【実施例】
【0086】
実施例1
この実施例では、200mgのシオグサ種緑藻セルロース粉末を、8分間の高エネルギー超音波処理(VibraCell 750W, Snonics, USA)を用いて、50mlの水に分散させ、次いで、該分散物を濾紙上に収集した。3mlのピロールをメスフラスコ内に入れ、全容積を100mlとした。収集したセルロースのケークをピロール溶液と混合し、超音波器を用いて1分間分散させた。該分散液を30分間静置し、次いで、濾紙上に収集した。8gのFeCl
3を100gの水に溶解させ、重合を誘導するためにフィルターケークに通した。多孔質のスポンジ状ケークが形成された。100mlの0.1MのHClをドーパントとして該ケークに通した。生成物を水で十分に洗浄し、紙シート内で乾燥させた。Pyモノマーを被覆することを除いて、前記に従って対照となるセルロース材料を作製したところ、74m
2/gの表面積を有していた。
【0087】
調製した試料のシートを
図1に示す。該複合材料は、その本来の統一性を損なうことなく、曲げたり、ねじったり、または箔を裏打ちしたりすることができるように、著しい機械的弾性を有している。走査型電子顕微鏡は、英国のレオ・ジェミニ(Leo Gemini)社製1550FEG SEMを用いた。試料は、両面粘着テープを用いてアルミニウム台紙上に載せ、顕微鏡の使用前に、Au−Ptでスパッタした。
図2に該試料の顕微鏡写真を示す。10〜20μm幅の微細な繊維が明らかに見られる。該繊維は、絡み合って、3次元の多孔性ネットワークを形成している。既に報告されているとおり〔ジョンソンらのSynthetic Metals, 153:65-68 (2005)〕、PPyの島状のものは見られず、該繊維表面上の被膜は、中断されていない。該SEM写真は、著しい多孔質で、しかもPPy被膜が微細な多孔性ネットワークを損なっていないことを示している。
図3は、該ICP複合材料の透過型電子顕微鏡視写真を示している。PPyの連続的で中断されていない層で被覆された該複合材料の中心のセルロース繊維が明瞭に示されている。この写真から、PPy被膜の厚みが約50nmであるように見える。
図4は、基材のセルロース材料のXRDプロファイルを示している。狭くかつ輪郭のはっきりしたピークは、高度の構造組織を示しており、結晶性率は、92%であると評価される。
【0088】
米国のマイクロメリティクス(Micromeritics)社製ASAP2020により、窒素ガス吸着及び脱着の等温式を得た。比表面積をBET法に従って測定し、該試料の多孔度をBJH法を用いて評価した。
図5Aに示されている吸着等温式は、典型的なタイプIIの曲線である。測定した比表面積は、56.56m
2/gであり、全多孔容積は、0.1757cm
3/gであった(p/p
0=0.9857で、1372.8Å未満の多孔の単一点吸着容積)。Pyモノマーの塗布工程を除いて、前記に従って作製した対照セルロース材料は、74m
2/gの表面積を有している。また、
図5Bにおいて、BJH脱着データは、孔径に対する多孔容積から誘導されたものとしてプロットされている。該プロットからは、殆どの多孔は、200と600Åとの間の範囲内にあるように見える。ガス吸着分析の結果は、大表面積を示すSEM写真に応じており、多孔容積は、セルロース繊維上での引き続くピロールの重合によって損なわれていなかった。
【0089】
イオン組み込み実験において、PPy膜の大表面積が、機能性と特に該膜の高いイオン吸着容量を得るために重要であることが示されている。より小さなイオンは、該ポリマーバルク中に浸透するのに十分な移動性を示すことができるのに、大きなイオン化種の吸着は、液体の界面に隣接する該ポリマーの最外層に限定されている。したがって、吸着容量を増大させるために厚みのあるポリマー層とすることは、しばしば正当ではない。これは、該ポリマー膜のバルク中に短い距離でしか入ることができない大きなイオンにとって、特に当てはまる。それゆえに、本発明の複合材料におけるように、大きな表面積に分布した比較的薄いポリマー膜は、効率と比吸着容量の向上にとって好ましい。
【0090】
PPy/シオグサ・セルロース複合材料を、白金対電極とAg/AgCl参照電極を備えた3電極機構の作用電極として用いて、サイクリックボルタンメトリー実験を行った。該実験では、種々の濃度でイオンを含有する一連の溶液を用いた。
図6A−6Dに、電解質として飽和NaClを用いて、種々の電圧掃引速度で行った実験を示す。遅い掃引速度でより明瞭に示されるが、プロット中に、酸化及び還元のピークが明瞭に見られる。サイクリックボルタモグラムを得るために、飽和NaClを使用し、試料の大きさを小型化した。さもないと、電流は、電解溶液の抵抗によって制御されることになる。後者は、該複合材料中のポリマー量が大きく、しかも試料の導電性が高いことを示している。
【0091】
多くの酸化・還元サイクル(n=60)で該複合材料の機能を試験するために、サイクリックボルタンメトリー実験で用いたのと同じ電気化学的セル機構中で、クロノアンペロメトリー実験を行った。結果を
図7に一括している。最初に、該複合材料は、−0.5Vの電位を印加して還元したが、それによって、該ポリマー膜からのCl
−イオンの脱着がもたらされた。次いで、+0.7Vの電位を印加して、該ポリマー膜を酸化した。この段階で、Cl
−イオンが該膜中に引き戻され、該膜中での電気的中性を維持する。該プロットからは、ほとんど10時間に相当する60サイクル期間を通して、該膜がそのイオン吸収と再吸収能力を大きく維持していることが明瞭である。この実験及び他の塩溶液中で実施した同様の実験は、PPy/シオグサ・セルロール複合材料が繰り返し使用できることを示している。これは、産業上の適応性にとって重要な特徴である。
【0092】
