(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737645
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】インモールドラベル付き合成樹脂製カップ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/26 20060101AFI20150528BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20150528BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20150528BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
B65D1/26 110
B29C33/42
B29C45/14
B65D1/00 120
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-44179(P2009-44179)
(22)【出願日】2009年2月26日
(65)【公開番号】特開2010-195440(P2010-195440A)
(43)【公開日】2010年9月9日
【審査請求日】2011年9月30日
【審判番号】不服2014-1634(P2014-1634/J1)
【審判請求日】2014年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
(72)【発明者】
【氏名】石原 智幸
【合議体】
【審判長】
千葉 成就
【審判官】
渡邊 豊英
【審判官】
渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−56311(JP,A)
【文献】
特開2008−37477(JP,A)
【文献】
特開平11−10672(JP,A)
【文献】
特開2000−335543(JP,A)
【文献】
特開2004−276964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00,B65D 1/26,B29C 33/42,B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(1)の側周壁(2)にインモールド射出成形によりラベル(11)を全高さ範囲に亘って貼付したカップ容器であって、
前記容器本体(1)の側周壁(2)の下端部の所定高さ位置から内鍔状周片(4)を介して周縁に周状に接地部(7)を配設した底部(5)を垂下設し、
前記接地部(7)の外周縁に連結する角部(8)を円弧状に角取し、
前記側周壁(2)の下端が内鍔状周片(4)より下方に突出し、
前記ラベル(11)の下端が前記側周壁(2)の下端に合わせて位置し、
また、前記接地部(7)の下面が前記側周壁(2)の下端より下方に突出しており、前記側周壁(2)の下端位置より突出する前記接地部(7)の突出高さ(h2)が1mm〜2mmの範囲である
ことを特徴とするインモールドラベル付き合成樹脂製カップ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の側周壁にインモールド射出成形によりラベルを貼付したカップ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、インモールド射出成形によりラベルを貼付したカップ容器とその製法に関する発明が記載されている。
図4は、特許文献1に記載されているような、インモールドラベル付き合成樹脂製カップ容器とその製法に係る概略説明図であり、ラベル111を円筒状に回巻してキャビティ金型131にセットした状態で溶融樹脂を、底金型133に配設したゲート134から射出して容器本体101を成形すると同時に、ラベル111が容器本体101の側周壁102の表面に貼着される。
【0003】
図4に示される容器本体101は、側周壁102を底部105の底面から突出するようにして短円筒状の脚部107を形成しているのが特徴的である。この脚部107は接地部としての機能を発揮すると共に、インモールド射出成形時において、上記のようにゲート134から射出、流動する溶融樹脂によって下端部で、ラベル111に皺が発生したり、ラベル111が剥離したりすることを効果的に防ぐ機能を発揮する。
【0004】
ここで、
図5は、
図4の容器本体101のように脚部107のないカップ状容器とその成形方法に係る概略説明図である。
図5に示されるようにこのような脚部のない形状の容器本体の成形では、ゲート134から流動してくる溶融樹脂が、ラベル111の下端部に衝突すると共に上方に流動するので(
