(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自由表面の表面粗さRaが1μm以下になるように、複数の結晶性ガラス小体を軟化変形させて互いに融着させることを特徴とする請求項12に記載の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法。
ガラスカレットとして、窓板ガラスのガラスカレット、ビンガラスのガラスカレット、ディスプレイ用ガラスのガラスカレットのいずれかを含むことを特徴とする請求項12に記載の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、建築物の低価格化の要求に伴い、天然大理石様結晶化ガラスの低価格化も要求されている。天然大理石様結晶化ガラスの低価格化の方法として、原料コストや溶融コストの低下、焼成温度の低温化、表面粗さや平坦度の向上が効果的である。具体的に言えば、結晶性ガラスのガラス原料として、窓板ガラス、ビンガラス、ディスプレイ用ガラス等の異種ガラスカレット、つまり廉価な異種ガラスカレットの使用比率を高めると、原料コストと溶融コストを低下することができる。また、結晶性ガラスの焼成温度を1100℃以下にすれば、燃料費を抑制できると共に、耐火性容器を長寿命化することができる。また、焼成工程で結晶性ガラスから微細な結晶を析出させると、表面粗さや平坦度が向上し、研磨効率を高めることができる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の天然大理石様結晶化ガラスは、焼成温度が高いため、低価格化が困難である。また、特許文献1に記載の天然大理石様結晶化ガラスは、添加可能な成分が限られているため、ガラス原料として、異種ガラスカレットの使用比率を高めることが困難であり、結果として、低価格化が困難である。
【0009】
また、特許文献2に記載の天然大理石様結晶化ガラスは、低温で焼成可能であるが、異種結晶が析出し易く、また表面の結晶が粗大化し易いため、低価格化が困難である。
【0010】
そこで、本発明は、原料コストや溶融コストを低下できると共に、低温で焼成可能であり、しかも焼成後の表面精度を向上し得る天然大理石様結晶化ガラスの製造方法を創案することにより、安価な天然大理石様結晶化ガラス及び天然大理石様結晶化ガラス物品を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々の検討を行った結果、SiO
2、CaO、ZnO、Li
2O、MgO、SrO及びZrO
2の含有量を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、組成として、SiO
2を45質量%以上、CaOを7.5質量%以上、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していることを特徴とする。
【0012】
組成として、SiO
2を45質量%以上、CaOを7.5質量%以上、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満添加すると、結晶性ガラスの流動性が向上し、具体的には1100℃以下で焼成し易くなり、また微細なβ−ウォラストナイト結晶が析出し易くなる。また、本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上含むため、結晶性ガラスの溶解性や流動性が良好であり、具体的には1100℃以下で焼成し易くなり、また化学的耐久性が良好である。また、このようにすれば、窓板ガラス、ビンガラス、ディスプレイ用ガラス等の異種ガラスカレット、つまり廉価な異種ガラスカレットの使用比率を高めることが可能になり、原料コストと溶融コストを低下することができる。なお、ガラスカレットの使用比率が高い程、ガラスバッチの溶解性が向上して、溶融コストが低下する。したがって、本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、上記のように成分組成が規制されているため、低価格化の要請を満たすことができる。
【0013】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、組成として、SiO
2を45質量%以上
、且つ75質量%以下、CaOを7.5質量%以上
、且つ25質量%以下、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li
2Oを0.05質量%以上
、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上
、且つ9質量%以下含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していること
が好ましい。
【0014】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、組成として、SiO
2を45質量%以上
、且つ75質量%以下、CaOを7.5質量%以上
、且つ25質量%以下、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、
Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、Na
2O+K
2Oを3.8質量%以上
、且つ10質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上
