(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737558
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】車両用計器
(51)【国際特許分類】
G01D 7/00 20060101AFI20150528BHJP
G01D 11/00 20060101ALI20150528BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
G01D7/00 K
G01D11/00 K
B60K35/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-274290(P2010-274290)
(22)【出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2012-122867(P2012-122867A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 剛
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−256397(JP,A)
【文献】
特開2003−134887(JP,A)
【文献】
特開2002−127786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00
G01D 11/00
G01D 13/22
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動する指針と、
この指針の指示対象となる指標部を設けた文字板と、
前記指針を回動させ、磁気的な安定位置で前記指針が前記指標部における初期位置を指示するように構成されたステッピングモータ、または交差コイル式のムーブメントからなる駆動手段と、
車両情報を入力し、この車両情報に基づいて前記駆動手段を作動させるための制御信号を出力する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、車両の起動スイッチがオン状態において、
前記車両情報のうち車速に基づいて、前記車両の停車状態を判定する停車判定処理と、
前記停車状態が所定時間経過したか否かを判定する時間判定処理と、を行い、
前記車両が前記所定時間停車していると判定した場合には、
前記駆動手段への電力供給を停止するように促す通電停止処理を行うことを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記駆動手段への駆動信号を生成し出力する駆動回路を備え、
前記制御手段は、前記通電停止処理として、前記駆動手段への出力を停止する出力停止モードへ移行するように促す制御信号を前記駆動回路へ出力してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記駆動手段への駆動信号を生成し出力する駆動回路と、前記駆動回路へ電源を供給する電源回路とを備え、
前記制御手段は、前記通電停止処理として、前記電源回路から前記駆動回路への電源の供給を停止するように促す制御信号を前記電源回路へ出力してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記駆動手段は、ステッピングモータからなり、
前記制御手段は、所定条件下において、前記指針を回動限界点へ回動するように制御することによって、前記指針の初期位置を設定する指針初期処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用計器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記所定条件として、前記車両が停車しており、更に前記車両の起動スイッチの操作、またはドアの開閉操作を検出し、前記何れかの操作があった場合に、前記指針初期処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速を含む車両情報を入力し、この車両情報に基づいて計測値等の情報を回動する指針とこの指針の指示対象となる指標部を設けた文字板とによって対比判読可能に表示する車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両情報を表示する車両用計器として、例えば、特許文献1に開示されるようなものがある。これらの車両用計器は、車両に搭載されるバッテリからの電源が供給され、この電源を駆動源として各種表示を行っている。また、車両に搭載された各種センサにおいてもこのバッテリを駆動源としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−114056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の車両用計器にあっては、イグニッションスイッチ等の車両起動スイッチがオン状態である限り、計器表示に関する電子部品への電源供給がなされており、電力が消費し続けてしまうため、省電力に関する改善の余地があった。特に、アイドリングストップ機能搭載車や電動車両など停車中に発電機を停止する車両にあっては、停車中にバッテリからの電力消費を低減する必要があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目してなされたものであって、車両が停車中における消費電力を低減できる車両用計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用計器は、
