(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の組成物は、重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体と、重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物とを含む。
本発明の組成物は、金属の腐食を防止する効果が高く、金属との密着性にも優れる塗膜又はシートを形成することができる。得られる塗膜又はシートは、透明性にも優れる。
更に、本発明の組成物から得られる塗膜又はシートは、プリント基板、多層基板の導電部、コネクターの電極、銀または銅パターン、銀または銅メッシュの導電膜等、各種導電部に対してマイグレーション発生を抑制することもできる。マイグレーションとは、電子機器の導電部に水分が付着し、該水分に銀の導電部や銅の導電部が接触して隣接した導電部間に電圧がかかったときに、陽極から陰極へ金属イオンの移行が起こり、陰極に金属が析出する現象で、条件によっては導電部間の短絡といった事故も発生する。特に銀や銅はマイグレーションを生じやすい金属として知られている。
【0027】
上記重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物としては、例えば、後述する式(7)で示される化合物や、式(11)で示される化合物の一部が、重合性官能基を含む有機基で置換されているものが挙げられる。
【0028】
上記重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物において、重合性官能基としては、炭素−炭素二重結合、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基、シンナモイル基等が挙げられる。重合性官能基としては、炭素−炭素二重結合が好ましい。
【0029】
上記重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物は、下記式(1)又は式(2)で示される化合物であることが好ましい。
【0030】
(式(1)又は式(2)で示される化合物)
1.式(1)で示される化合物
【0031】
【化6】
式(1)において、環Aは置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環であり、R
1は水素原子、ハロゲン原子又はC
1−6アルキル基であり、n1は1〜6の整数であり、L
1は−CO−NH−、−CO−O−、−O−CO−NH−又は−NH−CO−NH−で示される結合を含むn1+1価の連結基であり、環Bは置換されていてもよい芳香族環である。
【0032】
式(1)において、式
【化7】
が、式
【化8】
であることが好ましい。環A’は置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環である。
【0033】
式(1)において、環Aは、2個又は3個の窒素原子を含む、5員の含窒素芳香族複素環であることが好ましく、イミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環であることがより好ましい。
【0034】
式(1)において、式
【化9】
が、式
【化10】
であることがより好ましい。環A”は置換されていてもよい。
【0035】
式(1)において、L
1は式(3)で示されることが好ましい。
【化11】
【0036】
式(3)において、Q
1は−O−又は−NH−であり、l1は0又は1であり、m1は1〜20の整数であり、n1は1〜6の整数である。但し、m1が1のときは、n1は1〜3の整数であり、m1が2のときは、n1は1〜5の整数である。m1は、1又は2であることが好ましい。l1は、0であることが好ましい。
【0037】
式(1)及び(3)において、n1は1又は2であることが好ましい。
【0038】
式(1)において、環Bは、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、ニトロ基、ハロゲン基、チオール基、シアノ基、アシル基、スルホン酸基、メシル基、アルキル基、又は、式(4)で示される置換基により置換された芳香族環であってもよい。
【化12】
【0039】
式(4)において、L
3は−CO−NH−、−CO−O−、−O−CO−NH−又は−NH−CO−NH−で示される結合を含むn3+1価の連結基であり、R
3は水素原子、ハロゲン原子又はC
1−6アルキル基であり、n3は1〜6の整数である。
【0040】
式(4)において、L
3は式(6)で示されることが好ましい。
【0042】
式(6)において、Q
3は−O−又は−NH−であり、m3は1〜20の整数であり、n3は1〜6の整数である。m3は、1又は2であることが好ましい。
【0043】
式(4)及び(6)において、n3は1又は2であることが好ましい。
【0044】
式(1)において、環Bは、ベンゼン環であることが好ましい。
【0045】
式(1)において、式
【化14】
が、式
【化15】
のいずれかであることが更に好ましい。
【0046】
上記式において、Z
1は、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、ニトロ基、ハロゲン基、チオール基、シアノ基、アシル基、スルホン酸基、メシル基、アルキル基、又は、式(4)で表される置換基である。Z
1は、水酸基、アミノ基又は式(4)で表される置換基であることが好ましい。
【0047】
2.式(1)で示される化合物の製造方法
式(1)で示される化合物は、式(7)で示される化合物と、式(8)で示される化合物とを反応させて製造することができる。
【0048】
【化16】
式(7)において、環Aは置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環であり、環Bは置換されていてもよい芳香族環である。
【0049】
【化17】
式(8)において、L
11は水酸基又はアミノ基と反応し得る官能基であり、R
1及びn1は式(1)及び(3)のR
1及びn1として上述したとおりである。上記アミノ基は、含窒素芳香族複素環の二級アミン(−NH−)であってもよい。
【0050】
式(7)で示される化合物は、式
【化18】
で示される化合物であることが好ましく、式
【化19】
で示される化合物のいずれかであることがより好ましく、式
【化20】
で示される化合物のいずれかであることが更に好ましく、式
【化21】
で示される化合物のいずれかであることが特に好ましい。
環A’は置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環である。環A”は置換されていてもよい。Z
2は水酸基、アミノ基、カルボン酸基、ニトロ基、ハロゲン基、チオール基、シアノ基、アシル基、スルホン酸基、メシル基又はアルキル基であり、水酸基又はアミノ基であることが好ましい。
【0051】
式(8)で示される化合物は、式(9)で示されるイソシアネート化合物であることが好ましい。
【化22】
【0052】
式(9)において、m1、n1及びR
1は、式(1)及び(3)のm1、n1及びR
1として上述したとおりである。
【0053】
式(8)で示される化合物は、式
【化23】
で示される化合物のいずれかであることがより好ましい。
【0054】
式(7)で示される化合物及び式(8)で示される化合物は、式(7)で示される化合物の1モルに対して、式(8)で示される化合物が0.1〜5モルとなるように、系中に2つの化合物を添加して反応させることが好ましい。
【0055】
式(7)で示される化合物の1モルに対して、式(8)で示される化合物が0.1〜1モルであっても、式(7)で示される化合物と式(8)で示される化合物とを反応させるには十分である。
Z
2が水酸基又はアミノ基である場合であっても、式(7)で示される化合物の1モルに対して、式(8)で示される化合物を0.1〜1モルとすると、式(7)で示される化合物の環Aと式(8)で示される化合物とが優先的に反応する。
Z
2が水酸基又はアミノ基である場合、式(7)で示される化合物の1モルに対して、式(8)で示される化合物が1モルより多くなるように、系中に2つの化合物を添加することにより、式(8)で示される化合物が式(7)で示される化合物の環Aだけでなく、環Bにおける水酸基又はアミノ基とも反応して、式(1)において、式
【化24】
が、式
【化25】
である化合物を製造することができる。Z
3は、式(4)で示される置換基である。
【0056】
式(7)で示される化合物と式(8)で示される化合物との反応は、15〜100℃で進行させることができ、好ましくは15〜70℃であり、より好ましくは20〜30℃である。反応時間は、通常1〜10時間である。
【0057】
式(7)で示される化合物と式(8)で示される化合物との反応は、触媒の存在下で進行させてもよい。触媒としては、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート等の有機チタン系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート等の有機スズ系化合物、塩化第一スズ、臭化第一スズ等のハロゲン系第一スズ等を挙げることができる。触媒の使用量は、特に限定されず、適宜調整すればよいが、例えば、式(8)で表される化合物100質量部に対して、通常0.00001〜3質量部程度、好ましくは0.0001〜1質量部程度である。
【0058】
式(7)で示される化合物と式(8)で示される化合物との反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、反応の進行を妨げない溶媒であって、一般的に使用される従来公知の溶媒を使用すればよい。例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;HCFC225(CF
3CF
2CHCl
2/CClF
2CF
2CHClF混合物)等のフッ素系の溶媒等を使用すればよい。OH基を有するアルコール系の溶媒は、反応の進行を妨げるため好ましくない。また、系内に水があっても反応の進行が妨げられるため、各溶媒は使用前に脱水することがより好ましい。
【0060】
【化26】
式(2)において、環Cは置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環であり、R
2は水素原子、ハロゲン原子又はC
1−6アルキル基であり、n2は1〜6の整数であり、L
2は−CO−NH−、−CO−O−、−O−CO−NH−又は−NH−CO−NH−で示される結合を含むn2+1価の連結基である。
【0061】
式(2)において、式
【化27】
が、式
【化28】
であることが好ましい。環C’は置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環である。
【0062】
式(2)において、環C及び環C’は、2個又は3個の窒素原子を含む、置換されていてもよい5員の含窒素芳香族複素環であることが好ましい。
【0063】
式(2)において、式
【化29】
が、式
【化30】
のいずれかであることがより好ましい。
【0064】
式(2)において、L
2は式(5)で示されることが好ましい。
【0066】
式(5)において、Q
2は−O−又は−NH−であり、l2は0又は1であり、m2は1〜20の整数であり、n2は1〜6の整数である。m2は1又は2であることが好ましい。l2は、0であることが好ましい。
【0067】
式(2)及び(5)において、n2は1又は2であることが好ましい。
【0068】
4.式(2)で示される化合物の製造方法
式(2)で示される化合物は、式(11)で示される化合物と、式(12)で示される化合物とを反応させて製造することができる。
【0069】
【化32】
環Cは置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環である。
【0070】
【化33】
式(12)において、L
21は水酸基又はアミノ基と反応し得る官能基であり、R
2及びn2は、式(2)及び(5)のR
2及びn2として上述したとおりである。上記アミノ基は、含窒素芳香族複素環の二級アミン(−NH−)であってもよい。
【0071】
式(11)で示される化合物は、式
【化34】
で示される化合物であることが好ましく、式
【化35】
で示される化合物のいずれかであることがより好ましい。環C’は置換されていてもよい5員又は6員の含窒素芳香族複素環である。環C及び環C’は、2個又は3個の窒素原子を含む、置換されていてもよい5員の含窒素芳香族複素環であることが好ましい。
【0072】
式(12)で示される化合物は、式(13)で示されるイソシアネート化合物であることが好ましい。
【化36】
【0073】
式(13)において、m2、n2及びR
2は、式(2)及び(5)のm2、n2及びR
2として上述したとおりである。
【0074】
式(12)で示される化合物は、式
【化37】
で示される化合物のいずれかであることがより好ましい。
【0075】
式(11)で示される化合物及び式(12)で示される化合物は、式(11)で示される化合物の1モルに対して、式(12)で示される化合物が0.1〜5モルとなるように、系中に2つの化合物を添加して反応させることが好ましい。
【0076】
