(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5737487
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法及び該方法に用いる極板クリーニング装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/20 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
H01M4/20 Q
H01M4/20 Z
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-502005(P2015-502005)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2014073801
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-189125(P2013-189125)
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001203
【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】伊東 良晃
(72)【発明者】
【氏名】野村 昭文
(72)【発明者】
【氏名】福原 啓介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 久喜
(72)【発明者】
【氏名】佐野 伸一
【審査官】
竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−213898(JP,A)
【文献】
特開2000−223115(JP,A)
【文献】
特開平6−283160(JP,A)
【文献】
特開2004−195399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛又は鉛合金製の格子基板にペースト状の活物質を充填した後、前記活物質を充填した前記格子基板をプレスして充填極板を製造する工程と、前記充填極板を初期乾燥する初期乾燥工程と、初期乾燥した前記充填極板の表面から余分な活物質を除くクリーニング工程と、前記クリーニング工程を経た前記充填極板を熟成・乾燥する熟成乾燥工程とを経て鉛蓄電池用のペースト式極板を製造する鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法において、
前記クリーニング工程では、
仮想中心線の周りを螺旋状に流れる螺旋状の空気流を発生する螺旋状空気流発生装置を用意し、
前記仮想中心線が前記充填極板の極板面に沿って延びるようにして、前記充填極板の前記極板面に前記螺旋状の空気流を吹き付けることを特徴とする鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項2】
前記螺旋状空気流発生装置は、1以上のエアーノズルを備え、
前記1以上のエアーノズルは前記仮想中心線が前記充填極板の前記極板面に沿って延びるように配置されている請求項1に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項3】
前記螺旋状空気流発生装置は、複数のエアーノズルを備え、
1以上の前記エアーノズルは前記仮想中心線が前記充填極板の前記極板面に沿って延びるように配置され、
残りの1以上の前記エアーノズルは前記仮想中心線が前記充填極板の前記極板面との間の角度が5度以上30度以下の傾斜角度になるように配置されている請求項1に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項4】
前記螺旋状空気流発生装置は、複数のエアーノズルからなる2つのエアーノズル群を備えており、
前記複数のエアーノズルは、前記極板面と直交し且つ前記仮想中心線が延びる方向と交差する方向に所定の間隔を開けて配置され、
前記2つのエアーノズル群は、前記2つのエアーノズル群の間に1枚の前記充填極板が位置するように所定の間隔をあけて配置されている請求項1に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項5】
複数枚の前記充填極板を前記極板面が上下方向に延びる姿勢で且つ隣り合う二枚の充填極板の間に間隔を開けて保持する極板保持装置を用意し、
前記螺旋状空気流発生装置と前記極板保持装置とは、複数枚の充填極板と前記螺旋状の空気流との間に、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向に前記相対的な動きを生じさせながら前記間隔内に前記螺旋状の空気流を流入させて前記充填極板の前記極板面に吹き付ける請求項1,2,3または4に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項6】
前記螺旋状空気流発生装置と前記極板保持装置とは、前記複数枚の充填極板と前記螺旋状の空気流との間に、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に相対的な動きを生じさせながら前記間隔内に前記螺旋状の空気流を流入させて前記充填極板の前記極板面に吹き付ける請求項5に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項7】
前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向の前記相対的な動きが、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向における往復運動である請求項6に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項8】
前記複数枚の充填極板と前記螺旋状の空気流との間に生じさせる前記複数枚の充填極板が並ぶ方向への前記相対的な動きの速度は、前記往復運動の速度よりも遅い請求項7に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項9】
前記往復運動の1往復運動の距離は、前記極板保持装置に保持された状態で上方向に位置する前記充填極板の枠骨の一辺の長さの2倍以上の距離である請求項7に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項10】
