その表面から電極先端へ電極表面上を移動する表面拡散と、電極内部に侵入して移動する粒界拡散とが生じる。鉄は、この先端部側へ移動しながら、加熱を受けることで、タングステンと反応する(以下、鉄−タングステン合金という)。この鉄−タングステン合金は、タングステンに比べて融点が低いことから、タングステンよりも蒸発しやすく、アーク放電によって加熱を受けると蒸発してしまう。
本発明のランプによれば、電極本体部の粒径が小さいことにより、鉄を電極本体部へ侵入させることができる。その上で、電極先端部の粒径は、本体部の粒径よりも大きいことにより、電極本体部の内部で鉄が電極先端部に向かって移動してきても、その電極先端部への侵入を抑制することができる。これにより、電極先端部での鉄−タングステン合金の生成を抑制し、加熱による蒸発を抑制できることから、発光管内面における黒化を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明における電極の断面図。
図2図1の部分拡大断面図。
図3】効果を実証する実験に用いた各電極の断面図。
図4】実験結果を示す表。
図5】実験結果を考察する模式図。
図6】従来のロングアーク型メタルハライドランプの構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明のロングアーク型メタルハライドランプにおける電極が示されており、電極4は、タングステンからなる本体部4aと、その先端に接合されたトリエーテッドタングステンからなる先端部4bとからなる。
前記本体部4aは、例えば純度が99.99%以上であるタングステン(純タングステン)から構成され、前記先端部4bは、エミッターとして酸化トリウム(ThO)を、例えば2wt%含有するタングステン(トリエーテッドタングステン)から構成される。
この先端部4aと本体部4bとの接合には、抵抗溶接などの溶接や、固相接合など、種々の接合方法が利用できる。
【0013】
そして、前記先端部4bにおけるタングステンの結晶粒径は、本体部4aの結晶粒径より大きくなるように形成される。
このような電極は、本体部4aの熱処理による再結晶によって成長した結晶粒径よりも、先端部4bの熱処理によってその結晶粒径をより大きくなるように成長させ、この本体部4aと先端部4bとを接触した状態で接合することにより、作製することができる。
【0014】
タングステンの粒径は、熱処理によってその結晶粒径を制御できることが知られており、本発明においては、本体部4aの結晶粒径を10〜90μmに、先端部4bの結晶粒径を100〜500μmにすることが好ましい。
本体部4aの結晶粒径をこのような範囲とするのは、粒径が90μmを超過すると、後述するように、鉄が本体部4aに侵入し難くなり、鉄が電極表面で拡散してしまい、電極先端部4bにおいて鉄−タングステン合金が生成され、過剰に蒸発を引き起こし、黒化につながるためである。
また、本体部4aの結晶粒径が、10μm未満であると、該本体部4aに侵入した鉄が粒界拡散する経路が多くなるため、先端部4bで生成される鉄−タングステン合金の量が増えてしまって、結局、黒化が増加してしまうためである。
また、先端部4bの結晶粒径が、100μm未満になると、本体部4a内で粒界拡散した鉄が、電極先端部4bに侵入し易くなってしまい、500μmを超過してしまうと、先端部4b内のトリウムの粒界拡散を妨げてしまうためである。
更には、先端部4bの軸方向長さは5mm未満が好ましく、特に、1〜4mmが好ましい
【0015】
なお、本発明でいう結晶粒径は、電極を軸方向に切断した切断面を観察し、電極軸方向における任意長さ(L1)およびその径方向(L2)において、各線分に存在する結晶粒子の数n1、n2を求め、その平均値を結晶粒径としたものである。
平均結晶粒径=(L1+L2)/(n1+n2)
【0016】
図2に拡大した電極4の先端が示されていて、電極4の本体部4aのタングステン結晶粒径よりも先端部4bのタングステン結晶粒径が大きい様子が示されている。そして、先端部4bの結晶粒界には酸化トリウム(ThO)などのエミッター5が含まれていて、ランプ点灯により、この酸化トリウムが還元されてトリウム(Th)が蒸発していく。
【0017】
発光管内においては、鉄などの封入金属は、電極本体部4a表面に付着し、その本体部4aから電極先端部4bに移動する表面拡散と、電極内部に侵入して移動する粒界拡散とが生じる。