式(11)で示される化合物と式(12)で示される化合物との反応は、15〜100℃で進行させることができ、好ましくは15〜70℃であり、より好ましくは20〜30℃である。反応時間は、通常1〜10時間である。
【0077】
式(11)で示される化合物と式(12)で示される化合物との反応は、触媒の存在下で進行させてもよい。触媒としては、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート等の有機チタン系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート等の有機スズ系化合物、塩化第一スズ、臭化第一スズ等のハロゲン系第一スズ等を挙げることができる。触媒の使用量は、特に限定されず、適宜調整すればよいが、例えば、式(12)で表される化合物100質量部に対して、通常0.00001〜3質量部程度、好ましくは0.0001〜1質量部程度である。
【0078】
式(11)で示される化合物と式(12)で示される化合物との反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、反応の進行を妨げない溶媒であって、一般的に使用される従来公知の溶媒を使用すればよい。例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;HCFC225(CF
3CF
2CHCl
2/CClF
2CF
2CHClF混合物)等のフッ素系の溶媒等を使用すればよい。OH基を有するアルコール系の溶媒は、反応の進行を妨げるため好ましくない。また、系内に水があっても反応の進行が妨げられるため、各溶媒は使用前に脱水することがより好ましい。
【0079】
本発明の組成物は、腐食防止効果及び密着性に優れた塗膜を形成できること、マイグレーション発生を抑制することができることから、上記重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物を0.1〜30質量%含むことが好ましく、1〜10質量%含むことがより好ましい。
腐食防止効果及び密着性により優れた塗膜を形成でき、かつマイグレーション発生をより抑制できることから、上記重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物の含有量は2質量%以上であることが更に好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。
【0080】
(重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体)
本発明の組成物は、重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体を含む。通常、含フッ素重合体は、重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する単量体に基づく重合単位を含む。
重合性官能基としては、例えば、炭素−炭素二重結合、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基、シンナモイル基が挙げられる。
架橋性官能基としては、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、アミノ基、シリル基が挙げられる。
重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基としては、炭素−炭素二重結合、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、シアノ基、アミノ基、エポキシ基及びシリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、炭素−炭素二重結合、水酸基、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、炭素−炭素二重結合、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、炭素−炭素二重結合、水酸基、カルボキシル基、及び、アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましく、炭素−炭素二重結合、水酸基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが更により好ましい。
【0081】
上記含フッ素重合体は、含フッ素重合体を構成するポリマーの主鎖末端又は側鎖に重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有することが好ましく、側鎖に有することがより好ましい。
【0082】
上記炭素−炭素二重結合としては、−CX=CH
2(Xは、H、Cl、F、CH
3又はCF
3である。)で表される反応性基が好ましい。
【0083】
上記反応性基は、含フッ素重合体の1〜50モルの量であることが好ましく、10モル以上であることがより好ましく、30モル以下であることがより好ましい。
【0084】
重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体は、後述する含フッ素重合体(A)、(B)及び(C)からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素重合体により形成されることが好ましく、含フッ素重合体(A)及び(B)からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素重合体がより好ましい。
【0086】
含フッ素重合体(A)は、下記式(L):
【0087】
【化38】
(式中、X
1およびX
2は同じか又は異なり、H又はF;X
3はH、F、CH
3又はCF
3;X
4およびX
5は同じか又は異なり、H、F又はCF
3;Rfは、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じか又は異なり、0又は1である。)で示される構造単位(以下、「構造単位L」ともいう。)を有する。上記エーテル結合は、−O−で表される2価の基である。アミド結合は、−CONH−で表される2価の基である。カーボネート結合は、−O−COO−で表される2価の基である。ウレタン結合は、−O−CONH−で表される2価の基である。上記ウレア結合は、−NH−CONH−で表される2価の基である。
なお、本明細書中で、「炭化水素基」は、炭素及び水素からなる有機基であり、「含フッ素炭化水素基」は、炭化水素基が有する一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されたものである。「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アリル基、環状アルキル基、不飽和アルキル基等が挙げられる。「含フッ素炭化水素基」としては、含フッ素アルキル基、含フッ素アリル基、含フッ素環状アルキル基、含フッ素不飽和アルキル基等が挙げられる。
上記Yは、ケトン結合(−CO−)、エーテル結合又はエステル結合(−COO−)を有していてもよい。
【0088】
構造単位Lとしては、なかでも式(L1):
【0090】
(式中、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、Rf、aおよびcは前記と同じ)で示される構造単位L1が好ましい。
【0091】
この構造単位L1を含む含フッ素重合体(A)は、特に屈折率が低く、また、得られる塗膜の透明性を高くすることができ、更に、種々の基材との密着性がよく、密着耐久性を向上させることができる点で好ましい。また、熱、ラジカルやカチオンの接触による硬化反応性を高くすることができる点でも好ましい。
【0092】
さらに構造単位L1のより好ましい具体例の1つは式(L2):
【0094】
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位L2である。
【0095】
この構造単位L2は屈折率が低く、また、塗膜の透明性を高くすることができ、種々の基材との密着性がよく耐久性を向上させることができる点で優れているほか、他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。また、近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできる点でも好ましい。
【0096】
上記構造単位L2において、Rfは、例えば、−(CF(CF
3)CF
2−O)
n−CH
2O−(CO)−CF=CH
2であることも好ましい形態の一つである。
【0097】
また、構造単位L1の別の好ましい具体例は式(L3):
【0099】
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位L3である。
【0100】
この構造単位L3は屈折率が低く、また、種々の基材との密着性がよく、密着耐久性を向上させることができる点で優れているほか、他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点でも好ましい。また、近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできる点でも好ましい。
【0101】
上記構造単位L、L1、L2およびL3に含まれるRfは、上記のとおり、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY(Yは、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基である。
アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基において、その炭素数の上限は、好ましくは30、より好ましくは20、特に好ましくは10である。
【0102】
上記Rfは、下記Rf
2であることも好ましい形態の一つである。下記Y
2中の炭素−炭素二重結合は重縮合反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を与えることができるものである。詳しくは、例えばラジカルやカチオンの接触によって、含フッ素ポリマー分子間で重合反応や縮合反応を起こし、硬化(架橋)物を与えることができるものである。
【0103】
上記構造単位LのRfがRf
2(アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY
2(Y
2は、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。)で置換されている有機基)である構造単位を以下、構造単位Nともいう。また、構造単位L1、L2、及びL3において、RfがRf
2である構造単位を、それぞれ、構造単位N1、N2、及びN3という。
【0104】
好ましいRf
2としては、式(Rf
2):
−D−Ry
2 (Rf
2)
[式中、−D−は、式(D):
【0106】
(式中、nは0〜20の整数であり、Rは水素原子の少なくとも1個がフッ素原子に置換されている炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であり、nが2以上の場合は同じでも異なっていてもよい)で示されるフルオロエーテルの単位であり、Ry
2は、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜99のエーテル結合を有する炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY
2(Y
2は前記と同じ)で置換されている有機基]が好ましい。
【0107】
上記Ry
2は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合又はエーテル結合を有していてもよく、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜39の炭化水素基であって、水素原子の1〜3個がY
2(Y
2は前記と同じ)で置換されている有機基が好ましい。
【0108】
Rは炭素数1〜5の2価の含フッ素アルキレン基であって、少なくとも1個のフッ素原子を有するものであり、それによって、従来のフッ素を含まないアルコキシル基を有するものやアルキレンエーテル単位を有するものに比べて、化合物の粘性をさらに低粘性化できる他、耐熱性向上、屈折率の低下、汎用溶剤への溶解性向上などに寄与することができる。
【0109】
−D−中の−(O−R)−又は−(R−O)−として、具体的には、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(CF
2CF
2CF
2O)−、−(OCFQ
4CF
2)−、−(CFQ
4CH
2O)−、−(CFQ
4CF
2O)−、−(OCF
2CFQ
4)−、−(OCFQ
5)−、−(CFQ
5O)−、−(OCH
2CF
2CF
2)−、(OCF
2CF
2CH
2)−、−(OCH
2CH
2CF
2)−、−(OCF
2CH
2CH
2)−、−(CH
2CF
2CF
2O)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(CF
