特許第5737544号(P5737544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5737544高いロック連結長を有する少ないストローク長のディファレンシャルロック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737544
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】高いロック連結長を有する少ないストローク長のディファレンシャルロック
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/24 20060101AFI20150528BHJP
   F16H 48/34 20120101ALI20150528BHJP
【FI】
   F16H48/24
   F16H48/34
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-530977(P2014-530977)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2014-525022(P2014-525022A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】US2013031989
(87)【国際公開番号】WO2014028054
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2013年8月27日
(31)【優先権主張番号】61/683,298
(32)【優先日】2012年8月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】パトリック,ジョン,マクミラン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル,フィリップ,フィッシャ
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−527274(JP,A)
【文献】 登録実用新案第370690(JP,Z2)
【文献】 特開平06−241249(JP,A)
【文献】 実開昭55−163224(JP,U)
【文献】 特開2003−130183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00
F16H 48/00−48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸および回転軸に対して平行に延びる凹部を含むギアケースと、
回転軸の回りを回転するように設けられ、周方向に間隔をあけて分画される複数個の半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバを含み、半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバの各々は、対応する溝によって回転軸に沿う方向へ分画された複数個のサイドギアセグメントをさらに含むサイドギアと、
少なくとも回転軸の一部を取り囲む電子制御アクチュエータと、
回転軸の一部に沿って両方向へ移動するように設けられ、外側へ延びる耳部および複数個の半径方向内側へ延びるカラーロックメンバを含み、半径方向内側へ延びるカラーロックメンバの各々は周方向に間隔をあけて分画されるとともに半径方向内側へ延びるカラーロックメンバの各々は対応する溝によって回転軸に沿う方向へ分画される複数個のカラーセグメントをさらに含むカラーと、
を含む電気作動型ディファレンシャルロックを備えるディファレンシャルであって
電子制御アクチュエータは、耳部が凹部を移動することができるようにカラーをサイドギアに対して回転軸に沿う方向へ移動させるように構成され、
電子制御アクチュエータがカラーをロック位置へ移動させると、カラーセグメントがサイドギアセグメントに対面連結され、
電子制御アクチュエータがカラーをアンロック位置へ移動させると、サイドギアセグメントは、回転軸を中心に回転するとともに半径方向内側へ延びるカラーロックメンバの溝を通過することを特徴とするディファレンシャル。
【請求項2】
ギアケースは、カラー、サイドギア、および電子制御アクチュエータを少なくとも部分的に取り囲むことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項3】
ギアケースは、カラーの一部がギアケースに埋め込まれるとともに電子制御アクチュエータの一部がギアケースに埋め込まれるように構成され、またギアケースは、ギアケースと協働するためのエンドキャップをさらに含み、サイドギアの一部は、エンドキャップに埋め込まれることを特徴とする請求項2に記載のディファレンシャル。
【請求項4】
電子制御アクチュエータは、ランププレートおよび少なくとも1個の駆動ピンを含み、ランププレートは、カラーを移動させるために少なくとも1個の駆動ピンを選択的に移動させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項5】
