(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強用パターンは、前記コイルディスクの基板面からの高さが前記コイルパターンと略同一であることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項に記載のディスクモータ。
前記少なくとも2枚のコイルディスクは、表面略全体を覆うシート状の接着層を介して相互に接着されていることを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか一項に記載のディスクモータ。
前記複数の放射状パターン又は放射状パターン群は、前記コイルディスクの周方向について所定の間隔をもって配置形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のうち何れか一項に記載のディスクモータ。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のディスクモータは、出力軸と、出力軸に固定され略円板状であってコイルパターンが印刷されたコイルディスクと、コイルパターンと接続される整流子と、コイルパターンに対向するように配置される磁石と、整流子に電流を供給するためのブラシとから主に構成される。
【0003】
ディスクモータの回転数は、ブラシから供給される電圧、ディスクモータの電流、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数(極数)等により決定される。ブラシから供給される電圧及びディスクモータの電流が一定である場合には、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数を変更することによりディスクモータを所望の回転数に設定することが可能となる。
【0004】
下記特許文献2の積層コイル基板は、コイル用電極と同一面上にダミー電極を形成し、積層コイル基板に積層配置した補強用電極により、コイル用電極とダミー電極との間隔が最も近接する部位を含む領域を、コイル用電極の一部とダミー電極の一部とともに積層方向に挟んだ構造であり、これにより機械的強度向上を図るとしている。なお、積層コイル基板は、セラミックグリーンシートを積層し焼結した焼結基板である。
【0005】
下記特許文献3の多層基板は、コイルパターンの周りに当該コイルパターンを取り囲む囲みパターンを設けることにより、積層接着時の熱で溶ける接着用プリプレグのエポキシ樹脂が基板の間から流出することを防止するとしている。
【0006】
下記特許文献4の薄型積層コイルは、複数の両面基板のうち、少なくとも互いに対面する両面基板の上下面にコイルパターンと電気的に接続が断たれたダミーパターンを設けた構造を有する。これによれば、本来層間板体(プリプレグ)が介在すべき部分に形成されたダミーパターンによって、層間板体を薄く形成することができ、該層間板体に含浸される樹脂充填量を少なくできると共に、ダミーパターンが堰き止めとなって層間板体に含浸した樹脂等が周囲に漏洩するのを防止できる等の効果を奏するとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のディスクモータは、コイルディスク表面における、導体パターンの存在しないパターン非形成部分の面積が大きい。このため、特許文献1のコイルディスクを複数積層する場合には、パターン非形成部分は高さが低くて接着への寄与が小さい(又は寄与がない)ため、実質的な接着寄与面積が小さく、層間の接着強度が低いという問題がある。他方、特許文献2〜4に開示されているダミー電極、囲みパターン又はダミーパターンは、コイルパターンの外側に設けることが必要なため、モータ用のコイルディスクへの適用は径方向の大型化につながり、非現実的である。
【0009】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、相互に接着された少なくとも2枚のコイルディスクを有する構造で、当該2枚のコイルディスクの接着強度を従来よりも高めることが可能なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機、並びにディスクモータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、ディスクモータである。このディスクモータは、
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定され、中心側から半径方向外方に延びる複数の放射状パターン又は放射状パターン群を含むコイルパターンが片面又は両面に形成され、相互に接着された少なくとも2枚のコイルディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルパターンに対向する磁束発生部とを備え、
少なくとも1枚の前記コイルディスク上の隣り合う放射状パターン又は放射状パターン群の間に補強用パターンが形成され、
