【実施例】
【0021】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0022】
図1,2,3(a),4(a)において、図中符号1は自動車で例示される車両であり、また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の幅方向をいうものとする。
【0023】
上記車両1の車体2は、強度と剛性とが大きい骨格部材(フレーム)3と、この骨格部材3に支持されて車体2の外面を形成する車体本体(ボデー)4とを備え、この車体2は前、後車輪5により走行面6上に支持される。
【0024】
上記骨格部材3は板金製で、車体2の左右各側部を構成し、それぞれ上下方向に延びる左右フロントピラー10と、これらフロントピラー10の上下方向の中途部から前方に向かって突出するエプロンメンバ11と、上記各フロントピラー10の下部と互いに結合されて車体2の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ12と、これら両サイドメンバ12の前端部に支持される枠形状のラジエータサポート13とを備えている。
【0025】
上記車体本体4は、車体2前部の左右各側面を形成して上記エプロンメンバ11に支持される左右一対の板金製のフロントフェンダ17と、車体2の前面を形成し、上記各サイドメンバ12の前端部に支持される樹脂製のフロントバンパ18と、上記各フロントフェンダ17およびフロントバンパ18の各上縁部で囲まれたエンジンルーム19をその上方から開閉可能に閉じるフード20とを備え、上記エンジンルーム19には車両1の走行駆動用の不図示のエンジンが収容され、上記骨格部材3に支持されている。
【0026】
上記フロントフェンダ17の上部前縁部、フロントバンパ18の側部上縁部、およびフード20の側部前縁部で囲まれた空間23に、車両部品24としてのヘッドランプ25が設けられている。このヘッドランプ25は、前方に向かって開口する椀形状の樹脂製のランプハウジング26と、このランプハウジング26の開口を閉じるランプレンズ27と、これらランプハウジング26とランプレンズ27とで囲まれた空間に設けられて車体2の前方を照射するバルブ28とを備えている。
【0027】
上記ヘッドランプ25は、次のようにして車体2に支持されている。即ち、上記ヘッドランプ25のランプハウジング26の左右各側部のうち、外側部の下部が外側支持ブラケット30により上記フロントフェンダ17の下部前縁部に支持されている。また、上記ランプハウジング26の内側部の下部が内側支持ブラケット31により上記ラジエータサポート13に支持されている。また、上記ランプハウジング26の後上部が上部支持ブラケット32により上記エプロンメンバ11に支持されている。上記各支持ブラケット30〜32はいずれも樹脂製とされている。
【0028】
上記上部支持ブラケット32は、上記ランプハウジング26の後上部から後上方に向かって一体的に延出し、その延出端部33は車体2の骨格部材3であるエプロンメンバ11の部分11aに締結具34により締結される。上記エプロンメンバ11の部分11aおよび延出端部33はそれぞれ板形状とされて互いにに重ねられる。上記締結具34は互いに螺合するボルトとナットとで構成され、その軸心35は上記エプロンメンバ11の部分11aおよび上記支持ブラケット32の延出端部33の各厚さ方向かつ上下方向に延び、上記エプロンメンバ11の部分11aと延出端部33とに形成されたボルト孔36,37を貫通している。
【0029】
上記支持ブラケット32の延出方向(長手方向)Aの中途部は上方に向かって開くトラフ(樋)形状のトラフ形状部39とされ、このトラフ形状部39の断面はV字形状とされている。具体的には、このトラフ形状部39は、上方に向かうに従い互いに離間する左右側壁40,40と、これら側壁40,40の下端部同士の結合により形成される底部41と、上記各側壁40と底部41とのそれぞれ上記延出方向Aでの端部同士を結合させる端部壁42とを備えている。これら各側壁40、底部41、および各端部壁42は互いに一体的に結合され、これら40〜42で囲まれた空間がトラフ溝43とされている。そして、上記端部壁42の外面に上記延出端部33の基部が一体的に結合されている。
【0030】
上記トラフ形状部39の上記延出方向Aの中途部において、上記トラフ溝43の開口縁部である上記各端部壁42の上縁部にそれぞれ脆弱部46が形成されている。これら各脆弱部46は三角形状の切り欠きとされている。車両1が、その走行中に前方の歩行者等に衝突(前突)したとき、この衝突による上記車両部品24への衝撃力Fにより上記各脆弱部46が変形可能とされている。
