(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737664
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】チップ型ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/08 20060101AFI20150528BHJP
H01H 85/175 20060101ALI20150528BHJP
H01H 85/18 20060101ALI20150528BHJP
H01M 2/34 20060101ALN20150528BHJP
【FI】
H01H85/08
H01H85/175
H01H85/18
!H01M2/34 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-500692(P2014-500692)
(86)(22)【出願日】2013年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2013053670
(87)【国際公開番号】WO2013125461
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2014年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-33875(P2012-33875)
(32)【優先日】2012年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000188593
【氏名又は名称】松尾電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖志
(72)【発明者】
【氏名】平倉 浩二
【審査官】
佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−273541(JP,A)
【文献】
実公昭47−10822(JP,Y1)
【文献】
特開2004−152518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/00−85/62
H01H 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板への取り付け用端子の2つの平板状部を間隔をあけて同一水平面上に有し、当該水平面とは異なる高さにある水平面における前記2つの平板状部間に位置するヒューズが、前記2つの平板状部と一体に形成されている端子一体型ヒューズと、
一方の面が閉じられ、前記一方の面と異なる水平面に位置する他方の面が開口され、前記開口の周縁から前記一方の面に向かう周壁部を有し、前記ヒューズが前記開口から前記一方の面側に向かう中途の位置に位置し、前記2つの平板状部が前記周壁部にそれぞれ接触しているケースと、
前記ケース内において前記ヒューズに設けられた消弧材部とを、
具備するチップ型ヒューズ。
【請求項2】
請求項1記載のチップ型ヒューズにおいて、前記ヒューズは、前記2つの平板状部における前記開口側にある縁部と一体に結合され、前記2つの平板状部における周壁部の外面側にある縁部から前記一方の面側に前記周壁部に接触して立ち上がり部が立ち上がっているチップ型ヒューズ。
【請求項3】
請求項2記載のチップ型ヒューズにおいて、前記2つの平板状部における前記開口側にある縁部は前記開口の縁に接してあり、前記開口側にある縁部から前記ケースの中央側に向かって傾斜した傾斜部の先端側に前記ヒューズが一体に形成されているチップ型ヒューズ。
【請求項4】
請求項1記載のチップ型ヒューズにおいて、前記消弧材部は、前記ケース内において前記ヒューズをその内部に含んでいるチップ型ヒューズ。
【請求項5】
請求項4記載のチップ型ヒューズにおいて、前記消弧材部は、前記ケース内全域に満たされているチップ型ヒューズ。
【請求項6】
請求項4記載のチップ型ヒューズにおいて、前記開口が蓋によって閉じられているチップ型ヒューズ。
【請求項7】
請求項1記載のチップ型ヒューズにおいて、前記消弧材部は、前記ヒューズの両端付近のみに設けられているチップ型ヒューズ。
【請求項8】
請求項7記載のチップ型ヒューズにおいて、前記開口が封止されているチップ型ヒューズ。
【請求項9】
