(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737771
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】香味カートリッジ及び非加熱型香味吸引器
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20060101AFI20150528BHJP
A61M 15/06 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
A24F47/00
A61M15/06 Z
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-555078(P2013-555078)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2012051802
(87)【国際公開番号】WO2013111320
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 友一
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/095660(WO,A1)
【文献】
特開平02−171174(JP,A)
【文献】
米国特許第3320953(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングであって、このケーシングは長手軸線、互いに対向した第1及び第2壁並びにその外面に形成された接続口を含み、前記第1壁は少なくとも1つの通気口及びを有する、ケーシングと、
前記ケーシング内に圧縮状態にして収容され、前記長手軸線に沿って延びる香味パウチであって、この香味パウチは香味成分を放出する粒状材料と、この粒状材料を包み込む通気性シートとを含む、香味パウチと、
前記ケーシング内にて前記圧縮状態の香味パウチを支持するサポートであって、このサポートは、前記ケーシングの内面に前記ケーシングの内周全域に亘って形成され、前記香味パウチの外周全域を密着させて前記香味パウチの全周をシールするシーリングステップを含み、このシーリングステップは前記香味パウチと前記第2壁との間に前記接続口に接続された内部室を確保する、サポートと
を備えることを特徴する香味カートリッジ。
【請求項2】
前記第1壁と前記シーリングステップとの間の間隔は、無負荷状態での前記香味パウチの厚みよりも狭く、前記第1壁及び前記シーリングステップは互いに協働して前記香味パウチを圧縮状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の香味カートリッジ。
【請求項3】
前記サポートは、前記第2壁の内面から突出し、前記内部室に露出した前記香味パウチの面に突き当たる突き当て要素を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の香味カートリッジ。
【請求項4】
前記突き当て要素の先端は、前記シーリングステップを含む平面内にほぼ位置付けられているか、又は、前記平面から前記第1壁側に僅かに突出していることを特徴とする請求項3に記載の香味カートリッジ。
【請求項5】
前記突き当て要素は、前記長手軸線に沿って延びるリブであることを特徴とする請求項3に記載の香味カートリッジ。
【請求項6】
前記突き当て要素は、前記長手軸線に沿い互いに間隔を存して配置された複数のボスを含むことを特徴とする請求項3に記載の香味カートリッジ。
【請求項7】
前記香味パウチは、その両端に横シール帯をそれぞれ有したピロー包装品であって、前記横シール帯は折り重ねられていることを特徴とする請求項2に記載の香味カートリッジ。
【請求項8】
前記粒状材料はタバコ特有の香味成分を放出するタバコ粒を含むことを特徴とする請求項1に記載の香味カートリッジ。
【請求項9】
請求項1に記載の香味カートリッジと、
前記香味カートリッジを取り外し可能に保持するホルダであって、このホルダは、
前記香味カートリッジの内部室への接続が前記接続口を介して許容された内端を有する中空のマウスピースと
を具備し、
前記ホルダに保持された前記香味カートリッジの前記第1壁及び前記ホルダは互いに協働して外気に連通した外気導入室を確保することを特徴する非加熱型香味吸引器。
【請求項10】
前記ケーシングはその外面から突出するジョイントを更に有し、このジョイントは先端に前記接続口を有し、前記マウスピースの内端に気密に挿入可能である、ことを特徴とする請求項9に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項11】
前記香味カートリッジは、前記マウスピースの内端への前記ジョイントの挿入を許容する前記香味カートリッジの姿勢を決定し、前記ホルダに対する香味カートリッジの誤取り付けを防止する防止機構を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項12】
