(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜7の何れか1項に記載のスプレーガンにおいて、前記スプレーガンは、筐体内に配置され、前記筐体内に収容された被処理物に対して前記スプレー液を噴霧することを特徴とするスプレーガン。
請求項9記載のスプレーガンにおいて、前記スプレーガンは、通気構造を有する筐体内に収容された粉粒体に対しコーティング処理を行うパンコーティング装置に使用されることを特徴とするスプレーガン。
請求項10記載のスプレーガンにおいて、前記パンコーティング装置は、装置の正面側からコーティング処理用の気体を装置内に導入する前面給気タイプのパンコーティング装置であることを特徴とするスプレーガン。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるスプレーガン1を側方から見た断面図である。
図2は、スプレーガン1を上方(以下、スプレーガン1の上下・左右は、
図1を基準として記載する)から見た断面図である。
図3は、スプレーガン1の分解斜視図である。
図1のスプレーガン1は、例えば、医薬品や食品等の製造に使用されるパンコーティング装置に設置される。スプレーガン1は、処理容器内の被処理物(錠剤やガム、チョコレート等)に対し、コーティング液等のスプレー液を噴霧する。
【0016】
図1,2に示すように、スプレーガン1は、ボディブロック2と、空気キャップ6、シリンダキャップ7及びジョイントブロック8を備えている。ステンレス製のボディブロック2内には、ノズル(ノズル体)3、ニードル弁4、ピストン5が収容されている。ボディブロック2の前後には、空気キャップ6とシリンダキャップ7が取り付けられている。ボディブロック2の上部には、ジョイントブロック8が取り付けられている。スプレーガン1は、ジョイントブロック8の外周に設けられたスクリュー部9によって、コーティング装置内のスプレーガン用支持ホルダに取り付けられる。スプレーガン1の全長は約93mmとなっている。スプレーガン1の高さと幅は、ボディブロック2の部分が約40×40mmとなっている。ジョイントブロック8を含めたスプレーガン全体の高さは約65mmとなっている。
【0017】
スプレーガン1では、空気キャップ6の中央から、ノズル3によってコーティング液等Lのスプレー液が噴射される。空気キャップ6の中央からは、アトマイズエアAがコーティング液等Lと共に噴射される。スプレー液は、アトマイズエアAによって微粒子化される。微粒子化されたスプレー液の噴射流(スプレーミスト流)に対しては、パターンエアPが噴射される。パターンエアPは、空気キャップ6の先端側から、液吐出口の中心線O(
図10参照)方向に向かって噴射される。スプレーミスト流は、パターンエアPによって所望のスプレーパターンを形成しつつ被処理物に噴霧される。
【0018】
図4は、本発明のスプレーガン1が取り付けられるコーティング装置の構成を示す右側面図、
図5はその正面図である。
図4,5のコーティング装置100は、いわゆる全面パンチングタイプの回転ドラムを使用したジャケットレスタイプのコーティング装置である。回転ドラム(コーティングパン、以下、ドラムと略記する)101内には、錠剤等の被処理物が収容される。ドラム101内の被処理物には、スプレーガン1から、コーティング液等が噴霧され、被処理物がコーティングされる。
【0019】
図4,5に示すように、コーティング装置100は、通気構造を有する筐体102の中央部にドラム101を回転自在に設置した構成となっている。ドラム101は、ほぼ水平な回転軸線を中心に回転する。ドラム101の内部には、ガムやチョコレート、錠剤等の被処理物が投入される。ドラム101は、円筒形の胴部104と、胴部104の両端に形成された円錐台状のコニカル部105とを備えている。胴部104は、ステンレス製の多孔板(パンチングプレート)にて形成されている。すなわち、ドラム101は、胴部が通気可能に形成されたパンチングドラムとなっている。なお、コーティング装置100では、ドラム101として、胴部全周が通気可能な全面パンチングタイプの回転ドラムを使用しているが、必ずしも胴部全周が通気可能でなくとも良く、胴部の一部が通気可能なパンチングドラムも使用可能である。ドラム101の
図4において右側には、電動のドラム駆動モータを用いた図示しないドラム回転機構が配置されている。
【0020】
筐体102内には、ドラム101を収容するドラム室129が設けられている。筐体102内は、ドラム室129内にドラム101を配した二重構造となっている。筐体102の正面(
