(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
扱胴(10)の下側に扱網(15)を設けて脱穀室(11)を形成し、該脱穀室(11)の下方に唐箕(16)からの送風により風選する風選室(18)を設け、該風選室(18)に往復揺動する揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)には、穀粒と藁屑等とを選別するフィン(36)を揺動方向に複数並設したシーブ(23)を設け、該シーブ(23)は脱穀室(11)の後端の排稈口(25)よりも上手側に設けた前側シーブ(26)と、前記排稈口(25)の下方から下手側に設けた後側シーブ(27)とにより構成し、前側シーブ(26)と後側シーブ(27)の夫々には、前側シーブ(26)および後側シーブ(27)のフィン(36)に夫々摺接する摺接部材(50)を前記揺動選別棚(20)の揺動方向に対する交差方向に複数備えた前側スクレーパ(40)と後側スクレーパ(41)を設け、前記前側スクレーパ(40)と前側シーブ(26)を前側枠体(37)に取付け、前記後側スクレーパ(41)と後側シーブ(27)は後側枠体(38)に取付けて、夫々同一構成のシーブユニット(Y)とし、該前側枠体(37)と後側枠体(38)を揺動選別棚(20)に対して着脱自在に取付ける構成とし、前記前側スクレーパ(40)および後側スクレーパ(41)に備えた摺接部材(50)は、縦向きの平板状を呈し該縦向きの平板面に形成した透孔(51)に前記前側シーブ(26)および後側シーブ(27)の各フィン(36)を挿通し、各摺接部材(50)の下部には取付部(56)を設け、各取付部(56)を連結部材(57)により連結して各摺接部材(50)が互いに所定間隔を保持したまま、前記揺動選別棚(20)の揺動方向に対する交差方向に往復移動する構成とし、前側スクレーパ(40)および後側スクレーパ(41)の夫々の互いに連結した複数の摺接部材(50)のうちの何れかには縦方向の取付軸(58)を取付け、該取付軸(58)は前後方向の前後アーム(59)の先端に取付け、該前後アーム(59)の基部には左右方向の左右アーム(61)の左右中間部を固定して各摺接部材(50)を駆動させる駆動リンク部材(62)を構成し、該駆動リンク部材(62)は前記左右アーム(61)の左右中間部を取付軸(63)により前側枠体(37)または後側枠体(38)側の所定部分に回動自在に取付け、前記左右アーム(61)の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段(65)を夫々連結し、前記取付軸(58)と前記駆動リンク部材(62)と前記駆動伝達手段(65)の夫々は前記前側シーブ(26)と後側シーブ(27)の下方に配置したことを特徴とする脱穀装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例をコンバインの例にて図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部である。
前記刈取装置4は、圃場の穀稈を分草する分草装置7と、穀稈を引き起こす引起装置8と、引き起こした穀稈を切断する刈刃9等を備えている。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設け、脱穀室11の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12の穀稈を挾持搬送する挾扼杆13Aと供給搬送チエン13Bを設けている。14は穀稈供給搬送装置12から引き継いだ脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置である。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0009】
扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲し、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕16の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室18を形成し、風選室18内には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
揺動選別装置21は、その揺動選別棚20の始端部(前端部)を唐箕ケーシング12の上方に位置させて移送棚部22に形成する。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置21の移送方向下手側のシーブ(グレンシーブ)23に向けて扱網15からの落下物を移送できればよい。
前記シーブ23は脱穀室11の排稈口25の略下方よりも上手側に設けた前側シーブ26と、排稈口25の略下方から下手側に設けた後側シーブ27を有している。
30は後側シーブ27の下手側に設けたストローラック、31は揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア、32は一番コンベア31の後側に設けた二番コンベア、33は吸引排塵ファン、34は吸引排塵ファン33のケーシングである。