波形ばねおよびエンドキャップをさらに含み、波形ばねは、カラーをエンドキャップから離れる方へ付勢するため、カラーとエンドキャップとを押圧することを特徴とする請求項4に記載のディファレンシャル。
【請求項6】
半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバの各々は、6個のサイドギアセグメントを含み、また半径方向内側へ延びるカラーロックメンバの各々は、6個のカラーセグメントを含むことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項7】
サイドギアは、複数個の半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバに隣接するリップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項8】
各サイドギアセグメントは多面体であり、また各サイドギアセグメントは他のサイドギアセグメントと実質上同一であり、各カラーセグメントは多面体であり、また各サイドギアセグメントは他のカラーセグメントと実質上同一であることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項9】
各サイドギアセグメントは、他のサイドギアセグメントの各々に対して実質上平行であり、各カラーセグメントは、他のサイドギアセグメントの各々に対して実質上平行であることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項10】
サイドギアは9個の半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバを含み、半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバの各々は6個のサイドギアセグメントを含み、またカラーは9個の半径方向内側へ延びるカラーロックメンバを含み、半径方向内側へ延びるカラーロックメンバの各々は6個のカラーセグメントを含むことを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項11】
各カラーセグメントは周方向に一定の幅を有し、カラーは、ロック位置とアンロック位置との間で動作するため、少なくとも1個のカラーセグメントの分の距離だけ移動することを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項12】
各サイドギアセグメントは周方向に一定の幅を有し、カラーは、ロック位置とアンロック位置との間で動作するため、少なくとも1個のサイドギアセグメントの分の距離だけ移動することを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項13】
各カラーセグメントはセグメントを有し、各カラー溝は溝を有し、また半径方向内側へ延びるカラーロックメンバの各々のは、その対応するそのセグメントとその対応するカラー溝との合計であることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項14】
ロック位置とアンロック位置との間を移動するため、カラーは、少なくとも1個分のセグメントまたは1個分の溝と等しい距離を移動することを特徴とする請求項13に記載のディファレンシャル。
【請求項15】
各サイドギアセグメントはセグメントを有し、各サイドギア溝は溝を有し、また半径方向外側へ延びるサイドギアロックメンバの各々のは、その対応するセグメントとその対応するカラー溝との合計であることを特徴とする請求項1に記載のディファレンシャル。
【請求項16】
ロック位置とアンロック位置との間を移動するため、カラーは、少なくとも1個分のセグメントまたは1個分の溝と等しい距離を移動することを特徴とする請求項15に記載のディファレンシャル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2012年8月15日に提出された米国仮特許出願61/683,298号に対して優先権主張するものであり、その全てを参照することによって開示内容がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、概してディファレンシャルロックに関する。特に、本発明は、少ないストローク長であっても高い連結長を有するカラー式のディファレンシャルロックに関する。
【背景技術】
【0003】
トラクションを変更するディファレンシャルロックは、典型的に、ギアチャンバを定めるギアケース、ならびにギアケース内に配置され、少なくとも1個の入力ピニオンギアおよび一対の出力サイドギアを含むディファレンシャルギアセットを含む。典型的に、このような「ディファレンシャルロック」は、ギアケースに対する1個のサイドギアの回転を選択的に妨げるロック機構を含み、ロック機構の連結はアクチュエータによって起される。
【0004】
