【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
図1は本発明の貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1の一例の斜視図である。本実施例において、ポリ塩化ビニルからなる樹脂パイプとして、市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)を用い、コンクリートとして、レディーミクスコンクリート(普通ポルトランドセメント、呼び強度21N/m
2、スランプ8cm、骨材5の最大寸法20mm)を用いた。
【0040】
[貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1の作製]
作製例1
市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)を長さ5cmに切断し、化粧合板上に並べて設置した。該塩ビ管の型枠内にコンクリート(レディーミクスコンクリート)を2層に分けて充填し、突き固め、閉め固めを行った。充填されたコンクリートの上面を金ゴテ仕上げとし、該上面をシートで覆い、気中養生を行った。材齢21日目に万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて、該コンクリートが充填された塩ビ管の外側から圧力をかけ、最大荷重測定時点で装置を止めて、貫通ひび割れ4を有する長さ5cmのコンクリート試験体1を93個得た。このときの平均最大荷重は約3500kgfであった。
【0041】
作製例2
作製例1において、長さ5cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填する代わりに、長さ23cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填し、打設翌日より33日間の水中養生後、気中養生することにより、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管(材齢52日)を得た。該コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管をコンクリートカッターにより5cmずつの長さとなるように切断することで、長さ23cmの1つの塩ビ管からコンクリートが充填された長さ5cmの塩ビ管が4つ得られた。このとき、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管の両端から1.5cmずつ部分は排除した。次いで、作製例1と同様に、万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて、該コンクリートが充填された塩ビ管の外側から圧力をかけることにより、貫通ひび割れ4を有する長さ5cmのコンクリート試験体1を得た。
【0042】
作製例3
作製例1において、長さ5cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填する代わりに、長さ23cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填し、気中養生することにより、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管(材齢28日)を8本得た。該コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管をコンクリートカッターにより20cmずつの長さとなるように切断し、コンクリートが充填された長さ20cmの塩ビ管を8本得た。このとき、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管の両端から1.5cmずつ部分は排除した。次いで、作製例1と同様に、万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて、該コンクリートが充填された塩ビ管の外側から圧力をかけることにより、貫通ひび割れ4を有する長さ20cmのコンクリート試験体1を得た。
【0043】
作製例4