2CF
2CF
2CF
2O)−、−(OCFQ
5CH
2)−、−(CH
2CFQ
5O)−、−(OCH(CH
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CH(CH
3))−、−(OCQ
62)−および−(CQ
62O)−(Q
4、Q
5は同じか又は異なり、H、F又はCF
3;Q
6はCF
3)などがあげられ、−D−はこれらの1種又は2種以上の繰り返し単位であることが好ましい。
【0110】
なかでも、−D−は、−(OCFQ
4CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCH
2CF
2CF
2)−、−(OCFQ
5)−、−(OCQ
62)−、−(CFQ
4CF
2O)−、−(CFQ
4CH
2O)−、−(CF
2CF
2CF
2O)−、−(CH
2CF
2CF
2O)−、−(CFQ
5O)−および−(CQ
62O)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位であることが好ましく、特には−(OCFQ
4CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCH
2CF
2CF
2)−、−(CFQ
4CF
2O)−、−(CFQ
4CH
2O)−、−(CF
2CF
2CF
2O)−および−(CH
2CF
2CF
2O)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位、さらには−(OCFQ
4CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(CFQ
4CF
2O)−、−(CFQ
4CH
2O)−および−(CF
2CF
2CF
2O)−から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位であることが好ましい。また、構造単位Lが上記構造単位L2である場合、−D−としては、Rが−(CFQ
4CF
2O)−、−(CFQ
4CH
2O)−、−(CF
2CF
2CF
2O)−および−(CH
2CF
2CF
2O)−からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、−(CFQ
4CF
2O)−、−(CFQ
4CH
2O)−および−(CF
2CF
2CF
2O)−からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。上記式中、Q
4は、H、F又はCF
3である。Q
4としては、CF
3が好ましい。
ただし、上記の含フッ素エーテルの単位−D−中および前記Rf
2中において、−OO−(具体的には、−R−O−O−R−、−O−O−R−および−R−O−O−など)構造単位を含まないものとする。
【0113】
(式中、Y
2aは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基又は含フッ素アルケニル基;dおよびeは同じか又は異なり、0又は1)である。
【0114】
好ましいY
2aとしては、
−CX
6=CX
7X
8
(式中、X
6はH、F、CH
3又はCF
3;X
7およびX
8は同じか又は異なり、H又はF)であり、この基はラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く、好ましいものである。
【0118】
またより好ましいY
2としては、
−O(C=O)CX
6=CX
7X
8
(式中、X
6はH、F、CH
3又はCF
3;X
7およびX
8は同じか又は異なり、H又はF)があげられ、この基は特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に塗膜を得ることができる点で好ましい。
【0119】
上記のより好ましいY
2の具体例としては、
【0122】
その他の好ましいY
2の具体例としては、
【0125】
なかでも、Y
2は、−O(C=O)CF=CH
2の構造を有するものが近赤外透明性を高くでき、さらに硬化(架橋)反応性が特に高く、効率よく塗膜を得ることができる点で好ましい。
【0126】
なお、上述の側鎖中に炭素−炭素二重結合を有する有機基Y
2は、ポリマー主鎖末端に導入してもよい。
【0127】
本発明で用いる含フッ素ポリマーにおいて、構造単位N、N1、N2およびN3に含まれる−Rf
2a−基(前記−Rf
2からY
2を除いた基)は、アミド結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数1〜40の2価の含フッ素炭化水素基、又は、アミド結合、カーボネート結合、ウレタン結合若しくはウレア結合を有していてもよい炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基である。この−Rf
2a−は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子又は塩素原子が結合した2価の含フッ素炭化水素基、エーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、より好ましくは2価のパーフルオロアルキレン基又はエーテル結合を有する2価のパーフルオロ炭化水素基である。含フッ素ポリマー中のフッ素含有率は25質量%以上、好ましくは40質量%以上である。これらによって、含フッ素重合体(A)の近赤外透明性を高くできるだけでなく屈折率を低くできることが可能となり、特に塗膜の耐熱性や弾性率を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても近赤外透明性を高く、若しくは低屈折率性を維持できるため好ましい。
【0128】
−Rf
2a−基の炭素数は大きすぎると、2価の含フッ素炭化水素基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下することがあり、またエーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基の場合はポリマー自身やその塗膜の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。2価の含フッ素炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する2価の含フッ素炭化水素基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
【0129】
−Rf
2a−の好ましい具体例としては、
【0132】
本発明で用いる含フッ素重合体(A)を構成する構造単位Nは構造単位N1が好ましく、構造単位N1としてはさらに構造単位N2又は構造単位N3が好ましい。そこで、つぎに構造単位N2および構造単位N3の具体例について述べる。
【0133】
構造単位N2を構成する単量体として好ましい具体例としては、
【0135】
(以上、nは1〜30の整数;Y
2は前記と同じ)があげられる。
【0138】
(以上、Rf
7、Rf
8は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、nは0〜30の整数;XはH、CH
3、F又はCF
3)
などがあげられる。
【0139】
構造単位N3を構成する単量体として好ましい具体例としては、
【0141】
(以上、Y
2は前記と同じ;nは1〜30の整数)などがあげられる。
【0144】
(以上、Rf
9、Rf
10は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;mは0〜30の整数;nは1〜3の整数;XはH、CH
3、F又はCF
3)などがあげられる。
【0145】
これらの構造単位N2およびN3以外に、含フッ素重合体(A)の構造単位Nを構成する単量体の好ましい具体例としては、例えば、
【0147】
(以上、Y
2およびRf
2は上述の例と同じ)
などがあげられる。
【0150】
(以上、Y
2は前記と同じ)などがあげられる。
【0151】
また含フッ素重合体(A)が共重合体である場合、構造単位Lは、含フッ素重合体(A)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた塗膜を得るためには、2モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上である。
【0152】
特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた塗膜の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには30モル%以上、特には40モル%以上含有することが好ましい。また、構造単位Lは、含フッ素重合体(A)を構成する全構造単位に対し100モル%以下であることが好ましく、100モル%未満であることがより好ましい。
【0153】
含フッ素重合体(A)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1,000,000の範囲から選択できるが、好ましくは1,000〜500,000、特に2,000〜200,000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0154】
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に塗膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に塗膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また含フッ素重合体(A)の貯蔵安定性も不安定になりやすい。最も好ましくは数平均分子量が5,000〜100,000の範囲から選ばれるものである。
数平均分子量は、ポリスチレンに準拠してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0155】
含フッ素重合体(A)における構造単位Lの含有量は、含フッ素重合体(A)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた塗膜を得るためには2モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた硬化被膜の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。上限は100モル%未満である。
【0156】
含フッ素重合体(A)は、汎用溶剤に可溶であることが好ましく、例えばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶又は汎用溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。
【0157】
汎用溶剤に可溶であることは、特に、被膜を形成するプロセスにおいて3μm以下、例えば約0.1μm程度の塗膜形成が必要な際、成膜性、均質性に優れるため好ましく、生産性の面でも有利である。
【0158】
上記含フッ素重合体(A)を得るための方法としては、
(1)Rfを有する単量体を予め合成し、重合して得る方法
(2)一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Rfを導入する方法
(3)(1)と(2)の両方の方法を用いてRfを導入する方法
のいずれの方法も採用できる。
【0159】
上記含フッ素重合体(A)は、例えば、国際公開第02/18457号、特開2006−027958号公報に記載の方法により製造することができる。
【0160】
重合方法としては、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法などが例示でき、組成や分子量などの品質のコントロールがしやすい点や工業化しやすい点からラジカル重合法が特に好ましい。
【0161】
構造単位Lを与える含フッ素エチレン性単量体は、下記式:
【0163】
(式中、X
1およびX
2は同じか又は異なり、H又はF;X
3はH、F、CH
3又はCF
3;X
4およびX
5は同じか又は異なり、H、F又はCF
3;Rfは上記と同じである。;aは0〜3の整数;bおよびcは同じか又は異なり、0又は1)で示される単量体である。上記の単量体において、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、a、b、c、及びRfにおける好ましい形態は上記したものと同じである。
【0164】
(含フッ素重合体(B))
含フッ素重合体(B)は、含フッ素単量体に基づく重合単位、及び、一般式(14):
−CH
2−C(−O−(L)
l−R
b)H−
(式中、R
bは末端に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Lは2価の有機基であり、lは0又は1である)で表される構造単位を含むことを特徴とする含フッ素重合体である。
【0165】
上記含フッ素単量体は、フッ素原子を有する単量体である。
【0166】
上記含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン(HFP)、へキサフルオロイソブテン、CH
