特許第5737750号(P5737750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737750
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】交流電力測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/133 20060101AFI20150528BHJP
   G01R 22/00 20060101ALI20150528BHJP
   G01R 15/16 20060101ALI20150528BHJP
   G01R 15/04 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   G01R21/133 D
   G01R22/00 130F
   G01R15/16
   G01R15/04
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-39632(P2011-39632)
(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2012-177571(P2012-177571A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2014年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100074631
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】船渡 卓
(72)【発明者】
【氏名】宮本 章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 松男
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昭人
(72)【発明者】
【氏名】柳平 丈志
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−014791(JP,A)
【文献】 特開2008−261646(JP,A)
【文献】 特開2000−338141(JP,A)
【文献】 特開2001−124801(JP,A)
【文献】 特開平02−190769(JP,A)
【文献】 特開平09−311146(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00809115(EP,A2)
【文献】 米国特許第06470283(US,B1)
【文献】 特開2002−055126(JP,A)
【文献】 特開平06−235739(JP,A)
【文献】 特開2002−350473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/133
G01R 15/04
G01R 15/16
G01R 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電導体に絶縁被覆を施した第1と第2の絶縁電線間の交流電圧を検出して検出した交流電圧を表す電圧信号を出力する電圧検出手段と、
前記絶縁電線の前記通電導体を流れる交流電流を検出して検出した交流電流を表す電流信号を出力する電流検出手段と、
前記電圧検出手段が出力する電圧信号と前記電流検出手段が出力する交流電流を表す電流信号とに基づいて交流電力を演算する演算手段と、を有し、
前記電圧検出手段は、前記第1と第2の絶縁電線のそれぞれの前記絶縁被覆の外側に配置されることにより、前記それぞれの通電導体との間でコンデンサを生成する第1と第2のプローブと、前記第1と第2のプローブ間に電気的に直列接続された入力抵抗および検出抵抗と、前記検出抵抗が発生する電圧に基づいて前記電圧信号を出力する電圧信号出力手段と、を有し、
前記第1と第2のプローブにより形成される前記コンデンサの静電容量で定まるインピーダンスより、前記入力抵抗は大きな抵抗値を有し、前記検出抵抗は前記入力抵抗より小さな抵抗値を有している、ことを特徴とする交流電力測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交流電力測定装置において、
前記電圧検出手段は接地点を有し、
前記検出抵抗は第1検出抵抗と第2検出抵抗を有し、前記第1検出抵抗と前記第2検出抵抗の一端はそれぞれ前記接地点と電気的に接続されおり、
前記入力抵抗は第1入力抵抗と第2入力抵抗を有し、
