(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0016】
図1は内鍋に別体型蒸し具をセットした状態を示す炊飯器の断面図であり、
図2に蒸し具の拡大断面図を示し、
図3〜
図5に外部材、内部材及び蒸し台をそれぞれ示す。なお、本願発明は、調理鍋であればどのような鍋にも適用可能であり、以下においては炊飯器の内鍋として述べる。
【0017】
炊飯器1は、炊飯器本体2及び蓋体3から構成される。炊飯器本体2は、内鍋4をセット可能な合成樹脂製の有底筒状の内ケース5と、外装筐体である合成樹脂製の外ケース6と、肩部材6aを有し、内ケース5と肩部材6aはビス等により結合され、外ケース6と肩部材6aは無理嵌め等により結合される。
【0018】
前記内ケース5の外周面には、底部及び底部から側面にかけてのコーナー部にそれぞれワークコイルからなる底部コイル7及びコーナーコイル8が設けられ、更に側部には保温ヒータ11が設けられ、それぞれ図示しない公知の制御装置により適正な炊飯及び保温制御が行われる。
【0019】
前記底部コイル7及びコーナーコイル8は、コイル台9に載置される。該コイル台9の中央部には、上下方向に貫通した貫通孔9aを有し、該貫通孔9aには、内鍋4のセット状態を検知する内鍋4の温度を検知するサーミスタが内設される温度センサ10が設けられる。
【0020】
前記温度センサ10には、スプリングが内蔵され、内鍋4がセットされていない状態では、その先端部が内ケース5の底部より上方に突出する。温度センサ10は、内鍋4がセットされた状態では内鍋4の底部外面に当接した状態で下方に押し下げられ作動状態になるが、内鍋4がセットされないと作動しない安全装置としての機能も有している。
【0021】
前記内鍋4は、前記底部コイル7及びコーナーコイル8により内部に誘起される渦電流によって自己発熱が可能なステンレス鋼等の鉄系金属から形成され、該内鍋4を前記内ケース5内にセットすることにより、前記温度センサ10がオンし、前記底部コイル7及びコーナーコイル8に通電され、炊飯用のスイッチが入れられると前記渦電流に起因したジュール熱により内鍋4が加熱され、内部に入れたご飯等の内容物がムラなく加熱され、効率よく炊きあげられる。
【0022】
一方、前記蓋体3は、合成樹脂製の蓋板12と、前記蓋体3の下面を構成すべく前記蓋板12に対してビス14により固定される熱良導体からなる放熱板13とを有し、蓋板12と放熱板13との間には、中空部15が形成され必要に応じ断熱材が封入される。また、放熱板13の外周端には環状のシール材13aが設けられており、蓋体3の閉蓋時、シール材13aが内鍋4或いは後記蒸し具の外部材31に当接し、蒸気等の外方への逃げを防止する。
【0023】
前記放熱板13の上面には通電時に抵抗熱を発生する電熱ヒータからなる蓋ヒータ16が取り付けられ、制御装置により制御され、凝縮液滴を速かに蒸発させて御飯の白ボケを防止する。なお、蓋ヒータ16による加熱方式はヒータ式であっても、IH式及び高周波式等であってもよい。
【0024】
前記蓋板12の中央部には、円筒状の開口17が形成されており、この開口17には、内部にボール弁18を有し、蓋板12に対し着脱自在な筒状体19が配置される。またその上面には蒸気口20が設けられ、内鍋4内の蒸気圧が所定以上になると蒸気は矢印で示すように筒状体19に進入しボール弁18を押し上げ蒸気口20から大気に排出される。
【0025】
なお、蓋体3の放熱板13の下方に複数の孔を有する内蓋を設けることができる。内蓋を設けた場合には、蒸気は内蓋の孔を通って内蓋と放熱板13との間の空間に入り、その後、前記筒状体19内の蒸気通路に進入することになる。
【0026】
前記炊飯器本体2の後端部上部には、蓋体3を開閉自在にする回動自在なヒンジ部材21が設けられ、蓋体3は炊飯器本体2に対し開閉自在にされている。
【0027】
前記炊飯器本体2の外ケース6の前面側上部には操作パネル22が設けられ、該操作パネル22には、各種の操作スイッチ23とそれらの各種スイッチ23によって設定される設定状態を表示する表示部24、及び各種スイッチ23及び表示部24が取り付けられるマイコン基板25が設けられる。
【0028】