実施例2
実施例1で用いた塩化鉄(III)の代わりに、重合中の酸化剤としてリンモリブデン酸を用いたこと以外は、実施例1の全般的な記載に従ってPPy/シオグサ・セルロース複合材料を製造した。8gの塩化鉄(III)に代えて34gのリンモリブデン酸塩を使用して、実施例1と同じ処方を用いて該複合材料を調製した。これは、電気化学的な還元後に、該複合材料中に大きなボイドを作り出して、より大きなアニオンが、イオン含有液体中での酸化により該膜によって吸着されるようになされたものである。
図8は、2.0Mのp−トルエンスルホン酸ナトリウム塩溶液(典型的な大径アニオン)中、室温で、リンモリブデン酸塩でドープしたPPy/シオグサ・セルロース複合材料について、走査速度5mV/sで得られたサイクリックボルタモグラムを示す。該ボルタモグラムは、大きなアニオン(典型的なアミノ酸に匹敵する大きさ)が該複合材料に可逆的に吸着かつ放出されることを示している。この特定の測定で用いた該複合材料の巨視的な大きさは、10mm×4mm×1mmであった。白金対電極及びAg/AgCl参照電極を備えた3電極機構を用いた。表示電位は、該Ag/AgCl参照電極に対して示されている。
【0093】
実施例3
実施例1に従って製造した高容量のセルロース系ICP複合材料を、溶液からのアニオン(即ち、塩素またはp−トルエンスルホン酸塩)の抽出に用いた。該ICPは、作用電極として作動し、一方、白金線を対電極として用い、Ag/AgClを参照電極として用いた。約1gのICP複合材料のシートを箔で裏打ちし、適切に接触させた。分離前に、該膜に−0.8Vの負電位を15分間印加して還元した。高容量のICP複合材料を、イオンを抽出すべき250mlの溶液を含有するビーカー中に浸漬した。溶液中に浸漬するとすぐに、+0.7Vの電位を15分間印加した。次いで、該3電極機構を、試料溶液を含有するビーカーから取り除き、1.0Mの塩化ナトリウム溶液中へ浸漬した。次に、吸着したイオンを放出するために、−0.8Vの電位を15分間印加した。この還元工程が完了するとすぐに、3電極機構を試料溶液中に再浸漬して、再使用した。
図9に、吸着された塩素イオン量を、該電解液内の塩化ナトリウム濃度の関数として示す。吸着された塩素イオン量は、電解質の濃度が高くなるほど多くなる。
【0094】
前述のようにしてピロールを塩化鉄(III)と共に重合して製造したICP複合材料を用いて、溶液からp−トルエンスルホン酸塩イオン(相対的に大きな有機アニオン)を抽出する一連の同様の実験を行った。0.9Vの正電位を300秒間加えて抽出した後と抽出前の化学元素分析(硫黄含量)により、抽出効率を独立して調べた。また、−0.8Vの電位を300秒間加えて電気化学的に制御した脱着を行った後、独立した化学元素分析(硫黄含量)により、放出効率をさらに調べた。表2に一括した結果によれば、p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩と接触させなかった参照試料は、硫黄元素がないことを示している。p−トルエンスルホン酸イオンの存在下に酸化した試料は、かなりの量の硫黄元素(該複合材料の6.1%にもなる)を含有している。電気化学的還元により該ICP複合材料からp−トルエンスルホン酸イオンを脱着させると、該試料の硫黄元素の含量は、該複合材料の約1.6%に減少する。
【0095】
表2 電気化学的抽出及び脱着後のICP複合材料中のp−トルエンスルホン酸塩の化学元素分析
試料 硫黄含量(重量%)
参照 <0.05
p−トルエンスルホン酸塩中での酸化 6.1
p−トルエンスルホン酸塩中での還元 1.6
【0096】
実施例4
アニオン性物質の抽出のために、ミクロフィブリル化セルロースのICP複合材料を電極材料として用いた。長い天然セルロース繊維のパルプを叩解することにより、ミクロフィブリル化セルロースを得た。パルプ塊中のセルロース繊維は、活性化され、そして、高圧ホモジナイザーを用いて分散することにより、高水分含量(85重量%)の不透明な分散物を得た。50mlの製造した分散物に、20mlの水で希釈した3mlのPyモノマーを加えて、完全に混合する。次いで、該混合物を濾紙上に収集した。8gの塩化鉄(III)を100mlの水に溶解し、次いで、該濾紙上に収集した分散塊に通して、重合を引き起こす。次いで、残留塊を十分に洗浄し、室温で乾燥して、多孔性の紙状シートを得る。得られたシートのBET表面積は、15m
2/gであった。Pyモノマーによる塗布工程を除き、前記に従って作製した参照セルロース材料は、19m
2/gの表面積を有していた。該複合材料は、バッチ式でのアニオン性物質の抽出に有用である。
【0097】
実施例5
実施例1で製造した高容量セルロース系ICP複合材料を、流れる溶液からのp−トルエンスルホン酸塩の抽出に用いる。該ICP複合材料は、作用電極として作動し、他方、白金線を対電極として用い、かつ、Ag/AgClを参照電極として用いる。約1gのICP複合材料シートを箔で裏打ちし、かつ、適性に接触させ、流動する溶液中に配置する。分離前に、流動するリン酸緩衝液(PBS)中で−0.8Vの電位を15分間加えて、該ICP膜を還元する。次いで、1.0Mのp−トルエンスルホン酸ナトリウム塩溶液を、流速0.1ml/sで、該ICP作用電極を通過するように流す。+0.7Vの電位を5分間印加する。続いて、新しいPBS溶液を、流速0.05ml/sで、該ICP電極材料を通過させて流す。PBS溶液中にp−トルエンスルホン酸塩を放出するために、−0.8Vの電位を10分間印加する。PBS中へのp−トルエンスルホン酸塩の脱着の後、p−トルエンスルホン酸塩の出発溶液の新たな一部を、該ICP電極を通過させて流し、アニオンを再吸収させる。このようにして、該ICP電極を、PBS中へのp−トルエンスルホン酸塩の抽出と脱着のために、繰り返し使用する。抽出と放出を33サイクル繰り返した後、該PBS溶液中のp−トルエンスルホン酸塩の濃度は、0.1mmol/mlであった。前記の流動システムの使用により、抽出操作が著しく容易となり、価値のあるアニオン性有機物質の抽出に、原理的に使用することができる。