2=CZ
1(CF
2)
n1Z
2(式中、Z
1はH、F又はCl、Z
2はH、F又はCl、n
1は1〜10の整数である。)で示される単量体、CF
2=CF−ORf
1(式中、Rf
1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、及び、CF
2=CF−OCH
2−Rf
2(式中、Rf
2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素単量体が好ましい。
【0167】
CH
2=CZ
1(CF
2)
n1Z
2で示される単量体としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CHCF
3、CH
2=CFCHF
2、CH
2=CClCF
3等が挙げられる。
【0168】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)等が挙げられ、なかでも、PMVE、PEVE又はPPVEがより好ましい。
【0169】
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf
2が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF
2=CF−OCH
2−CF
2CF
3がより好ましい。
【0170】
上記含フッ素単量体としては、TFE、CTFE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEが更に好ましい。
【0171】
上記含フッ素重合体(B)は、一般式(14):
−CH
2−C(−O−(L)
l−R
b)H−
(式中、R
bは末端に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する有機基であり、Lは2価の有機基であり、lは0又は1である)で表される構造単位を有することが特徴であり、つまり硬化部位として二重結合を有し、ラシカルとの反応によって架橋反応が可能となる。
硬化部位の導入量は含フッ素重合体(B)を製造する際に容易に調整することができる。
【0172】
R
bの具体例としては、一般式(15):
【0174】
(式中、MはH、Cl、F又はCH
3であり、jは1〜20の整数であり、kは1〜10の整数であり、2j+1−kは0以上の整数である。)
で表される基が挙げられる。
【0175】
R
bを表す一般式において、jは1〜10の整数であることが好ましく、1〜6の整数であることがより好ましい。kは1〜6の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。
【0176】
R
bはこれらの置換基の中でも、一般式:
【0178】
(式中、j、k及び2j+1−kは上記に同じ。)
で表される基が反応性の点から好ましい。
【0179】
また、R
bの具体例としては、一般式(16):
【0181】
(式中、RはH、CH
3、F、CF
3又はClである。)
で表される基も挙げられる。
【0185】
R
bとしては、上記に例示した基のなかでも、特に、一般式(15):
【化59】
(式中、MはH、Cl、F又はCH
3であり、jは1〜20の整数であり、kは1〜10
の整数であり、2j+1−kは0以上の整数である。)で表される基、及び、一般式(16):
【化60】
(式中、RはH、Cl、F、CH
3又はCF
3である)
で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基であることが好ましい。
【0186】
Lは、一般式(17):
−(C=O)
s−(N−H)
p−
(式中、sは0又は1であり、pは0又は1である。)で表される有機基であることが好ましい。s及びpがいずれも1の場合、R
bはウレタン結合を介して含フッ素重合体(B)の主鎖と結合することになり、sが1でpが0の場合、R
bはエステル結合を介して含フッ素重合体(B)の主鎖と結合することになり、s及びpがいずれも0の場合、R
bはエーテル結合を介して含フッ素重合体(B)の主鎖と結合することになる。
【0187】
含フッ素重合体(B)は、上記2つの構造単位に加えて、ヒドロキシル基(−OH基)を含む単量体の構造単位を含んでいてもよい。それによって、基材との密着性を高める点で好ましい。
ヒドロキシル基(−OH基)を含む単量体の構造単位は具体的には、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。これらのなかでも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
含フッ素重合体(B)は、含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位(ただしフッ素を含まない)を含むものであってもよい。
【0188】
上記他の単量体としては、例えば、ビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、及び、不飽和カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有エチレン性単量体が好ましい。
なかでも、ビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体、エチレン、2−ブテン、が好ましい。
ビニルエステル単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等が挙げられる。それらのなかでもクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸が、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから好ましい。
【0189】
含フッ素重合体(B)としては、TFE/(14)の構造単位/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/(14)の構造単位/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/(14)の構造単位/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられ、特にTFE/(14)の構造単位/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/(14)の構造単位/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が好ましく、TFE/(14)の構造単位/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体がより好ましい。
【0190】
含フッ素重合体(B)としては、TFEが10〜70mol%/(14)の構造単位が2〜50mol%/ヒドロキシブチルビニルエーテル5〜50mol%/他の単量体1〜50mol%の共重合体が好ましく、TFEが20〜60mol%/(14)の構造単位が5〜30mol%/ヒドロキシブチルビニルエーテル5〜30mol%/他の単量体1〜50mol%の共重合体がより好ましく、TFEが40〜60mol%/(14)の構造単位が5〜15mol%/バーサチック酸ビニル8〜40mol%/ヒドロキシブチルビニルエーテル5〜15mol%/他の単量体1〜20mol%の共重合体が更に好ましい。
【0191】
含フッ素重合体(B)は、重量平均分子量が1000〜100万であることが好ましく、5000〜50万であることがより好ましく、10000〜30万であることが更に好ましい。
【0192】
含フッ素重合体(B)は、含フッ素単量体とOH基含有単量体とを共重合させて含フッ素単量体/OH基含有単量体からなる共重合体を得る工程、上記含フッ素単量体/OH基含有単量体からなる共重合体と一般式(18):
O=C=N−R
b
(式中、R
bは少なくとも1つの末端二重結合を有する有機基である。)で表される化合物とを反応させることにより含フッ素重合体(B)を得る工程、を含む製造方法により好適に製造することができる。以下、この製造方法を第一の製造方法ということがある。
含フッ素重合体(B)を得る工程において使用する一般式(18)で表される化合物としては、一般式(19):
【0194】
(式中、MはH、Cl、F又はCH
3であり、jは1〜20の整数であり、kは1〜10の整数であり、2j+1−kは0以上の整数である。)
で表される化合物が好ましい。
【0195】
一般式(19)において、jは1〜10の整数であることが好ましく、1〜6の整数であることがより好ましい。kは1〜6の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。Mは、H又はCH
3であることが好ましい。
【0196】
つまり、含フッ素単量体/OH基含有単量体からなる共重合体が有する分子内の水酸基と一般式(18)で表される化合物が有するイソシアネート基とがウレタン化反応(付加反応)してウレタン結合を形成する。一方、一般式(18)で表される化合物中に存在する末端二重結合は、実質的に反応せずに、含フッ素重合体(B)の硬化部位となる。
【0197】
上記ウレタン化反応は、含フッ素単量体/OH基含有単量体からなる共重合体と一般式(18)で表される化合物とを混合又は混合物を加熱することによって容易に進行する。
【0198】
上記ウレタン化反応の加熱温度(反応温度)は、通常5〜90℃程度、好ましくは10〜90℃程度、より好ましくは20〜80℃程度である。
【0199】
ウレタン化反応においては、触媒の存在下で反応させてもよい。上記触媒としては、特に限定されず、ウレタン化反応に使用される従来公知のものを使用すればよく、市販品が容易に入手可能である。
【0200】
上記触媒としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート等の有機チタン系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート等の有機スズ系化合物、塩化第一スズ、臭化第一スズ等のハロゲン系第一スズ等が挙げられ、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
【0201】
触媒を使用することにより、より短時間でウレタン化反応が進行し、目的とする含フッ素重合体(B)が得られる。
【0202】
ウレタン化反応に使用する触媒の使用量は、特に限定されず、適宜調整すればよいが、例えば、一般式(18)で表される化合物100質量部に対して、通常0.00001〜3質量部程度、好ましくは0.0001〜1質量部程度である。
【0203】
第一の製造方法においては、さらに溶媒を使用してもよい。溶媒としては、ウレタン化反応の進行を妨げない溶媒であって、一般的に使用される従来公知の溶媒を使用すればよい。
【0204】
溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;HCFC225(CF
3CF
2CHCl
2/CClF
2CF
2CHClF混合物)等のフッ素系の溶媒等を使用すればよい。OH基を有するアルコール系の溶媒は、ウレタン化反応の進行を妨げるため好ましくない。また、系内に水があってもウレタン化反応の進行が妨げられるため、各溶媒は使用前に脱水することがより好ましい。
【0205】
また、含フッ素重合体(B)は、その前駆体の含フッ素単量体/OH含有単量体からなる共重合体と一般式(20):
X
b−C(=O)−R
b
(式中、X
bはHO−、R
10O−、F−又はCl−であり、R
10はアルキル基又は含フッ素アルキル基であり、R
bは少なくとも1つの末端二重結合を有する有機基である。)で表される化合物とを反応させることにより含フッ素重合体(B)を得る工程、を含む製造方法により製造することもできる。以下、この製造方法を第二の製造方法ということがある。
【0206】
一般式(20)において、R
10はアルキル基又は含フッ素アルキル基である。上記アルキル基としては、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。上記含フッ素アルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。例えば、−CF
3、−CH
2CF
3、CH
2CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3等が挙げられる。
【0207】
一般式(20)において、R
bは上記一般式(14)と同様の「少なくとも1つの末端二重結合を有する有機基」である。
【0208】
一般式(20)で表される化合物としては、一般式(21):
【0210】
(式中、RはH、CH
3、F、CF
3又はClであり、X
bは上記に同じ。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0211】
これらの中でも、α,β−不飽和カルボン酸ハライドである一般式:
【0213】
(式中、Rは上記に同じ。)
で表される化合物がより好ましい。
【0217】
第二の製造方法においては、含フッ素単量体/OH基含有単量体からなる共重合体が有する水酸基と一般式(20)で表される化合物のX