前記ケーシングは前記ジョイントの挿入方向に延びる軸線を更に有し、
前記防止機構は、前記ケーシングの軸線から外れた軸線を有したジョイントを含むことを特徴とする請求項11に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項13】
前記防止機構は非点対称の外周形状を有したジョイントを含むことを特徴とする請求項11に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項14】
前記ホルダは前記香味カートリッジを収容するパイプ形状をなし、前記マウスピースを有した一端と、他端と、前記他端から前記一端に向けて延び、前記香味カートリッジの外面を部分的に露出可能とするスロットとを更に有し、
前記香味カートリッジは、前記ホルダ内に収容されたとき、前記スロットから露出する突起を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の非加熱型香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着火を要求することなく、吸気を通じて香味成分をユーザに提供する香味カートリッジ及び非加熱型香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の非加熱型香味吸引器は例えば、以下の特許文献1に開示されている。この特許文献1の香味吸引器は、ホルダ及びこのホルダ内に収容された香味カートリッジを備える。ホルダは空気導入口、マウスピース及びこれら空気導入口とマウスピースとを接続する空気流通経路を含み、一方、香味カートリッジはホルダ内にて空気流通経路を上流側部位と下流側部位とに分断すべく配置されている。
【0003】
詳しくは、香味カートリッジは、矩形の枠と、この枠内に保持された香味パウチとを含み、この香味パウチは、例えば香味成分を放出する粒状材料と、この粒状材料を包み込む通気性シートとを有する。
上述の香味吸引器によれば、ユーザがマウスピースを通じて吸引したとき、空気流通経路には香味パウチを通過し、この後、マウスピースに向かう空気の流れが発生される。香味パウチの粒状材料から放出された香味成分は上述した空気の流れに乗ってユーザの口腔内まで運ばれ、ユーザに香味成分を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
[特許文献1]:国際公開第2010/095660号パンフレット(WO 2010/095660)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の香味吸引器の場合、ホルダの内面と香味カートリッジとの間、また、枠の内面と香味パウチとの間のギャップを無くすことは容易ではない。それ故、このようなギャップは空気の流れの一部に香味パウチを迂回する迂回流を空気の流れを発生させる。この迂回流には上述の香味成分が含まれていないことから、ユーザは粒状材料から放出された香味成分を効果的に味わうことができない。
【0006】
上述のギャップを解消するには、ホルダ及び香味カートリッジに高い成形精度や別途、迂回流を防止するためのシール構造等が要求されるため、香味吸引器の構造が複雑になる一方、その製造コストの増加を招く。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構造でもって、粒状材料から放出された香味成分を効率よく放出することができる香味カートリッジ及びこの香味カートリッジを備えた非加熱型香味吸引器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、本発明の香味カートリッジによって達成され、この香味カートリッジは、
ケーシングであって、このケーシングは長手軸線、互いに対向した第1及び第2壁並びにその外面に形成された接続口を含み、第1壁は少なくとも1つの通気口を有する、ケーシングと、
ケーシング内に圧縮状態にして収容され、長手軸線に沿って延びる香味パウチであって、この香味パウチは香味成分を放出する粒状材料と、この粒状材料を包み込む通気性シートとを含む、香味パウチと、
ケーシング内にて圧縮状態の香味パウチを支持するサポートであって、このサポートは、ケーシングの内面にケーシングの内周全域に亘って形成され、香味パウチの外周全域を密着させて香味パウチの全周をシールするシーリングステップを含み、このシーリングステップは香味パウチと第2壁との間に接続口に接続された内部室を確保する、サポートと
を備える。
【0009】
