(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737703
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】鍼治療具
(51)【国際特許分類】
A61H 39/08 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
A61H39/08 V
A61H39/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-178119(P2010-178119)
(22)【出願日】2010年8月6日
(65)【公開番号】特開2012-34865(P2012-34865A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】510215950
【氏名又は名称】小井土 善彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】小井土 善彦
【審査官】
久郷 明義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−021009(JP,A)
【文献】
特開2008−023117(JP,A)
【文献】
特開2006−239144(JP,A)
【文献】
特開2009−011781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺し入れ位置近傍を押手により支持して患者に刺し入れ可能な鍼と、
鍼を全長に渡って封止する包装材を兼ね、開封により鍼に長手方向に移動自在に外嵌合するとともに、一端が前記刺し入れ位置近傍を覆って患者と押手の間に介装可能で、かつ押手による鍼の支持が可能な柔軟性を備える液体非透過性を有する材料により形成される保護カバーとを有し、
前記保護カバーは、袋状に形成されて内部に鍼を収容し、鍼の両端に対応する両端対応部を開封可能で、鍼の刺し入れ先端に対応する一端側を鍔状にめくり上げ可能にされる鍼治療具。
【請求項2】
前記保護カバーは、両端対応部の外形形状が異なる請求項1記載の鍼治療具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍼治療具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学の進歩に伴い、近年、鍼治療における押し手を介した感染のおそれが顕在化しつつある。これに対し、このような感染の防止を図るためのものとして、従来、特許文献1に記載の鍼灸施術用補助具が知られている。この補助具は、チューブ状に形成された本体と、この本体の下端部に形成された円形状の鍔とから構成され、合成樹脂材により形成されて柔軟性を備える。上記本体には上下両端部間に渡ってスリットが形成されるとともに、上記鍔には切込みが設けられる。
【0003】
上記補助具は鍼に被せられる鍼管に取り付けられ、本体が押手と鍼との間に介在することで施術者と鍼との接触が遮断され、また、鍔により患者の刺入部位が保護される。さらに、上記スリットおよび切込みによって鍼管に対して補助具を容易に着脱することができる。
【0004】
以上の補助具は、主に施術者の押手が鍼に触れることによる感染の防止を図るものであるが、押手を介した感染というものを防止するためには、特に、患者の鍼刺し入れ位置近傍の肌と施術者の押手とを接触させないことが重要であると考えることができる。すなわち、例えば鍼が刺し入れられることによって患者が鍼刺し入れ位置から出血し、鍼刺し入れ位置近傍の肌に患者の血液が広がってしまった場合に、この血液に押手が触れてしまうことが想定される。
【0005】
この点、上述した補助具は、鍔によってこのような患者の鍼刺し入れ位置近傍の肌と施術者の押手との接触を防止することが必ずしも不可能ではないと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-126038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した補助具を用いる場合には、手間がかかるという欠点がある。
【0008】
