特許第5737403号(P5737403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737403
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】クロマトグラフ用データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   G01N30/86 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-523875(P2013-523875)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2012066068
(87)【国際公開番号】WO2013008611
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2013年8月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-151433(P2011-151433)
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 年伸
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−297060(JP,A)
【文献】 特開平07−098270(JP,A)
【文献】 特開平11−281637(JP,A)
【文献】 特開2004−184148(JP,A)
【文献】 特開2003−121427(JP,A)
【文献】 特表2002−505442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) クロマトグラムのベースラインを決定するベースライン決定手段と、
b) 前記クロマトグラムのピークトップを検出するピークトップ検出手段と、
c) 前記ピークトップを挟んでピークの前半部及び後半部において変曲点を検出するとともに該検出した変曲点がピーク本来のものであるかを判定し、ピークの前半部と後半部の両方において前記変曲点がピーク本来のものであると判定したときは該2つの変曲点のそれぞれにおける接線と前記ベースラインとの交点を検出して、これら両交点間の距離をピーク幅として算出し、前記ピークの前半部及び後半部のいずれかにおける変曲点がピーク本来のものであると判定したときは、ピーク本来のものであると判定した変曲点における接線と前記ベースラインとの交点と、該ピークトップから該ベースラインに下ろした垂線と該ベースラインとの交点と、をそれぞれ検出して、これら両交点間の距離を求め、その距離の2倍の値を該ピークのピーク幅として算出するピーク幅算出手段と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ用データ処理装置。
【請求項2】
前記ピーク幅算出手段が、検出した変曲点がピーク本来のものであるか否かの判定を、前記ベースラインから前記ピークトップまでの高さの1/e0.5(eは自然対数の底)倍の高さから所定範囲内の高さに変曲点が存在するか否かにより行うことを特徴とする請求項に記載のクロマトグラフ用データ処理装置。
【請求項3】
a) クロマトグラムのベースラインを決定するベースライン決定手段と、
b) 前記クロマトグラムのピークトップを検出するピークトップ検出手段と、
c) 前記ベースラインからピークトップまでの高さのM%の高さに該ベースラインに平行な直線を引き、該ピークトップを挟んでピークの前半部と後半部の両方において該ピークと前記直線との交点を検出可能な場合に、前記ピーク幅算出手段がこれら2つの交点間の距離をピーク幅として算出し、前記ピークの前半部又は後半部のいずれかにおける該直線と該ピークとの交点を検出可能な場合に該交点と、該ピークトップから該直線に下ろした垂線と該直線との交点と、をそれぞれ検出し、これら両交点間の距離を求め、その距離の2倍の値を該ピークのピーク幅として算出するピーク幅算出手段と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ用データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ等のクロマトグラフ用のデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ装置の性能や効率を判断する指標として理論段数や分離度などがある。このうち理論段数はカラムの分離性能を表す指標であり、クロマトグラム上の成分の保持時間とそのピーク幅とから求められる。
【0003】
米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)が管轄する米国薬局方(United States Pharmacopeia: USP)では、ピーク幅を次のように規定している(非特許文献1)。すなわち、図1に示すように、ピークトップPを挟んでピークの前半部及び後半部でそれぞれの変曲点C1、C2を求め、この変曲点C1、C2においてピーク波形に接線を引く。この両接線とベースラインBLとの交点B1、B2を求め、両交点B1、B2間の距離をピーク幅Wとする。理論段数Nは、このピーク幅Wと保持時間Trとから、次の式(1)により求められる。
N=16×(Tr/W)2 …(1)
【0004】