、且つ9質量%以下含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していること
が好ましい。
【0015】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、CaO+ZnO+Li
2O(CaO、ZnO、及びLi
2Oの合量)の含有量が21〜31質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、質量%で、SiO
2 45〜75%、Al
2O
3 1〜25%、CaO 5〜25%、ZnO 0.05〜10%、BaO 1〜15%、MgO+SrO+ZrO
2 0.1〜9%、Li
2O
0.05〜0.99%、Na
2O 1〜15%、K
2O 0〜7%、B
2O
3 0〜5%、CeO
2 0〜0.5%、SO
3 0〜0.5%、Sb
2O
3 0〜1% As
2O
3 0〜1%を含有することが好ましい。
【0017】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、SiO
2+Al
2O
3+CaO+ZnO+Li
2O+BaO+Na
2O+K
2O+B
2O
3+Sb
2O
3+CeO
2+SO
3+Fe
2O
3+NiO+CoO(SiO
2、Al
2O
3、CaO、ZnO、Li
2O、BaO、Na
2O、K
2O、B
2O
3、Sb
2O
3、CeO
2、SO
3、Fe
2O
3、NiO、及びCoOの合量)の含有量が90〜99.8質量%未満であることが好ましい。
【0018】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、Fe
2O
3の含有量が2000ppm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品は、表面から内部に向かって針状のβ−ウォラストナイト結晶が析出した複数の結晶化ガラス小領域が互いに融着してなる天然大理石様結晶化ガラス物品であって、
組成として、SiO
2を45質量%以上、CaOを7.5質量%以上、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上含むことを特徴とする。このようにすれば、天然大理石様結晶化ガラス物品の低価格化の要請を満たすことができる。
【0020】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品は、表面から内部に向かって針状のβ−ウォラストナイト結晶が析出した複数の結晶化ガラス小領域が互いに融着してなる天然大理石様結晶化ガラス物品であって、組成として、SiO
2を45質量%以上
、且つ75質量%以下、CaOを7.5質量%以上
、且つ25質量%以下、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li
2Oを0.05質量%以上
、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上
、且つ9質量%以下含むこと
が好ましい。
【0021】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品は、表面から内部に向かって針状のβ−ウォラストナイト結晶が析出した複数の結晶化ガラス小領域が互いに融着してなる天然大理石様結晶化ガラス物品であって、組成として、SiO
2を45質量%以上
、且つ75質量%以下、CaOを7.5質量%以上
、且つ25質量%以下、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、
Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、Na
2O+K
2Oを3.8質量%以上
、且つ10質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上
、且つ9質量%以下含むこと
が好ましい。
【0022】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品は、表面のβ−ウォラストナイト結晶の最大粒径が800μm以下であることが好ましい。なお、表面のβ−ウォラストナイト結晶の最大粒径は、SEM等で測定可能である。
【0023】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法は、組成として、SiO
2を45質量%以上、CaOを7.5質量%以上、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上含む複数の結晶性ガラス小体を耐火性容器内に収容した後、結晶性ガラス小体の軟化点より高い温度で熱処理することにより、結晶性ガラス小体の表面から主結晶として針状のβ−ウォラストナイト結晶を析出させながら、複数の結晶性ガラス小体を軟化変形させて互いに融着させることが好ましい。このようにすれば、天然大理石様結晶化ガラス物品を安価に作製することができる。
【0024】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法は、自由表面の表面粗さRaが1μm以下になるように、複数の結晶性ガラス小体を軟化変形させて互いに融着させることが好ましい。ここで、「表面粗さRa」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