作製例1において、長さ5cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填する代わりに、長さ23cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填し、気中養生することにより、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管(材齢28日)を7本得た。該コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管をコンクリートカッターにより10cmずつの長さとなるように切断し、コンクリートが充填された長さ10cmの塩ビ管を14本得た。このとき、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管の両端から1.5cmずつ部分は排除した。次いで、作製例1と同様に、万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて、該コンクリートが充填された塩ビ管の外側から圧力をかけることにより、貫通ひび割れ4を有する長さ10cmのコンクリート試験体1を得た。
【0044】
[ひび割れ幅、長さ及び面積の測定]
作製例1、2、3及び4で得られた貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1における押さえ面(上面)と型枠面(下面)のそれぞれに、ひび割れ幅測定器(株式会社ファースト社製「詳細ひび割れ幅測定器(FCV−30)」)をセットした。ひび割れ幅測定器に付属の画像処理ソフトで算出された平均値をひび割れ幅の平均値とした。また、上記押さえ面(上面)と型枠面(下面)のそれぞれについて、目視にて確認可能なひび割れ長さ(ひび割れ延長)を測定した。また、得られたひび割れ幅とひび割れ長さの値を乗じてひび割れ面積を算出した。作製例1で得られたコンクリート試験体1の結果を表1及び表2にまとめて示し、ひび割れ幅の分布を
図2に示す。また、作製例2で得られたコンクリート試験体1の結果を表5に、作製例3で得られたコンクリート試験体1の結果を表3に、作製例4で得られたコンクリート試験体1の結果を表4にまとめて示す。
【0045】
[透水試験]
作製例1で得られた貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1を促進中性化試験機(朝日科学株式会社製「促進中性化試験装置(BE0610W−6型)」)内(炭酸ガス濃度5%)にて7日間の促進中性化を行った後のコンクリート試験体1を屋内にて7日間気中養生して、材齢35日目のコンクリート試験体1を得た。透水試験としては、
図3で示される透水試験装置を用いて行った。このとき、透水試験装置において、コンクリート試験体1における押さえ面(上面)に対して、ビニールホース6が連結された塩ビ管キャップ7を該コンクリート試験体1の一端に取り付けた。コンクリート試験体1の乾燥状態の差による吸水量の影響を小さくするため、予め水道水8を水槽9に供給しておき、加圧する水面高さを押さえ面から約1mとして、圧力(1.1気圧)にて60分間加圧し、30分間静置した後に、押さえ面(上面)の水分を湿った布でふき取った。次いで、コンクリート試験体1における型枠面(下面)に予め空体重量を測定済のポリエチレン袋10を取り付け、加圧する水面高さを押さえ面から約1mとして、圧力(1.1気圧)にて60分間加圧し、ポリエチレン袋10に流入した透過水11の重量を測定することにより透水量を求めた。得られた結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0046】
[透気試験]
作製例2で得られた貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1に対して、10日間の気中養生を行い、材齢62日目のコンクリート試験体1を得た。透気試験としては、
図4で示される透気試験装置を用いて行った。このとき、透気試験装置において、コンクリート試験体1におけるひび割れ面積が大きい方の面が加圧面となるようにビニールホース6が連結された塩ビ管キャップ7を該試験体1の両端にセットし、コンプレッサー12からビニールホース6を通じてアセチレン調整器13で制御しながら圧縮空気を供給することにより、0.1MPaの圧力を加えて、コンクリート試験体1におけるひび割れ面積が小さい方の面からの透過空気量(cc/秒)を肺活量測定器14とストップウォッチにより計測した。得られた結果を表5にまとめて示し、ひび割れ面積と透気量との関係について
図5に示す。
【0047】
[促進中性化確認試験]