図5中の矢印参照)、ラベル111の下端部を上方に押すような力が作用し、その結果、ラベル111の下端部で皺や剥離が生じてしまう。一方、
図4の容器本体101のように脚部107を形成することにより、溶融樹脂の流動は上下に分岐し(
図4中の矢印参照)、ラベル111の下端部では溶融樹脂は下方に流動するので、ラベル111の下端部には引張り方向に力が作用し、上記のような皺や、剥離の発生を確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−132477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図4に示したカップ容器では、脚部107を接地部とするため、内容物の充填ラインで、この脚部107の下端部がベルトコンベアの継ぎ目に引っ掛かる等して転倒する、また製品の陳列中や使用中にも脚部107の下端部が引っ掛かる等して転倒すると云う問題がある。
【0007】
そこで、本発明はインモールドラベル付き合成樹脂製カップ容器において、特に側周壁下端部における皺や剥離のないラベルの貼着性と、充填ライン等における安定した搬送性および製品の陳列中、使用中における安定した起立性を、共に高いレベルで達成可能な容器本体の形状を創出することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
容器本体の側周壁にインモールド射出成形によりラベルを
全高さ範囲に亘って貼付したカップ容器において、
容器本体の側周壁の下端部の所定高さ位置から内鍔状周片を介して周縁に周状に接地部を配設した底部を垂下設し、
接地部の外周縁に連結する角部を円弧状に角取し、
側周壁の下端が内鍔状周片より下方に突出し、
ラベルの下端が側周壁の下端に合わせて位置し、
また、接地部の下面が側周壁の下端より下方に突出
しており、側周壁の下端位置より突出する接地部の突出高さが1mm〜2mmの範囲、
と云うものである。
【0009】
上記構成によれば、インモールド射出成形の際、キャビティ金型(あるいは底金型)の、容器本体の底部に相当する底部相当部分の中央に配設されたゲートから射出される溶融樹脂は、金型キャビティの底部相当部分を流動し、内鍔状周片相当部分を経て、側周壁相当部分に至り、ここから上方と下方に枝分かれして側周壁相当部分を流動するが、側周壁相当部分の下端近傍では溶融樹脂は下方に向かって流動するので、ラベルの下端部には引張り方向に力が作用し、側周壁下端部における皺や剥離のないラベルの貼着性を高いレベルで実現することができる。
【0010】
一方、内鍔状周片を介して垂下設された底部の周縁に周状に配設された接地部により安定した接地機能を発揮させることができ、充填ライン等における安定した搬送性や製品の陳列中、使用中における安定した起立性を上記したラベルの貼着性とは独立して確保することが可能となる。
【0012】
上記構成により、接地部の外周縁に連結する角部を円弧状に角取りすることにより、充填ラインのベルトコンベアの継ぎ目を容易に通過することが可能であり、継ぎ目での引っ掛りによる転倒をより効果的に防止することができる。
なお、角部の曲率半径は搬送ラインの状況により適宜決めることができるが、一般的には曲率半径を1mm以上とするのが好ましい。
【0014】
側周壁の下端位置より突出する接地部の突出を大きくしすぎると、外見上ラベルの貼付されていない底部が露出して容器全体としての加飾性が損なわれ、小さすぎると側周壁の下端部が引っ掛かる等して搬送性が損なわれるので、接地部の側周壁の下端からの突出を1mm〜2mmの範囲とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成は、容器本体において搬送性に係る機能を発揮する部位と、ラベルの貼着性に係る機能を発揮する部位をそれぞれ、別の部位として、それぞれ独立して機能を発揮できるようにしたものであり、
金型キャビティの側周壁相当部分の下端近傍では溶融樹脂は下方に向かって流動するので、側周壁下端部における皺や剥離のないラベルの貼着性を高いレベルで実現することができると共に、一方、内鍔状周片を介して垂下設された底部の周縁に周状に配設された接地部により、安定した接地機能を発揮させることができ、側周壁下端部における皺や剥離のないラベルの貼着性と、充填ライン等における安定した搬送性や製品の陳列中、使用中における安定した起立性を、共に高いレベルで達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のカップ容器の一実施例を示す半縦断正面図である。
【
図3】
図1の容器の底部近傍を要部拡大した縦断面図である。