図4において左側、
図5参照)は3分割構造となっている。筐体正面中央には、チャンバドア111が配置されている。チャンバドア111は直方体状の箱形部材であり、ヒンジ112によって開閉自在に支持されている。チャンバドア111の内部には、給気チャンバ113が形成されている。チャンバドア111の正面には、点検扉115が取り付けられている。点検扉115の中央には、監視窓114が設けられている。点検扉115の両側には、上下方向に延びるグリップバー116が取り付けられている。チャンバドア111の下部には、処理完了後の製品を取り出すための製品排出口117が取り付けられている。
【0021】
図6は、チャンバドア111を開いた状態を示す平面図である。
図7は、チャンバドア111を開いた状態での当該コーティング装置の正面図である。コーティング装置100は、前面給気タイプのパンコーティング装置となっており、筐体2は、乾燥エアを給排気可能な通気構造となっている。コーティング装置100では、正面のチャンバドア111を介して、ドラム101内に乾燥エア(コーティング処理用気体)が導入される。ドラム101内に供給された乾燥エアは、筐体2に設けられた図示しない排気ダクトを介して、コーティング装置100から排出される。
【0022】
図6に示すように、チャンバドア111を開くと、筐体102の前壁102aが露出する。前壁102aには、ドラム101の前面開口部107が、開口状態で配置される。前面開口部107の上方にはさらに、給気孔118が設けられている。給気孔118は、筐体102内に配された給気ダクト119を介して、給気口121と連通している。給気孔118の前面には、風向板122が取り付けられている。コーティング装置100では、チャンバドア111を閉じると、ドラム101の前面開口部107が給気チャンバ113に対向・連通する。給気口121に供給された乾燥エアは、風向板122にて整流されつつ、給気チャンバ113内に流入する。給気チャンバ113に流入したエアは、前面開口部107を介してドラム101内に供給される。
【0023】
図6,7に示すように、筐体前壁102aには、スプレーガン1が、ドラム101の前面開口部107からドラム内に挿入されている。スプレーガン1は、筐体102の正面に配されたマルチファンクションユニット132に取り付けられている。スプレーガン1は、マルチファンクションユニット132によって、装置正面側からドラム内に出し入れ自在となっている。マルチファンクションユニット132は、斜め45°方向に自在に移動可能な支持アーム135を備えている。支持アーム135には、スプレーガン1が装着された支持ホルダ133が取り付けられている。
【0024】
支持ホルダ133には、スプレーガン取付部140が設けられている。スプレーガン1は、ジョイントブロック8を介してスプレーガン取付部140に装着される。
図3に示すように、スプレーガン取付部140には、雌ネジ部141が形成されている。スプレーガン1は、この雌ネジ部141にジョイントブロック8のスクリュー部9をねじ込むことにより、上述のようなコーティング装置100に取り付けられる。ジョイントブロック8には、各種チューブ(噴霧液チューブ91,アトマイズエアチューブ92,パターンエアチューブ93,ニードルエアチューブ94)が接続される。各種チューブ91〜94は、支持ホルダ133や支持アーム135内に挿管されており、チューブ91〜94は、筐体102内の空間とは隔絶された隠蔽配管となっている。
【0025】
ジョイントブロック8とボディブロック2は、六角孔付ボルト13にて固定されている。ボディブロック2には、
図3に示すように、ボルト孔11が設けられている。ジョイントブロック8には、雌ネジ孔12が設けられている。ジョイントブロック8は、ボルト孔11側から取り付けられる六角孔付ボルト13にて、ボディブロック2に固定される。ボディブロック2とジョイントブロック8は、Oリング14によって、気密状態で接合される。
【0026】
ボディブロック2の中央には、
図1において左右方向に沿ってニードル孔15が貫通形成されている。ニードル孔15には、ニードル弁4が、左右方向に移動可能な状態で挿入されている。ニードル孔15の左方側は拡径され、ノズル装着部16となっている。ノズル装着部16は、大径部16aと小径部16bからなる段付の円筒孔となっている。大径部16aは、ボディブロック2の左端面に開口・凹設されている。
【0027】