作製例2で得られたコンクリート試験体1の中から数点を選択し、該コンクリート試験体1におけるひび割れ面積が大きい方の面をポリプロピレン系フィルム(ニチバン株式会社製)でシールした。促進中性化試験機(朝日科学株式会社製「促進中性化試験装置(BE0610W−6型)」)内(炭酸ガス濃度5%)に静置し、7日間の促進中性化を行った。促進中性化後のコンクリート試験体1の塩ビ管3の外側から、ひび割れ方向に対して垂直方向に荷重がかかるように万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて圧力をかけてコンクリート試験体1を割裂した。次いで、ディスクグラインダーを用いて塩ビ管に切り込みを入れて、4分割されたコンクリート円柱2を塩ビ管3から取り外し、1つのコンクリート試験体1に対してコンクリート試験片を4つ得た。得られたコンクリート試験片に対し、コンクリート試験体1における貫通ひび割れ4面、及び新たに生じた割裂面に1%フェノールフタレイン溶液を噴霧して、中性化の確認を行った。コンクリート試験体1における貫通ひび割れ4面は、無色であり中性化が進んでいたが、新たに生じた割裂面(健全部)は赤紫色であり中性化されていないことが確認できた。中性化確認後のコンクリート試験片を
図6に示す。
【0048】
[透水量の結果に基づいたグループ分け]
上記透水試験により得られた透水量の結果に基づいてグループ分けを行った。グループ分けした結果を表6に示す。
【0049】
[促進中性化後のコンクリート試験体1を用いた止水性確認試験]
上記グループ分けしたうちのグループ6におけるコンクリート試験体1を用いて、以下の塗布剤A、B、C、D及びEを各コンクリート試験体1における型枠面(下面)に対して塗布し、2週間気中養生を行った。次いで、気中養生後から21日目までの期間について、塗布剤A〜Eを塗布したコンクリート試験体1、及び無処理のコンクリート試験体1を用いて、上記透水試験と同様の方法で透水試験を行った。得られた結果を表7にまとめて示す。
塗布剤A:水ガラスA「珪酸リチウム(約22%水溶液)」
塗布剤B:水ガラスB「JIS3号珪酸ソーダ」
塗布剤C:クエン酸1%水溶液
塗布剤D:水ガラスAにクエン酸を1%添加
塗布剤E:水ガラスBにクエン酸を1%添加
【0050】
[貫通ひび割れ4内部の確認試験]
作製例2で得られたコンクリート試験体1の中から数点を選択し、該コンクリート試験体1におけるひび割れ面積が小さい方の面に、ノズル付きの塩ビ管キャップを取り付けた。ひび割れ注入用樹脂(コニシ株式会社製「ボンドE206Sエポキシ樹脂(主剤):変性脂環式ポリアミン、ポリチオール(硬化剤)=2:1を深さが約3mmとなるように容器内に投入した。コンクリート試験体1におけるひび割れ面積の大きい方の面が、前記ひび割れ注入用樹脂に浸るように該コンクリート試験体1を配置した。このとき、容器内側の底面と該ひび割れ面積の大きい方の面とが接しないように間隙物を容器内側の底面と該ひび割れ面積の大きい方の面との間に配置した。次いで、ひび割れ内部に前記ひび割れ注入用樹脂が満たされるように、塩ビ管のノズルから真空ポンプ(水流式)を用いて減圧した。該コンクリート試験体1を容器内から取り出して72時間静置してエポキシ樹脂を硬化させ、コンクリートカッターを用いてひび割れ方向に対して垂直方向に該コンクリート試験体1を切断した。これにより、コンクリート試験体1における貫通ひび割れ4内部の様子が確認できた。コンクリート試験体1におけるひび割れ面積の大きい方の面の写真を
図7に、
図7の一部を拡大した写真を
図8に、コンクリート試験体1における貫通ひび割れ4内部の一部を拡大した写真を
図9に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
[貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1の作製]
作製例5
作製例1において、長さ5cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを充填する代わりに、長さ23cmの市販品の塩ビ管(硬質塩化ビニル管VU呼び径75)にコンクリートを2月に充填し、気中養生することにより、追加試験用のコンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管を6本得た。約5ヶ月後の7月に該塩ビ管1本をコンクリートカッターにより5cmずつの長さとなるように切断することで、長さ23cmの1つの塩ビ管からコンクリートが充填された長さ5cmの塩ビ管が4つ得られた。このとき、コンクリートが充填された長さ23cmの塩ビ管の両端から1.5cmの部分をそれぞれ排除した。次いで、万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて、該コンクリートが充填された塩ビ管の外側から圧力をかけることにより、貫通ひび割れ4を有する長さ5cmのコンクリート試験体1を得た。作際例5で得られたコンクリート試験体1における塩ビ管とコンクリートとの境界部分の一部を拡大した写真を
図10に示す。
図10から分かるように、塩ビ管とコンクリートとの間に隙間が存在することを確認した。
【0059】
作製例6
