特許第5737745号(P5737745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5737745放電制御装置、放電制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737745
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】放電制御装置、放電制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20150528BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20150528BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H02J7/00 302C
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-287948(P2010-287948)
(22)【出願日】2010年12月24日
(65)【公開番号】特開2012-138985(P2012-138985A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸
(72)【発明者】
【氏名】田代 洋一郎
【審査官】 石川 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−240078(JP,A)
【文献】 特開2010−273519(JP,A)
【文献】 特開平11−069636(JP,A)
【文献】 特開平11−273747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続された、中間領域の中に劣化領域を含む複数の電池の放電を制御する放電制御装置であって、
前記複数の電池の残りの容量である残容量それぞれを算出する残容量算出部と、
前記複数の電池のうち、前記残容量算出部が算出した残容量が前記劣化領域の上限である第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が前記劣化領域の下限である第2の閾値と同じ値となるまで、該電池を優先的に放電させる制御部とを有する放電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放電制御装置において、
前記制御部は、前記複数の電池のうち、前記残容量算出部が算出した残容量が前記第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が前記第2の閾値と同じ値となるまで、該電池のみを放電させることを特徴とする放電制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放電制御装置において、
前記残容量算出部は、前記電池から流れる電流と前記電池の放電開始からの時間とを測定し、該測定した電流と時間とを掛け合わせた値を前記電池の満充電時の容量から差し引いた値を前記残容量とすることを特徴とする放電制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放電制御装置において、
前記残容量算出部は、前記電池の電圧を測定し、該測定した電圧を前記残容量とすることを特徴とする放電制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の放電制御装置において、
前記第1の閾値と前記第2の閾値とをあらかじめ記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている第1の閾値と第2の閾値とを読み出し、該第1の閾値および該第2の閾値と、前記残容量との比較を行うことを特徴とする放電制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放電制御装置において、
前記制御部は、前記複数の電池それぞれと該電池が外部へ放電するための出力端子とを接続または切断するための複数のスイッチを開閉することで、前記複数の電池の放電と非放電とを制御することを特徴とする放電制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の放電制御装置において、
前記制御部は、前記複数の電池の残容量のいずれもが、前記第1の閾値から前記第2の閾値までの範囲外である場合、前記複数の電池にローテーション放電させることを特徴とする放電制御装置。
【請求項8】
互いに並列に接続された、中間領域の中に劣化領域を含む複数の電池の放電を制御する放電制御方法であって、
前記複数の電池の残りの容量である残容量それぞれを算出する算出ステップと、
前記複数の電池のうち、前記算出した残容量が前記劣化領域の上限である第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が前記劣化領域の下限である第2の閾値と同じ値となるまで、該電池を優先的に放電させるステップとを行う放電制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の放電制御方法において、
前記複数の電池のうち、前記算出した残容量が前記第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が前記第2の閾値と同じ値となるまで、該電池のみを放電させるステップを行う放電制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の放電制御方法において、
前記算出ステップは、前記電池から流れる電流と前記電池の放電開始からの時間とを測定し、該測定した電流と時間とを掛け合わせた値を前記電池の満充電時の容量から差し引いた値を前記残容量とすることを特徴とする放電制御方法。
【請求項11】
請求項8に記載の放電制御方法において、
前記算出ステップは、前記電池の電圧を測定し、該測定した電圧を前記残容量とすることを特徴とする放電制御方法。
【請求項12】
請求項8に記載の放電制御方法において、
前記複数の電池の残容量のいずれもが、前記第1の閾値から前記第2の閾値までの範囲外である場合、前記複数の電池にローテーション放電させるステップを行うことを特徴とする放電制御方法。
