(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737481
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】密閉型非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 2/12 20060101AFI20150528BHJP
H01M 2/02 20060101ALI20150528BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20150528BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20150528BHJP
【FI】
H01M2/12 101
H01M2/02 F
H01M10/0525
H01M4/525
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-532140(P2014-532140)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2013005505
(87)【国際公開番号】WO2014045569
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-209480(P2012-209480)
(32)【優先日】2012年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 恭介
(72)【発明者】
【氏名】井上 廣樹
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−285892(JP,A)
【文献】
特開昭60−200456(JP,A)
【文献】
特開2009−152182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する有底筒状の電池ケースと、
前記電池ケースの開口部を封止する封口体と、
正極板及び負極板がセパレータを介して巻回された巻回型電極群とを備え、
前記電池ケースの底部には、溝状の薄肉部が形成され、前記電池ケースの底部の面積に対する前記溝状の薄肉部により囲まれた領域の面積の割合が10%以上であり、体積エネルギー密度が500Wh/L以上である密閉型非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記溝状の薄肉部は円状であり、前記溝状の薄肉部により囲まれた領域の電池内面側には、前記正極板又は前記負極板に電気的に接続されたリードが接続されており、前記リードの融点は1000℃以上である請求項1に記載の密閉型非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極板には正極活物質が含有され、前記正極活物質は一般式LixNiyM1-yO2(0.95≦x≦1.15、0.6≦y≦1、MはCo、Mn、Cr、Fe、W、Mg、Zr、TiおよびAlの少なくとも1種類)で表されるリチウムニッケル複合酸化物である請求項1又は2に記載の密閉型非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記溝状の薄肉部は、前記電池ケースの底部の電池外面側にノッチを設けることにより形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の密閉型非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記封口体は開口部を有するフィルタを含み、前記フィルタの開口部の面積は30mm2以上である請求項1〜4のいずれかに記載の密閉型非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記電池ケースは鉄製であり、前記電池ケースの筒状部の厚みは、0.1mm〜0.4mmである請求項1〜5のいずれかに記載の密閉型非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記溝状の薄肉部により囲まれた領域の電池外面側にワイヤーが接続されている請求項2〜6のいずれかに記載の密閉型非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池内の圧力が上昇したときに、電池内に発生したガスを電池外に排気する安全弁を備えた密閉型二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、携帯型パーソナルコンピューター、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、さらには、ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)用の電源として、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池等の密閉型二次電池が利用されている。
【0003】