すなわち、鍼は、清潔に保持するために、例えば鍼管を被せた状態などで個別包装されて販売されているのが一般的であり、上述した補助具を用いる場合には、この包装を解いた後に鍼管に補助具を取り付けなければならない。この取り付けに際しては、施術時の押手の位置を考慮して鍼管と補助具のそれぞれの一端を正確に合わせるなどする必要があり、鍼管をスリット等に通過させる取り付け作業とともに正確な位置合わせ作業が要求される。
【0009】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、押手を介した感染を防止することができ、かつ、取り扱いの容易な鍼治療具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば上述した目的は、
刺し入れ位置近傍を押手1により支持して患者2に刺し入れ可能な鍼3と、
鍼3を全長に渡って封止する包装材を兼ね、開封により鍼3に長手方向に移動自在に外嵌合するとともに、一端が前記刺し入れ位置近傍を覆って患者2と押手1の間に介装可能で、かつ押手1による鍼3の支持が可能な柔軟性を備える液体非透過性を有する材料により形成される保護カバー4とを有
し、
前記保護カバー4は、袋状に形成されて内部に鍼3を収容し、鍼3の両端に対応する両端対応部5、5を開封可能で、鍼3の刺し入れ先端6に対応する一端側を鍔状にめくり上げ可能にされる鍼治療具を提供することにより達成される。
【0011】
本発明によれば、鍼治療具は、患者2の鍼3刺し入れ位置近傍と施術者の押手1との間に介装可能な保護カバー4を有し、この保護カバー4を鍼3に外嵌合して構成され、これにより保護カバー4の鍼3への取り付け作業を省くことができるようにされる。上述した従来における補助具を用いる場合のように鍼3に鍼管を被せて使用する場合には、予め鍼3の外側に鍼管を装着しておくことがこのような装着の手間を省くためには望ましく、この場合には鍼管を介在させて鍼3に保護カバー4を外嵌合すれば足りる。
【0012】
また、この保護カバー4は鍼3の長手方向に移動自在にされ、これにより鍼3の長手方向にスライド移動させるだけで鍼3に対する位置合わせ作業を容易に行うことができる。この場合、保護カバー4を長手方向に対する直交方向に脱離不能に鍼3に保持させれば、スライド移動が安定する。保護カバー4を鍼3の長手方向に移動自在にするには、例えば、鍼3や上述した鍼管よりも内径が大きい筒状などであれば足り、このため保護カバー4
を後述するように筒状に変化できるようにすればよい。
【0013】
さらに、保護カバー4は、液体非透過性を有する材料により形成され、一端が鍼3の刺し入れ位置近傍を覆って該刺し入れ位置近傍と押手1との間に介装可能にされることにより、これらの接触を禁止することができ、体液を浸透させないことで上述した感染を防止することができる。患者2と押手1との間に介装する方法としては、上述した従来の補助具にもあるように、保護カバー4に鍔状の部分があれば足り、
保護カバー4にめくり上げることにより鍔状に変形できるような部分を形成すればよい。この場合、鍼状の部分は、円環形状でもよいが、花弁状であったり、押手1を構成する母指と示指に対応して鍼3周りの二方向に延びるものでもあっても足りる。
【0014】
また、上述した鍔状の部分を設けた場合において、これに適宜の剛性を持たせた場合には、上述した保護カバー4のスライド移動は、押手1で鍔状の部分を押すことにより可能になり、スライド移動後に鍼3の刺し入れ作業にスムーズに移行することができる。すなわち、母指と示指により鍼3を跨ぐ対向位置で鍔部を均等に押せば、そのまま押手1として患者2の肌に押し当てて鍼治療に入ることができる。
【0015】
以上の保護カバー4は、押手1による鍼3の支持が可能な柔軟性を備えた材料で形成されるために、押手1による鍼3の支持や、患者2への触診などの押手1の機能をあまり損ねることもない。
【0016】
したがって本発明によれば、上述した従来例のように位置合わせした状態で鍼管等をスリットに通すような細かい作業が不要となり、位置合わせ作業も容易になるために、視力に障害のある場合が比較的多い鍼師において、このような障害のある場合にも容易に取り扱うことができるようになる。
【0017】
上述した保護カバー4は、鍼3を包装する包装材を兼ねており、これにより鍼治療具の部品点数を減らして製造コストを低減することができる。
具体的には、袋状に形成されて内部に鍼3を収容し、鍼3の両端に対応する両端対応部5、5を開封可能で、鍼3の刺し入れ先端6に対応する一端側を鍔状にめくり上げ可能に保護カバー4を構成