ノズル装着部16には、ノズル3が取り付けられる。ノズル3は、左端側にノズル部17、右端側にボス部18を備えている。ノズル部17とボス部18の間には、フランジ部19が形成されている。ノズル装着部16の大径部16aには、フランジ部19が取り付けられる。フランジ部19の外周には、Oリング21aが装着される。フランジ部19は、Oリング21aによって、大径部16aに気密状態で取り付けられる。小径部16bには、ボス部18が挿入される。ボス部18の外周にもOリング21bが装着されている。ボス部18は、Oリング21bによって、小径部16bに気密状態で取り付けられる。ノズル3の中央部には、流路孔22が、軸方向に沿って貫通形成されている。流路孔22内には、ニードル弁4が挿入配置される。
【0028】
ボディブロック2の左端側には、キャップナット10が取り付けられる。ボディブロック2の左端外周部には、雄ねじ形状のキャップナット取付部23が形成されている。キャップナット10は、キャップナット取付部23に螺合固定される。空気キャップ6の右端部には係合部24が形成されている。係合部24は、キャップナット10の左端部に形成された内鍔部25と係合する。キャップナット10は、係合部24と内鍔部25を係合させた状態で、キャップナット取付部23に取り付けられる。係合部24と内鍔部25との間には、キャップリテーナ28が介装される。
【0029】
ノズル3は、キャップナット10により、ボディブロック2と空気キャップ6との間に挟持される。ノズル3のフランジ部19の左端部には、テーパ状のキャップ当接面26が形成されている。これに対し、空気キャップ6の右端部には、ノズル当接面27が形成されている。両当接面26,27は、キャップナット10を空気キャップ6と共にキャップナット取付部23に固定すると密接する。キャップナット10の内側には、キャップリテーナ28とパッキン29が取り付けられる。キャップナット10は、キャップリテーナ28によって、ボディブロック2の左端部に保持される。キャップナット10と空気キャップ6との間は、パッキン29にて気密状態となる。
【0030】
キャップナット10をキャップナット取付部23にねじ込み固定すると、ボディブロック2と空気キャップ6との間に、ノズル3が気密状態で挟持固定される。すなわち、スプレーガン1では、特に専用工具を用いることなく、ノズル3をボディブロック2に取り付けることができる。従来のスプレーガンでは、ノズル3の組み付けや分解に際し専用工具を要し、作業性が良くなかった。これに対し、当該スプレーガン1では、Oリング21a,21b、パッキン29、空気キャップ6、キャップナット10によって、簡単にノズル3を着脱できる。従って、従来のスプレーガンに比して、装置の組み付け、分解が容易であり、分解洗浄時等における作業性が向上する。
【0031】
ニードル弁4の図中右端には、ピストン5が固定されている。ピストン5は、ボディ部32とロッド部33とからなる。ボディ部32の外周には、Oリング34が装着されている。ボディブロック2の右端には、円筒状のシリンダ部35が形成されている。ボディ部32は、シリンダ部35内に、左右方向に摺動自在に収容されている。ニードル孔15の右方側には、ピストンホール部36が拡径形成されている。ロッド部33の左端側は、このピストンホール部36内に挿入されている。ロッド部33の外周にもOリング37が装着されている。ピストン5は、Oリング37によって、気密状態でボディブロック2内に取り付けられる。
【0032】
ピストン5の右端側には、ピストンばね38が取り付けられている。ピストンばね38の左端側は、ロッド部33の右端側に外装されつつ、ピストン5のボディ部32に当接している。ピストンばね38の右端側は、スプリングホルダ部39に装着されている。スプリングホルダ部39は、シリンダキャップ7の右端内部に突設されている。シリンダキャップ7は、雄ねじ形状のエンドキャップ取付部40に螺合固定される。エンドキャップ取付部40は、シリンダ部35の外周に形成されている。シリンダキャップ7は、ピストンばね38を押し縮めつつ、エンドキャップ取付部40にねじ込み固定される。これにより、ピストン5は、ピストンばね38によって左方に付勢されてシリンダキャップ7内に収容される。
【0033】