前記極板保持装置は、前記複数枚の活物質充電極板を前記複数枚の充填極板が並ぶ方向の一方の方向に搬送することにより、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向に前記相対的な動きを生じさせるように構成されている請求項5に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項11】
前記充填極板に設けられた一対の耳部が前記極板保持装置に懸架され、前記充填極板が垂下した状態で搬送される請求項9に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項12】
前記螺旋状空気流発生装置は、1以上のエアーノズルからなる2以上のエアーノズル群を備えており、
前記2以上のエアーノズル群が、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に所定の間隔を開けて配置されており、
前記所定の間隔は、隣り合う二枚の前記充填極板間の間隔に実質的に等しく、
前記螺旋状空気流発生装置は、前記2以上のエアーノズル群を前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に往復動作させる請求項10または11に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項13】
隣り合う2つの前記エアーノズル群の前記往復運動は、運動方向が逆になっている請求項12に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項14】
前記螺旋状空気流発生装置の前記エアーノズルから、短い間隔で噴射されるパルスエアーを吹き出す請求項2,3,4,12または13に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項15】
前記充填極板の枠骨の厚み方向の一対の端面に付着した前記活物質を、前記一対の端面にブラシをかけて取り除くことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法。
【請求項16】
鉛又は鉛合金製の格子基板にペースト状の活物質を充填した後、前記活物質を充填した前記格子基板をプレスして充填極板を製造する工程と、前記充填極板を初期乾燥する初期乾燥工程と、初期乾燥した前記充填極板の表面から余分な活物質を除くクリーニング工程と、前記クリーニング工程を経た前記充填極板を熟成・乾燥する熟成乾燥工程とを経て鉛蓄電池用のペースト式極板を製造する鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法において用いられる極板クリーニング装置であって、
仮想中心線の周りを螺旋状に流れる螺旋状の空気流を発生する螺旋状空気流発生装置と、
複数枚の前記充填極板を前記極板面が上下方向に延びる姿勢で且つ隣り合う二枚の充填極板の間に間隔を開けて保持する極板保持装置とを備え、
前記螺旋状空気流発生装置は、前記仮想中心線が前記充填極板の極板面に沿って延びるようにして、前記充填極板の前記極板面に前記螺旋状の空気流を吹き付けるように配置され、
前記螺旋状空気流発生装置と前記極板保持装置とは、前記複数枚の充填極板と前記螺旋状の空気流との間に、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向に相対的な動きを生じさせながら前記間隔内に前記螺旋状の空気流を流入させて前記充填極板の前記極板面に吹き付けるように構成されていることを特徴とする極板クリーニング装置。
【請求項17】
螺旋状空気流発生装置は、1以上のエアーノズルを備え、
前記1以上のエアーノズルは前記仮想中心線が前記充填極板の前記極板面に沿って延びるように配置されている請求項16に記載の極板クリーニング装置。
【請求項18】
前記螺旋状空気流発生装置は、複数のエアーノズルを備え、
1以上の前記エアーノズルは前記仮想中心線が前記充填極板の前記極板面に沿って延びるように配置され、
残りの1以上の前記エアーノズルは前記仮想中心線が前記充填極板の前記極板面との間の角度が5度以上30度以下の傾斜角度になるように配置されている請求項16に記載の極板クリーニング装置。
【請求項19】
螺旋状空気流発生装置は、複数のエアーノズルからなる2つのエアーノズル群を備えており、
前記2つのエアーノズル群は、前記2つのエアーノズル群の間に1枚の前記充填極板が位置するように所定の間隔をあけて配置されている請求項16に記載の極板クリーニング装置。
【請求項20】
前記螺旋状空気流発生装置と前記極板保持装置とは、前記複数枚の充填極板と前記螺旋状の空気流との間に、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向に前記相対的な動きを生じさせながら前記間隔内に前記螺旋状の空気流を流入させて前記充填極板を乾燥させる請求項16,17,18または19に記載の極板クリーニング装置。
【請求項21】
前記螺旋状空気流発生装置と前記極板保持装置とは、前記複数枚の充填極板と前記螺旋状の空気流との間に、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に前記相対的な動きを生じさせながら前記間隔内に前記螺旋状の空気流を流入させて前記充填極板の前記極板面に吹き付けるように構成されている請求項16に記載の極板クリーニング装置。
【請求項22】
前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向の前記相対的な動きが、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向における往復運動である請求項21に記載の極板クリーニング装置。
【請求項23】
前記極板保持装置は、前記複数枚の活物質充電極板を前記複数枚の充填極板が並ぶ方向の一方の方向に搬送することにより、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向に前記相対的な動きを生じさせるように構成されている請求項16に記載の極板クリーニング装置。
【請求項24】
前記螺旋状空気流発生装置は、1以上のエアーノズルからなる2以上のエアーノズル群を備えており、
前記2以上のエアーノズル群が、前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に所定の間隔を開けて配置されており、
