【実施例1】
【0026】
図1は、本実施例1に係るプレスブレーキ10を示す概略図である。プレスブレーキ10は、C形に形成された左右一対のサイドフレーム12,12の前面下部に位置するベッド14上に下部テーブル16が備えられて、該下部テーブル16上に下金型18が着脱可能に取付けられると共に、サイドフレーム12,12の前面上部に、ラム22が昇降移動可能に設けられている。前記ラム22の下端部には、前記下部テーブル16上に取付けられた下金型18に対向する位置にホルダ24が設けられており、該ホルダ24に上金型26が着脱可能に取付けられる。また、前記左右のサイドフレーム12,12の上部位置には、金型駆動手段28の一例として配設された油圧シリンダのシリンダロッドが前記ラム22の左右上端部に夫々連結されており、油圧シリンダの駆動によりラム22を昇降移動して上金型26を上下移動するよう構成されている。なお、前記金型駆動手段28としては、油圧シリンダに限られるものではなく、サーボモータにより駆動されるボールネジ等、その他の従来公知の手段を採用することが可能である。
【0027】
また、
図2に示すように、前記下金型18の上面には、上方開口するV字状の溝20(以下、V溝という)がプレスブレーキ10の幅方向に延在するよう形成されており、前記ラム22の下降移動に伴ってV溝20内に上金型26が進入するようになっている。従って、V溝20に跨るようワークWを下金型18に支持した状態で前記ラム22を下降移動することで、上金型26による加圧力がワークWに作用し、これによりワークWが所定角度に折曲げられるようになる。なお、実施例1のプレスブレーキ10では、下降移動させた上金型26を下金型18のV溝20内に押込んでワークWの折曲げ加工を行なうタイプのものであるが、金型駆動手段28の駆動により下金型18を昇降移動させて上金型26を下金型18のV溝20内に押込むよう構成しても、同様にワークWの折曲げ加工を行なうことができる。すなわち、上金型26を、該上金型26に対向配置された下金型18のV溝20内に相対的に押込むようにすれば、上下の上金型26の何れが昇降移動する構成であってもよい。
【0028】
また、プレスブレーキ10には、該プレスブレーキ10を制御する制御装置30が備えられており、該制御装置30に接続された入力手段32(入力端末)に入力されたワークの加工条件に基づいて上金型26の押込み量(ワークWに当接してからの上金型26の下降移動量)を算出し、算出された押込み量だけ上金型26がV溝20内に押込まれるように制御装置30に備えた金型駆動制御手段40が金型駆動手段28を駆動してラム22が昇降動作するよう構成される。ここで、前記入力手段32には、下金型18のV溝20の角度(例えば80°、88°、90°等)、下金型18のV溝20の幅寸法(V)、上金型26の先端角度(例えば80°、88°、90°等)等の金型情報が入力されると共に、ワークWの材質、ワークWの板厚(t)等の加工対象のワーク情報が入力される。また、前記入力手段32には、プレスブレーキ10により折曲げ加工した最終製品において目標とするワークWの仕上がり角度(以下、目標仕上がり角度(θ
T)という)が入力されると共に、第1回目の折曲げ加工後に実測されたワークWの仕上がり角度(以下、実測仕上がり角度(θ
M)という)が入力されるようになっており、これらの入力値に基づいて、第1回目の折曲げ加工時における上金型26の押込み量(以下、設定押込み量(St
1)という)および2回目以降の折曲げ加工時における上金型26の押込み量(以下、目標押込み量(St
T)という)を制御装置30が算出するよう構成される。なお、実施例1のプレスブレーキ10では、前記上下の金型18,26に関する金型情報は、前記制御装置30が備える記憶手段38に金型18,26の種別毎に予め設定されており、前記入力手段32上において折曲げ加工に使用する金型18,26を選択することで自動的に対応の金型情報が取得されるようになっている。
【0029】
次に、前記制御装置30における前記設定押込み量(St
1)および目標押込み量(St
T)の算出方法につき説明する。前記制御装置30は、前記入力手段32に入力された入力値(ワークWの加工条件および目標仕上がり角度(θ
T))に基づいて第1回目の折曲げ加工で折曲げられるワークWの仕上がり角度(以下、設定仕上がり角度(θ
1)という)を設定する設定手段34を備えると共に、該設定手段34により設定された設定仕上がり角度(θ
1)に基づいて上金型26の押込み量となる設定押込み量(St
1)を算出し、該設定押込み量(St
1)および前記入力手段32に入力された実測仕上がり角度(θ
M)に基づいて前記目標仕上がり角度(θ
T)に対応した上金型26の押込み量(すなわち目標押込み量(St
T))を算出する算出手段36を備えている(
図3参照)。すなわち、実施例1のプレスブレーキ10では、第1回目のワーク折曲げ加工を実施することで、最終的に目標とするワークWの目標仕上がり角度(θ
T)に対応する上金型26の目標押込み量(St
T)を算出して、2回目以降のワークWの折曲げ加工により目標仕上がり角度(θ
T)で折曲げられたワークWが製造されるように構成される。
【0030】
ここで、前記設定手段34は、前記下金型18のV溝20の傾斜面にワークWが接触した時点で除荷した際のワークWの仕上がり角度(以下、特定仕上がり角度(θ
F)という)よりも大きくなる条件で設定仕上がり角度(θ
1)を設定するよう構成される。前記特定仕上がり角度(θ
F)は、ワークWの材質毎に、ワークWの板厚(t)およびV溝20の幅寸法(V)に依存して決定されることが実験的に確認され、V/tの値と特定仕上がり角度(θ
F)とは、ワークWの材質毎に
図4に示す関係を有している。そこで、
図4に示される各曲線を二次関数で近似した下記式(a)で表される変曲点式が前記設定手段34に設定されており、前記入力手段32に入力されたワークWの加工条件(具体的にはV溝20の幅寸法(V)、ワークWの板厚(t)、ワークWの材質)に基づいて、特定仕上がり角度(θ
F)を算出すると共に、該特定仕上がり角度(θ
F)よりも大きくなる条件で設定仕上がり角度(θ
1)を設定するようになっている。なお、a,b,cは、ワークWの材質に固有の係数であり、表1に下金型18のV溝20の角度を88°とした場合におけるワークWの一例についての各係数値を示す。
【0031】
【数1】
【0032】
【表1】
【0033】
ここで、実施例1に係るプレスブレーキ10の設定手段34では、0.1°≦θ
1−θ
F≦7°の範囲に前記設定仕上がり角度(θ
1)を設定している。ワークWを折曲げ加工する際の上金型26の押込み量(St)およびワークWの仕上がり角度(θ)の関係を表すSt−θグラフ(
図5参照)において、後述のように変曲点(特定押込み量(St
F)および特定仕上がり角度(θ
F)により特定される点)の前後の直線の傾きf1,f2の変化を利用して目標仕上がり角度(θ
T)を算出手段36が算出するものであるところ、折曲げ加工の特性上、上金型26の押込み量(St)とワークWの仕上がり角度(θ)との関係は完全な1次関数により表されるものではないから、設定仕上がり角度(θ
1)を0.1°≦θ
1−θ
F≦7°の範囲に設定して測定点(設定押込み量(St
1)および実測仕上がり角度(θ
M)により特定される点)を変曲点にできる限り近づけることで、目標押込み量(St
1)を高精度に算出することが可能になる。一方、θ
1−θ
F<0.1°の範囲に設定仕上がり角度(θ
1)を設定した場合には、ワークWの板厚(t)の寸法誤差等により折曲げ加工時にワークWがV溝20の傾斜面に接触した状態になってワークの曲げ特性が大きく変化する可能性があり、0.1°≦θ
1−θ
Fとすることが好ましい。なお、高精度な折曲げ加工が要求されない場合には、θ
1−θ
Fの値を上記の範囲外となるよう設定仕上がり角度(θ
1)を設定してもよい。
【0034】
そして、前記設定手段34により設定仕上がり角度(θ
1)が設定されると、設定仕上がり角度(θ
1)に基づいて設定押込み量(St
1)が前記算出手段36で算出される。ここで、前記設定押込み量(St