【0010】
しかして、前側シーブ26および後側シーブ27は、薄い縦方向の平板形状のフィン36を、前側枠体37と後側枠体38に前後に所定間隔をおいて揺動方向に複数並設し(
図9)、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設けて構成する。
前記前側シーブ26および後側シーブ27には、夫々前側スクレーパ40と後側スクレーパ41を設ける。前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は、前側シーブ26および後側シーブ27と共に、前側枠体37と後側枠体38に取付け、前側枠体37と後側枠体38を揺動選別棚20に対して着脱自在に取付け、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27は、揺動選別棚20に対して着脱自在に構成する。
そのため、前側シーブ26および後側シーブ27の付着物を前側スクレーパ40および後側スクレーパ41により除去でき、前側シーブ26および後側シーブ27のフィン36間の間隔が付着物により狭くなるのを防止し、穀粒の漏下効率の低下を抑制して、脱穀ロスの発生を防止する。
【0011】
前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27を、揺動選別棚20に対して着脱自在に構成しているので、揺動選別棚20を機体から外さずに、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27の着脱を行え、メンテナンスを容易にする。
また、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27を、揺動選別棚20から外すことにより、揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア31と二番コンベア32等のメンテナンスを容易にする。
この場合、
図13〜
図16のように、前側シーブ26と後側シーブ27の間にはスクレーパを設けていない中間シーブ44を設け、中間シーブ44は揺動選別棚20に固定状態に設けるが、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27を、揺動選別棚20に対して着脱自在に構成してもよい。
そのため、揺動選別棚20の被処理物の移送を円滑にして、揺動選別効率を向上させられる。
即ち、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は、前側シーブ26および後側シーブ27の付着物を除去して、前側シーブ26および後側シーブ27の各フィン36間の間隔が狭くなって被処理物の詰まり発生を防止する利点があるが、一方で、被処理物の濡れ具合等の条件の違いによっては、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の存在は、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41がないときに比し、揺動選別棚20の被処理物の移送の抵抗となることも起こりうる。このような場合には、前側シーブ26と後側シーブ27の間には、スクレーパを設けていない中間シーブ44を設けることにより、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41を設けても、揺動選別棚20の被処理物の移送を停滞させない。
【0012】
前記前側シーブ26および前側スクレーパ40と後側シーブ27および後側スクレーパ41とは、夫々同一構成のシーブユニットYとして構成する(
図4,
図13)。
そのため、揺動選別棚20に設けたシーブ23の全てにスクレーパー機構Sを簡単に且つ安価に設けられる。
なお、
図7のように、任意の手段により、前側シーブ26および後側シーブ27の前後傾斜角度姿勢を調節しうる構成にすると、前側シーブ26および後側シーブ27上での被選別物の移送に掛かる抵抗を調節でき、漏下率を適切にでき、好適である。
前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41は、前側シーブ26および後側シーブ27の各フィン36間を塞ぐように付着した藁屑等を移動しながら取り除くものであり、穀粒の回収ロスを軽減する。
即ち、湿った穀稈の脱穀作業では、各フィン36に藁屑が付着しやすく、この付着した藁屑により穀粒の落下が阻害され、穀粒の回収効率が低下するが、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41により作業中に湿ったフィン36に付着する藁屑等を除去して、各フィン36間の隙間を確保して、穀粒の落下を円滑にさせて、穀粒の回収効率を向上させる。
【0013】
前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の摺接部材50は、縦向きの平板状に形成し、前側シーブ26および後側シーブ27のフィン36と直交させて、左右方向に複数並設して構成する。各摺接部材50には前記フィン36の断面形状に合わせた透孔51を複数形成し、各透孔51に各フィン36を挿通して取付ける。