【0098】
実施例6
実施例1と同様にして、高容量のセルロース系ICP複合材料を作製する。ついで、該複合材料を、0.1MのPyモノマーと0.1Mのポリスチレンスルホン酸塩(Mw70000、アルドリッチ社製)とを含有する溶液100ml中に浸漬して、作用電極として使用する。Ag/AgCl電極を参照電極とし、Pt線(白金線)を対電極として用いた。走査速度10mV/sを用いた10回の走査中、−1.0と+1.0Vとの間で電位を変化させて、PPyの電解重合を生じさせ、得られたPPyマトリックス中にポリスチレンスルホン酸塩を固定した。この結果、カチオン交換膜が得られ、そして、それを水性試料からNa
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、及びBa
2+を抽出するのに用いた。該PPy膜の厚みは、電解重合中のサイクル数に伴って増大し、80nmまでであることをTEMによって調べた。ポリスチレンスルホン酸塩でドープした該複合材料の表面積は、対照セルロース材料の表面積より小さかった(それぞれ、48m
2/g対74m
2/g)。
【0099】
実施例7
実施例1で述べたアニオン交換ICP電極を、実施例6で述べたカチオン交換ICP電極と組み合わせて、2つの電極配列を構築した。0.5gのこれらICP電極を適正に接続して、電気化学的イオン交換用の作用電極とする。この場合、アニオン交換複合材料とカチオン交換複合材料を直列に流動液体中に配置し、各複合材料の作用電極を対電極及び参照電極と共同させて、これらの複合材料の電荷を個別に定電位制御できるようにする。次いで、該機構を、40mS/cmの初期導電率を有する0.4Mの塩化ナトリウム溶液から塩含量を低減するのに用いる。各ICP電極と組み合わせて、参照電極としてAg/AgClを用い、対電極としてPt線を用いた。該アニオン交換ICP電極に−0.8Vの電位を10分間、次いで、+0.7Vの電位を10分間、及び該カチオン交換ICP電極に+0.7Vの電位を10分間、次いで、−0.8Vの電位を10分間、効果的に同時に印加することにより、該塩溶液の導電率は、15サイクル後に50%に減少した。
【0100】
実施例8
実施例2におけるように、リンモリブデン酸を酸化剤として製造した高容量のセルロース系ICP複合材料を、4個のグルタミン酸残基から構成されたアニオン性オリゴペプチド(PBS中の0.5M溶液)を抽出するために、該複合材料を直接溶液中に浸漬するバッチ式抽出用の電気化学的に制御された固相装置として用いた。該ICP複合材料は、作用電極として作動し、一方、白金線を対電極として用い、Ag/AgCl電極を参照電極として用いる。約1gのICP複合材料のシートを箔で裏打ちし、適正に接続させた。分離前に、該複合材料を、−0.8Vの電位を15分間印加して還元する。次いで、高容量ICP複合材料を、オリゴペプチドを抽出すべき250mlの溶液を含有するビーカー中に浸漬する。溶液中に浸漬するとすぐに、+0.7Vの電位を15分間印加する。次いで、該3電極機構を該PBS媒体を含有するビーカーから除去し、1.0Mの塩化ナトリム溶液中に浸漬する。吸収したオリゴペプチドを放出するために、−0.8Vの電位を15分間印加する。この還元工程が完了するとすぐに、該3電極機構をPBS溶液中に再浸漬して再使用する。該作用電極は、ひとつの媒体から別の媒体へとオリゴペプチドを抽出し移送するために、繰り返し使用された。15サイクル後、塩化ナトリウム溶液中のオリゴペプチドの濃度は、0.02mmol/mlであった。この特定の実験は、多数の負電荷(負帯電)アミノ酸(エナンチオマーを含む)及びタンパク質のバッチ式抽出の可能性を示すように計画さている。
【0101】
実施例9
下記の電極機構において、実施例6で述べたようにして大きなアニオンの存在下に調製した高容量セルロース系ICP複合材料を、細菌媒体からカチオン性ペプチドを抽出するために、該複合材料を溶液中に直接浸漬するバッチ式抽出に使用する。該ICP複合材料は、作用電極として作動し、一方、対電極として白金線を用い、参照電極としてAg/AgCl電極を用いる。約1gのICP複合材料のシートを箔で裏打ちし、適正に接続する。分離前に、該膜に+0.7Vの電位を15分間印加して、酸化させる。該高容量ICP複合材料を、ペプチドを抽出すべき250mlの溶液を含有するビーカー中に浸漬する。溶液中に浸漬するとすぐに、−0.8Vの電位を15分間印加する。次いで、該3電極機構を、細菌媒体を含有するビーカーから除去して、1.0Mの塩化ナトリウム溶液中に浸漬する。吸収したペプチドを放出するために、+0.7Vの電位を15分間印加する。この酸化工程の終了後すぐに、該3電極機構を細菌媒体中に再浸漬して、再使用する。このようにして、該作用電極を、ペプチドの抽出のために繰り返し使用する。この特定の実験は、エナンチオマーを含む多数の正電荷(陽帯電)アミノ酸及びタンパク質のバッチ式抽出のために計画されている。
【0102】
実施例10