また、前記マイコン基板25の後方側には、前記底部コイル7及びコーナーコイル8、保温ヒータ11、蓋ヒータ16等を駆動制御するIGBTやヒータ駆動回路、CPU、ダイオードブリッジよりなる整流回路及び平滑回路を備えた制御基板26が立設状態で設けられる。
【0029】
なお、内ケース5と外ケース6との間の後方部には、送風機27が必要に応じて設けられる。送風機27を設ける場合、該送風機27からの送風は、底部コイル7、コーナーコイル8及び保温ヒータ11により加熱され熱風となるため、炊飯及び保温工程のいずれかまたは両方で回動し、発生する熱風を内鍋4の全体に送ることにより、炊飯並びに保温効率を高めることができる。
【0030】
このような構成により、炊飯時に内鍋4は、前記底部コイル7及びコーナーコイル8により底壁部から側壁部にかけて略全体が均一に発熱され、内鍋4内の水に浸されたご飯をムラなく加熱し均一な吸水を行なうとともに、その後の昇温工程並びにむらし工程を経て炊飯を良好に行いご飯を加熱ムラなく効率良く炊き上げる。そして炊飯時の昇温工程では、内鍋4内の水が沸騰して蒸気が発生する。
【0031】
図1乃至
図4に外部材31と内部材40が別体の別体型蒸し具30を示す。蒸し具30は、それぞれ別体の外部材31と内部材40とを有する。
【0032】
前記外部材31は、略垂直な側壁部32及び水平な底壁部33を有する断面皿状の部材であり、その上方には上部開口34を有する。そして、側壁部32の環状の上方端部には、外方に円弧状に反った鍔状の懸架部35が形成されており、その大きさは、内鍋4内に挿入可能な大きさとされる。
【0033】
底壁部33には、
図2及び
図3に示すように、その中央に1個の大径の中央開口36と、その外周に複数、例えば6個の外周開口37(
図3参照)が等間隔に設けられ、隣合う外周開口37の間には、側壁部32と底壁部33を連結する平面視細長い矩形状の連結部39が設けられる。
【0034】
また、底壁部33の中央開口36と外周開口37との間には、環状の載置部33aを有し、更に載置部33aの外周端には、高さが低い垂直状の環状壁38が立設しており、
図2に示すように、載置部33aには内部材40が載置され、環状壁38には内部材40が底壁部33の中央に位置決めされる。なお、中央開口36はなくてもよいが、あった方が内部材40の底部に直接蒸気が当たり蒸し効率が向上する。
【0035】
前記内部材40は、略垂直な側壁部41及び水平な底壁部42を有する断面皿状の部材であり、側壁部41及び底壁部42は無孔で、且つその上方には上部開口43を有する。そして、側壁部41の環状の上方端部には、外方に円弧状に反った鍔部44が形成されており、その大きさは、外部材31の環状壁38内に挿入可能な大きさとされる。
【0036】
このように内部材40は、上部開口43以外は無孔であるため、例えば、煮物、プリン、酒蒸し等の液体の入った食材を内部材40内に直接入れて調理することができ、また、炊飯中に例えおねばが上昇したとしても上昇したおねばが食材に触れることはない。
【0037】
内部材40を外部材31内にセットする際には、鍔部44を指で掴んで内部材40を外部材31内にセットすることになる。内部材40が外部材31内にセットされると、
図1及び
図2に示すように、内部材40の底壁部42の外周は、外部材31の載置部33aに載置され、その側壁部41の下方は、外部材31の環状壁38内に挿入され水平方向の動きが規制される、即ち位置決めされる。
【0038】
内部材40内には蒸し台50がセットされる。蒸し台50は、
図5に示すように複数の開孔51を有する円板状の部材であり、その底面には、複数、例えば3個の脚52を有しており、その外径は、内部材40の内径より小さい。
【0039】
この蒸し台50を内部材40内にセットすると、
図1及び
図2に示すように、蒸し台50と内部材40との間に脚52の高さの空間53ができるようになり、蒸し時に、食材から出る汁や油等は、開孔51より蒸し台50と内部材40との間の空間53に落ちる。そのため、食材を美味しく且つヘルシーに蒸すことができるようになる。なお、蒸し台50は食材によっては用いない場合もある。
【0040】