前記所定の間隔は、隣り合う二枚の前記充填極板間の間隔に実質的に等しく、
前記螺旋状空気流発生装置は、前記2以上のエアーノズル群を前記複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に往復動作させる請求項23に記載の極板クリーニング装置。
【請求項25】
隣り合う2つの前記エアーノズル群の前記往復運動は、運動方向が逆になっている請求項24に記載の極板クリーニング装置。
【請求項26】
前記螺旋状空気流発生装置の前記エアーノズルから、短い間隔で噴射されるパルスエアーを吹き出す請求項24または25に記載の極板クリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法及び該方法に用いる極板クリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト式極板は、鉛又は鉛合金を原材料とする格子基板に、ペースト状の活物質を充填・プレスし、初期乾燥後、熟成・乾燥工程を経て作製される。格子基板は、ペースト状の活物質を保持させるため、枠骨の内側に縦骨と横骨を格子状に配したものを使用することが多い。具体的には
図1に示すように、格子基板1は外周を形成する枠骨2の内側に、格子状に縦骨3及び横骨4を配置し、枠骨2の長い方向又は短い方向の両外側へ突出した2つの耳部5を設けて形成される。2つの耳部5のうち、
図1において下側の耳部は、搬送の便利のために設けられているものであり、最終的に切断される。この格子基板にペースト状活物質を充填・プレスして保持させ、初期乾燥した後、熟成・乾燥の工程を経て極板を作製する。そして、極板の下方となる側の耳部が除去された正極板と負極板を、セパレータを介して交互に重ねて積層し、同じ極性の極板の耳部同士を溶接して電気的に接続し極板群を形成して鉛蓄電池を作製する。
【0003】
格子基板にペースト状活物質を充填・プレスする方法は、例えば、次のとおりである。先ず、格子基板をベルトコンベアに平置きして順次搬送し、ペースト状活物質を収容したホッパを備えた充填機の下方を通過する格子基板にペースト状活物質を充填して充填極板とする。その後、成形ローラ装置に通して圧力を掛け、充填側の面と反対側の面とからプレスして、充填極板の厚さのばらつきを抑える。ここで、ペースト状活物質は粘度が高く、格子基板に活物質を充填するときに、充填機に余分な活物質が粘りつくことがあり、この余分な活物質が充填極板の充填側の面に垂れ落ちて、そのまま成形ローラ装置を通過すると、余分な活物質が成形ローラに一旦付着して、再び充填極板面に転着することがある。また、充填極板が成形ローラ装置を通過してプレスされるときに、活物質の一部が剥がれて成形ローラに一旦付着し、充填極板面に再び転着することもある。このようにして、余分な活物質が付着したまま、熟成・乾燥された極板が作製される恐れがある。
【0004】
極板に付着した余分な活物質は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層するときに、セパレータを突き破って短絡の原因となることがある。また、極板群の群加圧力が、活物質が余分に付着している箇所に集中してセパレータが圧縮され、正負極板間の距離が短くなることにより、電槽化成時及び鉛蓄電池が放電状態のときに浸透短絡が発生し易くなる。
【0005】
充填極板に付着した余分な活物質を取り除くために、特許文献1にはペースト状活物質を充填した充填極板を初期乾燥した後、充填極板端面の余分な活物質を、ブラシをかけて取り除く方法が開示されている。また、特許文献2には、セパレータと極板間に強度の高い有機不織布を挟んで、セパレータの損傷を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−276812号公報
【特許文献2】特開2011−70904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようにブラシをかけて余分な活物質を取り除く方法は、充填極板に保持された活物質を傷つけたり、必要な活物質まで脱落させる恐れがある。
【0008】
また、特許文献2のような強度の高い有機不織布を極板間に挟む技術は、有機不織布の密度が高いので電解液の保持量が少なくなり、放電時の電池容量が低下する問題がある。
【0009】
本発明の目的は、充填極板に保持された必要な活物質を傷つけることなく、極板面に付着した余分な活物質を取り除いて、正・負極板の短絡を防止することができる極板の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、本発明の方法を実施するのに適した極板クリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、鉛又は鉛合金製の格子基板にペースト状の活物質を充填した後、活物質を充填した格子基板をプレスして充填極板を製造する工程と、充填極板を初期乾燥する初期乾燥工程と、初期乾燥した前記充填極板の表面から余分な活物質を除くクリーニング工程と、前記クリーニング工程を経た初期乾燥した充填極板を熟成・乾燥する熟成乾燥工程とを経て鉛蓄電池用のペースト式極板を製造する鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法を改良の対象とする。
【0012】
本発明の方法では、クリーニング工程において、仮想中心線の周りを螺旋状に流れる螺旋状の空気流を発生する螺旋状空気流発生装置を用意し、仮想中心線が充填極板の極板面に沿って延びるようにして、充填極板の極板面に螺旋状の空気流を吹き付ける。螺旋状の空気流は、空気流の吐出方向に対して直交する方向にも空気圧が得られるので、吐出方向の空気圧と合わさって、直進する空気流に比べ、空気流が吹き付けられた対象物に大きな衝撃力を与えることができる。発明者の実験によると、このような螺旋状の空気流を用いると、極板面に集中的に空気流が当たり、しかも極板面に沿う集中的な空気流の移動によって、極板面から余分な付着活物質を剥ぎ取ることができることが確認されている。本願明細書において、「仮想中心線が充填極板の極板面に沿って延びる」とは、仮想中心線が極板面と平行になる場合だけでなく、仮想中心線と極板面との間に多少の傾斜角度を持つ場合も含まれる。なおこの傾斜角度は、5度より小さい場合が好ましい。本発明の方法によれば、充填極板の極板面に付着した余分な活物質を、充填極板に保持された必要な活物質を傷つけることなく取り除くことができ、しかも、余分な付着活物質に起因する正・負極間の短絡を防止することができる。また生産効率を低下させることがない。