することによって、開封することにより上述したような筒状に変化させることができ、めくり上げることによって押手1と患者2との間に介装することもできるようになる。
【0018】
包装材を兼ねた保護カバー4は、具体的には例えば、上述したような柔軟性を備えた材料で形成されたシート材の二枚を重ね合わせ、鍼3の収容スペースを除く周縁部を剥離操作可能に接着して構成することができる。このように構成すれば、表裏のシート材同士を引き剥がすようにしてめくり上げることにより、母指と示指に対応して二箇所に分かれた鍔状の部分を形成することも可能になる。また、このようなめくり上げ操作がなされることで、めくり上げ量によって鍼3の長手方向における保護カバー4の長さも短くなるために、鍼3や鍼管の両端を十分に露出させて施術をしやすくすることも可能になる。
【0019】
この場合においてさらに、めくり上げによって鍔状の部分を形成する側のシート材同士の接着しろを長く設定し、例えば鍔状の部分として張り出させたい寸法に合わせれば、めくり上げ操作によって保護カバー4を鍼3に対して位置合わせした状態にすることも可能になる。
【0020】
また、鍼3や患者2の鍼3刺し入れ位置近傍の肌に接触することを考慮すれば、保護カバー4、より具体的には上述した鍔状の部分の患者2側の面や筒状の内壁面などは、鍼3同様に清潔に保持することが望まし
い。包装材を兼ねて構成
すると、袋の内面が鍔状の部分の患者2側の面や筒状の内壁面を構成することになるため、これらを容易に清潔に保つことができる。
【0021】
さらに、保護カバー4が包装材を兼ねる場合、上述した両端対応部5の外形形状を異ならせることにより、内包されている鍼3の差し入れ先端側と末端側を保護カバー4により容易に判別することができる。したがってこの場合には、押手1を考慮した向きで開封前の包装材としての保護カバー4を掴むことが容易になり、取り扱い性がさらに向上する。また、両端対応部5の差異を外形形状に持たせることで、視覚以外に触覚でも判別することが可能になり、視力に障害のある場合でも容易に取り扱うことができる。
なお、本発明によれば、
刺し入れ位置近傍を押手1により支持して患者2に刺し入れ可能な鍼3と、
鍼3に長手方向に移動自在に外嵌合され、一端が前記刺し入れ位置近傍を覆って患者2と押手1の間に介装可能で、かつ押手1による鍼3の支持が可能な柔軟性を備える液体非透過性を有する材料により形成される保護カバー4とを有する鍼治療具を提供することも可能である。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、押手を介した感染を防止することができ、かつ、取り扱いの容易な鍼治療具を提供することができるために、鍼治療の安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る鍼治療具を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)の1B-1B線断面図、(c)は(b)の1C-1C線断面図、(d)は(b)の1D-1D線断面図であって接着領域を示す図である。
【
図2】使用状態を説明する図で、(a)は包装の開封段階を示す図、(b)は弾入段階を示す図である。
【
図3】使用状態を説明する図で、(a)は刺入段階を示す図、(b)は(a)の3B-3B線断面図である。
【
図4】使用状態を説明する図で、刺鍼が完了した段階、および抜去段階を示す図である。
【
図5】変形例を示す図で、(a)は包装の開封段階を示す図、(b)は刺鍼の準備段階を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1ないし
図4に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態において、鍼治療具は、
図1に示すように、鍼3と鍼管11を有し、これらを包装材(保護カバー4)で包装して形成される。上記鍼3は、例えば40mmなどの人体に先端部のみを刺鍼3するに適した長さの鍼体3aを有し、刺し入れ位置近傍を押手1により支持して患者2に刺し入れ可能に形成される。この鍼3は具体的には、線径が0.12mmのステンレス鋼線からなるいわゆる単回使用毫鍼として市販されているものであり、刺し入れ先端6としての鍼尖は尖頭状に形成され、鍼体3aの末端側には、把持しやすいように鍼体3aよりもやや径の太い合成樹脂材等からなる鍼柄3bが設けられる。