外部材31内に内部材40をセットし、内部材40内に蒸し台50をセットした蒸し具30を炊飯器1の内鍋4内にセットすると、
図1に示すように、外部材31の懸架部35は、内鍋4の上方端部の環状のフランジ部4aに係合して懸架される。
【0041】
なお、蒸し具30の高さは、内鍋4の高さの略半分或いは半分以下とされており、蒸し具30の下方の内鍋4内で同時に炊飯を行うことができる。この場合、内鍋4内の炊飯可能な容量が半減するため、炊飯量も少なくなり、例えば5.5合タイプでは1合乃至2合程度になる。
【0042】
蓋体3を閉蓋すると、蓋体3下面のシール材13aは、外部材31の懸架部35の内周面に当接し、蒸気の外部への逃げを防止する。そして、炊飯が行われると、内鍋4内で水が沸騰し蒸気が発生し、発生した蒸気は、
図1で矢印で示すように上昇し、外部材31の外周開口37より外部材31内を介して内部材40内に進入し、内部材40内の食材を蒸す。その蒸気が所定圧以上になると、ボール弁18が開放され、余剰蒸気は蒸気口20より外部に排出される。
【0043】
なお、蒸しを行う場合、同時に上記送風機27を回動させて内鍋4の熱を上部に伝えることにより、蒸し具30内の食材の蒸し効率を高めることができる。
【0044】
ところで、蓋体3の放熱板13の下方に複数の孔を有する内蓋を設けると、その内蓋と蒸し具30との間の距離が短くなり、内部材40内に例えば野菜等のかさばる食材を入れて蒸す場合、その食材が内蓋の孔を塞ぐ恐れがあるため、内蓋に設ける孔はできるだけ外側にずらして設けるとよい。内蓋を設けた場合には、蒸気は内蓋の孔を通って内蓋と放熱板13との間の空間に入り、その後、前記筒状体19内の蒸気通路に入ることになる。
【0045】
図6に内部材40にキャップ55を被せた例を示す。キャップ55は、複数の開孔56を有する円板状の部材であり、その外周部には下方から内方にかけて湾曲した係止部57を有しており、この係止部57を内部材40の鍔部44に係合することにより内部材40の上部開口43を覆うことになる。
【0046】
内部材40内に例えば野菜等のかさばる食材を入れて蒸す場合、その食材が筒状体19の蒸気口20を塞ぐ恐れがある。そのような場合にキャップ55を用いるとキャップ55と放熱板13との間に空間が形成され、食材が蒸気口20を塞ぐ弊害をなくすことができる。この場合、蒸気はキャップ55の開孔56より内部材40内に進入することができる。
【0047】
図7及び
図8に、外部材61と内部材70を一体にした一体型蒸し具60を示す。蒸し具60は、一体の外部材61と内部材70とを有する。
【0048】
前記外部材61は、略垂直な側壁部62及び水平な底壁部63を有する断面皿状の部分であり、その上方には上部開口64を有する。そして、側壁部62の環状の上方端部には、外方に円弧状に反った鍔状の懸架部65が形成されており、その大きさは、内鍋4内に挿入可能な大きさとされる。
【0049】
底壁部63には、
図8に示すように、その外周に複数、例えば6個の外周開口67が等間隔に設けられ、隣合う外周開口67の間には、側壁部62と底壁部63を連結する平面視細長い矩形状の連結部69が設けられる。
【0050】
前記内部材70は、略垂直な側壁部71及び水平な底壁部72を有する断面皿状の部分であり、側壁部71及び底壁部72は無孔で、その上方には上部開口73を有する。そして、側壁部71の環状の上方端部には、外方に円弧状に反った鍔部74が形成されており、その大きさは、外部材61の環状壁38内に挿入可能な大きさとされる。なお、この場合、外部材61の底壁部63と内部材70の底壁部72とは共通で同じ壁になる。
【0051】
このように内部材70は、上部開口73以外は無孔であるため、例えば、煮物、プリン、酒蒸し等の液体の入った食材を内部材70内に直接入れて調理することができ、また、炊飯中に例えおねばが上昇したとしても上昇したおねばが食材に触れることはない。そして、内部材70内には、必要に応じて上述した蒸し台50及びキャップ55が用いられる。
【0052】
図9及び
図10に、一体型蒸し具の他の例を示す。この例のものは、蒸し具に取手88を設け持ち運びや取り出しを容易にするものである。蒸し具80は、一体の外部材81と内部材82とを有する樹脂製部材である。