【0013】
螺旋状空気流発生装置が、1以上のエアーノズルを備えている場合には、1以上のエアーノズルは仮想中心線が充填極板の極板面に沿って延びるように配置されるのが好ましい。螺旋状空気流発生装置が、1本のエアーノズルを備える場合には、1本のエアーノズルと充填極板との間に相対的な動きを生じさせることにより、極板面全体に螺旋状の空気流を当てるようにすればよい。螺旋状空気流発生装置が、複数のエアーノズルを備えている場合には、極板面全体に螺旋状の空気流を当てることができるように、間隔をあけて複数のエアーノズルを配置すればよい。
【0014】
螺旋状空気流発生装置が、複数のエアーノズルを備えている場合において、1以上のエアーノズルは仮想中心線が充填極板の極板面に沿って延びるように配置し、残りの1以上のエアーノズルは仮想中心線が充填極板の極板面との間の角度が5度以上30度以下の傾斜角度になるように配置することができる。このようにすると1以上のエアーノズルから出ら螺旋状の空気流が極板面と接触する状況と、残りの1以上のエアーノズルから出た螺旋状の空気流と極板面とが接触する状況とが異なるため、充填極板の極板面に付着した余分な活物質を、より確実に取り除くことができる。
【0015】
螺旋状空気流発生装置が、複数のエアーノズルからなる2つのエアーノズル群を備えている場合には、次のように2つのエアーノズル群を構成するのが好ましい。そして2つのエアーノズル群は、2つのエアーノズル群の間に1枚の充填極板が位置するように所定の間隔をあけて配置される。2つのエアーノズル群を、2つのエアーノズル群の間に1枚の充填極板が位置するように所定の間隔をあけて配置すると、1枚の充填極板の厚み方向に対向する両極板面から同時に余分な活物質を取り除くことができる。
【0016】
複数枚の充填極板を極板面が上下方向に延びる姿勢で且つ隣り合う二枚の充填極板の間に間隔を開けて保持する極板保持装置を用意してもよい。この場合、螺旋状空気流発生装置と極板保持装置とは、複数枚の充填極板と螺旋状の空気流との間に、複数枚の充填極板が並ぶ方向に相対的な動きを生じさせながら間隔内に螺旋状の空気流を流入させて充填極板の極板面に吹き付けるようにする。このようにすると、複数枚の充填極板の極板面から順次余分な活物質を取り除くことができる。
【0017】
また螺旋状空気流発生装置と極板保持装置とは、複数枚の充填極板と螺旋状の空気流との間に、複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に相対的な動きを生じさせながら間隔内に螺旋状の空気流を流入させて充填極板の極板面に吹き付けるようにしてもよい。このようにすると螺旋状空気流発生装置が備えるエアーノズルの数が少ない場合でも、極板面全体から余分な活物質を取り除くことができる。
【0018】
複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向の相対的な動きが、複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向における往復運動であるのが好ましい。往復運動を採用すると、繰り返し、螺旋状の空気流を極板面に当てることができるので、さらに確実に余分な活物質を取り除くことができる。
【0019】
複数枚の充填極板と螺旋状の空気流との間に生じさせる複数枚の充填極板が並ぶ方向への相対的な動きの速度は、往復運動の速度よりも遅いことが好ましい。このようにすると螺旋状の空気流を極板面に確実に当てることができる
なお往復運動の1往復運動の距離は、極板保持装置に保持された状態で上方向に位置する充填極板の枠骨の一辺の長さの2倍以上の距離であるのが好ましい。このようにすれば極板面全面に螺旋状の空気流を吹き付けることができるので、螺旋状の空気流が当たらない部分が残ることを確実に防止することができる。
【0020】
なお極板保持装置は、複数枚の活物質充電極板を複数枚の充填極板が並ぶ方向の一方の方向に搬送することにより、複数枚の充填極板が並ぶ方向に相対的な動きを生じさせるように構成することができる。このようにすると充填極板の極板保持装置への装着及び取り外しを自動化することができるので、初期乾燥後から熟成乾燥前までの製造ラインを自動化することが容易になる。
【0021】
充填極板に設けられた一対の耳部が極板保持装置に懸架され、充填極板が垂下した状態で搬送されるようにすると、充填極板の極板保持装置への装着が容易になる。
【0022】
螺旋状空気流発生装置は、1以上のエアーノズルからなる2以上のエアーノズル群を備えており、2以上のエアーノズル群が、複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に所定の間隔を開けて配置されていてもよい。この場合、所定の間隔は、隣り合う二枚の充填極板間の間隔に実質的に等しい。そして螺旋状空気流発生装置は、2以上のエアーノズル群を複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に往復動作させる。このようにすると、隣り合う二枚の充填極板を一組としたときに、二組以上の充填極板の極板面へ同時に螺旋状の空気流を吹付けることができる。
【0023】
また隣り合う2つのエアーノズル群の往復運動は、運動方向が逆になっているのが好ましい。このようにすると、充填極板の表面への余分な活物質の再付着を防止する。
【0024】
また螺旋状空気流発生装置のエアーノズルから、短い間隔で噴射されるパルスエアーを吹き出すようにすると、パルスエアーの衝撃力で、容易に極板面に付着した余分な付着活物質を取り除くことができる。
【0025】
充填極板の枠骨の厚み方向の一対の端面に付着した活物質を、一対の端面にブラシをかけて取り除くことが好ましい。充填極板の枠骨の厚み方向の一対の端面に付着した活物質は、ブラシをかけて確実に取り除くことが可能となり、短絡を防止する効果をよりいっそう高くすることができる。
【0026】
