(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737810
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】流量可変弁機構
(51)【国際特許分類】
F16K 31/128 20060101AFI20150528BHJP
F16K 1/52 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
F16K31/128
F16K1/52 A
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-531408(P2011-531408)
(86)(22)【出願日】2009年10月20日
(65)【公表番号】特表2012-506010(P2012-506010A)
(43)【公表日】2012年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2009007513
(87)【国際公開番号】WO2010046090
(87)【国際公開日】20100429
【審査請求日】2012年7月4日
(31)【優先権主張番号】202008013969.4
(32)【優先日】2008年10月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510284358
【氏名又は名称】ビュルケルト ヴェルケ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Buerkert Werke GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キルスト、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】グローセ、ケルステン
(72)【発明者】
【氏名】ハフナー、エゴン
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−097353(JP,A)
【文献】
特開平07−063276(JP,A)
【文献】
特開平06−323464(JP,A)
【文献】
特開平06−346982(JP,A)
【文献】
特開平01−093686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/128
F16K 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び流出口を有する弁室と
前記弁室を、制御室と、前記流入口に接続されたフロー室とに分割するダイアフラムと、
前記フロー室内の前記流出口側に配置された弁座と、
前記ダイアフラムと接続され、前記弁座と協働して、前記流入口から流入し前記フロー室を前記流出口へと流れる流れを調整する略円筒形状の弁体と、
前記流出口と前記制御室との間に延在する第1バイパスに位置する第1パイロット弁と、
前記流入口と前記制御室との間に延在する第2バイパスに位置する第2パイロット弁と、
前記第1パイロット弁及び前記第2パイロット弁を制御して、前記第1バイパス及び前記第2バイパスを選択的に開く又は閉じることにより、前記フロー室を流れる前記流れを制御する制御ユニットと
を備え、
前記弁体は、対向する2つの端面、当該端面の間に延在する外周壁、内側方向に延在するように前記外周壁に形成された少なくとも1つの凹部、及び前記端面の一方から延び前記凹部内に開口する開口部を有し、
前記弁体の閉止状態において、前記ダイアフラムは、前記弁体で前記弁座を閉止することにより、前記流入口から前記流出口への流れをブロックし、
前記弁体の開放状態において、前記ダイアフラムは、前記弁座を開放することにより、媒体を前記凹部及び前記開口部を通して前記流入口から前記流出口へ流す
弁機構。
【請求項2】
前記第1パイロット弁及び前記第2パイロット弁は、前記制御ユニットによりパルスで制御される請求項1に記載の弁機構。
【請求項3】
前記第1パイロット弁は、通常閉弁であり、前記第2パイロット弁は、通常開弁である請求項1又は請求項2に記載の弁機構。
【請求項4】
前記制御ユニットは、入力信号に応じて前記第1パイロット弁及び前記第2パイロット弁を制御して、流量を調節する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弁機構。
【請求項5】