上述の香味カートリッジによれば、通気口からケーシング内に流入する空気は香味パウチ内を通じて内部室に至り、この内部室から接続口を通じて流出する空気の流れを発生させる。このような空気の流れは香味パウチを迂回せず、香味パウチ内を確実に通過し、粒状材料から放出された香味成分を効率良く含むことができる。それ故、ユーザが接続口から流出する空気を吸引することができれば、ユーザはリッチな香味成分を味わうことができる。
【0010】
具体的には、第1壁とシーリングステップとの間の間隔は、無負荷状態での香味パウチの厚みよりも狭く、第1壁及びシーリングステップは互いに協働して香味パウチを圧縮状態に維持することができる。
この場合、サポートは、第2壁の内面から突出し、内部室に露出した香味パウチの面に突き当たる突き当て要素を更に含んでいるのが好ましい。更に好ましくは、突き当て要素の先端は、シーリングステップを含む平面内にほぼ位置付けられているか、又は、その平面から第1壁側に僅かに突出している。
【0011】
具体的には、突き当て要素は、ケーシングの長手軸線に沿って延びるリブであるか、又は、長手軸線に沿い互いに間隔を存して配置された複数のボスを含む。
上述した突き当て要素は香味パウチ内の粒状材料の移動を阻止し、粒状材料の密度を香味パウチの全域に亘って均一に維持する。
【0012】
一方、香味パウチがその両端に横シール帯をそれぞれ有したピロー包装品である場合、横シール帯は折り重ねられているのが好ましい。このような横シール帯の折込みは香味パウチのサイズを縮小させ、香味カートリッジの小形化が可能となる。
更に、粒状材料はタバコ特有の香味成分を放出するタバコ粒を含むことができる。
【0013】
また、本発明は非加熱型香味吸引器を提供し、この香味吸引器は、
上述の香味カートリッジと、
香味カートリッジを取り外し可能に保持するホルダであって、このホルダは、
香味カートリッジの内部室への接続が接続口を介して許容された内端を有する中空のマウスピースと
を具備し、
ホルダに保持された香味カートリッジの第1壁及びホルダは互いに協働して外気に連通した外気導入室を確保する。
【0014】
上述した香味吸引器によれば、ユーザがマウスピースを通じて吸引したとき、外気導入室から通気口、ケーシング内の香味パウチ、内部室及び接続口を経てマウスピースに至る空気の流れが発生される。
具体的には、ケーシングはその外面から突出するジョイントを更に有し、このジョイントは先端に前記接続口を有し、マウスピースの内端に気密に挿入可能である。この場合、この場合、ホルダに対する香味カートリッジの保持と同時に、香味カートリッジとマウスピースとの接続が確立される。
【0015】
更に、香味カートリッジは、マウスピースの内端へのジョイントの挿入を許容する香味カートリッジの姿勢を決定し、ホルダに対する香味カートリッジの誤取り付けを防止する防止機構を更に含むことができる。
具体的には、ケーシングがジョイントの挿入方向に延びる軸線を更に有している場合、防止機構は、ケーシングの軸線から外れた軸線を有したジョイント又は非点対称の外周形状を有したジョイントを含むことができる。
【0016】
更に、ホルダは香味カートリッジを収容するパイプ形状をなし、マウスピースを有した一端と、他端と、他端から一端に向けて延び、香味カートリッジの外面を部分的に露出可能とするスロットとを更に有し、一方、香味カートリッジは、ホルダ内に収容されたとき、スロットから露出する突起を更に含む。このような突起は、ホルダからの香味カートリッジの取り外しを容易にする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の香味カートリッジ及び非加熱型香味吸引器によれば、香味カートリッジ内の香味パウチを圧縮状態にして維持するだけの簡単な構造で、ユーザがマウスピースを通じて吸引したとき、ユーザは香味パウチを通過した空気のみを吸引することができる。それ故、ユーザが吸引する空は粒状材料から放出された香味成分を効率良く含んでいるので、ユーザはリッチな香味成分を味わうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施例の非加熱型香味吸引器の斜視図である。
【
図6】横シール帯が折り込まれた香味パウチの斜視図である。
【
図8】香味カートリッジの製造プロセスを示した図である。
【
図9】香味カートリッジのジョイントの配置及びその形状を示した図である。
【
図10】香味カートリッジの変形例のロアシェルを示した平面図である。
【
図11】変形例の香味吸引器を示した縦断面図である。
【
図13】別の変形例の香味吸引器を示した縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜
図3は一実施例の非加熱型香味吸引器を示し、この吸引器はホルダ10、キャップ12及び香味カートリッジ14を備える。ホルダ10は合成樹脂から一体成形され、パイプ形状をなしたホルダボディ16及びマウスピース18を含む。ホルダボディ16は断面でみて楕円形状の外周面を有する。マウスピース18はホルダボディ16の一端から延び、