【0031】
上記トラフ形状部39の底部41は、上記締結具34の軸心35に沿った軸方向(支持ブラケット32の延出端部33の厚さ方向)で上記延出端部33から下方に離れるよう形成されている。また、上記トラフ形状部39の底部41の上記延出方向Aにおける端面48は、上記延出方向Aで上記エプロンメンバ11の部分11aの近傍(当接含む)に位置させられている。
【0032】
上記構成によれば、車体2の骨格部材3に車両部品24を支持するための支持ブラケット32の延出方向Aの中途部をトラフ形状部39としており、このトラフ形状部39は大きい剛性を有するものである。このため、車両1の通常走行時には、上記トラフ形状部39に脆弱部46を形成したことにかかわらず、上記支持ブラケット32による車体2の骨格部材3への車両部品24の支持剛性は十分に確保される。
【0033】
そして、上記構成において、上記脆弱部46を上記トラフ形状部39におけるトラフ溝43の開口縁部に形成し、上記トラフ形状部39の底部41を上記締結具34の軸方向で上記延出端部33から離れるよう形成して、上記トラフ形状部39の底部41の上記延出方向Aにおける端面48を上記骨格部材3の近傍に位置させている。
【0034】
ここで、車両1衝突時には、特に、上記トラフ形状部39におけるトラフ溝43の開口縁部が上記衝突時の衝撃力Fに大きい剛性で対抗しようとする。しかし、上記したようにトラフ溝43の開口縁部に上記脆弱部46が形成されているため、この脆弱部46に上記衝撃力Fによる応力集中が直ちに生じる。
【0035】
しかも、車両1衝突時には、上記車両部品24への衝撃力Fにより、上記締結具34による骨格部材3への支持ブラケット32の延出端部33の締結にかかわらず、この支持ブラケット32は上記衝撃力Fにより骨格部材3に対し相対移動(トラフ形状部39における底部41の端面48が骨格部材3に予め当接している場合には、当該相対移動は0である。)して、
図3(b)で示すように、上記支持ブラケット32のトラフ形状部39における底部41の端面48が上記骨格部材3に圧接する。すると、上記衝撃力Fによる支持ブラケット32の延出端部33側の上記相対移動が直ちに阻止され、その分、上記衝撃力Fによる脆弱部46での応力集中が迅速に増大してこの脆弱部46が屈曲し、車両1衝突による衝撃力Fが迅速に緩和される。
【0036】
よって、前記したように、車両1の通常走行時には、車体2の骨格部材3への車両部品24の支持剛性が十分に確保されるものでありながら、車両1衝突時には、その衝撃力Fが迅速に緩和されて、この衝撃力Fに因る歩行者や車両部品24の損傷がより確実に防止される。
【0037】
また、上記した衝突時の衝撃力Fに因る歩行者や車両部品24の損傷についての防止は、上記支持ブラケット32のトラフ形状部39におけるトラフ溝43の開口縁部に脆弱部46を形成する、という簡素な構成で達成されるため、上記損傷についての防止は簡単な構成で安価に達成される。
【0038】
図2において、車両部品24であるエンジン用のエアクリーナ49が複数の支持ブラケット50により、上記車体2の骨格部材3であるラジエータサポート13に支持されている。上記各支持ブラケット50にも上記支持ブラケット32と同構成のものが適用されている。
【0039】
なお、上記支持ブラケット32のトラフ形状部39の断面は、
図4(b)で示すようにチャンネル形状であってもよく、また、U字形状であってもよいが、一般に、前記したV字形状の方が衝撃力Fにより屈曲し易い。
【0040】
また、以上は図示の例によるが、上記支持ブラケット32の延出端部33を支持する骨格部材3の部分(エプロンメンバ11やラジエータサポート13)は樹脂製であってもよい。また、上記支持ブラケット30,31に上記支持ブラケット32と同構成のものを適用してもよい。また、上記脆弱部46は、支持ブラケット32のトラフ形状部39における一方の側壁40にのみ形成してもよい。また、上記脆弱部46は、U字形状の切り欠き、薄肉部、もしくは小孔であってもよい。
【0041】
また、図例では、トラフ形状部39の底部41は、このトラフ形状部39の上記延出方向Aの全体にわたり締結具34の軸方向で延出端部33から離れるよう形成されているが、上記トラフ形状部39の上記延出端部33側の端部における底部41の部分のみを、上記したように延出端部33から離れるよう形成してもよい。