作製例5と同じく2月に充填された追加試験用の長さ23cmのコンクリートが充填された塩ビ管の型枠面(下面)に、ノズル付きの塩ビ管キャップを8月に取り付けた。エポキシ系樹脂(コニシ株式会社製「ボンドE206S(エポキシ樹脂(主剤):変性脂環式ポリアミン、ポリチオール(硬化剤)=2:1)」)を深さが約5mmとなるように容器内に投入した。該コンクリートが充填された塩ビ管における押さえ面(上面)が、前記エポキシ系樹脂に浸るように該コンクリートが充填された塩ビ管を配置した。このとき、容器内側の底面と該コンクリートが充填された塩ビ管の押さえ面(上面)とが接しないように間隙物を容器内側の底面と該コンクリートが充填された塩ビ管の押さえ面(上面)の間に配置した。次いで、塩ビ管とコンクリートとの間に存在する隙間にエポキシ系樹脂が満たされるように、塩ビ管のノズルから真空ポンプ(水流式)を用いて減圧した。1時間減圧後該コンクリートが充填された塩ビ管を容器内から取り出して72時間静置してエポキシ樹脂を硬化させた。その後、コンクリートカッターにより5cmずつの長さとなるように切断することで、長さ23cmの1つの塩ビ管からコンクリートが充填され、該コンクリートと塩ビ管との間に存在する隙間にエポキシ樹脂が注入された長さ5cmの塩ビ管が4つ得られた。このとき、コンクリートが充填され、該コンクリートと塩ビ管との間に存在する隙間にエポキシ樹脂が注入された長さ23cmの塩ビ管の両端から1.5cmの部分は排除した。次いで、作製例1と同様に、万能材料試験機(株式会社東京衡機製造所製)を用いて、該コンクリートが充填された塩ビ管の外側から圧力をかけることにより、貫通ひび割れ4を有する長さ5cmのコンクリート試験体1を得た。作製例6で得られたコンクリート試験体1における塩ビ管とコンクリートとの境界部分の一部(樹脂厚の大きい部分)を拡大した写真を
図11に示す。
図11から分かるように、塩ビ管とコンクリートとの間に存在する隙間がエポキシ系樹脂で封止されていることを確認した。
【0060】
[透気試験]
作製例5で得られた貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1に対して、
図4で示される透気試験装置を用いて7月に透気試験を行った。同様に、作製例6で得られた貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1に対して、
図4で示される透気試験装置を用いて8月に透気試験を行った。このとき、透気試験装置において、コンクリート試験体1におけるひび割れ面積が大きい方の面が加圧面となるようにビニールホース6が連結された塩ビ管キャップ7を該試験体1の両端にセットし、コンプレッサー12からビニールホース6を通じてアセチレン調整器13で制御しながら圧縮空気を供給することにより、0.1MPaの圧力を加えて、コンクリート試験体1におけるひび割れ面積が小さい方の面からの透過空気量を肺活量測定器14とストップウォッチにより計測した。上記方法により、作製例5で得られたコンクリート試験体1に対して透気試験を行った結果、透過空気量の値が297cc/秒と非常に大きく、塩ビ管とコンクリートとの隙間から空気が漏れていたと考えられる。一方、作製例6で得られたコンクリート試験体1に対して透気試験を行った結果、透過空気量が86cc/秒であった。このことから、塩ビ管とコンクリートとの隙間からの空気の漏れはなく、貫通ひび割れ4を透過した透過空気量を測定できたことが分かった。
【0061】
[透水確認試験]
作製例5及び6で得られた貫通ひび割れ4を有するコンクリート試験体1を用いて、透水確認試験を行った。2つの容器にそれぞれ容器内における水の深さが約10mmとなるように水を満たした。作製例5及び6で得られたコンクリート試験体1におけるひび割れ面の一方が水に浸るようにそれぞれ容器内にコンクリート試験体1を配置した。作製例5及び6で得られたコンクリート試験体1を容器内に配置してから約30秒後、作製例5で得られたコンクリート試験体1におけるひび割れ面の他方において、貫通ひび割れ4部分、及び塩ビ管とコンクリートとの境界部分に、毛細管現象により水が染み出した形跡を確認した。一方、作製例6で得られたコンクリート試験体1におけるひび割れ面の他方においては、貫通ひび割れ4部分のみに毛細管現象により水が染み出した形跡を確認した。このことから、作製例5で得られたコンクリート試験体1については、貫通ひび割れ4部分、及び塩ビ管とコンクリートとの間に隙間が存在することが確認された。一方、作製例6で得られたコンクリート試験体1については、貫通ひび割れ4部分のみに隙間が存在し、塩ビ管とコンクリートとの間に存在する隙間はエポキシ樹脂で封止されていることが確認された。透水確認試験後の作製例5及び6で得られたコンクリート試験体1の写真を
図12に示す。