b−C(=O)−基とがエステル化反応してエステル結合を形成する。一方、一般式(20)で表される化合物中に存在する末端二重結合は、実質的に反応せずに、上記含フッ素重合体(B)の硬化部位となる。
【0218】
上記エステル化反応は、含フッ素単量体/OH基含有単量体からなる共重合体と一般式(20)で表される化合物とを混合又は混合物を加熱することによって容易に進行する。上記エステル化反応の反応温度は、通常−20〜40℃程度である。
【0219】
第二の製造方法においては、反応によってHClやHFが副生するが、これらを捕捉する目的で適当な塩基を加えることが望ましい。塩基としては、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、テトラメチル尿素、トリエチルアミン等の3級アミン、金属マグネシウム等が挙げられる。
【0220】
また、反応の際に原料である一般式(20)で表される化合物や反応により得られる含フッ素重合体(B)の炭素−炭素二重結合が重合反応を起こすことを禁止するための禁止剤を共存させてもよい。上記禁止剤としては、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0221】
第二の製造方法においては、さらに溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、エステル化反応の進行を妨げない一般的に使用される従来公知の溶媒を使用すればよい。
【0222】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶媒、CH
3CCl
2F(HCFC−141b)、CF
3CF
2CHCl
2/CClF
2CF
2CHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン等の含フッ素溶剤、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロトルエン等の芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。OH基を有するアルコール系の溶媒は、エステル化反応の進行を妨げるため好ましくない。また、系内に水があってもエステル化反応の進行が妨げられるため、各溶媒は使用前に脱水することがより好ましい。
【0223】
(含フッ素重合体(C))
含フッ素重合体(C)は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー(但し、含フッ素重合体(A)及び(B)を除く)である。
【0224】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーがあげられる。なお、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0225】
含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基は、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択されるが、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、シアノ基、アミノ基、エポキシ基、シリル基等が挙げられる。なかでも、硬化反応性が良好な点から、水酸基、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましく、水酸基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が特に好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基を有する単量体を共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
【0226】
硬化性官能基含有単量体としては、例えば、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことが好ましい。また、上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことがより好ましい。
【0227】
硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、8〜30モル%であることが好ましい。より好ましい下限は10モル%であり、より好ましい上限は20モル%である。
【0228】
硬化性官能基含有単量体としては、たとえばつぎのものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。なお、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0229】
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などがあげられる。これらのなかでも、重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で、水酸基含有ビニルエーテル類が好ましく、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2ーヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が特に好ましい。
【0230】
他の水酸基含有単量体としては、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなども挙げられる。
【0231】
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、式(II):
【0233】
(式中、R
3、R
4およびR
5は、同じかまたは異なり、水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基である。nは、0または1である。)で表わされる不飽和カルボン酸類(例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸等)、それらのエステル並びに酸無水物、及び、
式(III):
CH
2=CH(CH
2)
nO(R
6OCO)
mR
7COOH (III)
(式中、R
6およびR
7は、同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖、分岐または環状のアルキレン基である。nは、0または1であり、mは、0または1である。)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
【0234】
上記カルボキシル基含有単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどがあげられる。それらのなかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、及び、3−アリルオキシプロピオン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸が好ましい。
【0235】
式(III)で表されるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などがあげられる。これらの中でも、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であることから、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸が好ましい。
【0236】
(1−3)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、たとえばCH
2=CH−O−(CH
2)
x−NH
2(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH
2=CH−O−CO(CH
2)
x−NH
2(x=1〜10)で示されるアリルアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどがあげられる。
【0237】
(1−4)シリル基含有単量体:
シリル基含有単量体としては、例えば、シリコーン系ビニル単量体が挙げられる。シリコーン系ビニル単量体としては、たとえばCH
2=CHCO
2(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3SiCH
3(OC
2H
5)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
2H
5(OCH
3)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(CH
3)
2(OC
2H
5)、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(CH
3)
2OH、CH
2=CH(CH
2)
3Si(OCOCH
3)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
2H
5(OCOCH
3)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiCH
3(N(CH
3)COCH
3)
2、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3SiCH
3〔ON(CH
3)C
2H
5〕
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
6H
5〔ON(CH
3)C
2H
5〕
2などの(メタ)アクリル酸エステル類;CH
2=CHSi[ON=C(CH
3)(C
2H
5)]
3、CH
2=CHSi(OCH
3)
3、CH
2=CHSi(OC
2H
5)
3、CH
2=CHSiCH
3(OCH
3)
2、CH
2=CHSi(OCOCH
3)
3、CH
2=CHSi(CH
3)
2(OC
2H
5)、CH
2=CHSi(CH
3)
2SiCH
3(OCH
3)
2、CH
2=CHSiC
2H
5(OCOCH
3)
2、CH
2=CHSiCH
3〔ON(CH
3)C
2H
5〕
2、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物などのビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類などが例示される。
【0238】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を有することが好ましい。
【0239】
含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
【0240】
含フッ素ビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性、共重合性及び耐薬品性等に優れている点で、TFE、CTFE及びVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、耐候性に優れ、更に耐湿性により優れている点で、TFE及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましく、TFEが最も好ましい。
【0241】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、カルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテル及び非フッ素化オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
カルボン酸ビニルエステルは、相溶性を改善する作用を有する。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
非フッ素化オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
【0242】
上記フッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位は、硬化性官能基含有ビニルモノマーに基づく重合単位、及び、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位以外の全重合単位を構成することが好ましい。
【0243】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、該ポリマーを構成する重合単位に応じて、たとえば次のものが例示できる。