【0025】
また、上記鍼管11は、鍼体3aよりもやや長寸の筒状をなし、その内径を上述した鍼柄3bよりも大径にして形成される。この鍼管11は、具体的には、合成樹脂材を成形して形成されるもので、上述した鍼3とセットにして市販されているものである。
【0026】
以上の鍼3と鍼管11は、鍼体3aを鍼管11内に収容した状態で鍼管11から鍼柄3bの後端部が弾入(切皮)に適した長さ寸法で突出するようにして組み付けられ、また、この実施の形態においては、図示省略されるが鍼柄3bと鍼管11を微小面積で接着、嵌合させることにより組み付け姿勢が維持でき、かつ、使用時には指で鍼柄3bの側面を押すことにより接着、嵌合状態を解除できるようにされたものが使用される。
【0027】
一方、包装材4は、柔軟性および液体非透過性を備えた短冊形状のシート材4aの2枚を重ねてこれらの周縁部を接着し、内部に上述したようにして組み付けられた鍼3と鍼管11を収容可能な空間4bを形成した袋状にされる。この包装材4は、具体的には例えばポリエチレンなどの適宜の合成樹脂材など、望ましくは肌触りの良好なものにより形成され、例えばエチレンオキサイドガスを充填して密閉された収容空間4bに滅菌処理した鍼3を個別包装する。また、包装材4は、透明あるいは半透明にされることで内部の鍼3等が見えるようにされ、さらに、鍼3等が包装内部で妄りに動かないように、上述した収容空間4bは、鍼3と鍼管11を組み付けたときの外形形状よりもひとまわり大きい程度の大きさに設定される。
【0028】
加えて、上記包装材4は、押手1としての示指1aや母指1bが患者2の肌に接触するときの指の長手方向の寸法よりも広い幅寸法に形成され、また、
図1(d)に示すように、鍼3の刺し入れ先端6側の接着しろ12に余長部13を設定し、該先端側5Aを末端側5Bに比して長寸にして形成される。この刺し入れ先端6側の接着しろ12の長さは、内部に収容される鍼管11の鍼3の刺し入れ先端6側の一端11aまで剥がしたときに、押手1の指の幅寸法よりも長くなるように設定される。さらに、包装材4の先端側5aおよび末端側5B、すなわち長手方向の両端部5、5(両端対応部)には、上述したシート材4a同士を引き剥がしやすいように、引き剥がしに際して摘むことができる摘みしろ14が設定される。なお、この摘みしろ14は、上述したシート材4a、4a同士が接着されていなければ足り、
図1(b)においてはシート材4a、4a同士が分離した状態にされるが、重なり合っていても問題ない。
【0029】
また、この実施の形態において、視力に障害のある鍼師が触覚でわかるように、包装材4は、先端側5Aの隅角部に隅取り15を設けて形成され、かかる隅取り15がされない末端側5Bと識別できるようにされる。
【0030】
以上の鍼治療具は、包装材4で包装された状態で鍼灸院などにおいて保管され、鍼治療に際して開梱されて使用される。
図2(a)は包装を解く際を示すもので、先ず最初に、包装材4の先端側5Aの摘みしろ14を両手で摘み、
図2に示すように鍼管11の先端の位置まで、余長部13を鍼3の末端側に向かってめくり上げるようにして包装を解く。このとき、先端側5Aを上に向けた姿勢にすれば、鍼管11の包装材4からの脱落を防止でき、鍼管11の先端11a位置に合わせて簡単にめくり上げることができる。また、この状態で包装材4の先端側5Aが鍔状になる。
【0031】
次に、鍼3や鍼管11が未だ包装材4内に残っている状態のまま、鍼管11の先端11aをシャーレの底面に突き当てるなどして鍼3等が包装材4から脱落しないようにし、この状態で包装材4の末端側5Bの摘みしろ14を摘んでめくり上げるようにして開放する。このときめくり上げる長さは、めくり上げによって露出する鍼柄3bを刺手により把持して刺入できるような程度以上にされる。以上の開梱により、包装材4は両端対応部5、5が開放した状態になり、中間部には、開放されずに筒状をなし、後述するように母指1bと示指1aで把持可能な把持部16が形成される。また、この把持部16の鍼3刺し入れ先端6側には、上述した余長部13により、後述するように押手1と患者2の針刺し入れ位置近傍との間に介装される鍔部17が形成される。
【0032】
なお、以上の開放操作は、包装材4の先端側5Aと末端側5Bとで順序を逆にして行っても足りる。また、包装材4の末端側5Bのめくり上げ長さは、少なくとも包装材4を構成する2枚のシート材4a、4a同士が完全に分離してしまう程度よりも短ければ足り、多少長くすることも可能である。