即ち、摺接部材50の縦板部56Aは、縦向きの平板状を呈し該縦向きの平板面に前記フィン36の断面形状に合わせた透孔51を複数形成し、各透孔51に各フィン36を挿通して取付ける(
図11)。
そのため、摺接部材50は移動する際にフィン36の上下両面の付着物を除去する。
即ち、湿った穀稈の脱穀作業では、作業中に湿ったフィン36の下面にも藁屑等が付着して各フィン36間の隙間を塞ぐが、摺接部材50によりフィン36の下面の付着物の除去も可能となって、各フィン36間の隙間を確保して、穀粒の落下を円滑にさせて、穀粒の回収効率を向上させ、湿材適応性を向上させられる。
前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の摺接部材50は、透孔51の上下の内周面によりフィン36の付着物を除去するが、摺接部材50にはフィン36の付着物を除去するエッジ部52を設けると、一層、付着物を除去性能を向上させられる。エッジ部52の形状の構成は任意であるが、フィン36の付着物に対して斜めに当接するように構成する。例えば、エッジ部52は、平面視および正面視において略三角形状を呈し、正面視において左右中央位置が最も高く、左右側方に至るに従い低くなる上側傾斜面53と、平面視において前側が最も最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁54を有して形成している。
【0014】
そのため、摺接部材50によりフィン36の付着物を除去する際に、摺接部材50のエッジ部52の正面視の上側傾斜面53と平面視の側部傾斜縁54がフィン36の付着物に斜めに接触し、接触抵抗を減少させて付着物の除去を効率よく、円滑に行う。
前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の摺接部材50は、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動する構成とする。
前記各摺接部材50の下部には取付部56を設ける。各摺接部材50の取付部56を連結部材57により連結して、各摺接部材50が互いに所定間隔を保持したまま、左右方向に往復移動させる。
前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の夫々の互いに連結した複数の摺接部材50のうちの何れかには縦方向の取付軸58を取付け、取付軸58は前後方向の前後アーム59の先端の長孔により形成した係合孔60に係合させる。前後アーム59の基部には左右方向の左右アーム61の左右中間部を固定し、前後アーム59と左右アーム61により摺接部材50を駆動させる駆動リンク部材62を構成する。駆動リンク部材62は左右アーム61の左右中間部を取付軸63により前側枠体37側の所定部分に回動自在に取付ける。
【0015】
前記左右アーム61の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段65を夫々連結し、一対の駆動伝達手段65のうちの一方をモータ等の駆動手段66により牽引すると、一対の駆動伝達手段65のうちの他方の駆動伝達手段65は弛むように、駆動手段66に連結する。
即ち、駆動手段66は、所定量駆動すると正逆転する構成とし、一対の駆動伝達手段65を交互に牽引し、これにより前側スクレーパ40を左右往復移動させる。
前記前側スクレーパ40の左右アーム61と後側スクレーパ41の左右アーム61との間は一対の後側駆動伝達手段65Aにより接続する。
したがって、一つの駆動手段66により前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は同一速度で左右往復移動して、前側シーブ26と後側シーブ27の付着物を除去する。
その結果、前側シーブ26から後側シーブ27への被処理物の移送の停滞を防止でき、選別性能を低下させない。
また、一つの駆動手段66により前側スクレーパ40と後側スクレーパ41を作動させるので、構成を簡略化でき、安価にできる。
また、前記駆動リンク部材62と前記駆動伝達手段65の夫々は前記揺動選別棚20に対して着脱しうるように構成する。
【0016】
また、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への駆動伝達機構のうち、少なくとも、前記後側駆動リンク部材62Bは、前記シーブ23より下方に設けた前記揺動選別棚20の左右側板70を連結する連結部材71に、取付軸63により取付ける。
そのため、連結部材71は、揺動選別棚20の剛性を向上させると共に、駆動リンク部材62の支持構成を兼用でき、合理的構成となる。
なお、前側スクレーパ40への駆動伝達機構の前側駆動リンク部材62Aも、別途設けた前記連結部材71に、取付軸63により取付けてもよい。
前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への駆動伝達機構を構成する前記前側前後アーム59Aおよび前側左右アーム61Aと、前記後側前後アーム59Bおよび後側左右アーム61Bの夫々は、前記前側シーブ26と後側シーブ27の下方に設ける。
