【実施例1】
【0017】
以下、本発明の交流電力測定装置の例を、
図1から
図7を用いて説明する。本発明の交流電力測定装置では、
図1に示すように電源側に連なり負荷10に至るR相及びS相の2線式の絶縁電線11R、11Sの外面に、電圧検出手段として用いるプロープ12R、12Sを配置し、負荷10に印加された電圧V
RSを非接触式で検出する。
【0018】
このプロープ12R、12Sは、
図2に示すように樹脂製の絶縁物12R1、12S1中に、それぞれ電極12R2、12S2を埋め込んで、絶縁電線11R、11Sを例えば把持可能なクリップ形式に作製する。各プロープ12R、12Sは絶縁電線11R、11Sの外面、即ち通電導体12R1、12S1にそれぞれ施した絶縁被覆12R2、12S2の外面の全面或いは一部に配置されている。しかも、後述する如く各プロープ12R、12Sの電極12R2、12S2が、絶縁電線11R、11Sの通電導体12R1、12S1との間で作る静電容量C
1、C
2を、予め定めた値になるように設定して使用する。
【0019】
また、2線式のいずれか一方である絶縁電線11R側に変流器13Rを配置し、負荷10に印加された電流i
Rを検出する。各プロープ12R、12S及び変流器13Rは計測装置20と接続されており、計測装置20において各プロープ12R、12Sで負荷10に印加された電圧V
RSを検出して得た電圧信号、及び変流器13Rで負荷に流れる電流iRを検出して得た電流信号が入力され、これらを演算して交流電力を計測する。
【0020】
計測装置20は、
図1に示すようにブロープ12R、12Sで得られて入力される電圧信号を後段の使用に適切な値の電圧検出信号V’
RSに変換する電圧検出部21と、
変流器13Rで得られて入力される電流信号を同様に適切な値の電流検出信号I’
Rに変換する電流検出部22とを有している。
【0021】
また、計測装置20には、電圧検出信号V’
RSと電流検出信号I’
Rを、それぞれ所定の時間間隔でサンプリングしアナログ信号値をデジタル信号値に変換するアナログ/デジタル(以下、「A/D」と略称する。)変換器23、24と、各デジタル信号値を基に演算処理して交流電力を計測する演算処理装置(以下、「MPU」と略称する。)25を有しており、更には演算した計測値を記録する記憶装置26や、計測結果を表示する表示部27や、計測結果を出力するため例えば通信ポートを備えた出力部28等を備えている。 なお、表示部27は、MPU25で演算処理された計測結果を表示するために、例えば7セグメント構成の発光ダイオード(LED)や液晶表示装置(LCD)等の表示器、更にはこれら以外の各種表示機器を用いることができる。
【0022】
計測装置20中の電圧検出部21は、
図2に示すようにプローブ12R、12Sの電極12R2、12S2と接続する分圧抵抗回路31と
差動増幅回路32を有して構成されている。分圧抵抗回路31は、電極12R2、12S2に接続される入力抵抗R
1、R
2と、入力抵抗R
1、R
2間を接続して中点を接地する検出抵抗R
3、R
4を備えている。また、
差動増幅回路32は3つの演算増幅器32a、32b、32cを備えおり、ここから電圧検出信号V’
RSをA/D変換器23に出力する。
【0023】
次に、上記した
図2に示す電圧検出部21は、
図3の等価回路図で表されるから、これを用いて計測装置20のMPU25で演算される平均電力Pや、電圧検出信号の位相差による電力計測の検出誤差εや、電圧検出手段にプローブ12R、12Sを用いるときに設定される静電容量C
1、C
2等について、以下に説明する。
図3の等価回路のインピーダンスZは、静電容量C
1、C
2と分圧抵抗回路31の入力抵抗R
1、R
2と検出抵抗R
3、R
4から、数1にて求められる。
【0024】
【数1】
【0025】
数1において、C
1=C
2、R1=R
2、R
3=R
4とすると、インピーダンスZは
Z={2/(jωC
1)}+2R
1+2R
3
である。これから、等価回路に流れる電流Iは、印加電圧V
RSをインピーダンスZで除したI=V