1)は、ワークWの折曲げ加工の幾何形状から、エアーベンドの状態で折曲げて除荷したワークWの仕上がり角度と、上金型26の押込み量との関係を示す関係式から演算されるものである。
【0035】
そこで、エアーベンドの状態で折曲げて除荷したワークWの仕上がり角度と上金型26の押込み量との関係を示す関係式の導出について説明する。先ず、
図6に示すようにエアーベンドでのワークWの折曲げ状態から、以下の式(b)が幾何的に求められる。
【0036】
【数2】
【0037】
また、
図7において斜線で示した三角形部分に着目すると、以下の式(c),(d)が得られる。なお、式(b)〜式(d)における曲げ角度(θ)は、挟み角度である。
【0038】
【数3】
【0039】
そして、
図7からα=(180−θ)/2の関係を有することから、ワーク折曲部の内面半径R、ワーク折曲部の内面円弧長Aとすると、A=2παR/180の関係を有することを利用して、式(b)〜(d)を纏めると下記の式(e)が得られる。なお、
図7では、ワークWを加圧する上金型26が省略して示してある。なお、ワークWに上金型26の加圧力を作用して押込んだ後に除荷すると、スプリングバックが生ずることから、ワークWが中心部まで塑性変形するときの撓み量をワークWの弾性回復補正量δとして材料力学の撓み計算により算出して、上金型26の押込み量から減算している。このように、弾性回復補正量δの補正を行なうことで、式(e)における曲げ角度(θ)は、仕上がり角度としてみなすことができる。
【0040】
【数4】
【0041】
円弧長Aは、数式上においてワーク折曲部の円弧部分の長さを意味するが、実際に折曲げ加工されたワークWの折曲げ部は、完全な円弧とはならないため、以下の説明では、Aを「ベンドファクタ(A)」と指称するものとする。
【0042】
前記ベンドファクタ(A)は、ワークWの加工条件(具体的にはV溝20の角度(φ)、V溝20の幅寸法(V)、ワークWの材質、ワークWの板厚(t))および折曲げ加工時のワークWの仕上がり角度との関係に基づいて定められる値である。そこで、実施例1では、有限要素解析法により求められたワークWの仕上がり角度(θ)とベンドファクタ(A)との関係を示すベンドファクタデータテーブルがワークWの加工条件毎に記憶手段38に記憶されている。表2は、記憶手段38に記憶されたベンドファクタデータテーブルの一例を示し、
図8は、記憶手段38が記憶するベンドファクタデータテーブルの内、冷延鋼板(SPCC)の例をグラフとして表示したものである。すなわち、前記算出手段36では、前記設定手段34により設定された設定仕上がり角度(θ
1)に対応するベンドファクタ(A
1)を、前記入力手段32に入力されたワークWの加工条件に基づいて前記記憶手段38が記憶するベンドファクタデータテーブルから取得する。そして、上記の式(e)において、A=A
1、θ=θ
1とした条件で前記設定押込み量(St
1)が算出される。
【0043】
【表2】
【0044】
更に、前記算出手段36は、第1回目のワーク折曲げ加工後にワークWから実測された実測仕上がり角度(θ
M)が前記入力手段32に入力されると、設定押込み量(St
1)および実測仕上がり角度(θ
M)に基づいて前記目標仕上がり角度(θ
T)に対応した上金型26の押込み量となる目標押込み量(St
T)を算出するよう設定される。具体的には、前記算出手段36は、上金型26の押込み量(St)およびワークWの仕上がり角度(θ)の関係を表したSt−θグラフにおいて、前記実測仕上がり角度(θ
M)および設定押込み量(St
1)により定められる点を測定点とし、前記特定仕上がり角度(θ
F)および特定仕上がり角度(θ
F)に対応した上金型26の押込み量となる特定押込み量(St
F)により定められる点を変曲点とし、前記目標仕上がり角度(θ
T)に対応した上金型26の押込み量となる目標押込み量(St
T)を加工点とした場合に、該測定点および変曲点を通過する直線の傾き(f1)と、変曲点および加工点を通過する直線の傾き(f2)とが所定の関係を満たすように当該目標押込み量(St
T)を算出するよう設定されている。
【0045】
具体的には、前記算出手段36では、前記入力手段32に入力されたワークWの実測仕上がり角度(θ
M)および設定押込み量(St
1)から上記の式(e)においてθ=θ
M、St=St
1とした条件で修正ベンドファクタ(A')を逆算し、修正ベンドファクタ (A')および前記特定仕上がり角度(θ
F)から上記の式(e)においてA=A'、θ=θ
Fとした条件で算出された特定押込み量(St
F)に基づいて、前記St−θグラフにおける測定点および変曲点を特定し、該測定点および変曲点を通過する直線の傾き(f1)を算出するようになっている。
【0046】
そして、前記算出手段36は、前記下金型18のV溝20の幅寸法(V)およびワークWの板厚(t)とした場合に、前記St−θグラフにおいて測定点および変曲点を通過する直線の傾き(f1)と、変曲点および加工点を通過する直線の傾き(f2)との関係が、下記の式(f)の関係を満たすよう変曲点および加工点を通過する直線の傾き(f2)を決定し、この変曲点および加工点を通過する傾き(f2)の直線上において、前記入力手段32に入力されたワークWの目標仕上がり角度(θ
T)に対応する押込み量を、目標押込み量(St
T)として算出する。そして、前記算出手段36において目標押込み量(St
T)が算出されると、算出された目標押込み量(St
T)だけ上金型26がV溝20内に押込まれるよう制御装置30の金型駆動制御手段40が金型駆動手段28を駆動制御して2回目以降の折曲げ加工が実行される。
【0047】
【数5】
【0048】
前記算出手段36において目標押込み量(St
T)が算出されると、算出された目標押込み量(St
T)だけ上金型26がV溝20内に押込まれるよう前記制御装置30が金型駆動手段28を駆動制御して2回目以降の折曲げ加工が実行される。これにより、2回目以降の折曲げ加工により折曲げられた後の最終的な仕上がり角度(θ
L)が、−0.25°≦θ
L−θ
T≦0.25°の範囲にあるワークWを得ることができる。すなわち、上金型26が下金型18のV溝20内に相対的に押込まれた際に、該下金型18のV溝20の傾斜面にワークWを接触させる必要がある目標仕上がり角度(θ
T)までワークWを折曲げ加工する場合であっても、1回のワークWの折曲げ加工を行なうことで目標仕上がり角度(θ
T)に対応した目標押込み量(St
T)を算出することができ、製品製造が可能となるまでに必要なワークWの折曲げ回数を大幅に低減することが可能となり、生産性向上が図られる。しかも、折曲げ加工の過程でワークWの折曲げ角度を測定する必要がないから、上下の金型18,26にセンサ等を備えた特殊な金型を必要とせず、一般に使用される汎用の金型を採用できるから、加工可能なワーク形状の制約を受けることなく簡単に目標仕上がり角度(θ
T)にワークWを折曲げることが可能となる。
【0049】
〔実験例〕
次に、前述した実施例1に係るプレスブレーキ10を用いた折曲げ加工方法および折曲げ加工システムを用いてワークWを折曲げ加工した実験例を示す。この実験例では、前記入力手段32には、下金型18のV溝20の角度(φ)を88°、上金型26の先端角度を88°、ワークWの目標仕上がり角度(θ
T)を90°として入力したもとでワークWを折曲げ加工した。なお、
図9〜
図30における縦軸において、90±0.25°の位置で一点鎖線を表示し、当該一点鎖線の間にデータがある場合に、−0.25°≦θ
L−θ
T≦0.25°となる高精度なワークWの折曲げ加工が行なわれていることを表している。
【0050】
(第1実験例)
第1実験例は、アルミニウム(A5052P)を板厚(t)=1.5mmに形成したワークWを、V溝20の幅寸法(V)=8mm、V=10mm、V=12mm、V=16mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この第1実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=5.0とし、θ
1−θ
F=1.5°とした。その実験結果を