ニードル孔15内には、ニードル弁4が収容されている。ニードル弁4の右端側は、雄ねじ部41となっている。雄ねじ部41は、雌ねじ部42に螺合固定されている。雌ねじ部42は、ピストン5のロッド部33の左端に形成されている。ニードル弁4とピストン5は一体となっている。ニードル弁4は、ピストン5の動作に伴って左右に移動する。ニードル弁4の左端側は、ノズル3内に挿入されている。ニードル弁4の左端は、テーパ状の針状弁部43となっている。針状弁部43は先細形状となっている。針状弁部43は、ノズル3のノズル部17に形成された液吐出口44内に挿入・嵌合可能となっている。ピストン5が左右に移動すると、それに伴い、ニードル弁4の針状弁部43が液吐出口44内にて左右に移動する。針状弁部43の移動により、ノズル3からのコーティング液等の供給を遮断したり、液吐出口44の開口量を変化させてコーティング液等の供給流量を適宜調整したりできる。
【0034】
ボディブロック2には、噴霧液や圧縮空気が供給される各種流路が設けられている。
図2に示すように、ボディブロック2には、噴霧液流路51、アトマイズエア流路52、パターンエア流路53、及び、ニードルエア流路54が設けられている。各流路51〜54は、ジョイントブロック8が取り付けられるブロック上面2aから、ブロック中央に向かって下方に延びている。ブロック中央にて、噴霧液流路51は、ニードル孔15に開口している。前述のように、ニードル孔15の左端は、ノズル装着部16の小径部16bに開口・連通している。噴霧液流路51は、ノズル3内の流路孔22を介して、液吐出口44に連通している。
【0035】
アトマイズエア流路52は、横方向に延びる流路55に接続されている。流路55(アトマイズエア流路52)は、ボディブロック2の左端側に延び、ノズル装着部16に開口する。なお、流路55は、上下合わせて4本設けられているが、
図2ではそのうち2本が示されている。ノズル3のフランジ部19には、連通孔56が設けられている。アトマイズエア流路52は、連通孔56を介して、アトマイズエアチャンバ57につながっている。アトマイズエアチャンバ57は、空気キャップ6内とノズル3との間に形成されている。空気キャップ6の中央部には、ノズル3の先端部が挿入されるノズル挿入孔58が形成されている。ノズル挿入孔58は、アトマイズエアチャンバ57と連通している。空気キャップ6の左端面6aにはさらに、補助孔59が形成されている。なお、空気キャップ6の左端面6aは、ノズル挿入孔58が形成された凸部60が設けられている。補助孔59は、凸部60の先端面60aよりも軸方向に下がった位置(図中やや右側にずれた位置)に開口している。
【0036】
パターンエア流路53もまた、横方向に延びる流路61に接続されている。流路61(パターンエア流路53)は、ボディブロック2の左端側に延び、ボディブロック2の左端面に開口する。なお、流路61もまた、
図1に破線にて示したように、上下合わせて4本設けられている(
図2ではそのうち1本のみが示されている)。パターンエア流路53の開口は、キャップナット10内部に形成されるパターンエアチャンバ62に臨んでいる。パターンエアチャンバ62には、空気キャップ6内に形成されたエア流路63も開口している。パターンエア流路53は、パターンエアチャンバ62を介して、エア流路63と連通している。空気キャップ6には2個の突起部64が設けられている。エア流路63は、突起部64の先端部に開口形成されたパターンエア孔65につながっている。
【0037】
ニードルエア流路54は、
図1に示すように、横方向に延びる流路66に接続されている。流路66(ニードルエア流路54)は、ボディブロック2の右端側に延びている。流路66は、シリンダ部35の内側に形成されたシリンダチャンバ67の左端面に開口している。
【0038】
ジョイントブロック8にも、各流路51〜54に対応して、噴霧液流路71、アトマイズエア流路72、パターンエア流路73、及び、ニードルエア流路74が設けられている。各流路71〜74は、ジョイントブロック8内に、上下方向に沿って形成されている。ジョイントブロック8をボディブロック2に取り付けると、両者の各流路51〜54,71〜74が連通する。
図8は、スプレーガン1の上面図であり、各流路71〜74は、
図8に示すように、ジョイントブロック8の上端に開口する(開口75〜78)。
【0039】
各開口75〜78には、口金(図示せず)を介して、各種チューブが接続される。すなわち、噴霧液流路71の液回路口75には、コーティング液等を供給する噴霧液チューブ91が接続される。アトマイズエア流路72の吹付空気回路口76や、パターンエア流路73のパターン空気回路口77、ニードルエア流路74のシリンダ回路口78には、圧縮空気を供給する各種エア配管(アトマイズエアチューブ92,パターンエアチューブ93,ニードルエアチューブ94)がそれぞれ接続される。