ディファレンシャルロックのロック機構のトルク容量は、ロック機構がロック状態とアンロック状態との間で動作する時の、ロック機構の軸方向移動の関数である。ロック機構の移動は、ディファレンシャルケースに隣接して配置される「インナランププレート」の軸方向移動によって制限される。米国特許第6,551,209号の内容に基づいて製作されたディファレンシャルロックの商業的実施形態において、ロックメンバは、約4mmの軸方向移動および約3mmの有効な「ロック連結」を有する。米国特許7,264,569号の内容に基づく他の例において、ディファレンシャルは、約8mmから約12mmの移動で約8mmの連結長のロックメンバを有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、少ないストローク長、少ない移動、および高いロック連結長のディファレンシャルロックを提案する。
【0006】
ディファレンシャルは、中心軸および凹部を含むギアケースを含む。サイドギアは、中心軸の回りを回転するように構成される。サイドギアは、半径方向外側へ延びるロックメンバを含む。半径方向外側へ延びるロックメンバは、複数個の溝によって分画されるサイドギアセグメントをさらに含む。電子制御アクチュエータは、中心軸を取り囲む。カラーは、中心軸に沿って両方向へ移動するように構成される。カラーは、耳部および半径方向内側へ延びるロックメンバを含む。半径方向内側へ延びるロックメンバは、複数個の溝によって分画されるカラーセグメントをさらに含む。アクチュエータは、耳部が凹部内を軸方向へ移動することができるように、カラーをサイドギアに対して移動させるように構成される。カラーセグメントは、アクチュエータがカラーをロック位置へ移動させると、サイドギアセグメントに連結されるように構成される。サイドギアセグメントは、アクチュエータがカラーをアンロック位置へ移動させると、半径方向内側へ延びるロックメンバの溝を通過するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】アンロック状態、非作動のディファレンシャルロックの軸平面による断面図である。
図2】エンドキャップが取り除かれた状態の図1のディファレンシャルロックの左側面図である。
図3】アンロック状態、非作動のディファレンシャルロックを別の視線で見た図である。
図4】ロック状態におけるカラーを伴う付勢ばねの配置を示す図である。
図5】アンロック状態、非作動のディファレンシャルロックの軸平面による断面図であり、ロック機構の「移動」を図解するものである。
図6図6Aは、セグメントのアライメントおよび対面連結を図解するロック状態を示す図であり、図6Bは、ロック状態を別の視線で見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付した図面を参照して図解された実施形態を詳細に説明する。なお、同一または相当する部品については、図面を通して可能な限り同一の符号を付与する。
【0009】
図1は、電気作動型ディファレンシャルロックの軸平面による断面図である。図1に示されるディファレンシャルロックは、ギアケース11およびエンドキャップ12を含み、例えば、複数個のボルト(図示省略)等の適当な手段によってギアケース11に取り付けられる。ギアケース11およびエンドキャップ12は、概して参照番号13で示されるギアチャンバを定める。ギアケース11は、アウタディファレンシャルハウジングまたは「キャリア」(図示省略)に対して回転ディファレンシャル装置を回転支持するためのベアリングセットが取り付けられる、環形状のハブ部27および29を定める。
【0010】
ディファレンシャルロックに対するトルク入力は、フランジ15に取り付けられる入力リングギアが典型的に使用される。ギアチャンバ13内には、一対の入力ピニオンギア17を含むディファレンシャルギアセットが配置される。典型的であるように、入力ピニオンギア17は、ピニオンシャフト18の回りを回転可能に設けられ、ピニオンシャフト18は、適当な手段によってギアケース11に固定される。ピニオンギア17は、ディファレンシャルギアセットの入力ギアを含み、また一対のサイドギア19および21に噛み合わされる。サイドギア19および21は、一対のアクスルシャフトの外歯スプライン(図示省略)にスプライン結合されるように構成される、内歯のストレートスプライン23および25のセットを定める。
【0011】
車両が前方へ直進する通常運転中、左アクスルシャフトと右アクスルシャフトとの間、または左サイドギア19と右サイドギア21との間に、差動は起こらない。それによって、ピニオンギア17は、ピニオンシャフト18に対して回転しない。ケースを取り囲むアウタリングギアが回転すると、ピニオンシャフト18が回転する。その結果、ピニオンギア17、ならびにサイドギア19および21は、一体化されたユニットで構成されているかのように、全てが回転軸Aの回りを回転する。車両のターン時、サイドギア19および21は、ピニオンギア17に対して回転することで、差動回転することができる。ロック状態が望まれる場合、サイドギア19および21の少なくとも1つがケース回転速度と異なる速度で回転することを阻止することによって、サイドギア19および21の差動回転をロックすることができる。図解された例において、ロックモードは、一方のサイドギア19をケースと一緒に回転させることを必要とする。これが結果的にピニオンギア17がピニオンシャフト18の回りを回転することを阻止するので、他方のサイドギア21は第1サイドギアと異なる速度で回転することができず、他方のサイドギア21はケースと同じ速度で回転する。