前記凹部は、略くさび形状をしており、前記弁体の軸を横切る方向に延在している請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の弁機構。
【請求項6】
前記凹部は、前記弁体の軸に対して傾いた様々な角度を有する複数の面部からなる複数の面によって規定されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の弁機構。
【請求項7】
前記開口部は、前記弁機構の呼称幅に対応する幅を有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の弁機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の弁機構で使用される、前記弁体を備える弁部材。
【請求項9】
前記凹部は、略くさび形状をしており、前記弁体の軸を横切る方向に延在している請求項8に記載の弁部材。
【請求項10】
前記凹部は、前記弁体の軸に対して傾いた様々な角度を有する複数の面部からなる複数の面によって規定されている請求項8又は請求項9に記載の弁部材。
【請求項11】
前記開口部を備える前記端面において、前記弁部材の円筒状の形状が全外周で保たれている、請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の弁部材。
【請求項12】
前記弁体は、同一のくさび形状を有し、互いに半径方向に対向するように2つの凹部を有する、請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の弁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは液状媒質の流量可変弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
流量可変弁機構は、弁座と協動して、流体の流れを、多くの場合0に設定される最小値と最大値との間に調整する弁部材を有する。アクチュエータは、弁部材を、弁座に対して動かすことにより、流れの有効断面積を変化させる。アクチュエータは、特定の用途に応じて、空気圧式、電磁式、圧電式、機械式等であってもよく、弁の連続的特性又は不連続特性を達成するべく、制御信号に応答して、制御されるものであってもよい。反応が、制御信号の線形関数となる場合には、弁は、しばしば比例弁と称される。
【0003】
本発明は、流れる媒体自身の力を利用して、弁座との関係における弁部材の位置を決定する差圧を生成することにより、流量を調整できる流量可変弁機構を提供する。具体的には、弁機構は、流入口及び流出口を有する弁室を備える。ダイアフラムは、弁室を、制御室と流入口を備えるフロー室とに分割する。弁座は、フロー室内の流出口側に配置されている。弁体は、ダイアフラムと接続され、弁座と協動して、流入口から入りフロー室を通って流出口へと流れる流れを調整するのに使用される。第1パイロット弁は、流出口と制御室との間に延びる第1バイパスに位置し、第2パイロット弁は、流入口と制御室との間に延びる第2バイパスに位置している。第1パイロット弁及び第2パイロット弁は、第1バイパス及び第2バイパスを選択的に開閉するように制御され、それにより、連続的に全開状態と完全に閉じた状態との間、又は制御信号に応じた離散的な複数の段階で、フロー室を通過する流れを変化させる。例えば、水のような媒体自身の力によって、ダイアフラムの両側に適切な差圧が形成され、それにより弁体が作動する。第1及び第2パイロット弁は、好ましくは、入力される制御信号を受信する制御ユニットによって、パルスにより制御される。弁機構は、比例特性を有していても良い。好ましくは、第1パイロット弁は、通常閉弁であり、第2パイロット弁は、通常開弁である。このように構成することにより、電源が故障した場合にも、弁を支障なく閉じた状態としておくことができる。
【0004】
本発明の弁機構を有効に活用できる用途としては、シャワー及び風呂のための電機子が挙げられ、温度調整装置の制御下にある共通の混合室への流入口に、この弁機構が2つ使用される。
【0005】
本発明の更なる側面においては、弁部材は、これに限定されないが、流量可変弁機構に有効的に設けられる。弁部材は、略円筒形状の弁体を有し、弁体は、対向する2つの端面と、これら端面の間に延在する外周壁とを有する。少なくとも1つの凹部が外周壁から内側に延びるように形成され、開口部が一方の端面から伸び、凹部へと開口している。凹部は、略くさび形状をしており、弁体の軸を横切るように延在する。凹部は、弁体の軸に対して異なる角度で傾いた複数の表面部によって構成される面によって規定されていてもよい。