図3に示されているように内部通路20を有する。この内部通路20の内端はホルダボディ16内に接続している。
【0020】
詳しくは、マウスピース18はその内端を提供する接続ポート22を有し、この接続ポート22はホルダボディ16の一端からホルダボディ16内に向けて突出し、ホルダボディ16の他端に向けて開口する。接続ポート22は楕円形状の内周を有する。
キャップ12もまた合成樹脂から形成され、マウスピース18に取り外し可能にして装着可能である。
【0021】
一方、香味カートリッジ14は薄い矩形のスティック形状をなし、ホルダボディ16内に取り外し可能にして収容されている。即ち、香味カートリッジ1はホルダボディ16の他端からホルダボディ16内に挿入可能な大きさを有する。香味カートリッジ14の内端からは中空のジョイント24が一体に突出しており、ジョイント24はその先端にて接続口を提供する。ホルダボディ16内に香味カートリッジ14が完全に挿入されたとき、ジョイント24は前述した接続ポート22内に差し込まれ、一方、香味カートリッジ14の外端はホルダボディ16の他端にて露出する。
【0022】
ジョイント24は、接続ポート22の内周形状に合致可能な外周形状を有し、それ故、ジョイント24は接続ポート22に差し込まれるだけで、接続ポート22に気密に接続される。即ち、香味カートリッジ14は、ジョイント24が接続ポート22に差し込まれることで、ホルダボディ16内に保持される。
【0023】
更に、ホルダボディ16はその両側面にスロット26をそれぞれ有する。これらスロット26はホルダボディ16の他端にて開口する一方、この他端から一端に向け、所定の長さに亘って延びている。一方、香味カートリッジ14もまたその両側面に突起28を有する。これら突起28は香味カートリッジ14の外端からその内端に向けて、スロット26の長さと同程度だけ延び、その外面に複数の溝を有し、これら溝は外面の摩擦係数を増加させる。
なお、上述したスロット26及び突起28はホルダボディ16及び香味カートリッジ14の片側のみに配置されていてもよい。
【0024】
ホルダボディ16内に香味カートリッジ14が収容されたとき、突起28は対応する側のスロット26内に位置付けられ、そのスロット26を通じて露出する。それ故、ホルダボディ16から香味カートリッジ14を取り外すとき、ユーザは左右の突起28にて香味カートリッジ14を指で挟み付け、ホルダボディ16から香味カートリッジ14を容易に引き抜くことができる。
【0025】
更に、ホルダボディ16の他端にはその上面にマーク30が描かれ、このマーク30はホルダボディ16の他端が香味カートリッジ14の挿入を許容する受け口であることを示す。一方、香味カートリッジ14の内端及び外端にもその上面にマーク32,34がそれぞれ描かれており、マーク32は香味カートリッジ14の挿入方向を示し、マーク34は香味カートリッジ14の引き抜き方向を示す。
【0026】
図3から明らかなように、ホルダボディ16内に香味カートリッジ14が完全に収容されたとき、ホルダボディ16の内面と香味カートリッジ14の上面との間には外気導入室36が確保されている。この外気導入室36は香味カートリッジ14の長手方向に沿って延び、ホルダボディ16の他端にて外気導入口38として開口する。
【0027】
図4は、上述した香味カートリッジ14の構造を詳細に示す。
香味カートリッジ14は長手軸線を有するケーシング40を含み、このケーシング40は香味発生源としての香味パウチ42を収容し、この香味パウチ42は長手軸線に沿って延びている。ケーシング40はロアシェル44及びトッププレート(第1壁)46を有し、これらロアシェル44及びトッププレート46は共に合成樹脂から形成されている。ロアシェル44は開口したトップと、前述したジョイント24及び突起28を有し、トッププレート46は前述したマーク32,34を有する。
【0028】
詳しくは、ロアシェル44はそのトップにアッパステップ48を有し、このアッパステップ48はトップの全周に亘って延びている。更に、ロアシェル44はその底(第2壁)とアッパステップ48との間にサポート、即ち、シーリングステップ50を有し、このシーリングステップ50はロアシェル44の内周の全域に亘って延びている。シーリングステップ50はロアシェル44内をアッパ域とロア域とに区分する。
【0029】
前述した香味パウチ42は粒状材料(図示しない)と、この粒状材料を包み込んだ通気性シート52とを含む。粒状材料は、例えばタバコ粒を含むことができる。このタバコ粒はタバコの葉及びステムを裁刻又は粉砕した粉末又は粉末を処理した顆粒であって、タバコ特有の香味成分を放出する。また、通気性シートは例えば不織布から形成されている。
なお、粒状材料は、タバコ粒以外にメントール等の香料の粒子を更に含むこともでき、タバコ特有の香味成分以外の香味成分を放出するハーブや茶等から形成された香味放出粒子を含むことができる。
【0030】