回動する指針と、
この指針の指示対象となる指標部を設けた文字板と、
前記指針を回動
させ、磁気的な安定位置で前記指針が前記指標部における初期位置を指示するように構成されたステッピングモータ、または交差コイル式のムーブメントからなる駆動手段と、
車両情報を入力し、この車両情報に基づいて前記駆動手段を作動させるための制御信号を出力する制御手段と
、を備え、
前記制御手段は、車両の起動スイッチがオン状態において、
前記車両情報のうち車速に基づいて、前記車両の停車状態を判定する停車判定処理
と、
前記停車状態が所定時間経過したか否かを判定する時間判定処理と、を行い、
前記車両が前記所定時間停車していると判定した場合には、
前記駆動手段への電力供給を停止するように促す通電停止処理を行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記駆動手段への駆動信号を生成し出力する駆動回路を備え、前記制御手段は、前記通電停止処理として、前記駆動手段への出力を停止する出力停止モードへ移行するように促す制御信号を前記駆動回路へ出力してなることを特徴とする。
【0008】
また、前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記駆動手段への駆動信号を生成し出力する駆動回路と、前記駆動回路へ電源を供給する電源回路とを備え、前記制御手段は、前記通電停止処理として、前記電源回路から前記駆動回路への電源の供給を停止するように促す制御信号を前記電源回路へ出力してなることを特徴とする。
【0009】
また、前記駆動手段は、ステッピングモータからなり、前記制御手段は、所定条件下において、前記指針を回動限界点へ回動するように制御することによって、前記指針の初期位置を設定する指針初期処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、前記制御手段は、前記所定条件として、前記車両が停車しており、更に前記車両の起動スイッチの操作、またはドアの開閉操作を検出し、前記何れかの操作があった場合に、前記指針初期処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車速を含む車両情報を入力し、この車両情報に基づいて計測値等の情報を回動する指針とこの指針の指示対象となる指標部を設けた文字板とによって対比判読可能に表示する車両用計器に関して、車両が停車中における消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態における車両用計器の表示例を示す平面図。
【
図2】同上実施の形態における電気的な構成を示す図。
【
図3】同上実施の形態における制御手段の処理手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された実施の形態について添付図面を用いて説明する。
【0014】
本発明の車両用計器を適用したものを実施例として説明する。車両用計器Aは、車両利用者が乗車状態にて視認可能な位置、この場合、インストルメントパネルに設けられ、
図1に示すように、回動する指針Bと、この指針Bの指示対象となる目盛りや数値からなる指標部等が印刷された文字板Cと、後述する表示パネルと、インジケータDとによって、車両情報を表示できる。
【0015】
また、車両用計器Aは、
図2に示すように、制御手段1と、表示パネル2と、光源3と、駆動回路4、駆動手段5、電源回路6とによって電気的に構成される。また、車両用計器Aは、車両側の各種センサや他の制御機器が発する車両情報を入力する通信ケーブルや起動スイッチ(IG−SW)などと接続している。
【0016】
制御手段1は、例えば、マイクロコンピュータを適用でき、前記車両情報や、起動スイッチからの起点信号を入力し、これら信号に応じて制御信号を生成するとともに、この制御信号を表示パネル2や光源3、駆動回路4、電源回路6へ出力できるように接続している。
【0017】
また、制御手段1は、入力する各種信号に基づいて演算処理するためのCPUと、このCPUにおける演算処理結果等を一時的に格納する読出し及び書換え可能なRAMや、制御プログラムや制御データを格納したROMから構成される記憶部と、前記各種信号や制御信号、クロック信号などをやり取りするためにバス接続された入出力インターフェースと、を備えている。この場合、制御手段1は、前記通信ケーブルを介して入力する車両情報として、車速やエンジン回転数、燃料消費量、外気温度、ドアの開閉などの情報を得ることができる。
