(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737850
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】手持ち打込み機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
B25C1/06
【請求項の数】5
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-47928(P2010-47928)
(22)【出願日】2010年3月4日
(65)【公開番号】特開2010-208013(P2010-208013A)
(43)【公開日】2010年9月24日
【審査請求日】2013年3月4日
(31)【優先権主張番号】10 2009 001 371.7
(32)【優先日】2009年3月6日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ シーストル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベルトシュ
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−290236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/00− 5/02
B25C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(11)内に配設された打込み装置(20)、および、電子的装置機能を制御するための制御電子回路(28)を備えた手持ち打込み機において、
前記制御電子回路(28)には、少なくとも1つの冷却体(31)が設けられ、前記制御電子回路(28)にはグラウト(30)の注入が施され、前記冷却体(31)の少なくとも一面が前記グラウト(30)から突出することを特徴とする手持ち打込み機。
【請求項2】
請求項1記載の打込み機において、前記冷却体(31)は、前記グラウト(30)に直交するその軸線方向の延在距離の15%〜90%が、前記グラウト(30)内に埋め込まれていることを特徴とする打込み機。
【請求項3】
請求項1または2記載の打込み機において、前記グラウト(30)は、可撓性を有する合成樹脂素材から構成されるものであることを特徴とする打込み機。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の打込み機において、前記グラウト(30)は、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂より成る群の合成樹脂から成るものであることを特徴とする打込み機。
【請求項5】
ハウジング(11)内に配置された打込み装置(20)と、電子的装置機能を制御するための制御電子回路(28)と、前記ハウジング(11)のハウジング部分(14)に構成されたグリップ(12)と、前記ハウジング部分(14)に着脱可能に取付けられた蓄電池(40)とを備える手持ち打込み機において、
前記制御電子回路(28)は、グリップ側ハウジング部分(14)の前記打込み装置(20)と反対側の端部において、前記蓄電池(40)と前記グリップ(12)との間に配設されており、
前記制御電子回路(28)には、少なくとも1つの冷却体(31)が設けられ、該冷却体(31)は、前記グリップ(12)の軸線方向投射線上に位置し、かつ、前記グリップ(12)内まで伸張することで、前記グリップ(12)内でのスタック効果によって該冷却体(31)から熱を除去し、
前記制御電子回路(28)にはグラウト(30)の注入が施され、前記冷却体(31)の少なくとも一面が前記グラウト(30)から突出することを特徴とする手持ち打込み機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1前段に記載するタイプの手持ち打込み機に関する。本発明は、さらに、請求項5前段に記載するタイプの手持ち打込み機に関する。このタイプの手持ち打込み機は、移動可能に案内された打込みプランジャを有し、固定素子は、このプランジャにより加工体内に打込まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載される打込み機において、打込みプランジャは、ばね素子により駆動される。このばね素子は、電気モータを含む牽引機構により、解放位置から緊張位置へと移行することができる。このとき、ばね素子は、電気モータから供給される機械的エネルギーを一時的に貯蔵する機能を呈する。トリガスイッチが引張られて打込み機が作動させられると、ばね素子は牽引機構との連結から離脱して打込みプランジャを加速させ、打込みプランジャは固定素子を加工体に打ち込む。電気モータは、打込み装置(心棒、継手、ばね素子および打込みプランジャを含む牽引メカニズム)とグリップとの間に設けられた制御電子回路により制御される。
【0003】