請求項8記載のチップ型ヒューズにおいて、前記開口の封止は、前記開口に板状体を設けることによって行っているチップ型ヒューズ。
【請求項10】
請求項8記載のチップ型ヒューズにおいて、前記開口の封止は、前記ケース内に板状体を配置し、この板状体と前記開口との間に樹脂層を形成することによって行っているチップ型ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型ヒューズに関し、特に、ヒューズと端子とが一体に形成されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒューズと端子とが一体に形成されたチップ型ヒューズとしては、例えば特許文献1に開示されたようなものがある。特許文献1の技術では、直方体状の基板の上面の一端部から他端部までヒュージブルリンクが設けられている。基板の両端の上面、側面及び底面にパッドが設けられている。ヒュージブルリンクとパッドとは、電気的に結合されており、銅メッキプロセスまたはPVDによって同時に形成されている。これらパッド及びヒュージブルリンクの表面に伝導性金属の付加層が形成されている。パッド及びヒュージブルリンクが形成された基板の上面を被うように保護層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特許第4316729号公報(米国特許第600232号対応)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、ヒュージブルリンクとパッドとが一体に形成されたチップ型ヒューズを得ることができるが、基板を銅メッキした上で、エッチングによってヒュージブルリンク及びパッドを形成し、これらの上に付加層をホトエッチングによって形成し、更に保護層を形成しなければならず、その製造が面倒であった。
【0005】
本発明は、製造が容易であるヒューズと端子とが一体に形成されたチップ型ヒューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のチップ型ヒューズは、端子一体型ヒューズを有している。この端子一体型ヒューズは、基板への取り付け用端子の2つの平板状部を間隔をあけて同一水平面上に有している。当該水平面とは異なる高さにある水平面における前記2つの平板状部間にヒューズが位置している。このヒューズは、前記2つの平板状部と一体に形成されている。この端子一体型ヒューズは、例えば導電性金属をプレスすることによって製造することができる。本発明の一態様のチップ型ヒューズは、ケースも有している。このケースは、一方の面が閉じられ、前記一方の面と異なる水平面に位置する他方の面が開口され、この開口の周縁から前記一方の面に向かう周壁部を有している。ケースとしては、例えば一面を開口させた中空状の立体、例えば直方体を使用することができる。このケースでは、前記ヒューズが前記開口から前記一方の面側に向かう中途の位置に位置し、前記2つの平板状部が前記周壁部にそれぞれ接触している。前記ケース内において、消弧材部が前記ヒューズに設けられている。
【0007】
このように構成すると、ケースの周壁部上に端子の2つの平板状部を接触させた状態で、ヒューズがケース内に位置するので、チップ型ヒューズを容易に製造することができる。
【0008】
前記ヒューズを、前記2つの平板状部における前記開口側にある縁部と一体に結合することができる。この場合、前記2つの平板状部における周壁部の外面側にある縁部から前記一方の面側に前記周壁部に接触して立ち上がり部が立ち上がっている。このように構成することによって、ヒューズをケース内部に確実に位置させることができる。
【0009】
更に、前記2つの平板状部における前記開口側にある縁部を前記開口の縁に接することができる。この場合、前記開口側にある縁部から前記ケースの中央側に向かって傾斜した傾斜部の先端側に前記ヒューズが一体に形成されている。このように構成すると、端子一体型ヒューズの位置決めが容易に行え、製造がさらに容易になる。
【0010】
前記消弧材部は、前記ケース内において前記ヒューズをその内部に含むことができる。例えば、消弧材部は、ケース内全域に満たすことができる。このように構成すると、消弧材部のヒューズへの取付が容易に行える。
【0011】
開口は、蓋、例えばセラミックス製の蓋によって閉じることができる。蓋を設けることによってチップ型ヒューズの耐熱性を向上させることができる。
