特許第5737872号(P5737872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737872
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】単軌条運搬機のエンジン傾斜装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/04 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   B61B13/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-148448(P2010-148448)
(22)【出願日】2010年6月30日
(65)【公開番号】特開2012-11839(P2012-11839A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592070937
【氏名又は名称】光永産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071892
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆一
(72)【発明者】
【氏名】大岡 敬一郎
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047130(JP,A)
【文献】 特開2002−120716(JP,A)
【文献】 特開平09−125997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/02 − 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから減速機に動力伝達し、減速機の最終軸に設けた駆動輪で推力を得る動力車と、動力車後方には荷物を積載する台車を連結かん(15)で連結し、エンジンを進行方向に回動自在に構成すると共に、連結かん(15)の進行方向の動きに連動して、連結かん(15)が後方に引っ張られると、エンジンが前傾し、連結かん(15)が前方に押されるとエンジンが後傾するよう、エンジンベース(2)下方は、ロッド(3)の一端に連結され、ロッド(3)動力車フレーム(13)に固着されたロッド受け(4)に挿入されて、他端は連結金具(16)を介して連結かん(15)に連結され、ロッド受け(4)の両端には圧縮スプリング(前)(6a)、圧縮スプリング(後)(6b)とカラー(前)(5a)、カラー(後)(5b)ロッド(3)に挿入してエンジンと連結かん(15)ロッド(3)で連結してあることを特徴とする単軌条運搬機のエンジン傾斜装置。
【請求項2】
請求項1の圧縮スプリングを、ロックナット(20)によって圧縮スプリング(前)(6a)と圧縮スプリング(後)(6b)を一定量圧縮した状態で組みつけてあることを特徴とする単軌条運搬機のエンジン傾斜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単軌条運搬機のエンジン傾斜復元のための装置において、電気回路を使用しないで機械的構造のみからなるエンジン傾斜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンを搭載した単軌条運搬機ではエンジンの許容傾斜を超えての連続運搬はエンジンオイルの潤滑不良によるエンジンの焼き付きが発生するため、登坂、降坂の傾斜が制限される欠点があった。これを解決するため、軌条の傾斜が変化してもエンジンは水平ないし許容傾斜の範囲内に保持されることが必要である。このエンジンの寿命を維持する上の必要から、単軌条運搬機はエンジンを進行方向に対して、前後に回動する必要がある。このため特許文献2に示される、エンジンを振り子状態で構成する発明や、特許文献3に示される特許請求の範囲請求項5乃至請求項6に記載の、エンジン出力軸を回動中心としながら、傾斜センサの出力によって伸縮シリンダ又はウォーム機構を作動させて常にエンジンが水平になるようにした発明、特許文献2に示されるエンジン下面にウエイトを設けて水平を保持する発明、或いは特許文献1においては軌条の傾斜にかかわらず、回動可能なエンジンを伸縮シリンダを介して、水平若しくは許容傾斜内に回動させる発明が公開されている。