本発明の方法を実施するために用いる極板クリーニング装置は、仮想中心線の周りを螺旋状に流れる螺旋状の空気流を発生する螺旋状空気流発生装置と、複数枚の充填極板を極板面が上下方向に延びる姿勢で且つ隣り合う二枚の充填極板の間に間隔を開けて保持する極板保持装置とを備えている。螺旋状空気流発生装置は、仮想中心線が充填極板の極板面に沿って延びるようにして、充填極板の極板面に螺旋状の空気流を吹き付けるように配置される。そして螺旋状空気流発生装置と極板保持装置とは、複数枚の充填極板と螺旋状空気流との間に、複数枚の充填極板が並ぶ方向に相対的な動きを生じさせながら間隔内に螺旋状の空気流を流入させて充填極板の極板面に付着した余分な活物質を取り除くように構成されている。このクリーニング装置であれば、本発明の方法を、確実に実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明の一実施例である、エアーノズルの概略図である。
【
図3】(A)は本発明の第1の実施の形態における、充填極板、充填極板の運搬手段、エアーノズルの配置位置を示す概略図であり、(B)はエアーノズルから出る螺旋状の空気流と充填極板との関係を示している。
【
図4】エアーノズルと複数枚の充填極板との位置関係を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態における、複数個のエアーノズルがグリッパに配置された状態を示す概略図である。
【
図6】本発明の第3の実施の形態の概略構成を示す図である。
【
図7】(A)及び(B)は、第3の実施の形態におけるエアーノズルと複数枚の充填極板との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法及び該方法に用いる極板クリーニング装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
本実施の形態において、格子基板は、鉛又は鉛合金を鋳造又はエキスパンド加工することにより作製されたものを含む。鉛合金は、鉛を主原料にして、スズ、カルシウム、アンチモン等を添加したものである。
【0030】
本実施の形態で用いるペースト状正極活物質またはペースト状負極活物質(以下ペースト状活物質と言う)は、格子基板に充填されて保持される。このペースト状活物質は、特に限定されるものではない。例えば、一酸化鉛を主成分とした鉛粉、水、硫酸等(そのほか、正極、負極の必要特性に合わせ、カットファイバ、炭素粉末、リグニン、硫酸バリウム、鉛丹等の添加物を加えることができる)を混練して作製したペースト状正極活物質またはペースト状負極活物質を用いることができる。
【0031】
上述したペースト状活物質を収容したホッパを備えた充填機の下方を通過する
図1に示すような格子基板1に、ペースト状活物質を充填し、活物質が充填された格子基板を両面からプレスして充填極板を作製する。格子基板1へ充填するペースト状活物質の充填量は、電池の設計容量に基づいて算出され、格子基板1の枠骨2の内部の縦骨3及び横骨4がペースト状活物質により覆われるように充填するのが好ましく、枠骨2の厚み以上までペースト状活物質を充填するのがさらに好ましい。その後、充填したペースト状活物質が軟らかい間に、充填側の面と、その反対側の面から成形ローラでペースト状活物質に圧力を加えるプレス工程を行う。ここで、成形ローラは、一対のローラが回転して、搬送される充填極板を上下から挟んで圧力を加えるものであり、厚さがほぼ均一な活物質層を形成することができる。尚、成形ローラは複数組配置して充填極板をプレスすることにより、活物質層をさらに均一に充填することができる。
【0032】
その後、充填極板同士を重ねたときに互いの活物質が粘着しない程度に充填極板の初期乾燥を行う。但し、次工程の熟成乾燥工程で必要とされる活物質内の水分量の範囲を外れないように乾燥条件を設定する。初期乾燥方法は、熱風乾燥、赤外線乾燥等から選択することができる。
【0033】
上述した充填・プレス工程において、充填機及び成形ローラ等に付着した余分なペースト状活物質が、所定量のペースト状活物質が充填された充填極板の表面に、転着することがある。この余分に付着した活物質がセパレータを突き破って正負極板間の短絡や、正負極板間の距離が短くなって浸透短絡等の不具合が起こり易くなる。
【0034】
極板面に余分な活物質が付着したままにならないようにするために、初期乾燥後の充填極板の極板面に、螺旋状の空気流を吹き付けて活物質を除去する方法を用いると、ブラシをかけて極板面に対し直に力を加えて活物質を除去する方法と比較して、極板面に傷が入り難く、活物質の脱落も起こり難い。空気流を吹き付けるエアーノズルには種々あるが、空気流が直進するタイプのエアーノズルを用いると、目標位置に空気流を正確に吹き付けることが難しいので、余分な活物質を除去する効果が小さい。空気流が直進するタイプのエアーノズルを用いると、垂下した状態の充填極板の極板面に隈なく空気流を吹き付けることも困難である。本実施形態では、中心線の周りを螺旋状に流れる螺旋状の空気流を、仮想中心線が充填極板の極板面に沿って延びるようにして充填極板の極板面に吹き付けて、付着した余分な活物質を取り除いた。螺旋状の空気流は、例えば内壁に螺旋溝を刻んだ管状のエアーノズルに、螺旋溝に沿って圧縮空気を流して吐出する方法、中空の略円錐台形状をしたノズルガイドの小径側開口にエアーノズルを接続し、エアーノズルをノズルガイドの内壁面に沿って回転させて大径側開口から吐出する方法等がある。
【0035】
図2に本実施の形態で使用した螺旋状の空気流を吐出するエアーノズル部の概略図を示す。可撓性の材料からなるエアーノズル6をノズルガイド7の小径側開口に接続し、圧縮空気を吐出すると、エアーノズル6がノズルガイド7の内壁面に沿って自ら回転して螺旋状の空気流8が発生する。螺旋状の空気流8は直進する空気流に比べ、空気流が吹き付ける範囲を広範囲にすることができる。また、空気流の吐出方向に対して直交する方向にも空気圧が得られるので、吐出方向の空気圧と合わさって、直進する空気流に比べ、空気流が吹き付けられた対象物に大きな衝撃力を与えることができる。
【0036】
[第1の実施の形態]
図3(A)には、本発明の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法及び該方法に用いる極板クリーニング装置の第1の実施の形態の要部が概略的に示されており、
図3(B)にエアーノズル6と充填極板10との関係を示してある。