また、厚生労働省が管轄する日本薬局方(Japanese Pharmacopeia: JP)では、図2に示すように、ピークトップPから垂線を下ろし、ベースラインBLとの交点Qを求め、その高さPQの1/2となる点を通り、ベースラインBLに平行な直線とピークの前半部と後半部のそれぞれの交点D1、D2間の距離をピーク幅W0.5と規定している。この場合、理論段数Nは、次の式(2)により求められる(非特許文献2)。
N=5.54×(Tr/W0.52 …(2)
【0005】
式(1)及び(2)により求められる理論段数Nは、クロマトグラムのピーク形状が理想的なガウス分布(正規分布)である場合には一致する。ピーク幅W、W0.5は、理論段数以外にも例えば分離度を求める際にも用いられる。また、ベースラインBLから5%、10%の高さのピーク幅W0.05、W0.1を算出し、シンメトリー係数等の他の指標を求めることもある。
なお、日本薬局方によるピーク幅の算出方法は、上記のようにベースラインBLから50%の高さにおいて行うものであるが、5%や10%など異なる高さのピーク幅を算出する場合も同様の手順で行うことができる。そのため、以下では、これらをまとめて「日本薬局方のピーク幅算出方法」と呼ぶことにする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“レビュワー・ガイダンス(Reviewer Guidance) バリデイション・オブ・クロマトグラフィック・メソッズ(Validation of Chromatographic Methods)”、[Online]、センター・フォー・ドラッグ・エバリュエーション・アンド・リサーチ(Center for Drug Evaluation and Research (CDER))、[平成24年6月11日検索]、インターネット〈URL: http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/ucm072974.pdf〉
【非特許文献2】“第十五改正日本薬局方”、[Online]、厚生労働省、[平成24年6月11日検索]、インターネット〈URL: http://jpdb.nihs.go.jp/jp15/YAKKYOKUHOU15.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クロマトグラフ用のデータ処理装置では、上記のように、得られたクロマトグラムの理論段数や分離度等の指標を計算するために、ピーク幅の算出が必要となることが多い。しかしながら、図3及び図4に示すように隣り合うピークが重なる場合、実際と異なるピーク幅を算出してしまったり、ピーク幅を算出できなくなったりすることがある。
【0008】
図3は、図1に示した米国薬局方のピーク幅算出方法によりピーク幅Wを算出する例を示したものである。この図の隣り合う2つのピークのうち、左側のピーク1については前半部と後半部の両方で適切に変曲点が得られるため、ピーク幅Wを正しく算出することができる。一方、右側のピーク2については、その前半部がピーク1と重なっていることにより、前半部における本来の変曲点の位置とは異なる位置に変曲点が検出されている。このような場合、ピーク2のピーク幅Wを正しく算出することができない。
【0009】
図4は、日本薬局方のピーク幅算出方法によりピーク幅W0.5を算出する例を示したものである。この図の2つのピークのうち、ピーク1については、ベースラインに平行な直線とピーク1との交点が前半部と後半部の両方で得られるため、ピーク幅W0.5を算出することができる。一方、ピーク2については、その前半部がピーク1と重なっていることにより、前半部では交点を得ることができず、ピーク幅W0.5を算出することができない。
【0010】
以上の場合、デコンボリューション演算によりピークを分離してからピーク幅を算出することも可能ではあるが、分離のための処理に時間を要すると共に、求める値は推定値の域を越えない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ピークが重なることにより、ピークの前半部と後半部のいずれか一方の変曲点又は交点が適切に得られない場合でも、複雑な処理を行うことなく、より確かなピーク幅を算出することができるクロマトグラフ用データ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラフ用データ処理装置の第一の態様は、
a) クロマトグラムのベースラインを決定するベースライン決定手段と、
b) 前記クロマトグラムのピークトップを検出するピークトップ検出手段と、
c) 前記ピークトップを挟んでピークの前半部又は後半部において変曲点を検出し、該変曲点における接線と前記ベースラインとの交点と、該ピークトップから該ベースラインに下ろした垂線と該ベースラインとの交点と、をそれぞれ検出し、これら両交点間の距離を求め、その距離の2倍の値を該ピークのピーク幅として算出するピーク幅算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラフ用データ処理装置の第二の態様は、
a) クロマトグラムのベースラインを決定するベースライン決定手段と、
b) 前記クロマトグラムのピークトップを検出するピークトップ検出手段と、
c) 前記ベースラインからピークトップまでの高さのM%の高さに該ベースラインに平行な直線を引き、該ピークトップを挟んでピークの前半部又は後半部における該直線との交点と、該ピークトップから該直線に下ろした垂線と該直線との交点と、をそれぞれ検出し、これら両交点間の距離を求め、その距離の2倍の値を該ピークのピーク幅として算出するピーク幅算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