実施例1または実施例6で述べたようにして調製した高容量セルロース系ICP複合材料を、実施例3(または実施例6)で述べた手順に基づいて、廃水からのアニオン(またはカチオン)の抽出に使用する。該アニオン(またはカチオン)交換複合材料を廃水中に挿入し、抽出工程前に−0.8V(または+0.7V)の電位を15分間印加し、抽出工程では、+0.7V(または−0.8V)の電位を15分間印加する。抽出後、抽出イオンは、−0.8V(または+0.7V)の電位を15分間印加して、該複合材料を還元(または酸化)することにより、1.0MのNaClを含有する溶液中に放出するか、あるいは、該複合材料を単に廃棄して、焼却炉中で燃焼させる。次いで、新しい類似の複合材料により、新たな抽出を行う。この特定の実験は、本発明の複合材料が、廃水などの非常に複雑な溶液から、イオンの費用のかからないワンショット除去に使用し得ることを示すために計画されたものである。
【0103】
実施例11
それぞれ、可動性アニオン及び大きな不動性アニオン(実施例10で述べたように)でドープした2つの高容量セルロース系ICP複合材料を、実施例10で述べた手順に基づいて、廃水からアニオンとカチオンの両方を抽出するために使用する。この場合、該アニオン及びカチオン交換複合材料を、流動溶液(実施例7で述べたように)中に直列に配置し、各複合材料作用電極を対電極及び参照電極と組み合わせて、これらの複合材料の電荷を個別に制御できるようにする。該装置を、廃水からの汚染アニオン及びカチオンの同時除去のために用いた。実施例10と同様に、該複合材料は、抽出手順の完了後に廃棄した。
【0104】
実施例12
この実施例は、高表面積ICP複合材料の湿度センサーとしての使用を示すものである。実施例1で述べた複合材料の細長い細片を使用する。該細片の代表的な寸法は、長さ2cm、幅0.5cm、及び厚み0.1cmである。該細片を2つの電極間に固定し、密接に接触させるために、銀接着剤で接着する。電流は、該細片を通って流れ、抵抗を連続的にモニターする。相対湿度を変化させた環境に曝すと、それに応じて細片の抵抗が変化し、それを記録する。試料の抵抗は、半導体装置分析器(B1500A、アジレント・テクノロジー社製、米国)を用いて測定する。結果を
図10に一括して示す。分析前に、該PPy/セルロース試料を、デシケータ中のP
2O
5上で10日間にわたって乾燥させる。次いで、該試料を、相対湿度を制御した他のデシケータに移し、4日間以上貯蔵する。相対湿度は、LiCl、K
2CO
3、NaI、及びNaClの飽和塩溶液を用いて制御するが、それによって、それぞれ、11、37、54、及び75%の相対湿度がもたらされる。
図10は、乾燥した複合材料試料の典型的なIV掃引曲線を示しているが、それは、乾燥試料の抵抗がオームの法則に従って得られることを示している。同様の寸法を有するシオグサ・セルロースシート片の抵抗がMOhmの位であるのに、このプロットからは、セルロース繊維上でのピロールの重合の結果、シオグサ・セルロースの導電率が10
6倍も改良されていることが明らかである。
図11において、該PPy/セルロース複合材料の抵抗は、相対湿度(RH)の関数として表示されている。該プロットから、該PPy/セルロース複合材料の抵抗は、RHが増大するにつれて減少すると結論づけることができ、水分センサー用途で有用となる特性を示している。
【0105】
実施例13
可動性アニオン及び大きな不動性アニオン(実施例1、2、6、及び10で述べたように)のいずれかでドープした高容量セルロース系ICP複合材料を、流動する溶液中でアニオン、カチオン、及び極性化合物を分離するための電気化学的に制御されたイオン交換クロマトグラフィにおいて、固定相材料として使用する。該ICP複合材料は、作用電極として作動し、一方、白金線を対電極として用い、Ag/AgClを参照電極として用いる。該ICP複合材料を適正に接続し、流動液体中に配置する。分離中、該ICP複合材料の電位を、該ポリマーの電荷を制御するために、一定の電位、電位パルス、または他のタイプの電位プログラムのいずれかを印加して制御する。これは、流動する溶液中の種を、該複合材料と異なるそれらの相互作用に基づいて分離することを可能にする。該電極機構は、一連のアミノ酸及びペプチドの分離のために効果的に用いられた。
【0106】
実施例14
可動性アニオン及び大きな不動性アニオン(実施例1、2、6、及び10で述べたように)のいずれかでドープしたICP複合材料を、それぞれアニオン性及びカチオン性薬物のレドックス制御薬物送達に用いる。後者の薬物は、該薬物を含有する溶液中で、該複合材料の酸化または還元の間に、該複合材料内に最初に吸収される。次いで、該薬物は、該複合材料と接触する溶液中の酸化剤または還元剤の存在により該複合材料が緩やかに還元若しくは酸化される結果、あるいは該複合材料と接触する溶液のレドックス電位の変化の結果、開回路条件下で該複合材料から放出される。該放出は、該複合材料が作用電極として作動する機構の電位または電流の制御によっても遂行される。このアプローチは、溶液中への異なる濃度の鉄(II)及び鉄(III)の導入により、該溶液のレドックス電位を制御することによって、リン酸塩緩衝溶液(PBS)中へのアミノ酸及びペプチドのレドックス制御された送達のために効果的に用いられた。
【0107】
実施例15
実施例1に記載されたICP複合材料を、電池の電極として使用する。該ICP複合材料の2つの同じ断片を、2.0Mの塩化ナトリウムを含有するビーカー内に浸した。
図12は、サイクリックボルタンメトリーから得られた走査速度の関数として、該ICP複合材料電極の電荷容量を示す。
図6A−6Dから分かるように、該サイクリックボルタモグラムは、二重層キャパシタに典型的な長方形の形状を持たない。その代わりに、陽極及び陰極の走査中のピークが観察され、それらは、擬似容量性挙動を明瞭に示している。従来、長方形状のサイクリックボルタモグラムを持つICP電極が報告されている。後者は、これらの電極がICPの非常に厚い層(代表的には数百ミクロン)を有しており、これが理想的な二重層容量性挙動を説明するので、驚くべきことではない。ここに開示されているICP複合材料の応答は、大きな微視的表面積にわたって分布している薄い被膜(50nmにすぎない)によるファラデー過程の結果、電気的電荷が主として貯蔵されるため、前述の材料のそれとは相違している。