【0012】
主に図1を参照すると、ディファレンシャルロックは、概して参照番号31で示される回転阻止機構を含み、回転阻止機構31は、ギアケース11内に完全に配置されるとともにサイドギア19に操作可能に結合される。ディファレンシャルロックはまた、この例におけるギアケース11に対して外側にある、概して参照番号33で示される駆動機構を含む。
【0013】
回転阻止機構31は概して環形状のカラー35を含み、カラー35は、その外周に設けられて図2および図4に示される複数個の耳部37を含む。例のみにおいて、6個の耳部37が設けられる。各耳部37は、カラー35の図6Aおよび図6Bに示されるロック位置と図3図4および図5に示されるアンロック位置との間の軸に沿う方向への移動が許容されるが、カラー35のギアケース11に対する回転が阻止されるように、ギアケース11によって定められる軸方向へ延びる凹部39に連結されて受け止められる。
【0014】
カラー35の内周の回りには、複数個のカラーロックメンバ41が設けられる。サイドギア19の外周の回りに設けられる複数個のサイドギアロックメンバ43は、複数個のカラーロックメンバ41に交互に連結される。例のみにおいて、9個のカラーロックメンバ41と9個のサイドギアロックメンバ43とが存在する。各カラーロックメンバ41は、隣接するメンバ41に対して周方向のギャップを有し、また各サイドギアロックメンバ43は、隣接するメンバ43に対して周方向のギャップを有する。ギャップは、カラーロックメンバ41がサイドギアロックメンバ43間を図2における紙面外方向へスライドすることを可能とするのに十分である。すなわち、カラーロックメンバ41がサイドギアロックメンバ43間を通過することができるように、カラー35は、図2の紙面外方向へ軸に沿ってスライドすることができる。ギャップは、ロックメンバの間に最小クリアランスが与えられるように調整することができる。または、ギャップおよびロックメンバの数量は、カラー35をサイドギア19に連結させるために十分な力をもたらすのに十分なだけの、最小数量のロックメンバを有するように、ロックメンバ間により大きいクリアランスを有するように調整することができる。しかしながら、ロックメンバは、そのアンロック位置(図3図4および図5参照)からそのロック位置(図6Aおよび図6B参照)までのカラーメンバ35の移動を容易にするために十分なクリアランスを有する必要がある。
【0015】
加えて、各ロックメンバは、内部に溝を有することで分画される。すなわち、カラーロックメンバ41は6個のセグメント72を含み、またサイドギアロックメンバ43は6個のセグメント71を含む。セグメントおよび溝は、カラーロックメンバ41がサイドギアロックメンバ43に近接したままの状態でさえ、サイドギア19がカラー35に対して回転することを許容する。サイドギアセグメント71は、ディファレンシャルのアンロック時にカラーセグメント72間を通過し、それにも関わらず、サイドギアセグメント71は、ディファレンシャルのロック時にカラーセグメント72と対面連結する。
【0016】
セグメントおよび溝は、図解されるように直角なエッジを有する一方で、セグメントおよび溝は、Rあるいは傾斜が付けられたエッジを有することが可能であり、または、セグメントは、Rあるいは傾斜を有するあるいは持たずに、全長あるいは幅に沿ってテーパを付与することが可能である。加えて、各カラーセグメント72は、他のカラーセグメント72の各々に対して平行である。カラーセグメント72は、各々がその最長の長さに沿った中心軸を有する多面体とすることが可能であり、また各カラーセグメント72の最長の中心軸は、他のカラーセグメントの各々に対して平行とすることが可能である。これはサイドギアセグメント71についても同様であり、各サイドギアセグメント71は、他のサイドギアセグメントの各々に対して平行とすることが可能である。各サイドギアセグメントは、最長の中心軸を有する多面体とすることが可能であり、最長の中心軸は、他のサイドギアセグメントの最長の中心軸と相互に平行とすることが可能である。サイドギアに対するカラーの円滑な回転を可能にするため、各サイドギアセグメントの各最長の中心軸は、各カラーセグメントの各最長の中心軸に対して平行とすることが可能である。
【0017】