図3(A)に示すように、本実施の形態では、一対のベルトコンベア9,9に一対の耳部5,5が懸架され充填極板10が所定の間隔をあけて垂下した状態で運搬されている。なお図示していないが、ベルトコンベア9,9には、それぞれ一対の耳部5,5が嵌合される凹部を備えた複数の嵌合部がベルトの移動方向に所定の間隔を開けて配置されている。この嵌合部の存在により、充填極板10の位置決めが図られている。そして本実施の形態では、一対のベルトコンベア9,9によって、複数枚の充填極板10を極板面が上下方向に延びる姿勢で且つ隣り合う二枚の充填極板10,10の間に間隔を開けて保持する極板保持装置が構成されている。なお本実施の形態では、充填極板10は900g以上の重量を有しており、螺旋状の空気流8が吹き付けられても、大きく煽られることはない。
【0037】
簡略化して示す電動スライダ12は、フレーム13に固定されている。そして、電動スライダ12によって水平方向にスライドするグリッパ14にエアーノズル6が取り付けられている。グリッパ14は、電動スライダ12の図示しないリニアサーボモーターにより駆動されて、充填極板10の上方において、充填極板10の枠骨長さ方向に沿って往復動作する。グリッパ14に取り付けられたエアーノズル6は、仮想中心線Cが充填極板10の極板面に沿って延びるように配置される。本実施の形態では、
図3(B)及び
図4に示すように、2枚の充填極板10,10の間の間隙の上方位置において、仮想中心線Cが充填極板10の極板面と実質的に平行になるようにエアーノズル6が配置されている状態で、エアーノズル6から螺旋状の空気流8を吹き出しながら、エアーノズル6は、充填極板が並ぶ方向と直交する方向に往復スライド動作をする。その結果、螺旋状の空気流8が、2枚の充填極板10,10の間隙を通過して、2枚の充填極板10,10の対向する極板面に吹き付けることにより、極板面の余分な付着活物質11を取り除く。なおエアーノズル6から、短い間隔で噴射されるパルスエアーを吹き出すようにしてもよい。このようにすると、パルスエアーの衝撃力で、容易に極板面に付着した余分な付着活物質を取り除くことができる。なおパルスエアーを用いる場合には、特に、エアーノズル6の移動速度は出来るだけ高速にするのが好ましく、充填極板の移動速度はエアーノズル6の速度に対して、1/2以下の速度にするのが好ましい。
【0038】
ここで、一対のベルトコンベア9,9間の幅は、サイズの異なる充填極板が懸架され運搬できるように調整可能にしている。電動スライダ12の往復動作幅は図示しないコントローラーを調節して変化させることができる。この往復動作幅は、充填極板10の一対の耳部5,5の間に配置された枠骨2(
図1)の長さ以上の幅に調整すると、極板面全体に螺旋状の空気流を吹き付けることができて好ましい。本実施の形態では、ベルトコンベア9,9を一時停止して電動スライダ12を往復動作させている。しかしながら、複数枚の充填極板10を移送しながら、螺旋状の空気流8を充填極板10の間隙に通過させて極板面に吹き付けるようにしてもよい。ベルトコンベア9,9を一時停止しない場合には、連続製造ライン上で余分な付着活物質を取り除くことができ、生産効率を低下させることがなく好ましい。
【0039】
充填極板10の運搬手段としての機能を有する極板保持装置は、充填極板10の両耳部5,5間に位置する枠骨2の長さ方向が運搬方向(複数枚の充填極板が並ぶ方向)に対し相前後した状態に傾いて運搬されないように、一対のベルトコンベア9,9が同期して運搬動作を行い、図示しないコントローラーを用いて運搬速度を調節できるようにしている。
【0040】
本実施の形態において、エアーノズル6及び電動スライダ12は螺旋状の空気流を発生する螺旋状空気流発生装置の一部を構成している。
図3(A)及び(B)には、圧縮空発生装置等は、図示していない。圧縮空気は図示しないエアーコンプレッサーからエアーノズル6へ配管されて供給される。そして、供給空気圧は図示しないエアーレギュレータで調整することができる。本実施の形態のように、螺旋状空気流発生装置が、1本のエアーノズル6だけを備える場合には、1本のエアーノズルと充填極板10との間に相対的な動きを生じさせることにより、極板面全体に螺旋状の空気流を当てるようにすればよい。
図3では、充填極板10を運搬方向に所定の間隔をあけて垂下した状態にし、充填極板10の上方から螺旋状の空気流8を2枚の充填極板10の極板間隙に導入して極板面に螺旋状の空気流8を極板面に吹き付けている。しかし、充填極板のサイズによっては、
図3(A)に示す上下方向に延びる2本のフレーム13の一方のフレーム13に沿って電動スライダとエアーノズル6を配置して、充填極板10の側方から(横方向から)2枚の充填極板の極板間隙に螺旋状の空気流を導入して、極板面から余分な付着活物質を取り除くようにしてもよい。
【0041】
上記実施の形態では、極板保持装置に充填極板10を移動させる機能を持たせたが、極板保持装置に充填極板10を移動させる機能を持たせずに、螺旋状空気流発生装置側に、複数枚の充填極板10が並ぶ方向にエアーノズル6を移動させる機能を持たせて、複数枚の充填極板10と螺旋状の空気流8との間に、複数枚の充填極板10が並ぶ方向に相対的な動きを生じさせながら二枚の充填極板の間隔内に螺旋状の空気流を流入させて充填極板の極板面に吹き付けるようにしてもよい。
【0042】
上記実施の形態では、1つのエアーノズル6だけを用いたが、複数のエアーノズル6を充填極板10の一対の耳部5,5の間に配置された枠骨2(
図1)の長さ以上の長さ範囲にわたって、所定の間隔をあけて直線状に並べてもよい。このようにすると、極板保持装置に充填極板10を移動させる機能を持たせるだけで、充填極板10の極板面全体に螺旋状の空気流を吹き付けることができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
図5(A)乃至(C)には、本発明の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法及び該方法に用いる極板クリーニング装置の第2の実施の形態の要部が概略的に示されている。
【0044】
この実施の形態では、螺旋状空気流発生装置が、グリッパ14´に取付けられた4本のエアーノズル6A乃至6Dを備えている。グリッパ14´は、電動スライダ12が延びる方向と直交する方向(複数枚の充填極板10が並ぶ方向)に延びている。そしてグリッパ14´は、電動スライダ12によって2本のフレーム間を往復スライド動作する。
【0045】