【0040】
スプレーガン1では、コーティング液等Lは、液回路口75から、噴霧液流路71,51、ニードル孔15、流路孔22を経て、液吐出口44に供給される。アトマイズエアAは、吹付空気回路口76から、アトマイズエア流路72,52、流路55、ノズル装着部16、連通孔56、アトマイズエアチャンバ57を経て、ノズル挿入孔58や補助孔59に供給される。パターンエアPは、パターン空気回路口77から、パターンエア流路73,53、流路61、パターンエアチャンバ62、エア流路63を経て、パターンエア孔65に供給される。ニードルエアは、シリンダ回路口78から、ニードルエア流路74,54、流路66を経て、ピストンチャンバ67に供給される。
【0041】
スプレーガン1では、液配管や各種エア配管との接続部が装置側面の1箇所に集中配置されている。従って、各配管を一括してスプレーガン1に接続でき、各チューブ91〜94をマルチファンクションユニット132内に容易に隠蔽状態で配管できる。また、ジョイントブロック8をコーティング装置100の支持ホルダ133に取り付けるだけで、スプレーガン1を筐体2内に設置できる。従って、スプレーガン1の着脱が容易となり、スプレーガン設置に要する作業工数を削減できる。さらに、スプレーガン1は、各チューブ91〜94と、ジョイントブロック8、ボディブロック2の3分割構造となっているため、ジョイントブロック8を取り外すだけで各チューブ91〜94を露出させることができ、チューブ交換等のメンテナンスも容易となる。本実施例で配管は4本のみであったが、スプレー液を噴霧しない時にスプレー液を液タンクへ戻すリターン配管を加えても良い。
【0042】
次に、当該スプレーガン1におけるコーティング液等の噴霧状態について説明する。
図9(a)は従来のスプレーガンによるスプレーパターンを示す説明図、同(b)は本発明によるスプレーガン1によるスプレーパターンを示す説明図である。前述のように、従来のスプレーガンは、スプレーパターンが狭く、また、スプレー領域中におけるスプレー量の差違(バラツキ)も大きい。これは、従来のスプレーガンでは、
図9(a)に示すように、ノズルからのスプレーミストが粗に広がった状態でパターンエアPが当てられているためである。このため、
図9(a)では、スプレーミスト流がパターンエアPの影響を必要以上に強く受け、スプレーパターンが8の字状(瓢箪形)となってしまっている。この場合、よりスプレー範囲を広めようとパターンエアPを強く吹いても、スプレーパターンは、長軸方向にはほとんど広がらず、より瓢箪中央部分がくびれてしまう。
【0043】
これに対して、スプレーガン1では、
図9(b)に示すように、ノズル3から噴霧されるスプレーミストが、余り拡散しない密な状態でパターンエアPの噴射領域に到達する。そして、スプレー液が余り広がらない状態でパターンエアPが当てられる。すなわち、スプレーミストが所定断面積以上に拡径しない拡散抑制領域Rにて、パターンエアPがスプレーミストに対して噴射される。このため、スプレーガン1においては、スプレーミスト流がパターンエアPの影響を必要以上に受けることがなく、スプレーパターンが8の字状とならず、ほぼ長円形にまとまる。また、スプレー領域中におけるスプレー量の差違も小さく抑えられる。
【0044】
図10は、このようなスプレーパターンを実現した本発明によるスプレーガン1のノズル先端部の構成を示す説明図である。
図10に示すように、ノズル3のノズル部17の先端は、空気キャップ6のノズル挿入孔58内に挿入されている。ノズル部17の先端外周部81と、ノズル挿入孔58の内壁82との間には、アトマイズエア噴出口83が形成されている。アトマイズエア噴出口83は、アトマイズエアチャンバ57と連通しており、ここから
図10において左方向に、アトマイズエアAが噴射される。ノズル部17先端の液吐出口44からはコーティング液等Lが吐出される。吐出されたコーティング液等Lは、アトマイズエア噴出口83から噴射されたアトマイズエアAによって微粒子化される。そして、空気キャップ6のパターンエア孔65から噴射されるパターンエアPによって、所定のスプレーパターンのスプレーミストが被処理物に対して噴霧される。
【0045】