本発明のランプによれば、電極本体部4aの粒径が小さいことにより、この鉄を電極本体部4aに侵入をさせることができる。その上で、電極先端部4bの粒径は、本体部4aの粒径よりも大きいことにより、電極本体部4aの内部で鉄が電極先端部4bに向かって移動しても、その電極先端部4bへの侵入を抑制することができる。
これにより、鉄−タングステン合金の生成を抑制し、電極先端部4bにおけるアーク放電に曝されることを防止でき、加熱による蒸発を抑制できることから、発光管内面における黒化を抑制することができるものである。
また一方で、先端部4bの結晶粒径を本体部4aの結晶粒径よりも大きくすることにより、先端部4bの結晶粒界を拡散する酸化トリウムの早期枯渇を抑制することができる。
【0018】
本発明の効果を確認する実験を行った。
実験では、図3に示すように、本体部4aと先端部4bの結晶粒径が同じ従来例(A)、粒径が同じではあるが、従来例(A)よりも大径の比較例(B)、及び、先端部4bの粒径が本体部4aの粒径より大きい本発明(C)の電極を用意し、一対の電極を従来例(A)のみで構成したロングアーク型メタルハライドランプと、比較例(B)のみで構成したロングアーク型メタルハライドランプと、本発明(C)のみで構成したロングアーク型メタルハライドランプとを、準備した。
各ランプは、発光長(一対の電極間距離)が1100mm、発光管の内径が22mmであり、各発光管内には、水銀封入量を70mg、ヨウ素水銀を20mg、鉄を5mg、ヨウ化タリウム1mg、ヨウ化マグネシウム2mg、アルゴン3kPaを封入した。
【0019】
また、各電極は、先端部4bの直径がφ3mm、軸方向長さが3mmの円柱状のトリエーテッドタングステン(トリウム2wt%含有)と、この先端部4bに接合された本体部4aとからなる。この本体部4aは、先端部4bと接合された直径がφ3mm、軸方向長さ27mmの円柱状の純タングステン(純度99.99%以上)からなる。該本体部4aには直径がφ1.7mmの円柱状の軸部が接続され、発光管端部の封止部において封止されている。
各電極の結晶粒径は、図4の表1に示すように、従来例(A)の先端部が20μmであり、本体部が20μmであって、比較例(B)の先端部が200μmであり、本体部が200μmであって、本発明(C)の先端部が200μmであり、本体部が20μmである。
【0020】
本実験では、各ランプを1000時間交流点灯した後、発光管内面の黒化を観察した。その結果を図4に示す。
従来例(A)は、発光管の端部に、軸方向に20mm程度伸びる領域の黒化が形成されていた。
比較例(B)は、発光管の端部に、軸方向に10mm程度伸びる領域の黒化が形成されていた。
本発明(C)は、発光管の端部に、黒化が確認できなかった。
【0021】
このような結果となった理由については、以下のように推察される。
ロングアーク型メタルハライドランプには、金属が封入されるため、その反応性の強さから電極や発光管と反応することが知られている。このため、通常は、ハロゲン化物として存在させることによって、その反応を抑制させることが行われている。例えば、金属として鉄を封入する場合、発光管内において、鉄(Fe)とヨウ素(I)とを反応させることによってヨウ化鉄(FeI)とすることで、発光管と金属の反応を抑制しようとするものである。
しかし、電極は、アークに近い先端部の温度が高く、本体部側に行くにつれて温度が低くなり、温度勾配が大きい。比較的温度の低い本体部では、上記のハロゲンの抑制効果が働くが、温度が高い領域ではハロゲン化物として存在できなくなるため、鉄が電極に付着する。なお、温度が高すぎる場合は、鉄は電極に付着することができずに蒸発した状態となる。これにより、最も鉄が付着しやすい領域は、電極の中間の領域であり、入力電力にもよるが先端から5〜10mm程度の領域であると考えられる。
【0022】
ロングアーク型メタルハライドランプは、通常、交流点灯が行われることにより、一対の電極は陽極サイクルと陰極サイクルが交互に入れ替わる。陽極サイクルでは、電子の衝突によって電極が加熱され、陰極サイクルでは、蒸発した鉄イオンを引き寄せる。
鉄が電極に付着すると、この鉄が粒界拡散及び表面拡散により先端部側に移動し、加熱を受けることで、鉄とタングステンとが反応して、鉄−タングステン合金を形成する。この鉄−タングステン合金は、タングステンに比べて融点が低いことから、タングステンよりも蒸発しやすく、アーク放電によって加熱を受けると蒸発してしまう。