図9〜
図12および表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
下金型18のV溝20の幅寸法(V)=8mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=90.48°から、表3に示すように設定仕上がり角度(θ
1)=91.98°、設定押込み量(St
1)=3.152mmが得られた。そして、設定押込み量(St
1)=3.152mmに基づく第1回目のワーク折曲げ加工から、実測仕上がり角度(θ
M)=91.43°、特定押込み量(St
F)=3.190mm、目標押込み量(St
T)=3.212mmが得られた。そして、目標押込み量(St
T)=3.212mmに基づいて第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=0となった。更に、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.02°となり、第3試験では、θ
L−θ
T=−0.03°となった。なお、表3中の押込み量は、折曲げ加工において実際に上金型26をV溝20内に押込んだ寸法であり、以下の表4〜表10においても同様である。
【0053】
また、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=10mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.10°から、表3に示すように設定仕上がり角度(θ
1)=92.60°、設定押込み量(St
1)=4.093mmが得られた。設定押込み量(St
1)=4.093mmに基づく第1回目のワーク折曲げ加工から、実測仕上がり角度(θ
M)=92.58°、特定押込み量(St
F)=4.172mm、目標押込み量(St
T)=4.231mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=4.231mmに基づいて第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=0°となった。また、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.02°であり、第3試験では、θ
L−θ
T=−0.03°であった。
【0054】
更に、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.58°から、表3に示すように設定仕上がり角度(θ
1)=93.08°、設定押込み量(St
1)=5.039mmが得られた。設定押込み量(St
1)=5.039mmに基づく第1回目のワーク折曲げ加工から、実測仕上がり角度(θ
M)=92.72°、特定押込み量(St
F)=5.116mm、目標押込み量(St
T)=5.202mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=5.202mmに基づいて第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.17°となった。また、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.08°となり、第3試験では、θ
L−θ
T=+0.05°となった。
【0055】
また、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=16mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.10°から、表3に示すように設定仕上がり角度(θ
1)=93.60°、設定押込み量(St
1)=6.938mmが得られた。この設定押込み量(St
1)=6.938mmに基づく第1回目のワーク折曲げ加工から、実測仕上がり角度(θ
M)=94.00°、特定押込み量(St
F)=7.130mm、目標押込み量(St
T)=7.252mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=7.252mmに基づいて第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−0.03°となった。また、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.17°となり、第3試験では、θ
L−θ
T=−0.02°となった。
【0056】
すなわち、
図9〜
図12に示すように、第1回目のワークWの折曲げ加工を行なうことで目標仕上がり角度(θ
T)に対応した目標押込み量(St
T)を算出することができ、第2回目以降のワーク折曲げ加工では、目標押込み量(St
T)に基づいて上金型26をV溝20内に押込むことで、高精度な折曲げ加工が行なわれる。
【0057】
(第2実験例)
第2実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.5mm、2.0mm、3.0mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=12mm、V=16mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=4.5とし、θ
1−θ
F=1.5°とした。その実験結果を
図13〜
図15および表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.58°から、表4に示すように設定仕上がり角度(θ
1)=93.08°、設定押込み量(St
1)=5.039mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=92.72°、特定押込み量(St
F)=5.115mm、目標押込み量(St
T)=5.177mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=5.177mmに基づいて第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.23°であった。また、ワークの板厚(t)=2.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合の第1試験では、表4に示すように特定仕上がり角度(θ
F)=90.81°から、設定仕上がり角度(θ
1)=92.31°、設定押込み量(St
1)=4.833mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=92.10°、特定押込み量(St
F)=4.911mm、目標押込み量(St
T)=4.948mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=4.948mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.08°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.05°となった。更に、ワークの板厚(t)=3.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=16mmとした場合の第1試験では、表4に示すように特定仕上がり角度(θ
F)=90.48°から、設定仕上がり角度(θ
1)=91.98°、設定押込み量(St
1)=6.295mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=92.18°、特定押込み量(St
F)=6.433mm、目標押込み量(St
T)=6.466mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=6.466mmとした条件で第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.08°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.12°となった。