ここで、当該スプレーガン1では、ノズル部17の先端外周部81がテーパ状となっており、水平方向に対して10°(ノズルテーパ角θ1)傾斜している。ノズル挿入孔58の内壁82もテーパ状となっており、水平方向に対して30°(キャップテーパ角θ2)傾斜している。つまり、先端外周部81と内壁82は共に、それらの先端部が液吐出口44の中心線Oの方向に向かって傾斜しており、ノズル挿入孔58の開口部58aは、中心線Oの方向に向かって開口する。また、θ2>θ1となっているため、ノズル挿入孔58は先端に向かって幅が狭くなっている。従って、アトマイズエアは、流速が高められて開口部58aから噴出する。さらに、ノズル部17の先端部84が肉薄となっており、直径1.2mmの液吐出口44に対して、径方向の厚さ(肉厚)tが0.3mm(液吐出口44の孔径に対して25%)となっている。
【0046】
スプレーガン1では、このような寸法関係にてスプレーガン1を構成し、液吐出口44から吐出され、アトマイズエアによって微粒子化されたスプレー液に対し、パターンエア孔65からパターンエアを噴射させる。すると、
図9(b)のように、ノズル3から噴霧されたスプレー液が余り広がらない状態で、パターンエアPを当てることができる。これは、スプレーガン1では、液吐出口44の中心方向、つまり、コーティング液等Lの噴流に向かう形でアトマイズエアAが噴射される。従って、スプレーガン1では、アトマイズエアAを水平方向あるいは外側方向に噴射する場合に比して、液吐出口44から吐出されたコーティング液等が外方に拡散(拡径)されずに微粒子化される。また、ノズル先端部84も肉薄なため、アトマイズエアが効果的にコーティング液等の噴流に当てられる。
【0047】
このため、従来のスプレーガンよりも、収束気味にスプレーミスト流が形成され、パターンエアが当たる領域でのスプレーミスト流の拡散度が小さくなる。そして、このようなスプレーミスト流の拡散抑制領域R(例えば、液吐出口44の4倍以内の断面積、すなわち、直径が約2.2倍以内にて維持される領域)にてパターンエアを当てることにより、スプレーパターンが8の字形にならず、長円形にまとまる。また、スプレー領域中におけるスプレー量の差違も小さく抑えられる。
【0048】
なお、
図10に示すように、スプレーガン1においては、ノズル3の先端部84が、アトマイズエア噴出口83が設けられた、空気キャップ6の凸部先端面60aよりも若干突出している。当該スプレーガン1では、この突出量sは0.25mmに設定されている。このように、ノズル先端部84を凸部先端面60aから突出させると、アトマイズエアの噴出による負圧効果によって、液吐出口44からコーティング液等が吐出され易くなる。ノズル先端部84を凸部先端面60aと同一面上に配置すると、ノズル3や空気キャップ6にスプレー液が付着し易くなるが、ノズル先端部84を突出させることにより、スプレー液の付着も抑制される。但し、突出量sが過大となると、逆に付着量が増え、負圧過剰により、コーティング液の噴射に脈動が生じる。当該スプレーガン1では、そのバランス点として、s=0.25mmを採用しているが、コーティング条件により、0.1〜1.0mm程度の値が適宜設定される。
【0049】
図11は、スプレーガンによるスプレーミストの分布を示す説明図であり、(a)は従来のスプレーガン、(b)は本発明によるスプレーガン1によるミスト分布をそれぞれ示している(測定距離:ノズル部先端から200mm,スプレー液:水,液速:100mL/min,アトマイズエア:従来=200L/min,本発明=125L/min,パターンエア:従来=100L/min,本発明=150L/min)。
図11(a)に示すように、従来のスプレーガンでは、スプレーミストが中央に集中しており、しかも、中央部から離れるに従ってミスト量が急激に低下する。これに対し、本発明によるスプレーガン1では、スプレーミストが広範囲に広がり、しかも、中央部から距離に対しミスト量の変化も緩やかとなる。また、平均粒子径も、従来のスプレーガンは24μm程度であるのに対し、スプレーガン1では15μm程度となっており、スプレーミストをより微粒子化することができた。
【0050】
また、スプレーガン1を使用することにより、スプレーガンの設置個数を減らすことができ、装置価格の低減も図られる。
図12(a)は従来のスプレーガンによるスプレー状態、(b)は所望のコーティング品を得るためにスプレーガンを増設した状態、(c)は本発明のスプレーガンによるスプレー状態を示す模式図である。
図12(a)に示すように、従来のスプレーガンは、スプレーミストが中央に集中するため、広い範囲に均一なスプレーミストを噴霧するには、(b)のように、スプレーガンを増設せざるを得ない。これに対し、本発明によるスプレーガンでは、スプレーミストが広範囲に亘って比較的均一に噴霧されるため、(c)のように、少数のスプレーガンにて所望のコーティング品を得ることが可能となる。