【0006】
従来の円錐型の弁部材を使用した場合であって、媒体の流れの低い流量を実現するために小さな作動距離である場合に、大きな流速が現れるのは、媒体の流れが、円錐の全外周に渡った時である。これにより、作動方向と反対の方向に作用する吸引力が生成され、繊細な閉ループ制御を難しくしている又は不可能にしている。本発明が提案する弁部材は、作動距離が小さい場合であっても、安定して且つ正確に所望の流速に制御することができる。
【0007】
また、本発明の更なる利点として、同様な機構でよく観察される望ましくない現象である振動の傾向を低減することができる点が挙げられる。
【0008】
このような利点を発揮する弁機構の構成では、弁部材の駆動側の端面が、弁座を閉位置に密閉させておくダイアフラムと接続される。好ましくは、弁体に設けられる開口部の直径は、弁の呼称幅に対応する。
【0009】
このような弁部材の配置により、流量が小さい場合であっても、媒体全てを下流方向及び側面に沿った方向へと流すことが可能になる。
【0010】
加えて、同じ傾斜を有する流れによって作動される弁部材の表面積を有し、小さな作動距離を有する場合では、円錐形状の弁部材を有する従来の弁と比較して、非常に小さい流量範囲が媒体に対して露出する。
【0011】
くさび形状の切り込みの数及び配置の構成により制御特性を調整することができ、少なくとも1つの切り込みを構成する複数の面を規定する、互いに対する及び弁部材の端面に対する角度は、この制御特性を決定する主要な要素である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る弁の弁部材を3次元で描いた図である。
【
図2】従来の制御円錐を有するダイアフラム弁の一部から見た部分の概略断面図である。
【
図3】弁座を有する弁部材の第1実施形態の概略断面図である。
【
図4】弁座を有する弁部材の第2実施形態の概略断面図である。
【
図6】2つのパイロット弁を有するダイアフラム弁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る弁機構における弁部材を示したものであり、通常使用される円錐形状の弁体に置き換えて使用するものである。
【0014】
弁部材1は、略円筒形状の弁体を有し、弁体の対向し平行に位置する2つの端面の一方に、取り付け穴2が設けられる。また、他方の端面を貫通し、弁機構の呼称幅に対応する十分に大きい直径w(
図3、4)を有する開口部4が設けられている。
【0015】
この端面側では、誘導の目的から、少なくとも部分的な領域3においては、弁部材の円筒状の形状が全外周で保たれている。このように構成することにより、動作時の一連の動きの間に、弁部材1が傾いたり、詰まったりする可能性を排除することができる。
【0016】
弁部材1は、弁部材1の中心軸を横切るように延在する少なくとも1つのくさび形状の凹部を含み、複数の側面5によって規定されている。
【0017】
開口部4が位置する端面に隣接する側面5は、少なくともその一部が開口部4の一部を構成し、これにより、この端面及び隣接する側面との間の開放接続が形成されている。
【0018】
弁が開放状態にある時には、この接続部の間を媒体が流れ、この接続部が流入口と流出口との間の流路を決定している。
【0019】
弁部材1は、金属材料又は好適なプラスチック材料により、形成されていてもよい。
【0020】
図2は、従来の円錐形状の弁体8を有する典型的なダイアフラム弁を描いた図である。
【0021】
流入口6及び流出口7は、弁の筐体11に配置されている。弁が閉じた状態にある時には、密閉するように弁座8aに配置される弁体8の効果により、流入口6と流出口7とが、分離される。弁体8が取り付けられるダイアフラム9は、締め付け手段10によって弁の筐体11に保持される。
【0022】
好ましくは、円錐形状の弁体8は、
図3に示すように、上述した弁部材1で置き換える。この場合、弁部材1は、くさび形状の凹部を1つのみ有し、また、作動竿部9aと接続されている。
図4に示した実施形態では、弁体は、同一のくさび形状を有し、互いに半径方向に対向するように2つの凹部を有する。その他の部分については、
図3及び
図4の実施形態では同じである。
【0023】
図5には、流量可変弁機構が示されている。流量可変弁機構は、
図2に示したのと同様なダイアフラム弁を備え、上述の弁部材1に置き換えられてもよい円錐形状の弁体8を有する。弁のハウジング11は、弁室を収容し、弁室は、ダイアフラム9によって制御室20及び流入口6と接続された流体フロー室22に分割される。パイロット弁24、26は、ダイアフラム弁と関連付けられる。第1パイロット弁24は、制御室20及び流出口7との間に延在する第1バイパス25に挿入される。第2パイロット弁26は、制御室20及び流入口6との間に延在する第2バイパス27に挿入される。