【0060】
すなわち、
図13〜
図15に示すように、(f1/f2)×(V/t)=4.5とすることで、第1回目のワークWの折曲げ加工を行なうことで目標仕上がり角度(θ
T)に対応した目標押込み量(St
T)を算出することができ、第2回目以降のワーク折曲げ加工では、目標押込み量(St
T)に基づいて上金型26をV溝20内に押込むことで、高精度な折曲げ加工が行なわれる。
【0061】
(第3実験例)
第3実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.5mm、3.0mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=12mm、V=16mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=6.5とし、θ
1−θ
F=1.5°とした。その実験結果を
図16〜
図17および表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.58°から、表5に示すように設定仕上がり角度(θ
1)=93.08°、設定押込み量(St
1)=5.039mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=92.58°、特定押込み量(St
F)=5.106mm、目標押込み量(St
T)=5.196mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=5.196mmとした条件で第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−0.22°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.18°となった。また、ワークの板厚(t)=3.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=16mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=90.48°から、設定仕上がり角度(θ
1)=91.98°、設定押込み量(St
1)=6.295mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=92.18°、特定押込み量(St
F)=6.433mm、目標押込み量(St
T)=6.481mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=6.481mmとした条件で第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−0.17°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.02°となった。
【0064】
このように、
図16〜
図17に示すように、(f1/f2)×(V/t)=6.5とすることで、第1回目のワークWの折曲げ加工を行なうことで目標仕上がり角度(θ
T)に対応した目標押込み量(St
T)を算出することができ、第2回目以降のワーク折曲げ加工では、目標押込み量(St
T)に基づいて上金型26をV溝20内に押込むことで、高精度な折曲げ加工が行なわれる。すなわち、第1実験例〜第3実験例より、(f1/f2)×(V/t)の値が、式(f)の関係を満たすことにより、2回目以降のワーク折曲げ加工時に、−0.25°≦θ
L−θ
T≦0.25°の範囲にある高精度に折曲げられたワークWを得ることが可能となる。
【0065】
(第4実験例)
第4実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.0mm、1.5mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=12mm、V=16mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=3.0とし、θ
1−θ
F=1.5°とした。その実験結果を
図18〜
図19および表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
ワークの板厚(t)=1.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.15°から、設定仕上がり角度(θ
1)=93.65°、設定押込み量(St
1)=5.297mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=93.70°、特定押込み量(St
F)=5.413mm、目標押込み量(St
T)=5.456mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=5.456mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.98°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+1.08°となった。また、ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=16mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.10°から、設定仕上がり角度(θ
1)=93.60°、設定押込み量(St
1)=6.937mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=93.75°、特定押込み量(St
F)=7.103mm、目標押込み量(St
T)=7.169mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=7.169mmとした条件で第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+1.52°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+1.12°となった。
【0068】
すなわち、(f1/f2)×(V/t)=3.0とした場合には、折曲げ加工されたワークWの仕上がり角度の精度が第1〜第3実験例に較べて低下し、4.5≦(f1/f2)×(V/t)とすることが高精度な折曲げ加工を行なう上で好ましいことが実験的に明らかになった。
【0069】
(第5実験例)
第5実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.0mm、1.5mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=12mm、V=16mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=8.0とし、θ
1−θ
F=1.5°とした。その実験結果を
図20〜
図21および表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】
ワークの板厚(t)=1.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmの場合では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.15°から、設定仕上がり角度(θ
1)=93.65°、設定押込み量(St
1)=5.297mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=93.70°、特定押込み量(St
F)=5.413mm、目標押込み量(St