【請求項13】
互いに並列に接続された、中間領域の中に劣化領域を含む複数の電池の放電を制御する装置に、
前記複数の電池の残りの容量である残容量それぞれを算出する算出手順と、
前記複数の電池のうち、前記算出した残容量が前記劣化領域の上限である第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が前記劣化領域の下限である第2の閾値と同じ値となるまで、該電池を優先的に放電させる手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記複数の電池のうち、前記算出した残容量が前記第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が前記第2の閾値と同じ値となるまで、該電池のみを放電させる手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記算出手順は、前記電池から流れる電流と前記電池の放電開始からの時間とを測定し、該測定した電流と時間とを掛け合わせた値を前記電池の満充電時の容量から差し引いた値を前記残容量とすることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記算出手順は、前記電池の電圧を測定し、該測定した電圧を前記残容量とすることを特徴とするプログラム。
【請求項17】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記複数の電池の残容量のいずれもが、前記第1の閾値から前記第2の閾値までの範囲外である場合、前記複数の電池にローテーション放電させる手順を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の放電を制御する放電制御装置、放電制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、環境問題への関心が深まってきている。
【0003】
その中で、電力供給の分野においては、PV(Photo Voltanic)発電による電力供給や、電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid EV)に用いられる二次電池の活用による電力供給等が注目されてきている。この二次電池としては、リチウムイオン二次電池が有力視されており、今後の普及に合わせて、鉛蓄電池の代替などが予想される。
【0004】
また、一般的に、古い(放電容量が少ない)電池と、新しい(放電容量が多い)電池とを互いに並列に接続することは避けられている。これは、これらの電池の互いの電圧の差により生じる横流電流を避けるためである。大きな横流電流は、過電流や異常発熱などの要因となってしまう。このことは、上述した二次電池についても同じことが言える。
【0005】
そこで、互いに並列に接続された複数の電池それぞれに、接続および切り離しを行うスイッチを設け、放電時、それぞれの電池の電圧の互いの差が所定の値以下となるまで、電圧の高い方の電池に設けられたスイッチのみを接続(投入)するシステムが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−033936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、上述したようなリチウムイオン電池の中間領域(電源を供給することができる放電容量の上限から下限までの領域)の中に、当該電池の劣化を速める「劣化領域」が発見されている。この劣化領域は、特にマンガン系正極のリチウムイオン電池に顕著にみられる。電池が放電されて、電池に残された放電容量が減っていく際に、この劣化領域を時間をかけて通過させると、当該電池の劣化が速まってしまう。そのため、電池の寿命を長く保つには、この劣化領域を通過させないことが最善であるが、通過させなければならない場合は、この劣化領域をできるだけ速く通過させる必要がある。特に、互いに並列に接続された複数の電池は、個々の電池の放電容量が減っていくそれぞれの速度が遅いため、劣化が速まってしまうおそれがある。
【0008】
特許文献1に記載された技術を用いた場合であっても、この劣化領域を考慮した放電はできないため、電池の長寿命化を実現することができないという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題を解決する放電制御装置、放電制御方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放電制御装置は、
互いに並列に接続された複数の電池の放電を制御する放電制御装置であって、
前記複数の電池の残りの容量である残容量それぞれを算出する残容量算出部と、
前記複数の電池のうち、前記残容量算出部が算出した残容量が第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が第2の閾値と同じ値となるまで、該電池を優先的に放電させる制御部とを有する。
【0011】
また、本発明の放電制御方法は、
互いに並列に接続された複数の電池の放電を制御する放電制御方法であって、
前記複数の電池の残りの容量である残容量それぞれを算出する算出ステップと、
前記複数の電池のうち、前記算出した残容量が第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が第2の閾値と同じ値となるまで、該電池を優先的に放電させるステップとを行う。
【0012】
また、本発明のプログラムは、
互いに並列に接続された複数の電池の放電を制御する装置に実行させるためのプログラムであって、
前記複数の電池の残りの容量である残容量それぞれを算出する算出手順と、
前記複数の電池のうち、前記算出した残容量が第1の閾値と同じ値となった電池がある場合、該電池の残容量が第2の閾値と同じ値となるまで、該電池を優先的に放電させる手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明においては、電池の長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の放電制御装置の実施の一形態を示す図である。