そのため、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41の駆動伝達機構の存在が、前側シーブ26と後側シーブ27の選別性能に悪影響を与えることはない。
また、
図17は、前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の他の実施例を示し、前側スクレーパ40の移動速度を後側スクレーパ41の移動速度より速く構成する。
【0017】
そのため、穀粒の含有量の多い脱穀室11の下方前側で、前側スクレーパ40を早く移動させることにより、穀粒の漏下率を高め、藁屑の多い揺動選別棚20の後側では後側スクレーパ41の移動速度を遅くし、藁屑の絡み発生を抑制する。
具体的には、例えば、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への、駆動伝達機構中の前後アーム59の長さを、前側スクレーパ40の前側前後アーム59Aの長さを後側スクレーパ41の後側前後アーム59Bの長さより長く構成している(
図17)。
また、後側スクレーパ41の移動ストロークを前側スクレーパ40の移動ストロークより小さく構成する。
そのため、藁屑の含有量の多い脱穀室11の排稈口25の下手側で、後側スクレーパ41を大きく移動させると、悪屑が左右往復運動で集められやすくなり、穀粒の漏下率を低下させるが、藁屑の多い排稈口25の下手側では後側スクレーパ41の移動ストロークを小さくするので、藁屑の寄せを抑制して、穀粒の漏下率を低下さない。
また、藁屑の含有量の少ない脱穀室11の排稈口25の上手側では、前側スクレーパ40を大きく移動させて、穀粒の漏下率を低下させることなく、付着物の除去を促進して、穀粒の漏下率を向上させる。
【0018】
そのため、排稈口25を基準に、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41の移動ストロークを変更することにより、付着物の除去および穀粒の漏下率の確保を両立させられる。
具体的な、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41との移動ストロークの長短にさせる構成は、例えば、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への、駆動伝達機構中の前後アーム59の長さを、後側スクレーパ41の後側前後アーム59Bの長さを前側スクレーパ40の前側前後アーム59Aの長さより短く構成している。
この場合、前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41は、前側シーブ26および後側シーブ27のフィン36と直交する方向の摺接部材50を、左右方向に複数並設して構成するが、前側スクレーパ40よりも後側スクレーパ41の摺接部材50の数を多く並設する(図示省略)。
そのため、後側スクレーパ41の移動ストロークを前側スクレーパ40の移動ストロークより小さく設定しても、後側シーブ27の左右方向の全体に各摺接部材50を移動させて、付着物の除去の作用域を小さくせず、付着物の除去を行える。
【0019】
また、前側シーブ26のフィン36の前後間隔より、後側シーブ27のフィン36のフィン36の前後間隔を広く構成する(
図13)。
そのため、藁屑の多い揺動選別棚20の後側での選別負荷を軽減させられる。
【0020】
(実施例の作用)
刈り取られた穀稈は、脱穀室11で回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された被処理物は、扱網15から漏下して揺動選別棚20の始端部の移送棚部22に落下し、移送棚部22からシーブ23の前側シーブ26に移送されて選別され、更に、唐箕16からの送風と、風選室18内で往復揺動する揺動選別棚20の後側シーブ27とにより選別される。
しかして、揺動選別棚20では、シーブ23の各フィン36の間から穀粒を落下させて回収するため、前側シーブ26と後側シーブ27のフィン36に藁屑等が付着すると、各フィン36の間の隙間が狭くなって穀粒の落下の障害となるが、前側シーブ26と後側シーブ27には前側スクレーパ40と後側スクレーパ41を設けているので、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41の左右方向に移動する摺接部材50により藁屑等を除去する。
【0021】
そのため、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41の摺接部材50は前側シーブ26と後側シーブ27の各フィン36間を塞ぐように付着した藁屑等を移動しながら取り除くことができ、前側シーブ26および後側シーブ27のフィン36間の間隔が付着物により狭くなるのを防止し、穀粒の漏下効率の低下を抑制して、穀粒の回収ロスを軽減する。