【0003】
然しながら、エンジンを振り子状態にするためには、特許文献2に示されるエンジンの回動中心をエンジン上方に構成し、この回動中心に中間軸を設けて動力伝達する必要があり、部品増によるコスト増加及び重量増加の欠点がある。エンジン出力軸を回動中心とした場合には、エンジン最大負荷時の駆動反力に抗してエンジンを水平に保持するために大重量のウエイトが必要となり、機体重量の増加が欠点となる。
【0004】
又、軌条の傾斜にかかわらずエンジンを回動可能にして、伸縮シリンダによりエンジンを回動させる場合、無人運行する単軌条運搬機では、自動制御が必要となる。このため、傾斜センサを設け、伸縮シリンダの伸縮位置を検知し、自動制御する電気制御回路構成する必要がある。小型単軌条運搬機では、雨ざらし状態で使用されるなど、使用環境が悪く、電気部品の信頼性や耐久性、コスト増加などで使用性に劣る欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−126778号公報
【特許文献2】特開2003−182565号公報
【特許文献3】特開2002−120716号公報
【特許文献4】特開平11−208459号公報
【特許文献5】特開平10−194115号公報
【特許文献6】特開昭60−060059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汎用性の高い4サイクルエンジンを搭載した単軌条運搬機において、駆動車により牽引される荷物台車を連結する連結かんに作用する牽引力の変化から、電気部品を使用することなく軌条の傾斜と機体の関係を水平状態、頭上がり状態、頭下がり状態を概略判断し、エンジンを傾斜許容範囲内まで回動させて、エンジントラブルを回避させるよう、軽量、低コストで実現しようとするものである。
【0007】
解決しようとする問題点は、軌条の傾斜にかかわらずエンジンを回動可能にして、伸縮シリンダによりエンジンを回動させる自動制御の場合、エンジントラブルを回避させる障害となる軌条の傾斜によりエンジンが傾斜する角度をエンジンの傾斜許容範囲内まで電気部品を使用することなく回動せることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、単軌条運搬機が傾斜地を走行する場合の軌条傾斜の変化により、動力車と荷物台車を連結する連結かんに作用する力の変化によって、エンジンを中立、前傾、後傾状態に間欠的に回動させて走行するようにしたことを最も主要な特徴とする。
図1に示す如く単軌条運搬機が水平状態で走行する場合、前進では、連結かんには荷物台車と荷物重量に応じた、ころがり抵抗分の引張り力が作用し、後進時には逆に圧縮力が作用するが、この力は傾斜地走行時に作用する引張り力及び圧縮力に比べると極めて小さい。
その理由とするところは、第一に単軌条運搬機が、図2及び図5に示す如く頭上がり状態で登坂・後坂する場合、動力車と荷物台車を連結する連結かんには荷物台車と荷物重量に応じた引張り力が作用し、その力は傾斜に比例する。又第二に図3及び図6に示す如く頭下がり状態で登坂・後坂する場合は、連結かんには荷物台車と荷物重量に応じた圧縮力が作用し、その力は傾斜に比例する。
【0009】
4サイクルガソリンエンジンの許容傾斜角度は、通常運転で±20度程度、瞬時運転で±30度程度が一般的である。単軌条運搬機の場合、軌条設置及び運行上の安全のために軌条傾斜角は最大45度程度であるので45度軌条をエンジントラブルなして走行するには、エンジンを25度傾斜させる必要があり、エンジンを25度傾斜させた状態では軌条の傾斜角は5度まで許容される。
これにより軌条傾斜 −45度〜−5度、−5度〜+5度、+5度〜+45度に対応して、エンジンを−25度、0度、+25度程度の3傾斜で回動すれば、全ての軌条傾斜でエンジントラブルは発生しない。
【0010】
エンジンを進行方向に回動自在に構成すると共に、連結かんに加わる引張り力と押し力が一定以下の場合は、連結かんが動かないよう圧縮スプリングの力で引っ張り力と押し力を相殺することで、エンジンが回動しない中立姿勢を保持させる。連結かんの進行方向の動きに連動して連結かんが後方に引っ張られると、ロッドによってエンジンが前傾25度姿勢まで前傾する。連結かんが前方に押されると、ロッドによって後傾25度姿勢まで後傾する。本発明は上記中立姿勢、前傾姿勢、後傾姿勢の3種類のエンジン傾斜を実現し、軌条の傾斜の変化に自在に対応してエンジントラブルを防止するものである。