さらに前記第1のプローブと前記接地点との間に前記第1入力抵抗と前記第1検出抵抗が電気的に直列に接続され、前記第2のプローブと前記接地点との間に前記第2入力抵抗と前記第2検出抵抗が電気的に直列に接続され、
前記第1入力抵抗は、前記第1のプローブにより生成される第1コンデンサのインピーダンスおよび前記第1検出抵抗より大きな抵抗値を有し、前記第2入力抵抗は、前記第2のプローブにより生成される第2コンデンサのインピーダンスおよび前記第2検出抵抗より大きな抵抗値を有し、
前記第1検出抵抗と前記第2検出抵抗が発生する電圧に基づいて前記電圧検出手段から前記電圧信号が出力される、ことを特徴とする交流電力測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の交流電力測定装置において、前記電圧検出手段は差動増幅回路を備え、
それぞれの一端が前記接地点と電気的に接続されている前記第1検出抵抗と前記第2検出抵抗の他端間に発生する交流電圧が前記差動増幅回路によって検出され、前記検出された交流電圧に基づいて前記電圧検出手段から前記電圧信号が出力される、ことを特徴とする交流電力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交流電力測定装置に係り、特に検出誤差を希望する所定の範囲内に収めて平均電力を測定することのできる交流電力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、線路の電力量は、計器用変圧器で検出した電圧信号と計器用変流器で検出した電流信号を演算手段で演算することによって、計測できることは良く知られている。電力量の計測にあたっては、計測誤差を考慮した構成にする必要があるため、種々の測定装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、位相補正回路を使用する交流電力測定装置が提案されている。この特許文献1の交流電力測定装置では、測定対象の線路に計器用変圧器及び計器用変流器を設け、計器用変圧器で得られる二次電圧と計器用変流器で得られる二次電流を、W/Fコンバータの如き演算手段で乗算して計測電力を出力するものであって、アナログスイッチのオン抵抗と一端を接地するコンデンサから構成した位相補正回路を、計器用変流器と演算手段との間に介在させることにより、計器用変流器の一次電流の減少時に、二次電流の位相が進んだことで起こる電力量の計測誤差を補正している。
【0004】
また、特許文献2には、変成器の電圧信号と変流器の電流信号との位相差を補正する交流電力装置が提案されている。この特許文献2の交流電力装置では、測定対象の線路に設ける変成器と変流器の二次側における電圧値と電流値を演算手段により演算して計測出力するときに、変成器と変流器の二次側に電圧信号と電流信号をそれぞれ矩形波に波形整形するゼロクロスコンパレータを有する位相差校正回路、及び電圧値と電流値を乗算演算する計測回路とを並列に設けている。この位相差校正回路と計測回路を並列に設けことで、電圧信号と変流器の電流信号との位相差を補正して電力値の計測精度を向上させている。
【0005】
一方、特許文献3には、線路の絶縁被覆の材質や厚みに関係なく交流電圧を計測できる非接触型の交流電圧計測装置が提案されている。この特許文献3の交流電圧計測装置は、計測対象である電線の絶縁被覆の互いに離れた2点の表面を覆うように把持するクリップ形式の検出プローブを配置している。しかも、各検出プローブには絶縁被覆のインピーダンスよりも高いインピーダンスに設定された抵抗をそれぞれ直列に接続し、この各抵抗で非接触式のプローブ間の電圧を分圧した上、増幅して出力される電圧を演算する計測手段を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−134210号公報
【特許文献2】特開平8−62261号公報
【特許文献3】特開2001−124801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の交流電力測定装置の場合、位相補正回路を用いて計器用変流器で得た二次電流の位相の進みに基づく電力量の計測誤差を補正しようとしても、二次電流の位相の遅れ誤差もあり、この場合には補正手段が全くない欠点がある。また、計器用変流器における二次電流の位相の進み誤差がどの程度かも明確でないから、位相補正回路のオン抵抗やコンデンサの値を決定することが難しい問題もある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の交流電力測定装置の場合、位相差校正回路に備えるゼロクロスコンパレータによって、変成器の電圧信号と変流器の電流信号を矩形波に波形整形するものである。しかし、矩形波の波形整形はきれいな正弦波のときに成立するものの、現実の波形はノイズ等の影響によって波形が歪むようになる。変成器の電圧信号と変流器の電流信号が歪むのを避けるには、一般的にはフィルタ回路を挿入することで、波形を正弦波に近づけることが行われる。ところが、この場合には挿入するフィルタ回路の位相誤差が問題となって、現実的な解決手段ではなくなることになる。