【0025】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法は、結晶性ガラス小体のガラス原料として、MgO、SrO、ZrO
2のいずれかを含むガラスカレットを用いることが好ましい。なお、ガラスカレットとして、MgO、SrO、ZrO
2のいずれかを含む限り、種々のガラスカレットが使用可能である。
【0026】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法は、ガラスカレットとして、窓板ガラスのガラスカレット、ビンガラスのガラスカレット、ディスプレイ用ガラスのガラスカレットのいずれかを含むことが好ましい。
【0027】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法は、10
4.0Pa・sにおけるガラスカレットの温度をT
1、10
4.0Pa・sにおける結晶性ガラスの温度をT
2としたとき、|T
1−T
2|≦200℃の関係を満たすガラスカレットを用いることが好ましい。ここで、T
2は、ガラスカレットを用いず、固体結晶原料のみで結晶性ガラスを作製した場合、つまりオールバッチで結晶性ガラスを作製した場合に得られる値である(以下同様)。また、「10
4.0Pa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法等で測定可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、組成として、SiO
2を45質量%以上、CaOを7.5質量%以上、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していることを特徴とする。上記のように、各成分の含有量を限定した理由を下記に示す。
【0030】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスにおいて、SiO
2は、β−ウォラストナイト結晶を構成する成分であり、その含有量は45%以上、45〜75%、特に50〜70%が好ましい。SiO
2の含有量が45%より少ないと、成形時に結晶性ガラスが失透し易くなる。
【0031】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスにおいて、CaOは、β−ウォラストナイト結晶を構成する成分であり、その含有量は7.5%以上、7.5〜25%、10〜23%、15〜20%、特に16〜19%が好ましい。CaOの含有量が7.5%より少ないと、β−ウォラストナイト結晶の析出量が少なくなり過ぎて、機械的強度が低下し、建材に使用する場合、耐久性が低下し易くなり、また粗大な結晶が析出して、表面精度が低下し易くなる。
【0032】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスにおいて、ZnOは、結晶化特性を変化させずに結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量は0.05
〜6%未満、2〜
6%未満、特に4〜
6%未満が好ましい。ZnOの含有量が0.05%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。
【0033】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスにおいて、MgO+SrO+ZrO
2は、結晶性ガラスの溶解性や流動性を高める成分であり、また化学的耐久性を高める成分であり、その含有量は0.1%以上、0.1〜9%、0.3〜5%、特に0.5〜2%が好ましい。MgO+SrO+ZrO
2の含有量が0.1%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。さらに、MgO+SrO+ZrO
2の含有量が0.1%より少ないと、異種ガラスカレットの使用比率を高めることが困難になり、結果として、原料コストと溶融コストの高騰を招く。なお、MgO+SrO+ZrO
2の含有量が9%より多いと、焼成時に異種結晶又は粗大結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなり、また所望の表面精度を確保し難くなる。
【0034】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、組成として、組成として、SiO
2を45質量%以上
、且つ75質量%以下、CaOを7.5質量%以上
、且つ25質量%以下、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li
2Oを0.05質量%以上
、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上
、且つ9質量%以下含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していること含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していること
が好ましい。
【0035】
SiO
2、CaO、ZnO、MgO+SrO+ZrO
2の含有量を限定した理由は、上記の通りである。Li
2Oは、焼成工程で結晶化速度を速める成分であり、また結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量は
0.05〜1%未満、0.05〜0.99%、0.1〜0.95%、特に0.2〜0.9%が好ましい。Li