前記補強用パターンの形成面が他方の前記コイルディスクとの接着面となってい
て、
前記コイルパターンは、前記2枚のコイルディスクの少なくとも相互対向面に存在し、軸方向視において、前記相互対向面の一方の隣り合う放射状パターン又は放射状パターン群の間に、他方の放射状パターン又は放射状パターン群が位置することを特徴とする。
【0011】
前記ディスクモータにおいて、前記補強用パターンは、相互に絶縁された小パターンからなるとよい。
【0012】
各々の小パターンは、前記放射状パターンよりも幅が狭く、かつ前記コイルディスクの径方向と略平行に延びてもよい。
【0013】
各々の小パターンは、前記放射状パターンよりも幅が狭く、かつ前記コイルディスクの径方向と略垂直に延びてもよい。
【0014】
前記ディスクモータにおいて、前記補強用パターンは、前記コイルディスクの基板面からの高さが前記コイルパターンと略同一であるとよい。
【0015】
前記ディスクモータにおいて、前記補強用パターンは、前記コイルパターンと同材質であるとよい。
【0016】
前記ディスクモータにおいて、前記少なくとも2枚のコイルディスクは、表面略全体を覆うシート状の接着層を介して相互に接着されているとよい。
【0017】
前記ディスクモータにおいて、前記複数の放射状パターン又は放射状パターン群は、前記コイルディスクの周方向について所定の間隔をもって配置形成されているとよい。
【0019】
前記ディスクモータにおいて、前記コイルパターンは、前記コイルディスクの両面に設けられて相互に接続されているとよい。
【0020】
本発明のもう1つの態様は、前記ディスクモータを備えた電動作業機である。
【0021】
本発明のもう1つの態様は、ディスクモータの製造方法である。この方法は、
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定され、中心側から半径方向外方に延びる複数の放射状パターン又は放射状パターン群を含むコイルパターンが形成され、相互に接着された少なくとも2枚のコイルディスクと、
前記コイルパターンに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルパターンに対向する磁束発生部とを備えるディスクモータの製造方法であって、
少なくとも1枚の前記コイルディスクのコイルパターンを形成するための導体層のエッチング工程において、隣り合う放射状パターン又は放射状パターン群の間に補強用パターンを前記コイルパターンと共に形成し、
前記2枚のコイルディスクを接着する接着工程では、前記補強用パターンの形成面を接着面とし、
前記2枚のコイルディスクの前記コイルパターンが形成された面同士を相互に対向させ、軸方向視において、前記2枚のコイルディスクの相互対向面の一方の隣り合う放射状パターン又は放射状パターン群の間に、他方の放射状パターン又は放射状パターン群が位置するように、前記コイルディスクの表面略全体を覆うシート状の接着層を挟んで前記2枚のコイルディスクを相互に接着固定することを特徴とする。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少なくとも1枚の前記コイルディスク上の隣り合う放射状パターン又は放射状パターン群の間に補強用パターンを形成するため、当該2枚のコイルディスクの接着強度を従来よりも高めることが可能なディスクモータ及びそれを備えた電動作業機、並びにディスクモータの製造方法を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る刈払機1の斜視図である。電動作業機の例示である刈払機1は、電源部3と、パイプ部4と、ハンドル部5と、駆動部6と、刈刃7とを備える。
【0027】
電源部3は、電源たるバッテリ301を着脱可能に有する。パイプ部4は、電源部3と駆動部6とを機械的に接続する(連結する)。また、パイプ部4の内部には、電源部3と駆動部6とを電気的に接続する配線(図示せず)が挿通されている。この配線により、電源部3から駆動部6に電力が供給される。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータを収容しており、電源部3からの供給電力により刈刃7を回転駆動する。ディスクモータの構成は後述する。
【0028】
ハンドル部5は、パイプ部4の中間、すなわち電源部3と駆動部6との間に取り付け固定されている。ハンドル部5は、一対のアーム51の先端にそれぞれグリップ52を取り付けてなる。一方のグリップ52には、スロットル53が設けられている。作業者は、スロットル53を操作することにより、駆動部6への供給電力を調整可能、すなわち刈刃7の回転数を調整可能である。刈刃7は、略円板状で、その周縁に鋸歯が形成されている。また、刈刃7中心には後述するディスクモータの出力軸に装着される孔(図には現れず)が形成されている。
【0029】
図2は、
図1に示す刈払機1の駆動部6の正断面図である。なお、