【0051】
さらに、本発明によるスプレーガン1では、大容量スプレーをムラなく行うことができるため、スプレー時間の短縮も図られる。
図13は、φ8mm錠剤に対し3%w/wコーティングを行った際のスプレー時間と黄色度CV値との関係を示すグラフである。図中、円形プロットは本発明によるスプレーガンを大風量にて使用した場合、正方形プロットは本発明によるスプレーガンを従来条件にて使用した場合、菱形プロットは従来のスプレーガンを従来条件にて使用した場合のデータである。
図13に示すように、従来のスプレーガンを従来条件にて使用した場合は約180分の処理時間を要したのに比して、本発明のスプレーガンでは、約100分にて3%コート品を得ることができ、大幅な時間短縮が図られた。本発明のスプレーガンにおいても、従来条件では概ね同等の処理時間を要するが、本発明のスプレーガンは、大風量にても均一なスプレーパターンが得られるため、従来よりも短時間で所望のコート品を得ることが可能となる。
【0052】
また、
図14は、水系フィルムコーティングを実施する場合のスプレー速度設定を示す説明図である。ここでは、スプレーガンを3個使用して、φ8mmCR錠130kgに対し、水系フィルムコーティング3%w/w(ヒプロメロース(TC-5R):8.0%,マクロゴール6000:0.8%,精製水:91.2%,食用色素(黄色5号):0.03%w/w)を実施した。従来のスプレーガンでは、時間の経過と共にスプレー速度を増加させると、局所的な濡れが生じ、コーティングムラが生じる。このため、スプレー速度を維持したまま(100mL/min×3ガン)コーティング処理を行う必要があり、処理完了までに146分の時間を要した(
図14(a))。これに対し、本発明のスプレーガンでは、大容量スプレーをムラなく行うことができるため、時間の経過と共にスプレー速度を増加させることが可能となる。従って、
図14(b)に示すように、スプレー速度を段階的に増加させることにより(120〜240mL/min×3ガン)、81分にてコーティング処理を完了することができた。
【0053】
このように、本発明のスプレーガン1をパンコーティング装置に用いることにより、大量にコーティング液等を噴霧しても錠剤等の処理対象物が局所的に濡れず、錠剤等に均一なコーティング層を形成でき、安定した製品品質を確保することが可能となる。また、大風量処理でありながら、スプレー領域中におけるスプレー量のバラツキも抑えられ、製品品質を保ちながら、コーティング処理に要する時間を短縮できる。さらに、スプレーガンの数を増やすことなく、均一で安定したスプレー量を得られるため、スプレーガンの個数を抑えることができ、装置価格を低減させることが可能となる。また、ポンプユニットやバルブ、電磁弁等の付帯設備も削減できる。加えて、スプレーガンの設置やメンテナンスに要する工数も削減でき、製品コストの低減も図られる。
【0054】
一方、前述のコーティング装置100は、前面給気とパンチングドラムにより、乾燥能力が高い。また、ドラム101が回転することにより、ドラム内の処理対象物が撹拌され、ムラなく混合される。従って、本発明のスプレーガン1を用いたコーティング装置100では、均一で安定した高性能スプレーと、高い乾燥能力、効率の良い撹拌、の相乗作用により、ムラのないコーティング処理を短時間にて行うことができる。すなわち、コーティング装置100との組み合わせにより、当該スプレーガン1は、その性能をより効果的に発揮することができる。
【0055】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例は、パンコーティング装置に本発明のスプレーガンを適用した例を示したが、当該スプレーガンは、流動層装置等の他の粉粒体処理装置にも適用可能である。また、粉粒体処理装置以外にも、スプレーガンから、移動する処理対象物に対してスプレーを行う場合、例えば、自動車や家具等に塗装を行うラインにも当該スプレーガンは好適に使用可能である。特に、スプレーガンが固定されている場合、広範囲に均一なスプレーが可能な本発明のガンは有効である。
【0056】
なお、前述の実施例にて示した各種寸法は一例であり、本発明は前記寸法には限定されない。例えば、ノズルテーパ角θ1は5〜15°程度、キャップテーパ角θ2は20〜40°程度、ノズル先端部肉厚tは0.2〜0.4mm程度の寸法を、処理条件や処理対象に応じ適宜組み合わせて採用できる。