図2図1に示した残容量算出部の内部構成の一例を示す図である。
図3図2に示した満充電容量保持部に記憶された満充電容量の一例を示す図である。
図4図1に示した記憶部に記憶された閾値の一例を示す図である。
図5図1に示した形態における放電制御方法を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の放電制御装置の実施の他の形態を示す図である。
図7図6に示した残容量算出部の内部構成の一例を示す図である。
図8図6に示した電池を放電したときの電圧計が測定する電池の両端の電圧値の時間的変化の一例を示す図である。
図9図6に示した記憶部に記憶された閾値の一例を示す図である。
図10図6に示した形態における放電制御方法を説明するためのフローチャートである。
図11】一般的な電池の放電による、時間に対する電池残容量の変化の一例を示すグラフである。
図12】本発明を用いた電池の放電による、時間に対する電池残容量の変化の一例を示すグラフである。
図13】本発明の放電制御装置の実施の他の形態を示す図である。
図14図13に示した記憶部に記憶された閾値の一例を示す図である。
図15図13に示した形態における放電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の放電制御装置の実施の一形態を示す図である。
【0017】
本形態は図1に示すように、放電制御装置100と、電池300−1,300−2と、スイッチ400−1,400−2と、出力端子(正)500と、出力端子(負)501とから構成されている。
【0018】
電池300−1,300−2は、互いに並列に接続されたリチウムイオン電池である。また、電池300−1,300−2の負極側は、出力端子(負)501と接続されている。また、電池300−1,300−2の正極側は、放電制御装置100を介してスイッチ400−1,400−2とそれぞれ接続されている。なお、並列接続される電池の数は、2つに限らない。
【0019】
スイッチ400−1,400−2は、電池300−1,300−2と、電池300−1,300−2が外部へ放電するための出力端子(正)500との間を接続または切断するために開閉するスイッチである。この開閉は、放電制御装置100によって制御される。また、スイッチの数は、電池の数と同じ数である。
【0020】
放電制御装置100は、電池300−1,300−2の残りの容量である残容量に基づいて、スイッチ400−1,400−2の開閉を制御することで、電池300−1,300−2の放電を制御する。
【0021】
また、放電制御装置100には図1に示すように、残容量算出部110と、記憶部120と、制御部130とが設けられている。
【0022】
残容量算出部110は、電池300−1,300−2の残りの容量である残容量それぞれを算出する。また、残容量算出部110は、電池300−1,300−2から流れる電流と電池300−1,300−2の放電開始からの時間とを測定し、測定した電流と時間とを掛け合わせた値を、電池300−1,300−2の満充電時の容量から減算した値を残容量として算出する。
【0023】
図2は、図1に示した残容量算出部110の内部構成の一例を示す図である。
【0024】
図1に示した残容量算出部110には図2に示すように、電流計111−1,111−2と、満充電容量保持部112と、計算部113とが設けられている。
【0025】
電流計111−1は、電池300−1から流れる電流を測定する。また、電流計111−1は、測定した電池300−1の電流値を計算部113へ出力する。
【0026】
電流計111−2は、電池300−2から流れる電流を測定する。また、電流計111−2は、測定した電池300−2の電流値を計算部113へ出力する。
【0027】
満充電容量保持部112は、電池300−1,300−2の満充電時の容量をあらかじめ記憶する。
【0028】
図3は、図2に示した満充電容量保持部112に記憶された満充電容量の一例を示す図である。
【0029】
図2に示した満充電容量保持部112には図3に示すように、電池300−1,300−2それぞれの満充電時の容量が満充電容量として記憶されている。この情報は、あらかじめ書き込まれているものである。
【0030】
例えば図3に示すように、電池300−1と、満充電容量10Ahとが対応付けられて記憶されている。これは、電池300−1の満充電時の容量が10Ahであることを示している。
【0031】
また、図3に示すように、電池300−2と、満充電容量9.6Ahとが対応付けられて記憶されている。これは、電池300−2の満充電時の容量が9.6Ahであることを示している。
【0032】
計算部113は、電流計111−1,111−2から出力されてきた電流値と、満充電容量保持部112に記憶されている満充電時の容量とに基づいて、電池300−1,300−2の残容量を算出する。
【0033】
具体的な算出方法を以下に説明する。
【0034】
電池300−1の残容量については、計算部113が、電流計111−1から出力されてきた電流値と、放電を開始してからの時間(タイマ(不図示)にて測定)とを掛け合わせ、掛け合わせた値を満充電容量保持部112にて電池300−1と対応付けられている満充電容量(図3に示した例では、10Ah)から差し引く。この値が、電池300−1の残容量となる。
【0035】
また、電池300−2の残容量については、計算部113が、電流計111−2から出力されてきた電流値と、放電を開始してからの時間(タイマにて測定)とを掛け合わせ、掛け合わせた値を満充電容量保持部112にて電池300−2と対応付けられている満充電容量(図3に示した例では、9.6Ah)から差し引く。この値が、電池300−2の残容量となる。
【0036】
また、計算部113は、算出した電池300−1,300−2の残容量を制御部130へ出力する。
【0037】
また、記憶部120は、第1の閾値および第2の閾値をあらかじめ記憶する。
【0038】
ここで、第1の閾値は、上述した「劣化領域」の上側の値(上限)である。また、第2の閾値は、「劣化領域」の下側の値(下限)である。
【0039】
図4は、図1に示した記憶部120に記憶された閾値の一例を示す図である。
【0040】
図1に示した記憶部120には図4に示すように、劣化領域の上限および下限が閾値として記憶されている。
【0041】