密閉型二次電池は、内部短絡または外部短絡が発生した場合、あるいは、異常加熱や異常衝撃等が発生した場合、電池内部で急激な充放電反応または化学反応により急激なガス発生が起こる。これにより、電池ケースが膨張したり、さらには電池ケースが破裂するおそれがある。そのため、多くの密閉型二次電池には、電池内の圧力が所定値に達すると、電池内に発生したガスを電池外に排気する安全弁(防爆機構)が設けられている。
【0004】
下記特許文献1においては、弁体を備えた封口体による安全弁と、薄肉部を備えた電池ケースによる安全弁とを備えた密閉型二次電池が記載されている。ここでは、薄肉部の破断圧力を、弁体の破断圧力よりも大きくしているため、ガスの発生速度が遅い場合には、弁体の破断のみでガスを容易に排気することができ、電池の温度上昇を抑制することができる。一方、急激なガス発生が生じた場合には、電池ケースの薄肉部が破断することにより、ガスを速やかに排気することができ、電池ケースの破裂を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−333548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
密閉型二次電池の高エネルギー密度化に伴い、電池に異常が発生した場合の電池内での温度及び圧力は、より急激に上昇する可能性が高まっている。そのため、従来の安全弁では十分に排気が行なえず、封口体が飛散したり電池ケースの筒状部等に亀裂が生じたりするおそれがある。特に、複数個の密閉型二次電池を含む組電池においては、電池ケースの筒状部に亀裂が生じ、意図しない部分から高温のガスが排出され、隣接する密閉型二次電池の異常を引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とするものであり、高エネルギー密度の密閉型二次電池であっても、電池ケースに亀裂が生じることが抑制された密閉型二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の密閉型二次電池は、開口部を有する有底筒状の電池ケースと、前記電池ケースの開口部を封止する封口体と、正極板及び負極板がセパレータを介して巻回された巻回型電極群とを備え、前記電池ケースの底部には、環状の薄肉部が形成され、前記電池ケースの底部の面積に対する前記環状の薄肉部により囲まれた領域の面積の割合が10%以上であり、体積エネルギー密度が500Wh/L以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、500Wh/L以上の高エネルギー密度の密閉型二次電池であっても、電池に異常が生じ電池内の圧力が急激に上昇した場合であっても、電池ケースに亀裂が生じることを抑制できる。本発明において、電池ケースの底部の面積に対する環状の薄肉部により囲まれた領域の面積の割合を20%以上とすることがより好ましい。
【0010】
本発明における環状の薄肉部は、平面視で真円状、楕円状等の円状であってもよく、また多角形状、あるいはトラック形状であってもよい。本発明では、特に円状の薄肉部とすることが好ましく、真円状の薄肉部とすることが更に好ましい。
【0011】
本発明では、前記環状の薄肉部により囲まれた領域の電池内面側には、前記正極板又は前記負極板に電気的に接続されたリードが接続されており、前記リードの融点は1000℃以上であることが好ましい。この構成によると、電池内圧が上昇し電池ケースの底部に設けた環状の薄肉部が破断した場合であっても、リードが環状の薄肉部で囲まれた領域に接続されているとともに、高温のガスによりリードが溶融することがないため、環状の薄肉部により囲まれた部分が電池外部に激しく飛散することを防止できる。融点が1000℃以上のリードとしては、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金を含むものとすることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記正極板には正極活物質が含有され、前記正極活物質は一般式Li
xNi
yM
1−yO
2(0.95≦x≦1.15、0.6≦y≦1、MはCo、Mn、Cr、Fe、W、Mg、Zr、TiおよびAlの少なくとも1種類)で表されるリチウムニッケル複合酸化物であることが好ましい。
【0013】
正極活物質として前記リチウムニッケル複合酸化物を用いると、コバルト酸リチウムを用いた場合に比べて、高エネルギー密度の電池が得られる。しかしながら、正極活物質として前記リチウムニッケル複合酸化物を用いると、電池異常時の電池内部でのガス発生量が多くなり、電池内圧がより急激に上昇し易くなるため、封口体の飛散や電池ケースの亀裂等の問題が生じ易くなる。したがって、正極活物質として前記リチウムニッケル複合酸化物を用いた場合には、本発明が特に効果的である。
【0014】
本発明において、前記薄肉部は、前記電池ケースの底部の電池外面側にノッチを設けることにより形成されていることが好ましい。また、前記ノッチの断面形状は略V字状であることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記封口体は開口部を有するフィルタを含み、前記フィルタの開口部の面積は30mm
2以上であることが好ましい。ここで、フィルタの開口部の面積は、フィルタの平面視における開口部の面積とする。また、フィルタが複数の開口部を有する場合は、全ての開口部の合計の面積が、30mm
2以上であることが好ましい。このような構成によると、封口体側からも電池内部で発生したガスを電池外部に排出し易くなるため好ましい。