【0023】
図5に模式的に示されるように、従来例(A)のランプでは、陽極サイクルにおける加熱によって、先端部4b内のトリウム(Th)の拡散が促進される。この先端部4bの結晶粒径は20μmと小さいことから、トリウムの拡散できる経路が多く、トリウムが早期に枯渇してしまうという現象が生じる。このため、先端部4bが過熱されてタングステン材料が過剰に蒸発してしまい、発光管内面の黒化が生じるものと推測される。
一方、陰極サイクルにおいて鉄が電極に付着したとき、本体部4aの結晶粒径が20μmと小さいことから、表面拡散より粒界拡散が比較的多くなり、電極内部において、本体部4aから先端部4bまで粒界拡散してしまう。先端部4bに到達した鉄は、アーク放電による加熱を受けて、鉄−タングステン合金を形成し、蒸発してしまい、これも発光管内面の黒化の原因だと推測される。
【0024】
また、比較例(B)のランプでは、先端部4bと本体部4aの結晶粒径が200μmと、従来例(A)に比べて大きい。このため、陽極サイクルにおける加熱によって、先端部4b内のトリウムの拡散が促進されても、当該先端部4bの結晶粒径が大きいことから、内部におけるトリウムが拡散できる経路が少なく、トリウムが早期に枯渇してしまうことが抑制される。
しかし、陰極サイクルにおいて鉄が電極に付着したとき、本体部4aの結晶粒径が大きいことから、鉄は粒界拡散よりも表面拡散が支配的になる。拡散速度においては、粒界拡散よりも表面拡散の方がはるかに速い。このため、電極に付着した鉄は、電極表面を表面拡散して早期に電極先端に到達して、鉄−タングステン合金を形成し、蒸発してしまい、これが発光管内面の黒化につながったものと推測される。
【0025】
これに対して、本発明(C)のランプでは、本体部4aの結晶粒径を20μmとし、先端部4bの結晶粒径を本体部4aの結晶粒径よりも大きい200μmとしたことにより、陽極サイクルにおける加熱によって、先端部4b内のトリウムの拡散が促進されても、比較例(B)と同様に、内部におけるトリウムが拡散できる経路が少なく、トリウムの早期枯渇を抑制することができる。
さらに、陰極サイクルにおいて鉄が電極に付着しても本体部4aの結晶粒径が20μmと小さいことから、鉄の移動は表面拡散よりも粒界拡散が支配的になる。このため、拡散速度が遅い粒界拡散によって鉄が先端部4b側に移動することから、アーク放電による加熱を受けにくい。
また、鉄が粒界拡散によって本体部4aから先端部4bに移動しても、この先端部4bの結晶粒径が本体部4aよりも大きいことから、粒界拡散する経路が少なく、先端部4b内における粒界拡散も抑制されて、早期に電極先端に到達することがなくなる。
これらのことから、本発明(C)のランプは、黒化が生じなかったものと推測される。
【0026】
なお、本実験においては、発光元素として鉄を採用した場合について説明したが、タングステンと反応して黒化の原因となる金属としては、ガリウム、亜鉛、タリウム、鉛、マグネシウムがある。このため、本発明の電極構造は、これらの金属のいずれかを発光管内に封入したランプにおいても同様に採用することで黒化抑制の効果が得られる。
また、本実験においては、酸化トリウムをエミッターの一例として説明したが、例えば酸化ランタンなどは酸化トリウムよりも蒸気圧が高いので蒸発しやすい。このため、エミッターとして、酸化トリウムより蒸気圧の高い酸化ランタンなどを採用した場合においても、エミッターの早期枯渇の抑制という効果が得られる。
【0027】
以上説明したように、本発明においては、ロングアーク型メタルハライドランプにおいて、電極が、純タングステンからなる本体部と、該本体部の先端に接合されたエミッターを含むタングステンからなる先端部とを備え、前記先端部のタングステンの粒径を、前記本体部のタングステンの粒径よりも大きくしたことにより、エミッターの早期枯渇を抑制することができるとともに、発光管の黒化を抑制することができるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 ロングアーク型メタルハライドランプ
2 発光管
3 封止部
4 電極
4a 本体部
4b エミッター含有の先端部
5 エミッター


図1
図2
図3
図4
図5
図6