クロマトグラムにおける理論段数等の指標は、元々クロマトグラムのピーク形状がガウス分布に従うものとして、計算式が作られている。クロマトグラムのピーク形状が理想的なガウス分布である場合、このピークはピークトップを挟んで前半部と後半部で対称になる。本発明は、この対称性を仮定することにより、デコンボリューション演算などによるピークの分離を行わずに、ピークの前半部と後半部のいずれか一方の算出可能な幅の2倍で以てピーク幅を算出するものである。
【0015】
なお、ピーク同士が重なっていない場合や、重なっていたとしてもそれが図3図4のピーク1のようにピーク幅の算出に影響しない場合には、従来通り、ピークの前半部及び後半部の各々の変曲点における接線とベースラインとの交点間の距離、又はベースラインに平行な直線とピークとの2つの交点間の距離をピーク幅として算出することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るクロマトグラフ用データ処理装置によれば、目的とするピークの前半部と後半部の幅のうち一方を求めることさえできれば、そのピーク幅を容易に算出することができる。また、ピーク形状の対称性が保たれている場合には、デコンボリューション演算によりピークを分離するよりも確かなピーク幅を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】米国薬局方のピーク幅算出法の説明図。
図2】日本薬局方のピーク幅算出法の説明図。
図3】米国薬局方のピーク幅算出法により、実際と異なるピーク幅を算出してしまうピークの例を示す図。
図4】日本薬局方のピーク幅算出法では、ピーク幅を算出することができないピークの例を示す図。
図5】本発明に係るデータ処理装置の一実施例を備えたガスクロマトグラフ分析システムの概略構成図。
図6】理論段数算出の処理手順を示すフローチャート。
図7】本実施例による第1のピーク幅算出の処理手順を示すフローチャート。
図8】第1のピーク幅算出処理の説明図。
図9】本実施例による第2のピーク幅算出の処理手順を示すフローチャート。
図10】第2のピーク幅算出処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
以下、本発明に係るクロマトグラフ用データ処理装置の一実施例について、図5図10を参照して説明する。
【0019】
図5は、本実施例によるデータ処理装置を備えるガスクロマトグラフ分析システムの概略構成図である。液体試料はシリンジ11等により試料気化室12に注入され、そこで気化されて、キャリアガス流路13から一定流量で供給されるキャリアガス流に乗ってカラム14内に送り込まれる。試料に含まれる各種成分は、カラム14を通過する間に時間的に分離されてカラム14から出て、順次、検出器15により検出される。検出器15による検出信号はデジタルデータに変換された後、逐次、データ処理装置16に送られ、そこで一旦、ハードディスク等の記憶部に格納される。1つの試料の分析が終了した後(或いは、連続に実行される複数の試料の分析が終了した後)、記憶部に格納されたデータが読み出され、クロマトグラムの作成、ピーク検出等の各種のデータ処理が行われる。
【0020】
なお、データ処理装置16の実体は専用又は汎用のコンピュータであり、所定の処理プログラムを動作させることにより、当該コンピュータをクロマトグラム作成部161、ベースライン決定部162、ピークトップ検出部163、ピーク幅算出部164として機能させる他、各種分析のためのデータ処理を実行させる。
【0021】
上記データ処理装置16において理論段数Nを算出する際の処理手順を、図6のフローチャートに示す。まずデータ処理装置16内の記憶部から読み出したクロマトグラムデータに対し、クロマトグラム作成部161がクロマトグラムを作成し、ベースライン決定部162及びピークトップ検出部163が所定のアルゴリズムに基づいて、作成したクロマトグラムのベースライン及びピーク(単数又は複数)を決定・検出する(ステップS1、S2)。そして、各ピーク又は必要なピークのみに関し、ピーク開始時間Ts、ピークトップ時間Tp、ピーク終了時間Te、ピーク高さHp、ピーク面積S等、ピークを特徴付けるパラメータを算出する(ステップS3)。さらに、上記パラメータとクロマトグラムデータとを利用して、ピーク幅算出部164がピーク幅を算出し(ステップS4)、ピーク幅の算出方法に対応した式(1)や式(2)等の式により理論段数Nを求める(ステップS5)。
【0022】
本発明に係るデータ処理の特徴はステップS4のピーク幅算出処理にあるので、この処理に関し詳細に説明する。なお、ピーク幅の算出方法は、上記のように、大別して米国薬局方の方法と日本薬局方の方法との2種類があるが、まず米国薬局方の方法に準じてピーク幅Wを算出する手順を示す。
【0023】
[第1のピーク幅算出処理]
図7は、本実施例における第1のピーク幅算出処理のフローチャートである。以下、図1及び図8の説明図を参照しつつ、この第1のピーク幅算出処理の手順を説明する。
【0024】
本実施例における第1のピーク幅算出処理では、まず目的とするピークに対し、そのピーク開始時間からピーク終了時間までの間で、ピークトップPを挟んで前半部と後半部における変曲点を探索する(ステップS11)。なお、変曲点を探索する一般的なアルゴリズムは、次の通りである。
【0025】