2本のエアーノズル6A及び6Bによって第1のエアーノズル群が構成され、2本のエアーノズル6C及び6Dによって第2のエアーノズル群が構成されている。エアーノズル6A及び6Bからなる第1のエアーノズル群とエアーノズル6C及び6Dからなる第2のエアーノズル群とは、第1のエアーノズル群と第2のエアーノズル群の間に1枚の充填極板10が位置するように、所定の間隔をあけて配置される。このように第1のエアーノズル群と第2のエアーノズル群を配置すると、1枚の充填極板10の厚み方向に対向する両極板面から同時に余分な活物質を取り除くことができる。そしてエアーノズル6A及び6Cは、仮想中心線が充填極板10の極板面に沿って延びるように配置され、エアーノズル6B及び6Dは仮想中心線が充填極板10の極板面との間の角度が5度以上30度以下の傾斜角度になるように(言い換えると傾斜させたエアーノズル6B及び6D)のノズルガイドの軸線とフレーム13(垂直方向)とがなす傾斜角度が、5〜30度の範囲になるように)、グリッパ14´に保持されている。このようにすると充填極板10の極板面には、充填極板10の垂下方向に長径を有する略楕円形の範囲に、螺旋状の空気流を吹き付けることができる。そうすることで、エアーノズル6を充填極板の垂下方向に上下させずに、枠骨の長さ方向に沿って移動させるだけで、充填極板の極板面全体に螺旋状の空気流を吹き付けることが可能になる。またエアーノズル6A及び6Cから出ら螺旋状の空気流が極板面と接触する状況と、エアーノズル6B及び6Dから出た螺旋状の空気流と極板面とが接触する状況とが異なるため、充填極板10の極板面に付着した余分な活物質を、より確実に取り除くことができる。またこの場合、上述した傾斜角度は、充填極板10の垂下方向の長さによって調整することが好ましい。また、エアーノズル6と充填極板10との距離は、エアーノズル6を取付け位置可変の金具を用いてグリッパ14´に固定することにより調整できるようにしている。
【0046】
上記実施の形態では、極板保持装置に充填極板10を移動させる機能を持たせたが、極板保持装置に充填極板10を移動させる機能を持たせずに、螺旋状空気流発生装置側に、複数枚の充填極板10が並ぶ方向にエアーノズル6A乃至6Dを移動させる機能を持たせて、複数枚の充填極板10と螺旋状の空気流8との間に、複数枚の充填極板10が並ぶ方向に相対的な動きを生じさせながら二枚の充填極板の間隔内に螺旋状の空気流を流入させて充填極板の極板面に吹き付けるようにしてもよい。
【0047】
また上記実施の形態では、第1及び第2のエアーノズル群だけを用いたが、第1及び第2のエアーノズル群と同様にエアーノズル群を充填極板10の一対の耳部5,5の間に配置された枠骨2(
図1)の長さ以上の長さ範囲にわたって、所定の間隔をあけて並べてもよい。このようにすると、極板保持装置に充填極板10を移動させる機能を持たせるだけで、充填極板10の極板面全体に螺旋状の空気流を吹き付けることができる
また本実施の形態でも、エアーノズル6A乃至6Dから、短い間隔で噴射されるパルスエアーを吹き出すようにしてもよい。
【0048】
[第3の実施の形態]
図6には、本発明の鉛蓄電池用のペースト式極板の製造方法及び該方法に用いる極板クリーニング装置の第3の実施の形態の要部が概略的に示されている。本実施の形態では、螺旋状空気流発生装置が、1以上のエアーノズル(
図6では1つ)からなる複数(
図6では3つ)のエアーノズル群を備えている。具体的には、一対のフレーム13A,13Aに支持された電動スライダ12Aには、図示しないグリッパを介してエアーノズル61が実装されており、一対のフレーム13B,13Bに支持された電動スライダ12Bには、図示しないグリッパを介してエアーノズル62が実装されており、一対のフレーム13C,13Cに支持された電動スライダ12Cには、図示しないグリッパを介してエアーノズル63が実装されている。3つのエアーノズル群またはフレーム13A乃至13Cは、複数枚の充填極板が並ぶ方向と直交する方向に、隣り合う二枚の充填極板10間の間隔に実質的に等しい間隔をあけて配置されている。そして螺旋状空気流発生装置の電動スライダ12A乃至12Cは、3つのエアーノズル61乃至63を、それぞれ複数枚の充填極板10が並ぶ方向と直交する方向に往復動作させる。このようにすると、隣り合う二枚の充填極板の二組以上に同時に螺旋状の空気にさらすことができる。本実施の形態では、
図7(A)及び(B)に示すように、三組の隣り合う二枚の充填極板に対して3つのエアーノズル61乃至63を対応させて、乾燥を行うことができる。
図7(A)に示す状態から
図7(B)に示す状態に、充填極板が搬送されると、一組の隣り合う二枚の充填極板の間の間隙には、3つのエアーノズル61乃至63が1回ずつ対応して配置されることになる。
【0049】
また本実施の形態では、
図7(A)及び(B)に示すように、隣り合う2つのエアーノズル群に含まれるエアーノズル61乃至63の往復運動は、運動方向が逆になっている。このようにすると、充填極板の表面への余分な活物質の再付着を防止する効果が得られる。
【0050】
また本実施の形態でも、エアーノズル61乃至63から、短い間隔で噴射されるパルスエアーを吹き出すようにしてもよい。
【0051】
[ブラシかけ]
次に、格子基板1にペースト状活物質を充填した後プレスしたときに、枠骨2に活物質がはみ出して枠骨2の厚み方向端面に付着することがある。この付着した活物質が、鉛蓄電池使用中の振動、活物質の劣化等により剥がれ落ちて短絡が発生することがある。そのため、充填極板10の初期乾燥後、または、螺旋状の空気流8を吹き付けた後に、枠骨2の厚み方向端面に付着した活物質を取り除くのが好ましい。活物質を取り除く方法としては、一対のブラシを回転させ、ブラシ間に枠骨2を通し。枠骨2にブラシがけをすることにより容易に行うことができる。ブラシの材質は、ワイヤー、合成樹脂、動物性のものが考えられるが、強度、コスト面からワイヤーブラシを用いるのが好ましい。また、ブラシを用いずに、切削工具を用いて枠骨2上に付着した活物質を取り除いても良い。
【0052】
上記各実施の形態によれば、充填極板を移送しながら、充填極板の極板間隙に螺旋状の空気流を導入するときは、製造ライン上で極板面に付着した余分な活物質を取り除くことができ、エアーノズルに対向する充填極板の枠骨に対し、エアーノズルがその枠骨長さ以上の距離を往復動作して、充填極板の極板間隙に螺旋状の空気流を導入するときには、極板面全体に亘って空気流が吹き付けられるので、余分な付着活物質を取り除く効果がいっそう高くなる。
【0053】
また螺旋状の空気流が、充填極板が移送される方向に相前後して配置された複数のエアーノズルから吹き出され、複数のエアーノズルが、対向する充填極板の枠骨長さに亘る区間を往復動作するときは、一度により多くの螺旋状の空気流を極板間隙に導入することができる。また、充填極板の極板間隙に満遍なく螺旋状の空気流を導入することができるので、充填極板に付着した活物質をバラツキなく取り除くことができる。