図12に示したように、約500C/gの電荷容量は、それぞれ139mAh/gの比電荷容量に対応して観察された。得られた比電荷容量は、ICP複合材料の全重量に関係しているが、一方、文献における殆どの電荷容量値は、機能性塗膜の重量当たりに基づいて算出されているだけである(それは、重量全体のほんの少しの部分である)。このように、文献値に比べて、ここに開示されている複合材料の全電極重量に対する容量は、著しく大きい。前述のとおり、好適な電解質溶液中に浸漬するした2つの同じICP複合紙片を接触させるだけで、電気化学セルを得ることができる。電極間の電位差は、電荷移動に関与する電極それぞれのレドックス状態の差によって得られる。
図13は、100秒間の充放電間隔で1mAの一定の印加電流にて得られた、このような単純2電極系の定電流充放電実験を示す。開始時における初期のシャープな変化(iRドロップに起因)の後では、充放電曲線は直線状である。120F/gの静電容量は、iRドロップからの寄与を除外して、この特定の実験機構について計算された。電池及びスーパー・キャパシタを正常に使用するためには、寿命が長いことが不可欠である。
図14は、28時間のノンストップ使用に相当する充放電サイクル1000回を反復した、長期充放電実験の前後のサイクリックボルタンメトリーの結果を示す。このプロットからわかるように、電極材料の電気活性は、その後実験を中止した1000サイクルの連続使用にもかかわらず、事実上変化しないままであった。系の開回路電圧(OCV)は、重量10mgの複合ICP電極2個を2.0Mの塩化ナトリウム溶液中に浸漬することによって測定した。(+1.0Vの電位を300秒間印加することによって製造されたような)陽極は酸化状態であり、(−1Vの電位を300秒間印加することによって製造されたような)陰極は還元状態であった。上の実験のOCVは0.79Vであることがわかった。
【0108】
実施例16
実施例4のようなICP複合材料は、エネルギー貯蔵装置で有用である。電解質によって分離されたICP複合材料電極対の積み重ねは、エネルギー貯蔵装置を提供する。この態様において、電解質として2.0Mの塩化ナトリウムを含有するポリビニルアルコールゲルによって電極の間が分離されたICP複合材料電極対の積み重ねを製造した。開回路出力電圧及びエネルギー出力は、使用したICP電極の対の数及び表面積によって調整した。10対の複合電極で構成された積み重ねでは、開回路出力電圧が6.5Vであることがわかった。
【0109】
実施例17
一方は導電性ポリマーとしてポリピロールに基づき、もう一方は導電性ポリマーとしてポリアニリンに基づいている、レドックス電位の異なる2つのICP複合材料を電池の2個の電極として使用した。2個の電極は、2Mの塩化ナトリウムを含有する電解質に浸漬した未被覆セルロースの絶縁シートによって分離した。該電池の開回路電圧は0.8Vであることがわかった。
【0110】
実施例18
0.1MのAgNO
3の溶液中での定電流電解析出法を使用して、ICP複合材料を100nm厚の銀層で被覆した。得られた表面修飾複合材料を別の未修飾複合材料と電池内で組み合わせ、該電池において電極を2Mの塩化ナトリウムを含有する電解質に浸漬した未被覆セルロースの絶縁シートによって分離した。該電池の開回路電圧は1.0Vであることがわかった。
【0111】
実施例19
0.5Mのp−トルエンスルホン酸ナトリウム塩を含有する溶液からのポリピロールの付加的なICP層の電解析出によって、ICP複合材料を電気化学的に修飾した。電解析出層の厚さは50nmであり、ポリピロール層が電気化学的に酸化及び還元されたときに、該複合材料は元素分析によって主にカチオンを交換することが示された。得られた複合材料は続いて、50nm厚のSnO
2層で電気化学的に被覆された別の複合材料電極と共に、電池内で電極として使用した。この電池では、該電極は、エチルカーボネート及びジエチルカーボネートの2:1混合物に溶解させた1MのLiPF
6を含有する電解質に浸漬した未被覆セルロースの絶縁シートによって分離した。該電池の開回路電圧は3.5Vであることがわかった。
【0112】
実施例20
ポリピロールを大表面積のポリプロピレン基材上に浸漬被覆することによって得られたICP複合材料を、溶液からのアニオンの電気化学的に制御されたバッチ式抽出のための電極材料として使用した。複合電極は、性能を著しく損うことなく、100回の反復抽出及び脱着実験に使用できた。
【0113】
実施例21
本実験において、繊維状シオグサ・セルロース/ポリピロール複合材料のアニオン交換特性に対する酸化剤の種類の影響を調べた。シオグサ藻はバルト海から採取した。セルロースは、前述のとおり、シオグサ藻から抽出した(Mihranyan et al, International Journal of Pharmaceutics, 269:433 (2004))。ピロール(Py)、塩化鉄(FeCl