例えば、図4に示すように、劣化領域の上限の閾値(第1の閾値)として6Ahが記憶されている。また、劣化領域の下限の閾値(第2の閾値)として4Ahが記憶されている。これは、電池の残容量が6Ahから4Ahまでの間が劣化領域であることを示している。
【0042】
制御部130は、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限および下限を読み出し、読み出した劣化領域の上限および下限と、計算部113から出力されてきた電池300−1,300−2の残容量とを比較する。そして、電池300−1,300−2のうち、残容量が劣化領域の上限と同じ値となった電池がある場合、当該電池の残容量が劣化領域の下限と同じ値となるまで、当該電池のみを放電させる。このとき、当該電池を優先的に放電させるものであっても良い。つまり、3つの電池が並列に接続されている場合、そのうち、残容量が劣化領域にある電池と、残りの電池2つのうちの1つの電池との、合計2つで並列運転(放電)させるものであっても良い。
【0043】
例えば、電池300−1の残容量と劣化領域の上限とが同じ値となった場合、電池300−1の残容量が劣化領域の下限と同じ値となるまで、制御部130はスイッチ400−1を閉じた状態とし、スイッチ400−2を開いた状態とする。
【0044】
また、電池300−2の残容量と劣化領域の上限とが同じ値となった場合、電池300−2の残容量が劣化領域の下限と同じ値となるまで、制御部130はスイッチ400−2を閉じた状態とし、スイッチ400−1を開いた状態とする。
【0045】
また、制御部130は、電池300−1の残容量と電池300−2の残容量とのどちらも劣化領域の上限から下限までの範囲外である、つまり劣化領域にない場合、電池300−1,300−2に、一般的な2台並列運転をさせるものであっても良いし、ローテーション放電(制御部130が、スイッチ400−1およびスイッチ400−2の開閉を交互に繰り返して行う放電)をさせるものであっても良い。
【0046】
このように制御部130は、スイッチ400−1,400−2を開閉することで、電池300−1,300−2それぞれの放電と非放電とを制御する。
【0047】
以下に、図1に示した形態における放電制御方法について説明する。
【0048】
図5は、図1に示した形態における放電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0049】
まず、電池300−1,300−2の2台運転(放電)が開始される(ステップS1)。また、放電が開始されるとき、上述したタイマが起動する。
【0050】
また、放電が開始されると、電流計111−1,111−2による電池300−1,300−2から流れる電流それぞれの測定が開始される。
【0051】
その後、電池の残容量が、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限と同じ値となる電池があるかどうかが、制御部130によって判別される(ステップS2)。
【0052】
これは、上述したように、電流計111−1,111−2にて測定されて出力された電流値と、タイマによって測定された時間とが計算部113にて掛け合わされ、満充電容量保持部112に記憶されている電池300−1,300−2の満充電容量から、その掛け合わされた値が計算部113によって差し引かれ、差し引かれた値と記憶部120に記憶されている第1の閾値である劣化領域の上限とが比較されることにより実現される。
【0053】
例えば、満充電容量保持部112が記憶している電池300−1,300−2の満充電容量が、図3に示した値(10Ahおよび9.6Ah)であり、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限(第1の閾値)が図4に示した値である6Ahであり、劣化領域の下限(第2の閾値)が図4に示した値である4Ahである場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0054】
ここで、タイマが2時間を測定したとき、電流計111−1にて測定されて出力されてきた電流値が1.6Aであり、また電流計111−2にて測定されて出力されてきた電流値が1.8Aである場合、以下のような計算が行われる。
【0055】
電池300−1については、(式1)の計算が行われる。
【0056】
10Ah(満充電容量)−1.6A(電流値)×2h(時間)=6.8Ah(残容量) (式1)
一方、電池300−2については、(式2)の計算が行われる。
【0057】
9.6Ah(満充電容量)−1.8A(電流値)×2h(時間)=6Ah(残容量) (式2)
そして、電池300−1,300−2についてそれぞれ算出された残容量と、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限とが比較される。
【0058】
電池300−1の残容量は(式1)から6.8Ahであり、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限は6Ahであるため、両者は互いに同じ値ではない。
【0059】
一方、電池300−2の残容量は(式2)から6Ahであり、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限も6Ahであるため、両者は互いに同じ値である。
【0060】
そのため、電池の残容量と劣化領域の上限とが同じ値となる電池は、電池300−2である。
【0061】
ステップS2にて、制御部130によって、電池の残容量が劣化領域の上限と同じ値である電池があると判別されない場合、さらに電池300−1,300−2の放電が続けられる。
【0062】
一方、ステップS2にて、制御部130によって、電池の残容量が劣化領域の上限と同じ値である電池があると判別された場合、電池の残容量が劣化領域の上限と同じ値である電池のみの放電が行われる(ステップS3)。この制御部130による放電の制御は、上述したように、スイッチ400−1,400−2の開閉を用いて行われる。
【0063】
上述した例(電池300−2が、電池の残容量と劣化領域の上限とが同じ値となった電池である場合)では、制御部130によって、スイッチ400−1が開いた状態とされる。これにより、スイッチ400−1と接続された電池300−1の放電は行われないようになる。一方、制御部130によって、スイッチ400−2が閉じた(接続された)状態とされる。これにより、スイッチ400−2と接続された電池300−2の放電が行われるようになる。