RS/Zである。また、分圧抵抗回路31で分圧された電圧信号V’
R、V’
Sを、差動増幅回路12で増幅した電圧検出信号V’
RSは、
V’
RS=(R
3+R
4)×I=2R
3×I
である。この式に上記した電流Iを求める式、及び上記した条件でのインピーダンスZを求める式を代入すると、数2となる。
【0026】
【数2】
【0027】
この数2を実部Re{V’
RS}と虚部Im{V’
RS}に分解すれば、次の数3及び数4となる。
【0028】
【数3】
【0029】
【数4】
【0030】
したがって、電圧検出信号V’
RSの実効値V’
RSeは、次の数5となる。
【0031】
【数5】
【0032】
また、印加電圧V
RSに対する電圧検出信号V’
RSの位相差θは、数6で表せる。
【0033】
【数6】
【0034】
よく知られているように、負荷に印加の電圧V
RSに対する電圧検出信号V’
RSの位相差θ、及び電流検出信号I’
Rの位相差φは、
図4(a)のベクトル図と
図4(b)の波形図で説明されている。
【0035】
負荷に印加の電圧V
RSは、電圧検出部21を介することにより、
v’
RS=V’
RSmsin(ωt+θ)
と表され、また、負荷に流れる電流i
Rは電流検出部22を介することにより、
i’
R=I’
Rmsin(ωt+φ)
と表される。
【0036】
電圧検出部21からの電圧検出信号V’
RSは、A/D変換器23によって所定の時間間隔でサンプリングしアナログ値をデジタル値に変換する。また、電流検出部22からの電流検出信号i’
Rは、A/D変換器24によって所定の時間間隔でサンプリングしアナログ値をデジタル値に変換する。電圧検出部21を介して得られ電圧検出信号v’
RSと、電流検出部22を介して得られた電流検出信号i’
Rとから、電力p’は次式で求まる。
このデジタル値を、MPU25にて1周期Tの平均をとる積分演算することによって、平均電力P’として求められる。この平均電力P’は、位相差θ及び位相差φを含んだ次式でと表される。
電圧検出信号V’
RSの位相差θがない(θ=0)場合の平均電力をP
0’とすると、次のように表せる。
したがって、位相差θによる電力計測の検出誤差εは、
【0037】
上記の位相差θと検出誤差εとの関係は、
図5に示すように位相差が大きくなるのに従い増加するようになる。即ち、
図5にそれぞれ位相差θが1度である平均電力P’の検出誤差の特性線ε1で、位相差θが2度である平均電力P’の検出誤差の特性線ε2で、位相差θが3度である平均電力P’の検出誤差の特性線ε3で示すように、電流検出信号I’
Rの位相差φに応じて増加する。
【0038】
図5の電流検出信号I’
Rの位相差φが0〜60度の範囲で、平均電力P’の検出誤差を3%以下の検出誤差εにしたいときは、検出誤差の特性線ε1(θ=1)に示されているように、電圧検出信号V’
RSの位相差θを1度以下とすればよい。なお、通常の変電回線で望まれる平均電力P’ の検出誤差は1.5%である。
【0039】
このことから、数6の電圧検出信号V’
RSの位相差θを求める式より、プローブ12R、12Sの各電極12R1、12S1が、絶縁電線11R、11Sの通電導体11R1、11S1との間で作る
図2の絶縁被覆11R2、11S2部分中に示した静電容量C
1は、上記したようにC
1=C
2としたことから、
C
1≧1/{ωtanθ(R
1+R
3)}
で求められる値に設定すれば良いことになる。これと類似した式で静電容量C
2も表される。このため、双方を静電容量C、分圧抵抗回路31の入力抵抗R
Aと検出抵抗R
Bで表すと、
C≧1/{ωtanθ(R
A+R
B)}
の共通式で表記することができる。
【0040】
通常、測定対象の変電線路に用いる絶縁電線11R、11Sの場合、絶縁被覆11R2、11S2の単位長さ当りの静電容量は、通電導体11R1、11S1の外形や、絶縁被覆11R2、11S2の外形及び比誘電率等によって決まる。本発明の場合は、絶縁被覆11R2、11S2の外面にプローブ12R、12Sを配置し、しかも各プローブ12R、12S内の電極12R1、12S1が電圧検出部21内の分圧抵抗回路31と接続されているから、分圧抵抗回路31の入力抵抗R