【0012】
上記の態様において、消弧材部は、前記ヒューズの両端付近のみに設けることもできる。例えば消弧材部は、ヒューズの両端付近の一方の面のみに設けることもできるし、ヒューズの両端付近を包囲するように設けることもできる。このように構成すると、ヒューズが発熱した際でも、ヒューズの両端付近は中央部よりも温度が低いので、消弧材部が化学反応を起こすことを防止でき、ヒューズの性能を安定化させることができる。
【0013】
さらに、ケースの開口を封止することもできる。例えば封止は、ケースの開口に板状体を設けることによって行うこともできるし、ケース内に板状体を配置し、この板状体と前記開口との間に樹脂層を形成することによって行うこともできる。このように開口を封止することによってチップ型ヒューズの耐熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態のチップ型ヒューズの縦断側面図である。
【
図2】
図1のチップ型ヒューズに使用する端子一体型ヒューズの平面図である。
【
図4】
図1のチップ型ヒューズの製造過程を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態のチップ型ヒューズの縦断側面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態のチップ型ヒューズの縦断側面図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態のチップ型ヒューズの縦断側面図である。
【
図8】
図7のチップ型ヒューズの製造過程を示す図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態のチップ型ヒューズの縦断側面図である。
【
図10】本発明の第6の実施形態のチップ型ヒューズの縦断側面図である。
【
図11】上記の各実施形態の変形例のチップ型ヒューズに使用する端子一体型ヒューズの平面図である。
【
図12】上記の各実施形態の別の変形例のチップ型ヒューズに使用する端子一体型ヒューズの平面図である。
【
図13】上記の各実施形態の他の変形例のチップ型ヒューズに使用する端子一体型ヒューズの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態のチップ型ヒューズは、例えばサーフェースマウント用のもので、車載用のヒューズまたはリチウム電池のヒューズとして使用することがある。
【0016】
このチップ型ヒューズは、
図1に示すように、端子一体型ヒューズ2を有している。端子一体型ヒューズ2は、
図1及び
図2に示すように、或る水平面上に位置するように直線状のヒューズ本体4を有している。このヒューズ本体4の両端に連結部6、6が、ヒューズ本体4と同じ水平面上に位置するように一体に形成されている。連結部6、6は矩形状に形成されている。連結部6、6の1対の長縁は、ヒューズ本体4の幅寸法よりも長く、それらの一方の長縁にヒューズ本体4の両端が結合されている。
【0017】
連結部6、6におけるヒューズ本体4が連結されている長縁とは反対側の長縁に傾斜部8、8が結合されている。傾斜部8、8も矩形状に形成されている。それぞれの1対の長縁は、連結部6、6の長縁と同じ長さ寸法であり、連結部6、6それぞれの一方の長縁が、連結部6、6の長縁に結合されている。これら傾斜部8、8は、連結部6、6に対して鈍角をなして外側にそれぞれ広がるように位置している。これら傾斜部8、8の他方の長縁は、ヒューズ本体4が位置する水平面とは高さの異なる水平面上に位置する。
【0018】
この水平面上に矩形状の平板状部10、10が位置している。平板状部10、10は、傾斜部8、8の外側に位置している。平板状部10、10の一縁に、傾斜部8、8の他方の長縁が一体に結合されている。この平板状部10、10は、連結部6、6及び傾斜部8、8よりも長縁の長さが長い。これら平板状部10、10における傾斜部8、8が結合されている縁と反対側の長縁には、平板状部10、10に対してほぼ直角をなすようにヒューズ本体4側に立ち上がった立ち上がり部12、12が一体に形成されている。2つの平板状部10、10及び立ち上がり部12、12が端子を構成している。
【0019】
言い換えると、ヒューズ本体4は、2つの平板状部10、10の間であって、平板状部10、10が位置する水平面とは高さの異なる水平面上に位置し、連結部6、6及び傾斜部8、8を介して平板状部10、10と一体に形成されている。