【0064】
その後、放電が行われている電池の残容量が、記憶部120に記憶されている劣化領域の下限と同じ値であるかどうかが、制御部130によって判別される(ステップS4)。
【0065】
上述した例(電池300−2のみの放電が行われている場合)では、電池300−2の残容量が、残容量算出部110によって算出され、算出された残容量と、記憶部120に記憶されている劣化領域の下限(図4に示した例では、4Ah)とが比較される。この残容量の算出方法は、上述した式を用いるものである。
【0066】
ステップS4にて、制御部130によって、放電が行われている電池の残容量が劣化領域の下限と同じ値であると判別されない場合、つまり、放電が行われている電池の残容量が劣化領域の下限と同じ値ではないと判別された場合、さらに当該電池の放電が続けられる。上述した例では、電池300−2のみの放電が行われているため、電池300−2の残容量が劣化領域の下限と同じ値ではないと制御部130によって判別された場合、電池300−2のみの放電が続けられる。
【0067】
一方、ステップS4にて、制御部130によって、放電が行われている電池の残容量が劣化領域の下限と同じ値であると判別された場合、ステップS1に処理が行われる。上述した例では、電池300−2のみの放電が行われているため、電池300−2の残容量が劣化領域の下限と同じ値であると制御部130によって判別された場合、電池300−1,300−2の2台運転(放電)が行われる(再開される)。
【0068】
その後、電池300−1の残容量が、記憶部120に記憶されている劣化領域の上限と同じ値となるが、その場合も電池300−1のみの放電として同様の処理が行われる。
【0069】
以上、(式1)および(式2)を用いて説明したように、電池の残容量として、(満充電容量)−(電流値)×(放電時間)を用いたものを説明したが、電池の両端の電圧値を用いるものであっても良い。
【0070】
図6は、本発明の放電制御装置の実施の他の形態を示す図である。
【0071】
本形態は図6に示すように、放電制御装置200と、電池300−1,300−2と、スイッチ400−1,400−2と、出力端子(正)500と、出力端子(負)501とから構成されている。
【0072】
電池300−1,300−2、スイッチ400−1,400−2、出力端子(正)500および出力端子(負)501は、図1に示した形態に用いたものと同じものである。なお、本形態においては、電池300−1の正極側とスイッチ400−1とが直接接続されている。また、電池300−2の正極側とスイッチ400−2とが直接接続されている。
【0073】
放電制御装置200は、電池300−1,300−2の残りの容量である残容量に基づいて、スイッチ400−1,400−2の開閉を制御することで、電池300−1,300−2の放電を制御する。
【0074】
また、放電制御装置200には図6に示すように、残容量算出部210と、記憶部220と、制御部230とが設けられている。
【0075】
残容量算出部210は、電池300−1,300−2の残りの容量である残容量それぞれを算出する。また、残容量算出部210は、電池300−1,300−2それぞれの両端の電圧値を残容量として算出する。このように電圧値を残容量とする場合、厳密には、現在の電流値および電圧値から現在の抵抗値を算出し、それらに基づいて開放電圧法により推測された電圧値を残容量として算出する。
【0076】
図7は、図6に示した残容量算出部210の内部構成の一例を示す図である。
【0077】
図6に示した残容量算出部210には図7に示すように、電圧計211−1,211−2が設けられている。
【0078】
電圧計211−1は、電池300−1の両端の電圧を測定する。また、電圧計211−1は、測定した電池300−1の両端の電圧値を制御部230へ出力する。
【0079】
電圧計211−2は、電池300−2の両端の電圧を測定する。また、電圧計211−2は、測定した電池300−2の両端の電圧値を制御部230へ出力する。
【0080】
以下に、図6に示した電池300−1,300−2を放電したときの電圧計211−1,211−2がそれぞれ測定する電池300−1,300−2の両端の電圧値の時間的変化から残容量を算出する方法について説明する。ここでは、電池300−1を放電したときの電圧計211−1が測定する電池300−1の両端の電圧値の時間的変化から残容量を算出する方法を例に挙げて説明する。なお、電池300−2を放電したときの電圧計211−2が測定する電池300−2の両端の電圧値の時間的変化から残容量を算出する方法についても同様の方法である。
【0081】
図8は、図6に示した電池300−1を放電したときの電圧計211−1が測定する電池300−1の両端の電圧値の時間的変化の一例を示す図である。
【0082】
図8に示すように、電圧計211−1が測定する電池300−1の両端の電圧値(図8中、実線で示した「実際の放電電圧」)は、起因する抵抗値(インピーダンス)として、電池300−1が有する内部インピーダンスに、それ以外の外部要因である外部インピーダンスが加わることで、破線で示した実際の容量依存電圧よりも低い値となる。
【0083】
そこで、上述した開放電圧法を用いて、電圧値を推測(補正)する。
【0084】
図8に示したAが放電開始の時刻(ポイントA)であり、Eが放電終了の時刻(ポイントE)である。また、ポイントAから1秒後のポイントをポイントBとし、さらにポイントBから9秒後のポイントをポイントCとする。
【0085】
まず、ポイントA−ポイントB間の1秒間平均インピーダンスを算出する。ここで、ポイントAからポイントBまでの時間は1秒間であるため、1点(ポイントA)で算出したインピーダンスがポイントA−ポイントB間の1秒間平均インピーダンスとなる。算出したインピーダンスをaΩとする。このaΩは、上述した電池300−1内部のインピーダンスと、それ以外の外部インピーダンスとの合計値となっている。
【0086】
その後、ポイントB−ポイントC間の1秒間平均インピーダンスを算出する。ここで、ポイントBからポイントCまでの時間は9秒間であるため、1秒おきに9回のインピーダンスの算出を行い、1秒間の平均値を算出する。算出したインピーダンスをbΩとする。このbΩは、上述した電池300−1内部のインピーダンスである。