【0054】
充填極板の枠骨の厚み方向端面に付着した活物質は、ブラシをかけて確実に取り除くことが可能となり、短絡を防止する効果をよりいっそう高くすることができる。
【0055】
[実施例]
以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
【0056】
鉛にカルシウム及びスズを添加した鉛合金を用いて、
正負格子基板:縦:395mm×横:142mm×厚さ:6mm
負極格子基板:縦:395mm×横:142mm×厚さ:4mm
の鋳造格子基板を作製した。
【0057】
ペースト状正負極活物質の組成は、特に限定されるものではないが、一酸化鉛を含んだ鉛粉、水、硫酸等(正極、負極の特性に合わせてカットファイバ、炭素粉末、リグニン、硫酸バリウム、鉛丹等の添加物を加える場合もある)を混練して作製した
上述した格子基板をベルトコンベアに寝かせた状態で移動させて、上述したペースト状活物質を収容したホッパを備えた充填機の下方を通過するときに、ペースト状活物質を充填し、成形ローラで加圧して充填極板を作製した。ペースト状活物質の充填量は、乾燥質量が、正極:1150g、負極:900gとなるように調整した。その後、作製した充填極板の両耳部をベルトコンベアに懸架して充填極板を垂下させた状態で運搬しながら温風を吹き付けて初期乾燥を行った。この後に、以下に説明する工程を実施した。
【0058】
(実施例1)
図3(A)に示すように、エアーノズル6を電動スライダ12に一個取り付け、これに対向する充填極板10の枠骨2とエアーノズル6のノズルガイド大径側開口との距離が20mmとなるように調整した。次に、隣り合う2枚の充填極板10,10の極板間隔を20mmにしてベルトコンベア9,9に懸架し垂下した状態にした。ベルトコンベア9,9を駆動せず、充填極板10を静止させた状態で、エアーノズル6から吐出される螺旋状の空気流が隣り合う2枚の充填極板10,10の極板間隙の中央部に導入されるように、エアーノズル6を充填極板10の両耳部5,5の間で枠骨2の長さ方向に沿って往復動作させた。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、ベルトコンベア9,9を駆動し、充填極板10を移送しながら、エアーノズル6から吐出される螺旋状の空気流8を隣り合う2枚の充填極板10,10の極板間隙に導入し、エアーノズル6を充填極板10の両耳部5,5の間で枠骨2の長さ方向に沿って往復動作させた。
【0060】
(実施例3)
図4(A)乃至(C)に示すように、エアーノズル6A乃至6Dを電動スライダ12に取り付けたグリッパ14´に、フレーム13、13を挟んで片側に2個ずつ取り付け、片側2個の内、1個のエアーノズル6B、6Dをフレーム13方向へ10度傾けて配置し、充填極板10の端面とエアーノズルのノズルガイド大径側開口との距離が20mmとなるように調整した。そして、充填極板10を移送しながら、エアーノズル6A乃至6Dを往復動作させている。ここで、充填極板の運搬速度を調整して、例えば、充填極板10の位置が電動スライダ12の真下となったときにエアーノズル6A乃至6Dの移動動作と螺旋状の空気流8の吐出が開始され、エアーノズル6A乃至6Dが一往復したときに、次に移送された充填極板10の位置が電動スライダ12の真下に運搬されるようにした。
【0061】
尚、実施例1〜3では、エアーノズルへの供給空気圧は、0.15MPa、エアーノズルの内径:2mm(有限会社ガリュー製、商品名:SA−300S−32−SUSE)を用いた。
【0062】
上記各実施例の後に、充填極板が垂下された状態のままで、枠骨周囲の厚み方向端面に付着している活物質を、ワイヤーブラシをかけて取り除いた。
【0063】
(比較例)
実施例1と同様にして作製した充填極板を初期乾燥した後、充填極板の極板間隙に螺旋状の空気流を導入せずに、枠骨の厚み方向端面に付着した活物質のみを、実施例1と同様にして取り除いた。
【0064】
<余分な活物質が付着したまま残った充填極板の枚数比較>
実施例、比較例で正極充填極板と負極充填極板を各1000枚ずつ作製し、余分な活物質を取り除くことができずに、極板面に付着したままとなった不具合充填極板の枚数を表1に示す。
【表1】
【0065】
表1より、螺旋状の空気流を吹き付ける実施例は、比較例に対し、余分な活物質が付着したままとなった充填極板枚数が大幅に少なくなっている。4つのエアーノズルを使用した実施例3は、付着活物質を取り除く効果が更に高いことが判る。実施例、比較例共、充填極板の表面の活物質に傷、脱落は発生しなかった。
【0066】
<鉛蓄電池の容量比較>
実施例3、比較例で作製した正極充填極板と負極充填極板を、セパレータを介して交互に所定枚数積層し、同極同士をストラップ溶接した極板群を作製した。作製した極板群を電槽に挿入して蓋体を取り付け、極柱を封口し、希硫酸を所定量注入後、電槽化成を行って鉛蓄電池を作製した。尚、正負充填極板は、実施例3、比較例共に、余分な活物質を取り除いて使用した。
【0067】
作製した鉛蓄電池を、放電電流150A、放電停止電圧1.8Vの条件で放電時間を比較した結果、
実施例3:10.26h
比較例 :10.18h
となり、大きな差はなかった。これにより、電池容量を維持して短絡の原因となる付着活物質を取り除いたペースト式極板を作製できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、充填極板の極板面に付着した余分な活物質を、充填極板に保持された必要な活物質を傷つけることなく取り除くことができ、しかも、余分な付着活物質に起因する正・負極間の短絡を防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 格子基板
2 枠骨
3 縦骨
4 横骨
5 耳部
6 エアーノズル
7 ノズルガイド
8 螺旋状の空気流
9 ベルトコンベア
10 充填極板
11 付着活物質
12 電動スライダ
13 フレーム
14 グリッパ
【要約】
極板面を傷つけることなく、付着した余分な活物質を取り除くことにより、短絡を抑制できる極板の製造方法を提供する。鉛又は鉛合金製の格子基板1に、ペースト状活物質を充填した後、プレスして充填極板を作製し、これを初期乾燥する。初期乾燥した充填極板10の極板面に螺旋状の空気流8を吹き付けて、極板面に付着した余分な活物質を取り除く。さらに、充填極板10の枠骨2の厚み方向の両端面の活物質をブラシで取り除く。