【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例においては携帯型作業機の例としてチェンソー1を用いて説明する。本明細書では作業者がチェンソー1を保持した際を基準に、図中に示す方向を前後、上下左右方向と定義して説明する。
【0023】
図1は本発明の実施例に係るチェンソー1の側面図であり、チェンソー1の正立姿勢における状態を示す。チェンソー1は、2サイクルや4サイクルエンジンなどの小型のエンジンを動力源とし、本体ハウジング4の前方にガイドバー2を突出させ、ガイドバー2の周縁に作業用先端工具であるソーチェーン(図示せず)を装着したものである。チェンソー1を用いてエンジンの回転によってソーチェーンを高速で回転させることにより木や枝などの切断が可能となる。チェンソー1の上方には、メインハンドル3が設けられ、メインハンドル3の前端付近から横及び下方向にフロントハンドル6が延びるように設けられる。
【0024】
メインハンドル3は、作業者が右手で把持するためのハンドルであり、フロントハンドル6は作業者が左手で把持するためのハンドルである。メインハンドル3の上部付近には、セーフティトリガ7aが設けられ、前端付近には後述するイグニッションスイッチ7b(
図3参照)が設けられ、メインハンドル3の下方にはスロットルトリガ7cが設けられる。メインハンドル3の前方側には、作業者の手に、枝や切断物などがあたらないように保護する役割をするハンドガード12が設けられる。本体ハウジング4の左側部分は、空気を通過させるための複数のスリット10aが形成されたファンカバー10で覆われる。
【0025】
ファンカバー10の内側には、エンジンを始動するためのリコイル式のスタータ(図示せず)が収容され、ファンカバー10の上部付近を貫通してスタータを引くためのスタータハンドル13が取り付けられる。本体ハウジング4の前方側の内部には、図示しない燃料タンクとチェーンオイルタンクが配置され、燃料タンクキャップ14と、チェーンオイルタンクキャップ15が設けられる。メインハンドル3の後端部付近であってチェンソー1の本体部は、本体ハウジング4で覆われ、本体ハウジング4の後方は浄化室カバー29で覆われる。尚、本体ハウジング4は、後述するエンジン50を収容し、タンクが一体に形成された箱状のエンジン収容部と、エンジン収容部の後端で浄化室カバー29が取り付けられるクリーナボディとから構成される。
【0026】
チェンソー1を用いた伐木作業においては、大量の木屑が発生し、周囲に飛散する。そのため、木屑が空気と共にエンジンの内部に吸引されると動作不良などの不具合の原因となるため、吸入空気に木屑が混入しない構造が必要となる。そこで、本体ハウジング4の後方上部には後述する浄化室が設けられる。浄化室は開口面を有し、その開口面はノブ28にて固定される浄化室カバー29で閉鎖される。本体ハウジング4の浄化室を覆う付近には、気化器のアイドリング時の回転数を調整するためのスロットル開度や燃料流量を調整するためのネジを浄化室の外部より工具を用いて調整することができるよう、スロットル調整ネジ用空孔26、燃料調整用工具挿入孔25が設けられる。
【0027】
図2は、本発明の実施例に係るチェンソー1の側面図であって、一部を断面図で示した図である。本体ハウジング4の内部には2サイクルのエンジン50が収容され、本体ハウジング4の左側であって駆動軸54には、冷却ファン51が設けられる。冷却ファン51は、エンジン50の駆動軸(クランクシャフト)54にボルトによって固定されるものである。冷却ファン51はフライホイールとしての機能を果たすと共に、その一部にフィン51aが一体成形で構成される。冷却ファン51の周囲は、回転中心からの距離が徐々に大きくなる渦巻型冷却風路60が設置され、冷却風は矢印61に示すように渦巻型冷却風路60に案内され、エンジン50および点火コイル55を冷却する。冷却ファン51の外周側の一部には、点火コイル55によって点火用の高圧電気を発生させるための永久磁石(図示せず)が設けられる。点火コイル55で発生された高圧電気は、点火コイル55から伸びる高圧コードによって図示しない点火プラグに供給される。
【0028】