【0087】
したがって、aΩからbΩを差し引くことにより、外部インピーダンスであるcΩを算出することができる(a−b=c)。
【0088】
その後、放電終了のポイントEに近づいたとき、同様に1秒間(ポイントD−ポイントF間)および9秒間(ポイントF−ポイントG間)における1秒間平均インピーダンスを算出しておく。
【0089】
また、ポイントEにおいて、電圧計211−1が測定する電池300−1の両端の電圧値からインピーダンスを算出する。算出されたポイントEにおけるインピーダンスからbΩ分に相当する電圧降下を加算することで、ポイントFの電圧が求められる。
【0090】
続いて、ポイントD−ポイントF間における1秒間平均インピーダンス(1DΩ)と、ポイントF−ポイントG間における1秒間平均インピーダンス(9DΩ)との平均値に、外部インピーダンスcΩを加算し、その値に電流値(I)を乗算することで実際の容量依存電圧(残容量)を算出することができる。つまり、残容量をCAPVとすると、
CAPV=((1D+9D)/2+c)×I
となる。また、外部インピーダンスcΩの値が、あらかじめ設定されている場合は、その値と使用しても良い。このように残容量算出部210は、電池300−1,300−2の残容量を算出しても良い。
【0091】
また、記憶部220は、第1の閾値および第2の閾値をあらかじめ記憶する。
【0092】
ここで、第1の閾値は、上述した「劣化領域」の上側の値(上限)である。また、第2の閾値は、「劣化領域」の下側の値(下限)である。
【0093】
図9は、図6に示した記憶部220に記憶された閾値の一例を示す図である。
【0094】
図6に示した記憶部220には図9に示すように、上限および下限が閾値として記憶されている。
【0095】
例えば、図9に示すように、劣化領域の上限の閾値(第1の閾値)として2.4Vが記憶されている。また、劣化領域の下限の閾値(第2の閾値)とした1.6Vが記憶されている。これは、電池の残容量とする電池の電圧値が2.4Vから1.6Vまでの間が劣化領域であることを示している。
【0096】
制御部230は、記憶部220に記憶されている劣化領域の上限および下限を読み出し、読み出した劣化領域の上限および下限と、電圧計211−1,211−2から出力されてきた電池300−1,300−2の残容量とする電圧値とを比較する。そして、電池300−1,300−2のうち、電圧値が劣化領域の上限と同じ値となった電池がある場合、当該電池の電圧値が劣化領域の下限と同じ値となるまで、当該電池のみを放電させる。
【0097】
例えば、電池300−1の電圧値と劣化領域の上限とが同じ値となった場合、電池300−1の電圧値が劣化領域の下限と同じ値となるまで、制御部230はスイッチ400−1を閉じた状態とし、スイッチ400−2を開いた状態とする。
【0098】
また、電池300−2の電圧値と劣化領域の上限とが同じ値となった場合、電池300−2の電圧値が劣化領域の下限と同じ値となるまで、制御部230はスイッチ400−2を閉じた状態とし、スイッチ400−1を開いた状態とする。
【0099】
また、制御部230は、電池300−1の電圧値と電池300−2の電圧値とのどちらも劣化領域の上限から下限までの範囲外である、つまり劣化領域にない場合、電池300−1,300−2に、一般的な2台並列運転をさせるものであっても良いし、ローテーション放電をさせるものであっても良い。
【0100】
具体的には、このような場合、制御部230は、スイッチ400−1とスイッチ400−2との開閉を交互に繰り返すものであっても良い。
【0101】
このように制御部230は、スイッチ400−1,400−2を開閉することで、電池300−1,300−2それぞれの放電と非放電とを制御する。
【0102】
以下に、図6に示した形態における放電制御方法について説明する。
【0103】
図10は、図6に示した形態における放電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0104】
まず、電池300−1,300−2の2台運転(放電)が開始される(ステップS11)。
【0105】
また、放電が開始されると、電圧計211−1,211−2による電池300−1,300−2の両端の電圧値それぞれの測定が開始される。
【0106】
その後、電圧計211−1,211−2によって測定された電圧値が、記憶部220に記憶されている劣化領域の上限と同じ値となる電池があるかどうかが、制御部230によって判別される(ステップS12)。
【0107】
これは、電圧計211−1,211−2によって測定された電圧値と、記憶部220に記憶されている劣化領域の上限と同じ値とが比較され、その比較結果に基づいて判別されるものである。
【0108】
例えば、記憶部220に図9に示したような劣化領域の上限(2.4V)および下限(1.6V)の閾値が記憶されている場合、電圧計211−1によって測定された電圧値が2.4Vであり、一方、電圧計211−2によって測定された電圧値が2.5Vであるとすると、電圧計211−1によって測定された電池300−1の電圧値が劣化領域の上限と同じ値であると、制御部230によって判別される。
【0109】
ステップS12にて、制御部230によって、電池の電圧値が劣化領域の上限と同じ値である電池があると判別されない場合、さらに電池300−1,300−2の放電が続けられる。
【0110】
一方、ステップS12にて、制御部230によって、電池の電圧値が劣化領域の上限と同じ値である電池があると判別された場合、電池の電圧値が劣化領域の上限と同じ値である電池のみの放電が行われる(ステップS13)。この制御部230による放電の制御は、上述したように、スイッチ400−1,400−2の開閉を用いて行われる。
【0111】
上述した例(電池300−1が、電池の電圧値と劣化領域の上限とが同じ値となった電池である場合)では、制御部230によって、スイッチ400−2が開いた状態とされる。これにより、スイッチ400−2と接続された電池300−2の放電は行われないようになる。一方、制御部230によって、スイッチ400−1が閉じた(接続された)状態とされる。これにより、スイッチ400−1と接続された電池300−1の放電が行われるようになる。
【0112】