すなわち本発明は、軌条の傾斜方向の変化によって駆動車と荷物台車の連結かんに加わる力の変化を利用して水平状態、頭上がり状態、頭下がり状態を概略判断して、常に傾斜回動可能とするため、3姿勢のエンジン傾斜を電気部品を使用することなく実現することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る単軌条運搬機のエンジン傾斜装置は、軌条傾斜の変化により、単軌条運搬機が水平状態で走行する場合、前進では、連結かんには荷物台車と荷物重量に応じた、ころがり抵抗分の引張り力が作用する。単軌条運搬機が水平状態で走行する場合、後進時には逆に圧縮力が作用するが、この力は傾斜地走行時に作用する引張り力及び圧縮力に比べると極めて小さくなるのである
しかし、水平状態から頭上がり状態へ移行して登坂、坂する場合、動力車と荷物台車を連結する連結かんには荷物台車と荷物重量に応じた引張り力が作用し、又水平状態から頭下がり状態へ移行して登坂、降坂する場合は連結かんには荷物台車と荷物重量に応じた圧縮力が作用する
更に動力車と荷物台車を連結する連結かんに作用する引張り力又は連結かんに作用する圧縮力、これらの力の変化によって、軌条が水平の場合走行中のエンジンの水平状態、走行中のエンジンの傾斜を頭上がり状態で軌条が登坂の場合エンジンの前傾或いは頭下がり状態で軌条が降坂の場合エンジンの後傾のいずれかのエンジン傾斜に間欠的に回動しエンジンの傾斜許容範囲で走行するため、電気部品を使用することなくエンジントラブルを防止できるという利点がある。

【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は軌条が水平の場合、単軌条運搬機におけるエンジン傾斜装置の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
図2図2は軌条が登坂の場合、単軌条運搬機におけるエンジン傾斜装置の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
図3図3は軌条が降坂の場合、単軌条運搬機におけるエンジン傾斜装置の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
図4図4はエンジン出力軸を回動中心として、単軌条運搬機におけるエンジン傾斜装置の実施方法を示した背面図である。(実施例1)
図5図5は軌条が登坂の場合、荷物台車を牽引して登坂走行する単軌条運搬機におけるエンジン傾斜装置の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
図6図6は軌条が降坂の場合、荷物台車を牽引して降坂走行する単軌条運搬機におけるエンジン傾斜装置の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、軌条傾斜の変化により、動力車と荷物台車を連結する連結かんに作用する力が変化することを利用してその力の変化によって、図1に示す如く水平状態、図2及び図5に示す如く頭上がり状態、図3及び図6に示す如く頭下がり状態を概略判断して、軌条に対してエンジン姿勢を中立、前傾、後傾状態に間欠的に回動させて走行することを、電気部品を使用することなく実現した。
【実施例1】
【0014】
図1図3は、本発明装置の1実施例の側面図であって、 符号3はロッド、 4はロッド受け、 5aはカラー(前)、 5bはカラー(後)、 6aは圧縮スプリング(前)、 6bは圧縮スプリング(後)を示し、図4は単軌条運搬機のエンジンの出力軸7に遠心クラッチ8を設け回動中心を設けるために、エンジン支持軸フレーム(左)(右)に軸受(左)(右)を設けてある実施例の背面図であり、図5は頭上がり状態で、図6は頭下がり状態で単軌条運搬機が傾斜地を走行する側面図である。
【0015】
動力車フレーム13の前方左右には、エンジン支持軸フレーム(左)19aとエンジン支持軸フレーム(右)19bを締結し、エンジン支持軸フレーム(左)19aには軸受(左)18aを設け、エンジン出力軸7を軸支し、エンジン1はエンジンベース2に締結されて、エンジン右側にはエンジンベース2に固着されたエンジン支持軸17がエンジン出力軸7中心に設けられて、エンジン支持軸17はエンジン支持軸フレーム(右)19bに設けられた軸受(右)18bで軸支され、エンジン1はエンジンベース2と一体で、エンジン出力軸7を回動中心として、進行方向に回動自在に構成されている。