【0018】
表示パネル2は、駆動ドライバを含む液晶表示パネルを適用でき、制御手段1からの制御信号に基づいて、所望の表示像を表示することができ、この場合、制御手段1が入力する車両情報の一部、例えば、燃料の残容量や積算走行距離、燃費などを、数値やゲージなどで表示でき、また、一部のインジケータや警告表示などを切り換え表示することもできる。
【0019】
光源3は、車両用計器A内に収納された回路基板上に実装される発光ダイオードを適用でき、表示パネル2を透過照明するバックライトや、警告灯やインジケータDの点消灯、指針Bや文字板Cの照明用として用いられる。光源3は、制御手段1によって制御されており、車両情報などに基づいて、点灯/消灯が切り換えられて、表示/非表示、または点滅や輝度調整がなされる。
【0020】
駆動回路4は、制御手段1の制御信号に基づいて駆動手段5を駆動するためのドライバを適用でき、指針Bが所望の角度分回動するような駆動信号を生成し、駆動手段5へ出力する。なお、駆動回路4は、通常モードと、角度保持モードと、出力停止モードとが用意され、制御手段1からの制御信号によって切り換え可能にしている。
【0021】
駆動手段5は、駆動回路4からの駆動信号に基づいて指針Bを回動する駆動源であり、モータを適用できる。車両利用者は、駆動手段5によって所望の角度に回動した指針Bと、指針Bの指示対象となる指標部の位置関係を対比判読することによって、車両情報を読み取ることができる。
【0022】
この場合、駆動手段5は、図示しないギアを介して指針Bの回動軸を回動するステッピングモータを適用しており、駆動信号がなく磁気的に安定した位置で文字板Cの指標部の「0km/h」を指針Bが指示するように構成している。
【0023】
なお、制御手段1は、所定条件下(例えば、車両が停車中で、かつイグニッションスイッチの操作や運転席側ドアの開閉を検知した際)において、一時的に指針Bを初期位置にリセットする指針初期処理を行うことによって、指針Bの現在角度を認識することができる。
【0024】
なお、制御手段1は、所定条件として、車両利用者が車両用計器Aの表示値、特に車速表示を必要としない状態を設定することが好適であり、車両が停車状態で、更にイグニッションスイッチの操作直後や、乗車や降車に伴う運転席側ドアの開閉後、ドアロック操作後などに、(車両情報と関係無く)指針Bを作動させて指針初期処理を行うことが考えられる。
【0025】
また、指針初期処理において、制御手段1は、指針Bを図示しない文字板Cまたは駆動手段5の内部に設けられたストッパに、指針B、または指針Bと同期する回動部品を当接させることによって、強制的に限界位置(初期位置)まで指針Bを回動させてなる。この指針初期処理によって、制御手段1は、指針Bの初期位置を基準点とする所望の角度制御を行うことができるようになる。
【0026】
電源回路6は、バッテリからの電力を所定の電圧に降圧して出力する定電圧回路を適用でき、所定の電圧を駆動回路4へ供給している。また、電源回路6は、制御手段1からの制御信号に基づいて、前記所定の電圧の出力について、供給/停止を切り換えることができる。この場合、電源回路6は、ツェナーダイオードやトランジスタなどを用いたレギュレータ回路を含み、バッテリ5からの約12Vの電源電圧を約5V(所定の電圧)に降圧している。
【0027】
上述した車両用計器Aの制御手段1と、表示パネル2と、光源3と、駆動回路4、駆動手段5、電源回路6とは、同一の筐体内に収納保持され、前述通信ケーブルなどを介して、外部機器と接続される。
【0028】
次に、本発明に係る制御手段1による速度計(車速計)の制御処理手順について
図3を用いて説明する。
【0029】
制御手段1は、入力した車両情報において車両の走行速度に関する情報を読み取り、車両が停車状態であるか否かを判定する停車判定処理を行う(ステップS1)。なお、停車判定処理は、車両情報に基づいて判定されるものを示したが、駆動回路4への制御信号が指針Bを指標部の「0km/h」へ指示するように促す指示命令であるか否かによって、判定することもできる。
【0030】
制御手段1は、停車判定処理によって、停車したと判定した場合に、停車後、停車状態が所定時間(例えば、5秒)経過したか否かを判定する時間判定処理(ステップS2)を行う。この時間判定処理は、停車判定されてから、実際に指針Bが「0km/h」の指標部を指示するまでの時間以上であれば、所定時間を任意に設定することができる。
【0031】
制御手段1は、時間判定処理によって、所定時間経過した判定を行った場合に、指針Bが指標部の「0km/h」を指示し続けていることを確定し、駆動回路4から駆動手段5への駆動信号の出力を停止するように促す通電停止処理を行う(ステップS3)。
【0032】