【0020】
この端子一体型ヒューズ2は、例えば銅または銅合金のシートを例えばプレスすることによって製造することができる。ヒューズ本体4の定格許容電流値は、例えば50Aである。
【0021】
端子一体型ヒューズ2は、そのヒューズ本体4がケース14内に位置するようにケース2に対して配置されている。ケース14は、例えば概略直方体状に形成されたもので、耐熱性と強度の観点からセラミック製のものが使用されている。ケース14は、内部が空洞に形成され、概略長方形状の主壁16を有し、主壁16と対向する面が開口されている。この開口を包囲するように周壁部が形成されている。周壁部の一部として、例えば
図3に示す側壁18、20が主壁16の2つの長縁に沿って且つ主壁16に対して直角に形成されている。さらに周壁部の残りの部分として、主壁16の2つの短縁に沿ってかつ主壁16に対して直角に端壁22、24が形成されている。ケース14のサイズは、例えば長さが6mm、幅が4.0mm、高さが3mmである。
【0022】
このケース14の内部にヒューズ本体4が位置させられた状態において、平板状部10、10が端壁22、24に接触している。この状態において端壁22、24の開口側にある縁に傾斜部8、8と平板状部10、10との結合部が接触しており、側壁18、20の内面に傾斜部8、8と平板状部10、10が接触している。また、立ち上がり部12、12が端壁22、24の外面に接触している。即ち、端壁22、24の厚みは、平板状部10、10の長縁間の寸法にほぼ等しい。また、平板状部10、10の長縁の長さは、
図3に示すように端壁22、24の長さ寸法よりも若干短い。この状態で、ヒューズ本体4は、主壁16と開口との間に位置している。
【0023】
ケース14内には、消弧材部、例えばシリコーン樹脂またはセメントの層26が、その内部にヒューズ本体4を埋没させるようにケース14の内部全体に形成されている。シリコーン樹脂は、ゴム様弾性があり、かつ耐熱性があり、炭化しない点から、またセメントは耐熱性があり、炭化しない点から、採用されている。
【0024】
さらに、板状部10、10及び立ち上がり部12、12の外面には、平板状部10、10を図示しない基板、例えばプリント基板上にはんだ付けする際に利用するためのメッキ層28が形成されている。
【0025】
このチップ型ヒューズは、
図4に示すようにして製造される。まず、銅または銅合金のシート30をプレスして、端子一体型ヒューズ2が製作される。これと並行してケース14が製造される。主壁16を底にした状態でケース14内に主壁16側から約半分の高さまで液状のシリコーン樹脂26aが開口から注入される。
【0026】
次に、ヒューズ本体4がケース14内に位置し、平板状部10、10が端壁22、24に接触し、かつ立ち上がり部12、12がケース14の外面に接触するように、ケース14に端子一体型ヒューズ2が配置される。この際、傾斜部8と連結部6との結合部が端壁22、24の開口側の縁に接触し、かつ立ち上がり部12、12がケース14の外面に接触しているので、この配置によって、ヒューズ本体4の長さ方向に対する端子一体型ヒューズ2の位置決めが行われる。
【0027】
この後、少なくともヒューズ本体4が埋まるように開口の位置まで液状のシリコーン樹脂26bが充填される。その後に、シリコーン樹脂26a、26bが硬化され、消弧材部26が形成される。最後に、平板状部10、10の外面及び立ち上がり部12、12の外面にメッキ層28が形成される。
【0028】
このようにケース14内にシリコーン樹脂26aを充填した後、端子一体型ヒューズ2をケース14内に挿入し、残りのシリコーン樹脂26bを充填し、端子の平板状部10、10及び立ち上がり部12、12にメッキすることによって、チップ型ヒューズを製造することができる。基板をメッキした後に、エッチングし、その後にメッキする従来の製造方法と比較して、このチップ型ヒューズの製造は容易である。それだけでなく、板状の比較的厚い例えばCu層をヒューズ母材として使用できるので、例えば50A程度の大電流に対応することができる。また、ヒューズ本体4と実装用の端部電極である平板状部10等が一体形成されているので、ヒューズ本体4と平板状部10とを接続するための不要な抵抗成分が発生せず、信頼性の高いヒューズが得られる。また、ヒューズ部と端部電極とが一体であることにより、両者を接続するためのスペースが不要で、比較的小型のヒューズが得られる。