上述した香味パウチ42は、縦形のピロー包装機によって製造され、
図5に示されるようにその両端から突出した横シール帯54をそれぞれ有する。ロアシェル44のアッパ域に香味パウチ42が収容される前に、
図6に示されるように横シール帯54は折り込まれ、香味パウチ42に重ね合わされる。
【0031】
図7に示されているように香味パウチ42はロアシェル44のアッパ域に収容されるが、アッパ域の実質的な高さH1、即ち、シーリングステップ50とアッパステップ48との間の距離は、香味パウチ42が製造された直後の厚みT(
図6参照)に比べても低い。
【0032】
また、
図7に示されるようにロアシェル44には前述したジョイント24とロア域とを連通させる連通孔55が形成されている。それ故、ホルダボディ16内に香味カートリッジ14が収容され且つ香味カートリッジ14のジョイント24がホルダボディ16の接続ポート22に気密に接続されたとき、ロア域はマウスピース18に連通する。前述した外気導入室36から香味カートリッジ14を経てマウスピース18に至る空気の流通経路を考えたとき、ロア域は外気導入室36にアッパ域を介して連なる内部室56を提供する。
【0033】
更に、ロアシェル44の底にはその中央に突き当て要素としてのリブ58が一体に形成されている。このリブ58は内部室56の両端域を残し、ロアシェル44の長手方向に延びている。それ故、リブ58は内部室56を環状に形成する。ロアシェル44の底からのリブ58の高さH2は、内部室56の深さと同一であるか、又は、この深さよりも高い。それ故、リブ58の先端はシーリングステップ50を含む平面上に位置付けられているか、この平面からアッパ域内に僅かに突出されている。
【0034】
アッパ域には香味パウチ42が配置され、このとき、香味パウチ42の2つの横シール帯54は既に折り込まれた状態にあり、そして、香味パウチ42の外周部はその全域に亘ってシーリングステップ50に支持され、また、香味パウチ42の中央はリブ58に支持されている。
【0035】
一方、トッププレート46は、ロアシェル44の開口したトップに嵌め合わされ、ロアシェル44のアッパステップ48に支持されている。トッププレート46の厚みは、アッパステップ48からロアシェル44のトップまでの高さに等しい。それ故、トッププレート46の上面及び下面はロアシェル44のトップ及びアッパステップ48とそれぞれ面一に位置付けられる。
【0036】
更に、トッププレート46の下面からは矩形のインナリム60が突出され、このインナリム60はアウタ域の内周面に嵌め合わされている。それ故、インナリム60の外周面はアウタ域の内周面に密着している。
トッププレート46には例えば4個の開口62が形成されている。これら開口62は香味カートリッジ14の長手方向に互いに間隔を存して並び、リブ58の上方に位置付けられている。
【0037】
トッププレート46の外周縁はその全域に亘って、ロアシェル44のアッパステップ48に超音波溶着又は接着剤によって強固に結合されている。それ故、トッププレート46の外周縁とアッパステップ48との間は気密にシールされている。
【0038】
前述したようにアッパ域の高さH1は、香味パウチ42の厚みTよりも低い。それ故、ロアシェル44の開口したトップにトッププレート46が取り付けられたとき、トッププレート46はシーリングステップ50及びリブ58に対して香味パウチ42を押し付け、それ故、香味パウチ42は圧縮される。このような香味パウチ42の圧縮は、香味パウチ42の外周部をシーリングステップ50に密着させる一方、香味パウチ42の上面をトッププレート46の下面に密着させる。それ故、香味パウチ42の外周部とシーリングステップ50との間は気密にシールされ、また、トッププレート46の下面と香味パウチ42の上面との間もまた気密にシールされる。
【0039】
ユーザがマウスピース18を通じて吸引したとき、
図7中の矢印で示されるようにホルダボディ16の外気導入室36内の空気はトッププレート46の開口62から香味パウチ42内に流入し、そして、香味パウチ42を通過した後、内部室56に到達する。つまり、外気導入室36内の空気が香味パウチ42を迂回して内部室56に到達するようなことはない。従って、内部室56に流出した空気は必ず香味パウチ42内を通過していることから、香味パウチ42の粒状材料から放出されたタバコ特有の香味成分を効率良く含むことになる。
【0040】
この後、香味成分を含んだ空気は内部室56から連通孔55、ジョイント24及びマウスピース18を通じてユーザの口腔内に導かれることから、ユーザはリッチな香味成分を味わうことができる。
【0041】
前述したように香味パウチ42の下面は前述したリブ58に押し付けられているので、このようなリブ58は香味パウチ42内での粒状材料の移動を阻止し、香味パウチ42内における粒状材料の密度を均一に維持する。それ故、香味パウチ42を通過する空気は粒状材料に効果的に接触でき、粒状材料から放出された香味成分をより効率良く含むことができる。