この既知の打込み機における欠点は、装置内にてオープンに設けられた電子回路が、打込み機の作動時に作用する加速力に直接晒される点にある。このため、特に大きく重たい電子構成部分とこれらの接触が、破損の危険に晒される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/142997(A2)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、前述のタイプの手持ち打込み機であって、既知の装置よりも改良され、前述の欠点を少なくとも部分的に回避する打込み機を得ることにある。
【0006】
この課題は、独立請求項に記載される特徴を備えた打込み機により達成される。好適な実施形態は、従属請求項に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
これによれば、制御電子回路には少なくとも1つの冷却体が設けられ、制御電子回路にはグラウトの注入が施され、冷却体の少なくとも一部がグラウトから突出する。
【0008】
この特徴により、制御電子回路は、一方では衝突および加速による負荷から効果的に保護され、他方では、効果的に冷却されるようになる。
【0009】
好適には、冷却体は、グラウトに直交するその軸線方向の延在距離の15%〜90%が、グラウト内に埋め込まれている。この構成により、電子回路の最適な衝撃抵抗および冷却が達成される。
【0010】
好適には、グラウトは、可撓性を有する合成樹脂素材から構成される。この構成により、安価でありながら効果的な衝撃緩衝が達成される。好適には、このグラウトは、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂より成る群の合成樹脂から成るものとする。
【0011】
制御電子回路が、グリップ側ハウジング部分の打込み装置と反対側の端部において、蓄電池とグリップとの間に配設される場合、グリップは打込み軸線近くに設けることができる。これにより、装置重量(重心)と打込み作業における反動とに起因して使用者の手に作用するモーメントが最小限に抑えられ、人間工学的に好適である。さらに、本発明の態様において、ハウジングとグリップの合成樹脂が、緩衝材のように作用するため、電子回路がそこまで高い加速に晒されることがなくなる。これにより、制御電子回路の寿命は、飛躍的に延びる。
【0012】
また、制御電子回路には、少なくとも1つの冷却体が取付けられ、該冷却体は、グリップの軸線方向投射影上に位置し、
さらに、グリップ内へと伸張する
と好適である。この構成により、グリップ内でのスタック効果を利用して、冷却素子にて熱を除去できるため、さらに制御電子回路の最適な冷却が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明手持ち打込み機の一実施形態を示す部分断面図である。
【0014】
図1に示すのは、本発明手持ち打込み機10の一実施形態における部分断面図である。
【0015】
電気駆動の手持ち打込み機10は、ハウジング11を有し、このハウジング11内には全体的に参照符号20で示される打込み装置(点線でのみ図示)が配設される。打込み装置20は、打込みプランジャ21、少なくとも1つの駆動ばね22、この駆動ばね22のための例えば心棒として構成された牽引素子23、打込みプランジャ21と牽引素子23との間に設けられた継手24、電気モータ25、電気モータ25の牽引動作を牽引素子23に伝えるための伝達手段26、および、牽引素子23のための軸受け手段27を備える。
【0016】
打込み機10のグリップ12には、トリガスイッチ13が配設され、このトリガスイッチ13により、打込み作業が開始させることができる。このとき、異なる電子回路構成部分29を有する制御電子回路28は、例えば、電気モータ25の機能、およびこれに伴い、特に電気モータ25による駆動ばね素子22の牽引などといった、電子的装置機能を制御する。制御電子回路28は、グリップ側ハウジング部分14の打込み装置20とは反対側の端部において、ハウジング部分14に着脱可能に取付けられた蓄電池40と、グリップ12との間に配設される。この蓄電池40は、打込み機10に電子的エネルギーを供給する役割を持つ。また、蓄電池の替わりに、打込み機10を公衆電源に接続するための電源ケーブルを取付けてもよい。制御電子回路28には、可撓性を有する合成樹脂素材、好適にはエポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂から成るグラウト30の注入が施される。これにより、制御電子回路28は打撃および加速に対して保護される。このとき、制御電子回路28には少なくとも1つの冷却体31が設けられ、この冷却体31により、制御電子回路28は冷却される。この冷却体31は、グラウトの表面に直交する方向に突出し、この方向(=延在方向)の長さの約73.5%は、グラウト30から出て、グリップ12内へと伸張して延在する。
【符号の説明】
【0017】
10 打込み機
11 ハウジング
12 グリップ
13 トリガスイッチ
14 ハウジング部分
20 打込み装置
21 打込みプランジャ
22 駆動ばね
23 牽引素子
24 継手
25 電気モータ
26 伝達手段
27 軸受け手段
28 制御電子回路
30 グラウト
31 冷却体
40 蓄電池