図1は、回転阻止機構31の「アンロック」状態を示す。6Aおよび図6Bは、「ロック」状態を示す。図2において、ロックメンバ41および43は、カラー35がサイドギア19に対してスライドすることが可能な位置を示すため、相互に関連して中心に位置される。図6Aおよび図6Bは、ディファレンシャルをロックするため、各カラーロックメンバ41を隣接するサイドギアロックメンバ43に対面連結させることができる、ことを示す。各サイドギアセグメント71は、カラー35に対するサイドギア19の回転を許容しない形で、カラーセグメント72に隣接する。すなわち、カラー35をスライドさせて、カラー35の溝がサイドギアセグメント71ともはや一列に整列しないように、またサイドギア19の溝がカラーセグメント72ともはや一列に整列しないようにする。サイドギアセグメント71上の限られた表面が、カラーセグメント72上の限られた表面に接触する。サイドギア19の回転方向は、図2に関連して時計回り方向になるように図6Aおよび図6Bに示されているが、反対方向への回転も可能である。
【0018】
ロックメンバとセグメントとの組み合わせは、開示されるように、ディファレンシャルをロックまたはアンロックするために必要な移動を大幅に減少させる。カラーは、ロックメンバに連結または連結を解除するため、セグメントの幅だけ軸方向へ移動させる必要がある。クリアランス距離は、カラーセグメント72とサイドギアセグメント71との間のクリアランス長さに一致させることを含むことができる。
【0019】
図5に示されるように、サイドギア19はまた、リップ62を含む。リップ62は、カラーがサイドギアセグメント71を過ぎてエンドキャップ12の方へ移動することを阻止するような大きさに設定される。クリアランスギャップは、カラーセグメント72がクリアランスギャップ内で自由に回転することを許容するため、リップ62とサイドギアセグメント71との間に設けられる。
【0020】
先の直動コイルと比較して、開示されたディファレンシャルロックは、少ないストローク長と高いロック連結長とを有する。すなわち、直動コイルを備える先のディファレンシャルは、少ない力および少ない移動長を有し、全連結長を制限する。先の連結長は、クリアランスを差し引いたコイル移動に等しかった。
先の連結長=(コイル移動−クリアランス) 等式1
【0021】
セグメントを介して多くの連結オーバーラップを生むことで、新規ロック機構の全連結長は、コイル移動の移動長に制限されない。その代わり、連結長は、コイル移動からクリアランスを差し引いてオーバーラップ数を乗じることで決定することができる。
新規連結長=(コイル移動−クリアランス)×(オーバーラップ数) 等式2
【0022】
再び図1を参照すると、図3に関連して、ギアケース11は、複数個の円筒形開口部45を定める。各開口部45内には、細長い、概して円筒形の駆動メンバ47がスライド可能に設けられる。例のみにおいて、3個の駆動メンバ47が存在する。各駆動メンバ47は、カラーメンバ35に連結される第1端49、およびギアケース11からいくぶん外に延びる第2端51を有する。各端51は、端51がランプ面55上をスライドすることが可能なように、略半球に形成される。3個の駆動メンバ47は、図2における2時、6時、および10時の位置にある耳部37に連結される。
【0023】
電子制御アクチュエータ33は、サイドギア21に隣接する端でギアケース11の回りに設けられ、複数個のランプ面55および介在する谷部を定める単一のランププレート53を含む。各駆動メンバ47毎に、頂部および1つの谷部を有する1個のランプ面55が存在する。これは、1個のランププレートおよび駆動メンバ47の軸方向移動をもたらす「ピン」(すなわち、駆動メンバ47)の1セットを有する「ピン−アンド−ランプ」式装置である。「内側の」ランププレートは、「移動距離」を伴うメンバである。
【0024】
セグメント間に間隔をあけるため、「移動距離」が先行技術に対して大幅に減少される。例えば、セグメントは、1.5mmのストローク長に設定することが可能である。しかしながら、連結長は6mmである。これは、ストローク長が連結長に略等しい先行技術と対照的である。
【0025】
アクチュエータ33は、概して参照番号57で示される電磁コイルをさらに含む。電磁コイルの機能は、要求される制動トルクをランププレート53に作用させることであり、これによって駆動メンバ47のランプアップが起こる。ここで使用される、駆動メンバ47に関する「ランプアップ」の用語は、コイル57が励磁されていない(非作動、アンロック状態に対応)、図3および図4に示される完全に引き込まれたピストンから、コイル57が励磁されている(作動、ロック状態に対応)、ピストンが完全に押し出された状態まで、メンバ47を移動させることを含む。電磁コイル57は、ランプの頂部が駆動メンバ(ピン)をカラー35へ押し付けることができるように、ランププレート53を回転させることが可能である。カラーの耳部37は、カラー35がエンドキャップ12の方へ移動してランププレート53から離れてロック状態へ移行することができるように、ギアケース11の対応する凹部39をスライドする。
【0026】
カラーメンバ35は、図3および図4に示される波形ばね61によって非作動、アンロック状態の方へ付勢される。多くの異なる付勢手段が利用可能であるが、波形ばね61は、回転阻止機構31のコンパクトなパッケージングを容易にする。電磁コイル57が非励磁状態である時、ランププレート53の谷部が駆動メンバ47と一致するように、ランププレート53を回転させることが可能である。波形ばね61はそれから、ディファレンシャルをアンロックするため、カラー35をエンドキャップ12から離れる方へ且つランププレート53の方へ押し付ける。それによって、カラー35は、アクチュエータ33がランプアップされるか否かに基づき、図1における軸A−Aに沿った両方向へ移動することができる。