【0009】
また、特許文献1及び2交流電力測定装置では、測定対象の通電導体に直接計器用変圧器の一次側を接続して電圧検出するものであるから、対象の測定電圧を考慮した十分な絶縁構造とする必要がある。このため、非接触の電圧検出手段を用いて、通電導体の電圧を検出しても精度よく電力計測できるようにすることが望まれている。
【0010】
しかしながら、非接触の電圧検出手段で行う通電導体の電圧検出では、負荷の容量で変わる負荷電流に伴って使用する絶縁電線が異なると、即ち絶縁被覆の厚みが増して直径寸法が異なった絶縁電線の場合、絶縁被覆の厚みで電圧検出手段の静電容量も変わる。このため、非接触の電圧検出手段で検出した電圧の位相差が変化してしまい、平均電力を希望する検出誤差の範囲に収まるように計測することが難しくなる問題が生じてくる。
【0011】
本発明の目的は、絶縁電線の絶縁被覆の外周面に電圧検出手段を配置して非接触で検出する絶縁電線の電圧値と、変流器で検出する電流値とを用いて、平均電力を希望する検出誤差の範囲に収めて計測できる交流電力測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1の発明に係る交流電力測定装置は、通電導体に絶縁被覆を施した第1と第2の絶縁電線間の交流電圧を検出して検出した交流電圧を表す電圧信号を出力する電圧検出手段と、前記絶縁電線の前記通電導体を流れる交流電流を検出して検出した交流電流を表す電流信号を出力する電流検出手段と、前記電圧検出手段が出力する電圧信号と前記電流検出手段が出力する交流電流を表す電流信号とに基づいて交流電力を演算する演算手段と、を有し、前記電圧検出手段は、前記第1と第2の絶縁電線のそれぞれの前記絶縁被覆の外側に配置されることにより、前記それぞれの通電導体との間でコンデンサを生成する第1と第2のプローブと、前記第1と第2のプローブ間に電気的に直列接続された入力抵抗および検出抵抗と、前記検出抵抗が発生する電圧に基づいて前記電圧信号を出力する電圧信号出力手段と、を有し、前記第1と第2のプローブにより形成される前記コンデンサの静電容量で定まるインピーダンスより、前記入力抵抗は大きな抵抗値を有し、前記検出抵抗は前記入力抵抗より小さな抵抗値を有している、ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第2の発明に係る交流電力測定装置は、第1の発明に係る交流電力測定装置において、前記電圧検出手段は接地点を有し、前記検出抵抗は第1検出抵抗と第2検出抵抗を有し、前記第1検出抵抗と前記第2検出抵抗の一端はそれぞれ前記接地点と電気的に接続されおり、前記入力抵抗は第1入力抵抗と第2入力抵抗を有し、さらに前記第1のプローブと前記接地点との間に前記第1入力抵抗と前記第1検出抵抗が電気的に直列に接続され、前記第2のプローブと前記接地点との間に前記第2入力抵抗と前記第2検出抵抗が電気的に直列に接続され、前記第1入力抵抗は、前記第1のプローブにより生成される第1コンデンサのインピーダンスおよび前記第1検出抵抗より大きな抵抗値を有し、前記第2入力抵抗は、前記第2のプローブにより生成される第2コンデンサのインピーダンスおよび前記第2検出抵抗より大きな抵抗値を有し、前記第1検出抵抗と前記第2検出抵抗が発生する電圧に基づいて前記電圧検出手段から前記電圧信号が出力される、ことを特徴とする。
上記課題を解決する第3の発明に係る交流電力測定装置は、第2の発明に係る交流電力測定装置において、前記電圧検出手段は差動増幅回路を備え、それぞれの一端が前記接地点と電気的に接続されている前記第1検出抵抗と前記第2検出抵抗の他端間に発生する交流電圧が前記差動増幅回路によって検出され、前記検出された交流電圧に基づいて前記電圧検出手段から前記電圧信号が出力される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の交流電力測定装置によれば、絶縁被覆の厚みが異なって直径寸法の相違する2線式や3線式の絶縁電線であっても、絶縁被覆の外面に配置する電圧検出手段により非接触で検出する電圧と変流器で検出した電流を用いて、平均電力を希望する検出誤差の範囲に収めて計測することができ、しかも装置全体を複雑化することなく構成できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例である2線式の交流電力測定装置を示す概略構成図である。