【0016】
本発明では、前記電池ケースが鉄製であり、前記電池ケースの筒状部の厚みは0.1mm〜0.4mmであることが好ましい。このような構成によると、電池ケースの筒状部において亀裂が生じることをより効果的に防止できる。なお、鉄製の電池ケースの表面にはニッケル層が形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記電池ケースの底部の電池外面側において薄肉部により囲まれる領域にワイヤーが接続されていることが好ましい。
【0018】
密閉型二次電池を複数個含む組電池において、各密閉型二次電池同士を電気的に接続する等のために、各密閉型二次電池の電池ケースには導電部材が接続される。電池ケースに板状の導電部材が接続される構成では、本発明の効果は得られるものの、電池内圧の上昇に伴う環状の薄肉部の破断が阻害される可能性がある。これに対し、前記電池ケースの底部において環状の薄肉部により囲まれた領域の電池外面側に導電部材としてワイヤーが接続されている構成では、環状の薄肉部の破断が阻害され難い。また、環状の薄肉部により囲まれた部分が電池外部に激しく飛散することも防止できる。本発明の密閉型二次電池を複数個用いて構成される組電池においては、各電池を保持する保持体としては、密閉型二次電池の筒状部(側面部)を覆う形状のものを用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の実施例における密閉型二次電池の斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例における密閉型二次電池の断面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例における密閉型二次電池の電池外面側の底面図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例における密閉型二次電池の電池内面側の底面図である。
【
図5】
図5は本発明の比較例における密閉型二次電池の電池外面側の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を実施例、比較例及び図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための密閉型二次電池としてリチウムイオン二次電池を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものでなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0021】
まず、
図2を用い実施例の密閉型二次電池について説明する。
図2に示すように、正極板1及び負極板2がセパレータ3を介して捲回された電極群4が、非水電解液(不図示)とともに、有底円筒形の電池ケース15に収納されている。電極群4の上下には、それぞれリング状の絶縁板7、絶縁板8が配置され、正極板1は、正極リード5を介してフィルタ12に接合され、負極板2は、負極リード6を介して負極端子を兼ねる電池ケース15の底部に接合されている。フィルタ12には開口部12aが設けられている。ここで、フィルタ12を上方から見た状態での開口部12aの面積は30mm
2とすることが好ましい。
【0022】
フィルタ12は、インナーキャップ11に接続され、インナーキャップ11の突起部は、金属製の弁体10に接合されている。さらに、弁体10は、正極端子を兼ねる封口板9に接続されている。封口板9、弁体10、インナーキャップ11、及びフィルタ12が封口体20を形成し、ガスケット13を介して、電池ケース15の開口部を封口している。但し、本発明において封口体20は、封口板9、弁体10、インナーキャップ11、及びフィルタ12の全てを含む必要はなく、電池ケース15の開口部を封止することができればよい。
【0023】
弁体10およびインナーキャップ11には、電池内の圧力が所定値に達したときに破断する薄肉部10a、薄肉部11aがそれぞれ形成されている。封口板9には、電池内に発生したガスを、破断した弁体10、インナーキャップ11を介して電池外に排気する排気孔9aが形成されている。この弁体10、インナーキャップ11、排気孔9aとで、安全弁が構成されている。なお、本発明において、封口体に安全弁を設ける必要はないが、封口体にも安全弁を設けることが好ましい。封口体に安全弁を設ける場合、弁体10のみに薄肉部を設け、インナーキャップ11に開口部を設けるようにしてもよい。あるいはインナーキャップを省略し、フィルタ12を弁体10に直接接続することも可能である。また、フィルタ12及びインナーキャップ11を省略し、弁体10に直接正極リード5を接続することも可能である。
【0024】
また、
図3に示すように、電池ケース15の底部には、電池内の圧力が所定値に達したときに破断する円状の薄肉部15aが形成されている。この電池ケース15の底部に形成された円状の薄肉部15aで安全弁が構成されている。
【0025】
封口体にも安全弁を設ける場合、電池ケース15の底部に形成された薄肉部15aの破断圧力は、弁体10に形成された薄肉部10aの破断圧力よりも大きくなるように形成することが好ましい。すなわち、電池ケースの底部に設ける安全弁の作動圧は、封口体に設ける安全弁の作動圧よりも高く設定することが好ましい。