【0053】
前記外部材81は、高さの低い略垂直で環状の部分であり、蒸し具80の外壁を形成し、その上方には上部開口81aを有し、その下方には下部開口81bを有する。そして、外部材81の上方端部には、外方に円弧状に反った鍔状の懸架部81cが形成され、その大きさは、内鍋4内に挿入可能な大きさで、内鍋4内への挿入時、
図10に示すように懸架部81cの外周面は、内鍋4のフランジ部4aの内周面に当接し、載置される。
【0054】
前記内部材82は、略垂直な側壁部82a及び略水平な底壁部82bを有する断面皿状の部分であり、側壁部82a及び底壁部82bは無孔で、その上方には上部開口83を有する。そのため、その内部でシチュー等の液体を有する食材を調理することができる。
【0055】
前記外部材81の下方の内周面と前記内部材82の上方の外周面とは連結部材84により連結される。連結部材84は、幅の狭い連結部84aと、取手の軸受86を形成する幅が長い軸受用連結部84bと、注ぎ口87を形成する幅が最も長い注ぎ口用連結部84cとを有する。
【0056】
前記幅の狭い連結部84aは、複数、例えば4個がほぼ等間隔に設けられ、更にそれぞれの左右側にはほぼ同形状の蒸気口85が計8個設けられる。前記軸受用連結部84bは、径方向に2個対向して設けられ、それぞれに2個の軸受86が形成される。
【0057】
なお、軸受用連結部84bの中央部分にも矩形状の蒸気口85が設けられる。その結果、蒸気口85は、ほぼ外周全体に10個配置される。また、蓋体3に内蓋を取付ける場合、内蓋の蒸気口を蒸し具80の蒸気口85の内側になるように配置する。すると、蒸気が抜けていくときに蒸し具80の調理物に対して蒸気が当たりやすくなり、蒸し効果が向上する。
【0058】
前記注ぎ口用連結部84cは、前記軸受用連結部84bに直交する径方向に2個対向して設けられ、その中央には、内方から外方に向かって円弧状に窪んだ注ぎ口87が設けられる。この注ぎ口87は、内部材82内で液体の入った食材を蒸す場合、その食材を取り出す際に利用される。
【0059】
前記軸受用連結部84bの軸受86内には、取手88が取付けられる。取手88は、1個でもよいが蒸し具80を安定して取り出したり、持ち運びするために2個設けている。取手88は、概略半円弧状で、その両端部には、それぞれ軸88aが一体に設けられており、この軸88aを軸受86内に嵌合することにより略90度回転自在にされる。なお、軸受用連結部84bに軸を設け、取手88の両端部に軸受を設けてもよい。
【0060】
そして、取手88の収納時には、取手88の持ち手部分88bは、注ぎ口87の上方に位置する。このような配置形態にすることにより、持ち手部分88bを指で掴む場合、注ぎ口87があるため指が持ち手部分88bの下方に入りやすくなり、その結果、持ち手部分88bを容易に掴むことができるようになる。
【0061】
また、蒸し具80の外部材81の外壁の高さは、内部材82の側壁部82aの高さより短くされているため、内部材82の側壁部82aが保温ヒータ11に対向する。そのため、
図10で白抜きの矢印で示すように、保温ヒータ11の熱が直接内部材82に伝わるようになり、内部材82に対する加熱効率が向上する。
【0062】
このように内部材82は、上部開口83以外は無孔であるため、例えば、煮物、プリン、酒蒸し等の液体の入った食材を内部材82内に直接入れて調理することができ、また、炊飯中に例えおねばが上昇したとしても上昇したおねばが食材に触れることはない。そして、内部材82内には、必要に応じて上述した蒸し台50及びキャップ55が用いられる。この例の場合、加熱手段は、熱盤式のヒータのものを用いたが、IH式のものでもよい。
【0063】
なお、別体型蒸し具は、内部材で煮物、プリン、酒蒸し等の液体の入った食材を調理する場合、内部材を取り外しての準備、並びに蒸し後の取り出しが容易であるとともに、洗浄がし易い等の利点がある。それに対し、一体型蒸し具は、別体型に比べて、軽量であり、また部品点数が少なく、更には生産コストが安くなる等の利点がある。
【0064】
本願発明は、上記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であることは勿論である。