【0029】
本発明の第2の実施形態のチップ型ヒューズを
図5に示す。このチップ型ヒューズは、消弧材層として、ビーズ層31を追加した以外、第1の実施形態のチップ型ヒューズと同様に構成されている。同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。ビーズ層31は、ヒューズ本体4及び連結部6の主壁16側の面と接するように、消弧材部26内に設けられている。ビーズ層31は、複数の球状ガラスビーズや球状中空ガラスビーズからなり、複数の層をなすように充填されている。各球状ガラスビーズや球状中空ガラスビーズは、互いに非連結のものである。
【0030】
このようにビーズ層31をケース14内に設けると、ビーズとビーズとの間に空間ができ、これら空間を総合すると、例えばケース14の約30%の空間とできる。ヒューズ本体4が溶断する際に、ヒューズ本体4が溶けたことによりケース14内の圧力が上昇しようとするが、ビーズ層31を設けたことによりケース4内に上述した空間があるので、上昇しようとする圧力を空間に逃がすことができ、消弧性が向上する。さらに、ガラスビーズや中空ガラスビーズは、ヒューズ本体4よりも軟化点が低いので、ケース14内に放射状に分散した溶けたヒューズの熱によって、ガラスビーズや中空ガラスビーズは軟化し、再固着して、溶けたヒューズを封じ込めることもできる。
【0031】
ビーズ層31の形成は、
図4に示した製造方法におけるシリコーン樹脂26aを充填した後であって端子一体型ヒューズ2をケース14に挿入する前に、シリコーン樹脂26a上に球状ガラスビーズや球状中空ガラスビーズを複数層に亘って配置することによって、行う。または、シリコーン樹脂26aを充填せずに、端子一体型ヒューズ2をケース14に挿入する前に、ガラスビーズや中空ガラスビーズのみを複数層に亘って配置することも可能である。
【0032】
図6に第3の実施形態のチップ型ヒューズを示す。このチップ型ヒューズは、第1の実施形態のチップ型ヒューズにおいて、ケース14の開口に、例えばセラミック製の蓋27を設けて、開口を閉じたものである。第1の実施形態のチップ型ヒューズと同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。蓋27を設けることによってチップ型ヒューズの耐熱性を向上させることができる。なお、第2の実施形態のチップ型ヒューズにおいても、このチップ型ヒューズと同様に蓋27を設けることができる。
【0033】
図7に第4の実施形態のチップ型ヒューズを示す。第1の実施形態のチップ型ヒューズでは、消弧材部26が14の全域に形成されていたのに対し、このチップ型ヒューズでは、ヒューズ本体4の両端にある連結部6、6の開口側の面にのみ、例えばシリコーン樹脂層からなる消弧材部261、261を形成してあり、ヒューズ本体4と主壁部16との間には何も存在していない。他の構成は、第1の実施形態のチップ型ヒューズと同様に構成されている。同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
例えば大きな定格許容電流のヒューズであって、第1の実施形態のチップ型ヒューズのようにケース14内全域に消弧材部を形成した場合、大電流がヒューズ本体4に流れたとき、ヒューズ本体4の温度が上昇し、この温度によって消弧材部が化学反応を起こして、消弧材部から白煙が生じる可能性がある。これを防止しつつ、ヒューズ本体4の溶断時のアークの発生を防止するため、連結部6、6にのみ消弧材部261、261を形成してある。
【0035】
さらに、この実施形態のチップ型ヒューズでは、傾斜部8、8の中途にそれぞれ跨るように例えばセラミック製の板状体32が配置されている。この板状体32とケース14の開口との間に、封止用樹脂層、例えばシリコーン樹脂層34が形成されている。この板状体32とシリコーン樹脂層34とによって、開口の封止が行われている。板状体32とシリコーン樹脂層34とのよって開口を封止することによって、チップ型ヒューズの耐熱性を向上させている。なお、封止用樹脂層としては、シリコーン樹脂層の他に、エポキシ樹脂層などの他の樹脂層を使用することもできる。
【0036】
また、この実施形態のチップ型ヒューズでは、メッキ層281、281が、立ち上がり部12、12の内外面の全域、平板状部10、10の内外面の全域及び傾斜部8、8の内外面の一部に形成されている。