T)=5.526mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=5.526mmとした条件で第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−1.05°となり、同様に行なった第2試験ではθ
L−θ
T=−0.98°となった。また、ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=16mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.10°から、設定仕上がり角度(θ
1)=93.60°、設定押込み量(St
1)=6.937mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=93.72°、特定押込み量(St
F)=7.100mm、目標押込み量(St
T)=7.271mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=7.271mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−0.43°となり、同様に行なった第2試験ではθ
L−θ
T=−0.75°となった。
【0072】
すなわち、(f1/f2)×(V/t)=8.0とした場合には、折曲げ加工されたワークWの仕上がり角度の精度が第1〜第3実験例に較べて低下し、(f1/f2)×(V/t)≦6.5とすることが高精度な折曲げ加工を行なう上で好ましいことが実験的に明らかになった。
【0073】
(第6実験例)
第6実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.0mm、1.5mm、2.0mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=10mm、V=12mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=5.0とし、θ
1−θ
F=0.1°とした。その実験結果を
図22〜
図24および表8に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
ワークの板厚(t)=1.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmの場合では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.15°から、設定仕上がり角度(θ
1)=92.25°、設定押込み量(St
1)=5.402mmが得られ、第1回目のワーク折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=92.45°、特定押込み量(St
F)=5.425mm、目標押込み量(St
T)=5.503mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=5.503mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=0°となり、同様に行なった第2試験ではθ
L−θ
T=−0.02°となった。また、ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=10mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.10°から、設定仕上がり角度(θ
1)=91.20°、設定押込み量(St
1)=4.167mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=90.93°、特定押込み量(St
F)=4.158mm、目標押込み量(St
T)=4.218mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=4.218mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.18°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.08°となった。更に、ワークの板厚(t)=2.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された定仕上がり角度(θ
F)=90.81°から、設定仕上がり角度(θ
1)=90.91°、設定押込み量(St
1)=4.918mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=90.45°、特定押込み量(St
F)=4.896mm、目標押込み量(St
T)=4.950mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=4.950mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−0.02°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=−0.08°となった。
【0076】
すなわち、
図22〜
図24に示すように、θ
1−θ
F=0.1°として第1回目のワークWの折曲げ加工を行なうことで目標仕上がり角度(θ
T)に対応した目標押込み量(St
T)を算出することができ、第2回目以降のワーク折曲げ加工では、目標押込み量(St
T)に基づいて上金型26をV溝20内に押込むことで、高精度な折曲げ加工が行なわれる。
【0077】
(第7実験例)
第7実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.0mm、1.5mm、2.0mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=6mm、V=10mm、V=12mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=5.0とし、θ
1−θ
F=7.0°とした。その実験結果を
図25〜
図27および表9に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
ワークの板厚(t)=1.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=6mmの場合では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=90.81°から、設定仕上がり角度(θ
1)=97.81°、設定押込み量(St
1)=2.264mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=97.40°、特定押込み量(St
F)=2.453mm、目標押込み量(St
T)=2.479mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=2.479mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=−0.08°となり、同様に行なった第2試験でも、θ
L−θ
T=−0.08°となった。また、ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=10mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.10°から、設定仕上がり角度(θ
1)=98.10°、設定押込み量(St
1)=3.808mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=98.07°、特定押込み量(St
F)=4.171mm、目標押込み量(St