【0033】
このようにして開梱を終えたら、
図2(b)に二点鎖線で示すように、鍼管11を示指1aと母指1bで包装材4の外側から挟むようにして、包装材4を厚さ方向に把持する。このときの把持位置は、示指1aと母指1bの中指側の側面が鍼管11の先端11aに揃う位置、すなわち、押手1の患者2側の面を鍼管11の先端11a側の端面に揃えたような状態にする。また、この状態で鍼柄3bの側面を押手1とは反対の手で押して鍼3と鍼管11の接着、嵌合状態を解除するとともに、解除後に鍼3が脱落しないように、示指1aと母指1bで鍼管11をややつぶすように握って鍼3を把持して支える。以上で治療行為前の準備は完了し、続いて治療行為を行う。
【0034】
治療行為は、先ず、上述したように押手1で包装材4の把持部16を把持した姿勢のまま、鍼管11の先端11aを患者2の鍼3刺し入れ位置に合わせる。このとき、鍔部17は押手1と患者2の肌との間に介装され、鍔部17を介して押手1で刺し入れ位置近傍を押すようにしてツボの位置を確認する。なお、これに先立って、患者2の施術野は消毒、揉法される。また、包装材4を把持しない状態で押手1によりツボのおおよその位置を確認しておけば、ツボの位置の確認をスムーズに進めることができる。また、包装材4の把持する向きは、隅取り15の有無によって判断することができる。
【0035】
次に、
図2(b)に示すように、鍼3刺し入れ位置に立管された鍼管11の後端から露出し、包装材4の後端からも露出する鍼柄3bを押手1とは反対の手で押して、弾入(切皮)する。このとき患者2に鍼管11や押手1をやや強く押し当てることにより、その痛みが軽減される。
【0036】
弾入を終えたら、
図3(a)に示すように、示指1aと母指1bによる包装材4の挟み付けを緩めて鍼管11を取り外した後、再度示指1aと母指1bにより包装材4を挟み付け、鍼3の先端部を支持する。上述したように包装材4が柔軟性を備え、また、その優れた変形能により、
図3(b)に示すように鍼3周りを対向方向からやや包むようにして捕捉することができる。
【0037】
この後、
図3(a)に示すように、刺手18を添えて刺入する。このとき、押手1により、患者2の刺し入れ位置近傍をやや強く押すことでその痛みを軽減させることができる。また、上述した包装材4の柔軟性等を利用することにより、押手1によって、鍼3を支持してその湾曲や折鍼を防止することができ、さらに、気が至る感覚を感じて治療効果を評価することができる。
【0038】
以上のようにして刺入を終えたら、
図4に示すように、包装材4を取り外し、症状などに応じて所定時間刺入状態を維持した後、同図に二点鎖線で示すように、酒精綿19などで示指1aと母指1bにより鍼3を摘んで抜鍼する。この後、刺し入れ位置を消毒や揉法し、治療行為が終了する。
【0039】
なお、以上の実施の形態においては鍼管11を備えた場合を示したが、管鍼法を使用しない場合などに応じ、鍼管11を除いて構成することも可能で、この場合には、包装材4の収容空間4bを鍼3よりもひとまわり大きい程度にすれば操作性を良好に維持することができる。
【0040】
図5に本発明の変形例を示す。なお、この変形例において、上述した実施の形態と同一の構成要素は、図中に同一の符号を付して説明を省略する。この変形例において、包装材4には、上述した余長部13が設定されず、治療行為前の準備段階において鍼管11との位置合わせや鍔部17の長さが確保される。
【0041】
すなわち、
図5(a)に示すように、余長部13のない包装材4の先端側を上述した実施の形態と同様の長さまでめくり上げると、鍼管11が中間部まで露出してしまい、めくり上げ終端が鍼管11の先端11aを超えてしまうが、包装材4の両端対応部5、5を開放させた状態で、
図5(b)に示すように、包装材4に対して鍼3と鍼管11を後方に引き下げることにより、鍼管11の先端11aをめくり上げ終端位置に合わせることができる。なお、上述したように鍼3と鍼管11を包装材4に対して引き下げることに代えて、包装材4を鍼3や鍼管11に対して先端側5Aにスライド移動させても足りる。
【0042】
したがってこの変形例によれば、鍼治療具をよりコンパクトにすることができ、保管や運搬に際してスペースをあまり要さない。
【符号の説明】
【0043】
1 押手
2 患者
3 鍼
4 保護カバー
5 両端対応部
6 刺し入れ先端