冷却ファン51によって生成される冷却風の大部分は、矢印61のようにエンジン50のシリンダ部に導かれ、シリンダ部の外周及びヘッドの周囲を流れた後に本体ハウジング4の外部に排出される。一方、冷却ファン51によって生成される冷却風の一部は、取入口59から矢印62の方向に導かれる。矢印62の空気流は、浄化室30に直接又は間接的に導かれるものであって、図示しない気化器を介してエンジン50によって吸入される。取入口59は、渦巻型冷却風路60において冷却ファン51の中心からの距離が最小となる位置付近に配置されている。尚、浄化室において気化器を介してエンジン50によって吸入されるための空気は、吸入通路を矢印62の方向に導かれる空気だけでなく、浄化室と浄化室カバー29の合わせ目付近に形成される隙間(後述)や、スロットル調整ネジ用空孔26、燃料調整用工具挿入孔25からも流入する。そのため、浄化室内に切粉や木屑が流入することがあるので、浄化室にはエアフィルタ(後述)が設けられる。
【0029】
図3は本発明の実施例に係るチェンソー1の背面図であって、一部を断面図で示した図である。冷却ファン51によって生成され、取入口59(
図2参照)から矢印62(
図2参照)の方向に導かれた空気流は、さらに矢印63の方向に流れて浄化室の内部に流入する。浄化室は後方側に開口面が形成され、開口面は浄化室カバー29によって覆われる。浄化室カバー29は、ネジ部を有するノブ28にて本体ハウジング4に固定され、ノブ28を手で回転させることによりドライバー等の工具を用いずに浄化室カバー29を本体ハウジング4に固定したり、取り外したりすることができる。また、浄化室カバー29の中央付近の右側には、後述する開口部32が露出する。
【0030】
本体ハウジング4の右側には、マフラーカバー5が設けられる。マフラーカバー5は、内部に配置される消音装置(図示せず)を覆い、作業者を熱から保護する役目を果たすものである。本体ハウジング4の左側には、冷却ファン51を覆う導風カバー8と、携帯型作業機の本体の外郭の一部を構成するファンカバー10が設けられる。マフラーカバー5やファンカバー10は、プラスチック等の高分子樹脂で形成すると好ましく、ネジやボルト等によって本体ハウジング4に固定される。
【0031】
図4は
図1のA−A部から見た断面図及び背面図である。浄化室30においては、図示しない気化器と吸入空気を浄化するためのエアフィルタ31が収容される。エアフィルタ31は、エンジンに吸入される空気をきれいにする働きをするもので、気化器の吸入口に取り付けられるものである。ここで、
図5〜
図7を用いてエアフィルタ31の形状と取り付け方法について説明する。
【0032】
図5は、エアフィルタ31の気化器56への着脱方法を示す側面図である。エアフィルタ31の前方側には円筒部31cが設けられ、矢印に示すようにエアフィルタ31の円筒部31cを接続管57の端部に挿入し、円筒部31cの内壁であって円周方向に180度離れた2ヶ所に形成された突出部31dを、接続管57の開口から軸方向に形成された取付溝58に嵌挿することによってエアフィルタ31を接続管57に取り付ける。取付溝58の形状は、
図5から理解できるように接続管57の外周側から見たときの形状が略L字状の溝である。エアフィルタ31が矢印の方向に押し込まれることによって取付溝58の軸方向溝に案内され、軸方向溝の先端部に当接したらエアフィルタ31をほんの少しだけ回転させることによって円周方向溝に案内され、突出部31dが円周方向溝の端部に当接する。
【0033】
エアフィルタ31は、表側ハウジング31aと裏側ハウジング31bを嵌合させて構成される。表側ハウジング31aと裏側ハウジング31bは離合させることもでき、内部に収容される後述するフィルタ部材38、39を清掃することも可能である。
【0034】
図6は、エアフィルタ31を裏側から見た斜視図である。エアフィルタ31の裏側ハウジング31b及び表側ハウジング31aは、例えばプラスチック等により形成される。裏側ハウジング31bの内側にはフィルタ部材39が配置される。フィルタ部材39は外部からの空気を濾過しながら通過させ、エンジン50の内部にゴミが進入することを防止する。エアフィルタ31の右側の下部には切り落とし部31eが形成され、エアフィルタ31の外径を斜めに切り落とすように形成して、切り落とし部31eと浄化室30の内壁との距離を大きくするように構成している。
【0035】
図7は、エアフィルタ31を表側から見た斜視図である。表側ハウジング31aには接続管57に嵌挿される円筒部31cが形成され、その周りには桟によって6区画に分割されたフィルタ部材38が配置される。円筒部31cの内壁の2ヶ所には突出部31dが形成される。フィルタ部材38は吸気時に外部からゴミが進入することを防止する。尚、表側ハウジング31aに取り付けられるフィルタ部材38は、中央に円筒形の穴が空いた形状であり、その穴の径は円筒部31cの外径に相当する。このようにエアフィルタ31は、軸方向と鉛直方向に広がった扁平の形状であり、その表側と裏側にそれぞれフィルタ部材38、39を配置するので容量を十分に確保でき、気化器56の空気流入方向に対して前後長が短くて済むので、エンジン工具のカバーの内部に配置する場合であっても少ない空間を有効に利用できる。