前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は、前側シーブ26および後側シーブ27と共に、前側枠体37と後側枠体38に取付け、前側枠体37と後側枠体38を揺動選別棚20に対して着脱自在に取付けているので、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27は揺動選別棚20に対して着脱自在にとなる。
そのため、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27を、揺動選別棚20を機体から外すことなく着脱作業を行え、メンテナンスを容易にする。
【0022】
この場合、
図12のように、揺動選別棚20と扱網15の間に、前側枠体37と後側枠体38ごと、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27を、着脱する作業スペースを設けておくと、更に、メンテナンスを容易にする。
また、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27は揺動選別棚20から外すと、揺動選別棚20の下方を開放するので、揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア31と二番コンベア32等のメンテナンスを容易にする。
前側シーブ26および前側スクレーパ40と後側シーブ27および後側スクレーパ41とは、夫々同一構成のシーブユニットYとして構成すると、揺動選別棚20に設けたシーブ23の全てにスクレーパー機構Sを簡単に且つ安価に設けられる。
即ち、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41と前側シーブ26および後側シーブ27は、夫々、同じ大きさの前側枠体37と後側枠体38に取付け、前側枠体37と後側枠体38を揺動選別棚20に対して着脱自在に取付ける構成とすることで、前後の前側シーブ26と後側シーブ27を同一構成のシーブユニットYとして簡単に構成でき、安価で提供できる。
【0023】
前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の摺接部材50は、縦向きの平板状に形成し、前側シーブ26および後側シーブ27のフィン36と直交させて、左右方向に複数並設して構成し、各摺接部材50には前記フィン36の断面形状に合わせた透孔51を複数形成し、各透孔51に各フィン36を挿通して取付けているので、摺接部材50は往復移動中にフィン36の上下両面の付着物を除去する。
即ち、湿った穀稈の脱穀作業では、作業中に湿ったフィン36の下面にも藁屑等が付着して各フィン36間の隙間を塞ぐが、摺接部材50によりフィン36の下面の付着物の除去も可能となって、各フィン36間の隙間を確保して、穀粒の落下を円滑にさせて、穀粒の回収効率を向上させ、湿材適応性を向上させられる。
前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の各摺接部材50の下部には取付部56を設け、各取付部56を連結部材57により連結しているので、各摺接部材50が互いに所定間隔を保持したまま、左右方向に往復移動し、付着物を除去する。
【0024】
前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の夫々の互いに連結した複数の摺接部材50のうちの何れかには縦方向の取付軸58を取付け、取付軸58は前後方向の前後アーム59の先端の長孔により形成した係合孔60に係合させ、前後アーム59の基部には左右方向の左右アーム61の左右中間部を固定し、前後アーム59と左右アーム61により摺接部材50を駆動させる駆動リンク部材62を構成し、駆動リンク部材62は左右アーム61の左右中間部を取付軸63により前側枠体37側の所定部分に回動自在に取付け、左右アーム61の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段65を夫々連結しているので、一対の駆動伝達手段65のうちの一方をモータ等の駆動手段66により牽引すると、一対の駆動伝達手段65のうちの他方の駆動伝達手段65は弛み、駆動リンク部材62の左右アーム61が取付軸63中心に回動し、これにより、駆動リンク部材62の前後アーム59の先端が左右往復回動し、前後アーム59は取付軸58を左右方向に往復移動させて摺接部材50を往復移動させる。
【0025】
また、前側スクレーパ40の左右アーム61と後側スクレーパ41の左右アーム61との間は一対の後側駆動伝達手段65Aにより接続しているので、一つの駆動手段66により前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は左右往復移動して、前側シーブ26と後側シーブ27の付着物を除去する。
その結果、前側シーブ26から後側シーブ27への被処理物の移送の停滞を防止でき、選別性能を低下させない。
この場合、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は、同一速度で左右往復移動させると、前側シーブ26上を移送されてきた被選別物を後側シーブ27上へ円滑に引き継ぐことができ、選別効率が向上する。