3)、リンモリブデン酸(PMo)水和物、塩化ナトリウム及び塩酸は、スウェーデン国のVMR社に供給されたまま使用した。DL−アスパラギン酸(99%)、DL−グルタミン酸(98%)及びp−トルエンスルホン酸ナトリウム塩(95%)は、Sigma Aldrich社より購入した。300mgのセルロース粉末を8分間の高エネルギー超音波処理(VibraCell 750W、Sonics社、米国)を用いて、50mlの水に分散させ、該分散物を濾紙上に収集した。3mlのPyをメスフラスコ内に入れ、全容積を100mlとした。収集したセルロースのケークをPy溶液と混合し、超音波器を用いて1分間再分散させた。次に該分散液を30分間静置し、次いで濾紙上に収集した。8gの塩化鉄(III)を100mlの水に分散させて、重合を誘導するためにフィルターケークに通した(反応は、濾過前に10分間継続させた)。ふわふわしたスポンジ状ケークが形成された。続いて、100mlの0.1MのHClをケークに通した。次いで生成物を水で十分に洗浄し、乾燥させた(ケークは、均質層を形成するために、超音波器を用いて再分散させた)。同様の手順を使用して、酸化剤として塩化鉄(III)ではなくPMoを用いて、PMo合成複合材料を調製した。その目的のために、34gのPMoを100mlの水に溶解させ、重合を誘導するためにフィルターケークに通した。しかし、PMo合成試料の製造中にHClはケークを通らなかった。
【0114】
図15は、PMo合成複合材料のSEM画像を示す。塩化鉄(III)合成試料(
図2)は、シオグサ・セルロースに典型的である微小繊維状構造を呈した。PMo合成複合材料では、試料がより結節状のカリフラワー様形態を呈するので、この小繊維状構造は完全に維持されないように思われる(
図15)。塩化鉄(III)及びPMo合成試料のTEM画像より、セルロース小繊維を被覆するPPy層は両方の試料で約50nmであり、したがって100nmよりやや大きい直径の繊維を生成することがわかった。塩化鉄(III)及びPMo合成試料の測定した比表面積は、それぞれ58.8及び31.3m
2/gであったのに対して、対応する全多孔容積は、0.186及び0.128cm
3/gであった。塩化鉄(III)合成試料の導電率は0.65S/cmであったのに対して、PMo合成試料の対応する値は0.12S/cmであった。
【0115】
塩化物(a)、アスパラギン酸塩(b)、グルタミン酸塩(c)、及びp−トルエンスルホン酸塩(d)を含有する電解質中での実験において、2種類の試料について記録したサイクリックボルタモグラムを
図16a−16dに示す。これらのボルタモグラムでは、電流は、実験で作用電極として用いた複合材料の質量に関して標準化した。ボルタモグラムの形状は、同じ種類の試料による異なる電解質の場合と同様に、2つの試料で明瞭に異なっている。すべての電解質で、電流は、PMo合成試料よりも塩化鉄(III)合成試料で高いことがわかった。このことは、PMo試料におけるイオンの輸送速度が、
図2及び15のSEM顕微鏡写真と良好に一致するより緻密な構造の結果として、PMo試料にてより低いことを示している。塩化物含有電解質中では、酸化及び還元ピークは塩化鉄(III)合成試料では明瞭に見られるが、PMo試料の対応するボルタモグラムの形状は、電流がこの試料に関連する(より高い)抵抗によって制限されたことを示している。他の3つの電解質中で塩化鉄(III)試料に対してあまり明確でないボルタモグラムが得られたという事実は、これらの電解質の導電率がより低いことによって説明できる。この効果によって、両方の試料についてこれらの溶液中での、より陽性のピーク電位も説明される。したがって、ボルタモグラムのピーク電位及び形状が試料の導電率及び電解質の導電率の両方に依存することを結論づけることができる。したがって、抵抗降下の効果を最小限に抑えるために、作用電極として使用した試料は可能な限り少量に抑えられた。
【0116】
塩化鉄(III)及びPMo合成材料の異なるアニオン抽出挙動を描出するために、+0.9Vの酸化電位における酸化プロセスに関与する単位電荷数を、
図17にアニオン種の関数としてプロットした。塩化鉄(III)合成試料によって吸収されたイオンの数は、おそらく塩化鉄(III)合成試料の表面積がほぼ2倍の大きさであるために、すべてのイオンでPMo試料よりも多いことが明瞭に示されている。しかし、PMo試料での相対的な収量は、塩化物よりも最大のp−トルエンスルホン酸イオンで良好であることも示されている。このことは、PMo試料がより大型のイオンの抽出に好適であることを示している。
【0117】
図17において、塩化鉄(III)合成試料は3種類のより大型のアニオンを区別しないと思われたのに対して(正規化値は、3種類すべてでほぼ同じである)、PMo合成試料の対応する結果は異なったことも示されている。したがって、PMo試料では、最大のp−トルエンスルホン酸イオンの値は、アスパラギン酸塩の値よりも4.4倍大きく、グルタミン酸塩の値よりも1.2倍大きかった。PMo合成試料によりこのようなイオンで得られた値が異なるのは、材料のバルク内でのイオンの抽出の程度が異なることによって説明され得る。塩化鉄(III)試料では、これらのより大型のイオンは、おそらく主に材料表面に存在している。このことは、より大型のイオンよりも(材料のバルク中に容易に進入できるはずである)塩化物でより大きい値が見出されるのと同様に、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩について後者の材料によってほぼ同じ値が得られることを説明するであろう。
【0118】
すでに示したように、
図17に示す塩化鉄(III)及びPMo合成試料イオン抽出特性が異なるのは、重合反応で使用したアニオンのサイズが大きく異なるためである。リンモリブデン酸アニオンは大きさが10〜11Åのクラスタを形成することが報告されており、このことは、この試料が還元された(及びリンモリブデン酸アニオンが試料を離脱する)ときに生じる空きが、p−トルエンスルホン酸アニオン(すなわち本実験で使用した最大のアニオン)のサイズよりも大きいことが予想されることを意味する。p−トルエンスルホン酸塩の値と塩化物の値との比がPMo試料で著しくより高いという事実も、PMo試料が塩化鉄(III)合成試料よりも大型のイオンの抽出により好適であることを明瞭に示している。塩化鉄(III)合成試料は、小型アニオンも含有する溶液からの大型のアニオンの抽出で特に有用なはずである。したがって、溶液との接触面積を大きくするためには、複合材料の表面積を可能な限り大きくすべきであることが結論づけられる。さらに、重合工程で使用したアニオンのサイズは、大きな吸収容量及び選択性の両方を確保するために抽出される分子のサイズに比例して選択すべきである。