その後、放電が行われている電池の電圧値が、記憶部220に記憶されている劣化領域の下限と同じ値であるかどうかが、制御部230によって判別される(ステップS14)。
【0113】
上述した例(電池300−1のみの放電が行われている場合)では、電圧計211−1によって測定された電池300−1の電圧値と、記憶部220に記憶されている劣化領域の下限(図9に示した例では、1.6V)とが比較される。
【0114】
ステップS14にて、制御部230によって、放電が行われている電池の電圧値が劣化領域の下限と同じ値であると判別されない場合、つまり、放電が行われている電池の電圧値が劣化領域の下限と同じ値ではないと判別された場合、さらに当該電池の放電が続けられる。上述した例では、電池300−1のみの放電が行われているため、電圧計211−1によって測定された電池300−1の電圧値が劣化領域の下限と同じ値ではないと制御部230によって判別された場合、電池300−1のみの放電が続けられる。
【0115】
一方、ステップS14にて、制御部230によって、放電が行われている電池の電圧値が劣化領域の下限と同じ値であると判別された場合、ステップS11に処理が行われる。上述した例では、電池300−1のみの放電が行われているため、電圧計211−1によって測定された電池300−1の電圧値が劣化領域の下限と同じ値であると制御部230によって判別された場合、電池300−1,300−2の2台運転(放電)が行われる(再開される)。
【0116】
その後、電圧計211−2によって測定された電池300−2の電圧値が、記憶部220に記憶されている劣化領域の上限と同じ値となるが、その場合も電池300−2のみの放電として同様の処理が行われる。
【0117】
以上説明したように、互いに並列に接続された複数の電池を放電中、電池の残容量が劣化領域に入った電池のみを放電させることで、劣化領域を速く通過することができる。この効果について、以下に図面を用いて説明する。以下、2つの電池が互いに並列に接続されている場合を例に挙げて説明する。
【0118】
図11は、一般的な電池の放電による、時間に対する電池残容量の変化の一例を示すグラフである。
【0119】
図12は、本発明を用いた電池の放電による、時間に対する電池残容量の変化の一例を示すグラフである。
【0120】
図11に示すように、一般的には、電池の残容量は、放電の時間に対してほぼ一定の割合で減少していく。ここで、容量6Ahから4Ahまでの劣化領域を通過する時間をTaとする。
【0121】
一方、図12に示すように、電池の残容量が、劣化領域の上限である6Ahから4Ahまでは、当該電池のみの放電が行われるため、劣化領域における時間に対して電池の残容量が減少していく割合が大きくなる。つまり、電池の放電において、劣化領域を通過する時間が短くなる。ここでは、2つの電池が互いに並列に接続されている場合を例に挙げているため、図12に示すように、劣化領域を通過する時間がTa/2となり、図11に示したものと比べて、半分の時間となっている。
【0122】
また、3つの電池が互いに並列に接続されている場合は、その劣化領域の通過時間が3分の1となり、4つの電池が互いに並列に接続されている場合は、その劣化領域の通過時間が4分の1となることは言うまでもない。
【0123】
なお、電池の残容量を算出する方法は、上述したものに限らない。
【0124】
このように、放電により、電池の残容量が劣化領域にある場合、その電池のみを放電させることにより、劣化領域を通過する時間を短縮することができる。これにより、電池の長寿命化を実現することができる。これは、放電の制御対象として、劣化領域が顕著にみられるマンガン系正極のリチウムイオン電池を対象とした場合に特に効果を奏する。
【0125】
以上、放電により、電池の残容量が劣化領域にある場合、その電池のみを放電させるものを説明したが、電池の残容量が劣化領域に達する直前になったものの放電を停止させ、他の電池のみを放電させるものであっても良い。
【0126】
図13は、本発明の放電制御装置の実施の他の形態を示す図である。
【0127】
本形態は図13に示すように、放電制御装置600と、電池300−1,300−2と、スイッチ400−1,400−2と、出力端子(正)500と、出力端子(負)501とから構成されている。
【0128】
電池300−1,300−2、スイッチ400−1,400−2、出力端子(正)500および出力端子(負)501は、図6に示した形態に用いたものと同じものである。なお、本形態においては、図6に示した形態と同様に、電池300−1の正極側とスイッチ400−1とが直接接続されている。また、電池300−2の正極側とスイッチ400−2とが直接接続されている。
【0129】
放電制御装置600は、電池300−1,300−2の残りの容量である残容量に基づいて、スイッチ400−1,400−2の開閉を制御することで、電池300−1,300−2の放電を制御する。
【0130】
また、放電制御装置600には図13に示すように、残容量算出部210と、記憶部620と、制御部630とが設けられている。
【0131】
残容量算出部210は、図6(内部構成は図7)に示したものと同じものである。
【0132】
記憶部620は、閾値をあらかじめ記憶する。
【0133】
ここで、記憶部620に記憶されている閾値は、上述した「劣化領域」の上側の値(上限)よりも所定の値だけ大きな値である。つまり、この閾値は、「劣化領域」にさしかかる直前の値として記憶されている。
【0134】
図14は、図13に示した記憶部620に記憶された閾値の一例を示す図である。
【0135】
図13に示した記憶部620には図14に示すように、閾値が記憶されている。
【0136】
例えば、図14に示すように、閾値(容量)として2.4Vが記憶されている。これは、電池の残容量とする電池の電圧値が2.4Vとなると劣化領域にさしかかる直前の値になったことを示している。
【0137】
制御部630は、電池300−1,300−2の放電を開始した後、記憶部620に記憶されている閾値を読み出し、読み出した閾値と、電圧計211−1,211−2から出力されてきた電池300−1,300−2の残容量とする電圧値とを比較する。そして、電池300−1,300−2のうち、電圧値が当該閾値と同じ値となった電池の放電を停止させる。そのとき、電池300−1,300−2のうち、電圧値が当該閾値と同じ値となっていない電池の放電を続ける。