また、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への駆動伝達機構のうち、少なくとも、前記後側駆動リンク部材62Bは、前記シーブ23より下方に設けた前記揺動選別棚20の左右側板70を連結する連結部材71に、取付軸63により取付けているので、連結部材71は、揺動選別棚20の剛性を向上させると共に、駆動リンク部材62の支持構成を兼用でき、合理的構成となる。
【0026】
前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への駆動伝達機構を構成する前記前側前後アーム59Aおよび前側左右アーム61Aと、前記後側前後アーム59Bおよび後側左右アーム61Bの夫々は、前記前側シーブ26と後側シーブ27の下方に設けているので、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41の駆動伝達機構の存在が、前側シーブ26と後側シーブ27の選別性能に悪影響を与えない。
また、
図17の前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の他の実施例では、前側スクレーパ40の移動速度を後側スクレーパ41の移動速度より速く構成しているので、穀粒の含有量の多い脱穀室11の下方前側で、前側スクレーパ40を早く移動させることにより、穀粒の漏下率を高め、藁屑の多い揺動選別棚20の後側では後側スクレーパ41の移動速度を遅くし、藁屑の絡み発生を抑制する。
具体的には、例えば、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41への、駆動伝達機構中の前後アーム59の長さを、前側スクレーパ40の前側前後アーム59Aの長さを後側スクレーパ41の後側前後アーム59Bの長さより長く構成しているので、前側スクレーパ40の移動速度を後側スクレーパ41の移動速度より速くする構成を簡単に実現できる。
【0027】
また、後側スクレーパ41の移動ストロークを前側スクレーパ40の移動ストロークより小さく構成すると、藁屑の多い排稈口25の下手側では後側スクレーパ41の移動ストロークを小さくするので、藁屑の寄せを抑制して、穀粒の漏下率を低下さない。
即ち、藁屑の含有量の多い脱穀室11の排稈口25の下手側で、後側スクレーパ41を大きく移動させると、悪屑が左右往復運動で集められやすくなり、穀粒の漏下率を低下させるが、これを防止する。
また、藁屑の含有量の少ない脱穀室11の排稈口25の上手側では、前側スクレーパ40を大きく移動させるので、穀粒の漏下率を低下させることなく、付着物の除去を促進して、穀粒の漏下率を向上させる。
そのため、排稈口25を基準に、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41の移動ストロークを変更することにより、付着物の除去および穀粒の漏下率の確保を両立させられる。
【0028】
この場合、前記前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の夫々の摺接部材50の数を、前側スクレーパ40よりも後側スクレーパ41の並設する摺接部材50の数を多くすると、後側スクレーパ41の移動ストロークを前側スクレーパ40の移動ストロークより小さく設定しても、後側シーブ27の左右方向の全体に各摺接部材50を移動させことができ、付着物の除去の作用域を小さくせず、付着物の除去を行える。
また、前側シーブ26のフィン36の前後間隔より、後側シーブ27のフィン36のフィン36の前後間隔を広く構成すると、藁屑の多い揺動選別棚20の後側での選別負荷を軽減させられる。
しかして、
図13〜
図16の前側シーブ26および後側シーブ27と前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の他の実施例では、前側シーブ26および後側シーブ27には、夫々前側スクレーパ40と後側スクレーパ41を設け、前側シーブ26と後側シーブ27の間には、スクレーパを設けていない中間シーブ44を設けているので、揺動選別棚20の被処理物の移送を円滑にして、揺動選別効率を向上させられる。
【0029】
即ち、前側スクレーパ40と後側スクレーパ41は、前側シーブ26および後側シーブ27の付着物を除去して、前側シーブ26および後側シーブ27の各フィン36間の間隔が狭くなって被処理物の詰まり発生を防止する利点があるが、一方で、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41の存在は、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41がないときに比し、揺動選別棚20の被処理物の移送の抵抗なることも事実であり、前側シーブ26と後側シーブ27の間には、スクレーパを設けていない中間シーブ44を設けることにより、前側スクレーパ40および後側スクレーパ41を設けても、揺動選別棚20の被処理物の移送を停滞させない。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。