図2に示すように、出力軸31の延出方向を上下方向と定義する。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータ80を有する。ヘッドハウジング61は、カバー部62及びベース部63を嵌合一体化してなる。ディスクモータ80は、ステータ81と、ロータ82と、一対のブラシ83とを有する。一対のブラシ83は、ディスクモータ80の回転軸(出力軸31)について対称に設けられ、カバー部62のブラシホルダ65に支持される。各ブラシ83は、下面が後述する整流子基板35上の銅等の導体の整流子パターンと当接するように、バネ83Aによって整流子基板35側(下側)に付勢される。ブラシ83は、
図1の電源部3に接続されており、ロータ82の後述するコイルパターンに電流を供給する電流供給部として機能する。
【0030】
ステータ81は、磁束発生部としてのマグネット41と、軟磁性体である上ヨーク42及び下ヨーク43とを有する。リング状の上ヨーク42は、カバー部62の下面に例えばネジ622で固定される。上ヨーク42と略同径のリング状の下ヨーク43は、ベース部63の下面に形成されたリング状溝部631内に例えばネジ632で固定される。マグネット41は、ベース部63の上面に形成された穴部633内に嵌め込み固定される。
【0031】
図3は、
図2に示すステータ81の模式的平面図である。本図に示すように、例えば円板形状のマグネット41は、例えば10個、円周上に等角度ピッチで並んで配置される(マグネット41を収容する
図2の穴部633も円周上に同数並んで存在する)。円周の中心は、ディスクモータ80の回転中心と略一致する。隣り合うマグネット41は、上面の磁極が相互に異なる。マグネット41としては、ネオジム磁石等の希土類磁石が好ましいが、フェライト磁石等の焼結磁石を用いてもよい。上ヨーク42及び下ヨーク43は、後述するロータ82のコイルパターンに印加される磁束密度を高めるものである。
【0032】
図2に示すように、ロータ82は、出力軸31(ロータシャフト)と、整流子基板35と、コイル部36と、フランジ37とを有する。出力軸31は、カバー部62に固定された上側軸受け311及びベース部63に固定された下側軸受け312によって回転自在に支持される。出力軸31の下方側端部には雄ネジ31Aが形成されており、図示せぬ留め具によって
図1の刈刃7が固定される。整流子基板35の上面は、ブラシ83の摺動面である。
図1に示す電源部3からブラシ83及び整流子基板35を介してコイル部36に電流が供給される。
【0033】
図4は、
図2に示すロータ82の、左半分を断面とした正面図である。本図に示すように、出力軸31に同軸的に固定された例えばアルミ等の金属製のフランジ37は、略円筒形状の円筒部37Aと、略円板形状の円板部37Bとから構成される。円板部37Bは、円筒部37Aの側面から出力軸31と垂直に外側に突出する。軸方向視で円板部37Bと同形状の絶縁板38,39が、同じく同形状のシート状の接着層502,503(絶縁性)によって円板部37Bの上下面に接着固定される。絶縁板38の上面には、シート状の接着層501(絶縁性)を介して整流子基板35が接着固定される。絶縁板39の下面には、シート状の接着層505(絶縁性)を介してコイル部36が接着固定される。
【0034】
コイル部36は、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364をシート状の接着層507(絶縁性)を挟んで積層してなる。シート状の接着層507は、各コイルディスクと軸方向視で同形状であり、各コイルディスクの表面略全体を覆う。第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364は、円板部37Bよりも大径であり、それぞれ両面に後述のコイルパターンが形成されている。整流子基板35から第4コイルディスク364までを貫く導体ピン40は、整流子基板35の整流子パターンと、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364の少なくともいずれかのコイルパターンとを電気的に接続する。円板部37Bの貫通孔(ピン40の挿通孔)には絶縁パイプ401が嵌め込まれ、ピン40とフランジ37との絶縁を確保する。
【0035】
図5は、
図4に示す整流子基板35の平面図である。円板状の整流子基板35(整流子ディスク)の中心にある貫通孔35Aは、
図4の円筒部37Aを挿通させるものである。ピン挿通孔35Bは、整流子基板35の中心から等距離に所定数設けられ、
図4に示すピン40が一部のピン挿通孔35Bに選択的に挿通される。整流子基板35上に形成された整流子パターン351は、放射状に40セグメントに分かれている。間に7つのセグメントを挟んだ2つのセグメント(1番目と9番目、2番目と10番目等)は、内側に形成された接続パターン352と反対面に形成された不図示の接続パターンにより相互に接続されている。
【0036】
図6(A)は、
図4に示す第1コイルディスク361の平面図である。