【0138】
例えば、制御部630がスイッチ400−1,400−2を閉じて放電を開始した後、電池300−1の電圧値と閾値とが同じ値となった場合、制御部630はスイッチ400−1を開いた状態とし、スイッチ400−2を閉じた状態のままとする。
【0139】
また、その後、電池300−2の電圧値と閾値とが同じ値となった場合、制御部630はスイッチ400−2を開いた状態とし、スイッチ400−1を開いた状態のままとする。
【0140】
また、制御部630は、電池300−1の電圧値と電池300−2の電圧値とのどちらも閾値と同じ値ではない場合、電池300−1,300−2に、一般的な2台並列運転をさせるものであっても良いし、ローテーション放電をさせるものであっても良い。具体的には、このような場合、制御部630は、スイッチ400−1とスイッチ400−2との開閉を交互に繰り返すものであっても良い。
【0141】
このように制御部630は、スイッチ400−1,400−2を開閉することで、電池300−1,300−2それぞれの放電と非放電とを制御する。
【0142】
以下に、図13に示した形態における放電制御方法について説明する。
【0143】
図15は、図13に示した形態における放電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0144】
まず、電池300−1,300−2の2台運転(放電)が開始される(ステップS21)。
【0145】
また、放電が開始されると、電圧計211−1,211−2による電池300−1,300−2の両端の電圧値それぞれの測定が開始される。
【0146】
その後、電圧計211−1,211−2によって測定された電圧値が、記憶部620に記憶されている閾値と同じ値となる電池があるかどうかが、制御部630によって判別される(ステップS22)。
【0147】
これは、電圧計211−1,211−2によって測定された電圧値と、記憶部620に記憶されている閾値とが比較され、その比較結果に基づいて判別されるものである。また、この電圧値は、上述した開放電圧法を用いて算出されたものであっても良い。
【0148】
例えば、記憶部620に図14に示したような閾値(2.4V)が記憶されている場合、電圧計211−1によって測定された電圧値が2.4Vであり、一方、電圧計211−2によって測定された電圧値が2.5Vであるとすると、電圧計211−1によって測定された電池300−1の電圧値が閾値と同じ値であると、制御部630によって判別される。
【0149】
ステップS22にて、制御部630によって、電池の電圧値が閾値と同じ値である電池があると判別されない場合、つまり、電池300−1,300−2の残容量のいずれもが、閾値よりも大きな値である場合、電池300−1,300−2の放電が続けられる。
【0150】
一方、ステップS22にて、制御部630によって、電池の電圧値が閾値と同じ値である電池があると判別された場合、電池の電圧値が閾値と同じ値である電池の放電が制御部630によって停止され、他の電池のみの放電が行われる(ステップS23)。この制御部630による放電の制御は、上述したように、スイッチ400−1,400−2の開閉を用いて行われる。
【0151】
上述した例(電池300−1が、電池の電圧値と閾値とが同じ値となった電池である場合)では、制御部630によって、スイッチ400−1が開いた状態とされる。これにより、スイッチ400−1と接続された電池300−1の放電は行われないようになる。一方、制御部630によって、スイッチ400−2が閉じた(接続された)状態のままとされる。これにより、スイッチ400−2と接続された電池300−2の放電が続けられる。
【0152】
その後、電圧計211−2によって測定された電池300−2の電圧値が、記憶部620に記憶されている閾値と同じ値となるが、その場合も同様に電池300−2の放電が停止される。
【0153】
以上説明したように、互いに並列に接続された複数の電池を放電中、電池の残容量が劣化領域にさしかかる直前の値となった電池の放電を停止させることで、当該電池の劣化領域の通過を避けることができる。
【0154】
なお、電池の残容量を算出する方法は、上述したものに限らない。例えば、図1〜5を用いて説明した(満充電容量)−(電流値)×(放電時間)を用いるものであっても良い。
【0155】
このように、放電により、電池の残容量が劣化領域にかかった場合、その電池の放電を停止させることにより、劣化領域の通過を避けることができる。これにより、電池の長寿命化を実現することができる。これは、放電の制御対象として、劣化領域が顕著にみられるマンガン系正極のリチウムイオン電池を対象とした場合に特に効果を奏する。
【0156】
なお、以上文章中または図面に用いた容量等の数値は、説明の便宜上、わかりやすい数値を用いたものであり、実際の数値と同じものとは限らない。
【0157】
上述した放電制御装置100,200に設けられた各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を記述したプログラムを放電制御装置100,200にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを放電制御装置100,200に読み込ませ、実行するものであっても良い。放電制御装置100,200にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、放電制御装置100,200に内蔵されたROM、RAM等のメモリやHDD等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、放電制御装置100,200に設けられたCPU(不図示)にて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0158】
100,200,600 放電制御装置
110,210 残容量算出部
111−1,111−2 電流計
112 満充電容量保持部
113 計算部
120,220,620 記憶部
130,230,630 制御部
211−1,211−2 電圧計
300−1,300−2 電池
400−1,400−2 スイッチ
500 出力端子(正)
501 出力端子(負)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15