【0024】
パイロット弁24、26は、共通の制御ユニット30から受信される電子制御信号によって脈動し、制御ユニットは、入力として、制御信号U
contを受信する。第1パイロット弁24は、通常閉弁であり、第2パイロット弁26は、通常開弁である。制御パルスがパイロット弁に印加されない限り、バイパス27は開いた状態であり、制御室20は、流入口6からの圧力に晒されることとなり、この圧力がダイアフラム9に作用して弁胴体8を弁座8aに押し付けるようにし、流入口6から流出口7への流れを完全にブロックする。電源が故障した場合にも、弁機構は、流入口6及び流出口7との間の流れを確実にブロックした状態としておくことができる。これは、重要な安全機能である。動作では、制御ユニット30は、制御パルスをパイロット弁24、26の両方に印加し、制御信号U
contに応じた所望の流量を得ることができる。特に、流量は、制御信号U
contの値に比例していてもよい。また、弁座8aに対する弁体8の位置は、ダイアフラム9にかかる差圧に依存し、差圧は、バイパス25、27の開/閉状態に依存する。他に特に明示されていない限り、弁座8aに対する弁体8の位置を決定するのは、制御室20内の流体の体積である。バイパス27が開いた状態の時は、注入圧力は、制御室20に印加され、弁体8を弁座8aへと近づけるように動かす傾向がある。バイパス25が開いた状態では、制御室20内の圧力は、流出口7から排出される流体によって開放され、弁体8を弁座8aから離れる方向に動かす傾向がある。したがって、印加された制御信号U
contの結果生じる流体の流量の反応は、連続的に又は段階的に比例し、制御ユニット30をプログラムして、流量の目的値を達成するようにパイロット弁24、26の両方にパルスパターンを発生させることにより、容易に流量を変更することができる。
【0025】
図6には、弁機構の数多くの可能な物理的実装形態のうちの1つが示されている。弁ハウジング11は、略円筒形状をしており、カバー11aを有する。パイロット弁24、26は、ハウジング11と接続され、それぞれハウジングフランジ24a、26aと一体的に形成される。従来の及び入手可能な小型弁がパイロット弁として利用可能となることから、これは、本発明の重要な側面である。
[項目1]
流入口及び流出口を有する弁室と
弁室を、制御室と、前記流入口に接続されたフロー室とに分割するダイアフラムと、
前記フロー室内の前記流出口側に配置された弁座と、
前記ダイアフラムと接続され、前記弁座と協働して、前記流入口から流入し前記フロー室を前記流出口へと流れる流れを調整する弁体と、
前記流出口と前記制御室との間に延在する第1バイパスに位置する第1パイロット弁と、
前記流入口と前記制御室との間に延在する第2バイパスに位置する第2パイロット弁と、
前記第1パイロット弁及び前記第2パイロット弁を制御して、前記第1バイパス及び前記第2バイパスを選択的に開く又は閉じることにより、前記フロー室を流れる前記流れを全開状態と全閉状態との間で変化させる制御ユニットと
を備える弁機構。
[項目2]
前記第1パイロット弁及び前記第2パイロット弁は、前記制御ユニットによりパルスで制御される項目1に記載の弁機構。
[項目3]
前記第1パイロット弁は、通常閉弁であり、前記第2パイロット弁は、通常開弁である項目1又は項目2に記載の弁機構。
[項目4]
前記制御ユニットは、入力信号に応じて前記第1パイロット弁及び前記第2パイロット弁を制御して、流量を調節する項目1から項目3のいずれか一項に記載の弁機構。
[項目5]
流量可変弁、特に、項目1から項目4のいずれか一項に記載の弁機構で使用される弁部材であって、
略円筒形状の弁体を備え、
前記弁体は、対向する2つの端面、当該端面の間に延在する外周壁、前記外周壁に弁体の内側方向に延在するように形成された少なくとも1つの凹部、及び前記端面の一方から延び前記凹部内に開口する開口部を有する弁部材。
[項目6]
前記凹部は、略くさび形状をしており、前記弁体の軸を横切る方向に延在している項目5に記載の弁部材。
[項目7]
前記凹部は、前記弁体の軸に対して傾いた様々な角度を有する複数の面部からなる複数の面によって規定されている項目5又は項目6に記載の弁部材。
[項目8]
前記開口部は、前記弁部材が使用されている弁の呼称幅に対応する幅を有する項目5から項目7のいずれか一項に記載の弁部材。