【0119】
本実施例から、シオグサ・セルロースに典型的な微小繊維状構造が塩化鉄(III)合成試料で維持されたのに対して、PMo合成試料はより結節状のカリフラワー様形態を呈したことが結論づけられる。両方の試料でセルロース小繊維を被覆するPPy層が約50nm厚であることがわかり、したがって100nmよりやや大きい直径の複合材料繊維が生じる。塩化鉄(III)合成試料の表面積がPMo合成試料の表面積のほぼ2倍であることが証明された。どちらの試料も、検討したより大きいアニオンと比較して、著しくより多い量の塩化物イオンを吸収した。試料の質量当たりの吸収イオンの数は4つの電解質すべてについて、塩化鉄(III)合成試料のほうがPMo合成試料よりも多かったが、PMo合成試料は実験した最大のアニオンに対してより高い選択性を示した。
【0120】
提示した材料の大きい比表面積は、タンパク質、DNA及び他のバイオマーカーの抽出を含むバイオテクノロジー用途で有用な機能である、大きなアニオンのかなりの吸収容量を伴う。イオン抽出のためにこの種の大表面積繊維状複合材料を作るときに、重合工程で使用したアニオンの大きさは、表面積と同様に、本明細書の教示に従って当業者によって最適化されるべきである。
【0121】
実施例22
本実験は、2つ以上のアニオン種を含有する溶液中でのアニオンの大きさ及びアニオンの濃度の関数としてのPPy及びシオグサ種緑藻セルロースからなる導電性紙状複合材料のアニオン吸収特性及び複合材料の挙動を調べた。複合材料は、実施例1に概説されているような手順に従って製造した。
【0122】
Autolab/GPESインターフェース(ECO Chemie社、オランダ国)を作用電極としての複合材料、対電極としてのPt線及び参照電極としてのAg/AgCl電極と共に利用する標準3電極電気化学的セルにおいて、サイクリックボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー(電位ステップ)測定を実施した。実験で使用した複合材料試料は典型的に、5〜10mmの長さ、3〜5mmの幅及び1〜2mmの長さを有していた。各試料の重量は、約10〜20mgであった。測定は、室温にてNaCl(0.2〜5M)、KNO
3(0.2〜2M)及びp−トルエンスルホン酸塩ナトリウム、CH
3C
6H
4SO
3Na、(0.2〜2M)溶液中で実施した。サイクリックボルタンメトリー測定は、−0.8〜1.2Vの電位領域で走査速度5mV/sにて実施した。クロノアンペロメトリック測定では、電位は−0.8Vと+0.7Vとの間で段をつけた。実験の前に、すべての試料を1.0MのNaCl溶液中で−0.8Vにて300秒間還元した(材料の重合工程から生じる塩化物イオンを除去するため)。その後、試料を実験用電解質まで移動して、そこでただちに測定を開始した。
【0123】
各種の濃度(すなわち0.2〜2M)のCl
−イオン(a)、NO
3−イオン(b)、及びCH
3C
6H
4SO
2O
−イオン(c)はもちろんのこと、2つの異なるCH
3C
6H
4SO
2O
−及びCl
−のイオンの混合物(d)を含有する電解質中で記録したサイクリックボルタモグラムを
図18a−18dに示す。
【0124】
クロノアンペロメトリック測定は、硝酸イオンが塩化物イオンよりもやや容易に複合材料中に取り込まれるのに対して、大型のp−トルエンスルホン酸イオンを収容する複合材料の容量は、本実験で使用した酸化条件におけるより小型のイオンを収容する容量と比較して約50%であることを示した。結果は、アニオンが十分に高い電解質濃度においてポリマーのバルク中に拡散する前に複合材料表面の大半を物理的に被覆できること、及び表面部位間の距離がアニオンの大きさと厳密に一致することも示している。塩化物イオン及びp−トルエンスルホン酸イオンの両方を含有する混合物では、高濃度のより大きいp−トルエンスルホン酸アニオンは塩化物イオンの複合材料中への輸送を妨害し得るのに対して、他方、低濃度は輸送を促進し得ることがわかった。本結果は、複合材料の薄いポリマー被覆と大きい比表面積の組み合わせによって、大型のアニオンに対しても高いイオン吸収容量を生じさせることを明瞭に示している。これは、本材料が例えば、生体試料からのタンパク質及びDNAの脱塩及び抽出を含むバイオテクノロジー用途に好適であることを証明している。
【0125】
実施例23
導電性ポリマーとしてのポリピロール及び基材としてのシオグサ・セルロースに基づく2つの同じICP複合材料を、
図19に示す電池での2個の電極として使用した。2個の電極は、2Mの硝酸カリウムを含有する電解質に浸漬したワットマン濾紙の絶縁シートによって分離した。該電池の開回路電圧は1Vであることがわかった。
【0126】
本発明の複合材料、方法、及び装置は特定の態様を参照して説明され、実施例は本発明の各種の特定の側面を示した。しかし、本発明のさらなる態様、側面、変更及び修正が、特許請求されるような本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって実施できることが認識されるであろう。
本発明の当初の態様は以下のとおりである。
(1)連続的な構造の形であり、基材上に被覆された真性導電性ポリマー(ICP)層を含む複合材料であって、少なくとも0.1m2/g、少なくとも1m2/g、または少なくとも5m2/gの表面積を有する複合材料。