図6(B)は、同コイルディスクの底面図である。なお、他のコイルディスクも第1コイルディスク361と同じ構造であり且つ同じコイルパターンを有するので、ここでは第1コイルディスク361についてのみ説明する。
【0037】
第1コイルディスク361は、円板状の絶縁基板90(例えばガラス繊維強化エポキシ樹脂基板等の絶縁樹脂基板)の両面にそれぞれコイルパターン92と、補強用パターン93とを有する。絶縁基板90の中心にある貫通孔91は、
図4の円筒部37Aを挿通させるものである。ピン挿通孔94は、絶縁基板90の中心からの角度90°おきに4個ずつ、合計16個形成される。各ピン挿通孔94から絶縁基板90の中心までの距離は相互に等しい。各ピン挿通孔94は、整流子基板35に形成されたピン挿通孔35Bのうち1つと連通する。
【0038】
銅その他の導電材からなるコイルパターン92は、相互に近接した略同一幅の2列のパターンからなる部分コイルパターン群920を片面につき20個ずつ有する。部分コイルパターン群920は、内側連絡パターン群92Aと、放射状パターン群92Bと、外側連絡パターン群92Cとを順に接続したものである。両面の内側連絡パターン群92A同士は、端部近傍に形成されたスルーホール921によって相互に電気的に接続される。両面の外側連絡パターン群92C同士は、端部近傍に形成されたスルーホール922によって相互に電気的に接続される。放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心側から半径方向外側に延びて内側連絡パターン群92Aと外側連絡パターン群92Cとを渡す。両面の放射状パターン群92B同士は、軸方向視で略同一位置に存在する。各コイルディスクの放射状パターン群92Bは、マグネット41の配列円周(各マグネット41の中心が配列される円周)の真上に位置する。つまり、各コイルディスクの回転に伴って放射状パターン群92Bはマグネット41の真上を通過する。放射状パターン群92Bに流れる電流とマグネット41の発生する磁界との間の電磁力により回転力が得られる。
【0039】
各々の面の放射状パターン群92Bは、絶縁基板90の中心から等角度ピッチで存在する。したがって、絶縁基板90の表面において、隣り合う放射状パターン群92Bの間には、コイルパターン92の存在しない領域(以下「放射状パターン群間領域」とも表記)がある。この放射状パターン群間領域に補強用パターン93が設けられている。補強用パターン93は、コイルパターン92と同材質であり、絶縁基板90からの高さがコイルパターン92と略同一である。補強用パターン93は、積層されるコイルディスク間の接着力を高める役割がある。これについては後述する。
【0040】
図7(A)及び
図7(B)は、第1コイルディスク361のコイルパターン説明図である。なお、これらの図は、振られている符号を除き、
図6(A)及び
図6(B)と同一である。第1コイルディスク361のコイルパターン92は、2つのコイルを含む。一方のコイルの始点をA1−1、終点をA1−2と
図7(A)中に示している。また、他方のコイルの始点をA2−1、終点をA2−2と同図中に示している。一方のコイルは、始点A1−1から点P11、P11'、P12'、P12、P13、P13'、・・・P19'、P20'と繋がる。これで上から見て始点A1−1から時計回りに一周となる。そして、さらに点P20'から同様に点P20,P21,P21'、P22'、P22、P23、P23'、・・・、P29'、P30'と繋がる。これで上から見て始点A1−1から時計回りに二周となる。そして、点P30'から点P31'、P31、P32、P32'、P33'と反時計回りに同様に繋がり、点P30'から二周して終点A1−2に至る。他方のコイルも同様に、始点A2−1から終点A2−2まで繋がっている。
【0041】
そして、このように構成される第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364が、軸方向(積層方向)に4枚積層されてコイル部36が構成される。異なるコイルディスクのコイル間は、
図4で既述のピン40によって電気的に接続される。4枚のコイルディスクの接続を成すのに必要なピン40は12本である。ここで、2枚のコイルディスクに形成されたコイルパターン92を直列に接続するには、例えば、一方のコイルディスクのスルーホールの一方が、他方のコイルディスクのスルーホールの他方に位置するように位相をズラして積層すればよい。これにより、2枚のコイル基板コイル部36は、4枚のコイルディスク361〜364が、軸方向視においてそれぞれに形成されたコイルパターンが一致するように、または、それぞれ予め定められた角度ずつズレるように積層されて構成される。角度ズレがある場合、積層状態では、軸方向視で、各コイルディスクの補強用パターン93は、次の層のコイルディスクのコイルパターン92と対面する。
【0042】
図8(A)は、
図4に示す第1コイルディスク361及び第2コイルディスク362の積層断面拡大図である。なお、他のコイルディスク同士の積層断面も同様なので、ここでは第1コイルディスク361及び第2コイルディスク362の積層断面についてのみ説明する。