T)=4.231mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=4.231mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.08°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.10°となった。更に、ワークの板厚(t)=2.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=90.81°から、設定仕上がり角度(θ
1)=97.81°、設定押込み量(St
1)=4.507mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=97.45°、特定押込み量(St
F)=4.901mm、目標押込み量(St
T)=4.954mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=4.954mmとした条件で第2回目のワーク折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=0°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.18°となった。
【0080】
すなわち、
図25〜
図27に示すように、θ
1−θ
F=7.0°として第1回目のワークWの折曲げ加工を行なった場合でも目標仕上がり角度(θ
T)に対応した目標押込み量(St
T)を算出することができ、第2回目以降のワーク折曲げ加工では、目標押込み量(St
T)に基づいて上金型26をV溝20内に押込むことで、−0.25°≦θ
L−θ
T≦0.25°の範囲となる高精度な折曲げ加工が行なわれる。
【0081】
(第8実験例)
第8実験例では、アルミニウム(A5052P)を所定の板厚(t)=1.0mm、1.5mm、2.0mmに形成したワークWにつき、V溝20の幅寸法(V)=12mm、V=16mm、V=18mmとした下金型18を用いて折曲げ加工を行なった。この実験例では、上記式(f)において(f1/f2)×(V/t)=5.0とし、θ
1−θ
F=10.0°とした。その実験結果を
図28〜
図30および表10に示す。
【0082】
【表10】
【0083】
ワークの板厚(t)=1.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=12mmの場合では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.15°から、設定仕上がり角度(θ
1)=102.15°、設定押込み量(St
1)=4.695mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=101.95°、特定押込み量(St
F)=5.393mm、目標押込み量(St
T)=5.471mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=5.471mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+1.10°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+1.00°となった。また、ワークの板厚(t)=1.5mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=16mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=92.10°から、設定仕上がり角度(θ
1)=102.10°、設定押込み量(St
1)=6.128mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=102.22°、特定押込み量(St
F)=7.101mm、目標押込み量(St
T)=7.222mmが得られた。この目標押込み量(St
T)=7.222mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.38°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.62°となった。更に、ワークの板厚(t)=2.0mm、下金型18のV溝20の幅寸法(V)=18mmとした場合の第1試験では、上記式(a)から算出された特定仕上がり角度(θ
F)=91.84°から、設定仕上がり角度(θ
1)=101.84°、設定押込み量(St
1)=6.751mmが得られ、第1回目の折曲げ加工の結果、実測仕上がり角度(θ
M)=101.82°、特定押込み量(St
F)=7.801mm、目標押込み量(St
T)=7.941mmが得られた。そして、この目標押込み量(St
T)=7.941mmとした条件で第2回目の折曲げ加工を行なったところ、θ
L−θ
T=+0.58°となり、同様に行なった第2試験では、θ
L−θ
T=+0.63°となった。
【0084】
すなわち、θ
1−θ
F=10.0°とした場合には、折曲げ加工されたワークWの仕上がり角度の精度が第1〜第3実験例に較べて低下し、0.1°≦θ
1−θ
F≦7.0°とすることが高精度な折曲げ加工を行なう上で好ましいことが実験的に明らかになった。
【実施例3】
【0097】
次に、実施例3に係るプレスブレーキを用いた折曲げ加工方法および折曲げ加工システムにつき説明する。実施例3に係るプレスブレーキの構成は、実施例1で示したプレスブレーキ10と同一であるので、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0098】
上金型26を下金型18のV溝20内に相対的に押込んでワークWの曲げ加工を行なう際には、上金型26をV溝20内に押込む際の加工荷重(W)に応じてプレスブレーキ10のベッド14や上下の金型18,26、その他の装置構成部材に「たわみ」が発生する。このため、前記設定押込み量(St
1)や目標押込み量(St
T)で上金型26がV溝20内に押込まれるよう金型駆動装置30を駆動した場合に、設定押込み量(St
1)や目標押込み量(St
T)と、現実に上金型26がV溝20内に押込まれた押込み量との間に「たわみ」に起因した誤差が生ずる。そこで、実施例3では、折曲げ加工時に生ずるプレスブレーキ10側のたわみを補正した押込み量で上金型26を下金型18のV溝20内に相対的に押込んで、より精密なワークWの折曲げ加工を行い得るプレスブレーキを用いた折曲げ加工方法および折曲げ加工システムについて説明する。なお、以下の説明では、折曲げ加工時にプレスブレーキ10側に生ずるたわみを、装置たわみ量(λ)と表す。
【0099】
装置たわみ量(λ)は、プレスブレーキ10の縦剛性係数(k)[kN/mm]、上金型26を下金型18のV溝20内に相対的に押込む際の加工荷重(W)[kN]とした場合に、フックの法則によりλ=W/kと表すことができる。すなわち、装置たわみ量(λ)は、加工荷重(W)により定まる。なお、縦剛性係数(k)は、プレスブレーキ10に固有の値であって、プレスブレーキ10の設計値や実験から求めることができ、実施例3で使用したプレスブレーキ10の縦剛性係数(k)は、k=178.57である。
【0100】
ところで、
図33に示すように、エアーベンドとなる状態でワークWを折曲げ加工する場合(すなわち、上金型26の押込み量(St)が特定押込み量(St
F)に達しない場合)には、ワークWの材質により押込み量(St)の増加に伴って僅かに加工荷重(W)が漸増または漸減する程度で、加工荷重(W)が略一定値になる一方で、ワークWがV溝20の傾斜面に接触した状態でワークWを折曲げ加工する場合(すなわち、上金型26を特定押込み量(St
F)以上の押込み量で押込む場合)には、押込み量(St)の増加に伴って加工荷重(W)が急激に増大することが知られている。
【0101】
ここで、エアーベンドでワークWを折曲げ加工する場合に、ワークWの仕上がり角度(θ)が135°となる段階までは、押込み量(St)が増加しても加工荷重(W)が殆ど変化しないことが有限要素解析によって判明した。そこで、ワークWの仕上がり角度(θ)が135°となる仕上がり角度を基準仕上がり角度(θ
A)とし、基準仕上がり角度(θ