【0036】
再び
図4に戻って説明する。浄化室30において、エアフィルタ31より重力方向下側の水平方向の壁面33の右側端部に、大気と連通する開口部32が、浄化室30の右下の角部に設けられる。水平方向の壁面(水平面)33は左側から右側に向かって、即ち、開口部32に向かって下がるように傾斜して形成される。一方、鉛直方向の壁面(上下面)34が上から下方向に、即ち開口部32に向かって傾斜するように形成される。開口部32は重力方向下側に向かって開口するように配置され、開口部32においては、壁面34から重力方向下側に延在する延在部36bが形成される。さらに、開口部32の近傍において、開口部32から重力方向の略下側へ向かう延在部36aが形成される。延在部36aは浄化室カバー29の壁面にて画定される部分である。これら延在部36a、36bは、両側を覆う平行な壁として形成しても良いし、管路としても良い。この際、延在部36a、36bから下方に延長線37a、37bを引いた際に、これらと略直角に交差する様な壁面がないように構成される。
図4において、浄化室カバー29が延長線37a、37bによって挟まれる空間(領域)には、他の構成要素が交差しないことが理解できるであろう。
【0037】
このように浄化室30の形状とすることによって、チェンソー1の稼働時には次のような状況になる。チェンソー1においてエンジン50を始動すると、エンジン50はアイドリング回転となる。そして、作業者がスロットルトリガ7cを引くことによりエンジン50の回転数が上昇し、ソーチェーンの回転が開始する。この際、エンジン50の回転数はアイドリング回転数よりも数倍高くなるため、エアフィルタ31を介して吸引する空気の量が多くなる。この際、仮に何らかの理由により浄化室30の内部に木屑や粉塵などが入り込むことがあり得る。木屑や粉塵などが入り込む経路は、
図2の矢印62から
図3の矢印63を経由して入り込むのが主であるが、スロットル調整ネジ用空孔26、燃料調整用工具挿入孔25からと、開口部32からも流入し得る。この木屑や粉塵は大部分が開口部32の上方空間に滞留する。これは、浄化室30において、開口部32近傍の空間容積の比率が大きくなるように浄化室30の形状が決定されるので、その空間で乱流が起こりやすいからである。また、細かい粉塵を含んだ空気はエアフィルタ31にて濾過されるため、一部の木屑や粉塵はエアフィルタ31のフィルタ部材38、39の表面に付着する。
【0038】
次に、作業者が枝を切る等の1つの切断作業を終了してスロットルトリガ7cを戻すとエンジン50は再びアイドリング回転に戻る。エンジン50がアイドリング回転になると開口部32の上方の空間に滞留していた木屑や粉塵は、下方に落下する。また、フィルタ部材38、39に付着した木屑や粉塵のうち大きめのものは、重力の作用がエンジン50の吸引力よりも大きくなるため、エアフィルタ31から脱落して下方に落下する。ここで、落下した木屑や粉塵の一部は下方のほぼ水平な壁面33に留まることになる。この際、エンジン50から生ずる振動によって、壁面33は振動するため、壁面33上に落下した木屑や粉塵は壁面33の傾斜によって徐々に図中右方向、すなわち開口部32の方向に移動し、開口部32に達したら矢印K1のように下側に落下する。この際、開口部32から重力方向の下側に向かう開口部32の延長線部分には、その落下を阻害するような交差する壁面がないため、スムーズに排出させることができる。
【0039】
次に、作業者が次の枝を切る等の切断作業のためスロットルトリガ7cを再び引くとエンジン50の回転数が再び上昇するため、新たに浄化室30に入り込んだり、開口部32から排出されなかった木屑や粉塵は再び吸引力によって舞い上げられ、上述と同様に開口部32の上方空間に滞留する。しかしながら、次にエンジン50がアイドリング回転数に低下した際に、それらの木屑や粉塵が開口部32のほぼ上側に落下するので、開口部32を通して効率的に木屑や粉塵を外部に排出することができる。
【0040】
図8は、浄化室30の詳細形状を説明するための図である。浄化室30は後方から図のような断面で見ると略四角形の断面を有し、開口部32は、浄化室における駆動軸方向において、冷却ファンより最も遠い壁面34と略接する角部に配置した。この角部は駆動軸方向(左右方向)において冷却ファン51より遠い位置となる。前述したように、開口部32の近傍の壁面(水平面)33は開口部32に向かって下がるように傾斜させて形成される。本実施例では、水平線よりもθ