図8(B)は、
図8(A)の比較例であり、
図8(A)から補強用パターン93を取り去った場合の積層断面拡大図である。
図9(A)は、
図8(B)に示す比較例に係るコイルディスクの平面図である。
図9(B)は、同比較例に係るコイルディスクの底面図である。
【0043】
図8(B)に示すように、絶縁基板90の放射状パターン群間領域90Bに補強用パターン93が存在しない場合、シート状の接着層507は、コイルパターン92の放射状パターン群92Bには接着するものの、放射状パターン群間領域90Bの表面には届かずに接着しない。あるいは、接着層507を十分に厚くし、積層時のプレスにより接着層507が放射状パターン群間領域90Bの表面に届いて接着したとしても、接触圧が低いため接着力は弱い。すなわち、放射状パターン群間領域90Bは、接着への寄与がないか、あっても小さい。したがって、積層されるコイルディスク間の接着力も弱く、信頼性の確保が難しい。また、接着層507を厚くすることによるコストアップや厚みの増加の問題もある。
【0044】
一方、絶縁基板90の放射状パターン群間領域90Bに補強用パターン93が存在する場合、
図8(A)に示すように、コイルパターン92の放射状パターン群92Bに加え、補強用パターン93もシート状の接着層507に接着する。このため、
図8(B)のように補強用パターン93が存在しない場合と比較して、接着面積を大きく確保でき、コイルディスク間の接着力を強化して信頼性を高めることが可能となる。また、接着層507が薄くても強力な接着力を確保できるため、薄型化とコスト削減にも有利である。
【0045】
図6(A)等に示すように、補強用パターン93は、放射状パターン群92Bを成す1本の放射状パターンよりも幅が細い7本の小パターンからなる。各々の小パターンは、絶縁基板90の中心側から半径方向外側に延びる。コイルディスク間の接着力向上に関しては、補強用パターン93は上記のように小パターンに分割されていなくても効果がある。しかし、補強用パターン93が例えば1枚の幅広い導体層であると、絶縁基板90の回転に伴って補強用パターン93に生じる渦電流による損失が大きいという問題がある。したがって、効率の観点を考えると補強用パターン93は上記のように分割されているのが好ましい。
【0046】
以下、ディスクモータ80の製造方法について簡単に説明する。
【0047】
円板状の絶縁基板の両面に銅箔等の導電材を積層したものにマスクを被せてエッチング処理する(エッチング工程)。必要なスルーホール及びピン挿通孔は、エッチング処理の前もしくは後に加工する。これにより、
図6(A)等に示すコイルパターン92及び補強用パターン93を形成した4枚のコイルディスク361〜364を得る。また、
図5に示す整流子パターン351等を形成した整流子基板35も同様に得る。
【0048】
図4に示すように、ピン40を通し、層間にプリプレグ状態のシート状の接着層501〜503,505,507(例えば、ガラス布基材にエポキシ樹脂を含浸させ半硬化状態にした薄いシート)を挟んで各部材をフランジ37に積層し、金型にセットしてホットプレス(加熱した状態で積層方向に加圧)する(接着工程)。なお、ホットプレスに先だって、コイルディスク361〜364を積層した状態でピン40と各コイルディスクとをハンダ付けしておく。また、ホットプレス後、整流子基板35とピン40とをハンダ付けし、突出したピン40の不要部分をカットする。こうして得られた
図4のロータ82を、
図2に示すようにステータ81及びブラシ83と組み合わせ、ディスクモータ80が完成する。
【0049】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0050】
(1) 隣り合う放射状パターン群92Bの間に補強用パターン93が形成されているため、補強用パターン93が存在しない場合と比較して、積層されたコイルディスク間の接着力を向上させることができる。このため、振動の大きな製品や使い方によっては衝撃が加わりやすい製品においても、高い信頼性を確保できる。
【0051】
(2) 補強用パターン93はコイルパターン92と同材質かつ基板面から同じ高さであるから、両者を一度のエッチング工程で一括的に形成することができ、製造容易かつコスト安である。すなわち、補強用パターン93の形成のために別途工程が増やす必要がない。
【0052】
(3) 補強用パターン93は放射状パターン群92Bを成す1本の放射状パターンよりも幅が細い小パターンとして形成されているため、渦電流損が小さくて効率が良い。すなわち、ディスクモータという製品の特性上、放射状パターン群間領域を貫く磁束は絶えず時間変化するため、例えば放射状パターン群間領域の略全体を覆う大きな導体層を接着力確保のために設けると渦電流による損失が大きいという問題があるところ、本実施の形態ではそうした問題を好適に解決することができる。
【0053】
(4) 補強用パターン93は絶縁基板90の放射状パターン群間領域に形成されるため、補強用パターン93を設けるために絶縁基板90の面積を大きくする必要はない。