A)となる上金型26の押込み量を基準押込み量(St
A)とすると、「ワークWの仕上がり角度(θ)≧基準仕上がり角度(θ
A)」の場合(すなわち、「上金型26の押込み量(St)≦基準押込み量(St
A)」の場合)の加工荷重(W
a)は、公知の事実であり、下記の式(j)で表すことができる。以下の説明では、「ワークWの仕上がり角度(θ)≧基準仕上がり角度(θ
A)」の場合の加工荷重(W
a)を、基準加工荷重というものとする。
【0102】
【数9】
【0103】
ここで、下金型18のV溝20の幅(V)およびワークWの板厚(t)の比(V/t)と、係数(k
1)との関係を、有限要素解析法により解析した結果を
図34に示す。この
図34より、5≦V/t≦10の範囲において直線近似できることから、前記式(j)に示したように、k
1=−0.055×V/t+1.753とした。
【0104】
また、「特定仕上がり角度(θ
F)≦ワークWの仕上がり角度(θ)≦基準仕上がり角度(θ
A)」の範囲で折曲げ加工する場合(すなわち、「基準押込み量(St
A)≦上金型26の押込み量(St)≦特定押込み量(St
F)」の場合)には、前述のように、上金型26の押込み量(St)の増加につれて基準加工荷重(W
a)から漸増または漸減する。ここで、「特定仕上がり角度(θ
F)≦θ≦基準仕上がり角度(θ
A)」の間では、エアーベンドの状態で折曲げ加工されるため加工荷重(W)の変化量は僅かであり、加工荷重(W)が直線的に変化するものとみなすことができる。従って、「特定仕上がり角度(θ
F)≦θ≦基準仕上がり角度(θ
A)」の範囲で折曲げ加工する際の加工荷重(W)は、特定仕上がり角度(θ
F)における加工荷重を特定加工荷重(W
f)とした場合に、下記の式(k)で表される。なお、式(k)におけるk
fは、ワークWの材質によって定まる固有の係数であり、表12にワークWの一例についての各係数値を示す。
【0105】
【数10】
【0106】
【表12】
【0107】
また、「ワークWの仕上がり角度(θ)≦特定仕上がり角度(θ
F)」の範囲で折曲げ加工する場合(すなわち、「特定押込み量(St
F)≦上金型26の押込み量(St)」の場合)には、V溝20の傾斜面にワークWが接触した状態で折曲げ加工されるため、
図33に示すように上金型26の押込み量(St)の増加につれて加工荷重(W)が特定加工荷重(W
f)から急激に増加する。ここで、「特定押込み量(St
F)≦上金型26の押込み量(St)」の範囲での折曲げ加工における押込み量(St)の増加と加工荷重(W)の変化量をk
wとした場合に、ワークWの板厚(t)とk
w/W
aとの関係をシミュレーションにより測定した結果を、
図35に示す。この
図35を対数近似してk
wの近似式を求め、「ワークWの仕上がり角度(θ)≦特定仕上がり角度(θ
F)」での加工荷重(W)を下記の式(l)で表す。なお、式(l)におけるk
a,k
bは、ワークWの材質によって定まる固有の係数であり、表13にワークWの一例についての各係数値を示す。
【0108】
【数11】
【0109】
【表13】
【0110】
以上を纏めると、下記で表される式(m)によりワークWの仕上がり角度(θ)に応じて加工荷重(W)を算出することで、ワークWの仕上がり角度(θ)での装置たわみ量(λ)を求めることができる。
【0111】
【数12】
【0112】
そして、実施例3に係るプレスブレーキ10では、前記式(m)においてθ=θ
1、St=St
1とした条件で求められる装置たわみ量(λ
1)を前記設定押込み量(St
1)に加算して補正設定押込み量(St
1’)を算出(St
1’=St
1+λ
1)するよう前記算出手段36が設定されており、該算出手段36で算出された補正設定押込み量(St
1’)に従って金型駆動制御手段40が金型駆動手段28を駆動制御することで1回目の折曲げ加工が実行されるよう構成されている。すなわち、前記設定押込み量(St
1)で折曲げ加工する際の装置たわみ量(λ
1)を補正した補正設定押込み量(St
1’)で折曲げた後のワークWの仕上がり角度が前記実測仕上がり角度(θ
M)として計測される。また同様に、前記算出手段36は、前記式(m)においてθ=θ
T、St=St
Tとした条件で求められる装置たわみ量(λ
T)を前記目標押込み量(St
T)に加算した補正目標押込み量(St
T’)を算出(St
T’=St
T+λ
T)するよう設定されて、該算出手段36で算出された補正目標押込み量(St
T’)に従って金型駆動制御手段40が金型駆動手段28を駆動制御することで、2回目以降の折曲げ加工が実行されるよう構成されている。
【0113】
すなわち、設定押込み量(St
1)で折曲げ加工する際に生ずる装置たわみ量(λ
1)を補正した補正設定押込み量(St
1’)となるよう上金型26を駆動することで、実際には設定押込み量(St
1)でワークWが折曲げ加工されるから、1回目の折曲げ加工における折曲げ加工精度が向上する。これにより、設定押込み量(St
1)および実測仕上がり角度(θ
M)に基づいて算出される修正ベンドファクタ(A')の精度が向上し、該修正ベンドファクタ(A')に基づいて行なわれる2回目以降の折曲げ加工の加工精度を高めることができる。また、ワークWを目標押込み量(St
T)で折曲げ加工する際に生ずる装置たわみ量(λ
T)を補正した補正目標押込み量(St
T’)となるよう上金型26を駆動することで、実際には目標押込み量(St
T)でワークWが折曲げ加工されるから、ワークWを精度よく目標仕上がり角度(θ
T)で折曲げることが可能となる。
【実施例4】
【0114】
次に、実施例4に係るプレスブレーキを用いた折曲げ加工方法および折曲げ加工システムにつき説明する。実施例3に係るプレスブレーキの構成は、実施例1で示したプレスブレーキ10と同一であるので、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0115】
実施例4では、先端部が円弧状に形成された上金型26を前記下金型18のV溝20内に相対的に押込んでワークWの折曲げ加工を行なう場合について説明する。なお、以下の説明では、前記上金型26における先端部の円弧半径を先端半径R
Pとして表す(
図36参照)。先ず、先端部が角形状に形成された上金型26を前記下金型18のV溝20内に相対的に押込んでワークWの折曲げ加工を行なう場合には、ワークWの折曲げ加工が進行しても、上金型26の角端部がワークWの折曲げ部の最深部CP(
図36参照)に接触した状態が維持されることから、上金型26の押込み量(St)分だけ折曲げ加工が行なわれることになる。これに対して、先端部が円弧状に形成された前記上金型26が前記下金型18のV溝20内に相対的に押込まれた場合では、ワーク折曲部の内面半径Rが上金型26の先端半径R
Pと一致するまでは、先端部が角形状の上金型26の場合と同様に、ワークWの折曲げ部の最深部CPに上金型26の先端部PEに接触しつつ折曲げ加工が進行する。一方で、前記上金型26が前記下金型18のV溝20内に押込まれて、ワーク折曲部の内面半径Rが上金型26の先端半径R
P以下(すなわち、R≦R
P)となると、
図36に示すように、ワークWの折曲げ部の最深部CPが上金型26の先端部PEから離れるよう折曲げ加工が進行する。すなわち、ワーク折曲部の内面半径Rが上金型26の先端半径R
P以下となる領域では、上金型26の先端部PEとワークWの折曲げ部の最深部CPとの間に隙間ができることになる。従って、ワークWを所定の仕上がり角度(θ)に折曲げるのに必要な上金型26の押込み量(St)は、先端部が角形状に形成された上金型26を用いる場合に較べて、先端部が円弧形状に形成された上金型26を用いた場合の方が短くなる。
【0116】