【0042】
図8は、香味カートリッジ14の製造プロセスを示し、この製造プロセスは前述の説明から明らかなように、香味パウチ42の準備、横シール帯54の折込み、ロアシェル44の準備、香味パウチ42の収容、そして、トッププレート46の取り付け/香味パウチ42の圧縮を含む。
【0043】
好ましくは、製造プロセスは、香味パウチ42がロアシェル44に収容される前、又は、香味パウチ42がロアシェル44に収容された後にあっては、トッププレート46の取り付けの前に、香味パウチ42を上下及び/又は前後に振動させる振動工程を含む。このような振動工程は、香味パウチ42内における粒状材料の密度を均一にするうえで役立つ。
【0044】
振動工程には、エアシリンダやモータの駆動源によりカムを回転させる機械的なバイブレータのみならず、超音波振動子等の圧電素子を使用した電気的なバイプレータを使用可能である。
【0045】
更に、本実施例の香味吸引器によれば、香味カートリッジ14がホルダボディ16内に挿入されるとき、香味カートリッジ14の上下の向きは重要である。即ち、
図2は香味カートリッジ14の正しい挿入姿勢を示しているが、香味カートリッジ14がその上下を逆にしてホルダボディ16に挿入されてしまうと、香味カートリッジ14はホルダボディ16と協働して外気導入口38や外気導入室36を正確に形成できず、香味吸引器の使用自体が不能となる。
【0046】
このような香味カートリッジ14の誤挿入を防止するための防止機構として、
図9に示されているように香味カートリッジ14のジョイント24の中心Cは、香味カートリッジ14の軸線Aから外れて位置付けられている。
図9は、中心Cが香味カートリッジ14の軸線Aから香味カートリッジ14の幅方向にずれた状態を示しているが、中心Cは香味カートリッジ14の軸線Aから香味カートリッジ14の厚み方向にずれた状態にあってもよい。
【0047】
図9中の上側は香味カートリッジ14が正しい挿入姿勢で示され、そして、
図9中の下側には、香味カートリッジ14が正しい挿入姿勢とはその上下が逆の誤った姿勢で示されている。このような誤った姿勢にて、香味カートリッジ14がホルダボディ16内に挿入されると、ジョイント24はホルダボディ16の接続ポート22への嵌め込みが許容された正規の位置からホルダボディ16の幅方向にずれた状態となり、接続ポート22の嵌め込みは不能となる。それ故、ユーザは香味カートリッジ14の挿入姿勢が誤っていると気付き、香味カートリッジ14を正しい挿入姿勢に変更した後、ホルダボディ16内に挿入することができる。
【0048】
なお、ジョイント24の中心Cを香味カートリッジ14の軸線Aから外す代わりに、ジョイント24は非点対称の外周形状を有していてもよい。具体的には、
図9に示されたジョイント24は上下にて偏平率が異なる楕円の外周面を有する。このようなジョイント24もまた、香味カートリッジ14の誤挿入を防止することができる。
【0049】
本発明は上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、ロアシェル44は複数のリブ58を有することができる。また、
図10に示されるようにロアシェル44はリブ58の代わりに、複数の円形のボス64を有することができる。これらボス64はロアシェル44の底から突出し、且つ、ロアシェル44の長手方向に並んで配置されている。ここで、ボス64のうちの幾つかはトッププレート46の開口62の中心に位置付けられているのが好ましい。
【0050】
図11及び
図12は、変形例の香味吸引器を示す。
変形例の香味吸引器は、パイプ形状のホルダ10の代わりに、カバー形状のホルダ10aを含む。このホルダ10aは香味カートリッジ14の上側半分を覆い、香味カートリッジ14と協働して外気導入室36及び外気導入口38を同様に形成する。なお、変形例の香味吸引器の場合、前述した突起28は香味カートリッジ14の下面に配置することができる。
【0051】
更に、
図13は別の変形例の香味吸引器を示し、この香味吸引器はホルダ10aと同様にカバー形状のホルダ10bを含む。このホルダ10bは香味カートリッジ14と協働して外気導入室36のみを形成し、その上面に外気導入口38として機能する開口66を有している点で、ホルダ10aとは相違する。
更に、ホルダ、キャップ、マウスピース、香味カートリッジのケーシング等は合成樹脂に限定されず、金属、セラミック又は木材等により形成可能であることは言うまでもない
【符号の説明】
【0052】
10:ホルダ,14:香味カートリッジ,16:ホルダボディ,18:マウスピース,22:接続ポート,24:ジョイント,36:外気導入室,38:外気導入口,40:ケーシング,42:香味パウチ,
44:ロアシェル,46:トッププレート,50:シーリングステップ,55:連通孔,56:内部室,
58:リブ,62:開口,64:ボス,66:開口