Hだけ傾斜するように形成した。また、開口部32から上方に延びる鉛直方向の壁面(上下面)34は、鉛直線よりθ
Vだけ傾斜するように形成される。この傾斜の方向も、木屑や粉塵を排出させるために重要な意味を成すものであり、壁面34が下に行くに従って、壁面が右側に位置するように、即ち水平方向で見てエアフィルタ31の中心点よりも離れるように形成される。さらに、開口部32の近傍の各壁面33、34においては、段差や凹凸がないように形成した。開口部32に接続される壁面33と壁面34の成す角度が90度未満となる。このように構成したため、木屑や粉塵が滞ることなく開口部32に移動し易く、効率的に木屑や粉塵を浄化室30外部に排出することができる。
【0041】
浄化室30において、点線35で囲まれる部分のように、開口部32の近傍の空間容積の比率が大きくなるよう形成される。開口部32は重力方向下側に向かって開口しているので、正立時においては、重力の作用を特に効果的に得ることができ、効率よく木屑を排出することができる。また、壁面33において開口部32が最も重力方向下側となるような傾斜を設けたので、重力の作用およびエンジンの振動によって、より効率よく木屑を開口部32に移動させることができ、効率的に木屑を排出することができる。また、鋸断作業において、木屑はガイドバー2に取り付けられた図示しないソーチェーンによって行われるので、チェンソー1においては、ガイドバー2側から特に木屑が多く飛散するが、延在部36a、36bによって、木屑が延在部36a、36bを通って開口部32に接近することを抑制することができる。
【0042】
浄化室30において、さらに、壁面33において、開口部32の近傍に凹凸や段差がないように形成されるので、さらに、開口部32から重力方向下側に向かう延長線37a、37bにおいて、開口部32の近傍に延長線37a、37bに略直角に交差するような壁面がないように構成されるので、エンジンの回転数が上昇するなどして吸引力が増加した場合においても、開口部32から排出された木屑が開口部32の近傍に滞ることがない。増してや開口部32より排出された木屑や粉塵などが開口部32周辺の壁面に堆積することがないので、排出した木屑が再び浄化室30に吸引されることを抑制することができる。
【0043】
開口部32は大気に直接開放されるので、エンジン停止によって冷却風が停止したような場合でも、エンジン本体を収容するエンジンケース16内部から自然対流などによる高温気流が流入するようなことがなく、浄化室30および気化器のエンジン停止時における温度上昇を抑制することができる。さらに、エンジンの回転数が高く吸引力が強い時など、万が一、木屑が開口部32から浄化室30に流入した場合においても、開口部32近傍の空間容積の比率を大きくしてあるので、浄化室30内において開口部32からエアフィルタ31までの距離を比較的長くできるため、直ちにエアフィルタ31に付着することを抑制することができる。
【0044】
図9は、浄化室30を上から見た図であり、本体ハウジング4と浄化室カバー29を断面で示した図である。浄化室30に入る空気の大部分は、
図3の矢印63から矢印64の方向に流れる。図からわかるように開口部32は、矢印64の流入口と離れた位置に位置する。また、開口部32は、浄化室カバー29を取り外した後の本体ハウジング4の角部(
図8の壁面33と34の交わる付近)であって、浄化室カバー29と本体ハウジング4に接するように配置される。本実施例においては、開口部32の形状は上から見た際に略四角形であるが、この形状は四角形にだけに限られずに、床面に落ちた木屑や粉塵を排出しやすいような形状であればその他の形状であっても良い。
【0045】
開口部32付近の浄化室カバー29の内壁部分29gは、開口部32の方向に下がるように斜めに形成される。従って、エンジン50の高回転時にエアフィルタ31に付着し、エンジン50がアイドリング状に戻った際に浄化室30の床面に落下した木屑や粉塵は、その床面が開口部32に向かって下がるように斜めに形成されているため、開口部32の方向に移動する。特に、エンジン50の振動によって床面も振動するため、木屑や粉塵が床面で揺らされながら開口部32に容易に移動する。
【0046】
図10は、本発明の実施例に係るチェンソー1を横向き姿勢にした状態を示す背面図であり、一部を
図1のA−A部の断面図で示した図である。チェンソー1においては、