この場合、制御手段1は、出力停止モードに移行するように促す制御信号を駆動回路4へ出力することによって、駆動手段5の駆動に伴う電源消費を停止する通電停止処理を行うことができる。なお、制御手段1は、駆動回路4への電源供給を停止するように促す制御信号を電源回路6へ出力することによっても通電停止処理を行うこともできる。
【0033】
また、制御手段1は、停車判定処理によって停車状態でない場合、または時間判定処理によって所定時間経過していない場合には、駆動手段5の作動によって車両情報に基づく走行速度値を指示表示されるように促す制御信号を、駆動回路4や電源回路6へ出力する通常指示処理を行う(ステップS4)。
【0034】
以上の処理(ステップS1〜S4)を繰り返すことによって、車両が停車状態において、指針Bを駆動するための消費電力を低減することができる。
【0035】
斯かる車両用計器Aは、回動する指針Bと、この指針Bの指示対象となる指標部を設けた文字板Cと、指針Bを回動させる駆動手段5と、車両情報を入力し、この車両情報に基づいて駆動手段5を作動させるための制御信号を出力する制御手段1とを備えた車両用計器であって、制御手段1は、前記車両情報のうち車速に基づいて、停車状態を判定する停車判定処理(ステップS1)を行い、車両が停車していると判定した場合には、駆動手段5への電力供給を停止するように促す通電停止処理(ステップS3)を行う。
【0036】
したがって、車両起動スイッチ(イグニッションスイッチ)がオン状態、即ち車両が稼働状態であったとしても、駆動手段5による電力消費、特に車両が停車中における消費電力を低減できる車両用計器Aとなる。アイドリングストップ機能搭載車や電動車両など停車中に発電機を停止する車両に、上述した実施の形態を適用することによって、停車中のバッテリからの電力消費を低減でき、特に有効である。
【0037】
また、制御手段1からの制御信号に基づいて、駆動手段5への駆動信号を生成し出力する駆動回路4を備え、制御手段1は、通電停止処理(ステップS3)として、駆動手段5への出力を停止する出力停止モードへ移行するように促す制御信号を駆動回路4へ出力してなることによって、制御信号による切り換え命令だけで、車両停車中における消費電力を簡単に低減できる。また、瞬時に通常指示処理(ステップS4)へ復帰することができる。
【0038】
また、制御手段1からの制御信号に基づいて、駆動手段5への駆動信号を生成し出力する駆動回路4と、駆動回路4へ電源を供給する電源回路6とを備え、制御手段1は、通電停止処理(ステップS3)として、電源回路6から駆動回路4への電源の供給を停止するように促す制御信号を電源回路6へ出力してなることによって、駆動手段5だけでなく駆動回路4の電力消費を低減することができる。
【0039】
また、駆動手段5は、ステッピングモータからなり、制御手段1は、所定条件下において、指針Bを回動限界点へ回動するように制御することによって、指針1の初期位置を設定する指針初期処理を行うことによって、正確な指示制御を確保しながら、通電停止処理(ステップS3)による省電力を実現できる。
【0040】
また、制御手段1は、前記所定条件として、前記車両が停車しており、更に前記車両の起動スイッチの操作、またはドアの開閉操作を検出し、何れかの操作があった場合に、指針初期処理を行うことによって、車両利用者にとって車両用計器の必要性が低い時に指示位置を校正(調整)することができ、駆動手段への通電を停止した場合であっても、通常の表示利用を留めることなく、正確な指示制御ができる。
【0041】
なお、本発明の車両用計器を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【0042】
例えば、文字板Cの指標部を印刷して形成するものを示したが、目盛り部分を別の部材にて形成して組み付けて立体的に表現した文字板を適用することもできる。また、駆動手段5としてステッピングモータを例にあげて説明したが、ギアやヨークなどを用いない交差コイル式のムーブメントであっても適用できる。この場合、帰零磁石などによって、指針が「0km/h」の指標部を初期指示するように構成することもできる。
【0043】
また、上述した実施の形態にあっては、複合計器のうち速度計に適用するものを例にあげて説明したが、車両が停車中に、所定位置を指示する指針式計器であれば本発明を適用できる。例えば、瞬間燃費計や、電動車両における車両駆動用モータの出力計(パワーゲージ)
にも適用することができる。
【0044】
また、停車中に駆動手段5による電力消費を低減するものを示したが、これに併せて、指針照明用の光源など部分的に照明輝度を小さくしたり、部分的に光源を消灯するなどして、停車中の消費電力をより低減することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両用計器に関し、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用計器として適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 制御手段
4 駆動回路
5 駆動手段
6 電源回路
B 指針
C 文字板