【
図4】従来例のインモールドラベル容器とその製法に係る概略説明図である。
【
図5】他の従来例のインモールドラベル容器とその製法に係る概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜
図3は本発明のインモールドラベル付き合成樹脂製カップ容器の一実施例を示すものであり、
図1は半縦断正面図、
図2は容器本体1の底面図、
図3は底部5近傍の要部拡大した縦断面図である。
【0018】
この容器は、インモールド射出成形より合成樹脂製の容器本体1の側周壁2の全高さ、略全周に亘ってラベル11を貼付したものである。
容器本体1は、下方に向かって緩やかに縮径する円筒状の側周壁2を有し、この側周壁2の上端にはフランジ9が周設されている。
また、側周壁2の内周面にはカップ容器を積み重ねた際のスタッキングを防止するために突片10が複数突設されている。
【0019】
また、側周壁2の下端に近い高さ位置から内鍔状周片4を介し、中央部に陥没凹部6、周縁に周状に接地部7を配設した底部5を垂下設した形状としており、側周壁2の下端部ではその下端を内鍔状周片4より下方に突出させて、突出部3を形成するようにしている。本実施例では側周壁2の下端の内鍔状周片4より下方への突出高さh1を1.8mmとしている。
また、接地部7の下面の側周壁2の下端からの突出高さh2を1.3mmとしている。
【0020】
また、接地部7の接地幅は6mmとし、充填ラインのベルトコンベアの継ぎ目での転倒をより確実に防止するために、接地部7の外周縁に連結する角部8の曲率半径Rを2mmとしている。
【0021】
このカップ容器は、
図4に示したのと略同様な金型を用い、円筒状に巻回したラベル11をインサート材としてキャビティ金型131の金型面に吸着状にセットした状態で、ゲート134から溶融樹脂を射出し、金型キャビティを充填することにより成形することができる。(
図4参照)
【0022】
ここで、上記インモールド射出成形の際、金型キャビティの、底部5相当部分の中央に配設されたゲートから射出された溶融樹脂は底部5相当部分を周縁に向かって流動し、内鍔状周片4相当部分を経て、側周壁2相当部分に至り、ここから
図3中の2点鎖線の矢印示したように、上方と下方に枝分かれして側周壁2相当部分を流動する。
【0023】
そして、側周壁2の突出部3領域に相当する部分では、溶融樹脂は
図3中に示されるように、下方に向かって流動するので、当該キャビティ金型部分にセットされているラベル11に引張り方向に力を作用させて、皺や剥離のない状態でラベル11の下端部を側周壁2の下端部に確実に貼着することができる。
【0024】
一方、内鍔状周片4を介して垂下設された底部5の周縁に周状に配設された接地部7により、安定した接地機能を発揮させることができ、前述した角部8を円弧状に角取りした作用効果、さらには接地部7の下面の側周壁2の下端からの突出高さh2を1.3mmと1mm以上とした作用効果が相俟って、充填ラインにおいて、ベルトコンベアの継ぎ目による転倒を効果的に防止することができた。
【0025】
また、本実施例では接地部7の下面の側周壁2の下端からの突出高さh2を1.3mmと2mm以下とすることにより、側方から見た場合、底部5の露出がほとんどなく、ラベル11による加飾効果を容器の全高さ範囲に亘って発揮させることができた。
【0026】
以上、実施例に沿って本願発明の実施形態とその作用効果について説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例では容器本体を円筒状としたが、角筒状とすることもできる。
また、上記実施例はラベルを略全周に亘って貼付したものであるが、たとえば正面だけに貼付する場合にも本発明の作用効果は十分に発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明のインモールドラベル付き合成樹脂製カップ容器は、側周壁下端部における皺や剥離のないラベルの貼着性と、充填ライン等における安定した搬送性や製品の陳列中、使用中における安定した起立性を、共に高いレベルで実現したものであり、ラベル付きカップ容器として幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0028】
1 ;容器本体
2 ;側周壁
3 ;突出部
4 ;内鍔状周片
5 ;底部
6 ;陥没凹部
7 ;接地部
8 ;角部
9 ;フランジ
10;突片
11;ラベル
101;容器本体
102;側周壁
105;底部
107;脚部
111;ラベル
131;キャビティ金型
132;コア金型
133;底金型
134;ゲート
h1;突出高さ
h2;突出高さ