【0026】
次に、密閉型二次電池の作製方法を説明する。
【0027】
<正極板の作製>
正極活物質としてのLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2と、導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを96:1.6:2.4(質量比)で混合し、この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに分散してペーストとした。このペーストを、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥して、アルミニウム箔上に活物質層が形成された乾燥極板を作製した。乾燥極板をローラープレス機で厚みが163μmになるように圧縮した後、一部に活物質層が形成されていない正極芯体露出部が残るように裁断して幅58mm、長さ660mmの正極板1を作製した。その後、正極板1の芯体露出部にアルミニウム製の正極リード5を超音波溶接により接続した。
【0028】
<負極板の作製>
負極活物質としての黒鉛と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴムと、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースとを98.4:0.6:1(質量比)で混合し、この混合物を水に分散してペーストとした。このペーストを厚さ10μmの銅箔からなる負極芯体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥して、銅箔上に活物質層が形成された乾燥極板を作製した。乾燥極板をローラープレス機で厚みが164μmになるように圧縮した後、一部に活物質層が形成されていない負極芯体露出部が残るように裁断して幅59mm、長さ730mmの負極板2を作製した。その後、負極板2の芯体露出部にニッケル製の負極リード6を超音波溶接により接続した。
【0029】
<電極群の作製>
電極群4は、上記正極板1と負極板2とポリエチレン製微多孔質セパレータ3(厚み20μm)とを、正極板1と負極板2がセパレータ3により絶縁されるように、巻回して作製した。
【0030】
<電解質の作製>
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを体積比で20:20:60(25℃、1気圧)の割合で混合した非水溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1mol/Lとなるように溶解した。
【0031】
<電池ケースの作製>
鉄製の基材の表面にニッケルメッキを施した板材を絞り加工し、有底円筒状の電池ケース15を作製した。ここで、電池ケース15の筒状部の板厚は0.25mm、電池ケース15の底部の板厚は0.3mmとした。また、電池ケース15の底部は直径18mmとし、
図3に示すように電池ケース15の底部には直径D=9mmの円状の薄肉部15aを設けた。薄肉部の板厚は0.25mmとした。ここで、電池ケース15の底部(電池外面側)の面積に対する環状の薄肉部15aにより囲まれた領域の面積の割合は25%である。
【0032】
<電池の組み立て>
電極群4と電池ケース15の底部の間にポリプロピレン製の円板状の絶縁板8が位置するようにして、電極群4を電池ケース15に挿入した。そして、負極リード6を電池ケース15の底部に抵抗溶接により接続した。これにより溶接部6aが形成された。このとき、
図3に示すように、負極リード6の先端部が、薄肉部15aにより囲まれた領域内に収まるように配置した。負極リード6の先端は薄肉部15aに干渉しない長さ、幅に設定されているため、安全弁の作動を阻害し難くなっている。また、ガスの排出も円滑となる。次に、電極群4の上部にポリプロピレン製の円板状の絶縁板7を配置した。そして、電池ケース15の筒状部における絶縁板7よりも開口側の部分に、断面がU字形の幅1.0mm、深さ1.5mmの溝部15bを円周方向に加工成形した。これにより、電池ケース15の筒状部の内面側に、全周にわたって内側に突出する突出部が形成される。その後、非水電解液を電池ケース15内に注入した。そして、正極リード5を、封口体20を構成するフィルタ12とレーザ溶接により接続し、正極リード5を折りたたんだ状態として、封口体20を電池ケース15の筒状部の内面側に形成された突出部上に配置し、電池ケース15の開口部近傍の筒状部をカシメることにより、実施例1の密閉型二次電池を作製した。この密閉型二次電池は、直径18mm、高さ65mmの円筒形である。この密閉型二次電池の体積は0.0165Lであった。また、この密閉型二次電池の電池容量は3200mAhであり、エネルギー容量は11.5Whであった。体積エネルギー密度は697Wh/Lであった。
【0033】
なお、電池容量は次の方法で求めた。密閉型二次電池を1.0Aの電流で4.2Vまで充電し、その後4.2Vの定電圧で4時間充電した。続いて0.6Aの定電流で2.5Vまで放電した。このときの放電容量を、電池容量とした。
【0034】
[比較例1]
電池ケースとして、電池ケースの底部に直径5mmの円状の薄肉部を形成したものを用いた以外は、実施例と同様の方法で比較例1の密閉型二次電池を作製した。ここで、電池ケースの底部の面積に対する環状の薄肉部により囲まれた領域の面積の割合は8%である。