【0016】
前記エンジン出力軸7には遠心クラッチ8を設け、ベルト9により減速機11の入力軸10に動力伝達され、減速機11の最終軸に設けた駆動輪12によって推力を得て走行する。
【0017】
前記エンジンベース2下方は、ロッド3の一端に連結され、ロッド3は動力車フレーム13に固着されたロッド受け4に挿入されて、他端は連結金具16を介して連結かん15に連結されている。
ロッド受け4の両端には圧縮スプリング(前)6a,圧縮スプリング(後)6bとカラー(前)5a,カラー(後)5bをロッド3に挿入し、ロックナット20によって圧縮スプリング(前)6aと圧縮スプリング(後)6bを一定量圧縮した状態で組み付けてある。
【0018】
前記連結かん15の他端は、連結金具を介して荷物台車に連結されている。荷物台車の荷重によって連結かん15は前後左右に動き、ロッド3は連結かん15の前進方向の動きによって、前後に動いて、エンジン1を前後方向に回動させ、カラー5がロッド受け4に当るとその状態でエンジン回動を停止する。
【0019】
a. 軌条が水平に近い状態で走行する場合
軌条が水平に近い状態での作用について説明すると、軌条が水平に近い状態では、前進後進とも台車と荷物の重量のころがり抵抗分の引張り、圧縮力であり、エンジンは回動傾斜する必要はない。
圧縮スプリング(前)6a,圧縮スプリング(後)6bを一定量圧縮して組み込んで、圧縮スプリング6a,6bの反力により連結かん15の動きを微少にすることが可能である。台車が空荷の場合と積荷の場合では、当然連結かん15に作用する力が変わってくるが、ある程度バネ定数を大きくしてスプリング反力を大きくすればよい。エンジン1の回動開始が遅れるが、エンジン1が中立状態でも±20度傾斜が許容されるので実用上問題はない。又、この圧縮スプリングは、発進停止時の慣性力による連結かん15に加わる大きな力によって、エンジンが急激に回動することを防止する効果がある。
前記の圧縮スプリングは、引張りスプリング、ガスダンパー、油圧ダンパーなどの弾性体でも代えられる。
【0020】
b. 軌条が傾斜して頭上がりで登坂、降坂する場合
軌条が急傾斜にさしかかると台車と荷物の加重により、連結かん15は大きな力で引張られ始める。ロッド受け4前方の圧縮スプリング6aの反力以上の力が働き始めると連結かん15はロッド3を引張ってエンジンを前傾姿勢に回動させ始め、カラー5aがロッド受け4に当るまでエンジン1を回動させる。このときのエンジン傾斜角が25度になるようカラー5aを設定してある。この後、軌条最大傾斜45度までなら、エンジン傾斜角25度でトラブルなしで走行可能となる。ロッド受け4後方の圧縮スプリング6bは、圧縮状態からすぐ自由長になり反力を作用させない状態となっている。
【0021】
b. 軌条が傾斜して頭下がりで登坂、降坂する場合
軌条が急傾斜にさしかかると、台車と荷物の重量により連結かん15は大きな力で圧縮され始める。ロッド受け4後方の圧縮スプリング6bの反力以上の力が働き始めると、連結かん15は、ロッド3を押してエンジン1を後傾姿勢に回動させ始め、カラー5bがロッド受け4に当るまでエンジンを回動させる。このときのエンジン傾斜角が25度程度になる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上の説明に示すように単軌条運搬機のエンジン傾斜装置は、軌条傾斜±45度の変化に対応したエンジン傾斜装置となり、電気部品を使用せず、軽量低コストで構造の簡易な、メンテナンス性も優れたものとなる。
【符号の説明】
【0023】
1 エンジン
2 エンジンベース
3 ロッド
4 ロッド受け
5a カラー(前)
5b カラー(後)
6a 圧縮スプリング(前)
6b 圧縮スプリング(後)
7 エンジン出力軸
8 遠心クラッチ

9 ベルト
10 減速機入力軸
11 減速機
12 駆動輪
13 動力車フレーム
14 発進停止レバー

15 連結かん
16 連結金具
17 エンジン支持軸
18a 軸受(左)
18b 軸受(右)

19a 支持軸フレーム(左)
19b 支持軸フレーム(右)
20 ロックナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6