2Oの含有量が0.05%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。一方、Li
2Oの含有量が1%以上であると、熱膨張係数が不当に高くなり、また化学的耐久性が低下し易くなり、更には粘性が不当に低下するおそれがある。なお、粘性が低下し過ぎると、結晶性ガラスの流動性が向上するが、焼成工程後の結晶化ガラスに泡が残留し易くなる。
【0036】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、組成として、SiO
2を45質量%以上
、且つ75質量%以下、CaOを7.5質量%以上
、且つ25質量%以下、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Na
2O+K
2Oを3.8質量%以上
、且つ10質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上
、且つ9質量%以下含み、主結晶としてβ−ウォラストナイト結晶が析出していること
が好ましい。
【0037】
SiO
2、CaO、ZnO、MgO+SrO+ZrO
2の含有量を限定した理由は、上記の通りである。Na
2O+K
2Oは、焼成工程で結晶化速度を速める成分であり、また結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量は3.8〜10%未満、4〜8%、特に4.1〜6%が好ましい。Na
2O+K
2Oの含有量が3.8%より少ないと、結晶性ガラスの溶融温度が上昇すると共に、粘度が上昇して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなる。一方、Na
2O+K
2Oの含有量が10%以上であると、熱膨張係数が不当に高くなり、建材用途に使用し難くなる。
【0038】
本発明の天然大理石様結晶化ガラスは、質量%で、SiO
2 45〜75%、Al
2O
3 1〜25%、CaO 7.5〜25%、ZnO 0.05〜
6%未満、Li
2O
0.05〜0.99%、MgO+SrO+ZrO
2 0.1〜9%、BaO 1〜15%、Na
2O 1〜15%、K
2O 0〜7%、B
2O
3 0〜5%、CeO
2 0〜0.5%、SO
3 0〜0.5%、Sb
2O
3 0〜1% As
2O
3 0〜1%を含有することが好ましい。本発明の天然大理石様結晶化ガラスにおいて、上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に説明する。
【0039】
SiO
2は、β−ウォラストナイト結晶を構成する成分であり、その含有量は45〜75%、特に50〜70%が好ましい。SiO
2の含有量が45%より少ないと、成形時に結晶性ガラスが失透し易くなる。一方、SiO
2の含有量が75%より多いと、結晶性ガラスの溶融温度が上昇すると共に、粘度が上昇して結晶性ガラスの流動性が低下し易くなる。
【0040】
Al
2O
3は、失透を抑制する成分であり、その含有量は1〜25%、特に3〜15%が好ましい。Al
2O
3の含有量が1%より少ないと、耐失透性が低下し易くなり、化学的耐久性も低下し易くなる。一方、Al
2O
3の含有量が25%より多いと、結晶性ガラスの溶解性が低下し易くなり、また異種結晶(アノーサイト)が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなる。
【0041】
CaOは、β−ウォラストナイト結晶を構成する成分であり、その含有量は7.5〜25%、10〜23%、15〜20%、特に16〜19%が好ましい。CaOの含有量が7.5%より少ないと、β−ウォラストナイト結晶の析出量が少なくなり過ぎて、機械的強度が低下し、建材に使用する場合、耐久性が低下し易くなり、また粗大な結晶が析出して、表面精度が低下し易くなる。一方、CaOの含有量が25%より多いと、耐失透性が低下し易くなるため、結晶性ガラスの成形が困難になり、またβ−ウォラストナイト結晶の析出量が多くなり過ぎて、表面精度が低下し易くなる。
【0042】
ZnOは、結晶化特性を変化させずに結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量は0.05〜
6%未満、2〜
6%未満、特に4〜
6%未満が好ましい。ZnOの含有量が0.05%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。一方、ZnOの含有量が
6%以上になると、β−ウォラストナイト結晶が析出し難くなる。なお、ZnOは、Li
2Oと同様の効果を有する成分である。
【0043】
Li
2Oは、焼成工程で結晶化速度を速める成分であり、また結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量
は0.05〜0.99%、0.1〜0.95%、特に0.2〜0.9%が好ましい。Li
2Oの含有量が1%以上であると、熱膨張係数が不当に高くなり、また化学的耐久性が低下し易くなり、更には粘性が不当に低下するおそれがある。なお、粘性が低下し過ぎると、結晶性ガラスの流動性が向上するが、焼成工程後の結晶化ガラスに泡が残留し易くなる。また、Li
2Oの含有量が0.05%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。
【0044】
CaO+ZnO+Li
2Oの含有量は21〜31%、21.5〜28%、特に22〜27%が好ましい。MgO+SrO+ZrO
2の含有量が多い場合、結晶成長を阻害する粗大結晶が析出し易くなるが、CaO+ZnO+Li