【0244】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、例えば、(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー、(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー、(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー、(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0245】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーは、パーフルオロオレフィン系ポリマーの全重合単位に対して、パーフルオロオレフィン単位が20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、若しくは、TFEと、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体などがあげられる。
【0246】
上記共重合可能な他の単量体としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0247】
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーの中でも、顔料分散性や耐候性、共重合性及び耐薬品性に優れる点で、TFE単位を主体とするTFE系ポリマーが好ましい。TFE系ポリマーは、TFE系ポリマーの全重合単位に対して、TFE単位が20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
【0248】
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、例えば、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられ、特に、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、及び、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。このような硬化性ポリマーの塗料としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフル(登録商標)GKシリーズなどが例示できる。
【0249】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー
CTFE単位を主体とするCTFE系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。CTFE系ポリマーの硬化性ポリマー塗料としては、たとえば旭硝子(株)製のルミフロン(登録商標)、大日本インキ製造(株)製のフルオネート(登録商標)、セントラル硝子(株)製のセフラルコート(登録商標)、東亜合成(株)製のザフロン(登録商標)などが例示できる。
【0250】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー
VdF単位を主体とするVdF系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0251】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー
フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばCF
3CF
2(CF
2CF
2)
nCH
2CH
2OCOCH=CH
2(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、たとえばダイキン工業(株)製のユニダイン(登録商標)やエフトーン(登録商標)、デュポン社製のゾニール(登録商標)などが例示できる。
【0252】
上記(1)〜(4)の中でも、耐候性及び防湿性の観点から、硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましく、TFE単位を主体とするTFE系ポリマーがより好ましい。
【0253】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、例えば、特開2004−204205号公報に開示される方法により製造することができる。
【0254】
本発明の組成物は、重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体を99.9〜5質量%含むことが好ましく、99.0〜20質量%含むことがより好ましく、97.0〜50質量%含むことが更に好ましい。
【0255】
本発明の組成物は、アクリル成分を含むものであってもよい。
【0256】
アクリル成分は、アクリルモノマー及びアクリルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0257】
アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル及び多官能アクリル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0258】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」と単に記載したときには、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル及び多官能アクリル系単量体を含まない。
【0259】
アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸及び多官能アクリル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル及び多官能アクリル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルを単独で使用するか、又は(メタ)アクリル酸エステル及び多官能アクリル系単量体の両方を使用することである。
【0260】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸ベンジルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
【0261】
多官能アクリル系単量体としては、ジオール、トリオール、テトラオール等の多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた化合物が一般的に知られている。具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物が挙げられる。また、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含む含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基又はエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の屈折率を低く維持できる点で好ましい。
【0262】
多官能アクリル系単量体としては、多官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートであることが更に好ましい。
【0263】
アクリル成分は、アクリルポリマーであってもよい。アクリルポリマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
【0264】
(メタ)アクリル酸エステルの共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、多官能アクリル系単量体、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合体が好ましい。
【0265】
アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0266】
アルキルビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0267】
(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体及び(メタ)アクリル酸エステルの共重合体としては、全重合単位に対して、(メタ)アクリル酸エステルに基づく重合単位が1〜100モル%であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルに基づく重合単位が50〜100モル%であることがより好ましい。
【0268】
アクリルポリマーの重量平均分子量は、5000〜200万の範囲であり、1万〜170万の範囲が好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、ガスバリア性、水蒸気バリア性が劣る恐れがあり、重量平均分子量が大きすぎると、含フッ素重合体との相溶性、塗布性が劣る恐れがある。
アクリルポリマーの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出することができる。
【0269】
アクリル成分(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、多官能アクリル系単量体、不飽和カルボン酸単量体、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体及び(メタ)アクリル酸エステルの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体と多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及び、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
また、アクリル成分(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和カルボン酸との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0270】
本発明の組成物は、アクリル成分(A)と重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体との質量比(アクリル成分(A))/(含フッ素重合体)が1/99〜99/1であることが好ましい。上記特定の範囲でアクリル成分(A)を含むことによって、腐食防止効果及び密着性に優れた塗膜を形成できる。質量比(アクリル成分(A))/(含フッ素重合体)は、1/99〜70/30であることが好ましく、1/99〜50/50であることがより好ましく、5/95〜30/70であることが特に好ましい。
【0271】
本発明の組成物は、アクリル成分と重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体との合計質量が、ポリマー成分の全量(アクリル成分がモノマーである場合にはアクリル成分の量を含む)に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0272】
本発明の組成物は、塗料として好適に使用することができる。塗料の形態としては、溶剤型塗料、水性型塗料、粉体型塗料等が挙げられる。これらの形態には、常法により調製することができる。
本発明の組成物は、成膜の容易さ、硬化性、乾燥性の良好さ等の点から溶剤型塗料であることが好ましい。
【0273】
本発明の組成物が溶剤型塗料である場合、本発明の組成物は、更に溶剤を含む。重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体及び上記重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物を溶剤に溶解又は分散させることによって溶剤型塗料を得ることができる。
【0274】
溶剤としては、極性有機溶剤が好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、カーボネート系溶剤、環状エーテル系溶剤、アミド系溶剤がより好ましい。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0275】
本発明の組成物が溶剤型塗料である場合、塗料の総量100質量%に対するアクリルポリマー及び含フッ素重合体(B)の合計量は1〜95質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましい。
【0276】
本発明の組成物を塗料として塗装する場合、塗装温度は、塗装の形態に応じて、通常の温度条件で行えばよい。
【0277】
コーティング方法としては、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ブレードコーティング法、リバース法、ロッドコーティング法、エアドクタコーティング法、カーテンコーティング法、ファクンランコーティング法、キスコーティング法、スクリーンコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、押出コーティング法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、ダイコート法、ディップコート法等が採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚のコントロール性等を考慮して選択できる。
【0278】