【0035】
[比較例2]
電池ケースとして、
図5に示すように電池ケース25の底部に直径9mmのC字状の薄肉部25aを形成したものを用いた以外は、実施例と同様の方法で比較例2の密閉型二次電池を作製した。
【0036】
<加熱試験>
実施例1、比較例1および比較例2の密閉型二次電池をそれぞれ10個ずつ作製し、以下のような条件で加熱試験を行った。まず、25℃の環境下で1500mAの電流で電池電圧が4.2Vとなるまで充電した。充電後の密閉型二次電池を200℃に設定したホットプレートの上に電池ケースの筒状部がホットプレートと接するように配置し、200℃で加熱した。そして、封口体の飛散、電池ケースの亀裂の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0038】
電池ケースの底部に直径9mmの円状の薄肉部を設けた実施例1では、電池ケースの底部の薄肉部が開口し電池内部のガスが円滑に排出されたため、封口体の飛散はなく、また電池ケースに亀裂は生じなかった。電池ケースの底部に直径5mmの円状の薄肉部を設けた比較例1、および電池ケースの底部に直径9mmのC字状の薄肉部を設けた比較例2では、封口体の飛散はなかったものの、電池ケースに亀裂が生じた。電池ケースの亀裂発生率は、比較例1で80%、比較例2で30%であった。比較例1及び比較例2の密閉型二次電池では、電池内部で発生したガスが電池外部にスムーズに排出できないため、電池ケースの筒状部に亀裂が生じたと考えられる。本発明の密閉型二次電池では、電池ケースの底部に設けた薄肉部の形状、及び電池ケースの底部の面積に対する薄肉部により囲まれた領域の面積の割合を規定することで、電池ケースの筒状部に亀裂が生じることを防ぎ、より安全性に優れた密閉型二次電池とすることができる。
【0039】
上記実施例では密閉型二次電池として非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池について説明したが、非水電解質二次電池以外のアルカリ蓄電池のような密閉型二次電池でも同様の効果が得られる。但し、非水電解質二次電池の場合、本発明は特に効果的である。また、上記実施例では、電池ケースの底部に設ける薄肉部の形状を円状としたが、多角形状等としてもよい。また、電池ケースの電池内面側に凹部を設けるようにしてもよい。
【0040】
本発明において、正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物、オリビン構造を有するリチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物や、これらの化合物に含まれる遷移金属元素の一部を他の金属元素(Zr、Mg、Ti、Al、W 等)に置換した化合物が好ましい。また、オリビン構造を有するリチウム遷移金属リン酸化合物としては、リン酸鉄リチウムが好ましい。これらを単独で用いることができ、又は複数種混合して用いることもできる。
【0041】
本発明において、負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出できるものを用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、などの炭素材料や、酸化錫、酸化珪素等の金属酸化物、珪素、シリサイドなどの珪素含有化合物などを用いることができる。
【0042】
本発明において、セパレータとしては、ポリオレフィン系材料を用いることが好ましく、ポリオレフィン系材料と耐熱性材料を組み合わせて用いることがより好ましい。ポリオレフィン系材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の多孔膜が挙げられる。これらは、単独で使用でき、二種以上を組み合わせて使用することもできる。耐熱性材料としては、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱性樹脂からなる多孔膜、または、耐熱性樹脂と無機フィラーの混合体を用いることができる。
【0043】
本発明において、非水電解質の非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート
、ジノルマルブチルカーボネート等の鎖状炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネート等のカルボン酸エステル類、等を一種又は複数種混合して用いることが好ましい。
【0044】
本発明において、非水電解質の電解質塩としては、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
2CF
3SO
2)
2等を一種又は複数種混合して用いることが好ましい。また、電解質塩の濃度は、0.5〜2.0M(モル/リットル)とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 正極板
2 負極板
3 セパレータ
4 電極群
5 正極リード
6 負極リード
7、8 絶縁板
9 封口板
9a 排気孔
10 弁体
10a 薄肉部
11 インナーキャップ
11a 薄肉部
12 フィルタ
12a 開口部
13 ガスケット
15 電池ケース
15a 薄肉部
15b 溝部
20 封口体