【0027】
図1に概略的に示されるように、電磁コイル57は一対のリード線59によって励磁され、参照番号「59」は、アクチュエータ33に対する電気入力信号を確認するため、以下にも使用される。
【0028】
ランプおよびコイル駆動が図解されているが、例えば、ボールアンドランプ等の他の駆動手段を使用することが可能である。使用される駆動手段は、サイドギアに対してカラーを移動させることが可能である必要がある。
【0029】
ディファレンシャルロックは、一対のモードのいずれかで制御される。ディファレンシャルは、手動で制御することが可能であり、すなわち、運転者は、ロックモード(アンロックモードよりもむしろ)を手動で選択する。モードが手動で選択された後、ディファレンシャルはロックモードで運転することが可能である。代わりに、ディファレンシャルロックは、車両マイクロプロセッサが、例えば初期の車輪のスリップ等の運転状態を検出して、ディファレンシャルロックへ適正な電気信号を送信する、例のみにおける、自動モードで運転することを許容することが可能であり、それによって、それらの間のいかなるさらなる差動をも阻止するため、ギアケース11に対してサイドギア19をロックする。
【0030】
ディファレンシャルロックの自動作動においては、例えば、車両の旋回時、またはタイヤサイズに僅かな差がある等の、特定の運転状態下で、サイドギア19および21間に起こる一定量の差動動作が許容される。しかしながら、図1の例は、クラッチパックまたは差動動作を阻止あるいは制限する他の機構のための図解を含んでいない。例は、非作動、アンロックモード、または、作動、ロックモードのいずれにおいても「オープンディファレンシャル」のように、代わりに作動する。
【0031】
ディファレンシャルは、手動または自動運転を可能にするための、例えば、リード線59等の、十分な入力手段を含む。必要であれば、ディファレンシャルは、手動または自動運転を実施するため等の、例えば、CAN、バス、電算(ストレージ、演算、およびプログラミング)等の提携を含むことが可能であり、出力ならびにロックまたはアンロック状態を指令する信号を送信するための他のハードウェアおよびソフトウェアをさらに含むことができる。
【0032】
図5は、ロック状態(図6Aおよび図6B)とアンロック状態(図3図4および図5)との間を移動するカラーメンバ35の移動距離「T」を図解する。移動距離Tは、セグメントの幅とクリアランスとの和に等しい。この例において、移動距離は約1.5mmに等しい。ストローク長、またはカラー35をサイドギアに連結させるために駆動メンバが移動しなければならない距離は、この例においても約1.5mmである。このように、移動距離は、ディファレンシャルをアンロックまたはロックするために全連結長を移動させる代わりに、連結長のほんの少しを移動させるだけに、大幅に減少される。
【0033】
ロックメンバ41および43間の連結長(すなわち、連結の軸方向長さ)は、この例において約6mmである。これは、カラーロックメンバ41の1セグメントは、幅の約1mmが、サイドギアロックメンバ43のセグメントの幅の約1mmと連結されるためである。各ロックメンバに6セグメントが存在するので、ロックメンバは、約6mmの連結長を付加的に有する。
【0034】
図6Aは、ロック状態の一例を図解する。カラーセグメント72がサイドギアロックメンバ43の溝と一列に整列されることがないように、カラー35はサイドギア19に対して位置が調整される。サイドギアロックメンバ43は、カラーロックメンバ41と対面連結し、サイドギアロックメンバ43のセグメント71は、カラーロックメンバ41の溝と一列に並ぶことがない。図6Bに示されるように、サイドギアロックメンバ43の溝は、カラーロックメンバ41の溝と一列に整列される。
【0035】
数量、幅、長さ、ならびにセグメントおよびロックメンバの間隔は、図解されたものから変更することが可能であり、またサイドギア19の回転方向は、時計回り方向(図解されるように)または反時計回り方向とすることが可能である。加えて、図面はスケールを限定するものではなく、カラーの幅およびサイドギア19のセグメントの範囲は変更することが可能である。サイドギア19のセグメントの配置は、図1のように左側、図3のように右側とすることが可能であり、またはセグメントは、図1および図3に示される、左右にわたってあるいは中間部分に設けることが可能である。
【0036】
前記述において、図面に関連して種々の説明がなされてきた。しかしながら、それに対して種々の他の改良および変更が可能であり、以下の特許請求の範囲の範疇から逸脱しないで、付加的な実施形態の実施が可能であることは、明白である。記述および図面は、それによる限定を意図するよりもむしろ図解に重点をおいたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B