図2図1の電圧検出部を示す概略構成図である。
図3図2の電圧検出部の等価回路図である。
図4】(a)は電圧検出信号V’RSと電流検出信号I’の位相差θ及びφを説明するベクトル図、(b)は(a)の波形図である。
図5】位相差θによる電流計測の検出誤差εの関係を示す図である。
図6】各プローブの静電容量C、Cと電圧検出信号V’RSの関係図である。
図7】各プローブの静電容量C、Cと位相差θの関係図である。
図8】本発明の他の実施例である3線式の交流電力測定装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の交流電力測定装置は、通電導体に絶縁被覆を施した絶縁電線に印加された交流電圧を検出する電圧検出手段と、絶縁電線の通電導体に流れる電流を検出する変流器と、電圧検出手段で検出した交流電圧値と変流器で検出した交流電流値を用いて演算する計測装置を有している。電圧検出手段は、絶縁電線の絶縁被覆の外面にそれぞれ配置して非接触で交流電圧を検出するプローブを備え、かつ各プローブは絶縁物内に電極を内蔵させて通電導体との間で作る静電容量をそれぞれ予め求められる値に設定し、変流器は任意の絶縁電線に配置される変流器を用いている。使用する計測装置は、各プローブに接続する入力抵抗と検出抵抗を含む分圧抵抗回路及び前記分圧抵抗回路からの電圧信号を作動増幅する作動増幅回路を含んで電圧を検出する電圧検出部と、変流器の電流を検出する電流検出部と、これら電圧検出部の電圧信号及び電流検出部からの電流信号をそれぞれ変換するアナログ/デジタル変換器と、この各アナログ/デジタル変換器からの信号を基に交流電力を演算する演算処理装置とを少なくとも有している。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の交流電力測定装置の例を、図1から図7を用いて説明する。本発明の交流電力測定装置では、図1に示すように電源側に連なり負荷10に至るR相及びS相の2線式の絶縁電線11R、11Sの外面に、電圧検出手段として用いるプロープ12R、12Sを配置し、負荷10に印加された電圧VRSを非接触式で検出する。
【0018】
このプロープ12R、12Sは、図2に示すように樹脂製の絶縁物12R1、12S1中に、それぞれ電極12R2、12S2を埋め込んで、絶縁電線11R、11Sを例えば把持可能なクリップ形式に作製する。各プロープ12R、12Sは絶縁電線11R、11Sの外面、即ち通電導体12R1、12S1にそれぞれ施した絶縁被覆12R2、12S2の外面の全面或いは一部に配置されている。しかも、後述する如く各プロープ12R、12Sの電極12R2、12S2が、絶縁電線11R、11Sの通電導体12R1、12S1との間で作る静電容量C、Cを、予め定めた値になるように設定して使用する。
【0019】
また、2線式のいずれか一方である絶縁電線11R側に変流器13Rを配置し、負荷10に印加された電流iを検出する。各プロープ12R、12S及び変流器13Rは計測装置20と接続されており、計測装置20において各プロープ12R、12Sで負荷10に印加された電圧VRSを検出して得た電圧信号、及び変流器13Rで負荷に流れる電流iRを検出して得た電流信号が入力され、これらを演算して交流電力を計測する。
【0020】
計測装置20は、図1に示すようにブロープ12R、12Sで得られて入力される電圧信号を後段の使用に適切な値の電圧検出信号V’RSに変換する電圧検出部21と、変流器13Rで得られて入力される電流信号を同様に適切な値の電流検出信号I’に変換する電流検出部22とを有している。
【0021】
また、計測装置20には、電圧検出信号V’RSと電流検出信号I’を、それぞれ所定の時間間隔でサンプリングしアナログ信号値をデジタル信号値に変換するアナログ/デジタル(以下、「A/D」と略称する。)変換器23、24と、各デジタル信号値を基に演算処理して交流電力を計測する演算処理装置(以下、「MPU」と略称する。)25を有しており、更には演算した計測値を記録する記憶装置26や、計測結果を表示する表示部27や、計測結果を出力するため例えば通信ポートを備えた出力部28等を備えている。 なお、表示部27は、MPU25で演算処理された計測結果を表示するために、例えば7セグメント構成の発光ダイオード(LED)や液晶表示装置(LCD)等の表示器、更にはこれら以外の各種表示機器を用いることができる。
【0022】