Aと検出抵抗R
Bの抵抗値を用いた上記式から、各静電容量C
1、C
2を、予め適切な値に設定することができる。
【0041】
例えば、プローブ12R、12Sの各電極12R1、12S1で検出したい最小静電容量C(F)は、入力抵抗R
1=1GΩ、検出抵抗R
3=5MΩとし、印加電圧V
RSの周波数f=50Hzとすると、ω=2πfより、
C={1/2π×50×tan1(10
9+10
6)}=182×10
12となる。
【0042】
つまり、プローブ12R、12Sの各電極12R1、12S1が、絶縁電線11R、11Sの通電導体11R1、11S1間で作られる静電容量を、最小でも182pFで検出する電極12R1、12S1に設定すれば、実用にあたっては絶縁電線11R、11Sの直径寸法に関係なく交流電力を計測することができる。
【0043】
静電容量C
1、C
2に対する電圧検出信号V’
RSを
図6に示しており、印加電圧V
RS=100V rms、周波数f=50Hz、R
1=R
2=1GΩ、R
3=R
4=5MΩ、差動増幅回路32の増幅率を1としたときの特性線は、上記した静電容量C
1=C
2の値182pF以上では平坦になる。このため、通電導体11R1、11S1と電極12R1、12S1間でそれぞれ形成される静電容量C
1、C
2を182pF以上に設定して検出すれば、電圧検出信号V’
RSを安定して得られることになる。
【0044】
また、静電容量C
1、C
2に対する検出信号V’
RSの位相差θを
図7に示しており、同様に印加電圧V
RS=100Vrms、周波数f=50Hz、R
1=R
2=1GΩ、R
3=R
4=5MΩ、差動増幅回路12の増幅率=1としたときの特性線は、静電容量C
1=C
2の値182pF以上に設定して検出すると、電圧検出信号V’
RSの位相差θを1度以下の望ましい数値にするこができる。
【0045】
それ故、本発明の如く交流電力測定装置を構成すれば、電圧検出手段を用いて非接触で検出する電圧と変流器で検出した電流を用いて、平均電力を希望する検出誤差の範囲に収めて計測することができる。しかも、電圧検出手段となるプローブは、絶縁電線の外径寸法を問わず適用できる利点があり、計測装置の電圧検出部の構造も簡単であるから、全体を複雑化することもなくなる。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の例を
図2に示しており、この交流電力測定装置は負荷10に至るR相、S相及びT相の3線式の絶縁電線11R、11S、11Tに適用したものである。絶縁電線11R、11S、11Tの外面に、電圧検出手段のプロープ12R、12S、12Tをそれぞれ配置し、負荷10に印加される電圧V
RS、V
STを非接触で検出する。プロープ12R、12S、12Tが作る静電容量は、既に述べたように予め定めた値になるように設定して使用する。また、選択された二つの絶縁電線11R、11T側には変流器13Rと13Tを配置し、負荷10に印加された電流i
R、i
Tを検出する。
【0047】
交流電力を計測する計測装置20は、並列に配置する
図2と同様な構成の電圧検出部21、21Aと、並列に配置する電流検出部22、22Aを備えており、これらにそれぞれアナログ信号値をデジタル信号値に変換するA/D変換器23、23A及び24、24Aが連なるようにし、他の部分は
図1と同じにしている。
【0048】
この計測装置20では、電圧検出部21、21Aを介して得た電圧検出信号V’
RS、V’
STと、電流検出部22、22Aを介して電流検出信号i’
R、i’
Tを、A/D変換器23、23A及び24、24Aで変換したデジタル信号値を用いてMPU25で演算する。して平均電力Pを計測し、表示や出力することができる。これら信号から電力p’は、2電力計法によって
このデジタル値を、MPU25にて1周期Tの平均をとる積分演算することによって、平均電力P’として求めることができる。このため、この実施例の3戦式の交流電力測定装置であっても、上記の実施例と同様な効果を達成することができる。