ピークトップPから時間的にマイナス側に移動しつつ、ピーク波形上の各点において2次微分値及び1次微分値を算出し、2次微分値が0であって且つ1次微分値が0より大(つまり正値である)であるか否かを判定する。そして、この条件が満たされる際のクロマトグラム上の点を前半部の変曲点C1として採用する。後半部の変曲点C2については、ピークトップPから時間的にプラス側に移動する点と、1次微分値に関する判定条件が0より小(つまり負値である)となる点以外は同様である。なお、ピークトップPからではなく、ピークの裾野(ピーク開始点及びピーク終了点)から変曲点を探索する方法もある。また、2次微分値及び1次微分値の算出には、例えばサビツキ・ゴーレイ(Savitzky-Golay)の方法など既知のアルゴリズムを用いることができる。
【0026】
次に、変曲点がピークの前半部と後半部の両方で適切に検出されたか否かを判定する(ステップS12)。なお、ピーク形状が理想的なガウス分布に従う場合、変曲点はピーク高さHpの1/e0.5(eは自然対数の底)倍の高さになることが分かっている(特開2004-184148号公報を参照)。従って、例えば検出された変曲点のベースラインからの高さが1/e0.5Hpから所定範囲内に収まっているか否かにより、該変曲点が適切であるか否かを判定することができる。
【0027】
ステップS12において、図1のように変曲点C1、C2がピークの前半部と後半部でそれぞれ適切に検出された場合は、各々の変曲点C1、C2において1次微分値を用いて接線を引き、該接線とベースラインとの交点B1、B2を検出する(ステップS1)。そして、両交点B1、B2間の距離をピーク幅Wとして採用する(ステップS1)。これらは従来通りの算出処理である。
【0028】
一方、図8のように、ピークの前半部と後半部のいずれかの変曲点が適切に検出されない場合、このままではピーク幅を正しく算出することができない。このような場合、本実施例における第1のピーク幅算出処理では、検出された方の変曲点(図8の例では点C2)に接線を引き、ベースラインBLとの交点B(又は交点B2)を検出すると共に、ピークトップPからベースラインBLに下ろした垂線とベースラインBLとの交点Qを検出する(ステップS13、S14)。そして、ステップS13及びS14で検出した2つの交点B、Q間の距離を求め、この距離の2倍の値をピーク幅Wとして採用する(ステップS15)。
これらステップS13〜S15の処理により、変曲点の一方が適切に検出されない場合であっても、ピーク幅Wを算出することが可能となる。
【0029】
[第2のピーク幅算出処理]
次に、日本薬局方の方法に準じてピーク高さの50%の位置におけるピーク幅W0.5を算出する処理の手順を、図2及び図10の説明図を参照しつつ、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
本実施例における第2のピーク幅算出処理では、まず目的とするピークのベースラインBLからピークトップPまでの高さの50%の高さにベースラインBLに平行な直線PLを引き、該ピークとの交点を検出する(ステップS21)。そして、ステップS21で検出した交点が該ピークの前半部と後半部の両方において得られたか否かを判定する(ステップS22)。
【0031】
ステップS22において、ピークの前半部と後半部の両方において直線PLとの交点が存在する場合は、図2に示すように各々の交点D1、D2の間の距離を求めることで、ピーク幅W0.5を算出する(ステップS25)。
【0032】
一方、図10のように、ピークの前半部と後半部のいずれかの交点が得られない場合、本実施例における第2のピーク幅算出処理では、ピークトップPから直線PLに下ろした垂線と該直線Sとの交点Rを求める(ステップS23)。そして、ステップS21で検出された方の交点(図10の例では点D)と交点Rの間の距離を算出し、この距離の2倍の値をピーク幅W0.5として採用する(ステップS24)。
これらステップS23及びS24における処理により、目的とするピークと直線PLとの交点のうちの一方が検出されない場合であっても、ピーク幅W0.5を算出することが可能となる。
【0033】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎないから、上記記載の点以外についても、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更や修正を加えることができることは明らかである。例えば、本実施例では第2のピーク幅算出処理を、ベースラインからピークトップまでの高さの50%の高さにおけるピーク幅を求める場合について説明したが、より一般的にM%(0<M<100)としても同様の手順により算出することができる。
【0034】
また、特開2004-184148号公報では、ベースラインからピーク高さの1/e0.5倍の高さにおけるピーク上の点を仮想変曲点として定め、ピークの前半部及び後半部の仮想変曲点における接線とベースラインとの2つの交点間の距離をピーク幅Wとして算出する方法を示しているが、このような算出方法に対しては、仮想変曲点の検出及び検出した仮想変曲点の判定については図9のステップS21、S22と同様の処理で、判定後のピーク幅の算出については図7のステップS13〜S17と同様の処理で、それぞれ行えば良い。
【符号の説明】
【0035】
11…シリンジ
12…試料気化室
13…キャリアガス流路
14…カラム
15…検出器
16…データ処理装置
161…クロマトグラム作成部
162…ベースライン決定部
163…ピークトップ検出部
164…ピーク幅算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10