溶剤型塗料の場合、硬化及び乾燥は、10〜300℃、通常は10〜200℃で、30秒から3日間行う。硬化及び乾燥させた後、養生してもよく、養生は、通常、10〜200℃にて1分間〜3日間で完了する。
硬化は、加熱以外にも、紫外線、電子線又は放射線等の活性エネルギー線を照射することによって光硬化させる方法により行うことができる。
【0279】
本発明の組成物は、硬化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、顔料、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤、活性エネルギー線硬化開始剤等を含むものであってもよい。
【0280】
本発明の組成物は、さらに必要に応じて活性エネルギー線硬化開始剤を含むものであってもよい。重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体が含フッ素重合体(A)又は(B)である場合には、特に活性エネルギー線硬化開始剤を含むことが好ましい。
活性エネルギー線硬化開始剤は、例えば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線等が照射されることによって初めてラジカルやカチオン等を発生し、含フッ素重合体の炭素−炭素二重結合を硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。例えばつぎのものが例示できる。
【0281】
アセトフェノン系:アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリンプロパン−1−オン等。
【0282】
ベンゾイン系:ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等。
【0283】
ベンゾフェノン系:ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等。
【0284】
チオキサンソン類:チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソン等。
【0285】
その他:ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノン等。
【0286】
本発明の組成物は、さらに必要に応じて硬化剤を含むものであってもよい。重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体が含フッ素重合体(C)である場合には、特に硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、たとえば水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
硬化剤は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー中の硬化性官能基1当量に対して、0.1〜5モル当量となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モル当量である。
【0287】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー中の硬化性官能基の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析、中和滴定を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0288】
硬化促進剤としては、例えば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛等が挙げられる。
【0289】
硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合割合は硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100重量部に対して1.0×10
−6〜1.0×10
−2重量部程度が好ましく、5.0×10
−5〜1.0×10
−3重量部程度がより好ましい。
【0290】
塗装温度は、塗装の形態に応じて、通常の温度条件で行えばよい。
【0291】
硬化及び乾燥は、溶剤型塗料の場合、10〜300℃、通常は100〜200℃で、30秒から3日間行う。硬化及び乾燥させた後、養生してもよく、養生は、通常、20〜300℃にて1分間〜3日間で完了する。
【0292】
本発明の組成物は、優れた腐食防止効果、透明性及び金属密着性を備える塗膜を形成することができることから、金属表面を保護するために使用する防錆塗料として特に好適である。また、本発明の組成物は、優れた腐食防止効果、透明性及び密着性を備える塗膜を形成することができることから、光学用部材の接着のために用いられる接着剤として、好適に利用可能である。更に、本発明の組成物は、光学用部材の接着のために限らず、接着剤として好適に利用可能である。
上記金属としては、銅、銀、アルミ、鉄、SUS、ニッケル、モリブデン、クロム、亜鉛、その他各種鋼板等が挙げられる。特に優れた金属密着性及び防錆性が発揮されることから、銅または銀が好ましい。さらには銅が特に好ましい。従って、本発明の組成物は、銅または銀の防錆用塗料組成物としてより好適である。銅は銅板だけでなく、基材に銅が蒸着またはスパッタされたもの、基材に銅箔が積層されたものでもよい。銀は銀板だけでなく、基材に銀が蒸着またはスパッタされたもの、基材に銀箔が積層されたものでもよい。
【0293】
本発明の組成物は、プリント基板、多層基板の導電部、コネクターの電極、銀または銅パターン、銀または銅メッシュの導電膜、銀または銅などの金属微粒子、金属ナノワイヤーからなる導電膜等、各種導電部に対してマイグレーション発生を抑制することができることから、マイグレーション発生を抑制するための塗料組成物としても好適である。
【0294】
本発明の組成物の用途としては、タッチパネル、LED、太陽電池、有機EL、屋外で使用する電子装置、その他電子機器類の配線、電線、電気接点、電子デバイス、アンテナ、素子の金属部の保護が挙げられる。より具体的には、銅または銀からなる、タッチパネル取り出し配線の保護、タッチパネル透明電極の保護、LEDリードフレームの保護、太陽電池取り出し配線の保護が挙げられる。
【0295】
本発明は、基材と、上述の組成物から上記基材上に形成された塗膜と、を含むことを特徴とする塗装物品でもある。上記基材は、金属が分散あるいは一部分散してなる樹脂、樹脂表面の全体あるいは一部が金属で覆われた金属/樹脂の積層体であることが好ましい。上記金属としては、銅、銀、アルミ、鉄、SUS、ニッケル、モリブデン、クロム、亜鉛等が挙げられる。特に優れた腐食防止効果及び密着性が発揮されることから、銅または銀が好ましい。さらには銅が特に好ましい。
本発明の塗装物品としては、タッチパネル、LED、太陽電池、有機EL、屋外で使用する電子装置、その他電子機器類の金属配線、電子デバイス、アンテナ、素子等が挙げられる。より具体的には、銅または銀からなる、タッチパネル取り出し配線、タッチパネル透明電極、LEDリードフレーム、太陽電池取り出し配線等が挙げられる。
【0296】
本発明は、上記組成物から形成されることを特徴とするシートでもある。本発明のシートは、光学用部材の接着のために用いられる粘着シート又は接着用シートとして、好適に利用可能である。また、本発明のシートは、光学用部材の接着のために限らず、粘着シート又は接着用シートとして好適に利用可能である。
【0297】
本発明のシートは、基材上に上記組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥し、所望により硬化させることにより、製造することができる。乾燥及び硬化させたシートを基材から引き剥がして単層のシートを製造することもできる。
【0298】
上記組成物が溶剤型塗料の場合、硬化及び乾燥は、10〜300℃、通常は10〜200℃で、30秒から3日間行う。硬化及び乾燥させた後、養生してもよく、養生は、通常、10〜200℃にて1分間〜3日間で完了する。
硬化は、加熱以外にも、紫外線、電子線又は放射線等の活性エネルギー線を照射することによって光硬化させる方法により行うことができる。
【0299】
本発明のシートは、他の層の上に設置するか、他の2つの層の間に設置した後、圧着することにより他の層と接着させることができる。
【0300】
本発明は、剥離シートと、上記剥離シート上に上記組成物から形成されたシートと、を含むことを特徴とする積層シートでもある。剥離シートは、塗膜の片面に設けられていてもよし、塗膜の両面に設けられていてもよい。
【0301】
本発明の積層シートは、剥離シート上に上記組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥し、所望により硬化させることにより、製造することができる。乾燥及び硬化の条件は上述したとおりである。
【0302】
上記剥離シートとしては、基材に離型剤を塗布して得られるシート、フッ素樹脂シート等を使用することができる。基材としてはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂からなるものが挙げられ、離型剤としては、シリコーン系、フルオロ系、フルオロシリコーン系、またシリコーンを含まないオレフィン系、アルキド系、アルキル系、長鎖アルキル系を挙げることができる。
【0303】
本発明の積層シートは、使用時に剥離シートを剥離して、上記組成物から形成されるシートを他の層と貼り合わせることにより使用することができる。また、上記組成物から形成されるシートは、他の層の上に設置するか、他の2つの層の間に設置した後、圧着することにより他の層と接着させることができる。
【0304】
上記組成物から形成されたシートは、金属の腐食を防止する効果が高く、金属との密着性にも優れ、透明性にも優れる。
更に、上記シートは、プリント基板、多層基板の導電部、コネクターの電極、銀または銅パターン、銀または銅メッシュの導電膜等、各種導電部に対してマイグレーション発生を抑制することもできる。
【0305】
上述した組成物、並びに、上述したシート及び積層シートを使用して、
図1〜4に示す積層構造を有する積層体を製造することができる。
【0306】
図1に示す実施態様では、絶縁層21、上記組成物から形成されたシート22、金属層23、及び、絶縁層24がこの順に設けられている。上記組成物から形成されたシート22は、金属層23を腐食から保護していると同時に、絶縁層21と金属層23とを強固に接着させている。絶縁層21及び24は、透明基板であることが好ましく、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドポリマー、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、又は、ウレタンポリマーとアクリルポリマーの混合ポリマー等から形成することができる。金属層23は、銅、銀、アルミ、鉄、SUS、ニッケル、モリブデン、クロム、亜鉛等から形成することができ、なかでも、銅又は銀から形成することが好ましい。絶縁層21及び24の片面あるいは両面に密着性を向上させるプライマー層を設けてもよい。そのプライマー層は本発明の組成物から形成されたシートであってもよい。
【0307】
図2に示す実施態様では、絶縁層41、上記組成物から形成されたシート42、金属層43、絶縁層44、金属層45及び上記組成物から形成されたシート46がこの順に設けられている。このように絶縁層を介して2つの金属層を設けることもできる。
上記組成物から形成されたシート42及び46は、金属層43及び45を腐食から保護していると同時に、絶縁層41と金属層43とを強固に接着させている。また、シート46を介して、この実施態様の積層体を他の光学部材と接着させることができる。絶縁層41及び44は、透明基板であることが好ましく、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドポリマー、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、又は、ウレタンポリマーとアクリルポリマーの混合ポリマー等から形成することができる。金属層43及び45は、銅、銀、アルミ、鉄、SUS、ニッケル、モリブデン、クロム、亜鉛等から形成することができ、なかでも、銅又は銀から形成することが好ましい。絶縁層41及び44の片面あるいは両面に密着性を向上させるプライマー層を設けてもよい。そのプライマー層は本発明の組成物から形成されたシートであってもよい。
【0308】
図3に示す実施態様では、絶縁層51、光学的に透明な粘着シート(OCAシート)52、上記組成物から形成されたシート53、金属層54及び絶縁層55がこの順に設けられている。光学的に透明な粘着シート(OCAシート)52は、絶縁層51とシート53とを強固に接着させている。上記組成物から形成されたシート53は、金属層54を腐食から保護していると同時に、シート52と金属層54とを強固に接着させている。絶縁層51及び55は、透明基板であることが好ましく、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドポリマー、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、又は、ウレタンポリマーとアクリルポリマーの混合ポリマー等から形成することができる。金属層54は、銅、銀、アルミ、鉄、SUS、ニッケル、モリブデン、クロム、亜鉛等から形成することができ、なかでも、銅又は銀から形成することが好ましい。絶縁層51及び55の片面あるいは両面に密着性を向上させるプライマー層を設けてもよい。そのプライマー層は本発明の組成物から形成されたシートであってもよい。