【0054】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0055】
図10は、
図6(A)の例と異なる補強用パターン(その1)を有するコイルディスクの平面図である。なお、
図10のコイルディスクは、補強用パターンの形状を除き、
図6(A)に示すコイルディスクと同一構成である。
図10に示すように、変形例の補強用パターン93Aは、放射状パターン群92Bを成す1本の放射状パターンよりも幅が細く、かつコイルディスクの径方向と略垂直に延びる15本の小パターンからなる。反対側の面の補強用パターンも同様の小パターンからなる(図示省略)。本変形例の補強用パターンを設けた場合も、渦電流損を小さく抑えることができる。またこのように磁石が移動する方向に沿って小パターンを設けることで、例え微小な渦電流が発生したとしても、渦電流の発生し易い方向が磁石が移動する方向、つまり回転方向と直交する方向となるため、ロータの回転に与える影響を更に抑制することができる。
【0056】
図11は、
図6(A)の例と異なる補強用パターン(その2)を有するコイルディスクの平面図である。なお、
図11のコイルディスクは、補強用パターンの形状を除き、
図6(A)に示すコイルディスクと同一構成である。
図11に示すように、変形例の補強用パターン93Bは、多数の小パターンを縦横に配列してなる。小パターンの形状は、端部にあるものを除いて略正方形である。但し、小パターンの形状は円、楕円、三角形その他の多角形であってもよい。反対側の面の補強用パターンも同様に多数の小パターンを縦横に配列してなる(図示省略)。本変形例の補強用パターンを設けた場合も、渦電流損を小さく抑えることができる。
【0057】
図12は、
図6(A)の例と異なる補強用パターン(その3)を有するコイルディスクの平面図である。
図12のコイルディスクは、補強用パターンの形状を除き、
図6(A)に示すコイルディスクと同一構成である。
図12に示すように、変形例の補強用パターン93Cは、連続した小パターンを往復状に形成してなる。連続した小パターンの形状は、
図13に示した補強用パターン(その4)に示すように渦巻状の補強用パターン93Dであってもよい。本変形例の補強用パターンを設けた場合も、渦電流損を小さく抑えることができる。
【0058】
ディスクモータを成す複数のコイルディスクの補強用パターンは、コイルディスクごとに異なる形状であってもよい。また、同じコイルディスクの一方の面と他方の面で補強用パターンの形状が異なってもよい。また、同じコイルディスクの同じ面上の補強用パターンが、放射状パターン群間領域ごとに異なってもよい。
【0059】
また、最上層のコイルディスク(
図4の第1コイルディスク361)の上面と最下層のコイルディスク(
図4の第4コイルディスク364)の下面は、シート状の接着層と対面しないが、コイルディスクの表面が均一の高さとなることで、プレス時に圧力を均等に加え易くなるという効果を奏することができる。
【0060】
補強用パターンは、シート状の接着層を挟む2つの面のいずれかのみに設けられてもよい。この場合も、コイルディスク間の接着力を従来より高めることは可能である。
【0061】
補強用パターンは、実施の形態で示したようにコイルパターンと電気的に絶縁されてもよいが、電流経路とならない限り、あるいは閉回路の一部を成さない限り、コイルパターンと絶縁されていなくてもよい。
【0062】
補強用パターンは、小パターン化されていなくてもよい。補強用パターンが1枚の大きな導電層であっても、渦電流損の問題はあるものの従来と比較したコイルディスク間の接着力強化は可能である。
【0063】
コイルディスクは1枚又は全てが片面基板であってもよい。この場合も、補強用パターン93の形成された面同士でシート状の接着層507を挟むとよい。
【0064】
複数のコイルディスクは、相互に角度ずれなく積層されてもよい。つまり、放射状パターン群92B同士(及び補強用パターン93同士)がシート状の接着層507を挟んで対面する積層状態も可能である。
【0065】
コイルディスク及び整流子基板の形状は、厳密な円板状でなくてもよいが、軸方向視で実質的に円とみなせる範囲であるとよい。
【0066】
上記に加え、マグネットの個数とその配置角度ピッチ、コイルパターンの周回数(コイルパターンの列数)、コイルディスクの積層数、ピン挿通孔やスルーホールの数、その他のパラメータは、要求される性能やコストに応じて適宜設定可能である。また、コイルパターンの周回数は、コイルディスクごとに異なってもよい。なお、コイルパターンが1列の場合は、実施の形態の説明における「部分コイルパターン群」、「内側連絡パターン群」、「放射状パターン群」、及び「外側連絡パターン群」の各用語を、「群」を除いて読み替える。
【0067】
電動作業機は、実施の形態で示した刈払機のほか、ディスクモータを搭載したベルトサンダーやロータリバンドソー等、ディスクモータによる回転駆動部を有する種々の電動工具であってもよい。