ここで、前述した式(e)により求められる押込み量(St)は、先端部が角形状の上金型26のように、ワークWの折曲げ部の最深部CPに上金型26の先端部PEが接触する条件で折曲げ加工する場合での上金型26の押込み量(St)となっている。そこで、実施例4では、先端部が円弧形状に形成された上金型26を用いてワークWを所定の仕上がり角度(θ)に折曲げる場合に、前述した式(e)により求められる押込み量(St)について、該上金型26の先端部PEとワークWの折曲げ部の最深部CPとの間に生ずる隙間の間隔で補正して、より精密なワークWの折曲げ加工を行い得るプレスブレーキを用いた折曲げ加工方法および折曲げ加工システムについて説明する。なお、以下の説明では、式(e)で求められる押込み量(St)を、先端部が円弧形状の上金型26での折曲げ加工に対応するよう補正した値をR曲げ補正押込み量(St’’)と表し、上金型26の先端部PEとワークWの折曲げ部の最深部CPとの間の隙間の間隔を、押込み量誤差(D)と表す。
【0117】
ここで、式(e)で求められる押込み量(St)と、前記R曲げ補正押込み量(St’’)と、前記押込み量誤差(D)との関係は、
図36から幾何学的に下記の式(n)で表すことができる。
【0118】
【数13】
【0119】
また、
図36に示すように、上金型26の先端円弧の中心点をOとし、ワークWの平板面に対する中心点Oを通る垂線と該ワークWの平板面との交点をPとし、該交点Pを通るワークWの平板面に沿った延長線が上金型26の先端円弧の中心点Oを通る鉛直線と交差する交点をQとした場合に、三角形OPQの関係から、下記の式(o)が得られる。
【0120】
【数14】
【0121】
更に、
図36に示すように、折曲げ加工されたワークWにおけるワーク折曲部の円弧部分の中心点をO’とし、該中心点O’からワークWの平板面へ引いた垂線とワークWの平板面との交点をP’とした場合に、三角形O’P’Qの関係から、下記の式(p)が得られる。なお、段落[0037]と同様に、ワーク折曲部の内面半径はRとする。
【0122】
【数15】
【0123】
以上を纏めると、下記で表される式(q)が得られる。すなわち、段落[0037]に示すように、α=(180−θ)/2の関係を有し、また式(e)に示すように、R=180A/{(180−θ)×π}を有することから、実施例1または実施例2のように仕上がり角度(θ)に応じたベンドファクタ(A)を得ることで、上金型26の先端半径(R
P)およびワークWの仕上がり角度(θ)に応じた押込み量誤差(D)を求めることができ、前述した式(n)に代入することで、先端部が円弧形状の上金型26を実際に下金型18のV溝20内に相対的に押込むべき押込み量が求められる。
【0124】
【数16】
【0125】
ここで、上金型26の先端半径(R
P)=1.0mmおよび下金型18のV溝20の幅寸法(V)=6mmとした条件で、板厚(t)=1.0mmに形成したアルミニウム(A5052P)のワークWを折曲げ加工する場合に、前述した式(n)により求められる上金型26の押込み量(すなわちR曲げ補正押込み量(St’’))と仕上がり角度(θ)との関係を
図37に実線で示すと共に、有限要素解析法により解析したR曲げ補正押込み量(St’’)の解析値を
図37のグラフ図にプロットして示す。この
図37から、前述した式(n)により求められるR曲げ押込み量(St’’)で上金型26を下金型18のV溝20内に押込んでワークWの折曲げ加工を行なうことで、ワークWが所定の仕上がり角度(θ)に高精度で折曲げられることが判明する。なお、
図37には、式(e)により求められる押込み量(St)と仕上がり角度(θ)との関係を破線で示してある。すなわち、先端部が円弧状に形成された上金型26を用いてワークWの折曲げ加工する際には、前述した式(e)により求められる押込み量(St)から式(q)で表される押込み量誤差(D)を減算補正することで、ワークWの折曲げ加工の加工精度が向上することが判る。
【0126】
そして、実施例4に係るプレスブレーキ10では、前記式(q)においてθ=θ
1とした条件で求められる押込み量誤差(D
1)を前記設定押込み量(St
1)から減算してR曲げ補正設定押込み量(St
1’’)を算出(St
1’’=St
1−D
1)するよう前記算出手段36が設定されており、該算出手段36で算出されたR曲げ補正設定押込み量(St
1’’)に従って金型駆動制御手段40が金型駆動手段28を駆動制御することで1回目の折曲げ加工が実行されるよう構成されている。すなわち、前記設定押込み量(St
1)で折曲げ加工する際の押込み量誤差(D
1)を補正したR曲げ補正設定押込み量(St
1’’)で折曲げた後のワークWの仕上がり角度が前記実測仕上がり角度(θ
M)として計測される。また同様に、前記算出手段36は、前記式(q)においてθ=θ
Tとした条件で求められる押込み量誤差(D
T)を前記目標押込み量(St
T)から減算したR曲げ補正目標押込み量(St
T’’)を算出(St
T’’=St
T−D
T)するよう設定されて、該算出手段36で算出されたR曲げ補正目標押込み量(St
T’’)に従って金型駆動制御手段40が金型駆動手段28を駆動制御することで、2回目以降の折曲げ加工が実行されるよう構成されている。
【0127】
このように、設定押込み量(St
1)で折曲げ加工する際に生ずる押込み量誤差(D
1)を補正したR曲げ補正設定押込み量(St
1’’)となるよう上金型26を駆動することで、実際には設定押込み量(St
1)でワークWが折曲げ加工されるから、1回目の折曲げ加工における折曲げ加工精度が向上する。これにより、設定押込み量(St
1)および実測仕上がり角度(θ
M)に基づいて算出される修正ベンドファクタ(A')の精度が向上し、該修正ベンドファクタ(A’)に基づいて行なわれる2回目以降の折曲げ加工の加工精度を高めることができる。また、ワークWを目標押込み量(St
T)で折曲げ加工する際に生ずる押込み量誤差(D
T)を補正したR曲げ補正目標押込み量(St
T’’)となるよう上金型26を駆動することで、実際には目標押込み量(St
T)でワークWが折曲げ加工されるから、ワークWを精度よく目標仕上がり角度(θ
T)で折曲げることが可能となる。
【0128】
(変更例)
実施例では、プレスブレーキに入力手段や設定手段、算出手段等を備えるよう構成した例を示したが、これに限られず、エアーベンドの状態で折曲げて得られるワークの設定仕上がり角度(θ
1)を特定仕上がり角度(θ
F)よりも大きくなる条件で設定し、該設定仕上がり角度(θ
1)に対応した設定押込み量(St
1)で上金型をV溝内に押込んでワークを折曲げて、設定押込み量(St
1)で折曲げられたワークの実測仕上がり角度(θ
M)を計測し、St−θグラフにおいて測定点および変曲点を通過する直線の傾き(f1)と、変曲点および加工点を通過する直線の傾き(f2)とが所定の関係を満たすように当該目標押込み量(St
T)を算出して折曲げ加工を行なう折曲げ加工方法を採用すれば、1回のワーク折曲げ加工により目標仕上がり角度に対応した目標押込み量を得ることができ、製品製造が可能となるまでに必要なワークの折曲げ回数を低減して生産性向上を図ることが可能となる。
【0129】
実施例では、前記測定点および変曲点を通過する直線の傾き(f1)と、変曲点および加工点を通過する直線の傾き(f2)とが、式(f)の関係を満たすよう算出したが、これに限られるものではない。すなわち、要求されるワークの折曲げ精度に応じて、(f1/f2)×(V/t)<4.5の範囲に設定したり、あるいは6.5<(f1/f2)×(V/t)の範囲に設定することもでき、St−θグラフにおいて測定点および変曲点を通過する直線の傾き(f1)と、変曲点および加工点を通過する直線の傾き(f2)を利用することで、1回のワーク折曲げ加工により目標仕上がり角度に対応した目標押込み量を得ることが可能となる。同様に、設定仕上がり角度(θ
1)に関しても、要求されるワークの折曲げ精度に応じて0.1°≦θ
1−θ
F≦7°の範囲外に設定することもできる。
【0130】
実施例では、ワークの加工条件(V溝の角度(φ)、V溝の幅寸法(V)、ワークの材質、ワークの板厚(t))毎に、ワークの仕上がり角度(θ)とベンドファクタ(A)との関係を示すベンドファクタデータテーブルを記憶手段に記憶するようにしたが、
図8に示すようにワークの仕上がり角度(θ)とベンドファクタ(A)の関係を表したワークの加工条件毎の曲線の近似式を導出し、当該近似式に基づいて設定仕上がり角度(θ
1)から対応するベンドファクタ(A)の値を算出するようにしてもよい。