2Oを上記範囲に規制すれば、このような事態を防止し易くなる。なお、質量比(CaO+ZnO+Li
2O)/(MgO+SrO+ZrO
2)の値は3.0〜100、5〜50、特に8〜30が好ましい。この値が小さ過ぎると、焼成時に異種結晶又は粗大結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなり、また所望の表面精度を確保し難くなる。一方、この値が大き過ぎると、異種ガラスカレットの使用比率を高めることが困難になり、結果として、原料コストと溶融コストの高騰を招く。
【0045】
MgO+SrO+ZrO
2は、結晶性ガラスの溶解性や流動性を高める成分であり、また化学的耐久性を高める成分であり、その含有量は0.1〜9%、0.3〜5%、特に0.5〜2%が好ましい。MgO+SrO+ZrO
2の含有量が0.1%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。さらに、MgO+SrO+ZrO
2の含有量が0.1%より少ないと、異種ガラスカレットの使用比率を高めることが困難になり、結果として、原料コストと溶融コストの高騰を招く。一方、MgO+SrO+ZrO
2の含有量が9%より多いと、焼成時に異種結晶又は粗大結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなり、また所望の表面精度を確保し難くなる。
【0046】
MgOは、結晶性ガラスの溶解性や流動性を高める成分であり、その含有量は0〜2%、特に0.1〜1.5%が好ましい。MgOの含有量が2%より多いと、焼成時にMg系の異種結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなり、また所望の表面精度を確保し難くなる。なお、MgOは、窓板ガラス、ビンガラス、液晶ディスプレイ用ガラス等に含まれる成分である。このため、MgOの含有量が0.1%以上であると、ガラス原料として、窓板ガラス、ビンガラス、液晶ディスプレイ用ガラス等のガラスカレットを使用し易くなる。
【0047】
SrOは、結晶性ガラスの溶解性や流動性を高める成分であり、その含有量は0〜5%、特に0.1〜2.5%が好ましい。SrOの含有量が5%より多いと、焼成時にSr系の異種結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し、また所望の表面精度を確保し難くなる。なお、SrOは、液晶ディスプレイ用ガラス、プラズマディスプレイ用ガラス等に含まれる成分である。このため、SrOの含有量が0.1%以上であると、ガラス原料として、液晶ディスプレイ用ガラス、プラズマディスプレイ用ガラス等のガラスカレットを使用し易くなる。
【0048】
ZrO
2は、化学耐久性を高める成分であり、その含有量は0〜2%、特に0.1〜1%が好ましい。ZrO
2の含有量が2%より多いと、結晶成長を阻害する粗大結晶が析出し易くなるため、結晶性ガラスの流動性が低下したり、所望の表面精度を確保し難くなったり、曲げ加工し難くなる。なお、ZrO
2は、プラズマディスプレイ用ガラス等に含まれる成分である。このため、ZrO
2の含有量が0.1%以上であると、ガラス原料として、プラズマディスプレイ用ガラス等のガラスカレットを使用し易くなる。
【0049】
BaOは、結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量は0〜15%、2〜15%、特に3〜14%が好ましい。BaOの含有量が20%より多いと、β−ウォラストナイト結晶が析出し難くなる。なお、BaOの含有量を1%以上添加すれば、粘性が低下して、所望の表面平滑性を確保し易くなる。
【0050】
Na
2Oは、粘性を低下させる成分であり、その含有量は1〜15%、特に1〜10%が好ましい。Na
2Oの含有量が1%より少ないと、粘性が増大して結晶性ガラスの溶解性や流動性が低下し易くなると共に、板ガラス、ビンガラス等の異種ガラスカレットを使用し難くなる。一方、Na
2Oの含有量が15%より多いと、化学的耐久性が低下し易くなり、また熱膨張係数が不当に高くなるため、建材用途に使用し難くなる。
【0051】
K
2Oは、粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜7%、0〜5%、特に0〜1.9%が好ましい。K
2Oの含有量が7%より多いと、化学的耐久性が低下し易くなり、またβ−ウォラストナイト結晶が粗大化し易くなり、所望の表面精度を確保し難くなる。
【0052】
Na
2O+K
2Oの含有量は3.8〜10%
未満、4〜8%、特に4.1〜6%が好ましい。Na
2O+K
2Oの含有量が3.8%より少ないと、結晶性ガラスの溶融温度が上昇すると共に、粘度が上昇して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなる。一方、Na
2O+K
2Oの含有量が10%
以上になると、熱膨張係数が不当に高くなり、建材用途に使用し難くなる。なお、組成中にLi
2Oを0.05%以上含む場合は、Na
2O+K
2Oの含有量の下限範囲を2%以上とすることができる。
【0053】
ガラスバッチ中のガラスカレットの比率が高い場合、質量比K
2O/Na
2Oの値は小さいことが好ましく、具体的には5.0以下、3.0以下、特に1.0以下が好ましい。
【0054】
B
2O
3は、結晶化前後で熱膨張係数を変化させずに結晶性ガラスの流動性を高める成分であり、その含有量は0〜5%、0〜3%、特に0〜1%が好ましい。B
2O