図10に示すようにチェンソー1の左側面(ファンカバー10)が上になるように90度右向きに横倒しさせて、ソーチェーンが水平面で回転するようにして切断作業を行うことがある。この際、冷却ファン51、ファンカバー10、フロントハンドル6の垂直部分6aが本体ハウジング4に対して重力方向上側に位置することになり、本体ハウジング4に対してガイドバー2は重力方向下側に位置することになる。このような作業姿勢は、伐木作業において正立姿勢と同様に使用頻度が高い姿勢である。
【0047】
浄化室30において開口部32が駆動軸方向で最も冷却ファン51から遠い側に設けられているので、この横向き使用時の姿勢においても開口部32が浄化室30において重力方向の最下端に位置することになる。これは、壁面34が、
図8に示したように正立時に鉛直線よりθ
Vだけ傾斜するように形成したので、チェンソー1を横向き姿勢にした場合は、この壁面34が開口部32に向かって重力方向に下がるようになるので、木屑や粉塵を排出させる上で大きい効果を奏する。
【0048】
このように、ガイドバー2を水平にした横向き姿勢においても、重力の作用を効果的に利用しながら矢印K2のごとく木屑や粉塵を開口部32から効率よく浄化室30の外部に排出することができる。さらに、壁面34に傾斜を設けているので、重力の作用およびエンジンの振動によって、より効率よく矢印Kにごとく木屑を移動させることができ、効率的に木屑を排出することができる。
【0049】
次に
図11を用いて浄化室カバー29の形状を説明する。浄化室カバー29は例えばプラスチック等の高分子樹脂の一体成形で製造されるもので、その上側内壁が浄化室30の開口部を覆うカバー部29aとなり、その下側内壁がエンジン50のシリンダヘッド部を覆うカバー部29bとなり、浄化室30がエンジン50のシリンダおよび点火プラグから遮断される。カバー部29bは、点火プラグに装着されるプラグキャップ(ともに図示せず)を覆うものである。
【0050】
浄化室30の開口部32が位置する付近には、浄化室カバー29に切り欠き部29eが形成されてこの切り欠き部29eが開口部32の輪郭の一部を形成する。また、切り欠き部29eの後方に接続される内壁部分29gは、後方から前方に至るに従って斜めに緩やかに傾斜するように形成される。さらに、内壁部分29hは、
図8の壁面33と同じ高さとなるように接続され、壁面33と同様に左側から右側に向かって、即ち、開口部32に向かって下がるように傾斜して形成される。従って、内壁部分29g又は29hに落下した木屑や粉塵は、エンジン50の振動によって容易に開口部32にまで導かれて、外部に排出される。
【0051】
カバー部29bの左右の側面29c、29dは略平行に形成され、特に側面29cは延在部36aを形成する。浄化室カバー29の中央付近にはネジ穴29fが形成され、このネジ穴29fにノブ28を通すことによって浄化室カバー29が本体ハウジング4に固定される。
【0052】
以上のように構成することにより、木屑や粉塵などが開口部32より重力方向上側にあるエアフィルタ31まで到達することが少なく、エアフィルタ31の目詰まりを進行させることが少ない。また、浄化室30と大気とを連通させているため、エンジン50および冷却風停止時にエンジン50の熱による高温の自然対流による上昇気流が浄化室30に流入することが少なく、浄化室30内に気化器56を収容する場合においても、気化器56の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本発明の実施例としてチェンソーを説明したが、本発明はチェンソーに限定されず、エンジンの駆動軸の一端に冷却ファンを有し、気化器と大気の間にエアフィルタとエアフィルタを収容する浄化室を有する携帯型作業機の浄化室に適用可能である。
【0054】
また、本実施例では開口部32において冷却ファンから最も遠い端部から延在する壁面を設けたが、開口部の全ての端部から延在する壁面を設け、開口部を筒状に構成しても良い。また、本実施例では浄化室の重力方向下側の壁面において、壁面の一部が重力方向上側から重力方向下側に向かって開口部に向かう傾斜状に形成されるが段差状に形成しても良い。さらに、本実施例では浄化室の冷却ファンから遠い側の壁面において、壁面の一部が冷却ファン側から除除に冷却ファンから遠ざかって開口部に向かうような傾斜状に形成されるが段差状に形成しても良い。
【0055】
また、本実施例では開口部の延長上に一切の壁面を配置しなかったが、略直角に交差しなければ、たとえば開口部の延長線に対して45度程度の壁面ならば配置しても構わない。さらに、エンジン回転数が高く吸引力が強い状態においても、開口部を介してエンジンの吸引力が及ばない程度に開口部から十分離れているならば、略直角となる壁面が配置されても良い。