【0309】
図4に示す実施態様では、絶縁層61、光学的に透明な粘着シート(OCAシート)62、上記組成物から形成されたシート63、金属層64、絶縁層65、金属層66、上記組成物から形成されたシート67及び光学的に透明な粘着シート(OCAシート)68がこの順に設けられている。このように絶縁層を介して2つの金属層を設けることもできる。光学的に透明な粘着シート(OCAシート)62は絶縁層61とシート63とを強固に接着させている。また、光学的に透明な粘着シート(OCAシート)68を介してこの実施態様の積層体を他の光学部材と接着させることができる。上記組成物から形成されたシート63及び67は、金属層64及び66を腐食から保護していると同時に、シート62と金属層64とを強固に接着させており、金属層66とシート68とを強固に接着させている。絶縁層61及び65は、透明基板であることが好ましく、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドポリマー、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、又は、ウレタンポリマーとアクリルポリマーの混合ポリマー等から形成することができる。金属層64及び66は、銅、銀、アルミ、鉄、SUS、ニッケル、モリブデン、クロム、亜鉛等から形成することができ、なかでも、銅又は銀から形成することが好ましい。絶縁層61及び65の片面あるいは両面に密着性を向上させるプライマー層を設けてもよい。そのプライマー層は本発明の組成物から形成されたシートであってもよい。
【0310】
以上に記載した各実施態様における「上記組成物から形成されたシート」は「上記組成物から形成された塗膜」であってよい。また、光学的に透明な粘着シート(OCAシート)は、光学的に透明な粘着剤(例えば液状の光学透明粘着剤)を塗布することにより形成された塗膜であってもよい。
【実施例】
【0311】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0312】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0313】
Hazeの測定
実施例1〜6、10〜19、比較例1〜3で得たコーティング液を、PETフィルム(東レ社製、ルミラー U−46 100μm)上にバーコートNo.10で塗布し、70℃で20分間乾燥させた後、乾燥塗膜にUVを照射した(ウシオ電機社製 条件;積算光量:615mJ/cm
2)。
また、実施例7〜9で得たコーティング液を、PETフィルム(東レ社製、ルミラー U−46 100μm)上にバーコートNo.10で塗布し、70℃で1時間乾燥させた。
次に、PET上に形成された膜それぞれについて、Hazeメーター(東洋精機製作所社製 HazeGardII)を用いてHaze値を測定した。
【0314】
銅密着性試験
実施例1〜6、10〜19、比較例1〜3で得たコーティング液を、PETの上に銅が蒸着されたフィルムの銅蒸着面上にバーコートNo.10で塗布し、120℃で5分間乾燥させた後、乾燥塗膜にUVを照射して(ウシオ電機社製 条件;積算光量:615mJ/cm
2)、銅基材コーティングサンプルを得た。
また、実施例7〜9で得たコーティング液を、PETの上に銅が蒸着されたフィルムの銅蒸着面上にバーコートNo.10で塗布し、120℃で1時間乾燥させて銅基材コーティングサンプルを得た。
PETの上に銅が蒸着されたフィルムの銅蒸着面上に形成された膜それぞれについて、JIS K5600に従い、碁盤目テープ法により、100マスのうち密着が維持できているマス目の数を調べた。
【0315】
銅腐食防止の評価
銅基材との密着性試験で作成した銅基材コーティングサンプルと同様のサンプルについて、条件;高温高湿試験(85℃、85%RH、240時間)を行った。金属の表面抵抗値について、非接触式表面抵抗測定装置(ナプソン社製 EC−80P)を用いて測定を行った。
【0316】
マイグレーション抑制の評価
銅櫛形電極(L/S=300um/300um)、銀櫛形電極(L/S=300um/300um)の電極部に、実施例1〜6、10〜19、比較例1〜3で得たコーティング液を、バーコートNo.10で塗布し、120℃で5分間乾燥させた後、乾燥塗膜にUVを照射して(ウシオ電機社製 条件;積算光量:615mJ/cm
2)、櫛形電極コーティングサンプルを得た。
また、実施例7〜9で得たコーティング液を、No.10で塗布し、120℃で5分間乾燥させて櫛型電極コーティングサンプルを得た。これらにハンダで配線を付け、塗布部位に18.2MΩ/cmの超純水をスポイトで1滴、滴下し、直流電圧5Vを印加した。印加後、電流(0.001mA以上)が流れ始めるまでの時間(秒)を計測した。40秒未満に電流が流れ始め短絡したものを×、40秒以上900秒未満で短絡したものを△、900秒以上経過しても短絡しないものを◎とした。
【0317】
合成例1 不飽和基を有する化合物 化合物a〜fの合成
化合物a
30mlナスフラスコに、1,2,3−ベンゾトリアゾール0.5g、アセトン10gを秤量し、室温で30分攪拌させ1,2,3−ベンゾトリアゾールを溶解させた後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製 カレンズAOI)を0.59g(1,2,3−ベンゾトリアゾールに対し1当量)滴下した。室温で4時間攪拌した後、反応溶液をKBr板に0.1g滴下し、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計 株式会社パーキンエルマージャパン製Perkin Elmer precisely Spectrum100 FT−IR Spectrometer)にて測定し、アクリロイルオキシエチルイソシアネート由来のイソシアネート基が残存していないことを確認した。
【0318】
化合物b、化合物d、化合物f
化合物aと同様の方法で、表1で示す含窒素化合物に対しイソシアネートモノマが1当量になるように反応させた。
【0319】
化合物c
30mlナスフラスコに、1,2,3−ベンゾトリアゾール0.5g、アセトン10g、さらにジブチルスズジラウレートを0.01gを秤量し、室温で30分攪拌させ1,2,3−ベンゾトリアゾールを溶解させた後、冷却環を取付け、ウォーターバスを用いて70度に過熱した。1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートを1.0g滴下後、70度で10時間攪拌させた後、化合物aと同様の方法でFT−IR測定し、イソシアネート基が残存していないことを確認した。
【0320】
化合物e
含窒素化合物に対しイソシアネートモノマが2当量になるように反応させたことを除いて、化合物aと同様の方法で反応させた。
【0321】
【表1】
【0322】
合成例2 架橋性官能基を含有する含フッ素重合体 ポリマa〜cの重合
ポリマa
6Lステンレス製オートクレーブを窒素置換した後に、酢酸ブチル1810gを加えた。次に、バーサチック酸(C9)ビニルエステル(商品名、Momentive Specialty Chemicals社製 ベオバ9)を423.2g、安息香酸ビニルエステルを160.6g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルを113.6g、クロトン酸を4.4gを加えた。その後、テトラフルオロエチレン(TFE)を443.8g加え、槽内を60℃まで昇温した。これに、撹拌下、パーブチルPV(日油(株)製のラジカル重合開始剤)2.5gを加え、反応を開始した。このとき槽内の圧力は0.8MPaとなり、攪拌速度は280rpmであった。重合開始6時間後に、槽内の温度を75℃に上げ3時間攪拌させた後、槽内を常温常圧に戻して重合を停止した。含フッ素共重合体の酢酸ブチル溶液を得た。その後、ポリマ固形分濃度が30mass%となるようエバポレータを用いて濃縮した。
【0323】
ポリマb
バーサチック酸(C10)ビニルエステル(商品名、Momentive Specialty Chemicals社製 ベオバ10)を339.4g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルを194.8g、酢酸ビニルを36.1g、クロトン酸を3.0g、テトラフルオロエチレン(TFE)を343.2gとしたことを除いて、ポリマaと同様の方法で含フッ素共重合体の酢酸ブチル溶液を得た。
【0324】
ポリマc
バーサチック酸(C9)ビニルエステル(商品名、Momentive Specialty Chemicals社製 ベオバ9)を255g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルを80.6g、クロトン酸を3.0g、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を300gとしたことを除いて、ポリマaと同様の方法で含フッ素共重合体の酢酸ブチル溶液を得た。
【0325】
【表2】
【0326】
合成例3 重合性官能基を含有する含フッ素重合体 ポリマd〜gの合成
ポリマd
250mLナスフラスコに合成例2にて得られたポリマaである含フッ素共重合体の酢酸ブチル溶液100重量部に対して、オルガチックスTC750(マツモトファインケミカル社製 Ti含有量11.2wt%)0.0005重量部、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製 カレンズAOI)2.35重量部を加え、窒素雰囲気下45℃で6時間攪拌させた。
【0327】
ポリマe
合成例2で得られたポリマbである含フッ素共重合体を用いたこと、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製 カレンズAOI)3.99重量部を加えたことを除いて、ポリマdと同様の方法で反応させた。
【0328】
ポリマf
合成例2で得られたポリマcである含フッ素共重合体を用いたこと、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製 カレンズAOI)2.17重量部を加えたことを除いて、ポリマdと同様の方法で反応させた。
【0329】
ポリマg
250ml四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル80mlと、下記式:
【0330】
【化66】
で表されるフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)の単独重合体5.0gと、ピリジン2.0gとを仕込み5℃以下に氷冷した。窒素気流下、撹拌を行いながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド(α−FA):CH
2=CFCOF2.0gをジエチルエーテル20mlに溶解したものを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついでエーテル溶液を濾過により分離した。このエーテル溶液を
19F−NMR分析により調べたところ、モル比が下記式:
【0331】
【数1】
で表される共重合体であった。このエーテル溶液をNaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm
−1に、C=O基の吸収が1770cm
−1に観測された。
【0332】
実施例で使用したアクリル成分を表3に示す。
【表3】
【0333】
実施例1〜6、10〜19、比較例2、3
不飽和基を有する化合物、重合成官能基含有フッ素重合体、アクリル成分、酢酸ブチル及びメチルエチルケトンを混合し、また必要に応じて濃縮し、表4又は5に示す組成を有する濃度が30質量%のコーティング液(酢酸ブチル/メチルエチルケトン=1/1)を調製した。その後、得られるコーティング液の固形分(溶剤である酢酸ブチルとメチルエチルケトンを除いたもの)に対して3質量%となるようにイルガキュア184(BASF社製)を添加して、コーティング液を調製した。
【0334】
実施例7〜9
不飽和基を有する化合物、架橋成官能基含有フッ素重合体、イソシアネート硬化剤、酢酸ブチル及びメチルエチルケトンを混合し、また必要に応じて濃縮し、表4に示す組成を有する固形分濃度が30質量%のコーティング液(酢酸ブチル/メチルエチルケトン=1/1)を調製した。
【0335】
比較例1
不飽和基を有する化合物のみを固形分濃度が30質量%のコーティング液(酢酸ブチル/メチルエチルケトン=1/1)となるよう調製した。
【0336】
【表4】
【表5】
【解決手段】重合性官能基及び架橋性官能基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有する含フッ素重合体と、重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物とを含むことを特徴とする組成物。