3の含有量が5%より多いと、焼成時にホウ酸系の異種結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなる。
【0055】
As
2O
3は、清澄剤として機能する成分であると共に、Fe
2+による青色着色を抑制する成分であり、その含有量は0〜1%、特に0〜0.5%が好ましい。As
2O
3の含有量が1%より多いと、環境負荷が大きくなる。
【0056】
Sb
2O
3は、清澄剤として機能する成分であると共に、Fe
2+による青色着色を抑制する成分であり、その含有量は0〜1%、特に0〜0.5%が好ましい。Sb
2O
3の含有量が1%より多いと、環境負荷が大きくなる。
【0057】
なお、As
2O
3+Sb
2O
3(As
2O
3とSb
2O
3の合量)の含有量は0〜1%、特に0〜0.5%が好ましい。As
2O
3+Sb
2O
3の含有量が1%より多いと、環境負荷が大きくなる。
【0058】
CeO
2は、清澄剤であるAs
2O
3+Sb
2O
3の含有量が0.1%以下の場合に、結晶化ガラスの白色度の低下を抑制する成分である。また、CeO
2は、還元雰囲気の溶融において、Fe
2O
3中のFe
2+による青色着色を抑制する成分であり、特にSO
3(芒硝)と共存する場合にFe
2+による青色着色を顕著に抑制する成分である。CeO
2の含有量は0〜0.5%、特に0.05〜0.3%が好ましい。なお、組成中にCeO
2を含む場合、ガラス原料として研磨スラッジを使用し易くなる。
【0059】
SO
3は、清澄剤として機能する成分であり、その含有量は0〜0.5%、特に0.05〜0.3%が好ましい。SO
3の含有量が0.5%より多いと、溶融ガラス中に気泡が発生し過ぎて、結晶化ガラス中に気泡が残留し易くなることに加えて、焼成時に硫化物系の異種結晶が析出して、結晶性ガラスの流動性が低下し易くなる。
【0060】
上記成分以外にも、例えば以下の成分を添加してもよい。
【0061】
Fe
2O
3は、着色成分であり、また不純物として混入する成分であり、その含有量は2000ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、特に500ppm以下が好ましい。Fe
2O
3の含有量が2000ppmより多いと、結晶化ガラスの白色度が低下して、結晶化ガラスの拡散反射率が低下し易くなる。
【0062】
NiOは、着色成分であり、その含有量は1000ppm以下、800ppm以下、特に500ppm以下が好ましい。NiOの含有量が1000ppmより多いと、結晶化ガラスの白色度が低下して、結晶化ガラスの拡散反射率が低下し易くなる。
【0063】
CoOは、着色成分であり、その含有量は1000ppm以下、800ppm以下、特に500ppm以下が好ましい。CoOの含有量が1000ppmより多いと、結晶化ガラスの白色度が低下して、結晶化ガラスの拡散反射率が低下し易くなる。
【0064】
SiO
2+Al
2O
3+CaO+Li
2O+ZnO+B
2O
3+BaO+Na
2O+K
2O+Sb
2O
3+CeO
2+SO
3+Fe
2O
3+NiO+CoOの含有量は90〜99.8%未満、特に93〜99%が好ましい。SiO
2+Al
2O
3+CaO+Li
2O+ZnO+B
2O
3+BaO+Na
2O+K
2O+Sb
2O
3+CeO
2+SO
3+Fe
2O
3+NiO+CoOの含有量が90%より少ないと、β−ウォラストナイト結晶が析出し難くなったり、表面のβ−ウォラストナイト結晶が粗大化し易くなる。一方、SiO
2+Al
2O
3+CaO+Li
2O+ZnO+B
2O
3+BaO+Na
2O+K
2O+Sb
2O
3+CeO
2+SO
3+Fe
2O
3+NiO+CoOの含有量が99.8%以上であると、ガラス原料として、異種ガラスカレットを使用し難くなる。
【0065】
次に本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品について説明する。なお、本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の成分組成は、本発明の天然大理石様結晶化ガラスの成分組成と同様である。ここでは、便宜上、成分組成に関する説明を省略する。
【0066】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品において、表面のβ−ウォラストナイト結晶の最大粒径は800μm以下、特に500μm以下が好ましい。表面のβ−ウォラストナイト結晶の最大粒径が800μmより大きいと、結晶性ガラスの流動性が阻害されると共に、平滑な自由表面になり難いため、研磨効率を高め難くなる。結果として、表面のβ−ウォラストナイト結晶の最大粒径が800μmより大きいと、結晶化ガラス物品の製造コストが高騰し易くなる。
【0067】
次に本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法について説明する。本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法は、組成として、SiO
2を45質量%以上、CaOを7.5質量%以上、ZnOを0.05質量%以上
、且つ6質量%未満、Li2Oを0.05質量%以上、且つ1質量%未満、MgO+SrO+ZrO