【0037】
図8に第4の実施形態のチップ型ヒューズの製造工程を示す。まず、銅または銅合金のシート30をプレスして、端子一体型ヒューズ2が製作される。さらに端子一体型ヒューズ2にメッキ層281、281が形成される。これと並行して主壁16を底にした状態でケース14の端壁22、24の開口側の面及びこれに連なる内面に接着剤36、36が塗布される。
【0038】
次に、ヒューズ本体4がケース14内に位置し、平板状部10、10が端壁22、24に接触し、かつ立ち上がり部12、12がケース14の外面に接触するように、ケース14に端子一体型ヒューズ2を配置する。この配置によって、接着剤36、36によって、端子一体型ヒューズ2がケース14に接着される。
【0039】
この後、消弧材層261、261を連結部6、6に形成する。その後、板状体32を配置し、シリコーン樹脂層34を形成する。
【0040】
図9に第5の実施形態のチップ型ヒューズを示す。このチップ型ヒューズでは、消弧材層261、261が、連結部6の主壁部16側にも形成されている。他の構成は、第4の実施形態のチップ型ヒューズと同一である。第4の実施形態のチップ型ヒューズと同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。消弧材層261、261を、連結部6、6の主壁部16側及び開口側にそれぞれ設けているので、消弧機能を向上させることができる。
【0041】
図10に第6の実施形態のチップ型ヒューズを示す。このチップ型ヒューズでは、開口の封止が、例えばセラミック製の蓋271のみで行われている。他の構成は、第4の実施形態と同一である。第4の実施形態のチップ型ヒューズと同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。ケース14の開口の封止を蓋217のみで行っているので、チップ型ヒューズの製造が容易である。なお、第5の実施形態のチップ型ヒューズにおいても、この実施形態のチップ型ヒューズと同様に蓋271のみでケース14の開口を封止することもできる。
【0042】
上記の各実施形態では、ヒューズ本体4は、平面形状が直線状のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば
図11に示すように曲線状のもの、具体的には平面形状がS字状のヒューズ本体4aを使用することもできる。また、上記の各実施形態では、連結部6を矩形状に形成したが、
図12に連結部6aとして示すようにヒューズ本体4側の幅が狭い台形状に形成することもできる。
【0043】
また、上記の各実施形態では、連結部6及び傾斜部8は、平板状部10よりも長さ寸法が短いものとしたが、
図13に示すように平板状部10と同じ長さ寸法を有する連結部6b、6b及び傾斜部8a、8aを使用することもできる。
【0044】
また、上記の各実施形態では、ヒューズ本体4の長さ方向に対する端子一体型ヒューズ2の位置決めのために、傾斜部8と連結部6との結合部を端壁22、24の開口側の縁に接触させたが、傾斜部8や連結部6が持つ熱をケース14にできるだけ伝えないようにしたい場合には、傾斜部8と連結部6との結合部に、端壁22、24側を向く小突起、側壁18、20側を向く小突起のいずれか一方または双方を設け、傾斜部8や連結部6が直接にケース14に接触しないようにして、一体型ヒューズ2のケース14に対する位置決めをすることもできる。
【0045】
また、第1及び第2の実施形態では、このチップ型ヒューズの製造の最終工程において端子一体型ヒューズ2の平板状部10、10の外面及び立ち上がり部12、12の外面にメッキ層28を形成したが、必ずしも最終工程において行う必要は無く、例えば、ケース14内に端子一体型ヒューズ2を設置した後、シリコーン樹脂26a、26bの充填前にメッキ層28を形成することもできる。
【0046】
第2の実施形態では、ビーズ層31は、非連結の複数のガラスビーズや中空ガラスビーズから構成したが、これらガラスビーズはガラスの軟化温度から摂氏数度乃至数十度高い温度で熱処理することで隣接したガラスビーズ同士を融着させてガラスビーズをブロック化して、このブロックをビーズ層31として使用することもできる。また、ガラスビーズや中空ガラスビーズに代えて、塩化コバルトフリーのシリカゲル、ゼオライト、アルミナビーズ等も使用することもできる。