計測装置20中の電圧検出部21は、図2に示すようにプローブ12R、12Sの電極12R2、12S2と接続する分圧抵抗回路31と差動増幅回路32を有して構成されている。分圧抵抗回路31は、電極12R2、12S2に接続される入力抵抗R、Rと、入力抵抗R、R間を接続して中点を接地する検出抵抗R、Rを備えている。また、差動増幅回路32は3つの演算増幅器32a、32b、32cを備えおり、ここから電圧検出信号V’RSをA/D変換器23に出力する。
【0023】
次に、上記した図2に示す電圧検出部21は、図3の等価回路図で表されるから、これを用いて計測装置20のMPU25で演算される平均電力Pや、電圧検出信号の位相差による電力計測の検出誤差εや、電圧検出手段にプローブ12R、12Sを用いるときに設定される静電容量C、C等について、以下に説明する。図3の等価回路のインピーダンスZは、静電容量C、Cと分圧抵抗回路31の入力抵抗R、Rと検出抵抗R、Rから、数1にて求められる。
【0024】
【数1】
【0025】
数1において、C=C、R1=R、R=Rとすると、インピーダンスZは
Z={2/(jωC)}+2R+2R
である。これから、等価回路に流れる電流Iは、印加電圧VRSをインピーダンスZで除したI=VRS/Zである。また、分圧抵抗回路31で分圧された電圧信号V’、V’を、差動増幅回路12で増幅した電圧検出信号V’RSは、
V’RS=(R+R)×I=2R×I
である。この式に上記した電流Iを求める式、及び上記した条件でのインピーダンスZを求める式を代入すると、数2となる。
【0026】
【数2】
【0027】
この数2を実部Re{V’RS}と虚部Im{V’RS}に分解すれば、次の数3及び数4となる。
【0028】
【数3】
【0029】
【数4】
【0030】
したがって、電圧検出信号V’RSの実効値V’RSeは、次の数5となる。
【0031】
【数5】
【0032】
また、印加電圧VRSに対する電圧検出信号V’RSの位相差θは、数6で表せる。
【0033】
【数6】
【0034】
よく知られているように、負荷に印加の電圧VRSに対する電圧検出信号V’RSの位相差θ、及び電流検出信号I’の位相差φは、図4(a)のベクトル図と図4(b)の波形図で説明されている。
【0035】
負荷に印加の電圧VRSは、電圧検出部21を介することにより、
v’RS=V’RSmsin(ωt+θ)
と表され、また、負荷に流れる電流iは電流検出部22を介することにより、
i’=I’Rmsin(ωt+φ)
と表される。
【0036】
電圧検出部21からの電圧検出信号V’RSは、A/D変換器23によって所定の時間間隔でサンプリングしアナログ値をデジタル値に変換する。また、電流検出部22からの電流検出信号i’は、A/D変換器24によって所定の時間間隔でサンプリングしアナログ値をデジタル値に変換する。電圧検出部21を介して得られ電圧検出信号v’RSと、電流検出部22を介して得られた電流検出信号i’とから、電力p’は次式で求まる。
このデジタル値を、MPU25にて1周期Tの平均をとる積分演算することによって、平均電力P’として求められる。この平均電力P’は、位相差θ及び位相差φを含んだ次式でと表される。
電圧検出信号V’RSの位相差θがない(θ=0)場合の平均電力をP’とすると、次のように表せる。
したがって、位相差θによる電力計測の検出誤差εは、
【0037】
上記の位相差θと検出誤差εとの関係は、図5に示すように位相差が大きくなるのに従い増加するようになる。即ち、図5にそれぞれ位相差θが1度である平均電力P’の検出誤差の特性線ε1で、位相差θが2度である平均電力P’の検出誤差の特性線ε2で、位相差θが3度である平均電力P’の検出誤差の特性線ε3で示すように、電流検出信号I’の位相差φに応じて増加する。
【0038】
図5の電流検出信号I’の位相差φが0〜60度の範囲で、平均電力P’の検出誤差を3%以下の検出誤差εにしたいときは、検出誤差の特性線ε1(θ=1)に示されているように、電圧検出信号V’RSの位相差θを1度以下とすればよい。なお、通常の変電回線で望まれる平均電力P’ の検出誤差は1.5%である。
【0039】
このことから、数6の電圧検出信号V’RSの位相差θを求める式より、プローブ12R、12Sの各電極12R1、12S1が、絶縁電線11R、11Sの通電導体11R1、11S1との間で作る図2の絶縁被覆11R2、11S2部分中に示した静電容量Cは、上記したようにC=Cとしたことから、
≧1/{ωtanθ(R+R)}
で求められる値に設定すれば良いことになる。これと類似した式で静電容量Cも表される。このため、双方を静電容量C、分圧抵抗回路31の入力抵抗Rと検出抵抗Rで表すと、
C≧1/{ωtanθ(R+R)}
の共通式で表記することができる。
【0040】