2を0.1質量%以上含む複数の結晶性ガラス小体を耐火性容器内に収容した後、結晶性ガラス小体の軟化点より高い温度で熱処理することにより、結晶性ガラス小体の表面から主結晶として針状のβ−ウォラストナイト結晶を析出させながら、複数の結晶性ガラス小体を軟化変形させて互いに融着させることを特徴とする。なお、本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法における結晶性ガラス小体の成分組成は、本発明の天然大理石様結晶化ガラスの成分組成と同様である。ここでは、便宜上、成分組成に関する説明を省略する。
【0068】
以下のようにして、結晶性ガラス小体を作製することができる。まず上記の組成になるようにガラス原料を調合し、ガラスバッチを作製する。次に、ガラスバッチを溶融炉に投入し、ガラスバッチを溶融する。続いて、得られた溶融ガラスを水砕等することにより、結晶性ガラス小体を作製する。なお、ガラス原料として、例えば珪砂、長石、スポジュメン、ガラスカレットを使用することができる。
【0069】
さらに、複数の結晶性ガラス小体を耐火性容器(型枠)内に集積した後、結晶性ガラス小体の軟化点より高い温度で熱処理すると、各結晶性ガラス小体の表面から内部に向かって針状のβ−ウォラストナイトが析出すると共に、各結晶性ガラス小体が融着一体化して、天然大理石様結晶化ガラス物品を得ることができる。
【0070】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法において、自由表面の表面粗さRaが1μm以下、特に0.8μm以下になるように、複数の結晶性ガラス小体を軟化変形させて互いに融着させることが好ましい。天然大理石様結晶化ガラス物品は、通常、研磨、サンドブラスト、エッチング等により表面処理されている。特に、結晶化ガラスの表面を鏡面研磨する場合、自由表面の表面粗さRaが重要になり、自由表面の表面粗さRaが1μmより大きいと、研磨効率が低下し易くなり、結晶化ガラス物品の製造コストが高騰し易くなる。
【0071】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法において、焼成時に結晶性ガラス小体中の非晶質ガラスの含有量が50〜95質量%になるように調整することが好ましい。このようにすれば、結晶性ガラス小体の表面から主結晶として針状のβ−ウォラストナイト結晶を析出させながら、結晶性ガラス小体を軟化変形させ易くなる。非晶質ガラスの含有量が50質量%より少ないと、流動に寄与しない結晶成分の量が多くなり、流動不足が発生し易くなる。一方、非晶質ガラスの含有量が95質量%より多いと、β−ウォラストナイト結晶の析出量が少なくなり、焼成時に粒界に存在する泡が上昇して、結晶化ガラス物品中に泡が残存し易くなる。
【0072】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法において、結晶性ガラス小体のガラス原料として、MgO、SrO、ZrO
2のいずれかを含むガラスカレットを用いることが好ましい。ガラス原料として、MgO、SrO、ZrO
2のいずれかを含むガラスカレットを使用すれば、原料コストと溶融コストを低下することができる。但し、ガラスカレット中のMgO、SrO、ZrO
2の含有量は、カレットの種類により変化する。
【0073】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法において、ガラスカレットとして、窓板ガラスのガラスカレット、ビンガラスのガラスカレット、ディスプレイ用ガラスのガラスカレットのいずれかを含むことが好ましい。これらのガラスカレットは、流通量が多いため、価格が安く、またリサイクルの必要性が高い。
【0074】
窓板ガラスのガラスカレットの組成は、一般的に、質量%で、SiO
2 71%、Al
2O
3 2%、CaO 9%、MgO 4%、Na
2O 13%、K
2O 1%である。
【0075】
ビンガラスのガラスカレットの組成は、一般的に、質量%で、SiO
2 72%、Al
2O
3 2%、CaO 11%、MgO 1%、Na
2O 13%、K
2O 1%である。
【0076】
液晶ディスプレイ用ガラスのガラスカレットの組成は、一般的に、質量%で、SiO
2 50%以上、Al
2O
3 10〜20%、B
2O
3 5〜20%、MgO+SrO+CaO+BaO+ZnO 5〜20%、ZrO
2 0〜3%であり、実質的にアルカリ金属酸化物を含有していない。
【0077】
プラズマディスプレイ用ガラスのガラスカレットの組成は、一般的に、質量%で、SiO
2 50%以上、Al
2O
3 10〜20%、B
2O
3 5〜20%、MgO+SrO+CaO+BaO 5〜20%、ZrO
2 0〜3%である。
【0078】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法において、10
4.0Pa・sにおけるガラスカレットの温度をT
1、10
4.0Pa・sにおける結晶性ガラスの温度をT
2としたとき、|T
1−T
2|≦200℃、特に|T
1−T
2|≦150℃の関係を満たすガラスカレットを用いることが好ましい。|T
1−T
2|>200℃であると、溶融分離が生じ易くなる。
【0079】
本発明の天然大理石様結晶化ガラス物品の製造方法において、ガラスカレットの平均粒径は50mm以下、特に30mm以下が好ましい。また、|T
1−T
2|>200℃の関係を満たす場合、ガラスカレットの平均粒径は10mm以下、特に5mm以下が好ましい。このようにすれば、溶融分離を防止し易くなる。
【実施例1】
【0080】
以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、これらの実施例に何ら限定されない。
【0081】
表1〜3は
、試料No.