(2)該複合材料が、少なくとも10m2/g、少なくとも15m2/g、または少なくとも20m2/gの表面積を有する、前記(1)の複合材料。
(3)該基材上に被覆される該ICP層が、5μm未満、1μm未満、500nm未満、250nm未満、または100nm未満の厚みを有する、前記(1)または(2)の複合材料。
(4)該基材が、少なくとも1m2/g、少なくとも5m2/g、少なくとも10m2/g、少なくとも20m2/g、または少なくとも40m2/gの表面積を有する、前記(1)〜(3)のいずれかの複合材料。
(5)該基材が、主成分としてポリマーまたはジオポリマーを含む、前記(4)の複合材料。
(6)該基材ポリマーまたはジオポリマーが、デキストラン、セルロース、ミクロフィブリル化セルロース、アガロース、スチレンポリマー及びコポリマー、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、アクリルアミドポリマー及びコポリマー、プロピレンポリマー及びコポリマー、ジビニルベンゼンポリマー及びコポリマー、メタカオリンジオポリマー、ハロイサイトジオポリマー、及び他のアルミノシリケートジオポリマーからなる群より選択される、前記(5)の複合材料。
(7)該基材が、主成分としてミクロフィブリル化セルロースを含む、前記(6)の複合材料。
(8)該基材が、主成分としてセルロースを含み、該セルロースが藻類セルロース及び細菌セルロースから選択される、前記(6)の複合材料。
(9)該藻類セルロースが繊維状海藻類及び/または球状海藻類から誘導される、前記(8)の複合材料。
(10)該藻類セルロースが、シオグサ目またはクダネダシグサ目から誘導される、前記(9)の複合材料。
(11)該藻類セルロースが、シオグサ藻類、ジュズモ属、ネダシグサ属、ミクロディクティオン、バロニア属、キッコウグサ属、クダネダシグサ属またはマガタマモ属から誘導される、前記(10)の複合材料。
(12)該細菌セルロースが、アセトバクター・キシリナムから誘導される、前記(8)の複合材料。
(13)該セルロースが、シオグサ種緑藻から誘導される、前記(8)の複合材料。
(14)該複合材料が、紙状シートに形成されている、前記(7)〜(13)のいずれかの複合材料。
(15)該基材が、カーボンナノ材料を用いた機能化によって、または基材上に薄い導電性層を析出することによって導電性にされている、前記(1)〜(14)のいずれかの複合材料。
(16)該ICPが、アセチレンの誘導体である、前記(1)〜(15)のいずれかの複合材料。
(17)該ICPが、ポリフェニレン(PPh)、ポリフェニレンスルフィド(PPhS)、ポリフェニレンビニレン(PPhV)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン、またはポリアニリン(PANI)からなる群より選択される、前記(16)の複合材料。
(18)該基材が、主成分としてシオグサ種緑藻類から誘導されたセルロースを含み、該ICPが、ポリピロールを含む、前記(1)〜(17)のいずれかの複合材料。
(19)該基材が、主成分としてミクロフィブリル化セルロースを含み、該ICPがポリピロールを含む、前記(1)〜(17)のいずれかの記載の複合材料。
(20)該複合材料が、pH2〜11の範囲でその機械的完全性を維持する、前記(1)〜(19)のいずれかの複合材料。
(21)該基材が、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の結晶化率を有する、前記(1)〜(20)のいずれかの複合材料。
(22)前記(1)〜(21)のいずれかの複合材料から形成された少なくともひとつの構成部品を含む、電気化学的または電気的装置。
(23)前記(1)〜(21)のいずれかの複合材料から形成された電気化学的に制御された層を含む、電気化学的回路。
(24)前記(1)〜(21)のいずれかの複合材料から形成された電池またはスーパー・キャパシタを含む、エネルギー貯蔵装置。
(25)前記(1)〜(21)のいずれかの複合材料から形成された電気化学的に制御された層を含む、電気化学的アクチュエータ。
(26)該基材を真性導電性ポリマー(ICP)層で被覆することを含む、前記(1)〜(21)のいずれかの複合材料を製造する方法。
(27)被覆工程が、酸化剤を含有する溶液中でICP形成モノマーを重合することを含む、前記(26)の方法。
(28)該酸化剤が、S2O82−、H2O2、リンモリブデン酸塩、並びにFe3+、Cu2+、Cr6+、Mo6+、Ce4+、Ru3+及びMn7+からなる群より選択される遷移金属イオンの塩からなる群より選択される、前記(27)の方法。
(29)該酸化剤が、塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、炭酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及び/またはリンモリブデン酸塩アニオンを含む、前記(27)の方法。
(30)ICP層の厚みを増大させるために制御された電位または電流での電解重合をさらに含む、前記(27)の方法。
(31)該被覆工程が、導電性基材上に、ICP形成モノマーの制御された電位または電流での電解重合を直接実施することを含む、前記(26)の方法。
(32)電解重合工程後に、酸化剤を含有する溶液中でICP形成モノマーを重合することをさらに含む、前記(31)の方法。
(33)該ICP層の導電性が、界面活性剤の存在下でICP形成モノマーを重合することによって強められる、前記(26)〜(32)のいずれかの方法。
(34)該複合材料が、その機械的完全性を維持しながら、箔で裏打ちしたり、折り畳んだり、曲げたり、または捻ったりすることができる紙状シートに成型される、前記(26)〜(32)のいずれかの方法。