通常、測定対象の変電線路に用いる絶縁電線11R、11Sの場合、絶縁被覆11R2、11S2の単位長さ当りの静電容量は、通電導体11R1、11S1の外形や、絶縁被覆11R2、11S2の外形及び比誘電率等によって決まる。本発明の場合は、絶縁被覆11R2、11S2の外面にプローブ12R、12Sを配置し、しかも各プローブ12R、12S内の電極12R1、12S1が電圧検出部21内の分圧抵抗回路31と接続されているから、分圧抵抗回路31の入力抵抗Rと検出抵抗Rの抵抗値を用いた上記式から、各静電容量C、Cを、予め適切な値に設定することができる。
【0041】
例えば、プローブ12R、12Sの各電極12R1、12S1で検出したい最小静電容量C(F)は、入力抵抗R=1GΩ、検出抵抗R=5MΩとし、印加電圧VRSの周波数f=50Hzとすると、ω=2πfより、
C={1/2π×50×tan1(10+10)}=182×1012となる。
【0042】
つまり、プローブ12R、12Sの各電極12R1、12S1が、絶縁電線11R、11Sの通電導体11R1、11S1間で作られる静電容量を、最小でも182pFで検出する電極12R1、12S1に設定すれば、実用にあたっては絶縁電線11R、11Sの直径寸法に関係なく交流電力を計測することができる。
【0043】
静電容量C、Cに対する電圧検出信号V’RS図6に示しており、印加電圧VRS=100V rms、周波数f=50Hz、R=R=1GΩ、R=R=5MΩ、差動増幅回路32の増幅率を1としたときの特性線は、上記した静電容量C=Cの値182pF以上では平坦になる。このため、通電導体11R1、11S1と電極12R1、12S1間でそれぞれ形成される静電容量C、Cを182pF以上に設定して検出すれば、電圧検出信号V’RSを安定して得られることになる。
【0044】
また、静電容量C、Cに対する検出信号V’ RSの位相差θを図7に示しており、同様に印加電圧VRS=100Vrms、周波数f=50Hz、R=R=1GΩ、R=R=5MΩ、差動増幅回路12の増幅率=1としたときの特性線は、静電容量C=Cの値182pF以上に設定して検出すると、電圧検出信号V’RSの位相差θを1度以下の望ましい数値にするこができる。
【0045】
それ故、本発明の如く交流電力測定装置を構成すれば、電圧検出手段を用いて非接触で検出する電圧と変流器で検出した電流を用いて、平均電力を希望する検出誤差の範囲に収めて計測することができる。しかも、電圧検出手段となるプローブは、絶縁電線の外径寸法を問わず適用できる利点があり、計測装置の電圧検出部の構造も簡単であるから、全体を複雑化することもなくなる。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の例を図2に示しており、この交流電力測定装置は負荷10に至るR相、S相及びT相の3線式の絶縁電線11R、11S、11Tに適用したものである。絶縁電線11R、11S、11Tの外面に、電圧検出手段のプロープ12R、12S、12Tをそれぞれ配置し、負荷10に印加される電圧VRS、VSTを非接触で検出する。プロープ12R、12S、12Tが作る静電容量は、既に述べたように予め定めた値になるように設定して使用する。また、選択された二つの絶縁電線11R、11T側には変流器13Rと13Tを配置し、負荷10に印加された電流i、iを検出する。
【0047】
交流電力を計測する計測装置20は、並列に配置する図2と同様な構成の電圧検出部21、21Aと、並列に配置する電流検出部22、22Aを備えており、これらにそれぞれアナログ信号値をデジタル信号値に変換するA/D変換器23、23A及び24、24Aが連なるようにし、他の部分は図1と同じにしている。
【0048】
この計測装置20では、電圧検出部21、21Aを介して得た電圧検出信号V’RS、V’STと、電流検出部22、22Aを介して電流検出信号i’、i’を、A/D変換器23、23A及び24、24Aで変換したデジタル信号値を用いてMPU25で演算する。して平均電力Pを計測し、表示や出力することができる。これら信号から電力p’は、2電力計法によって
このデジタル値を、MPU25にて1周期Tの平均をとる積分演算することによって、平均電力P’として求めることができる。このため、この実施例の3戦式の交流電力測定装置であっても、上記の実施例と同様な効果を達成することができる。
【符号の説明】
【0049】
11R、11S、11T…絶縁電線、11R1、11S1…通電導体、11R2、11S2…絶縁被覆、12R、12S、12T…プローブ、13R、13S、13T…変流器、20…計測装置、21、21A…電圧検出部、22、22A…電流検出部、23、23A、24、24A、…アナログ/デジタル変換器、25…演算処理装置、31…分圧抵抗回路、32…差動増幅回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8