1〜28を示している。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
次のようにして、試料No.1〜28を調製した。まず表中の組成になるように珪砂、長石、酸化アルミ又は水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ソーダ灰、炭酸カリウム、スポジュメン又は炭酸リチウム、硝酸ソーダ、酸化アンチモン、及び各種ガラスカレットを調合し、ガラスバッチを作製した(但し、ガラスカレットの含有量を同一とした)。次に、ガラスバッチを白金坩堝に投入し、1550℃で5時間溶融した。続いて、得られた溶融ガラスを水砕し、乾燥、分級して粒径1〜5mmの結晶性ガラス小体を得た。さらに、複数の結晶性ガラス小体を、内壁にアルミナ粉が塗布された耐火性容器内に集積し、これを電気炉内に投入した後、120℃/Hrの速度で昇温し、表中の焼成温度で1時間保持することにより、各結晶性ガラス小体を軟化変形させて互いに融着させると共に、結晶化させた。なお、各試料間で融着状態が同一になるように、焼成温度を調整した。
【0086】
各試料につき、主結晶、表面粗さRa、最大粒径、色調L*を評価した。その結果を表1、2に示す。
【0087】
X線回折装置により主結晶を同定した。なお、表中においてβ−ウォラストナイト結晶を「β−W」と表記した。
【0088】
表面粗さRaは、表面粗さ計(東京精密株式会社製)で測定した値である。
【0089】
最大粒径は、各試料の表面をSEMで測定した値である。
【0090】
色調L*は、色差計(ジューキ株式会社製JP−7200)により、反射による色調L*値を測定したものである。
【0091】
表1〜3から明らかなように、試料No.1〜26は、SiO
2、CaO、ZnO、MgO+SrO+ZrO
2を所定量含んでいるため、焼成温度が1100℃以下、表面粗さRaが0.8μm以下、色調L*が84以上であった。
【0092】
一方、表3から明らかなように、試料No.27、28は、焼成温度が高く、表面粗さRaや最大粒径が大きかった。なお、試料No.27、28は、MgO+SrO+ZrO
2を含んでいないため、ガラス原料として、窓板ガラス等の異種ガラスカレットを使用し難いと考えられる。
【実施例2】
【0093】
表1の試料No.1の組成になるように珪砂、長石、酸化アルミ又は水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ソーダ灰、炭酸カリウム、スポジュメン又は炭酸リチウム、硝酸ソーダ、酸化アンチモン、窓板ガラス又は液晶ディスプレイ用ガラスのガラスカレットを調合し、ガラスバッチを作製した。10
4.0Pa・sにおけるガラスカレットの温度をT
1、10
4.0Pa・sにおける結晶性ガラスの温度をT
2としたとき、|T
1−T
2|=100℃、250℃の関係を満たすガラスカレットを使用した。なお、ガラスバッチ中のガラスカレットの比率を10質量%とした。次に、得られたガラスバッチを白金製三角坩堝に投入し、1550℃で1時間溶融した後、急冷して、得られた結晶性ガラスを白金製三角坩堝から除去した。
【0094】
得られた結晶性ガラスの上部(溶融ガラスの液面上部に相当する部分)を切り出し、アルキメデス法で密度を測定すると共に、断面状態を観察した。
【0095】
|T
1−T
2|=100℃の関係を満たすガラスカレットを用いた場合、固体結晶原料のみで作製した結晶性ガラスの密度と同様であった。しかし、|T
1−T
2|=250℃の関係を満たすガラスカレットを用いた場合、固体結晶原料のみで作製した結晶性ガラスの密度より約0.15g/cm
3低かった。
【0096】
図1(A)、(B)から明らかなように、|T
1−T
2|=100℃の関係を満たすガラスカレットを用いた場合、相分離は認められなかったが、|T
1−T
2|=250℃の関係を満たすガラスカレットを用いた場合、ガラスカレットが上方に偏在していた。